説明

重量物搬送装置

【課題】 牽引時に対してのみ負荷が掛かる用途において効率的となる重量物搬送装置を提供する。
【解決手段】 搬送機構15は、フレーム体40の長手方向(図において左右方向)に移動自在の走行体18に取り付けられている第1動滑車20と、キャプスタン形式の回転ドラム38とを中心として構成されている。走行体18に接続する第1ワイヤ部分27は、フレーム体40に固定されている第1定滑車30に係合した後走行体18に取り付けられている第1動滑車20に係合する。一方、第1ワイヤ部分27が所定数量巻回された後に回転ドラム38から延びる第2ワイヤ部分28は、バランスユニット23に取付けられている第2動滑車21に係合する。第2動滑車21に係合した第2ワイヤ部分28は、走行体18の他方端に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は重量物搬送装置に関し、特にコンテナから重量物を搬出したり、又は、コンテナに重量物を搬入したりする場合に用いられる重量物搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板コイル等の重量物をコンテナから搬出する場合には、鋼板コイルを搭載したパレットにフォークリフトの爪を係合させてコンテナ外に鋼板コイル引き出すのが一般的である。
【0003】
図5は従来の重量物の搬送装置を模式的に表した図である。
【0004】
図を参照して、重量物搬送装置74は、床面84上に設置されるフレーム体81と、フレーム体81の上面に取り付けられる走行体75を中心として構成されている。走行体75の両端にはワイヤ76が取り付けられており、ワイヤ76は、定滑車78及び回転ドラム79の各々に係合してループ状に配置されている。ここで走行体75は、上述の重量物に接続して使用するものである。即ち、図において例えば左側にコンテナが配置されており、その内部の重量物を搬出する場合には、回転ドラム79を所定の方向に回転させて走行体75を右側に移動させれば良い。
【0005】
具体的には、回転ドラム79を図において時計方向回りに回転させると、ワイヤ76の上方側は右方向に移動し、結果として走行体75を左方向に移動させることになる。同様に回転ドラム79を図において反時計方向回りに回転させると、ワイヤ76の下方側は右方向に移動し、結果として走行体75を右方向に移動させることになる。
【0006】
このようにして、重量物の搬入又は搬出の目的に応じて回転ドラム79の回転方向を定めることによって重量物搬送装置74を使用していた。
【0007】
しかしながら、このような重量物搬送装置では、パレット等を押圧したり引き出したりする走行体を移動させるのに要する力は、パレットに作用させる力と基本的に同等であり、極めて大きな力が必要となっていた。
【0008】
そこで、特許文献1に示されているように、重量物の搬出時に必要な力を軽減する重量物搬送装置が提案されている。
【0009】
図6はこの重量物搬送装置による搬送機構における力の釣り合いを説明するための概略構成図である。
【0010】
図を参照して、ワイヤ27の他端はフレーム体83に接続されずに、フレーム体83に固定されている第1定滑車30を介して走行体18自体に接続されている。
【0011】
一方、第1動滑車20と走行体18とを中心とした力関係を考えると、第1動滑車20を保持する上向きの力T、T、Tがワイヤ27を介して発生することになる。
【0012】
すなわち、走行体の重量をWとし、ワイヤ27や第1動滑車20の重量を無視すると、
W = T+ T+ T ・・・ (1)
となる。
ここで、力が釣り合っている状態にあっては、ワイヤ27は連続しているためにワイヤ27に生じる張力Tはすべて同一となる。
【0013】
すなわち、
T = T= T= T ・・・ (2)
上記の(1)式と(2)式とから、
W = 3・T
となる。
【0014】
従って、走行体18を移動させるのに要するワイヤ27に加えるべき張力Tは、走行体(重量物)18の重量Wの3分の1となる。
【0015】
尚、図6の模式図では便宜上第1定滑車30の大きさを小さくして力T、T、Tが加わるワイヤ27の部分が鉛直方向に配置されるようにしているが、実際の第1定滑車30の大きさによってはこれらの部分が完全な鉛直方向にならない場合がある。その場合であっても、第1定滑車30及び第3定滑車32の各々と第1動滑車20との距離が十分にあれば、ワイヤ27はすべてほぼ鉛直方向に配置されているものとして上記の計算方法を近似的に採用することができる。従って、この実施の形態にあっては、走行体18を移動させるのに要する力は、走行体を直接移動させるのに必要な力のほぼ3分の1となる。その結果、第1の実施の形態によるものに比べてより小さな力で重量物を移動できることになる。
