説明

重量物積載用枕木

【課題】耐荷重性能を向上させることができるとともに、軽量化を図ることができる重量物搭載用枕木を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金の押出材により成形される重量物搭載用枕木10は、上下に対向配置される帯状の一対の平板11,12と、これら平板11,12の間に配置され、これら平板11,12の幅方向中心部どうしを接続する垂直板13とで形成され、平板11,12と垂直板13との接合部14の両側表面が凹円弧状に形成されており、横断面の幅Wが高さHより小さく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の保管等のために用いられる重量物積載用枕木に関する。
【背景技術】
【0002】
重量物積載用枕木としては、天然木材からなる枕木が知られている。しかし、木製の枕木は、重量が重いために取扱性が悪いだけでなく、変形や破損によって耐久性を長期間維持できずに使用寿命が短いことが問題となっている。
【0003】
そこで、材質を樹脂製や金属製とした枕木が用いられるようになってきている。例えば、特許文献1には、樹脂製の枕木が開示されている。この樹脂製の枕木は、長尺状の一対の高強度板と、これら高強度板の間に配置される板状の接続部とを一体に押出成形した成形体で構成されている。そして、成形体に設けられた溝又は貫通孔に補強材を配置することにより、枕木の強度を向上させている。
【0004】
また、金属製の枕木としては、特許文献2から4に開示されているように、軽量化のためにアルミニウム合金材を採用したものが多く提案されている。これらのアルミニウム合金材の枕木は、横断面において方形の周壁を有し、各壁面の中央部に、対向壁面間を繋ぐ補強壁を形成して田の字形等の断面が設けられている。これらの枕木は、方形に設けられているため、設置の際の方向性がなく使い勝手がよいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐174947号公報
【特許文献2】特開平8‐119450号公報
【特許文献3】実開平2‐70001号公報
【特許文献4】実用新案登録第3062267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製の枕木は軽量で取扱性に優れているが、重量物を載置する場合の耐荷重性能が懸念される。また、外気にさらされて劣化し易い等、耐環境性能では金属製の枕木に劣るという問題がある。一方で、アルミニウム合金材を用いた方形の枕木は、樹脂製の枕木と比べて耐荷重性能に優れ、耐環境性能にも優れている。
【0007】
しかし、特許文献2の枕木は、トラックの荷台等で使用されるものであり、特許文献3及び特許文献4の枕木は、大型機械類の移設等に際し、ジャッキ等で揚重した機械類を載置支承するために用いられるものである。すなわち、これらの枕木は、いずれも荷重を短時間支持するもので、長期に安定して支持することを目的としたものではない。
また、重量物積載用枕木の取扱性の向上を図るための軽量化が求められており、軽量の枕木においても長期に安定して重量物を支持できる耐荷重性能の向上が求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、耐荷重性能を向上させることができるとともに、軽量化を図ることができる重量物搭載用枕木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルミニウム合金の押出材により成形される重量物搭載用枕木であって、上下に対向配置される帯状の一対の平板と、これら平板の間に配置され該平板の幅方向中心部どうしを接続する垂直板とで形成され、前記平板と前記垂直板との接合部の両側表面が凹円弧状に形成されており、横断面の幅Wが高さHより小さく設定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の重量物搭載用枕木は一対の平板と垂直板とで形成しており、その横断面を、中空部を設けて方形状とした枕木の面積と同じに設定しても、垂直方向に重量物を支持する垂直板の板厚を、方形状の枕木における側板の板厚よりも大きく設定でき、上面から受ける荷重に対する剛性を高く設定することができる。
また、方形状の枕木では、上面の端部だけに負荷がかかるように重量物が載せられた場合、その端部に配置される側板のみで重量物を支えなければならない。一方、一対の平板と垂直板とで形成した枕木では、上面の端部に重量物が載せられた場合でも、常に中央の垂直板で重量物を支持することができるので、安定して重量物を支持できる。
さらに、平板と垂直板との接合部の両側表面を凹円弧状に設けることで、接合部の応力集中を低減でき、曲げ剛性を高めることができる。したがって、枕木の耐荷重性能を向上させることができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0011】
また、枕木の横断面の幅Wを高さHより小さく設定することで、上面の端部だけに負荷がかかるように重量物が載せられた場合でも、モーメントを小さく抑えられる。この場合、横断面の幅Wに対する高さHの比率H/Wは1.25以上2.5以下に設定することが好ましい。
なお、上下に配置される平板は、同幅かつ同板厚の同じ形状に設けると、上下の配置を反転させて設置した場合でも同じ状態で使用できる。
【0012】
本発明の重量物搭載用枕木において、前記平板の厚みは、側縁から中心に向かうにつれて厚くなるように形成されているとよい。
平板の厚みを側縁から中心に向かうにつれて厚くして設けることにより、平板部分の変形強度をより高めることができる。また、平板と垂直板との接合部との接続が緩やかになり、応力集中が低減され、さらに曲げ剛性を高めることができる。
