説明

重合性モノマーの滅菌

【課題】本発明は、とりわけ、重合性モノマーの滅菌のための方法に関する。
【解決手段】上記方法は、少なくとも当該重合性モノマー、化合物(a)および化合物(b)を含有する混合物(I)であって、ここで化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択される混合物(I)を提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの滅菌のための方法、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーを含有する混合物、この種の混合物を含有する骨セメントを製造するためのキット、およびこの種の混合物を含有する骨セメントペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリ(メタクリル酸メチル)骨セメント(PMMA骨セメント)は、数十年前から知られており、それは、Charnley卿の基礎を作り上げた研究に基づく(非特許文献1)。
【0003】
PMMA骨セメントの基本構造は、かつてと同じままである。PMMA骨セメントは、液体モノマー成分および粉末成分からなる。このモノマー成分は、一般に、(i)モノマー、メタクリル酸メチル、および(ii)モノマーの中に溶解された活性化剤(例えばN,N−ジメチル−p−トルイジン)を含有する。粉末成分は、(i)メタクリル酸メチルおよびコモノマー、例えばスチレン、アクリル酸メチルまたは類似のモノマーに基づいて、重合、好ましくは懸濁液重合、によって製造される1以上のポリマー、(ii)放射線不透過性物質、ならびに(iii)開始剤(例えばジベンゾイルペルオキシド)を含む。この粉末成分およびモノマー成分を混合すると、粉末成分の中のポリマーがメタクリル酸メチルの中で膨潤し、これによって、可塑的に成形することができる生地(dough)が生成される。同時に、活性化剤、N,N−ジメチル−p−トルイジン、がジベンゾイルペルオキシドと反応し、プロセスの中で分解してラジカルを形成する。こうして形成されたラジカルは、メタクリル酸メチルのラジカル重合の引き金を引く。メタクリル酸メチルの重合が進むにつれて、このセメント生地の粘度は、セメント生地が固化し、従って硬化するまで上昇する。
【0004】
特許文献1は、従来の粉末−液体ポリメタクリル酸メチル骨セメントの代替物としての、2つのペーストを含む骨セメントを製造するためのキットを提案する。これらのペーストは、各々、重合性モノマー、例えば、ラジカル重合用メタクリレートモノマーなど、このメタクリレートモノマーに可溶性であるポリマー、およびこのメタクリレートモノマーに不溶性である微粒子ポリマーを含有する。加えて、これらのペーストのうちの1つはラジカル重合開始剤を含有し、他方のペーストは重合活性化剤を含む。選択された組成物の結果として、これらのペーストから製造される骨セメントは、骨セメントが十分に硬化するまで出血からの圧力に耐えるための十分な高い粘度および凝集力を持つ。これらの2つのペーストが混合されるとき、重合開始剤は、上記促進剤と反応して、当該メタクリレートモノマーのラジカル重合を開始するラジカルを形成する。重合の進行に起因して、このペーストは、メタクリレートモノマーが消費されるにつれて、硬化する。骨セメントを製造するためのキットの中に含有されるペーストは、非水系である。従って、このペーストは、せいぜい痕跡量の水しか含有しない。
【0005】
PMMA骨セメントは、クラスIIbの医薬製品、または抗生物質が加えられればクラスIIIの医薬製品である。患者の安全性を確保するために、PMMA骨セメントは、二重に滅菌されたパッケージの中で滅菌された状態でのみ、市販されてもよい。液体モノマー成分および粉末成分からなる従来のPMMA骨セメントでは、粉末成分は、粉末成分をエチレンオキシドにさらすことにより滅菌される。粉末成分のγ照射による滅菌も、慣用的である。
【0006】
モノマー成分を製造するためによく使用されるが、重合性モノマー、メタクリル酸メチル、は、その親油性、従って変性誘発特性のため、ほとんどの栄養性の微生物生命形にとって殺生物性である。それゆえ、これらの微生物は、無水メタクリル酸メチルの中では存在することができない。しかしながら、栄養型とは別に、微生物は、内生胞子などの生殖形態も有する。微生物のこれらの生殖性の生存形は、特にBacillus(バチルス)およびClostridium(クロストリジウム)属のグラム陽性菌によって、好ましくない生存条件のあいだ存続する手段として形成される。その休止状態では、内生胞子は、活性な代謝を有さず、化学物質の作用および他の環境的効果から胞子のコアを広く保護する多層状胞子カプセルを持つ。これにより、胞子は、熱および化学物質の作用に対して極めて抵抗性が高くなる(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。その高い抵抗性に起因して、内生胞子は、滅菌プロセスの有効性の検証およびコントロールについての生物指標として使用される。これは、内生胞子の不活化は、すべての栄養性の微生物生命形が死滅していることを示すという仮定に基づく。グラム陽性菌の内生胞子は、国際的な耐性クラスIIIに分類される。耐性クラスIには、非胞子形成細菌および胞子形成細菌の栄養型が含まれ、耐性クラスIIには、105℃の水蒸気の流れの中で数分間以内で死滅させられた胞子が含まれる。DAB 2008(ドイツ薬局方(Deutsches Arzneimittelbuch))によれば、耐性クラスI〜IIIのすべての微生物は、死滅させられるか、または不可逆的に不活化される必要がある。
【0007】
従って、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの効率的な滅菌のための方法を手にするという根本的なニーズがある。
【0008】
重合性モノマーの滅菌のための方法は、医薬製品の分野で公知である。
【0009】
医薬製品の滅菌のために物理的滅菌方法を使用することが一般的である。これに関して、特に、γ照射、電子衝撃、UV照射、加熱滅菌、および加圧された水蒸気を用いる高圧蒸気滅菌が言及される必要がある。しかしながら、これらの滅菌方法は、大掛かりな設備の使用およびその方法によって必要とされるプロセス資源のため、もともと短所を有する。しかし、この物理的滅菌方法を用いる重合性モノマーの滅菌は、他の理由からも、適用することはできない:当該材料を熱、γ照射またはX線照射にさらすことは、当該重合性モノマーのラジカル重合を開始すると考えられ、これは、骨セメントの、不用意な時期尚早の硬化を生じることになろう。水蒸気滅菌は、対照的に、重合性モノマーの加水分解を生じると考えられ、これは、重合性モノマーの重合を妨げることになろう。
【0010】
重合性モノマーの滅菌は、滅菌濾過およびその後の無菌パッキングを通して成し遂げられることが多い。しかしながら、重合性モノマーの無菌製造は、非常に費用がかかる。別の関連する問題は、ウイルスは、滅菌濾過を通しては除去できないということである。さらに、滅菌濾過を用いた、骨セメントを製造するためのペーストの滅菌は、当該ペーストの高粘度ならびにこのペーストの中に含有される放射線不透過性物質および充填剤のため、実行することができない。
【0011】
上記物理的方法とは別に、医薬製品の滅菌のための化学的化合物を使用することが慣用的である。これらとしては、例えば、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルジアルデヒド、o−フタルジアルデヒド、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、過酢酸、および過酸化水素が挙げられる。しかしながら、上記化合物の使用には、著しい不都合が伴う。例えば、エチレンオキシドは、水分の存在下でのみ殺胞子性であり、そのため、水の不存在下でエチレンオキシドを使用しても、所望の滅菌効果を生じない。さらに、骨セメントを製造するためのペーストは、通常、閉じられた拡散防止されているフィルムバッグまたは閉じられたプラスチックのカートリッジの中で入手可能である。しかし、エチレンオキシドは、このコンテナを通り抜けることはできず、そのため、この包装されたペーストは、この手段によっては滅菌することができない。対照的に、アルデヒドは、通常、それらの作用機序に起因して、水溶液として、またはホルムアルデヒドの場合にはガス状で施用される。過酢酸および過酸化水素は、水溶液の形態でも使用される強い酸化剤である。しかしながら、この理由のため、これらの化合物は、水を含有してはならないか、またはごく少量の量の水しか含有してはならない混合物の滅菌には好適ではない。塩素系化合物は、通常は、非常に有効な殺菌剤である。しかし、塩素系化合物は、塩素を含有する二次生成物が滅菌後の医薬製品の中に残留するという点で、短所を有する。
