説明

重量物搬送装置

【課題】重量物搬送装置において路面の凹凸などにより被搬送物が浮き上がったとしても、あるいは重量物搬送装置が下がったとしても、重量物搬送装置が被搬送物から外れてしまうことを防止する。
【解決手段】重量物搬送装置1は、本体2と、本体2の下側に、地面に接するように取り付けられた移動具としての車輪5a,5bと、被搬送物100に設けられた接続部としての固定ピン4との間で上下方向の挿入によって接続するための本体側接続部としてのピン穴16を有し、上下方向に変位可能な載置台13と、載置台13を上向きに付勢する付勢部としてのバネ7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重量物を搬送するために、重量物搬送装置が用いられる場合がある。従来技術に基づく重量物搬送装置の一例としては、実公平7−10991号公報(特許文献1)に記載されたものが挙げられる。
【0003】
重量物搬送装置は、通常、ターンテーブルと呼ばれる載置台を有し、この載置台の上に重量物である被搬送物を載せる。被搬送物のサイズが大きい場合には、複数台の重量物搬送装置が用意され、被搬送物の下面のいくつかの箇所に1台ずつの重量物搬送装置を配置してこれらによって分担して支持することが行なわれる。被搬送物を平坦な載置台の上に単に載せるだけでは滑ってずれてしまうおそれがあるので、ずれ防止のために、図8に示す構造が用いられる場合がある。すなわち、予め、被搬送物100の下部に下面100uから下方に突出するように固定ピン4を設ける一方、重量物搬送装置101の載置台3の上面にはピン穴6を設けておく。被搬送物100を重量物搬送装置101に載せる際には固定ピン4をピン穴6に挿入する。このようにすることで、搬送中の被搬送物100と重量物搬送装置101との間での水平方向のずれを防止できる。重量物搬送装置101は本体2を有し、本体2の下部には車輪5a,5bが設けられている。車輪5a,5bはローラ状の部材である。載置台3は本体2によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−10991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
路面にある程度以上大きな凹凸がある場合、重量物搬送装置101の車輪5a,5bの少なくとも一方がこの凹凸を通過する際に大きな振動や浮き沈みが生じうる。この振動や浮き沈みによって一時的に、被搬送物100が浮き上がる、あるいは重量物搬送装置101が下がる場合がある。あるいは路面の凹凸以外の何らかの事情によっても被搬送物100が重量物搬送装置101から一時的に浮き上がる場合がある。
【0006】
そのような場合、図9に示すように、固定ピン4がピン穴6から抜けてしまい、被搬送物100だけが水平方向に移動してしまうという事態が生じうる。重量物搬送装置101を残して被搬送物100だけが水平方向に移動してしまった場合、固定ピン4とピン穴6の相対位置がずれてしまうので、固定ピン4はピン穴6に自然には戻らない。こうして、搬送作業中であるにもかかわらず重量物搬送装置101が被搬送物100から外れてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、被搬送物が浮き上がったとしても、あるいは重量物搬送装置が下がったとしても重量物搬送装置が被搬送物から外れてしまうことを防止することができる重量物搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく重量物搬送装置は、本体と、上記本体の下側に、地面に接するように取り付けられた移動具と、被搬送物に設けられた接続部との間で上下方向の挿入によって接続するための本体側接続部を有し、上下方向に変位可能な載置台と、上記載置台を上向きに付勢する付勢部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、付勢部の働きにより、載置台が被搬送物の変位に追従し、あるいは、本体の変位に追従し、載置台と被搬送物との間の接続関係は維持されるので、被搬送物が浮き上がったとしても、あるいは、重量物搬送装置が下がったとしても重量物搬送装置が被搬送物から外れてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置の使用中の第1の状態の断面図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置の使用中の第2の状態の断面図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置の操作部の働きの説明図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置のアンロック状態の平面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置のロック状態の平面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置の干渉部材の働きの説明図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置が備える載置台の断面図である。
