説明

重合体粒子の製造方法、シード粒子及びその製造方法

【課題】疎水性のビニル系単量体の割合が高くても、多量の界面活性剤を用いることなく、生産性よく単分散性に優れた重合体粒子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られたシード粒子1重量部に対し、疎水性単量体を5重量%以上含む単量体混合物を80〜350重量部吸収させて重合させる工程を含み、特定の粒度分布を有し、変動係数(CV値)が15%以下である重合体粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子の製造方法、シード粒子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、界面活性能を有する特定の単量体を所定割合で含む単量体混合物を重合させることにより得られたシード粒子を用いて、シード重合法により得られる単分散性に非常に優れた重合体粒子を得る重合体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体粒子(樹脂粒子)は、液晶用スペーサー、クロマトグラフィー用充填剤、診断試薬等の幅広い分野で使用されている。また、光拡散板、光拡散フィルム、防眩フィルム等の表示装置の分野においても用いられている。上記分野において、所望とする範囲外の粒子径の重合体粒子が混在していると、範囲外の粒子径の重合体粒子は当該用途において不具合を生じさせる原因となる。そのため、より単分散性に優れた重合体粒子を得るための開発が絶えず行われている。
【0003】
単分散性に優れた重合体粒子を得る方法として、種々の方法が開示されている。
例えば、臨界ミセル濃度の9〜24倍量の界面活性剤を含む水性媒体の存在下、疎水性のビニル系単量体を5重量%以上含む単量体を、シード粒子1重量部に対して80重量部以上を吸収させるシード重合法による単分散粒子の製造方法が知られている(特許文献1参照)。臨界ミセル濃度とは、界面活性剤が水中でミセルと呼ばれる分子集合体を形成し始める濃度を意味する。本明細書において、臨界ミセル濃度は、Wilhelmy法で測定された値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−256639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシード重合法によれば、単量体がシード粒子に十分に吸収されることにより、単分散性に優れた重合体粒子を得ることができる。しかし、特許文献1による方法は、疎水性のビニル系単量体をシード重合させるために多量の界面活性剤を必要とする。そのため、界面活性剤の洗浄工程における工数が余分にかかるという課題が残される。また、得られた重合体粒子に界面活性剤が残留していると、重合体粒子の耐溶剤性や耐水性が低下する場合がある。
本発明は、疎水性のビニル系単量体の割合が高くても、多量の界面活性剤を用いることなく、生産性良く単分散性に優れた重合体粒子を製造することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られたシード粒子1重量部に対し、疎水性単量体を5重量%以上含む単量体混合物を80〜350重量部吸収させて重合させる工程を含む重合体粒子の製造方法であって、前記重合体粒子は、その平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で20%以下の粒度分布を有し、変動係数(CV値)が15%以下であることを特徴とする重合体粒子の製造方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記の重合体粒子の製造方法に用いられる下記一般式(1)
【化2】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られた重合体を含むことを特徴とするシード粒子が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、下記一般式(1)
【化3】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることを特徴とするシード粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による重合体粒子の製造方法によれば、シード重合法において疎水性単量体を使用しても、界面活性剤を多量に用いる(臨界ミセル濃度の9倍以上にする)ことなく、シード粒子膨潤時の単量体の吸収性を向上することができる。そのため、シード粒子の膨潤性能が向上して、微小粒子の発生を防ぐことができ、微小粒子が混在することに由来する製品の不具合を解消することができる。また、粒子径のバラツキが非常に少ない単分散性に非常に優れた重合体粒子を製造することが可能になる。更に、界面活性剤の使用量を減らすことができるので、多量の界面活性剤洗浄にかかる余分な工数を低減することができ、重合体粒子に界面活性剤が残留することによる耐溶剤性、耐水性低下という問題を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による重合体粒子(以下、「樹脂粒子」又は「粒子」ともいう)の製造方法は、下記一般式(1)
【化4】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られたシード粒子1重量部に対し、疎水性単量体を5重量%以上含む単量体混合物を80〜350重量部吸収させて重合させる工程を含む。この方法では、得られた重合体粒子は、その平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で20%以下の粒度分布を有し、変動係数(CV値)が15%以下である。
【0011】
(シード粒子)
重合体粒子を得るために用いられるシード粒子には、上記一般式(1)で表される単量体1〜20重量部と上記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られた重合体が含まれる。
(1)一般式(1)を有する単量体
【化5】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体は、界面活性効果を有するため、水性媒体中で、重合性単量体の油滴を安定し、シード粒子への膨潤性を高める効果を示す。そのため、得られる重合体粒子の単分散性を向上することができる。