【0012】
例えば、ワクチンなどのタンパク質水溶液が、酸化性殺菌剤および種々の物理的滅菌方法、例えばγ線を用いた滅菌の効果に非常に敏感であるということが、製薬業界から知られている。この理由のために、タンパク質水溶液は、滅菌の目的で少量のアシル化剤、β−プロピオラクトンが水溶液に加えられていることが多い。β−プロピオラクトンは、ウイルスおよび胞子の両方の不活化、特に内生胞子の不活化を成し遂げるために使用することができる。これらの効果は、DNA/RNAまたはタンパク質のアミノ基のアシル化に起因して起こる可能性が高い。溶媒として存在する水は、β−プロピオラクトンをゆっくり分解することができ、そのため、ほんの短時間ののちに、タンパク質水溶液の中には活性なβ−プロピオラクトンはもはや存在しない。アシル化剤、例えばβ−プロピオラクトンによるタンパク質水溶液の滅菌の原理は、胞子が少量の水系媒体の中で膨潤することができるという事実に基づく。この膨潤により、胞子の二重の壁が、アシル化剤にとって透過できるものになり、そのため、このアシル化剤は、胞子の中へと浸透し、胞子の中で効果を出すことができる。
【0013】
しかしながら、胞子の膨潤は、重合性モノマーおよび、あるとしても、少量の水しか含有しない混合物の中では実現可能ではない。それゆえ、膨潤は、アシル化剤を胞子の中へと浸透させる準備のためには使用することができない。従って、例えばβ−プロピオラクトンなどのアシル化剤による当該混合物の滅菌は、実現可能ではないように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許第102007050762(B3)号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Charnley,J.、「Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur」、J.Bone Joint Surg.、1960年、第42巻、28−30頁
【非特許文献2】Borick,P.M.、「Chemical sterilizers」、Adv.Appl.Microbiol.、1968年、第10巻、291−312頁
【非特許文献3】Gould,G.W.、「Recent advances in the understanding of resistance and dormancy in bacterial spores」、J.Appl.Bacteriol.、1977年、第42巻、297−309頁
【非特許文献4】Gould,G.W.、「Mechanisms of resistance and dormancy」、173−209頁、Hurst,A.およびGould,G.W.(編)、「The bacterial spore」、第2巻中、Academic Press,Inc.、New York、1983年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それゆえ、本発明は、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの滅菌のための効果的な方法を提供することに基づく。この方法は、特に、内生胞子を含まない混合物を生成する必要がある。好ましくは、当該方法は、水を含有しないか、または混合物の総重量に対して2.0重量%以下の水、より好ましくは1.0重量%以下の水、さらにより好ましくは0.5重量%以下の水などのごく少量の水しか含有しない混合物の中での、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの滅菌に好適なものであるべきである。さらに、滅菌が完結した後に、この混合物が、有毒または有害な残渣、例えば、塩素含有残渣など、を含有しないことが好ましい。さらに、先行技術から公知の他の短所も克服することが好ましい。
【0017】
本発明の根底にあるさらなる目的としては、本発明に係る方法を実施している間に得ることができる混合物(II)の、本発明に係る方法に係る滅菌のために使用することができる混合物(I)の提供、本発明に係る方法を実施した後に得ることができる骨セメントを製造するためのキットの提供、および本発明に係る方法を実施した後に得ることができる骨セメントペーストの提供が挙げられる。
【0018】
上記目的は、独立請求項の主題によって満足される。
【0019】
従って、本発明は、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの滅菌のための方法であって、少なくとも当該重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマー、化合物(a)および化合物(b)を含有する混合物(I)が製造され、ここで、化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立にHを表し、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択される、方法を提供する。化合物(b)の割合は、好ましくは、当該混合物の総重量に対して2重量%以下である。
【0020】
本発明は、少なくとも1つの重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマー、化合物(a)および化合物(b)を含有する混合物(I)であって、ここで化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)、
【化2】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立にHを表し、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択され、ここで化合物(b)の割合は、混合物(I)の総重量に対して2重量%以下である混合物(I)をも提供する。
【0021】
本発明は、少なくとも1つの重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマー、および化合物(c)を含有する混合物(II)であって、化合物(c)は、アルコール、少なくとも3個の炭素原子を有するカルボン酸、およびエステルからなる群から選択され、化合物(a)および化合物(b)を反応させることを通して得ることができ、
ここで、化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)
【化3】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、H、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択される、混合物(II)をさらに提供する。
【0022】
さらに、本発明は、少なくとも1つのペーストAおよび1つのペーストBを含む骨セメントを製造するためのキットであって、ペーストAおよびペーストBのうちの少なくとも1つは、本願明細書に提示される記載に係る混合物IIを含有するキットを提供する。
【0023】
さらに、本発明は、本願明細書に提示される記載に係る混合物IIを含有する骨セメントペーストを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、一部は、混合物中の化合物(a)に係るアシル化剤を用いた、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの滅菌は、その混合物の中の水の割合が、その混合物の総重量に対して2重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%以下である場合でさえも、実現可能であるという驚くべき知見に基づく。当該化合物の中に含有される胞子は、上記少量の水では膨潤することはできないが、この混合物の中の重合性モノマーは、効果的に滅菌され、これは、驚くべきことであった。
【0025】
さらに、別の驚くべき知見は、化合物(a)も、化合物(a)および化合物(b)を反応させることにより得られる生成物も、当該重合性モノマーの重合を阻害しないということである。これは、例えば、骨セメントを製造するためのペーストの成分など、滅菌のための方法にかけられようとしている混合物の中にさらなる成分が含有されているときにも当てはまる。
【0026】
