説明

重量物搬送装置

【課題】 重量物に作用する走行体を移動するのに要する力が小さくて済む重量物搬送装置を提供する。
【解決手段】 重量物搬送装置45は第1フレーム体46と第2フレーム体47とからなる長手方向に伸びるフレーム体と、フレーム体の上に長手方向に移動自在となるように設置され、重量物を搬入又は搬出するための走行体18と、走行体18に取り付けられた第1動滑車20及び第2動滑車21と、回転ドラム34から伸びて第2定滑車31、第1動滑車20及び第1定滑車30に係合する第1ワイヤ部分27と、回転ドラム34から伸び、第2動滑車21及び第3定滑車32に係合する第2ワイヤ部分28とから構成されている。第1動滑車20又は第2動滑車21の働きによって、走行体18はいずれの方向にも移動でき、その移動に要する力が2分の1に軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は重量物搬送装置に関し、特にコンテナに重量物を搬入したり、コンテナから重量物を搬出したりする場合に用いられる重量物搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パイプ等の長尺物よりなる重量物をコンテナ内に搬入する場合には、まずパイプをパレットに搭載する。そして、パレットと床面との間にスキッドを挿入し、これを上昇させることによってスキッドがパレットを支持した状態にする。
【0003】
この状態において、スキッドを横から押圧することによってコンテナ内にパレットをパイプと共に搬入し、その後スキッドをコンテナから引き出す。
【0004】
同様に上記重量物をコンテナから搬出する場合には、パレットにスキッドを挿入し、これを上昇させてスキッド上にパレットを支持した状態とする。そして、スキッドをコンテナ外に引き出すことによって重量物をコンテナから搬出する。
【0005】
図15はこのような従来の重量物の搬送装置を模式的に表した図である。
【0006】
図を参照して、重量物搬送装置74は、床面38上に設置されるフレーム体81と、フレーム体81の上面に取り付けられる走行体75を中心として構成されている。走行体75の両端にはワイヤ76が取り付けられており、ワイヤ76は、定滑車78及び回転ドラム79の各々に係合してループ状に配置されている。ここで走行体75は、上述の重量物に横から作用するものである。即ち、図において例えば左側にコンテナが配置されており、その内部に重量物を搬入する場合には、走行体75は左側方向に移動する。同様に重量物を搬出する場合には、走行体75は右側に移動する。この走行体75の移動は、回転ドラム79をいずれかの方向に回転させることによってワイヤ76を介して移動に要する力が伝達されることによってなされている。
【0007】
具体的には、回転ドラム79を図において時計方向回りに回転させると、ワイヤ76の上方側は右方向に移動し、結果として走行体75を左方向に移動させることになる。同様に回転ドラム79を図において反時計方向回りに回転させると、ワイヤ76の下方側は右方向に移動し、結果として走行体75を右方向に移動させることになる。
【0008】
このようにして、重量物の搬入又は搬出の目的に応じて回転ドラム79の回転方向を定めることによって重量物搬送装置74を使用していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来の重量物搬送装置では、スキッド等を押圧したり引き出したりする走行体を移動させるのに要する力は、スキッドに作用させる力と基本的に同等であり、極めて大きな力が必要となっていた。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、重量物に作用する走行体を移動させるのに要する力が小さくて済む重量物搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、重量物を搬送するための重量物搬送装置であって、長手方向に伸びるフレーム体と、フレーム体の上に長手方向に移動自在となるように設置され、重量物を搬入又は搬出するための走行体と、走行体に取り付けられた第1動滑車と、フレーム体の第1固定部にその一端が固定され、第1動滑車に係合するワイヤと、フレーム体に固定されると共に、ワイヤの他端が接続され、ワイヤを巻き取ることができる回転ドラムとを備えたものである。
【0012】
このように構成すると、回転ドラムを駆動させると第1動滑車を介して走行体が移動する。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、走行体に取り付けられた第2動滑車を更に備え、ワイヤは回転ドラムを介して更に伸びて第2動滑車に係合し、ワイヤの他端はフレーム体の第2固定部に固定され、走行体は回転ドラムによるワイヤの巻き取り方向に応じて前進又は後退するものである。
【0014】
このように構成すると、回転ドラムの駆動方向に応じて走行体の移動方向が決定する。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、第1動滑車と第1固定部との間のワイヤに係合すると共に、フレーム体に固定された第1定滑車と、第1動滑車と回転ドラムとの間のワイヤに係合すると共に、フレーム体に固定された第2定滑車と、第2動滑車と第2固定部との間のワイヤに係合すると共に、フレーム体に固定された第3定滑車とを更に備えたものである。
【0016】
このように構成すると、回転ドラムの巻き取りによって走行体がスムーズに移動する。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、ワイヤの一端は、第1固定部を貫通して第1バランサーに接続され、ワイヤの他端は、第2固定部を貫通して第2バランサーに接続されるものである。
【0018】
このように構成すると、回転ドラムの回転方向に拘らずワイヤには一定以上の張力が常に発生する。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、第1定滑車と第1バランサーとの間のワイヤには、第1定滑車の側への移動を阻止する第1ストッパー手段が設けられ、第2定滑車と第2バランサーとの間のワイヤには、第2定滑車の側への移動を阻止する第2ストッパー手段が設けられるものである。
【0020】
