説明

重量計測式水分量測定装置

【課題】試料に照射する輻射エネルギの分布を改善し、試料から水分を離脱させる脱水能力が損なわれることがないようにする。
【解決手段】重量計測式水分量測定のための測定装置10は、少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構11と、計量セル43と、この計量セルと連結可能な試料載置部材60とを備えている。輻射エネルギ放出機構は、荷重方向に関して試料の上方及び/または下方に配設される。輻射エネルギ放出機構と試料との間に、回転可能に支持された伝熱機構60が配設されており、輻射エネルギ放出機構の輻射エネルギの少なくとも一部を吸収することができ、また、その吸収した輻射エネルギを、輻射熱の形態の輻射エネルギとして、この伝熱機構の少なくとも1つの輻射エネルギ放出面12を介して試料へ受渡すことができ、また回転可能であることから、試料の表面の全域にその輻射エネルギを照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量計測式水分量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる水分量を測定するには、その試料を乾燥させ、その乾燥プロセスの前後における試料の重量を計測すればよい。しかしながらこの方法は、非常に手間のかかる方法であるため、高コストである上に測定誤差も大きくなりがちである。
【0003】
また、乾燥プロセスの進行途中で、試料の重量の減少量を計測するという方法も用いられている。所与の試料の重量の減少量は、温度と、乾燥を開始してからの経過時間と、テスト・コンパートメント内の条件との関数となり、その重量は、その試料の乾燥重量に漸近する重量−時間曲線に従って変化して行く。所与の試料に適用すべき重量−時間曲線は比較試験によって求められ、その曲線は近似式によって数学的に表される。現在利用可能なエレクトロニクス技術を適当に組込んだ重量計測式水分量測定装置は、上記曲線のパラメータの計測値に基づいて、また更に、乾燥を開始してからの経過時間に基づいて、計算によって試料の水分量を求めることができ、そのようにして求めた測定値をディスプレイユニットに表示する。この方法を用いれば、物質を乾燥させるにしても、完全乾燥状態にまでする必要はなく、重量−時間線図における2つの測定点の座標を求めるだけで、十分に測定の目的を達することができる。
【0004】
上でも述べたように、試料の重量の変化は、概ね、温度と、乾燥を開始してからの経過時間と、テスト・コンパートメント内の条件との関数になる。しかるに、特に、テスト・コンパートメントに課される要求が非常に厳しいために、また、テスト・コンパートメントに構造上の問題があるために、市販のこの種の測定装置では、その測定精度に限界があった。
【0005】
ここで使用している「テスト・コンパートメント」という用語は、普段は測定装置のハウジングによって囲繞されており、試料の搬出入の際には開放可能な空間のことである。また、テスト・コンパートメントの中には、試料載置部材と、試料加熱手段とが配設される。そして、試料載置部材は重量計測装置に連結されている。
【0006】
多くの場合、試料は、例えば試料トレイなどの平坦で扁平な試料載置部材の上に、薄い層を成すようにひろげて載置される。試料トレイは、重量計測式水分量測定装置の中に装着したときに、その試料載置領域が水平になるようにしておくことが望ましく、そうすれば、試料がサラサラした低粘度の液体である場合にも、その試料が、試料トレイの(荷重方向に関して)最低位置となる箇所に集まってしまうのを防止することができる。
【0007】
また、試料加熱手段としては、様々な輻射エネルギ発生源が使用されており、例えば、放熱ラジエータ、マイクロ波発生器、ハロゲンランプ、それにクオーツランプなどが用いられている。以上に述べた種類の重量計測式水分量測定装置の一例を挙げるならば、例えば、ヨーロッパ特許EP 0 611 956 B1号公報に記載されているものがある。同特許公報の重量計測式水分量測定装置においては、計量パンに試料物質を載置する際には、その計量パンを重量計測式水分量測定装置の外部に取出すようにしている。またそのために、重量計測式水分量測定装置のうちの天秤部分を摺動可能な担持部材に載置してあり、その担持部材を抽斗のようにして重量計測式水分量測定装置のハウジングから引き出せるようにしている。また、輻射エネルギ発生源としては、リング形のハロゲンランプを使用しており、この測定装置の運転中はそのハロゲンランプが試料載置部材の真上に位置している。