本発明は、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーの滅菌のための方法に関する。
【0027】
無菌性を特徴とする重合性モノマーが、本発明に係る方法において得られる。本発明の範囲では、無菌性は、生存する微生物を含まない状態を意味すると理解されるものとする。これに関して、EN 556−1:2001で与えられる対応する定義を参照されたい。
【0028】
少なくとも1つの重合性モノマー、特に少なくとも1つのラジカル重合用モノマーが、滅菌のための方法にかけられることになる。
【0029】
重合性モノマーは、好ましくは、少なくとも1つの重合可能なオレフィン性結合を含む化合物を意味すると理解されるものとする。
【0030】
より広義には、用語「重合性モノマー」は、末端メタクリレート基、アクリレート基、イタコネート基、マレイネート(マレエート、maleinate)基またはフマレート基を有するマクロマーをも意味すると理解されるものとする。このマクロモノマーは、液体または半液体であることができる。さらに、このマクロマーは、直鎖状または分枝状の化合物であることができる。
【0031】
本発明に従って使用される重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーは、好ましくは、1,000g/mol未満のモル質量を有する。これは、複数のモノマーの混合物の成分である複数の重合性モノマーであって、その複数のモノマーの混合物の複数の重合性モノマーのうちの少なくとも1つが1,000g/mol未満のモル質量を持つ明確な構造を有する、重合性モノマーをも含む。
【0032】
好ましい実施形態によれば、この重合性モノマーは、メタクリル酸エステル(好ましくは一官能性および多官能性のメタクリル酸エステル)、アクリル酸エステル(好ましくは一官能性および多官能性のアクリル酸エステル)、メタクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸エステル、イタコン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸、フマル酸エステル、ならびにフマル酸からなる群から選択される。このメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルは、好ましくは、それぞれメタクリル酸およびアクリル酸のアルキルエステルである。これに関して、このアルキルエステルのアルキル基は、好ましくは、1〜10個の炭素原子の鎖長、より好ましくは1〜4個の炭素原子の鎖長、さらにより好ましくは1〜2個の炭素原子の鎖長、特に好ましくは1個の炭素原子を有する。
【0033】
特に好ましい実施形態によれば、当該重合性モノマーは、メタクリル酸メチルエステル、メタクリルアミド、およびエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択される。
【0034】
混合物(I)は、この重合性モノマーの滅菌のために製造される。
【0035】
混合物(I)は、好ましくは、自己滅菌性である。好ましくは、滅菌が、何らかのさらなる成分の付加も、照射などの外的要因の影響も必要としない場合に、混合物は、自己滅菌性であると言われる。
【0036】
混合物(I)は、当該重合性モノマーとは別に、少なくとも1つの化合物(a)を含有する。
【0037】
好ましくは、化合物(a)はアシル化剤である。好ましくは、このアシル化剤は、DNA/RNAまたはタンパク質のアミノ基をアシル化することができる。
【0038】
それゆえ、化合物(a)は、微生物を死滅させ、そうして滅菌効果を有することができる。
【0039】
化合物(a)は、本願明細書に提示される記載に係る化合物(a1)、(a2)、および(a3)からなる群から選択される。
【0040】
化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)であることができる。
【化4】

【0041】
上記式において、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、H、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表すことができる。
【0042】
ここでは、化合物(a1)の立体化学はまったく限定されない。好ましくは、本発明の範囲は、一般式(I)によって表されるすべての異性体を、それらの正確な配置にかかわらず、化合物(I)として包含する。
【0043】
当該アルキル残基は、互いに独立に、置換または非置換のアルキル残基であることができる。置換アルキル残基の少なくとも1つの置換基は、好ましくは、ハロゲン残基、ニトロ残基、およびシアノ残基からなる群から選択される。
【0044】
当該アルキル残基は、互いに独立に、飽和または不飽和のアルキル残基であることができる。好ましくは、不飽和アルキル残基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む。
【0045】
当該アルキル残基は、互いに独立に、分枝状または非分枝状のアルキル残基であることができる。アルキル残基R1、R2、R3、およびR4が、非分枝状のアルキル残基であることが好ましい。
【0046】
互いに独立に、当該アルキル残基は、1〜4個の炭素原子の範囲の主鎖長、より好ましくは1〜2個の炭素原子、さらにより好ましくは1個の炭素原子の範囲の主鎖長を有する。
【0047】
フッ素残基、塩素残基、および臭素残基は、一般式(I)における好ましいハロゲン残基である。これらの残基は、各々、互いに独立に、残基R1、R2、R3、およびR4の1以上を表すことができる。
【0048】
好ましい実施形態によれば、残基R1、R2、R3、およびR4は、各々、Hを表す。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、残基R1はメチル残基を表し、残基R2、R3、およびR4は、Hを表す。
【0050】
別の好ましい実施形態によれば、残基R1、R2、およびR3はHを表し、R4はHを表し、メチル残基を表す。
【0051】
なお別の好ましい実施形態によれば、残基R1およびR3はHを表し、残基R2およびR4はメチル残基を表す。
【0052】
特に好ましい実施形態によれば、化合物(a1)はβ−プロピオラクトン(CAS番号57−57−8)である。
【0053】
化合物(a)は、化合物(a1)のうちのいずれかの二量体である化合物(a2)であることもできる。この二量体は、好ましくは一般式(II)によって表される。
【化5】

式中、残基R1、R2、およびR3は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0054】
化合物(a2)の立体化学はまったく限定されない。好ましくは、本発明の範囲は、化合物の正確な配置にかかわらず、化合物(a1)のすべての二量体の、特に、一般式(II)によって表されるすべての異性体の、化合物(a2)としての使用を包含する。
【0055】
特に好ましい実施形態によれば、残基R1、R2、およびR3は、各々、Hを表す。
【0056】
化合物(a)は、ジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)であることもできる。
【0057】
ジアルキルジカーボネートは、下記の一般式(III)によって表すことができる:
R5−O−CO−O−CO−O−R6
【0058】
残基R5およびR6は、互いに異なってもよいし、または同一であってもよい。好ましくは、残基R5およびR6は同一である。
【0059】
残基R5およびR6は、互いに独立に、飽和残基または不飽和残基であることができる。これに関して、不飽和残基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む。
【0060】
残基R5およびR6は、互いに独立に、分枝状のアルキル残基または非分枝状のアルキル残基であることができる。好ましくは、残基R5およびR6は非分枝状である。
【0061】
残基R5およびR6は、互いに独立に、置換アルキル残基または非置換アルキル残基であることができる。ハロゲン置換基、例えば、好ましくは塩素置換基、は、残基R5およびR6の置換基として想定できる。好ましくは、残基R5およびR6は非置換である。
【0062】
好ましい実施形態によれば、残基R5およびR6は、互いに独立に、1〜8個の炭素原子の範囲の主鎖長、より好ましくは1〜4個の炭素原子の範囲の主鎖長、さらにより好ましくは1〜2個の炭素原子、特に好ましくは1個の炭素原子を有する。
【0063】
特に好ましい実施形態によれば、化合物(a)はβ−プロピオラクトン(CAS番号57−57−8)である。