【0016】
図7はこの搬送機構の基づく重量物搬送装置の概略構成を示した模式図である。
【0017】
図を参照して、搬送機構86はフレーム体81に取付けられている。ワイヤ26は全体として連続しているが、説明の便宜上、回転ドラム38から下方に延びるワイヤ26を第1ワイヤ部分27とし、回転ドラム38から右方向に延びるワイヤ26を第2ワイヤ部分28とする。
【0018】
走行体18には第1動滑車20が取付けられ、第1ワイヤ部分27は第2定滑車31に係合した後第1動滑車20に係合し、更に第1定滑車30に係合した後走行体18の牽引側に接続している。一方、第2ワイヤ部分28は二つの定滑車に係合した後走行体18の繰出側に接続している。
【0019】
次に、この搬送機構の使用時の動作について説明する。
【0020】
図の(1)は重量物の牽引時の動作に対応するものである。牽引時には走行体18を図において左方向に移動させる必要があるため、回転ドラム38を時計方向周りに回転させる。この動作によって、第2ワイヤ部分28が点P1から点P2へ距離Lだけ移動したと想定する。
【0021】
この時、走行体18の左側には第1ワイヤ部分27が接続していることから、走行体18の左側はL/3の距離のみ移動することになる。一方、走行体18の右側には第2ワイヤ部分28が接続していることから、走行体18の右側はLの距離だけ移動することになる。ところが、走行体18は一体的に構成されていることから、この状態では第2ワイヤ部分28が弛んでしまい、回転ドラム38の巻取りに障害が生じる。
【0022】
図の(2)は重量物の牽引とは反対方向の繰出動作に対応するものである。繰出時には走行体18を図において右方向に移動させる必要があるため、回転ドラム38を反時計方向周りに回転させる。この動作によって、第2ワイヤ部分28が点P1から点P2へ距離Lだけ移動したと想定する。
【0023】
この時牽引時と同様に、走行体18の左側はL/3の距離のみ移動することになり、走行体18の右側はLの距離だけ移動することになる。従って、この構成では繰出時にも走行体18は移動できないことになる。
そこで、特許文献1においては、走行体18の両側に対称的にワイヤを接続し、牽引時、繰出時のいずれにおいても走行体18が小さな力で移動できるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2007−269492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上記のような従来の重量物搬送装置では、走行体18に対して対称構造となっているため、牽引時、繰出時において走行体18の移動は問題が無い。
【0026】
しかし、牽引時にのみ負荷が掛かり、繰出時には負荷が掛からないような用途においては効率的な構造とは言えない。
【0027】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、牽引時に対してのみ負荷が掛かる用途において効率的となる重量物搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、重量物を搬送するための重量物搬送装置であって、長手方向に伸びるフレーム体と、フレーム体の上に長手方向に移動自在となるように設置され、重量物を牽引するための走行体と、走行体の牽引方向及び牽引方向とは反対の繰出方向に接続された1本のワイヤと、ワイヤに接続され、ワイヤを牽引方向に対応する第1方向及び繰出方向に対応する第2方向のいずれにも巻き取ることができる回転ドラムとを備え、走行体には第1動滑車が取付けられ、フレーム体には第1定滑車が取付けられ、ワイヤにおける回転ドラムと走行体の牽引方向側との間の第1ワイヤ部分は、走行体にその一端が固定され、第1定滑車に係合した後に第1動滑車に係合し、更に、走行体の一定距離の移動に伴う第1ワイヤ部分の長さの変化と、ワイヤにおける回転ドラムと走行体の繰出方向側との間の第2ワイヤ部分の長さの変化との差を吸収するワイヤ長さ調整手段を備えたものである。
【0029】
このように構成すると、重量物の牽引時に必要な回転ドラムの負荷が軽減すると共に、回転ドラムにおけるワイヤの弛みが生じない。