【0008】
実験を行って確認されたところによれば、在来の重量計測式水分量測定装置の測定精度を低下させていた特に重大な原因は、使用している輻射エネルギ発生源の構造及び形状が不適当であることにある。例えば、多数の孔が形成された輻射エネルギ放出機構や、輻射エネルギの発生部位の形状が点状または線状である輻射エネルギ放出機構などを使用している場合には、試料に対する輻射エネルギの照射が不均一となり、試料上の幾つかの点状領域において輻射エネルギ密度が高くなり過ぎ、その何箇所かにおいて、熱により試料が損なわれることがある。
【0009】
また、輻射エネルギ放出機構が、薄くひろげられた試料の全域に亘って延展している場合には、試料とその輻射エネルギ放出機構との間の空間に、含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体の塊が形成されて滞留するために、試料からの更なる水蒸気の離脱が阻害されるおそれがある。このことは、乾燥プロセスに対する妨害となるものであって、乾燥継続時間に大きな影響を及ぼすおそれがあり、またその場合に、特に、輻射エネルギ放出機構と試料との間の空間に、温度に応じたランダムな対流が発生し、その対流の影響が測定結果に誤差をもたらすことになる。
【0010】
乾燥プロセスにおける妨害により生じる乾燥継続時間の誤差、及び/または、熱分解により生じる試料の重量計測誤差のために、上述した数学モデルを用いた解析によって得られる測定の精度が低く抑えられている。このような数学モデルを用いる方法の替わりに、可能な限りの水分を試料から駆逐することを必要とする周知の方法を採用することもできるのであるが、しかしながら、その方法では乾燥に要する時間が非常に長くなり、輻射エネルギ放出機構から放出される輻射熱の形態の輻射エネルギが長時間に亘って試料に照射されるため、試料が熱分解したり、酸化されたりするリスクが大きなものになる。
【0011】
以上に説明した事情から、重量計測式水分量測定装置によって水分量の確実な値を得ることは殆ど不可能となっている。そのため、物質の水分量をより高精度で測定するためには、今なお、周知のカール・フィッシャー滴定法が用いられている。この方法は、非常に手間がかかり、操作が不適切であることに起因する誤差が生じやすく、更に高コストでもある。
【特許文献1】ヨーロッパ特許EP 0 611 956 B1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、次のような重量計測式水分量測定装置を提供することにあり、即ち、その重量計測式水分量測定装置は輻射エネルギ放出機構を備え、その輻射エネルギ放出機構が試料に照射する輻射エネルギの分布を改善したものである。また更に、その重量計測式水分量測定装置は、輻射エネルギの分布を改善するのと引き替えに試料から水分を離脱させる脱水能力が損なわれることがないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載した重量計測式水分量測定のための測定装置によって達成される。
【0014】
本発明に係る重量計測式水分量測定のための測定装置は、少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構と、計量セルと、該計量セルと連結可能な試料載置部材とを備えている。前記試料載置部材は、該試料載置部材に試料を載置することと、該試料載置部材から試料を除去することとが可能に構成されている。前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構は、荷重方向に関して試料の上方及び/または下方に配設されている。即ち、輻射エネルギ放出機構が試料の上方に配設された構成としてもよく、試料の下方に配設された構成としてもよく、更には、試料の上方及び下方の両方に配設された構成としてもよい。各々の輻射エネルギ放出機構と試料との間に、回転可能に支持された伝熱機構が配設されており、この伝熱機構の回転軸心は、試料または前記試料載置部材が延展する平面に直交する方向に延在している。