【0064】
好ましくは、化合物(a)の割合は、混合物(I)の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%、より好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%である。好ましくは、化合物(a)の割合は、混合物(I)の全体重量に対して、50重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらにより好ましくは2重量%以下、特に好ましくは0.4重量%以下である。化合物(a)の割合は、混合物(I)の総重量に対して、好ましくは、0.0001〜50の範囲、より好ましくは0.001〜5の範囲、さらにより好ましくは0.001〜2の範囲、特に好ましくは0.1〜0.4重量%の範囲である。
【0065】
当該重合性モノマーの滅菌のために製造されることになる混合物(I)は、化合物(b)も含有する。
【0066】
化合物(b)は、好ましくは、水およびアルコールからなる群から選択される。
【0067】
この水が、再蒸留水であることが好ましい。好ましくは、この水は発熱物質を含まない。
【0068】
上記アルコールの構造はまったく限定されない。
【0069】
好ましくは、当該アルコールは、1〜20個の炭素原子の主鎖長、より好ましくは1〜10個の炭素原子の主鎖長、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子の主鎖長を有する。
【0070】
当該アルコールは、飽和アルコールまたは不飽和アルコールであることができる。当該アルコールが不飽和である場合、そのアルコールは、好ましくは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する。
【0071】
さらに、当該アルコールは、置換または非置換であることができる。この置換アルコールの少なくとも1つの置換基は、好ましくは、ハロゲン置換基、ニトロ置換基、およびシアノ置換基からなる群から選択される。
【0072】
このアルコールは、モノアルコールまたは多価アルコールであることができる。好ましくは、当該アルコールはモノアルコールである。
【0073】
当該アルコールは、分枝状または非分枝状のアルコールであることができる。好ましくは、アルコールは非分枝状のアルコールである。
【0074】
当該アルコールは、好ましくは、第一級アルコールおよび第二級アルコールからなる群から選択される。
【0075】
当該アルコールは、好ましくは、一般式(IV)によって、下記に表される。
R7−OH
【0076】
当該残基は何ら限定されない。好ましくは、残基R7は、アルキル残基である。好ましくは、当該アルキル残基は、1〜20個の炭素原子の主鎖長、より好ましくは1〜10個の炭素原子の主鎖長、さらにより好ましくは1〜5個の炭素原子の主鎖長、特に好ましくは1〜2個の炭素原子の主鎖長、より特に好ましくは1個の炭素原子を有する。このアルキル残基は、飽和であることができるし、または不飽和であることができる。残基R7は、置換であることができるし、または非置換であることができる。想定できる置換基は、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、およびハロゲンである。残基R7は、分枝状であることができるし、または非分枝状であることができる。
【0077】
好ましい実施形態によれば、上記第一級アルコールは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、およびペンタエリスリトールからなる群から選択される。用語「第一級アルコール」は、好ましくは、アルコール性ヒドロキシル基を有する重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマー、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルなどを包含するものとする。
【0078】
別の好ましい実施形態によれば、上記第二級アルコールは、イソプロパノールおよびブタン−2−オールからなる群から選択される。
【0079】
特に好ましい実施形態によれば、当該アルコールは、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールからなる群から選択される。
【0080】
本発明の範囲は、当該重合性モノマーおよび化合物(b)が同じ化合物である場合をも包含する。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルは、滅菌性の重合性モノマーおよび化合物(b)の両方であることができる。
【0081】
好ましくは、化合物(b)の割合は、混合物(I)の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%、より好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%である。好ましくは、化合物(b)の割合は、混合物(I)の全体重量に対して2.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.4重量%以下である。化合物(b)の割合は、混合物(I)の総重量に対して、好ましくは、0.0001〜2.0重量%の範囲、より好ましくは0.001〜1.0重量%の範囲、さらにより好ましくは0.001〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜0.4重量%の範囲にある。
【0082】
好ましい実施形態によれば、混合物(I)の中に含有される化合物(a)の量、n、に対する、混合物(I)の中に含有される化合物(b)の量、n、の比は、不等式n/n>0.5、より好ましくは不等式n/n>0.8、さらにより好ましくは不等式n/n>1によって表される。
【0083】
当該重合性モノマー、化合物(a)および化合物(b)に加えて、混合物(I)は、適用できる場合、少なくとも1つのさらなる成分(d)を含有することができる。
【0084】
本発明の範囲は、例えば、混合物(I)が、当該重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマーに加えて化合物(a)および(b)を含有する医薬製品の一部であることを包含する。本発明の範囲は、特に、化合物(a)および(b)とは別に、骨セメントを製造するためのキットに含有される少なくとも1つの、しかし好ましくはすべての、成分を含有する混合物(I)に対して重合性モノマーの滅菌のための方法を実施することを包含し、ここで当該成分は、例えば、ペーストであることができる。従って、混合物(I)は、化合物(a)および化合物(b)とは別に、独国特許第102007052116号明細書、独国特許第102007050762号明細書または独国特許第102010005956号明細書に記載されているポリメタクリル酸メチル骨セメントの成分を含有する混合物であることもできる。さらに、混合物(I)は、化合物(a)および(b)とは別に、無機の骨セメントの成分または重合性歯科材料の成分を含有する混合物であることもできる。混合物(I)は、化合物(a)および化合物(b)とは別に、骨セメント(例えばポリメタクリル酸メチル骨セメント)を製造するためのキットの中に含有されるモノマー液体の成分を含有する混合物であることもできる。
【0085】
好ましくは、当該重合性モノマーに可溶性であるポリマー(d1)、当該重合性モノマーに不溶性であるポリマー(d2)、ラジカル重合開始剤(d3)、重合活性化剤(d4)、充填剤(d5)、着色料(d6)、医薬品(d7)、およびこれらの混合物からなる群から選択される物質が、さらなる成分(d)として想定できる。
【0086】