【図8】従来技術に基づく重量物搬送装置の使用状態の断面図である。
【図9】従来技術に基づく被搬送物から重量物搬送装置が外れた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
(構成)
図1を参照して、本発明に基づく実施の形態1における重量物搬送装置について説明する。図1に示すように、本実施の形態における重量物搬送装置1は、本体2と、本体2の下側に、地面に接するように取り付けられた移動具としての車輪5a,5bとを備える。さらに、重量物搬送装置1は、被搬送物100に設けられた接続部としての固定ピン4との間で上下方向の挿入によって接続するための本体側接続部としてのピン穴16を有し、上下方向に変位可能な載置台13を有する。さらに、重量物搬送装置1は、載置台13を上向きに付勢する付勢部としてのバネ7を備える。
【0012】
本実施の形態では、移動具として車輪5a,5bを示したが、これはあくまで一例である。移動具は車輪に限らず、無限軌道であってもよい。移動具は、重量物である被搬送物がもたらす荷重に耐えて移動を実現することができるものであれば、さらにそれ以外の機構であってもよい。
【0013】
本実施の形態では、被搬送物側の接続部が固定ピン4であり、本体側接続部がピン穴16であり、固定ピン4がピン穴16に挿入される構造を示したが、これはあくまで一例である。被搬送物と本体との間での上下方向の挿入による接続を実現するためには、公知技術に基づいてさまざまな構造が選択可能である。被搬送物側の何らかの突出部が本体側接続部としての何らかの受入れ部に挿入される構造であってもよい。逆に、本体側接続部としての何らかの突出部が被搬送物側の何らかの受入れ部に挿入される構造であってもよい。
【0014】
被搬送物100を載せない状態すなわち無負荷状態では、載置台13はバネ7の働きにより押し上げられた状態となる。被搬送物100を載せた状態では、被搬送物100がもたらす荷重により載置台13は押し下げられる。その結果、載置台13は変位しうる範囲内の最も下の位置に達していてもよい。
【0015】
載置台13はターンテーブルであることが好ましい。すなわち、載置台13は鉛直方向の回転軸を中心として回転可能に支持されているものであることが好ましい。本実施の形態では、載置台13はターンテーブルであるものとして示している。ただし、本発明の適用に当たっては、載置台13はターンテーブルに限定されない。
【0016】
(作用・効果)
本実施の形態における重量物搬送装置1は、載置台13を上向きに付勢する付勢部としてバネ7を備えるので、被搬送物100が本体2を残して相対的に上向きに変位したときには、図2に示すように、バネ7が伸びることによって載置台13が上昇する。すなわち、載置台13が被搬送物100の変位に追従して上昇する。したがって、固定ピン14とピン穴16との接続関係は維持される。よって、本実施の形態における重量物搬送装置では、振動、浮き沈みなどの原因によりたとえ被搬送物が浮き上がったとしても、あるいは重量物搬送装置が下がったとしても、重量物搬送装置が被搬送物から外れてしまうことを防止することができる。
【0017】
(好ましい構成)
なお、図1、図2に示すように、本実施の形態における重量物搬送装置1は、操作部を備えることが好ましい。ここでいう「操作部」は、付勢部としてのバネ7に抗して載置台13を押し下げることが可能なように取り付けられ、本体2から側方に延在するものである。この構成を採用することにより、作業者は危険な作業から解放される。レバー9は、操作部の少なくとも一部である。レバー9は、本体2から側方に延在している。ここでいう「側方」とは、前後左右斜めの全てを含む。レバー9は本体2から側方のいずれかの向きに延在していればよい。重量物搬送装置を使用する際には、通常、本体2は被搬送物100の下方に隠れることとなるが、操作部が被搬送物の下方から側方にはみ出すような姿勢で重量物搬送装置を配置すればよい。
【0018】