前記伝熱機構は、前記輻射エネルギ放出機構の輻射エネルギの少なくとも一部を吸収することができ、また、その吸収した輻射エネルギを、輻射熱の形態の輻射エネルギとして、該伝熱機構の輻射エネルギ放出面を介して試料へ受渡すことができ、また更に、少なくとも該伝熱機構が回転することの結果として、試料の表面の全域にその輻射エネルギを照射することができるようにしてある。従って、本発明に係る測定装置における前記伝熱機構の機能は、輻射熱の形態の輻射エネルギを吸収して放出するものだけに限られない。本発明によれば、前記伝熱機構は更に、例えば電磁波などのその他の形態の輻射エネルギを吸収して、それを輻射熱の形態の輻射エネルギに変換し、そしてその輻射熱の形態の輻射エネルギを、輻射エネルギ放出面を介して試料へ受渡すものとすることも可能である。更に、前記伝熱機構は試料の全体に亘って延展している必要はなく、なぜならば、回転する伝熱機構が、試料の表面に接触することなく試料の表面をかすめてその表面の全域に亘って移動することにより、輻射熱の形態の輻射エネルギが試料の表面の全域に亘って略々均一な輻射エネルギ分布をもって照射されるからである。
【0015】
ここでいう「伝熱機構」とは、少なくとも1箇所の輻射エネルギを吸収可能な部分と、略々均一な輻射エネルギ分布をもって輻射熱の形態の輻射エネルギを放出するための輻射エネルギ放出面とを備えた機構のことである。尚、伝熱機構が、略々均一な輻射エネルギ分布をもって輻射熱の形態の輻射エネルギを放出できるようにするためには、輻射エネルギ放出機構を伝熱機構から分離させてハウジングに固設するようにしてもよく、或いは、輻射エネルギ放出機構を伝熱機構の中に一体的に組込むようにしてもよい。
【0016】
こうして試料に照射される輻射熱の形態の輻射エネルギの強度分布を均一にするためには、前記輻射エネルギ放出面が、試料がひろげられている平面から一定の間隙を維持しつつ、回転移動するようにすることが好ましい。またその場合に、前記伝熱機構を、該伝熱機構の回転軸心に直交する平面に沿った平坦面を有する形状とし、前記輻射エネルギ放出面が、該伝熱機構の試料に対向する平坦な表面に略々対応しているようにすると有利である。更に、前記伝熱機構の回転軸心が、荷重方向に平行であるようにすると有利である。
【0017】
前記伝熱機構の前記輻射エネルギ放出面は、試料がひろげられる平坦面の面積と、略々同一面積の円形の表面とすることが好ましい。前記伝熱機構が開口を有しておらず、また気体透過性材料で形成されてもいない場合には、こうすることによって、輻射エネルギ放出機構が気体の上昇流により汚染されるのを、その伝熱機構によって最大限に防護することができる。
【0018】
前記輻射エネルギ放出機構が、前記伝熱機構の中に直接組込まれる場合には、その伝熱機構の形状を扇形にするのもよい。
【0019】
第1の実施の形態として、前記伝熱機構が、好ましくは荷重方向に向けられた複数の開口及び/または切欠部を有している構成とするのもよく、これによって、乾燥プロセスの実行中に試料から離脱した水蒸気が、前記伝熱機構と試料との間の空間に気体の塊として滞留して、その乾燥プロセスに悪影響を及ぼすという事態を防止することができる。
【0020】
第2の実施の形態として、前記伝熱機構が多孔質材料で形成されており、それによって気体が荷重方向に通過できるようにした構成とするのもよい。これによっても、上と同様に、試料から離脱した水蒸気が、試料の表面のすぐ上方に滞留するのを防止するという目的を達成することができる。
【0021】
第3の実施の形態として、前記伝熱機構が少なくとも1つの開口または切欠部を有しており、それによって該伝熱機構にプロペラ翼または羽根板の形状の少なくとも1本のスポーク部が形成されている構成とするのもよい。この少なくとも1本のスポーク部によって好ましくは荷重方向と逆向きの気体の流れを発生させることができ、それによって、水蒸気を高濃度で含有する気体が試料の近傍から排除されるようにすることができる。
【0022】
