説明

重量物吊上装置

【課題】簡素な構造であって、勾配のある場所でも作業者1人で簡単に重量物を持ち上げて移動することができる重量物吊上装置の提供。
【解決手段】後端にハンドル部17が設けられたフレーム2と、右爪部21が先端に設けられた右アーム25、左爪部22が先端に設けられた左アーム26、および右爪部21と左爪部22とが対向する向きで右アーム25と左アーム26とが枢結ボルト23によって回動可能に枢結されるアーム支持部材16を備え、フレーム2の先端に装着された挟持部3と、フレーム2の中間部の下側に下向きに突出して設けられ、接地して梃子の支点として全体を支持可能な接地脚部5と、接地脚部5よりもハンドル部17寄りに装着されており接地すると接地脚部5を浮かせて移動可能とする車輪7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を移動するときに使用する重量物吊上装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、側溝を清掃するときや仮設物を設置するときには、側溝蓋や仮設用建材等の略直方体の重量物を持ち上げて移動する必要があるが、このような重量物は金属製やコンクリート製であって重量が大きいため1人では作業が困難であり、従来は2〜3人がかりで作業が行われていた。これに対し、梃子の原理を応用し、より小さな力で側溝蓋などの重量物を持ち上げることができるようにする装置が考案されている(特許文献1および特許文献2を参照)。特許文献1および特許文献2に開示の技術によれば、重量物を両側から挟むことのできるフック部材がハンドルの付いたフレームの先端部に備えられており、重量物をフック部材によって両側から挟んでハンドルを押し下げると、フレームの下に備えられた車輪を支点とする梃子作用によって比較的小さな力で重量物を持ち上げることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−76509号公報
【特許文献2】実開2004−256194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および特許文献2の技術によれば、重量物のバランスをとって持ち上げるために丁度よい位置にフック部材を合わせる必要があるのに対し、特許文献1の装置では車輪が2輪あるので左右方向に動かしにくく、前後に移動して切り返して重量物と装置との位置を合わせなくてはならなかった。一方、特許文献2に開示の技術は車輪が1輪であるので位置合わせは容易となるが、左右方向に傾きやすく重量物を持ち上げるときに不安定であった。また、特許文献1および特許文献2の技術は、いずれも重量物を持ち上げる動作における支点が車輪であり、持ち上げる途中で前後方向に動きやすくて不便であった。特に地面に勾配がある場合には支点である車輪が動くために梃子作用が得られなかったり重量物のバランスが崩れやすかったりして作業が困難となる虞があった。また、特許文献1のようにワイヤー等を介してフック部材を操作する機構であると複雑になるため、製造コストが上昇したり、信頼性が低下したりする虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、簡素な構造であって、様々な状況に対する対応性が高く、作業者1人で簡単に重量物を持ち上げて移動することができる重量物吊上装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の重量物吊上装置は、「ハンドルが一端に設けられ、他端にアーム支持部材が取着されたフレームと、
略水平方向を軸心方向として前記アーム支持部材に回動軸で枢結された一対のアーム、
一対の該アームの先端部から夫々垂下され対向し、略直方体形状を呈する重量物の一対の側面に夫々当接可能な一対の当接部
を備え、一対の該当接部を前記重量物に当接させて前記重量物を挟持可能である挟持部と、
前記フレームの中間部の下側に装着され、接地して転動可能である1個の車輪と、
該車輪近傍であって前記車輪よりも前記挟持部寄りの前記フレームの下側に設けられ、