mが50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、またnが50より大きい場合も重合安定性が低下して合着粒子が発生することがある。好ましいm及びnの範囲は、1〜30である。
【0012】
一般式(1)の単量体は、市販品を利用できる。例えば、日本油脂社製のブレンマーシリーズが挙げられる。更に、ブレンマーシリーズの中でも、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B等が本発明に好適である。
【0013】
一般式(1)の単量体は、以下で説明する一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部に対して、1〜20重量部の範囲で使用される。使用量が1重量部未満の場合、単量体混合物の吸収性が不十分となる恐れがある。一方、20重量部を超えると、重合凝集を引き起こす場合がある。より好ましい使用量は、2〜15の範囲である。
【0014】
(2)一般式(1)以外のビニル系単量体
一般式(1)以外のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。具体的には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸又はそのエステル、メタクリル酸、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘプタデカフルオロデシル等のメタクリル酸又はそのエステルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系単量体は、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0015】
(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系単量体として、例えばスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル基を有するものが挙げられる。上記ビニル系単量体は単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
(3)シード粒子の製造方法
シード粒子は、一般式(1)の単量体1〜20重量部と一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部との単量体混合物を重合させることにより得られる。シード粒子の製造方法としては、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法あるいは懸濁重合法等の公知の方法を用いることができる。シード粒子の粒子径の均一性や製造方法の簡便さを考慮すると、乳化重合法及びソープフリー乳化重合法が好ましい。シード粒子の粒子径を大きくするために、シード重合法を繰り返し行ってもよい。
【0017】
以下では、シード粒子の製造に使用されるシード粒子を「予備シード粒子」と称することもある。
また、シード粒子の重量平均分子量を、重合開始剤の使用量の加減あるいは分子量調整剤の添加量の加減等により調整してもよい。
【0018】
重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸二水和物、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩化水素、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩化水素、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩化水素、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物類、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物類等が挙げられる。上記重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の添加量は、上記単量体混合物100重量部に対して0.1〜3重量部であることが好ましい。
【0019】
分子量調整剤としては、α−メチルスチレンダイマー、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類を使用できる。分子量調整剤の使用量は、重合に使用する単量体全量100重量部あたり、0.01〜10重量部が好ましい。より好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0020】
重合は、水性媒体中で行われる。水性媒体には、上記単量体混合物と任意に予備シード粒子が混合される。予備シード粒子は、水性媒体に予め添加してもよく、単量体混合物と水性媒体との混合液(乳化液)に添加してもよい。混合は、例えば、単量体混合物を、水性媒体に添加し、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により分散させることにより行うことができる。
【0021】
水性媒体としては、特に限定されず、水、又は水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体は、上記単量体混合物100重量部に対して、100〜1000重量部の範囲で使用することが好ましく、200〜500重量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0022】
なお、シード粒子は、重合系から単離してもよく、単離せずにそのまま重合体粒子製造に使用してもよい。
また、一般式(1)の単量体は、予備シード粒子や後述の重合体粒子を製造する際に用いられてもよい。
【0023】
(重合体粒子の製造方法)
重合体粒子は、上記工程により得られたシード粒子1重量部に対して、疎水性単量体を5重量%以上含む単量体混合物を80〜350重量部吸収させて重合させることにより得られる。本発明におけるシード重合法は、特に限定されず、公知のシード重合法を参考に行うことができる。
(1)単量体混合物
単量体混合物は、少なくとも疎水性単量体を5重量%以上含む。なお、ここで疎水性とは、25℃における水に対する溶解度が1g/L以下であることを意味する。
【0024】