前記輻射エネルギ放出機構の前記輻射エネルギ放出面を回転させているため、前記輻射エネルギ放出面と試料との間の気体の塊のうちの前記輻射エネルギ放出面に隣接する部分が、前記輻射エネルギ放出面に引きずられて流動し、更に遠心力によって前記輻射エネルギ放出面の周縁部へ押しやられる。こうして前記輻射エネルギ放出面の周縁部へと移動した、水蒸気を高濃度で含有している気体は、例えば吸引機構により形成されている流れに引き込まれるなどして、そこから排除される。またこれとは別の可能な構成例として、前記試料載置部材の周縁部の隣接領域から、加熱された気体を排除するために、低温であるがゆえに比重の大きい気体を流入させるようにしてもよい。それによって、高温の気体がテスト・コンパートメント内で上昇するため、従来より知られた構成と同様にして、換気用のスリットを介してテスト・コンパートメントから流出させることができる。また、前記伝熱機構の回転速度が同じであっても排除速度が大きくなるように、前記伝熱機構の前記輻射エネルギ放出面が少なくとも1つの突条、溝、チャネル部、または凹部を有する構成とするのもよい。
【0023】
輻射熱の形態の輻射エネルギの受渡しに際して、前記輻射エネルギ放出面の全域に亘って均一な輻射エネルギ強度となるようにするためには、前記伝熱機構の少なくとも一部を熱伝導性の良好な材料で形成するのがよく、その具体例を挙げるならば、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、セラミック材料、またはガラス材料などで形成するとよい。輻射エネルギ発生源が発生する輻射エネルギが交流電磁場である場合には、前記伝熱機構の全体または一部を例えば鉄板などの硬磁性体材料で形成するとよい。その場合、交流電磁場によって鉄板に渦電流が誘導され、それによって鉄板が加熱される。また、前記伝熱機構の構成に応じて、前記伝熱機構の表面にコーティングを施すのもよい。前記伝熱機構をアルミニウムで形成する場合には、その耐蝕性並びに輻射エネルギの放射特性を向上させるために、そのアルミニウムの表面に例えば黒色酸化被膜などを形成するとよい。
【0024】
前記伝熱機構が、前記ハウジングに固定された1つまたは複数のベアリングを貫通して延在するシャフトを介して、駆動機構に連結された構成とするのも、理想的な構成例であるといえる。前記駆動機構はモータなどとすることができるが、ただし、前記ハウジング内に存在する気体の流れを利用したパッシブ形の駆動機構を用いることも考えられる。更には、歯車段をを介して前記伝熱機構を回転駆動するようにしてもよい。その場合には、複数の転動する球体を備えたリング部材(ターンテーブルに相当する部材)によって前記伝熱機構を支持する構成とするのもよく、このようなリング部材を、ここでは、ボール・ベアリング・リングと呼ぶことにする。前記伝熱機構の中心にシャフトを備えた構成とした場合には、そのシャフトから放射される輻射エネルギの強度が、前記伝熱機構のそのシャフト以外の部分から放射される輻射エネルギの強度と異なるという問題が生じるおそれがあるが、このようなボール・ベアリング・リングを用いた構成とするならば、前記伝熱機構の中心にシャフトが存在しないため、そのような問題が生じないことが利点となる。尚、複数の転動する球体を備えたリングの替わりに、滑り軸受方式の適当なリング部材を使用することも可能である。
【0025】
試料の物性によっては、加熱を穏やかにした場合であっても、その加熱によって試料の一部が昇華ないし分解することがある。そのような昇華形成物ないし分解生成物は、前記輻射エネルギ放出機構ないし前記伝熱機構の高温部分に堆積して、そこに断熱性を有する層を形成する傾向がある。それゆえ、前記伝熱機構が、着脱可能な取付具を介してシャフトまたはボール・ベアリング・リングに連結されている構成とすることが好ましい。この目的に使用可能な着脱可能な取付具には、例えば、ボルト、ピン、ネジなどがあり、また更に、スナップ係止式の取付具として、ロック・ボールを備えたボルト、スプリング・クリップ、それにボール・デテント機構などがある。前記伝熱機構をボール・ベアリング・リングで支持する構成とした場合には、清掃の際には、その伝熱機構を単に持ち上げるだけで取外すことができ、清掃後にはそれを元の位置に載置するだけ再装着することができる。
【0026】
前記輻射エネルギ放出機構としては、例えば、発熱プレート、金属箔発熱体、放熱ラジエータ、電磁誘導コイル、ハロゲンランプ、それに、クオーツランプなどを使用することができる。
【0027】