前記挟持部が所定位置よりも低い位置にあるときには接地して前記フレームを支持し、前記挟持部が所定位置より上昇すると接地した車輪に支持され地面から浮く接地脚部と
を具備する」ことを特徴とするものである。
【0007】
ここで、「中間部」とは、フレームの一方の端部から他方の端部の間の部分を示すものであり、特にフレームの中央付近に限定するものではないが、梃子作用によって重量物を吊上げるときに作業者がハンドルに加える力を軽減するために、接地脚部は中央よりも挟持部寄りであることが望ましい。また、接地脚部だけでなく車輪も梃子の支点として作用するため、車輪および接地脚部が中央よりも挟持部寄りに設けられていることが特に望ましい。
【0008】
本発明によれば、互いに対向した一対の当接部を重量物の側面に当接させた後、フレームを梃子とし、接地脚部を支点、ハンドルを力点、挟持部を作用点とする梃子作用で重量物を吊上げることが可能である。すなわち、対向する一対の当接部を重量物を挟むように夫々当接させてフレームのハンドル側を下降させると、接地脚部を支点としてアーム支持部材が取着されたフレームの先端側が上昇する。アーム支持部材に回動可能に枢結された一対のアームは、アーム支持部材が上昇するにつれて回動軸の部分が上昇して回動し、当接部が設けられた先端部が垂れ下がる。このとき、一対の当接部の間隔は狭まるので重量物が挟持される。ハンドルをさらに下降させると、当接部が重量物を挟持した状態で挟持部が上昇し、重量物が吊上げられる。重量物が持ち上げられ、重力によって下向きに力が加わると、一対のアームは当接部の間隔を狭める側に回動し当接部の重量物を挟持する力が増すため、重量物は挟持部によってしっかりと挟持され、挟持部とともに上昇する。
【0009】
このように梃子作用を利用して重量物を吊上げるとき、接地脚部は地面との間の摩擦力のために容易には動かないので梃子の支点として安定している。そして、重量物を吊上げた後に使用者がさらにハンドルを下降させることで、車輪を接地させて接地脚部を浮かせ、重量物を吊上げたままで重量物吊上装置を車輪で支えて移動可能とすることができる。
【0010】
また、重量物に対して本発明の重量物吊上装置の位置合わせを行うときなどにも車輪で移動することが可能であるが、車輪が一輪のみであって旋回が容易であり位置合わせをしやすい。また、吊上げた重量物を降ろす場合にも同様に位置合わせが容易であり、重量物の吊上げおよび運搬作業の効率化を図ることができる。また、一旦位置合わせをしたら、重量物の上昇および下降中は接地脚部で接地するので、車輪を支点として重量物を昇降する場合よりも位置がずれにくく作業性がよい。特に作業場所の地面に勾配がある場合には、車輪を支点とすると、勾配に従って低い側へと動きやすく、位置合わせが難しい上に、梃子作用を得るための支点である車輪が動くことでうまく吊上げができない虞があるのに対し、本発明の重量物吊上装置は車輪と接地脚部とを備えているので、勾配のある場所でも安定して吊上作業を行うことができ、吊上げた重量物を移動させることも容易である。
【0011】
これらの作用により、使用者1人の力で接地脚部を支点とする梃子作用を利用して容易に重量物を持ち上げ、さらに車輪を利用して重量物を動かすことが可能である。
【0012】
また、本発明の重量物吊上装置は、「前記アーム支持部材に設けられ、前記アーム支持部材が左右のいずれか一方に傾斜すると、傾斜した側と反対側の前記アームに当接して前記先端部の下方への回動を制限する回動制限手段をさらに具備する」構成とすることもできる。
【0013】
本構成によれば、回動制限手段によってアームの回動が制限されており、アームの先端側が下がって当接部同士が接近することを抑制し、一対の当接部を所定の間隔よりも離した位置に保つことができる。これにより、一対のアームが相互に所定の位置関係となるように開いた状態で保たれるので、ハンドル操作によって当接部を重量物に当接させることで容易に挟持部を広げ一対の当接部を重量物を挟む位置に動かすことができる。
【0014】