【0030】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、ワイヤ長さ調整手段は、第2ワイヤ部分が係合する第2動滑車が取付けられ、移動自在のバランスユニットと、バランスユニットとフレーム体との間に伸縮自在に接続され、バランスユニットが第2ワイヤ部分の巻き取り時に生じる移動方向に対して反対方向に前記バランスユニットを付勢するスプリングバランサーとを含むものである。
【0031】
このように構成すると、走行体の牽引時及び繰出時のいずれにおいても、第2ワイヤ部分の長さの変化にバランスユニットは追随する。
【0032】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、バランスユニットは、走行体に対して各々の移動時の始点及び終点の位置が対応するように長手方向に対して並列に配置されるものである。
【0033】
このように構成すると、バランスユニットと走行体とが並列的に移動する。
【0034】
請求項4記載の発明は、フレーム体は、平面視矩形で平坦状に形成され、走行体はフレーム体の上面に沿って移動するものである。
【0035】
このように構成すると、フレーム体の上下の厚さが大きくないので使用場所の自由度が増加する。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、繰出時に回転ドラムの回転数を上げれば繰出に要する時間が短縮するので、効率的な重量物の牽引が可能となる。
【0037】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行体の牽引時及び繰出時のいずれにおいても、第2ワイヤ部分の長さの変化にバランスユニットは追随するので、回転ドラムの巻き取り動作が安定する。
【0038】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、バランスユニットと走行体とが並列的に移動するので、フレーム体がコンパクトになる。
【0039】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、使用場所の自由度が増加し、例えば、コンテナを搭載したシャーシの上に設置することも可能となり、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の搬送機構を模式的に表した図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の概略構造を示した平面図である。
【図3】図2におけるIII−IIIラインの断面図である。
【図4】図2及び図3で示した重量物搬送装置の使用状態を示した概略図である。
【図5】従来の重量物の搬送装置を模式的に表した図である。
【図6】従来の重量物搬送装置による搬送機構における力の釣り合いを説明するための概略構成図である。
【図7】従来の搬送機構に基づく重量物搬送装置の概略構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1はこの発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の搬送機構を模式的に表した図であって、従来例として示した図7に対応する図であり、その(1)は重量物を走行体で牽引する場合を示し、その(2)は牽引開始位置まで走行体を繰出す場合を示している。
【0042】
図を参照して、搬送機構15は、フレーム体40の長手方向(図において左右方向)に移動自在の走行体18に取り付けられている第1動滑車20と、キャプスタン形式の回転ドラム38とを中心として構成されている。尚、走行体18は、重量物にワイヤ等を接続して走行体18を移動させることによって重量物を牽引するものである。
【0043】
ところで、回転ドラム38を中心として、図において走行体18左側(牽引方向)から回転ドラム38までのワイヤ26を第1ワイヤ部分27として表し、走行体18の右側(繰出方向)から回転ドラム38までのワイヤ26を第1ワイヤ部分27として表すが、第1ワイヤ部分27と第2ワイヤ部分28とは回転ドラム38を介して1本のワイヤ26として一体的に繋がっているものである。
【0044】
その一端が走行体18の一方端に固定されている第1ワイヤ部分27は、フレーム体40に固定されている第1定滑車30に係合した後走行体18に取り付けられている第1動滑車20に係合する。更に、第1動滑車20に係合した第1ワイヤ部分27は、フレーム体40に固定されている第2定滑車31に係合した後フレーム体40に固定されている回転ドラム38に接続される。
【0045】