使用する前記輻射エネルギ放出機構の種類によっては、その輻射エネルギの発生部位の形状が点状または線状のものもあり、その場合には、その発生部位から放出される輻射エネルギをテスト・コンパートメント内の全域に分散させることになる。その結果として、試料が加熱されるだけでなく、測定装置の幾つかの構成部材も加熱される場合があり、そのような場合には、エネルギ損失を生じることに加えて、測定装置それ自体にも悪影響を及ぼすことになり、特に計量セルに対する悪影響が懸念される。それゆえ、前記輻射エネルギ放出機構が更に、輻射エネルギを案内する輻射エネルギ案内部材の中に配設されている構成とすると非常に有利であり、なぜならば、そうすることによって、前記伝熱機構が例えば輻射熱の形態の輻射エネルギを吸収する上で、より大きな表面を介して吸収できるようになるからである。例えば発熱プレートを使用することによって、或いは、平板状の金属製ボディに金属箔発熱体を収容したものを使用することによって、この条件を満たすことができる。即ち、それらが金属製であることから、発生熱量に局所的なばらつきがあっても、例えば金属製ボディの内部においてその発生熱量のばらつきが均されて解消されるため、輻射熱の形態の輻射エネルギが、より均一な輻射エネルギ強度で、またより広い表面領域を介して前記伝熱機構へ伝達されるようになる。また例えば、輻射エネルギ発生源として赤外線ランプまたはハロゲンランプを使用する場合には、前記輻射エネルギ案内部材を、少なくとも一方の側が開口しその内側面に反射面が設けられた中空部材とするのもよい。かかる構成の輻射エネルギ案内部材は、それを適宜に設計することによって、使用する輻射エネルギ発生源並びに伝熱機構の構成に応じた、合焦、分散、方向付与などをはじめとする輻射エネルギの様々なパターン形成を行えるものとなる。尚、殆どの場合、前記輻射エネルギ案内部材の基本形状とされるのは、回転対称形状である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る測定装置の詳細は、図面に示した実施の形態についての以下の説明を通して明らかにして行く。
【0029】
図1に測定装置10の側面図を示した。測定装置10はハウジング20を有しており、このハウジング20の中にテスト・コンパートメント30が設けられている。ハウジング20は可動ハウジング部材22と固定ハウジング部材21とに分割されている。固定ハウジング部材21の中に、計量セル43と、校正分銅操作機構44と、少なくとも1つの電子回路モジュール45とが配設されており、それら全てが信号伝達手段51によって互いに接続されている。電子回路モジュール45は、少なくとも1つの信号処理モジュールを含んでおり、ただしこの信号処理モジュールは図示していない。電子回路モジュール45は、更に、制御及び/または調節モジュールを含んでいることもある。計量セル43は、少なくとも1つの固定部46と、荷重入力部47とを有している。様々な種類の計量セルが知られており、それらのうちには、例えば、弾性変形可能な本体部材に歪ゲージを貼着したもの、電磁力補償方式の計量セル、振動ストリングを備えた計量セル、それに、静電容量式荷重センサなどがある。計量セル43の固定部46は、固定ハウジング部材21に固定連結されている。荷重入力部47には連結部材53が取付けられており、この連結部材53は、試料載置部材60を荷重入力部47に連結している。図示のごとく、試料載置部材60には、試料62を載置した試料トレイ61を装着できるようにしてある。尚、試料載置部材60を適当な設計とすることにより、試料62を試料載置部材60の上に直に載置するようにすることもできる。
【0030】
更に、連結部材53には校正分銅載置座48が形成されている。校正分銅操作機構44によって、校正分銅載置座48に校正分銅を載置することができ、それによって現在動作条件に応じた測定信号の適正な補正値を決定することができるようにしている。校正分銅操作機構44は、操作者が手動で作動させることもでき、測定装置10の制御によって作動させることもできる。補正値の決定がなされたならば、校正分銅49は、校正分銅操作機構44によって、校正分銅載置座48から引上げられて分銅受け50に押し付けられた状態で保持され、次回の校正サイクルが実行されるまでその状態に置かれている。補正値に偏心荷重誤差が入り込むのを防止するために、校正分銅49の質量中心が、または(複数の校正分銅49が使用されている場合には)複数の校正分銅49の合成質量中心が、試料載置部材60の重心、及び/または、試料トレイ61の重心、及び/または、試料の重心を通る軸線に近接しているようにすれば理想的である。この「偏心荷重誤差」(辺縁荷重誤差ともいう)とは、ある荷重を試料載置部材の中心に作用させて計量したときの測定重量に対する、同一の荷重を試料載置部材の中心から外れた位置に作用させて計量したときの測定重量の偏差をいう。