このように構成すると、回転ドラムの回転に応じて張力が加わった側のワイヤの端部は移動しない。
【0021】
請求項6記載の発明は、重量物を搬送するための重量物搬送装置であって、長手方向に伸びるフレーム体と、フレーム体の上に長手方向に移動自在となるように設置され、重量物を搬入又は搬出するための走行体と、走行体に取り付けられた第1動滑車と、フレーム体に固定された第1定滑車と、走行体にその一端が固定され、第1定滑車に係合した後に第1動滑車に係合するワイヤと、フレーム体に固定されると共に、ワイヤの他端が接続され、ワイヤを巻き取ることができる回転ドラムとを備えたものである。
【0022】
このように構成すると、回転ドラムを駆動させると第1動滑車を介して走行体が移動する。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、走行体に取り付けられた第2動滑車と、フレーム体に固定された第2定滑車とを更に備え、ワイヤは回転ドラムを介して更に伸び、第2動滑車に係合した後に第2定滑車に係合すると共に、ワイヤの他端は走行体に固定され、走行体は、回転ドラムによるワイヤの巻き取り方向に応じて前進又は後退するものである。
【0024】
このように構成すると、回転ドラムの駆動方向に応じて走行体の移動方向が決定する。
【0025】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明の構成において、第1動滑車と回転ドラムとの間のワイヤに係合すると共に、フレーム体に固定された第3定滑車を更に備えたものである。
【0026】
このように構成すると、回転ドラムの巻き取りによって走行体がスムーズに移動する。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の構成において、第1定滑車は、第1バランサーを介して前記フレーム体に接続され、第2定滑車は、第2バランサーを介してフレーム体に接続されるものである。
【0028】
このように構成すると、回転ドラムの回転方向に拘らずワイヤには一定以上の張力が常に発生する。
【0029】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の構成において、第1バランサーには、第1定滑車の第1動滑車側への移動を阻止する第1ストッパー手段が設けられ、第2バランサーには、第2定滑車の第2動滑車側への移動を阻止する第2ストッパー手段が設けられるものである。
【0030】
このように構成すると、回転ドラムの回転に応じて張力が加わった側の第1定滑車又は第2定滑車は移動しない。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、回転ドラムを駆動すると第1動滑車を介して走行体が移動するため、直接走行体を移動させるのに要する力のほぼ2分の1の力で走行体を移動させることが可能となる。
【0032】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの駆動方向に応じて走行体の移動方向が決定するため、重量物の搬入及び搬出がほぼ2分の1の力で且つ1台の装置で可能となり使い勝手が良い。
【0033】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの巻き取りによって走行体がスムーズに移動するため、信頼性の高い装置となる。
【0034】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの回転方向に拘らずワイヤには一定以上の張力が発生するため、回転ドラムの巻き取り動作の信頼性が向上する。
【0035】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの回転に応じて張力が加わった側のワイヤの端部は移動しないため、安定した走行体の移動が可能となる。
【0036】
請求項6記載の発明は、回転ドラムを駆動すると第1動滑車を介して走行体が移動するため、直接走行体を移動させるのに要する力のほぼ3分の1の力で走行体を移動させることが可能となる。
【0037】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの駆動方向に応じて走行体の移動方向が決定するため、重量物の搬入及び搬出がほぼ3分の1の力で且つ1台の装置で可能となり使い勝手が良い。
【0038】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの巻き取りによって走行体がスムーズに移動するため、信頼性の高い装置となる。
【0039】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの回転方向に拘らずワイヤには一定以上の張力が発生するため、回転ドラムの巻き取り動作の信頼性が向上する。
【0040】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の効果に加えて、回転ドラムの回転に応じて張力が加わった側の第1定滑車又は第2定滑車は移動しないため、安定した走行体の移動が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1はこの発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の搬送機構を模式的に表した図である。
【0042】
図を参照して、搬送機構17は、走行体18に取り付けられている第1動滑車20及び第2動滑車21と、キャプスタン形式の回転ドラム34とを中心として構成されている。回転ドラム34を中心として、図において下方側に伸びるワイヤ26を第1ワイヤ部分27として表し、回転ドラム34の上方側に伸びるワイヤ26を第2ワイヤ部分28として表すが、第1ワイヤ部分27と第2ワイヤ部分28とは回転ドラム34を介してワイヤ26として一体的に繋がっているものである。
【0043】
回転ドラム34から伸びる第1ワイヤ部分27は、その一端が第1固定部23に固定されている。第1固定部23に接続する第1ワイヤ部分27は、第1定滑車30に係合した後走行体18に取り付けられている第1動滑車20に係合する。更に、第1動滑車20に係合した第1ワイヤ部分27は、第2定滑車31に係合した後回転ドラム34に接続される。
【0044】