疎水性単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン等の単官能スチレン類、ジビニルベンゼン等の多官能スチレン類、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0025】
単量体混合物は、疎水性単量体のみからなっていてもよいが、25℃における水に対する溶解度が1g/Lより大きい他の単量体を含んでいてもよい。他の単量体は、全単量体中95重量%以下の量使用される。
【0026】
他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ジエチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類を用いることができる。また、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体をアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル類と混合して用いることもできる。これらの単量体はそれら1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
上記の中でも好ましい他の単量体は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルである。
【0027】
(2)シード重合に使用される他の部材
シード重合は、通常水性媒体中で行われる。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
水性媒体には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系のもののいずれをも用いることができる。
【0028】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0030】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の内、重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して0.0001〜1重量部とできる。
【0031】
重合には重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、単量体混合物100重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0032】
また、上記重合工程において水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤が用いられてもよい。
また、分散安定剤を水性媒体に添加してもよい。分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子が挙げられる。分散安定剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して、0.1〜20重量部とできる。
【0033】
(3)重合条件
疎水性単量体を5重量%以上含む単量体混合物を、シード粒子1重量部に対し80〜350重量部吸収させて重合させる。シード粒子に吸収される単量体混合物が80重量部未満では、シード粒子の割合が多くなるため生産性が悪くなる場合がある。一方、350重量部を超えると、単量体のシード粒子への吸収が不十分となり、単分散性が低くなることがある。より好ましい吸収量は150〜300重量部である。
重合温度及び重合時間は、単量体、重合開始剤の種類に応じて適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、60〜90℃がより好ましい。
重合温度が、60〜90℃のとき、重合時間は、1〜20時間とできる。重合は、窒素雰囲気のような重合に対して不活性な不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0034】
重合完了後、重合体粒子は、必要に応じて遠心分離されて水性媒体が除去され、水及び/又は溶剤で洗浄された後、乾燥、単離される。シード重合により得られる重合体粒子の水性媒体からの単離方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法又は凍結乾燥法が挙げられる。
【0035】
(重合体粒子)
本発明の方法によれば、単量体混合物由来の小粒子や粗大粒子の生成が抑制され、生産性よく単分散性が良好な重合体粒子が得られる。
この方法により得られる重合体粒子は、その平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で20%以下の粒度分布を有し、また、変動係数(CV値)が15%以下となる。
【0036】
また、本発明により得られる重合体粒子の粒子径は、シード粒子の粒子径、重合性単量体とシード粒子の混合割合によって自由に設計可能である。本発明の方法は、粒子径0.3〜20μm、CV値15%以下の単分散性重合体粒子の製造に好適である。なお、平均粒子径及び変動係数(CV値)の測定方法については、実施例の欄で説明する。
【0037】
本発明により得られた重合体粒子は、光拡散剤として使用できる。また、光拡散剤以外に、LCDスペーサー・銀塩フィルム用表面改質剤・磁気テープ用フィルム用改質剤・感熱紙走行安定剤等の電子工業分野、レオロジーコントロール剤・艶消し剤等の塗料・インク・接着剤等の化学分野、抗原抗体反応検査用粒子等の医療分野、滑り剤、体質顔料等の化粧品分野、不飽和等ポリエステル等の樹脂の低収縮化剤、紙、歯科材料、アンチブロッキング剤、マット化剤、樹脂改質剤等の一般工業分野等へ使用可能である。
【0038】
(光学シートの製造)
本発明により得られた重合体粒子を用いた光学シートの製造方法の一例を以下に述べるが、この方法のみに限定されるものではない。
【0039】
シード重合で得られた重合体粒子をバインダー樹脂及び溶剤とともに混合・攪拌して光学シート用樹脂組成物を調整する。
【0040】
バインダー樹脂としては、透明性、粒子分散性、耐光性、耐湿性及び耐熱性等の要求される特性に応じて、当該分野において使用されるものであれば特に限定されるものではない。バインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、メラミン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル系樹脂等の変性シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、熱可塑性でもよいし、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。これらのバインダー樹脂のうち、透明性に優れる(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0041】