ところで、挟持部を広げて挟持を解除しないと重量物を降ろすことができないが、重量物を降ろした状態からそのまま挟持部を上昇させると、再度重量物を挟持してしまうため、挟持を解除することが困難となる。これに対し、本構成によれば、ハンドル操作によって挟持を簡単に解除することが可能である。この挟持の解除の方法を以下に説明する。重量物を所定の位置に降ろして接地させると、一対のアームは広がって対向する当接部が重量物から離れる。この状態でハンドルを左右方向に傾けると、フレームおよびアーム支持部材はハンドルと同じ方向に傾斜し、アーム支持部材に設けられた回動制限手段もまたアーム支持部材とともに傾斜する。アーム支持部材が傾斜した方向の反対側のアームとアーム支持部材とのなす角はアームが下向きに回動した場合と同様となり、所定の角度を超えてアーム支持部材が傾斜すると、アームと回動制限手段とが当接し、アームの下向きの回動が制限される。すなわち、アーム支持部材の傾斜がさらに進行すると、回動制限手段に当接したアームは持ち上げられて先端側が上昇する。一方、アーム支持部材が傾斜した方向のアームについては、アーム支持部材に対してアームが上向きに回動した場合と同様になるので回動の制限は生じない。このため、回動制限手段に当接して持ち上げられた側のアームの当接部は重量物から離れ、重量物の上面よりも高い位置に上昇可能となり、ハンドル操作によってフレームを左右に旋回させ、挟持部を左右にずらすことで当接部を重量物の側面ではなく上面に当接させると、再度重量物を挟持することなく挟持部のみを上昇させることができる状態にすることができる。
【0015】
また、本発明の重量物吊上装置は、「ハンドルが後端に設けられ、先端にアーム支持部材を略左右方向を軸心方向として回動可能に吊下げたフレームと、
略前後方向を軸心方向として前記アーム支持部材に回動軸で枢結された一対のアーム、
一対の該アームの先端部から夫々垂下した形状を呈し、略直方体形状を呈する重量物の一対の側面に夫々当接可能な一対の当接部、
および、前記アーム支持部材に設けられ、前記アーム支持部材が左右のいずれか一方に傾斜すると、傾斜した側と反対側の前記アームに当接して前記先端部の下方への回動を制限し前記アーム支持部材とともに傾斜させる回動制限手段
を備え、一対の前記当接部を前記重量物に当接させて前記重量物を挟持可能である挟持部と、
前記フレームの中間部の下側に装着され、接地して転動可能である1個の車輪と、
該車輪近傍であって前記車輪よりも前記挟持部寄りの前記フレームの下側に設けられ、
前記挟持部が所定位置よりも低い位置にあるときには接地して前記フレームを支持し、前記挟持部が所定位置より高い位置にあるときには接地した車輪に支持されて地面から浮く接地脚部と
を具備する」構成とすることもできる。
【0016】
本構成によれば、請求項1および請求項2の構成と同様の作用効果を奏することができる。
【0017】
また、本構成によれば、フレームが前後いずれかの方向に傾斜した場合にも、挟持部を一定の向きに保って吊下げ続けることが可能である。重量物を挟持している場合においても同様であり、重量物を所定の向きで安定させて吊上げ、移動することが可能である。これは特に側溝蓋など略直方体の重量物の水平状態を保って移動する場合に好適である。挟持部を略水平に安定させることができるので、地面の凹凸や勾配のために位置合わせが困難となる虞を抑制しながら重量物を昇降させることができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、簡素な構造であって、勾配のある場所でも利用可能であり、梃子作用によって作業者1人で簡単に重量物を持ち上げて移動することができる重量物吊上装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である側溝蓋吊上装置1について、図1乃至図5に基き説明する。図1は、本発明の一実施形態である側溝蓋吊上装置1を示す斜視図であり、図2は、側溝蓋吊上装置1の挟持部および支点部の構成を示す斜視図であり、図3は、側溝蓋吊上装置1の作用を示す説明図であり、図4および図5は側溝蓋の挟持を解除するときの挟持部の作用を示す説明図であり、図6は側溝蓋吊上装置1の位置合わせについて示す説明図である。