一方、第2ワイヤ部分28の一端は第2固定部24に固定され、第3定滑車32に係合した後走行体18に取り付けられている第2動滑車21に係合する。第2動滑車21に係合した第2ワイヤ部分28は回転ドラム34に向かい、その胴部を複数回巻回した後第1ワイヤ部分27に接続する。
【0045】
次にこの搬送機構17における動作について説明する。
【0046】
走行体18を図において左方向側に移動させようとする時には、回転ドラム34を図において反時計方向回りに回転させる。すると、第1ワイヤ部分27は回転ドラム34によって巻き取られ、第1固定部23までの距離が徐々に短くなる。この結果、第1動滑車20は時計方向回りに回転しながら図において左側に移動する。具体的には、第1動滑車20(走行体18)が一定距離Gだけ移動すると、第1ワイヤ部分27は2・Gの長さだけ巻き取られることになる。この時第2ワイヤ部分28は回転ドラム34から徐々に送り出されることになるため、第2固定部24までの距離が徐々に長くなる。その結果、第2動滑車21は左側に移動可能となるため、図において走行体18が左側に移動することが第2ワイヤ部分28によって阻害される虞はない。
【0047】
これによって第1ワイヤ部分27が短くなる速度と第2ワイヤ部分28が長くなる速度とがほぼ一致して、走行体18はスムーズに左方向に移動する。この場合、走行体18を左側に移動させるために働く第1ワイヤ部分27は、その一方端が第1固定部23に固定され、その他方端が回転ドラム34に巻き取られることから、各々に生じる力は走行体18を直接左側に移動するのに要する力の2分の1となる。このようにして、小さな力によって走行体18を左側方向に移動させることが可能となる。
【0048】
次に走行体18を右側方向に移動させる場合について説明する。
【0049】
この場合は上記とは逆に、回転ドラム34を時計方向回りに回転させれば良い。すると、第2ワイヤ部分28は回転ドラム34によって巻き取られることによってその長さが徐々に短くなる。その結果、第2動滑車21は反時計方向回りに回転しながら図において右側に移動することになる。回転ドラム34の時計方向回りの回転によって第1ワイヤ部分27は徐々に長くなる。その結果、第1動滑車20は反時計方向回りに回転しながら右側方向に移動することが可能になる。これによって、走行体18はスムーズに右側方向に移動する。又、この走行体18の移動に要する力も第2動滑車21の働きによって直接走行体18を右方向に移動させるのに要する力に比べて2分の1となり、小さな力によって走行体18の右側方向への移動が可能となる。
【0050】
図2は図1で示した模式図に対応した図であって、その変形例を示した図である。
【0051】
図2の(1)を参照して、この図は走行体18を左側方向に移動させる場合について説明している。この図と図1との相違は、第2ワイヤ部分28の端部が第2固定部24を貫通した状態でスプリング式の第2バランサー36に接続されている点である。ただし、第2ワイヤ部分28は第2固定部24では、図において左側への移動は可能であるが、右側への移動は阻止されるように構成されている。この実施の形態にあってはこのような構成も、第2ワイヤ部分28が第2固定部24に固定されているものの一形態として扱う。第2バランサー36(容量:15〜22kgf、ストローク:1.5m)はこれを取り付けることによって第2ワイヤ部分28に一定の張力を生じさせるものである。
【0052】
この第2バランサー36の設置の必要性について説明する。図のように回転ドラム34を反時計方向回りに回転させると、第1ワイヤ部分27の端部は第1固定部23に固定されているため、一定の張力が加わることになる。一方、第2ワイヤ部分28は回転ドラム34の回転によって繰り出されてくるため、その長さが徐々に長くなる。ここで第1ワイヤ部分27及び第2ワイヤ部分28共に完全な剛体であれば、張力が加わっても伸びることはないが、実際には完全剛体でないため張力が生じるとその軸方向にいくらか伸びることになる。
【0053】
そのため、図1で示したように第2ワイヤ部分28の端部を第2固定部24に完全に固定しておくと、第1動滑車20と同一距離の第2動滑車21の左方向への移動があっても、第1ワイヤ部分27の伸びた分だけ第2ワイヤ部分28側が余った状態となる。この状態を放置しておくと、第2ワイヤ部分28が徐々に緩み、回転ドラム34の巻き付け状態も弱くなることになる。この状態が更に進行すると、回転ドラム34を回転させても、第1ワイヤ部分27がスリップした状態となり、結果として走行体18のそれ以上の移動ができなくなる虞がある。
【0054】
そこで、第1ワイヤ部分27の伸びを吸収するために第2ワイヤ部分28の端部に第2バランサー36が取り付けられている。この第2バランサー36の働きによって、第1ワイヤ部分27が当初の長さより伸びた状態に変化しても一定の張力を第2ワイヤ部分28に付与することになる。これによって回転ドラム34の巻き取り動作が確実に行われ、走行体18の移動が始終スムーズに且つ安定して行われることになる。
【0055】
図2の(2)は走行体18を図において右側方向に移動させる場合の状態を示した図である。
【0056】
図を参照して、この場合回転ドラム34を時計方向回りに回転させるが、上述の理由と同様の理由で第2ワイヤ部分28には張力が生じるが、第1ワイヤ部分27には張力が生じないため第1ワイヤ部分27が徐々に緩んで行く現象が生じることになる。この状態を放置すると回転ドラム34の巻き取りが上手くいかなくなるため、第1ワイヤ部分27の端部に先の第2バランサー36と同一仕様のスプリング式の第1バランサー35を接続したものである。尚、第1ワイヤ部分27の第1固定部23の貫通構造は、先の図2の(1)で述べた第2ワイヤ部分28の第2固定部24の貫通構造と同一であり、このような構成も、第1ワイヤ部分27が第1固定部23に固定されているものの一形態として扱う。これによって上述と同様に第1バランサー35の働きによって第1ワイヤ部分27に一定の張力を付与されることになる。その結果走行体18はスムーズに且つ安定した状態で右側方向に最後まで移動させることが可能となる。
【0057】
上述のように走行体18は重量物の搬入及び搬出のいずれかに応じて移動方向が変化するため、実際は第1バランサー35及び第2バランサー36共に第1ワイヤ部分27の端部と第2ワイヤ部分28の端部とにそれぞれ同時に接続しておくことが好ましい。