また、上記の他に合成ゴムや天然ゴム等の有機系バインダー樹脂や、無機系バインダー樹脂等を用いることもできる。有機系バインダー樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。無機系バインダー樹脂としては、シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド及びそれらの(加水分解)縮合物ならびにリン酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0042】
このようなバインダー樹脂としては、光学シート用樹脂組成物の耐久性を向上させる観点から、架橋反応により架橋構造を形成できる硬化性樹脂が好ましい。バインダー樹脂は、種々の硬化条件で硬化させることができる。硬化のタイプとしては、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線又は電子線硬化型等を採用できる。
【0043】
光学シート用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、含有することによって、後述する基材フィルムへの塗工が容易になるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤及びジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0044】
また、光学シート用樹脂組成物は、硬化剤、架橋剤、硬化触媒等の架橋剤成分を含有してもよい。光学シート用樹脂組成物に架橋剤成分を含有させることにより、バインダー樹脂中の重合体を架橋剤成分によって架橋できる。架橋剤成分の使用量、添加及び分散方法等については特に限定されない。
【0045】
更に、光学シート用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、顔料、染料、可塑剤、重合安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いられても、また2種以上が併用されてもよい。
【0046】
光学シートは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、前述の光学シート用樹脂組成物の層を塗布等の手段により形成することにより得ることができる。塗布方法としては、ロールコート法、スプレーコーティング法等各種の方法により行われるが特に限定されるものではない。
【0047】
基材フィルムの材質としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。基材フィルムの厚さは、5〜300μmの範囲が好ましい。5μmより薄い場合、塗工、印刷、二次加工時の取り扱いが困難となり、作業性が低下することがある。一方、300μmより厚い場合は、基材そのものの可視光透過率が低下し、光学シートの輝度を低下させてしまうことがある。基材フィルムの表面のうち少なくとも一方の面には、光学シート用樹脂組成物の層との密着性を向上させるため、易接着処理剤を塗布する、あるいはコロナ処理を施す等、易接着処理が施されていればより好ましい。
【0048】
上述の塗布方式による光学シートの製造方法の他に、基材樹脂と重合体粒子の混合物を押出機とTダイ等を用いて押出シート化する押出法によって光学シートを製造してもよい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
先ず、実施例及び比較例中の測定方法及び計算方法について説明する。
(シード粒子の平均粒子径の測定)
シード粒子の平均粒子径は、ベックマンコールター社製のLS230型により測定される。具体的にはシード粒子0.1gと0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mを投入し、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXER MT−31で2秒間混合する。この後、試験管を市販の超音波洗浄器であるヴェルボクリーア社製ULTRASONIC CLEARNER VS−150を用いて10分間分散させる。分散させたものをベックマンコールター社製のLS230型にて超音波を照射しながら測定する。そのときの光学モデルは、作成した粒子の屈折率にあわせて測定される。
【0051】
(平均粒子径と変動係数の測定)
平均粒子径の測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
具体的には、重合体粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けのISOTON II(ベックマンコールター社:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にコールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製:測定装置)本体にアパチャーサイズ50μm、Currentを800、Gainを4、Polarityを+と入力してmanualで測定を行う。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、樹脂粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。体積加重の平均値(体積%モードの算術平均粒子径:体積メジアン径)を重合体粒子の平均粒子径(x)として算出する。
変動係数(Cv値)とは、標準偏差(σ)及び上記平均粒子径(x)から以下の式により算出された値である。
Cv値(%)=(σ/x)×100
【0052】
(ゲル分率の測定)
トルエン100重量部に対し、重合体粒子を3重量部分散させた後、遠心分離(10000rpmで5分間)し、上澄み液を除去し乾燥させた不溶分の重量を測定する。この不溶分の重量を、トルエンに分散させる前の重合体粒子重量で割ることで、ゲル分率を求める。
【0053】
(水分増加量の測定(耐水性の評価))