一方、第1ワイヤ部分27が所定数量巻回された後に回転ドラム38から延びる第2ワイヤ部分28は、フレーム体40に固定されている第3定滑車32及び第4定滑車33に係合した後、バランスユニット23に取付けられている第2動滑車21に係合する。第2動滑車21に係合した第2ワイヤ部分28は、フレーム体40に固定されている第5定滑車34及び第6定滑車35に係合した後、走行体18の他方端に接続される。尚、バランスユニット23とフレーム体40との間には、伸縮自在で図において左側(第2ワイヤ部分28の巻き取り時に生じる移動方向に対して反対方向)に付勢されているスプリングバランサー24が接続されている。
【0046】
次にこの搬送機構15における動作について説明する。
【0047】
まず、図1の(1)を参照して、重量物を引出す牽引時の動作について説明する。
【0048】
走行体18を図において左方向側に移動させようとする時には、回転ドラム38を図において矢印のように時計方向回りに回転させる。すると、第1ワイヤ部分27は回転ドラム38によって巻き取られ、走行体18の一方端に固定されている端部までの距離が徐々に短くなる。この結果、第1動滑車20は反時計方向回りに回転しながら図において左側に移動する。結果として、走行体18は左方向に移動することになる。
【0049】
一方、第2ワイヤ部分28は回転ドラム38で巻き取られた(牽引した)分だけ繰り出されることになる。すなわち、回転ドラム38を介しての第1ワイヤ部分27の長さの変化と第2ワイヤ部分28の長さの変化とは、ワイヤ26が延びない剛体とすると同一となる。
【0050】
具体的には、第2ワイヤ部分28が繰り出されて位置P1から位置P2へ距離Lだけ移動した時を想定する。この場合、第1ワイヤ部分27も距離Lだけ巻き取られたことになる。第1ワイヤ部分27は、3本のワイヤとして走行体18に係合する形になるので、走行体18はL/3の距離だけ牽引方向に移動する。この時走行体18に接続されている第2ワイヤ部分28もL/3の距離だけ牽引方向に移動する。そのため、第2ワイヤ部分28は2L/3の長さだけ余ることになる。これを放置すると回転ドラム38に対して第2ワイヤ部分28が緩むことになり、第1ワイヤ部分27の巻取りが十分にできない状態になる。
【0051】
そこで、この第2ワイヤ部分28の余剰分を吸収するために、ワイヤ長さ調整手段としてバランスユニット23が設けられている。スプリングバランサー24はバランスユニット23によって図において左側に付勢しているため、第2ワイヤ部分28に余剰分が生じるとこれに係合している第2動滑車21と共に左側にバランスユニット23が移動し、第2ワイヤ部分28の弛みを直ちに吸収する。この時、第2動滑車21の移動距離によってその倍の距離の分だけ第2ワイヤ部分28の弛みが吸収される。そうすると、上記の2L/3の長さを吸収するためにバランスユニット23は、L/3だけ左側に移動することになる。この移動距離は走行体18の移動距離と同一となることから、走行体18とバランスユニット23とを移動の始点、終点を併せて並列的に配置すれば、これらは同一速度で並列的に移動することになる。
【0052】
このように走行体18における第1ワイヤ部分27の移動距離と第2ワイヤ部分28の移動距離とが一致するので、回転ドラム38におけるワイヤ26の緩みが生じず走行体18はスムーズに左方向に移動する。この場合、走行体18を左側に移動させるために働く第1ワイヤ部分27は、その一方端が第1動滑車20及び第1定滑車30を介して走行体18に固定され、その他方端が回転ドラム38に巻き取られることから、第1ワイヤ部分27に生じる力は走行体18を直接左側に移動する場合に要する力のほぼ3分の1となる。このようにして、小さな力によって走行体18を左側方向に安定的に移動させることが可能となる。
【0053】
次に、図1の(2)を参照して、重量物を引出ために準備する繰出時の動作について説明する。
【0054】
走行体18を図において右方向側に移動させようとする時には、回転ドラム38を図において矢印のように反時計方向回りに回転させる。すると、第2ワイヤ部分28は回転ドラム38によって巻き取られ、走行体18の他方端に固定されている端部までの距離が徐々に短くなる。この結果、走行体18は図において右側(繰出方向)に移動することになる。
【0055】
一方、第1ワイヤ部分27は回転ドラム38で巻き取られた(繰出した)分だけ繰り出されることになる。すなわち、回転ドラム38を介しての第2ワイヤ部分28の長さの変化と第1ワイヤ部分27の長さの変化とはワイヤ26が延びない剛体とすると同一となる。