たとえば図3に示すように載置台13に被搬送物100が載っていない状態では、バネ7の働きにより載置台13は最も高い位置にまで上がっている。図3に示す状態において、作業者が矢印10の向きにレバー9を引き上げると、レバー9は回転軸8を中心として回転するので、操作部の先端の舌状部18がバネ7に抗して載置台13を下向きに押し下げる。したがって、被搬送物100と地面との間に重量物搬送装置1を挿入する際や、被搬送物100と地面との間から重量物搬送装置1を取り出す際には、作業者は、被搬送物100の下側に手を入れることなく被搬送物100の側方からレバー9を操作するのみで作業することができる。よって、作業者は、重量物搬送装置1の出し入れの度に被搬送物100の下側に手を入れて載置台13を直接押し下げるという危険な作業から解放される。
【0019】
さらに、本実施の形態における重量物搬送装置1は、載置台13の上下方向の変位を拘束しないアンロック状態と、載置台13が押し下げられた状態を保持するロック状態との間で切換え可能なロック切換え部を備えることが好ましい。このようなロック切換え部を備えていれば、載置台13が押し下げられた状態を容易に保持することができるので、作業性が向上するからである。
【0020】
重量物搬送装置1の平面図を図4に示す。本体2の外形は平面的に見たときに長方形をしており、4つの車輪を内部に保持している。本体2から側方に向かって2本の平行な板材である干渉部材支持部14が張り出している。2本の干渉部材支持部14は、干渉部材12をスライド可能に保持している。レバー9は、本体2の一辺に平行に保持された回転軸8を中心として回転可能に支持されている。レバー9と回転軸8とはつながっており、全体としてL字形をなしている。レバー9と回転軸8とは一体的に形成された棒材であってもよい。図4に示す状態では、干渉部材12はレバー9の回動に干渉しない位置にある。この状態はアンロック状態である。図3で矢印10に示す向きにレバー9を引き上げ、レバー9が干渉部材12より上側に至らしめる。この状態で、図5に矢印15で示すように、干渉部材12をスライドさせる。こうすることによって、図6に示すように、干渉部材12がレバー9の下側に入り込む。バネ7の力で舌状部18は上昇しようとし、その結果、レバー9は下側に戻ろうとするが、干渉部材12が当接しているので、レバー9は一定以上下側へは回動することができない。レバー9が下側に回動への回動を制止されていることにより、舌状部18は上側に回動することができない。したがって、載置台13は下降した位置で保持される。この状態がロック状態である。
【0021】
以上のように、ロック切換え部は、変位可能な干渉部材12を備えることが好ましい。干渉部材12は、ロック状態としたときに干渉部材12が操作部の少なくとも一部としてのレバー9に当接することによって、操作部に起因する載置台13に対する押下げを解除する側への変位を制止するように配置された部材である。ロック状態では操作部の一部が載置台13を押し下げている。操作部の状態によっては、載置台13に対する押し下げは解除されうるが、干渉部材12の働きによって、操作部は拘束され、その結果、載置台13に対する押し下げの解除が制止される。このような部材を用いれば、ロック状態を解除する側への操作部の変位を物理的に制止することができるので、確実にロック状態を維持することができる。
【0022】
ここまで操作部がレバー9を含む構造を例示して説明してきたが、本発明を適用するに当たっては、操作部はレバーを含む構造に限らない。レバーに代えて他の形状の部材であってもよい。操作部のうち作業者が触れる部分がレバーであれば、構造が簡単で済み、作業者にとってもわかりやすくなるので好ましい。操作部は、たとえばワイヤの先に何らかのスイッチがついたものを含む構造であってもよい。操作部がスイッチを備える場合は、そのスイッチは、押しボタンであってもよく、たとえばチューブを握るか離すかによって操作するものであってもよい。
【0023】
本発明に基づく重量物搬送装置が備える操作部および干渉部材に関して好ましい条件を整理すると以下のようになる。
【0024】
操作部は本体2に設けられた回転軸8を中心に回動可能なレバー9を含み、干渉部材12は、ロック状態ではレバー9の回動経路内に進入し、アンロック状態ではレバー9の回動経路から退避する部材であることが好ましい。本実施の形態で示した重量物搬送装置1は、好ましいことにこれらの条件が満たされている。
【0025】