【0031】
図1に示したように、可動ハウジング部材22は蓋部材として形成されており、その中に輻射エネルギ放出機構11が配設されている。ハウジング20の上部に設けられたヒンジ29を介して、この可動ハウジング部材22が固定ハウジング部材21に連結されており、ヒンジ29のシャフトは略々水平に延在している。可動ハウジング部材22はテスト・コンパートメント30の上側部分を形成している。図1に示した測定装置は運転状態にあるところを示しており、テスト・コンパートメント30の蓋部材は閉位置にある。
【0032】
図示した実施の形態では、輻射エネルギ放出機構11は、輻射エネルギ案内部材15の中に収容されており、この輻射エネルギ案内部材15は、その中心にベアリング14が形成されている。輻射エネルギ案内部材15は、複数の支柱23を介して可動ハウジング部材22に連結されている。輻射エネルギ案内部材15は、その内部に、輻射エネルギ発生器として構成された、放熱ラジエータ、金属箔発熱体、マイクロ波発生器、ハロゲンランプ、それにクオーツランプなどを収容することが可能である。図示した実施の形態では、輻射エネルギ放出機構11と試料62との間に、ディスク形の伝熱機構16が配設されている。伝熱機構16は、ベアリング14に回転可能に支持されたシャフト13に連結されている。ディスク形の伝熱機構16は、熱伝導性の良好な材料から成るものとすることが好ましい。熱伝導性が良好であること、比重が小さく計量であること、それに加工が容易であり耐蝕性を有することから、アルミニウムないしアルミニウム合金を用いると非常に有利である。これをアルミニウム製の部品とする場合には、コーティングを施すことが好ましく、理想的なコーティングといえるのは、黒色陽極酸化被膜コーティングである。ただし、この伝熱機構16をセラミック材料やガラス材料で製作するようにしてもよい。シャフト13の回転軸心は、荷重方向に延在している。シャフト13の荷重方向を向いた端部は、輻射エネルギ放出面12を有する伝熱機構16に連結されており、輻射エネルギ放出面12の形状及び寸法は、試料62が広げられて載置される領域の形状及び寸法に略々一致するようにしてある。輻射エネルギ案内部材15の内部において、輻射エネルギ(基本的に輻射熱の形態の輻射エネルギである)が発生され、そのエネルギが伝熱機構16に伝達され、そしてこの伝熱機構16が、試料62に対向している輻射エネルギ放出面を介して、輻射エネルギを試料62に照射する。乾燥プロセスの実行中には、伝熱機構16は後述する駆動機構17によって回転させられている。輻射エネルギ放出面12の形状が平面状であること、この輻射エネルギ放出面12が試料62に対して平行になるようにしてあること、この輻射エネルギ放出面12が回転すること、それに、この輻射エネルギ放出面12の表面の構造が試料62からの距離に適合した表面構造であることによって、この輻射エネルギ放出面12から荷重方向へ放出される輻射エネルギにより試料62を均一に加熱できるようになっている。
【0033】
尚、輻射エネルギ放出機構11の全体を直接、伝熱機構16の中に収容しまたは伝熱機構16に取付けた構成とすることも可能であり、そのような構成を図3a及び図3bに示した。ただし、この構成とすると、輻射エネルギ放出機構11への給電のための構成がより複雑なものとなる。その場合の給電は、例えば、カーボンブラシを備えた集電機構を用いて行ってもよく、或いは、電磁誘導を利用して無接触方式で行うようにしてもよい。
【0034】
可動ハウジング部材22の内部の輻射エネルギ放出機構11の上方には、吸引機構70が装備されている。吸引機構70は、モータを収容している固定アセンブリと、軸流型ファンロータとを備えている。図示した実施の形態では、前述のシャフト13がモータ17に連結されている。ただし、シャフト13を、直接的に、またはギヤボックスを介して、吸引機構70の駆動機構に連結するようにしてもよく、そうした場合には、吸引機構70の駆動機構と別にモータ17を備えずに済む。また、テスト・コンパートメント30の中を十分な流量及び流速をもって荷重方向と逆向きに気体が流れるようにするならば、伝熱機構16に、軸流型タービンの羽根車と同様の複数枚の羽根板を装備した構成とすることもできる。この場合、それらの羽根を通過して流れる気体の流れによって、伝熱機構16が回転させられることになる。