【0058】
図3はこの発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の概略構造を示した側面図であり、図4は図3で示したIV−IVラインから見た図である。
【0059】
これらの図を参照して、床面38の上にドライコンテナ39が設置されており、その一方端が開放状態となっている。ドライコンテナ39の開放側に対向する位置であって、床面38の上面に重量物搬送装置45が設置されている。パイプ等の長尺物よりなる重量物40はパレット42に搭載され、重量物搬送装置45の上に上方から載置される。この状態でパレット42と重量物搬送装置45の上面との間にスキッド43を挿入し、スキッド43によってパレット42を支持した状態とする。
【0060】
次に、重量物搬送装置45の走行体18をスキッド43の一端に押し当てて、回転ドラム34を駆動させることによって図において左側方向に進行させる。すると、スキッド43と共に重量物40及びパレット42はドライコンテナ39内に搬入される。搬入が完了すると、回転ドラム34を逆方向に回転させることによって走行体18を逆方向に移動させる。そして、スキッド43のみを引き出して重量物40のコンテナ39への搬入作業は完了する。
【0061】
次に図4を参照して、重量物搬送装置45は第1フレーム体46と第2フレーム体47とを長手方向に一体化したフレーム体と、フレーム体の長手方向に移動自在となるように設置された走行体18を中心として構成されている。図4で記載されている符号は、図2で示されたものと同一のものはそれらに対応したものである。又、図5は図4で示した“A”部分の拡大図であり、図6は図4で示したVI−VIラインの拡大断面図であり、図7は図4で示したVII−VIIラインの拡大断面図であり、図8は図4で示したVIII−VIIIラインの断面図であり、図9は図4で示したIX−IXラインの断面図である。
【0062】
これらの図を参照して、走行体18はその先端がスキッド43に接続可能なように構成されており、第1フレーム体46及び第2フレーム体47の上面に長手方向に形成された第1ガイドレール54及び第2ガイドレール62に沿って長手方向に移動自在となるように構成されている。回転ドラム34から伸びている第1ワイヤ部分27は、図8に示すように第1フレーム体46及び第2フレーム体47の内面を通って第2定滑車31に係合する。第2定滑車31に係合した第1ワイヤ部分27は、走行体18の下面に取り付けられている第1動滑車20に係合した後第1定滑車30の係合を介して第1バランサー35に接続する。
【0063】
一方、回転ドラム34から伸びた第2ワイヤ部分28は、図8に示されているように第1フレーム体46及び第2フレーム体47の上面を伸び第2動滑車21に係合する。第2動滑車21に係合した第2ワイヤ部分28は第1フレーム体46及び第2フレーム体47の上面を通って第3定滑車32に係合し、第1フレーム体46及び第2フレーム体47の内面を通って第2バランサー36に接続する。第1フレーム体46及び第2フレーム体47は長手方向に対してこれに直交する方向に等間隔でH型鋼等のビームが取り付けられている。そして、図6に示されているようにビームのウェブ部分となる第1プレート51には開口52及び開口53が形成されており、それらを貫通するように第1ワイヤ部分27及び第2ワイヤ部分28が配置されている。
【0064】
同様に図7に示されているようにH型鋼よりなる第2フレーム部材56a,第2フレーム部材56bを掛け渡すようにI型鋼よりなる第2ビーム64が取り付けられている。そしてそのウェブの部分にも開口58及び開口59が形成されており、これらを貫通するように第1ワイヤ部分27及び第2ワイヤ部分28が配置されている。このようにして、フレーム体に対して効率的なワイヤの配置がなされている。
【0065】
図10は図9で示された“B”部分の拡大図であり、図11は図9で示した“C”部分の拡大図であり、図12は図9で示した“D”部分の拡大図である。
【0066】
図10を参照して、第2フレーム体47の長手方向に直交する方向に取り付けられている第1ビーム57に開口65が形成されている。開口65を塞ぐことができる開口65より大きな面積を有する第1ストッパー61に第1ワイヤ部分27の一方端が接続されている。そして、第1ストッパー61の反対側には第1バランサー35に接続する第1バランスワイヤ66が取り付けられている。
【0067】
このように構成することによって第1ストッパー61は図における状態からは左方向には移動することはない。従って、第1ワイヤ部分27に走行体18を移動させる張力が加わった場合にあっても、この状態が保持されることになる。このように、第1ストッパー61と第1ビーム57とは第1ストッパー手段を構成する。
【0068】
一方、走行体18の移動が反対方向となり、第1ワイヤ部分27に張力がかからない場合にあっては、第1バランサー35の働きによって第1ストッパー61は図において右側方向に移動すると共に、第1ワイヤ部分27に一定の張力が付与されることになる。
【0069】
図11を参照して、第1バランサー35及び第2バランサー36は接続具70を介して相互に接続されている。尚、この実施の形態にあっては第3ビーム68に開口69が設けられており、接続具70は第3ビーム68に固定されていない。しかしこれに代えて接続具70を第3ビーム68に固定するように構成しても良い。
【0070】
図12を参照して、第2ワイヤ部分28の一端が第2ストッパー63に接続されている。第2ストッパー63は第2ビーム64に形成されている開口58を図において左側から塞ぐような大きさに設定されている。従って、第2ストッパー63は第2ビーム64の開口58を越えて右側の方に移動することはできないが、図のように左側に対しては自由に移動できるように構成されている。このように、第2ストッパー63と第2ビーム64とは第2ストッパー手段を構成する。第2ストッパー63の反対面には、第2バランサー36に接続する第2バランスワイヤ71が取り付けられている。
【0071】
図の状態にあっては、走行体18の移動によって第2ワイヤ部分28の張力が低下している状態を示している。この場合、第2バランサー36の働きによって第2バランスワイヤ71を介して第2ストッパー63は図において左側に移動することになり、結果として第2ワイヤ部分28に一定の張力を付与することになる。