【0056】
具体的には、第2ワイヤ部分28が巻き取られて位置P1から位置P2へ距離Lだけ移動した時を想定する。この場合、第1ワイヤ部分27も距離Lだけ繰出されたことになる。第1ワイヤ部分27は、3本のワイヤとして走行体18に係合する形になるので、走行体18はL/3の距離だけ繰出方向に移動する。そうすると、この時走行体18に接続されている第2ワイヤ部分28はL/3の距離だけしか牽引方向に移動しない。これでは、回転ドラム38が第2ワイヤ部分28を2L/3の長さだけ多く巻き取ることになり、回転ドラム38の巻取りのバランスが崩れてしまう。これを放置すると走行体18は繰出方向に移動できないことになる。
【0057】
そこで、この第2ワイヤ部分28の巻き取りのアンバランスを調整するためにバランスユニット23が設けられている。バランスユニット23にはスプリングバランサー24が伸縮自在に接続されているだけなので、第2ワイヤ部分28の巻き取り速度に応じてバランスユニット23は図において右側に移動する。この場合、第2ワイヤ部分28の巻き取り距離が2L/3だけ余分であるので、バランスユニット23は、L/3だけ右側に移動することになる。この移動距離は走行体18の移動距離と同一となることから、走行体18とバランスユニット23とを移動の始点、終点を併せて並列的に配置すれば、これらは同一速度で並列的に移動することになる。
【0058】
このように回転ドラム38の前後における第1ワイヤ部分27の移動距離と第2ワイヤ部分28の移動距離とがバランスユニット23の働きによって一致するので、回転ドラム38におけるワイヤ26の巻取りが阻害されず走行体18はスムーズに右方向に移動する。この場合、走行体18を右側に移動させるために働く第2ワイヤ部分28に対して負荷が掛かっていないため、回転ドラム38の回転速度を上げることによって繰出時に要する時間を短縮することができる。
【0059】
図2はこの発明の第1の実施の形態による重量物搬送装置の概略構造を示した平面図であり、図3は図2におけるIII−IIIラインの断面図である。
【0060】
これらの図を参照して、重量物搬送装置42は、I型鋼等を井桁状に組み合わせたフレーム体40に、図において横方向(長手方向)に移動自在となる走行体18を設置したものを中心として構成されている。尚、図において記載されている符号は図1で示されたものと同一またはそれらに対応したものである。
【0061】
走行体18は、所定間隔に平行に配置された第1フレーム44a及び第1フレーム44bの間を長手方向に移動自在に設置されている。走行体18に長手方向に並列に配置され、その中央に長穴47が形成された第2フレーム45にバランスユニット23が係合し、長手方向に移動自在に設置されている。バランスユニット23には第2動滑車21が取付けられ、走行体18の他方端に接続された第2ワイヤ部分28が係合する。また、バランスユニット23にはワイヤ46が接続され、その端部はフレーム体40に取付けられたスプリングバランサー24に接続されている。これによって、バランスユニット23は図において左方向に常時付勢されることになる。
【0062】
一方、走行体18の一方端に接続された第1ワイヤ部分27は第1定滑車30に係合した後、走行体18の第1動滑車20に係合する。そして第2定滑車31a,31bに係合した後、フレーム体40に取付けられた回転ドラム38に巻回される。また、回転ドラム38に巻回される第2ワイヤ部分28は第3定滑車32a及び第4定滑車33に係合した後、バランスユニット23の第2動滑車21に係合する。そして第2ワイヤ部分28は第5定滑車34に係合した後、走行体18に接続する。
【0063】
尚、図において矢印のA方向は走行体18の牽引方向を示し、矢印のB方向は走行体18の繰出方向を示している。そして、図のように走行体18の移動の始点及び終点と、バランスユニット23の移動の始点及び終点とが対応する位置となるように、これらは並列に設置されている。また上述のようにこれらのストロークは同一長さとなるため、フレーム体40の長手方向を最大限に利用した走行体18の動作が可能となるため、牽引、繰出を繰り返すような重量物の搬出距離が長いような時でも効率的な搬送が可能となる。
【0064】
図4は図2及び図3で示した重量物搬送装置の使用状態を示した概略図である。
【0065】
図を参照して、トラクター48のシャーシ49上の前方部にコンテナ50が搭載されており、その後方部には重量物搬送装置42が設置されている。重量物搬送装置42は上述のように平坦形状であるため、シャーシ49上に設置してもコンテナ50の床面と略整列状態となる。