【0035】
テスト・コンパートメント30の下側部分は、固定ハウジング部材21の中に形成されている。計量セル43に機械的に連結されている連結部材53は、テスト・コンパートメント30の下部の中へ突き出しており、そのため、この連結部材53に連結されている試料載置部材60は、完全にテスト・コンパートメントの内部に収容されている。断熱を施すために、計量セル43とテスト・コンパートメント30との間を仕切っている固定ハウジング部材21の壁体28を、少なくとも部分的に二重壁構造とするようにしている。壁体28が二重壁構造であることによって、そこに通気ダクト27が形成されており、この通気ダクト27に気体を流して、その気体をテスト・コンパートメント30へ流入させることができる。測定プロセスの実行中には、この通気ダクト27を流れる気体が壁体28を冷却することにより、ハウジングの計量セル43を収容している部分へテスト・コンパートメントから輻射熱が入り込まないようにすることができる。ただし、通気ダクト27の中を流れる気体をテスト・コンパートメントへ流入させることは、必ずしも必要なことではない。これに関しては、米国特許第6,920,781 B2号公報に開示されているような、簡明な構成の通気ダクトを使用するようにしてもよい。
【0036】
テスト・コンパートメント30の中の試料載置部材60の下方に、第2の輻射エネルギ放出機構32を配設するようにしてもよい。ただし、この位置に配設した第2の輻射エネルギ放出機構32から放出される輻射エネルギは、試料トレイ61の底部へ照射されることになり、しかも、試料トレイ61は殆どの場合、それ自体がある程度のエネルギ分配作用を有する熱伝導性材料から成るため、そのような第2の輻射エネルギ放出機構32と試料62との間には、第2の回転可能に支持された伝熱機構を配設することは、必ずしも必要ではない。しかしながら、輻射エネルギ分布をより一層均一なものとする上で、そのように構成することが望ましいのであれば、そのようにするのもよい。
【0037】
更に、通気ダクト27の中には様々な補助デバイスを配設することができる。例えば、テスト・コンパートメント30の中の静電気を除去するために、気体をイオナイザでイオン化するようにしてもよい。また、連結部材がテスト・コンパートメントの中へ突き出せるようにするために、壁体28は、貫通口24を備えている。この貫通口24は、全周が囲繞された円筒形の通路として形成されており、それによって、通気ダクト27の中を流れる気体が、この貫通口24からテスト・コンパートメント30へ流入したり、連結部材53に力を作用させたりすることがないようにしている。
【0038】
図2aに断面図で示した伝熱機構116は、その輻射エネルギ放出面112に複数の突条117が付加されている点を除けば、図1に示した伝熱機構16と同一構造のものである。基本的に、それら突条の形態に関しては何の制約も存在しない。ただし、水蒸気を高濃度で含有する気体をできるだけ良好に除去できるようにするという条件と、輻射エネルギ強度をできるだけ均一にするという条件とを共に満足するためには、おのずからそれに適した好適な形態というものがあり、そのような好適な形態の2つの具体例を、図2b及び図2cに平面図で示した。それら平面図は、図2aに矢印で示した方向Xから見た平面図である。
【0039】
図2bに示した伝熱機構116は、断面形状が長方形の複数の細い突条117Bを備えている。それら突条117Bは彎曲しつつ放射状に延在している。そのため、それら突条117Bによって互いに区切られた複数の凹部118Bもまた、彎曲しつつ径方向に延在している。ポンプや通気ファンなどで周知のごとく、その湾曲の強さを適宜定めることによって、径方向の流速を必要に応じた適宜の流速とすることができる。突条117Bと突条117Bとの間に気体が滞留すると、試料と輻射エネルギ放出面との間の空間に流れの大きな乱れが発生するおそれがあるが、径方向の流速を適宜の流速とすることによって、かかる気体の滞留を防止することができる。もし、そのような流れの大きな乱れが発生したならば、計量セルによる測定結果に重大な影響を及ぼすおそれがある。尚、輻射エネルギ放出面に形成する突条をただ1本だけとしてもよく、その場合には、その1本の突条が強く彎曲しつつ径方向に延在するようにして、その突条が輻射エネルギ放出面においてスパイラルを形成するようにするとよい。