【0072】
一方、走行体18の移動方向によって第2ワイヤ部分28に張力が発生し始めると、第2ストッパー63は図の状態から右方向に移動する。そして第2ビーム64の開口58を塞いだ状態でその移動が停止し、第2ワイヤ部分28の端部はそれ以上移動しない状態で使用されることになる。これによって安定した張力が第2ワイヤ部分28に生じ走行体18の移動がスムーズに達成される。
【0073】
図13は図4に対応した図であって、重量物搬送装置45の走行体18が図において右側方向に移動(重量物の搬出)している状態を示した図であり、図14は図13で示したXIV−XIVラインから見た断面図である。
【0074】
これらの図を参照して、走行体18が右側方向に移動するように回転ドラム34を駆動すると、第2ワイヤ部分28の張力は増加するが、第1ワイヤ部分27の張力が減少することになる。その結果第1バランサー35の働きによって、図14で示されているような寸法Sの分だけ第2ストッパー63は第2ビーム64から右方向に移動することになる。これによって第1ワイヤ部分27には回転ドラム34の駆動に障害を与えない程度の張力が常に付与されることになる。このため、走行体18の右方向への移動が始終安定した状態で行われることになる。
【0075】
尚、上記の第1の実施の形態では、走行体に動滑車を2個取り付けているが、重量物搬送装置が重量物の搬入又は搬出のいずれか一方のみ使用するものであれば、動滑車は1個のみ取り付けて構成しても良い。
【0076】
又、上記の第1の実施の形態では、定滑車を3個取り付けているが、ワイヤの配設の仕方によってはこれより少なくても良く、全くなくても良い。
【0077】
更に、上記の第1の実施の形態では、スプリング式のバランサーを設けているがこれに代えてエアシリンダー、スプリング、巻き取りドラム等を用いたり、あるいはウエイトをワイヤの端部に接続するようにして常に一定の張力をワイヤに加えるように構成しても良い。
【0078】
図16はこの発明の第2の実施の形態による重量物搬送装置の搬送機構を模式的に表した図であって、第1の実施の形態による図1に対応した図である。
【0079】
図を参照して、搬送機構17は、走行体18に取り付けられている第1動滑車20及び第2動滑車21と、キャプスタン形式の回転ドラム34とを中心として構成されている点は先の実施の形態と同様である。尚、回転ドラム34を中心として、図において下方側に伸びるワイヤ26を第1ワイヤ部分27として表し、回転ドラム34の上方側に伸びるワイヤ26を第2ワイヤ部分28として表すが、第1ワイヤ部分27と第2ワイヤ部分28とは回転ドラム34を介してワイヤ26として一体的に繋がっているものである。
【0080】
回転ドラム34から伸びる第1ワイヤ部分27は、その一端が走行体18の一方端に固定されている。この点が先の実施の形態と大きく異なっているが、この作用については後述する。走行体18に接続する第1ワイヤ部分27は、フレーム体83aに固定されている第1定滑車30に係合した後走行体18に取り付けられている第1動滑車20に係合する。更に、第1動滑車20に係合した第1ワイヤ部分27は、フレーム体83bに固定されている第3定滑車32に係合した後フレーム体83dに固定されている回転ドラム34に接続される。
【0081】
一方、第2ワイヤ部分28の一端も走行体18の他方端に固定され、フレーム体83cに固定されている第2定滑車31に係合した後走行体18に取り付けられている第2動滑車21に係合する。この点も先の実施の形態と大きく異なっている。第2動滑車21に係合した第2ワイヤ部分28は回転ドラム34に向かい、その胴部を複数回巻回した後第1ワイヤ部分27に接続する。
【0082】
次にこの搬送機構17における動作について説明する。
【0083】
走行体18を図において左方向側に移動させようとする時には、回転ドラム34を図において反時計方向回りに回転させる。すると、第1ワイヤ部分27は回転ドラム34によって巻き取られ、走行体18の一方端に固定されている端部までの距離が徐々に短くなる。この結果、第1動滑車20は時計方向回りに回転しながら図において左側に移動する。結果として、走行体18は左方向に移動することになる。
【0084】
具体的には、第1動滑車20(走行体18)が一定距離Gだけ移動すると、第1ワイヤ部分27は、3本のワイヤとして走行体18に係合する形になるので3・Gの長さだけ巻き取られることになる。この時第2ワイヤ部分28は回転ドラム34から徐々に送り出されることになるため、走行体18の他方端に固定されている端部までの距離が徐々に3・Gの分だけ長くなる。その結果、第2動滑車21は左側に移動可能となるため、図において走行体18が左側に移動することが第2ワイヤ部分28によって阻害される虞はない。
【0085】
このように第1ワイヤ部分27が短くなる速度と第2ワイヤ部分28が長くなる速度とがほぼ一致するので、走行体18はスムーズに左方向に移動する。この場合、走行体18を左側に移動させるために働く第1ワイヤ部分27は、その一方端が第1定滑車30を介して走行体18に固定され、その他方端が回転ドラム34に巻き取られることから、第1ワイヤ部分27に生じる力は走行体18を直接左側に移動するのに要する力のほぼ3分の1となる。このようにして、第1の実施の形態によるものと比べて更に小さな力によって走行体18を左側方向に移動させることが可能となるが、次にこの原理について説明する。
【0086】
図17は第2の実施の形態による搬送機構における力の釣り合いを説明するための概略構成図である。
【0087】
図を参照して、この実施の形態による搬送機構はこのように模式化することができる。第1の実施の形態のように通常の定滑車の利用方法にあっては、ワイヤ27の他端はフレーム体83に固定されている。そのため、ワイヤ27に生じる張力Tは走行体(重量物)18の重量Wの2分の1となる。
【0088】
ところが、この実施の形態にあっては、ワイヤ27の他端はフレーム体83に接続されずに、フレーム体83に固定されている第1定滑車30を介して走行体18自体に接続されている。
【0089】
一方、第1動滑車20と走行体18とを中心とした力関係を考えると、第1動滑車20を保持する上向きの力T、T、Tがワイヤ27を介して発生することになる。
【0090】
すなわち、走行体の重量をWとし、ワイヤ27や第1動滑車20の重量を無視すると、