好ましい実施形態によれば、このさらなる成分(d)は、当該重合性モノマーに可溶性であるポリマー(d1)である。当該重合性モノマーに可溶性であるポリマー(d1)は、好ましくは、500,000g/mol未満の(重量による)平均モル質量を持つポリマーであり、より好ましくは、150,000g/mol未満の(重量による)平均モル質量を持つポリマーである。このモル質量の仕様は、粘度測定によって決定されるモル質量を指す。可溶性ポリマー(d1)は、架橋されていてもよいし、または非架橋でもよく、好ましくは非架橋である。可溶性ポリマー(d1)は、ホモポリマーであってもよいし、またはコポリマーであってもよい。好ましくは、可溶性ポリマー(d1)は、メタクリル酸エステルのポリマーである。特に好ましい実施形態によれば、可溶性ポリマー(d1)は、メタクリル酸メチルエステルのコポリマーである。別の特に好ましい実施形態によれば、可溶性ポリマー(d1)は、ポリ(メタクリル酸メチルエステル)(PMMA)、ポリ(メタクリル酸エチルエステル)(PMAE)、ポリ(メタクリル酸プロピルエステル)(PMAP)、ポリ(メタクリル酸イソプロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸メチル−co−アクリル酸メチル)、およびポリ(スチレン−co−メタクリル酸メチル)からなる群から選択される。ポリマー(d1)は、当該重合性モノマーに可溶性である。定義によれば、25℃の温度における当該重合性モノマーに対するポリマーの溶解度が、少なくとも25g/l、より好ましくは少なくとも50g/l、特に好ましくは少なくとも100g/lである場合、そのポリマーは、当該重合性モノマーに可溶性である。
【0087】
別の好ましい実施形態によれば、さらなる成分(d)は、当該重合性モノマーに不溶性であるポリマー(d2)である。好ましくは、不溶性のポリマー(d2)は微粒子である。特に好ましい実施形態によれば、不溶性のポリマー(d2)は、100nm〜500μmの範囲の平均粒径を有する。この平均粒径は、本願明細書では、粒子の少なくとも90パーセントに当てはまるサイズ範囲を意味すると理解されたい。不溶性のポリマー(d2)は、好ましくは、少なくとも150,000g/molの(重量による)平均モル質量、より好ましくは少なくとも500,000g/molの(重量による)平均モル質量を有する。このモル質量の仕様は、粘度測定によって決定されるモル質量を指す。不溶性のポリマー(d2)は、架橋されていてもよいし、または非架橋でもよく、好ましくは非架橋である。これに関して、架橋は、二官能性の化合物を通して行われる。この二官能性の化合物は、例えば、アルキレングリコールジメタクリレートからなる群から選択することができる。好都合な架橋剤は、例えば、エチレングリコールジメタクリレートである。不溶性のポリマー(d2)は、ホモポリマーであってもよいし、またはコポリマーであってもよい。好ましくは、不溶性のポリマー(d2)は、メタクリル酸エステルのポリマーである。好ましい実施形態によれば、不溶性のポリマー(d2)は、メタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーである。特に好ましい実施形態によれば、不溶性のポリマー(d2)は、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−co−メタクリレート)および架橋ポリ(メタクリル酸メチル)からなる群から選択される。不溶性のポリマー(d2)は当該重合性モノマーに不溶性である。定義によれば、25℃の温度における当該重合性モノマーに対するポリマーの溶解度が、50g/l未満である、好ましくは25g/l未満である、より好ましくは10g/l未満である、さらにより好ましくは5g/l未満である場合、そのポリマーは、当該重合性モノマーに不溶性である。
【0088】
なお別の好ましい実施形態によれば、さらなる成分(d)はラジカル重合開始剤(d3)である。
【0089】
なお別の好ましい実施形態によれば、さらなる成分(d)は、重合活性化剤(d4)である。この重合活性化剤は、ラジカル重合開始剤(d3)に加えてまたはラジカル重合開始剤(d3)の代わりに存在することができる。
【0090】
なお別の好ましい実施形態によれば、さらなる成分(d)は、充填剤(d5)である。好ましくは、充填剤(d5)は、無機充填剤、有機充填剤、ガラス、金属、および炭素からなる群から選択される。好ましくは、無機充填剤は、硫酸カルシウム(硫酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物または硫酸カルシウム0.5水和物など)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(α−リン酸三カルシウムまたはβ−リン酸三カルシウムなど)、ヒドロキシルアパタイト、硫酸バリウム、および二酸化ジルコニウムからなる群から選択される。有機充填剤は、好ましくは、非架橋ポリマー粒子、架橋ポリマー粒子、およびポリマー繊維からなる群から選択される。充填剤としてのこのガラスは、例えば、ガラス粉末の形態で、またはガラス繊維の形態で、存在することができる。上記金属は、好ましくは、タンタルまたはジルコニウムであることができる。
【0091】
なお別の好ましい実施形態によれば、さらなる成分(d)は着色料(d6)である。
【0092】
なお別の好ましい実施形態によれば、さらなる成分(d)は、医薬品(d7)である。好ましくは、この医薬品(d7)は、抗生物質、抗感染薬、防腐剤、消炎薬、および成長因子からなる群から選択される。
【0093】
混合物(I)は、室温および1.013barの圧力で液体または半液体であることができる。
【0094】
好ましい実施形態によれば、少なくとも当該重合性モノマー、化合物(a)および化合物(b)を含有する混合物(I)は、梱包手段の中に存在する。好ましくは、この梱包手段は、閉じられている。好ましくは、この梱包手段は、拡散防止されている(diffusion−tight)。この梱包手段は、例えば、カートリッジであることができる。この梱包手段が、カートリッジの中に収容されることも可能である。このカートリッジは、骨セメントペーストの付与装置の一部であることができる。この付与装置は、好ましくは、混合装置を含むことができる。この混合装置は、骨セメントを製造するためのキット個々の成分を混合して骨セメントペーストを生成するのに好適なものであることができる。
【0095】
少なくとも20分間、より好ましくは少なくとも30分間という当該重合性モノマーに対する化合物(a)の作用時間(time of action)が、重合性モノマーの滅菌のための本発明に係る方法にとって有利であることが明らかになった。
【0096】
さらに、化合物(a)が本発明に係る方法において当該重合性モノマーに作用する際の重合性モノマーの滅菌のための温度が、当該重合性モノマーの融解温度以上であることが好ましい。
【0097】
化合物(a)と反応性であることは、化合物(b)の特徴である。化合物(a)および(b)の構造に応じて、化合物(a)および化合物(b)を反応させる際に、異なる生成物が得られる。驚くべきことに、化合物(a)および化合物(b)の反応は、重合性モノマーを含有する混合物の中で、比較的ゆっくりとした反応速度で進行する。それゆえ、化合物(a)は、最初に、化合物(b)を含有する混合物において、その滅菌効果を生じさせ、その後に、化合物(b)と反応する。さらに、化合物(a)の滅菌効果の継続期間は、化合物(a)および化合物(b)を反応させることにより、限定される可能性がある。
【0098】
重合性モノマーの滅菌のための本発明に係る方法の本質的な優位点は、滅菌効果が、混合物(I)を製造した後に、さらなる外的要因の不存在下でもたらされるということである。さらに、例えば、好ましくは拡散防止されている好適な梱包手段の中に混合物(I)を充填することが可能である。これに関して、化合物(a)は梱包手段の内側にも接し、このため、混合物(I)の中に含有されてもよい当該重合性モノマーおよび、適用可能な場合、さらなる成分が滅菌されるだけではなく、梱包手段の内側も滅菌される。
【0099】
混合物(II)は、重合性モノマーの滅菌のための本発明に係る方法において得られることになる。
【0100】
この混合物(II)は、少なくとも1つの重合性モノマーを含む。この重合性モノマーは、好ましくは、混合物(I)に関するこれまでの記載に係る重合性モノマーである。
【0101】
加えて、混合物(II)は化合物(c)を含有する。化合物(c)は、上記の化合物(a)および(b)を反応させることにより得られる。
【0102】
この反応は、好ましくは、室温で、かつ当該プロセスにおけるさらなる外的な措置の必要がまったくなく、進行する。
【0103】
化合物(a)および(b)の構造に応じて、化合物(a)および(b)を反応させる際に異なる生成物が得られる。
【0104】
混合物(I)中の化合物(b)が水であり、化合物(a)が一般式(I)によって表される化合物(a1)である場合、本発明に係る方法は、ラクトン環が開環してカルボン酸を形成するということを生じる。好ましくは、このカルボン酸は、一般式(V)によって表すことができる。
HOOC−CR1R2−CR3R4−OH
式中、残基R1、R2、R3およびR4は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0105】