【0020】
図1に示すように、側溝蓋吊上装置1は、屈曲した金属製のパイプ状の部材であるフレーム2の一端部にハンドル部17が取り付けられており、ハンドル部17とは反対側のフレーム2の端部に挟持部3が装着されている。また、フレーム2の下側には接地脚部材5および車輪7を備えた脚部4が装着されている。
【0021】
フレーム2は、中間部が屈曲した屈曲部13となっており、屈曲部13よりハンドル部17に近い側は斜め上方に延びる斜上部12、挟持部3に近い側は略水平方向に延びる水平部11となっている。斜上部12は水平部11よりも長く、後述するように梃子作用で挟持部3に挟持された側溝蓋Cを持ち上げるときに、より小さな力で持ち上がるようになっている。
【0022】
斜上部12の先端には、斜上部12と直交する向きに延びるパイプ状のハンドル部17が溶接されており、T字状を呈している。ハンドル部17には、滑り止めとなる表面形状が設けられたゴム製の把持部18が両端部に被せられており、使用者が側溝蓋吊上装置1を操作するときにハンドル部17を握りやすくなっている。ここで、ハンドル部17と把持部18とを組み合わせたものが、本発明のハンドルに相当する。
【0023】
図2(a)に示すように、水平部11の先端にU字状に二又に分かれた吊下基部14が取着されており、吊下基部14を左右方向に貫通して横架ボルト15が架設されている。挟持部3は、アーム支持部材16において横架ボルト15によって軸支され回動可能に吊下げられている。アーム支持部材16は、図3(a)および図3(b)に示すように、倒立したJ字状の縦断面形状を呈し、上部の丸く湾曲した湾曲部の内周側に横架ボルト15が挿入される筒状部材が取着された軸受部16aと、下方に延びる板状部16bとを有する。アーム支持部16には、左右に略平行に延びた右アーム25と左アーム26とが前後方向を軸心方向とする枢結ボルト23によって同軸で回動可能に枢結されている。右アーム25および左アーム26はいずれも断面がL字状を呈する細長い部材であり、左右の先端側には夫々右アーム25には右爪部21、左アーム26には左爪部22が設けられている。右爪部21および左爪部22はいずれも下向きに突出した板状を呈しており、夫々中心側に向いた面に相互に対向した右当接面21aおよび左当接面22aを有している。ここで、右アーム25および左アーム26が、本発明のアームに相当し、右爪部21および左爪部22が、本発明の当接部に相当し、枢結ボルト23が、本発明の回動軸に相当する。
【0024】
アーム支持部16の前面には略平行四辺形の板状を呈する右アーム回動制限部材31が取着されており、右アーム25が右爪部21が下がる方向に回動したときに右アーム25の上端面が右アーム回動制限部材31の一辺に当接し、右アーム25の回動が制限される。また、右爪部21が上がる方向に右アーム25が回動した場合にも、所定の角度まで回動すると右アーム回動制限部材31の他の一辺に右アーム25の上端面が当接し、右アーム25の回動が制限される。このように、右アーム25の回動可能範囲は、右アーム回動制限部材31によって制限されている。
【0025】
図2(b)に示すように、アーム支持部材16の背面には、右アーム回動制限部材31と略同一の形状を呈する左アーム回動制限部材32が取着されている。左アーム26と左アーム回動制限部材32との関係は、右アーム25と右アーム回動制限部材31との関係と同様であり、左アーム26の回動は所定の範囲に制限されている。右アーム回動制限部材31と左アーム回動制限部材32とは略同一の形状を呈するため、右アーム25および左アーム26の回動可能範囲は、アーム支持部材16の中心線を挟んで略線対称となる。ここで、右アーム回動制限部材31および左アーム回動制限部材32が、本発明の回動制限手段に相当する。
【0026】
アーム支持部材16は、軸受部16aに横架ボルト15が挿通されて回動可能に軸支されており、重力に従って板状部16bが垂下している。板状部16aは回動可能であるので、フレーム2が前後方向に傾斜しても板状部16bが下方に垂下した状態を保つ。これにより、側溝蓋Cを挟持するために位置合わせするときに精確な位置合わせを容易に行うことができる。また、挟持部3にて側溝蓋Cを挟持しているときは昇降中および移動中においても常に側溝蓋Cを略水平に保つことができる。