高温高湿環境下での水分変化量について、次の方法で測定する。
温度20℃、湿度50%で24時間放置された重合体粒子10gを、温度80℃、湿度90%のオーブン(恒温恒湿槽)に24時間入れ、オーブンに入れる前の重合体粒子との水分量の差を測定する。
なお、重合体粒子に含まれる水分量は、次の方法により測定する。
カールフィッシャー法を利用した電量滴定式水分測定装置を用いてI2+SO2+2H2O→2HI+H2SO4の反応をさせてサンプルの水分の電気分解に要した電気量(クーロン)を積算させることにより水分を測定する。まずサンプルを入れないでブランクを測定し、次いでサンプル0.3gを投入して、水分を自動計算させる。
水分増加量(%)=オーブンに入れ24時間経過後の重合体粒子の水分量−オーブンに入れる前の重合体粒子の水分量
【0054】
(塗布ムラの評価)
重合体粒子100重量部添加に対して、アクリル系バインダー(商品名:三菱レイヨン社製:ダイヤナールLR−102)140重量部を混合した分散溶液に、トルエンとメチルエチルケトンを1:1で混合した溶液を260重量部添加する。これを遠心攪拌機により3分間攪拌する。得られた溶液を3時間放置した後、再び遠心攪拌機により3分間攪拌する。次いで、得られた溶液をPETフィルム上に100μmコーターを用いて塗布する。得られたフィルムを70℃に保った乾燥機にて1時間乾燥することで光拡散フィルムを得る。
得られた光拡散フィルムのムラの外観評価を行い、以下の基準で評価する。
◎:目視で感知されるムラは皆無である、極めて優れた外観
○:緩やかなムラが僅かながら確認される程度の、優れた外観
△:多少、所々にムラが確認される
×:全面に細かいムラがはっきりと確認される極めて悪い外観
【0055】
(実施例1)
(1−1)1段目のシード粒子の製造
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、イオン交換水1300g、メタクリル酸メチル(MMA)320gに分子量調整剤としての1−オクタンチオール3gを溶解させたものを投入して、攪拌しながら窒素雰囲気下で70℃に昇温した。重合開始剤としての過硫酸アンモニウム1.6gをイオン交換水300gに溶解させたものを続けて投入して、70℃で12時間攪拌し、重合反応を行った。この重合反応により、平均粒子径0.5μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子1という)を含有する分散液が得られた。
【0056】
(1−2)2段目のシード粒子の製造
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、イオン交換水1300g、メタクリル酸メチル304g及びポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー50PEP−300:日本油脂社製、mは約3.5、nは約2.5)16gに分子量調整剤としての1−オクタンチオール3gを溶解させたものを投入した。更に、シード粒子1の分散液160g加え、これを攪拌しながら窒素雰囲気下で70℃に昇温した。重合開始剤としての過硫酸アンモニウム1.6gをイオン交換水300gに溶解させたものを続けて投入して、70℃で12時間攪拌し、重合反応を行った。この重合反応により、平均粒子径が0.9μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子2という)を含有する分散液が得られた。
【0057】
(1−3)重合体粒子の製造
メタクリル酸メチル40g、スチレン520g、エチレングリコールジメタクリレート240g からなるビニル系単量体に、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート8gを溶解させた単量体混合物を得た。この単量体混合物と界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム6.4g(臨界ミセル濃度の6.4倍)が含まれたイオン交換水800gとを混合して、混合液を得た。得られた混合液を、T.KホモミキサーMark2.5型(特殊機化工業社製)に入れて、9000rpmで10分間処理して乳化液を得た。この乳化液にシード粒子2の分散液51gを加え、30℃で4時間攪拌した。攪拌後の分散液を光学顕微鏡で観察したところ、乳化液中のモノマーは完全に種粒子に吸収されていることが認められた。この攪拌後の分散液に、88%部分けん化ポリビニルアルコール4%水溶液2400g及び亜硝酸ナトリウム0.64gを加えた。その後、分散液中の単量体を70℃で3時間重合させた。次いで、105℃で2.5時間攪拌して、有機過酸化物を分解させた。その後、濾過により固形分を得た。固形分を取り出し、真空乾燥機により60℃で12時間乾燥を行った結果、重合体粒子を得た。
【0058】
(1−4)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径5.8μm、CV値10.1%、高温高湿下での水分変化が0.05%、ゲル分率99.3%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で19.8%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの塗工ムラは皆無(◎)であった。
【0059】
(実施例2)
(2−1)1段目のシード粒子の製造
50PEP300を3.2g、MMAを316.8gにしたことを除き、実施例1(1段目のシード粒子の製造)と同様に行い、平均粒子径が0.49μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子3という)を含有する分散液が得られた。
【0060】
(2−2)重合体粒子の製造
スチレン480g、エチレングリコールジメタクリレート320g からなるビニル系単量体に、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート8gを溶解させた単量体混合物を得た。この単量体混合物と界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム6.4g(臨界ミセル濃度の6.4倍)が含まれたイオン交換水800gとを混合して、混合液を得た。得られた混合液を、T.KホモミキサーMark2.5型(特殊機化工業社製)に入れて、9000rpmで10分間処理して乳化液を得た。この乳化液にシード粒子3の分散液18gを加え、30℃で4時間攪拌した。攪拌後の分散液を光学顕微鏡で観察したところ、乳化液中のモノマーは完全に種粒子に吸収されていることが認められた。この攪拌後の分散液に、88%部分けん化ポリビニルアルコール4%水溶液2400g及び亜硝酸ナトリウム0.64gを加えた。その後、分散液中の単量体を70℃で3時間重合させた。次いで、105℃で2.5時間攪拌して、有機過酸化物を分解させた。その後、濾過により固形分を得た。固形分を取り出し、真空乾燥機により60℃で12時間乾燥を行った結果、重合体粒子を得た。