混合物(I)中の化合物(b)が一般式(IV)によって表されるアルコールであり、化合物(a)が一般式(I)によって表される化合物(a1)である場合、本発明に係る方法は、ラクトン環が開環してエステルを形成するということを生じる。好ましくは、このエステルは、一般式(VI)によって表すことができる。
R7OOC−CR1R2−CR3R4−OH
式中、残基R1、R2、R3、R4およびR7は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0106】
混合物(I)中の化合物(b)が水であり、化合物(a)が一般式(II)によって表される化合物(a2)である場合、本発明に係る方法は、ラクトン環が開環してカルボン酸を形成するということを生じる。好ましくは、このカルボン酸は、一般式(VII)によって表すことができる。
HOOC−CR1R2−CR3(OH)−CH−CR(OH)−CR1R2−COOH
式中、残基R1、R2、およびR3は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0107】
混合物(I)中の化合物(b)がアルコールであり、化合物(a)が一般式(II)によって表される化合物(a2)である場合、本発明に係る方法は、ラクトン環が開環してエステルを形成するということを生じる。好ましくは、上記エステルは一般式(VIII)によって表すことができる:
R7OOC−CR1R2−CR3(OH)−CH−CR(OH)−CR1R2−COOR7
式中、残基R1、R2、R3、およびR7は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0108】
混合物(I)中の化合物(b)が水であり、化合物(a)が一般式(III)によって表される化合物(a3)である場合、本発明に係る方法は、二酸化炭素および少なくとも1つのアルコールの形成を生じる。好ましくは、この少なくとも1つのアルコールは、一般式(IX)
R5−OH
によって、または一般式(X)
R6−OH
によって表すことができる。式中、残基R5およびR6は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0109】
混合物(I)中の化合物(b)が一般式(IV)によって表されるアルコールであり、化合物(a)が一般式(III)によって表される化合物(a3)である場合、本発明に係る方法は、二酸化炭素、アルコール、およびエステルの形成を生じる。好ましくは、このアルコールは、一般式(IX)
R5−OH
または一般式(X)
R6−OH
によって表すことができる。式中、残基R5およびR6は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0110】
好ましくは、上記エステルは、一般式(XI)によって表すことができる。
R7O−CO−OR7
式中、残基R7は、上記の意味を有することができる。
【0111】
化合物(a)および化合物(b)の反応から生じるので、化合物(c)は、アルコール、少なくとも3個の炭素原子を有するカルボン酸、およびエステルからなる群から選択される。
【0112】
好ましい実施形態によれば、このアルコールは、一般式(V)によって表される化合物、一般式(VI)によって表される化合物、一般式(VII)によって表される化合物、一般式(VIII)によって表される化合物、一般式(IX)によって表される化合物、および一般式(X)によって表される化合物からなる群から選択され、ここで、それらの中に含まれる残基R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0113】
上記カルボン酸は、好ましくは、ヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される。好ましくは、このヒドロキシカルボン酸はβ−ヒドロキシカルボン酸である。好ましい実施形態によれば、このカルボン酸は、一般式(V)によって表される化合物および一般式(VII)によって表される化合物からなる群から選択され、ここで、それらの中に含まれる残基R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0114】
上記エステルは、好ましくは、ヒドロキシエステルおよびジエステルからなる群から選択される。好ましくは、このヒドロキシエステルはβ−ヒドロキシエステルである。好ましくは、当該ジエステルは炭酸ジエステルであることができる。好ましい実施形態によれば、このエステルは、一般式(VI)によって表される化合物、一般式(VIII)によって表される化合物、および一般式(XI)によって表される化合物からなる群から選択され、ここで、それらの中に含まれる残基R1、R2、R3、R4およびR7は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0115】
好ましい実施形態によれば、化合物(c)は、一般式(V)によって表される化合物、一般式(VI)によって表される化合物、一般式(VII)によって表される化合物、一般式(VIII)によって表される化合物、一般式(IX)によって表される化合物、一般式(X)によって表される化合物、および一般式(XI)によって表される化合物からなる群から選択され、ここで、それらの中に含まれる残基R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、互いに独立に、上記の意味を有することができる。
【0116】
特に好ましい実施形態によれば、化合物(c)は、3−ヒドロキシプロピオン酸および3−ヒドロキシプロピオン酸エステルからなる群から選択される。
【0117】
好ましくは、化合物(c)の割合は、混合物(II)の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%、より好ましくは少なくとも0.001重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.01重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%である。好ましくは、化合物(c)の割合は、混合物(II)の全体重量に対して、5.0重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下、さらにより好ましくは1.0重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。化合物(c)の割合は、混合物(II)の総重量に対して、好ましくは、0.0001〜5.0重量%の範囲、より好ましくは0.001〜2.0重量%の範囲、さらにより好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲にある。
【0118】
当該重合性モノマーおよび化合物(c)に加えて、混合物(II)は、適用できる場合、さらなる成分(d)を含むことができる。このさらなる成分(d)は、好ましくは、混合物(I)に関するこれまでの記載に係るさらなる成分(d)である。
【0119】
好ましい実施形態によれば、少なくとも当該重合性モノマーおよび化合物(c)を含有する混合物(II)は、梱包手段の中に存在する。好ましくは、この梱包手段は閉じられている。好ましくは、この梱包手段は、拡散防止されている。この梱包手段は、例えば、カートリッジであることができる。この梱包手段が、カートリッジの中に収容されることも可能である。このカートリッジは、骨セメントペーストの付与装置の一部であることができる。この付与装置は、好ましくは、混合装置を含むことができる。この混合装置は、骨セメントを製造するためのキット個々の成分を混合して骨セメントペーストを生成するのに好適なものであることができる。
【0120】
本発明は、骨セメントを製造するためのキットも提供する。
【0121】
骨セメントを製造するためのこのキットは、少なくともペーストAおよびペーストBを含む。ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、上記の混合物(II)のうちの1つを含有する。好ましくは、ペーストAおよびペーストBは、各々、上記の混合物(II)のうちの1つを含有し、ここで、ペーストAは、その成分のうちの少なくとも1つにおいて、ペーストBとは異なる。
【0122】
ペーストAおよびBは、当該重合性モノマーおよび化合物(c)とは別に、少なくとも1つのさらなる成分を含有することができる。この少なくとも1つのさらなる成分は、上記のさらなる成分(d)の群から選択されてもよい。
【0123】