【0027】
脚部4は、フレーム2の下側に溶接された平板状の脚基部8に、接地脚部材5と、車輪7を軸支する車輪支持部材6が取着されて構成されている。脚基部8の下方に取着された接地脚部材5は、板材を曲げて作られた下向きに凸のV字状を呈する金属製の部材であり、下端は丸みを帯びた形状となっている。接地脚部材5は板面が前後方向に正対する向きに取着されている。接地脚部材5よりも屈曲部13寄りの位置に車輪支持部材6に軸支された車輪7が装着されている。車輪7は、フレーム2の水平部17の長手方向に向きを合わせて装着されており、前後方向に回転可能となっている。車輪7の下端よりも接地脚部材5の下端の方が下方に突出しており、水平部11の長手方向が略水平方向であるときは接地脚部材5が地面に接しており車輪7は接地しなくなっている。本例においては車輪支持部材6および車輪7は市販のキャスターであり、脚基部8にボルトで締結されている。また、車輪7は、耐加重性能に優れ、滑りにくいゴム製のタイヤを備えている。
【0028】
以下、図3に基き、側溝蓋の持ち上げ動作について説明する。
図3(a)に示すように、側溝蓋Cを吊上げる場合には、まず、右爪部21と左爪部22が側溝蓋Cの端部に合致する位置にて接地脚部5を地面Bに当接させる。右爪部21および左爪部22が側溝蓋Cの側方に位置する程度まで挟持部3を下降させると、接地脚部5が接地し、フレーム2が接地脚部5によって支持された状態となる。このとき、車輪7もまた地面Bから浮いている。この状態から、ハンドル部17を使用者が押し下げると、ハンドル部17を力点、地面Bに接している接地脚部5の下端部を支点、挟持部3を作用点とする梃子の作用で挟持部3が上昇する。
【0029】
挟持部3が上昇するにつれ、右アーム25および左アーム26は枢結ボルト23において吊上げられるため、いずれも根元側が上昇する一方で、枢結ボルト23を軸心として回動して先端側は垂下する。このとき、右爪部21と左爪部22の間隔が狭くなり、側溝蓋Cの側面に互いに対向して当接した右当接面21aおよび左当接面22aで側溝蓋Cを挟持する。右当接面21aと左当接面22aとで側溝蓋Cを挟持した状態から挟持部3をさらに上昇させると、側溝蓋Cの重量によってさらに右アーム25および左アーム26が回動して右爪部21および左爪部22の間隔は狭くなる側に動くため、側溝蓋Cは右当接面21aおよび左当接面22aによって締め付けられ、側溝蓋Cは落下することなく吊上げられる。
【0030】
車輪7は接地脚部5よりもハンドル部17に近い位置に装着されているので、側溝蓋Cが上昇するにつれ車輪7は下降し、所定の高さまで側溝蓋Cが上昇すると車輪7が接地する。さらにハンドル部17を下降させ、側溝蓋Cを持ち上げると、図5(b)に示すように梃子作用の支点が接地脚部5から車輪7へと移り、車輪7が側溝蓋吊上装置1を支持する。接地脚部5が持ち上げられて車輪7で支持されると、側溝蓋Cを吊上げたままの状態で側溝蓋吊上装置1を前後に移動可能となる。
【0031】
また、図5(b)に示すように、挟持部3が上昇するにつれて水平部11は次第に前上がりに傾くようになるが、アーム支持部材16は上部16aが丸フック状に形成されており、横架ボルト15に懸垂されているので、側溝蓋Cはバランスがとれて略水平を保ったまま吊上げられる。
【0032】
以下、図4および図5に基き、挟持部3が側溝蓋Cを挟持した状態から、挟持を解除する動作について説明する。図4(a)に示すように、側溝蓋Cを挟持部3が挟持しているときには、当接面21aおよび当接面22aが側溝蓋Cにしっかり当接しており、挟持部3を上昇させると側溝蓋Cが吊上げられる状態にある。このとき、右アーム25および左アーム26はいずれも先端側がわずかに下がった状態にある。
【0033】