【0061】
(2−3)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径2.9μm、CV値13.3%、高温高湿下での水分変化が0%、ゲル分率99.8%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で18.6%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの塗工ムラは皆無(◎)であった。
【0062】
(実施例3)
(3−1)1段目のシード粒子の製造
実施例1(1段目のシード粒子の製造)と同じである。
(3−2)2段目のシード粒子の製造
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー50PEP−300:日本油脂社製、mは約3.5、nは約2.5)に代えてポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー70PEP−350:日本油脂社製、mは約5、nは約2)を使用したことを除き、実施例1(2段目のシード粒子の製造)と同様の操作により平均粒子径が0.9μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子4という)を含有する分散液が得られた。
【0063】
(3−3)重合体粒子の製造
シード粒子2に代えてシード粒子4を用いたことを除き、実施例1(重合体粒子の製造)と同様の操作により重合体粒子を得た。
(3−4)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径5.8μm、CV値11.2%、高温高湿下での水分変化が0.02%、ゲル分率99.7%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で19.3%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの塗工ムラは皆無(◎)であった。
【0064】
(実施例4)
(4−1)1段目のシード粒子の製造
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、イオン交換水1300g、メタクリル酸メチル(MMA)313.6g、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー50PEP−300:日本油脂社製、mは約3.5、nは約2.5)6.4gに分子量調整剤としての1−オクタンチオール3gを溶解させたものを投入して、攪拌しながら窒素雰囲気下で70℃に昇温した。重合開始剤としての過硫酸アンモニウム1.6gをイオン交換水300gに溶解させたものを続けて投入して、70℃で12時間攪拌し、重合反応を行った。この重合反応により、平均粒子径0.5μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子5という)を含有する分散液が得られた。
【0065】
(4−2)重合体粒子の製造
スチレン600g、エチレングリコールジメタクリレート400g からなるビニル系単量体に、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサネート10gを溶解させた単量体混合物を得た。この単量体混合物と界面活性剤としてのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム6.4g(臨界ミセル濃度の6.4倍)が含まれたイオン交換水1000gとを混合して、混合液を得た。得られた混合液を、T.KホモミキサーMark2.5型(特殊機化工業社製)に入れて、9000rpmで10分間処理して乳化液を得た。この乳化液にシード粒子5の分散液23gを加え、30℃で4時間攪拌した。攪拌後の分散液を光学顕微鏡で観察したところ、乳化液中のモノマーは完全に種粒子に吸収されていることが認められた。この攪拌後の分散液に、88%部分けん化ポリビニルアルコール4%水溶液2000g及び亜硝酸ナトリウム0.6gを加えた。その後、分散液中の単量体を70℃で3時間重合させた。次いで、105℃で2.5時間攪拌して、有機過酸化物を分解させた。その後、濾過により固形分を得た。固形分を取り出し、真空乾燥機により60℃で12時間乾燥を行った結果、重合体粒子を得た。
【0066】
(4−3)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径2.9μm、CV値12.4%、高温高湿下での水分変化が0.01%、ゲル分率99.9%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で17.5%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの塗工ムラは皆無(◎)であった。
【0067】
(比較例1)
(5−1)1段目のシード粒子の製造
実施例1(1段目のシード粒子の製造)と同じである。
(5−2)2段目のシード粒子の製造
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレートを使用せずに、メタクリル酸メチルを320g使用したことを除き、実施例1(2段目のシード粒子の製造)と同様の操作により平均粒子径が1.0μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子6という)を含有する分散液が得られた。
【0068】
(5−3)重合体粒子の製造
シード粒子2に代えてシード粒子6を用いたことを除き、実施例1(重合体粒子(3段目の粒子)の製造)と同様の操作により重合体粒子を得た。