W = T+ T+ T ・・・ (1)
となる。
【0091】
ここで、力が釣り合っている状態にあっては、ワイヤ27は連続しているためにワイヤ27に生じる張力Tはすべて同一となる。
【0092】
すなわち、
T = T= T= T ・・・ (2)
上記の(1)式と(2)式とから、
W = 3・T
となる。
【0093】
従って、走行体18を移動させるのに要するワイヤ27に加えるべき張力Tは、走行体(重量物)18の重量Wの3分の1となる。
【0094】
尚、図17の模式図では便宜上第1定滑車30の大きさを小さくして力T、T、Tが加わるワイヤ27の部分が鉛直方向に配置されるようにしているが、実際の第1定滑車30の大きさによってはこれらの部分が完全な鉛直方向にならない場合がある。その場合であっても、第1定滑車30及び第3定滑車32の各々と第1動滑車20との距離が十分にあれば、ワイヤ27はすべてほぼ鉛直方向に配置されているものとして上記の計算方法を近似的に採用することができる。従って、この実施の形態にあっては、走行体18を移動させるのに要する力は、走行体を直接移動させるのに必要な力のほぼ3分の1となる。その結果、第1の実施の形態によるものに比べてより小さな力で重量物を移動できることになる。
【0095】
図16に戻って、次に走行体18を右側方向に移動させる場合について説明する。
【0096】
この場合は上記とは逆に、回転ドラム34を時計方向回りに回転させれば良い。すると、第2ワイヤ部分28は回転ドラム34によって巻き取られることによってその長さが徐々に短くなる。その結果、第2動滑車21は反時計方向回りに回転しながら図において右側に移動することになる。回転ドラム34の時計方向回りの回転によって繰り出される第1ワイヤ部分27は徐々に長くなる。その結果、第1動滑車20は反時計方向回りに回転しながら右側方向に移動することが可能になる。これによって、走行体18はスムーズに右側方向に移動する。又、この走行体18の移動に要する力も、第2ワイヤ部分28の先端が走行体18に固定されている点と第2動滑車21の働きとによって直接走行体18を右方向に直接移動させるのに要する力に比べてほぼ3分の1となり、より小さな力によって走行体18の右側方向への移動も可能となる。
【0097】
図18は図16で示した模式図に対応した図であって、その変形例を示した図である。
【0098】
図18の(1)を参照して、この図は走行体18を左側方向に移動させる場合について説明している。この図と図16との相違の一つは、第1定滑車30が第1固定部84aを貫通した状態で第1ストッパー61及びウエイト式の第1バランサー35を介してフレーム体83aに接続されている点である。又、相違の他の一つは、第2定滑車31が第2固定部84bを貫通した状態で第2ストッパー63及びウエイト式の第2バランサー36を介してフレーム体83cに接続されている点である。
【0099】
これによって、第1定滑車30は左側への移動は可能であるが、右側への移動は第1ストッパー61が第1固定部84aに当接して阻止されるように構成されている。又、第1バランサー35によって第1定滑車30を常時図においては左側に引っ張ることになるため、第1定滑車30回りの第1ワイヤ部分27に一定の張力を生じさせるものである。
同様に、第2定滑車31は右側への移動は可能であるが、左側への移動は第2ストッパー63が第2固定部84bに当接して阻止されるように構成されている。同様に、第2バランサー36の働きによって第2定滑車31回りの第2ワイヤ部分28に一定の張力を生じさせるものである。
【0100】
この第1バランサー35及び第2バランサー36等の設置の必要性について説明する。図のように回転ドラム34を反時計方向回りに回転させると、第1ワイヤ部分27の端部は走行体18に固定されているため、一定の張力が加わることになる。この場合、この張力によって第1定滑車30は走行体18側に移動しようとするが、第1ストッパー61が固定部84cに当接するためそれ以上移動できない。その結果、一定の張力が第1ワイヤ部分27において保持され、走行体18はスムーズに左側に移動する。一方、第2ワイヤ部分28は回転ドラム34の回転によって繰り出されてくるため、その長さが徐々に長くなる。ここで第1ワイヤ部分27及び第2ワイヤ部分28共に完全な剛体であれば、張力が加わっても伸びることはないが、実際には完全剛体でないため張力が生じるとその軸方向にいくらか伸びることになる。
【0101】
そのため、図16で示したように第2ワイヤ部分28の端部を走行体18に完全に固定しておくと、第1動滑車20と同一距離の第2動滑車21の左方向への移動があっても、第1ワイヤ部分27の伸びた分だけ第2ワイヤ部分28側が余った状態となる。この状態を放置しておくと、第2ワイヤ部分28が徐々に緩み、回転ドラム34の巻き付け状態も弱くなることになる。この状態が更に進行すると、回転ドラム34を回転させても、巻き取られる第1ワイヤ部分27がスリップした状態となり、結果として走行体18のそれ以上の移動ができなくなる虞がある。
【0102】
そこで、第1ワイヤ部分27の伸びを吸収するために第2ワイヤ部分28が係合する第2定滑車31を第2バランサー36を介してフレーム体83Cに接続している。この第2バランサー36の働きによって、第1ワイヤ部分27が当初の長さより伸びた状態に変化しても第2定滑車31をフレーム体83C側に移動させることによって一定の張力を第2ワイヤ部分28に付与できることになる。これによって回転ドラム34の巻き取り動作が確実に行われ、走行体18の移動が始終スムーズに且つ安定して行われることになる。
【0103】
図18の(2)は走行体18を図において右側方向に移動させる場合の状態を示した図である。
【0104】
図を参照して、この場合回転ドラム34を時計方向回りに回転させるが、上述の理由と同様の理由で第2ワイヤ部分28には張力が生じるが、第1ワイヤ部分27には張力が生じないため第1ワイヤ部分27が徐々に緩んで行く現象が生じることになる。この状態を放置すると回転ドラム34の巻き取りが上手くいかなくなるため、第1定滑車30を先の第2バランサー36と同一仕様のウエイト式の第1バランサー35を介してフレーム体83aに接続したものである。これによって上述と同様に第1バランサー35の働きによって第1ワイヤ部分27に一定の張力が付与されることになる。その結果走行体18はスムーズに且つ安定した状態で右側方向に最後まで移動させることが可能となる。