載置台13を単独で取り出した断面図を図7に示す。詳しく述べれば、載置台13は、被搬送物100に当接するための載置板13aと、載置板13aから下方に延在する筒形部13bと、筒形部13bの下部の外周につば状に張り出して設けられた係止部13cとを含み、付勢部は、筒型部13bの内側に配置されたバネ7を含み、操作部は、係止部13cを押し下げる部材を含むことが好ましい。この構成を採用することにより、簡単な構造で載置台を実現することができ、載置台は操作部によって確実に押下げ可能な構造とすることができる。「押し下げる部材」とは、たとえば舌状部18である。図7に示した載置台13の構造はあくまで一例であり、載置台の具体的な構造はこれに限らない。
【0026】
本実施の形態では示した本体2の構造はあくまで一例である。本体の形状はあくまで一例であってこれに限らない。移動具が車輪である場合の車輪の配置、数についても、実施の形態で示したのはあくまで一例であってこれに限らない。
【0027】
本実施の形態では、操作部はレバー9と回転軸8と舌状部18とを含むものとして説明したが、これはあくまで一例である。操作部は他の構造であってもよい。操作部が載置台を押し下げる部材は、舌状部18の代わりに棒状の部材などであってもよい。
【0028】
本実施の形態では、ロック切換え部は干渉部材12を備えることとし、ロック状態ではこの干渉部材12がレバー9の回動経路内に進入し、アンロック状態では干渉部材12がレバー9の回動経路から退避するものとして説明したが、これはあくまで一例である。ロック切換え部の構造はこれに限らない。他の構造を以って、ロック状態/アンロック状態を切り替えることとしてもよい。
【0029】
上記各実施の形態では、付勢部はバネ7であるものとして説明したが、これはあくまで一例である。付勢部はバネ以外の弾性体であってもよい。
【0030】
なお、上記各実施の形態では、ロック切換え部を備える例を図示して説明したが、たとえロック切換え部がない構造であっても、被搬送物が浮き上がった際に被搬送物が重量物搬送装置から外れてしまうことを防止することができるという効果は一応得ることができる。
【0031】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0032】
1,101 重量物搬送装置、2 本体、3,13 載置台、4 固定ピン、5a,5b 車輪、6,16 ピン穴、7 バネ、8 回転軸、9 レバー、10 (レバーの回転を示す)矢印、11 ロック切換え部、12 干渉部材、13a 載置板、13b 筒形部、13c 係止部、14 干渉部材支持部、15 (干渉部材の移動を示す)矢印、18 舌状部、100 被搬送物、100u 下面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体の下側に、地面に接するように取り付けられた移動具と、
被搬送物に設けられた接続部との間で上下方向の挿入によって接続するための本体側接続部を有し、上下方向に変位可能な載置台と、
前記載置台を上向きに付勢する付勢部とを備える、重量物搬送装置。
【請求項2】
前記付勢部に抗して前記載置台を押し下げることが可能なように取り付けられ、前記本体から側方に延在する操作部を備える、請求項1に記載の重量物搬送装置。
【請求項3】
前記載置台の上下方向の変位を拘束しないアンロック状態と、前記載置台が押し下げられた状態を保持するロック状態との間で切換え可能なロック切換え部を備える、請求項2に記載の重量物搬送装置。
【請求項4】
ロック切換え部は、変位可能な干渉部材を備え、前記干渉部材は、前記ロック状態としたときに前記干渉部材が前記操作部の少なくとも一部に当接することによって、前記操作部に起因する前記載置台に対する押下げを解除する側への変位を制止するように配置されている、請求項3に記載の重量物搬送装置。
【請求項5】
前記操作部は前記本体に設けられた回転軸を中心に回動可能なレバーを含み、前記干渉部材は、前記ロック状態では前記レバーの回動経路内に進入し、前記アンロック状態では前記レバーの回動経路から退避する部材である、請求項4に記載の重量物搬送装置。
【請求項6】
前記載置台は、前記被搬送物に当接するための載置板と、前記載置板から下方に延在する筒形部と、前記筒形部の外周面に設けられた係止部とを含み、前記付勢部は、前記筒型部の内側に配置されたバネを含み、前記操作部は、前記係止部を押し下げる部材を含む、請求項1から5のいずれかに記載の重量物搬送装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−229067(P2012−229067A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96936(P2011−96936)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(591231524)サンエイ株式会社 (7)
【出願人】(591003655)株式会社チルコーポレーション (6)