【0013】
本発明の重量物搭載用枕木において、前記平板の両側縁に、上下方向の内側に突出する凸条が形成されているとよい。
凸条を設けることで、複数の枕木を接近させて保管する場合などに枕木どうしが重なるのを防止できる。また、枕木を移動させる際には、凸条部分によって保持し易くなっており、取扱性を向上させることができる。
【0014】
本発明の重量物搭載用枕木において、前記平板の外表面に、長さ方向に延びる複数の凹部が形成されているとよい。
この場合、平板の外表面に凹部を設けて滑り止めの機能を付加している。また、凹部を設けることで、枕木が雨に曝されるなどして水分が付着した場合でも、凹部から水分が抜けるため、平板上に載置される重量物に水分が付着することを防止することができる。
【0015】
本発明の重量物搭載用枕木において、前記接合部の両側表面が半径R10mm以上20mm以下の凹円弧状に設定されているとよい。
平板と垂直板との間の接合部の両側表面の半径Rが大きくなるにつれて、接合部の応力集中が低減されるため曲げ剛性を高めることができる。半径Rが10mm未満の場合は、必要な曲げ剛性が得られない。また、半径Rが20mmを超える場合は、曲げ剛性を高めることができるが、接合部が肉厚となって、枕木の重量が増加するため、好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態の重量物搭載用枕木を示す斜視図である。
【図2】重量物搭載用枕木を使用して荷物を重ねた状態を説明する図である。
【図3】図1に示す重量物搭載用枕木の横断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の重量物搭載用枕木を示す横断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の重量物搭載用枕木を示す横断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の重量物搭載用枕木を示す横断面図である。
【図7】重量物搭載用枕木の荷重負荷試験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の重量物搭載用枕木の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の重量物搭載用枕木10(以下、単に枕木という)は、図2に示すように、重量物(アルミニウム合金のビレット20)を載置するために用いられるものである。これらの枕木10をビレット20の間に配置し、枕木10を介してビレット20を積み重ねることにより、ビレット20を複数積み重ねた状態で保管することができる。
【0018】
枕木10は、アルミニウム合金の押出成形により一体に形成されており、図1に示すように、上下に対向配置される帯状の一対の平板11,12と、これら平板11,12の間に配置され、その幅方向中心部どうしを接続する垂直板13とで形成されている。平板11,12は、それぞれ枕木10の上面11aと下面12aを構成するものであり、外表面が互いに平行に設けられている。また、平板11,12と垂直板13との接合部14の両側表面は凹円弧状に形成されており、その凹円弧状の表面が、半径R10mm以上20mm以下となるように設定されている。
【0019】
そして、枕木10の横断面は、図3に示すように、幅Wが高さHよりも小さく設定されるとともに、この幅Wに対する高さHの比率H/Wが1.25以上2.5以下に設定されている。また、上下に配置される平板11,12は、同幅かつ同板厚の同じ形状に設けられており、枕木10の上下の配置を反転させて設置した場合でも同じ状態で使用することができる。
なお、枕木10の材料には、例えば、JIS規格における6000系合金又は7000系合金のアルミニウムを使用することができる。
【0020】
このように、枕木10は一対の平板11,12と垂直板13とで形成されており、その横断面を、中空部を設けて方形状とした枕木の面積と同じに設定しても、垂直方向に重量物を支持する垂直板13の板厚を、方形状の枕木における側板の板厚よりも大きく設定でき、上面11aから受ける荷重に対する剛性を高く設定することができる。
また、方形状の枕木では、上面の端部だけに負荷がかかるように重量物が載せられた場合、その端部に配置される側板のみで重量物を支えなければならない。一方、一対の平板11,12と垂直板13とで形成した枕木10では、上面11aの端部に重量物が載せられた場合でも、常に中央の垂直板13で重量物を支持することができるので、安定して重量物を支持できる。
さらに、平板11,12と垂直板13との接合部14の両側表面を凹円弧状に設けることで、接合部14の応力集中が低減されるため、曲げ剛性を高めることができる。したがって、枕木10の耐荷重性能を向上させることができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0021】
また、枕木10の横断面の幅Wを高さHより小さく設定することで、図3に矢印Aで示すように上面11aの端部だけに負荷がかかるように重量物(ビレット20)が載せられた場合でも、矢印Mで示すように生じるモーメントを小さく抑えられる。この場合、横断面の幅Wに対する高さHの比率H/Wは1.25以上2.5以下に設定することが好ましい。
【0022】
また、平板11,12と垂直板13との間の接合部14の両側表面の半径Rが大きくなるにつれて、接合部14の応力集中が低減されるため、曲げ剛性を高めることができる。半径Rが10mm未満の場合は、必要な曲げ剛性が得られない。また、半径Rが20mmを超える場合は、曲げ剛性を高めることができるが、接合部14が肉厚となって、枕木10の重量が増加するため、好ましくない。
【0023】