【0105】
上述のように走行体18は重量物の搬入及び搬出のいずれかに応じて移動方向が変化するため、第1バランサー35及び第2バランサー36の各々は第1ワイヤ部分27の端部と第2ワイヤ部分28の端部とにそれぞれ同時に接続されている。しかし、走行体18を重量物の搬入及び搬出のいずれかのみに使用する場合には、第1バランサー35及び第2バランサー36はいずれか一方のみでも良い。
【0106】
図19はこの発明の第2の実施の形態による重量物搬送装置の概略構造の一部を示した平面図であって、第1の実施の形態による図4に対応した図であり、図20は図19で示したXX−XXラインの断面図であり、図21は図19で示したXXI−XXIラインから見た図である。
【0107】
これらの図を参照して、重量物搬送装置45として、床面38の上に脚体90を介してフレーム体83が水平方向に設置されている。重量物搬送装置45は、このフレーム体83と、フレーム体83の長手方向に移動自在となるように設置された走行体18を中心として構成されている。すなわち、この実施の形態にあっては、先の実施の形態とは異なり床面38より高い位置において重量物をコンテナに搬送したり、コンテナから搬出したりするものである。尚、これらの図で記載されている符号は、図18で示されたものと同一のものはそれらに対応したものである。
【0108】
走行体18は実際には図4で示されたような平面形状を有しており、その先端が図示しないスキッドに接続可能なように構成されている。走行体18の下面には、第1動滑車20及び第2動滑車21が取付けられており、フレーム体83の後方部分には滑車85、滑車86及び第3滑車32がそれらの軸方向を同一にして並列するように取付けられている。
【0109】
図示しない回転ドラムから伸びている第1ワイヤ部分27は、フレーム体83の上面を通って第3定滑車32に係合する。第3定滑車32に係合した第1ワイヤ部分27は、走行体18の下面に取り付けられている第1動滑車20に係合する。第1動滑車20に係合した後第1ワイヤ部分27は、滑車85に係合した後、下方に向かい滑車87に係合する。滑車87に係合した第1ワイヤ部分27は上方に向かい、滑車86に係合した後走行体18に接続する。
【0110】
一方、回転ドラム34から伸びた第2ワイヤ部分28については、回転ドラム34の部分と第3滑車32に相当する滑車がない点とを除いて図19の構造と反対対称の構成となっている。すなわち、第2ワイヤ部分28はフレーム体83の上面を伸び第2動滑車21に係合する。第2動滑車21に係合した第2ワイヤ部分28はフレーム体83の上面を通って滑車85、滑車87及び滑車86に対応する3つの滑車に係合した後、走行体18に接続する。
【0111】
滑車85及び滑車86の下方には横断面が矩形形状の箱体101が設置されており、その内部には滑車87が収納されている。箱体101の対向する側面のいずれにも上下に延びる一対の長穴102が形成されている。滑車87は軸102を中心に回転自在に構成されており、軸102は一対の長穴を貫通するように水平方向に配置されている。又、軸102には箱体101内に収容されているウエイト89が接続されている。これによって、滑車87はウエイト89を接続した状態で箱体101内を長穴104の形成範囲内で上下に移動自在となる。
【0112】
ここで、図18の構成と比較すると、第1定滑車30に滑車85、滑車86及び滑車87が相当し、第1バランサー35にウエイト89が相当し、第1ストッパー61に長穴104及び軸102が相当することになる。
【0113】
次に、この重量物搬送装置の動作について説明する。
【0114】
まず、図18の(1)に示したように、走行体18を図19において左側に移動させた場合について説明する。
【0115】
この場合、第1ワイヤ部分27が回転ドラムによって巻き取られる状態である。そのため第1ワイヤ部分27は走行体18の移動と共に短くなってくる。すると図21で示されている滑車87は上方に移動することになるが、軸102は長穴104の最上部に達するとそれ以上の移動が阻止される。これによって第1ワイヤ27の巻き取りのための張力はスムーズに走行体18に伝達され、巻き取り量に応じて走行体18は左側に移動する。
【0116】
続いて、図18の(2)に示したように、走行体18を図19において右側に移動させた場合について説明する。
【0117】
この場合、第2ワイヤ部分28が回転ドラムによって巻き取られる状態である。そのため第1ワイヤ部分27は回転ドラムから送り出されることになり緩みやすくなる。この場合、第1ワイヤ部分27が緩むと、これに係合している滑車87がウエイト89の重量で下方に移動する。その結果、第1ワイヤ部分27にはウエイト89の重量による張力が少なくとも常時発生している状態になる。このため、回転ドラムのスリップ等が生じることなく第2ワイヤ部分28の巻き取りが安定して可能となり、走行体18をスムーズに右側に移動させることが可能となる。
【0118】
尚、上記の第2の実施の形態では、走行体に動滑車を2個取り付けているが、重量物搬送装置が重量物の搬入又は搬出のいずれか一方のみ使用するものであれば、動滑車は1個のみ取り付けて構成しても良い。
【0119】
又、上記の第2の実施の形態では、第3定滑車を取り付けているが、ワイヤの配設の仕方によってはこの滑車はなくても良い。
【0120】
更に、上記の第2の実施の形態では、ウエイト式のバランサーを設けているがこれに代えてスプリング式のバランサーやエアシリンダー、スプリング、巻き取りドラム等を用いて常に一定の張力をワイヤに加えるように構成しても良い。
【0121】
更に、上記の各実施の形態では、ワイヤの伸びによる回転ドラムのスリップを防止するためにバランサーを設けており、回転ドラムの安定した動作を可能としている。尚、定滑車及び動滑車の大きさやワイヤの配置によっては、巻き取り側のワイヤ部分の長さの減少程度が繰り出し側のワイヤ部分の長さの増加程度より大きくなる場合が生じる。この場合であっても、バランサーの働きでその差が吸収され、安定した回転ドラムの作動が保証されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】この発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置に用いられる搬送機構の概略構成を示した模式図である。