好ましい実施形態によれば、ペーストAは、重合性モノマー、特にラジカル重合用モノマー、化合物(c)、および当該重合性モノマーに可溶性であるポリマー(d1)を含み、ペーストBは、少なくとも1つの重合性モノマー、化合物(c)、および当該重合性モノマーに可溶性であるポリマー(d1)を含む。好ましくは、このペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、当該重合性モノマーに不溶性であるポリマー(d2)も含有する。当該重合性モノマーに不溶性であるポリマー(d2)は、ペーストAの中に含有されてもよいし、およびペーストBが含有してもよい。さらに、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのラジカル重合開始剤(d3)を含有する。好ましくは、このラジカル重合開始剤(d3)は、当該重合性モノマーに不溶性であるポリマー(d2)を含有する同じペーストの中に含有される。さらには、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つが、重合活性化剤(d4)を含むことが好ましい。さらに、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つが医薬品(d7)を含有することが好ましい。
【0124】
特に好ましい実施形態によれば、ペーストAおよびペーストBは、それぞれ、第1の梱包手段の中、および第2の梱包手段の中で、骨セメントを製造するためのキットの中に存在する。好ましくは、これらの梱包手段は、互いに、空間的に離れている。これらの梱包物は、好ましくは、閉じられている。さらに、これらの梱包手段は、好ましくは、拡散防止されている。この梱包手段は、例えば、カートリッジであることができる。これらの梱包手段が、カートリッジの中に収容されることも可能である。これらのカートリッジは、骨セメントペーストの付与装置の一部であることができる。この付与装置は、好ましくは、混合装置を含むことができる。この混合装置は、骨セメントを製造するためのキット個々の成分を混合して骨セメントペーストを生成するのに好適なものであることができる。
【0125】
本発明は、骨セメントペーストにも関する。
【0126】
これに関して、骨セメントは、患者に付与することができて、かつ自己硬化することができるペーストを意味すると理解されるものとする。
【0127】
この骨セメントペーストは、上記の定義に係る混合物(II)を含有する。
【0128】
好ましい実施形態によれば、この骨セメントペーストは、少なくとも1つのさらなる成分を含有する。この少なくとも1つのさらなる成分は、上記のさらなる成分(d)の群から選択することができる。
【0129】
特に好ましい実施形態によれば、当該骨セメントペーストは、本発明によれば、当該重合性モノマーおよび化合物(c)とは別に、当該重合性モノマーに可溶性である少なくとも1つのポリマー(d1)、当該重合性モノマーに不溶性である1つのポリマー(d2)、適用できる場合、ラジカル重合開始剤(d3)、適用できる場合、重合活性化剤(d4)、および、適用できる場合、医薬品(d7)を含む。
【0130】
本発明は、以下に提示される実施例を通して、より詳細に説明されるが、それら実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0131】
実施例1:
全体で20gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。14μlの蒸留水を加えた後、10μlの、Bacillus subtilis(バチルス・スブチリス、枯草菌)ATCC9357胞子の40% エタノール懸濁液を上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、17μl(20mg)のβ−プロピオラクトンを加えた。ねじぶた容器を閉じ、短時間、よく振盪し、23℃で7日間保存した。
【0132】
実施例2:
全体で20gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。35μlの蒸留水を加えた後、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の40% エタノール懸濁液を上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、34μl(40mg)のβ−プロピオラクトンを加えた。ねじぶた容器を閉じ、短時間、よく振盪し、23℃で7日間保存した。
【0133】
実施例3:
全体で20gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。20μlのメタノールを加えた後、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の40% エタノール懸濁液を上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、17μl(20mg)のβ−プロピオラクトンを加えた。ねじぶた容器を閉じ、短時間、よく振盪し、23℃で7日間保存した。
【0134】
実施例4:
全体で20gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。34μlの蒸留水を加えた後、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の40% エタノール懸濁液を上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、34μl(40mg)のジメチルジカーボネートを加えた。ねじぶた容器を閉じ、短時間、よく振盪し、23℃で7日間保存した。
【0135】
比較例1:
全体で20gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。次いで、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の60% エタノール懸濁液を上記プラスチック瓶の各々に加えた。ねじぶた容器を閉じ、短時間、よく振盪し、23℃で7日間保存した。
【0136】
実施例5:
全体で8.0gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。14μlの蒸留水を加えた後、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の60% エタノール懸濁液、および17μl(20mg)のβ−プロピオラクトンを上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、この調製物を短時間振盪して、均一にした。次いで、1.0gの二酸化ジルコニウム、5.5gの線状ポリメタクリル酸メチル−co−メタクリレート、および5.5gの架橋されたポリメタクリル酸メチルの混合物を、ねじぶた容器の各々の中の調製物に加えた。こうしてペーストを形成した。これらの調製物を、短時間、振盪した。次いで、これらの調製物を、23℃で7日間保存した。
【0137】
実施例6:
全体で8.0gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。35μlの蒸留水を加えた後、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の60% エタノール懸濁液、および35μl(40mg)のβ−プロピオラクトンを上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、これらの調製物を短時間振盪して、均一にした。次いで、1.0gの二酸化ジルコニウム、5.5gの線状ポリメタクリル酸メチル−co−メタクリレート、および5.5gの架橋されたポリメタクリル酸メチルの混合物を、ねじぶた容器の各々の中の調製物に加えた。こうしてペーストを形成した。次いで、これらの調製物を、短時間、振盪した。次いで、これらの調製物を、23℃で7日間保存した。
【0138】
実施例7:
全体で8.0gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。20μlのメタノールを加えた後、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の60% エタノール懸濁液、および35μl(40mg)のβ−プロピオラクトンを上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、この調製物を短時間振盪して、均一にした。次いで、1.0gの二酸化ジルコニウム、5.5gの線状ポリメタクリル酸メチル−co−メタクリレート、および5.5gの架橋されたポリメタクリル酸メチルの混合物を、ねじぶた容器の各々の中の調製物に加えた。こうしてペーストを形成した。次いで、これらの調製物を、短時間、振盪した。次いで、これらの調製物を、23℃で7日間保存した。