図4は、本発明の第2実施形態の重量物搭載用枕木30を示している。第2実施形態の枕木30は、上下に対向配置される帯状の一対の平板11,12の厚みが、側縁から中心に向かうにつれて厚くなるように形成されている。この場合、平行に設けられた平板11,12の外表面(枕木30の上面11a及び下面12a)と反対側に位置する内側の面を傾斜面11b,12bに設けることにより構成している。
なお、枕木30の主要な構成は第1実施形態のものと同様であり、第1実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
このように、平板11,12の厚みを側縁から中心に向かうにつれて厚くして設けることにより、平板11,12の変形強度をより高めることができる。また、平板11,12と垂直板13との接合部14との接続が緩やかになり、応力集中が低減され、さらに曲げ剛性を高めることができる。
【0024】
図5は、本発明の第3実施形態の重量物搭載用枕木40を示している。第3実施形態の枕木40には、平板11,12の両側縁に、上下方向の内側に突出する凸条15が形成されている。
凸条15を設けることで、複数の枕木40を接近させて保管する場合などに枕木40どうしが重なるのを防止できる。また、枕木40を移動させる際には、凸条15部分によって保持し易くなっており、取扱性を向上させることができる。
【0025】
図6は、本発明の第4実施形態の重量物搭載用枕木50を示している。第4実施形態の枕木50は、平板11,12の外表面(枕木50の上面11a及び下面12a)に、長さ方向に延びる複数の凹部16が形成されている。
この場合、枕木50の上面11a及び下面12aに凹部16を設けて滑り止めの機能を付加している。また、凹部16を設けることで、枕木50が雨に曝されるなどして水分が付着した場合でも、凹部16から水分が抜けるため、平板11,12上に載置される重量物に水分が付着することを防止することができる。
【0026】
次に、本発明の重量物搭載用枕木について行った荷重負荷試験について説明する。
試験に用いる枕木10は、材料にJIS規格における7000系合金のアルミニウムを使用して作製した。この枕木10は、100kN(約10ton)の重量物を載置した際にも耐え得るように検討したものであり、図1及び図3に示す符号では、高さH:100mm、幅W:80mm、長さL:1200mm、平板11,12の板厚t1:4mm、垂直板13の板厚t2:12mmとして形成した。そして、図7(a),(b)に示すように、枕木10をビレット20の間に配置して、枕木10を介してビレット20を積み重ねた状態とした際に、枕木10に発生する応力及びひずみを確認した。
【0027】
図7(a),(b)では、ビレット20による枕木10への負荷を矢印a1〜a3,b1〜b3で表しており、枕木10の上面11a上に、ビレット20の直径D:228.6mm(9inch)の間隔ごとにその荷重を負荷し、各矢印の1箇所につき30kN(約3ton)までの負荷をかけて試験を行った。なお、この場合は各矢印の1箇所につき20kN以上の耐荷重性能を想定している。
図7に示す積層状態を説明すると、図7(a)は、枕木10の上面11aと下面12aとにおけるビレット20との接触位置をD/2だけずらして載置した状態であり、図7(b)は、枕木10の上面11aと下面12aとでビレット20の接触位置を合わせて載置した状態を示している。
【0028】
図7(a)に示すビレット20との接触位置をD/2ずらした状態では、30kNまでの負荷をかけた際に微小な変位が確認されたが、負荷を除去した後においてひずみは残らず、弾性範囲内での変形が認められる程度であった。また、図7(b)に示す接触位置を合わせた場合には、30kNの負荷を除去した後に0.01%程度の僅かなひずみが発生したが、このひずみの量は無視できる程度の量であり、十分に使用に耐え得ることがわかった。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
10,30,40,50 重量物搭載用枕木
11,12 平板
11a 上面
12a 下面
11b,12b 傾斜面
13 垂直板
14 接合部
15 凸条
16 凹部
20 ビレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の押出材により成形される重量物搭載用枕木であって、上下に対向配置される帯状の一対の平板と、これら平板の間に配置され該平板の幅方向中心部どうしを接続する垂直板とで形成され、前記平板と前記垂直板との接合部の両側表面が凹円弧状に形成されており、横断面の幅Wが高さHより小さく設定されていることを特徴とする重量物搭載用枕木。
【請求項2】
前記平板の厚みは、側縁から中心に向かうにつれて厚くなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の重量物搭載用枕木。
【請求項3】
前記平板の両側縁に、上下方向の内側に突出する凸条が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の重量物搭載用枕木。
【請求項4】
前記平板の外表面に、長さ方向に延びる複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の重量物搭載用枕木。
【請求項5】
前記接合部の両側表面が半径R10mm以上20mm以下の凹円弧状に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の重量物搭載用枕木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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