【図2】図1で示した模式図の変形例を示した図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の概略構造を示した側面図である。
【図4】図3で示したIV−IVラインから見た図である。
【図5】図4で示した“A”部分の拡大図である。
【図6】図4で示したVI−VIラインの拡大断面図である。
【図7】図4で示したVII−VIIラインの拡大断面図である。
【図8】図4で示したVIII−VIIIラインの断面図である。
【図9】図4で示したIX−IXラインの断面図である。
【図10】図9で示した“B”部分の拡大図である。
【図11】図9で示した“C”部分の拡大図である。
【図12】図9で示した“D”部分の拡大図である。
【図13】図4に対応した図であって、走行体を矢印方向に移動させた状態を示した図である。
【図14】図13で示したXIV−XIVラインの断面図である。
【図15】従来の重量物搬送装置の概略構造を模式的に示した図である。
【図16】この発明の第2の実施の形態による重量物搬送装置の搬送機構を模式的に表した図である。
【図17】この発明の第2の実施の形態による搬送機構における力の釣り合いを説明するための概略構成図である。
【図18】図16で示した模式図に対応した図であって、その変形例を示した図である。
【図19】この発明の第2の実施の形態による重量物搬送装置の概略構造の一部を示した平面図である。
【図20】図19で示したXX−XXラインの断面図である。
【図21】図19で示したXXI−XXIラインから見た図である。
【符号の説明】
【0123】
18…走行体
20…第1動滑車
21…第2動滑車
23…第1固定部
24…第2固定部
26…ワイヤ
30…第1定滑車
31…第2定滑車
32…第3定滑車
34…回転ドラム
35…第1バランサー
36…第2バランサー
40…重量物
45…重量物搬送装置
46…第1フレーム体
47…第2フレーム体
57…第1ビーム
58,65…開口
61…第1ストッパー
63…第2ストッパー
64…第2ビーム
83…フレーム体
84…固定部
85,86,87…滑車
102…軸
103…長穴
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を搬送するための重量物搬送装置であって、
長手方向に伸びるフレーム体と、
前記フレーム体の上に前記長手方向に移動自在となるように設置され、前記重量物を搬入又は搬出するための走行体と、
前記走行体に取り付けられた第1動滑車と、
前記フレーム体の第1固定部にその一端が固定され、前記第1動滑車に係合するワイヤと、
前記フレーム体に固定されると共に、前記ワイヤの他端が接続され、前記ワイヤを巻き取ることができる回転ドラムとを備えた、重量物搬送装置。
【請求項2】
前記走行体に取り付けられた第2動滑車を更に備え、
前記ワイヤは前記回転ドラムを介して更に伸び、前記第2動滑車に係合すると共に、前記ワイヤの他端は前記フレーム体の第2固定部に固定され、
前記走行体は、前記回転ドラムによる前記ワイヤの巻き取り方向に応じて前進又は後退する、請求項1記載の重量物搬送装置。
【請求項3】
前記第1動滑車と前記第1固定部との間の前記ワイヤに係合すると共に、前記フレーム体に固定された第1定滑車と、
前記第1動滑車と前記回転ドラムとの間の前記ワイヤに係合すると共に、前記フレーム体に固定された第2定滑車と、
前記第2動滑車と前記第2固定部との間の前記ワイヤに係合すると共に、前記フレーム体に固定された第3定滑車とを更に備えた、請求項2記載の重量物搬送装置。
【請求項4】
前記ワイヤの前記一端は、前記第1固定部を貫通して第1バランサーに接続され、
前記ワイヤの前記他端は、前記第2固定部を貫通して第2バランサーに接続される、請求項3記載の重量物搬送装置。
【請求項5】
前記第1定滑車と前記第1バランサーとの間の前記ワイヤには、前記第1定滑車の側への移動を阻止する第1ストッパー手段が設けられ、
前記第2定滑車と前記第2バランサーとの間の前記ワイヤには、前記第2定滑車の側への移動を阻止する第2ストッパー手段が設けられる、請求項4記載の重量物搬送装置。
【請求項6】
重量物を搬送するための重量物搬送装置であって、
長手方向に伸びるフレーム体と、
前記フレーム体の上に前記長手方向に移動自在となるように設置され、前記重量物を搬入又は搬出するための走行体と、
前記走行体に取り付けられた第1動滑車と、
前記フレーム体に固定された第1定滑車と、
前記走行体にその一端が固定され、前記第1定滑車に係合した後に前記第1動滑車に係合するワイヤと、
前記フレーム体に固定されると共に、前記ワイヤの他端が接続され、前記ワイヤを巻き取ることができる回転ドラムとを備えた、重量物搬送装置。
【請求項7】
前記走行体に取り付けられた第2動滑車と、前記フレーム体に固定された第2定滑車とを更に備え、
前記ワイヤは前記回転ドラムを介して更に伸び、前記第2動滑車に係合した後に前記第2定滑車に係合すると共に、前記ワイヤの他端は前記走行体に固定され、
前記走行体は、前記回転ドラムによる前記ワイヤの巻き取り方向に応じて前進又は後退する、請求項6記載の重量物搬送装置。
【請求項8】
前記第1動滑車と前記回転ドラムとの間の前記ワイヤに係合すると共に、前記フレーム体に固定された第3定滑車を更に備えた、請求項7記載の重量物搬送装置。
【請求項9】
前記第1定滑車は、第1バランサーを介して前記フレーム体に接続され、
前記第2定滑車は、第2バランサーを介して前記フレーム体に接続される、請求項8記載の重量物搬送装置。
【請求項10】
前記第1バランサーには、前記第1定滑車の前記第1動滑車側への移動を阻止する第1ストッパー手段が設けられ、
前記第2バランサーには、前記第2定滑車の前記第2動滑車側への移動を阻止する第2ストッパー手段が設けられる、請求項9記載の重量物搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2007−269492(P2007−269492A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35634(P2007−35634)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(501404804)住友金属物流株式会社 (13)