【0139】
比較例2:
全体で8.0gのメタクリル酸メチル(シグマ・アルドリッチ、ヒドロキノンで安定化されたもの)を、各々、5つの50mlのねじぶた容器の中に秤量した。次いで、10μlの、Bacillus subtilis ATCC9357胞子の60% エタノール懸濁液を上記プラスチック瓶の各々に加えた。次いで、この調製物を短時間振盪して、均一にした。次いで、1.0gの二酸化ジルコニウム、5.5gの線状ポリメタクリル酸メチル−co−メタクリレート、および5.5gの架橋されたポリメタクリル酸メチルの混合物を、ねじぶた容器の各々の中の調製物に加えた。次いで、これらの調製物を、短時間、振盪した。こうしてペーストを形成した。次いで、これらの調製物を、23℃で7日間保存した。
【0140】
実施例1〜7ならびに比較例1および2の分析:
分析のために、実施例および比較例で得た混合物を、無菌性について試験した。
【0141】
この目的のために、7日間のインキュベーションの後に、各ねじぶた容器から2つの試料を採取した。次いで、これらの試料を、14日間インキュベーションし、次いで、ISO11737パート2に準拠して無菌性について試験した。
【0142】
結果を表1に示す。
【表1】

【0143】
実施例8:
以下では、別々のねじぶた容器の中で原料を混合することにより、ペーストAおよびペーストBを調製した。
【0144】
【表2】

【0145】
次いで、これら2つのペーストを室温で7日間、保存した。次いで、3.5gのペーストAおよび3.5gのペーストBを採取し、一緒に、十分混練した。こうして、緑色の、粘着性ではないセメント生地を製造した。この生地を、手でさらに混練した。およそ2分40秒後、熱の放出によって、重合の開始が認められた。4分40秒後に加工性の最後に到達した。このセメント生地は、およそ6分後には十分に硬化していた。
【0146】
実施例9:
ペーストAおよびペーストBを以下のとおり製造した。
【0147】
【表3】

【0148】
これら2つのペーストを室温で7日間保存した。次いで、3.5gのペーストAおよび3.5gのペーストBを採取し、一緒に、十分混練した。こうして、緑色の、粘着性ではないセメント生地を製造した。この生地を、手でさらに混練した。およそ3分後に熱の放出が認められた。4分40秒後に加工性の最後に到達した。このセメント生地は、およそ6分20秒後には十分に硬化していた。
【0149】
実施例10:
ペーストAおよびペーストBを以下のとおり製造した。
【0150】
【表4】

【0151】
次いで、これら2つのペーストを室温で7日間、保存した。次いで、3.5gのペーストAおよび3.5gのペーストBを採取し、一緒に、十分混練した。こうして、緑色の、粘着性ではないセメント生地を製造した。この生地を、手でさらに混練した。5分後に加工性の最後に到達した。このセメント生地は、およそ6分後には十分に硬化していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマーの滅菌のための方法であって、少なくとも前記重合性モノマー、化合物(a)および化合物(b)を含有する混合物(I)が製造され、
ここで化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、H、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、
化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
化合物(b)の割合は、混合物(I)の総重量に対して2重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合性モノマーはラジカル重合用モノマーである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物(a)はβ−プロピオラクトンである、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重合性モノマーおよび化合物(b)は同じ化合物である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
混合物(I)の中に含有される化合物(a)の量、n、に対する混合物(I)の中に含有される化合物(b)の量、n、の比は、不等式n/n>0.5によって表される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの重合性モノマー、化合物(a)および化合物(b)を含有する混合物(I)であって、
ここで化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)
【化2】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、H、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、
化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択され、
ここで、化合物(b)の割合は、混合物(I)の総重量に対して2重量%以下である、混合物(I)。
【請求項8】
少なくとも1つの重合性モノマーおよび化合物(c)を含有する混合物(II)であって、化合物(c)は、アルコール、少なくとも3個の炭素原子を有するカルボン酸、およびエステルからなる群から選択され、かつ化合物(a)および化合物(b)を反応させることにより入手可能であり、
ここで化合物(a)は、一般式(I)によって表される化合物(a1)
【化3】

(式中、R1、R2、R3、およびR4は、互いに独立に、H、置換もしくは非置換のアルキル残基、ハロゲン残基、ニトロ残基またはシアノ残基を表す)、化合物(a1)の二量体からなる群から選択される化合物(a2)、ならびにジアルキルジカーボネートからなる群から選択される化合物(a3)から選択され、
化合物(b)は、水およびアルコールからなる群から選択される、混合物(II)。
【請求項9】
前記重合性モノマーはラジカル重合用モノマーである、請求項7または請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
化合物(a)はβ−プロピオラクトンである、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項11】
化合物(c)は、3−ヒドロキシプロピオン酸および3−ヒドロキシプロピオン酸エステルからなる群から選択される、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項12】
前記混合物は、前記重合性モノマーに可溶性であるポリマーを含有する、請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項13】
前記混合物は、前記重合性モノマーに不溶性であるポリマーを含有する、請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項14】
少なくともペーストAおよびペーストBを含む骨セメントを製造するためのキットであって、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つが、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の混合物(II)を含有することを特徴とする、キット。
【請求項15】
ペーストAおよびペーストBは、それぞれ、第1の梱包手段および第2の梱包手段の中に存在する、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の混合物IIを含有する、骨セメントペースト。

【公開番号】特開2013−106947(P2013−106947A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−248143(P2012−248143)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【出願人】(510340506)ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】