図4(b)に示すように、ハンドル部17(図1参照)を操作してフレーム2を左アーム26の側に傾斜させると、左アーム26は枢結ボルト23を中心として回動し、側溝蓋Cに対して当接したままであるが、右アーム25は、右アーム回動制限部材31の一辺に当接し、先端側が下方に向けて回動することを制限されるため、右アーム25が右アーム回動制限部材31に当接した状態でフレーム2の傾斜にともなって右アーム25の先端側が上昇し、右爪部21が側溝蓋Cから離れ、挟持状態が解除される。そのまま左アーム26の側へ略水平方向に挟持部3をずらすと、右アーム25は先端側が持ち上げられた状態のままで右爪部21は側溝蓋Cの上方にずれる。この状態からハンドル部17を操作してフレーム2を起こすと、右爪部21は側溝蓋Cの上に載るため、挟持状態には戻らない。
【0034】
さらに、図5(d)に示すように、フレーム2を逆に右アーム25の側に向けて傾斜させると、右アーム25の右爪部21は側溝蓋Cの上面に当接しており、枢結ボルト23を軸心として回動するが、左アーム26は左アーム回動制限部材32(図2(b)参照)の一辺に当接し、図4(b)における右アーム25と同様に先端側の下方への回動が制限され、フレーム2の傾斜にともなって左アーム26の先端側が上昇し、左爪部22が持ち上げられる。図5(e)に示すように、そのまま左アーム26の側へと挟持部3をさらに移動させると、フレーム2を起こしたときに左爪部22も側溝蓋Cから離れ、側溝蓋Cは所定の位置に設置され、側溝蓋吊上装置1は側溝蓋Cから離脱可能となる。
【0035】
次に、挟持部3の位置合わせを行うときの動作について説明する。先述のように側溝蓋Cを持ち上げる場合や、側溝蓋Cを設置する場合には位置合わせをする必要がある。図1ないし図3に示したように、側溝蓋吊上装置1は、脚基部8の下方に1輪の車輪7を備えており、車輪7が設置しているときは前後に移動することが可能である。また、図6に示すように、脚基部8(車輪7)を中心として旋回させて向きを変えることも容易である。例えば、実線にて示した位置から、車輪7を転がして前方に移動してA1として示した位置に動かしたり、車輪7を中心として右に旋回させてA2として示した位置に動かしたり、左に旋回させてA3として示した位置に動かしたりすることができる。このように、側溝蓋吊上装置1は、1輪の車輪7によって支持可能であるため、使用者の操作に応じて容易に位置調節が可能となっている。
【0036】
以上のように、本発明の実施形態の側溝蓋吊上装置1によれば、対向する右爪部21および左爪部22を、吊上げようとする側溝蓋Cを挟むようにして側面に当接させ、フレーム2を梃子とし、接地脚部5を支点、ハンドル部17を力点、挟持部3を作用点とする梃子作用で重量物を吊上げることが可能である。
【0037】
また、このように梃子作用を利用して重量物を吊上げるとき、接地脚部5は地面との間の摩擦力のために容易には動かず、梃子の支点として安定している。そして、側溝蓋Cを吊上げた後に使用者がさらにハンドル部17を下降させることで、車輪7を接地させて接地脚部5を浮かせ、側溝蓋Cを吊上げたままで側溝蓋吊上装置1を車輪7によって移動可能とすることができる。
【0038】
また、側溝蓋Cに対して本発明の側溝蓋吊上装置1の位置合わせを行うときなどにも車輪7で移動することが可能であるが、車輪7は一輪のみであって旋回が容易であり位置合わせをしやすい。また、吊上げた側溝蓋Cを降ろす場合にも同様に位置合わせが容易であり、側溝蓋Cの吊上げおよび運搬作業の効率化を図ることができる。また、一旦位置合わせをしたら、側溝蓋Cの上昇および下降中は接地脚部5が接地するので、車輪7を支点として側溝蓋Cを昇降する場合よりも位置がずれにくく作業性がよい。特に作業場所の地面に勾配がある場合には、車輪7を支点とすると、勾配に従って低い側へと転がりやすく、位置合わせが難しい上に、梃子作用を得るための支点である車輪7が動くことでうまく吊上げができない虞があるのに対し、側溝蓋吊上装置1は車輪7と接地脚部5とを備えているので、勾配のある場所でも安定して吊上作業を行うことができ、吊上げた側溝蓋Cを移動させることも容易である。
【0039】
また、上記実施形態の側溝蓋吊上装置1によれば、側溝蓋Cの挟持および解除はハンドル部17の操作で行うことができるため、挟持部3の操作のための操作レバーやワイヤーなどを備える必要がない。これにより、部品点数が少なく簡素な構造とすることができる。