【0066】
そこで、コンテナ50内に格納されている鋼板コイル52のパレット53と重量物搬送装置42の走行体18(図示せず)との間をワイヤ等で接続し、重量物搬送装置42の走行体18を牽引方向に移動させることによって、鋼板コイル52を重量物搬送装置42の方向に引出す(牽引する)ことが可能となる。鋼板コイル52を走行体18の一度のストロークではコンテナ50から引出せない場合は、接続ワイヤを調整し走行体18の牽引、繰出を繰り返すことによって、重量物搬送装置42上に鋼板コイル52を引出すことができる。重量物搬送装置42上に引出された鋼板コイル52は、クレーン55等を使用して吊り上げて所望の場所に移動させることができるので、効率的な搬出作業となる。
【0067】
尚、上記では搬出作業に言及したが、搬入作業についても重量物搬送装置42を同様に使用することができる。この場合、重量物搬送装置42を逆方向に設置し、重量物搬送装置42上に積載された鋼板コイル52のパレット53を、走行体18に取付けられた接続棒等でコンテナ50内に押し込むように走行体18を作動させれば良い。これによって、シャーシ49上において重量物搬送装置42のみで搬入作業が可能となり、効率的な搬入作業となる。
【0068】
尚、上記の実施の形態では、ワイヤ長さ調整手段として特定のバランスユニット及びスプリングバランサーを用いているが、同様の機能を有するものであれば他の構成のものでも良い。
【0069】
又、上記の実施の形態では、走行体とバランスユニットを並列に配置しているが、用途に応じてこれらを並列以外に配置しても良い。
【0070】
更に、上記の実施の形態では、フレーム体を特定の構造としているが、他の構造であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
18…走行体
20…第1動滑車
21…第2動滑車
23…バランスユニット
24…スプリングバランサー
26…ワイヤ
27…第1ワイヤ部分
28…第2ワイヤ部分
30…第1定滑車
31…第2定滑車
38…回転ドラム
40…フレーム体
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を搬送するための重量物搬送装置であって、
長手方向に伸びるフレーム体と、
前記フレーム体の上に前記長手方向に移動自在となるように設置され、前記重量物を牽引するための走行体と、
前記走行体の牽引方向及び前記牽引方向とは反対の繰出方向に接続された1本のワイヤと、
前記ワイヤに接続され、前記ワイヤを前記牽引方向に対応する第1方向及び前記繰出方向に対応する第2方向のいずれにも巻き取ることができる回転ドラムとを備え、
前記走行体には第1動滑車が取付けられ、
前記フレーム体には第1定滑車が取付けられ、
前記ワイヤにおける前記回転ドラムと前記走行体の前記牽引方向側との間の第1ワイヤ部分は、前記走行体にその一端が固定され、前記第1定滑車に係合した後に前記第1動滑車に係合し、
更に、前記走行体の一定距離の移動に伴う前記第1ワイヤ部分の長さの変化と、前記ワイヤにおける前記回転ドラムと前記走行体の前記繰出方向側との間の第2ワイヤ部分の長さの変化との差を吸収するワイヤ長さ調整手段を備えた、重量物搬送装置。
【請求項2】
前記ワイヤ長さ調整手段は、
前記第2ワイヤ部分が係合する第2動滑車が取付けられ、移動自在のバランスユニットと、
前記バランスユニットと前記フレーム体との間に伸縮自在に接続され、前記バランスユニットが前記第2ワイヤ部分の巻き取り時に生じる移動方向に対して反対方向に前記バランスユニットを付勢するスプリングバランサーとを含む、請求項1記載の重量物搬送装置。
【請求項3】
前記バランスユニットは、前記走行体に対して各々の移動時の始点及び終点の位置が対応するように前記長手方向に対して並列に配置される、請求項2記載の重量物搬送装置。
【請求項4】
前記フレーム体は、平面視矩形で平坦状に形成され、
前記走行体は前記フレーム体の上面に沿って移動する、請求項3記載の重量物搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168344(P2011−168344A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30905(P2010−30905)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(501404804)住友金属物流株式会社 (13)