(5−4)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径5.9μm、CV値13.2%、高温高湿下での水分変化が0.03%、ゲル分率99.3%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で49.9%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの一部に塗工ムラが確認された(△)。
【0069】
(比較例2)
(6−1)1段目のシード粒子の製造
実施例1(1段目のシード粒子の製造)と同じである。
(6−2)2段目のシード粒子の製造
比較例1(2段目のシード粒子の製造)と同じである。
(6−3)重合体粒子の製造
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを12g(臨界ミセル濃度の12倍)使用したことを除き、比較例1(重合体粒子(3段目の粒子)の製造)と同様の操作により重合体粒子を得た。
(6−4)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径6.0μm、CV値9.1%、高温高湿下での水分変化が0.12%、ゲル分率98.6%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で22.8%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの一部に欠点のようなものが確認された(△)。
【0070】
(比較例3)
(7−1)1段目のシード粒子の製造
実施例1(1段目のシード粒子の製造)と同じである。
(7−2)2段目のシード粒子の製造
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレートに替えてヒドロキシエチルメタクリレートを使用したことを除き、実施例1(2段目のシード粒子の製造)と同様の操作により平均粒子径が0.9μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子7という)を含有する分散液が得られた。
(7−3)重合体粒子の製造
シード粒子2に代えてシード粒子7を用いたことを除き、実施例1(重合体粒子(3段目の粒子)の製造)と同様の操作により重合体粒子を得た。
(7−4)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径5.8μm、CV値14.2%、高温高湿下での水分変化が0.03%、ゲル分率99.3%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で39.5%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの一部に塗工ムラが確認された(△)。
【0071】
(比較例4)
(8−1)1段目のシード粒子の製造
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレートを使用しないことを除き、実施例4(1段目のシード粒子の製造)と同様の操作を行い平均粒子径0.5μmのポリメチルメタクリレート粒子(以下、シード粒子8という)を含有する分散液が得られた。
(8−2)重合体粒子の製造
シード粒子5に替えてシード粒子8を使用したことを除き、実施例4(重合体粒子(2段目の粒子)の製造)と同様の操作により重合体粒子を得た。
(8−3)重合体粒子の評価
得られた重合体粒子は、平均粒子径3.14μm、CV値28.2%、高温高湿下での水分変化が0.02%、ゲル分率99.7%の単分散粒子であった。また、平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で20.1%であった。なお、得られた重合体粒子を用いてフィルムを作成したところ、フィルムの一部に塗工ムラが確認された(△)。
実施例1〜4及び比較例1〜4の原料の使用量及び結果について、表1にまとめて示す。
【0072】
【表1】

50PEP−300:ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー50PEP−300:日本油脂社製、mは約3.5、nは約2.5)
70PEP−350:ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(ブレンマー70PEP−350:日本油脂社製、mは約5、nは約2)
MMA:メタクリル酸メチル
St:スチレン
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
【0073】
実施例及び比較例の結果から、本発明による一般式(1)で表される単量体であるポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート1〜20重量部と般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られたシード粒子を用いた重合体粒子は、非常に単分散性に優れ、この重合体粒子を用いた光拡散フィルムには塗工ムラが発生しないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られたシード粒子1重量部に対し、疎水性単量体を5重量%以上含む単量体混合物を80〜350重量部吸収させて重合させる工程を含む重合体粒子の製造方法であって、前記重合体粒子は、その平均粒子径の80%以下の小粒子の割合が個数割合で20%以下の粒度分布を有し、変動係数(CV値)が15%以下であることを特徴とする重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体粒子の製造方法に用いられる下記一般式(1)
【化2】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることにより得られた重合体を含むことを特徴とするシード粒子。
【請求項3】
下記一般式(1)
【化3】

(式中、R1はH又はCH3、mは1〜50、nは1〜50を意味する)
で表される単量体1〜20重量部と前記一般式(1)以外のビニル系単量体100重量部とを含む単量体混合物を重合させることを特徴とするシード粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−62388(P2012−62388A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206831(P2010−206831)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】