【0040】
さらに、上記実施形態の側溝蓋吊上装置1によれば、右アーム回動制限部材31および左アーム回動制限部材32によって夫々対応するアームの回動が制限されており、アームの先端側が下がって右爪部21および左爪部22が相互に接近することを抑制し、右爪部21および左爪部22を所定の間隔よりも離した位置に保つことができる。これにより、ハンドル操作によって右爪部21および左爪部22を側溝蓋Cに当接させたときに右アーム25および左アーム26が広がりやすくなり、右爪部21および左爪部22を重量物を挟む位置に容易に動かすことができる。
【0041】
また、上記実施形態の側溝蓋吊上装置1によれば、ハンドル操作によって挟持を簡単に解除することが可能であるので、側溝蓋Cの挟持、移動および挟持の解除まですべて1人の作業者のみで作業を行うことができる。
【0042】
さらに、上記実施形態の側溝蓋吊上装置1によれば、フレーム2が前後いずれかの方向に傾斜した場合にも、挟持部3を所定の向きに保って吊下げ続けることが可能である。側溝蓋Cを挟持している場合においても同様であり、側溝蓋Cを所定の向きで安定させて吊上げ、移動することが可能である。これは特に略直方体の側溝蓋Cの水平状態を保って移動する場合に好適である。本例によれば、挟持部3を略水平に安定させることができるので、地面の凹凸や勾配のために位置合わせが困難となる虞を抑制しながら側溝蓋Cを昇降させることができる。
【0043】
これらの作用により、上記実施形態の側溝蓋吊上装置1によれば、使用者1人の力で接地脚部5を支点とする梃子作用を利用して容易に側溝蓋Cを持ち上げ、さらに車輪7を利用して側溝蓋Cを動かすことが可能である。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
すなわち、上記の実施形態においては、右アーム25および左アーム26の長さは一定のものを示したが、これに限定されるものではなく、右アーム25および左アーム26の長さを変更してもよい。つまり、右アーム25および左アーム26の長さが上記の実施形態よりも長いものや短いものであってもよいし、長さ調節が可能になっているものであってもよい。例えば、右アーム25および左アーム26に枢結ボルト23が通される孔が所定間隔で複数設けられており、枢結ボルト23を通す孔を変更することで右アーム25および左アーム26の長さを変え、挟持部3の幅を変更可能なものとしてもよい。これにより、持ち上げようとする物品に合わせて挟持部3の幅を変えて使用しやすいように調節することができる。
【0046】
また、上記の実施形態においては、フレーム2の長さが一定のものを示したが、フレーム2は伸縮して長さを調節可能な構造であってもよい。フレーム2の長さを調節することで、使用者の体格や体力に合わせて作業しやすい長さにすることができる。また、収納時には縮めて収納しやすくすることもできる。また、狭い場所で使用する場合などにフレーム2の長さが調節可能であることで利便性を向上させることができる。
【0047】
また、上記の実施形態においては、フレーム2およびハンドル部17が溶接されており、分解が容易でないものを示したが、これに限定されるものではなく、各部に分解して収納を容易にできる構造であってもよいし、折畳可能な構造であってもよい。これにより、収納時や作業場所までの運搬時の収まりをよくすることができる。
【0048】
また、上記の実施形態においては、フレーム2が屈曲した1本のパイプ状の部材で構成されているものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば梯子状のフレームであってもよいし、屈曲していないパイプによって構成されているものであってもよく、材質や用途等に応じて種々に変更することができる。
【0049】
また、上記の実施形態においては、側溝蓋Cを持ち上げるための側溝蓋吊上装置1を例として示したが、これに限定されるものではなく、側溝蓋以外の重量物を持ち上げるための装置であってもよい。例えば仮設用の床板等を運搬するための装置でもよいし、その他の用途の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態である側溝蓋吊上装置を示す斜視図である。
【図2】挟持部および脚部の構成を示す斜視図である。
【図3】側溝蓋吊上装置の作用を示す説明図である。
【図4】側溝蓋の挟持を解除するときの挟持部の作用を示す説明図である。
【図5】側溝蓋の挟持を解除するときの挟持部の作用を示す説明図である。
【図6】側溝蓋吊上装置の位置合わせについて示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
B 地面
C 側溝蓋
1 側溝蓋吊上装置(重量物吊上装置)
2 フレーム
3 挟持部
5 接地脚部材
7 車輪
16 アーム支持部材
17 ハンドル部(ハンドル)
18 把持部(ハンドル)
21 右爪部(当接部)
22 左爪部(当接部)
23 枢結ボルト(回動軸)
25 右アーム(アーム)
26 左アーム(アーム)
31 右アーム回動制限部材(回動制限手段)
32 左アーム回動制限部材(回動制限手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルが一端に設けられ、他端にアーム支持部材が取着されたフレームと、
略水平方向を軸心方向として前記アーム支持部材に回動軸で枢結された一対のアーム、
一対の該アームの先端部から夫々垂下され対向し、略直方体形状を呈する重量物の一対の側面に夫々当接可能な一対の当接部
を備え、一対の該当接部を前記重量物に当接させて前記重量物を挟持可能である挟持部と、
前記フレームの中間部の下側に装着され、接地して転動可能である1個の車輪と、
該車輪近傍であって前記車輪よりも前記挟持部寄りの前記フレームの下側に設けられ、
前記挟持部が所定位置よりも低い位置にあるときには接地して前記フレームを支持し、前記挟持部が所定位置より上昇すると接地した車輪に支持され地面から浮く接地脚部と
を具備することを特徴とする重量物吊上装置。
【請求項2】
前記アーム支持部材に設けられ、前記アーム支持部材が左右のいずれか一方に傾斜すると、傾斜した側と反対側の前記アームに当接して前記先端部の下方への回動を制限する回動制限手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の重量物吊上装置。
【請求項3】
ハンドルが後端に設けられ、先端にアーム支持部材を略左右方向を軸心方向として回動可能に吊下げたフレームと、
略前後方向を軸心方向として前記アーム支持部材に回動軸で枢結された一対のアーム、
一対の該アームの先端部から夫々垂下した形状を呈し、略直方体形状を呈する重量物の一対の側面に夫々当接可能な一対の当接部、
および、前記アーム支持部材に設けられ、前記アーム支持部材が左右のいずれか一方に傾斜すると、傾斜した側と反対側の前記アームに当接して前記先端部の下方への回動を制限し前記アーム支持部材とともに傾斜させる回動制限手段
を備え、一対の前記当接部を前記重量物に当接させて前記重量物を挟持可能である挟持部と、
前記フレームの中間部の下側に装着され、接地して転動可能である1個の車輪と、
該車輪近傍であって前記車輪よりも前記挟持部寄りの前記フレームの下側に設けられ、
前記挟持部が所定位置よりも低い位置にあるときには接地して前記フレームを支持し、前記挟持部が所定位置より高い位置にあるときには接地した車輪に支持されて地面から浮く接地脚部と
を具備することを特徴とする重量物吊上装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−13225(P2010−13225A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174247(P2008−174247)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(597093894)旭ゴム化工株式会社 (11)
【出願人】(506122567)