【0040】
図2cに示した伝熱機構116も同様に複数の突条117Cを備えており、同図では見て分かり易いように、それら突条117Cの部分をハッチングで示した。ただしそれら突条117Cは、図2bの突条と異なり、その幅が、伝熱機構116の周縁部119へ近付くにつれて次第に拡大しており、それら突条117Cに天頂面の面積と、突条117Cと突条117Cとの間に形成された複数の凹部118Cの面積とが等しくなっている。これによって、輻射エネルギ強度の均一性が、図2bに示した具体例と比べて更に改善されている。突条117Cと凹部118Cとは、図2bに関連して説明したものと同様に、彎曲しつつ径方向に延在している。
【0041】
図3aに、更に別の実施の形態を模式的に示した。同図において断面図で示した伝熱機構216には輻射エネルギ放出機構211が一体に組込まれている。伝熱機構216は、回転軸心に関して非対称形状であり、従ってシャフト213に関して非対称形状である。輻射エネルギ分布を均一にするために、伝熱機構216は、輻射エネルギ放出面212に近い側の材料を厚くしてある。輻射エネルギ放出機構211は、例えば、金属箔発熱体などであり、これを伝熱機構216の上面に装着することも可能である。
【0042】
図3bに模式的に示したのは、図3aに矢印Zで示した方向から見た図3aの伝熱機構216の平面図である。伝熱機構216は扇形の形状としてある。この形状としたのは、シャフト213の近傍よりも周縁部219の近くの方が、当然のことながら接線方向速度が大きいことから、シャフト213の近傍における輻射エネルギ強度が周縁部219の近くよりも大きくなってしまうという問題を回避するために、このようにしたものである。輻射エネルギ放出機構211は、その外形が三角形をなすように形成されており、図3aに関連して説明したように、伝熱機構216の中に完全に埋込まれている。試料へのエネルギの流れ、即ち輻射エネルギの受渡しに関していえば、このように埋込み型の構成とした図3a及び図3bに示した実施の形態もまた、回転可能に支持された伝熱機構216が輻射エネルギ放出機構211と試料との間に配設された構成であるということができる。
【0043】
図4に、本発明の更に別の実施の形態に係る測定装置310を示した。回転対称形状に形成されたじょうご形の担持部材を備えており、この担持部材は、その小径開口部314が、テスト・コンパートメント330を画成するハウジング320に連結されている。担持部材315は、その対称軸心が荷重方向に延在しており、その小径開口部314が荷重方向と逆方向を向いている。担持部材315の円錐形状の外側面に複数の輻射エネルギ放出機構311が配設されており、それら輻射エネルギ放出機構311は、図4に示したように、回転可能に配設されているディスク形の伝熱機構316へ向けて輻射エネルギ(エネルギ線)αを放出する。伝熱機構316は、着脱可能な連結具355を介してシャフト313に連結されている。シャフト313は、小径開口部314の中に配設された駆動機構317によって駆動される。着脱可能な連結具355は、図示例では螺合式の連結具であるが、着脱可能であるか否かを問わず、これ以外の種類の任意の公知の連結具を使用することも可能である。
【0044】
輻射エネルギ放出機構311と試料362との間に伝熱機構316が配設されているため、輻射エネルギ放出機構311が放出した輻射エネルギαは、伝熱機構316によって吸収される。伝熱機構316は、その吸収したエネルギを、輻射熱の形態の輻射エネルギβとして試料362へ受渡す。異なる引用符号を使用していることからも察せられるように、輻射エネルギαと輻射エネルギβとは、必ずしも同種の輻射エネルギであるとは限らない。即ち、伝熱機構316において変換が行われるような構成とする場合あり、例えば電磁波(マイクロ波、誘導電磁波)の形態の輻射エネルギが、輻射熱の形態の輻射エネルギに変換されるような構成とすることもできる。
【0045】
ディスク型の回転対称形状の伝熱機構316には複数の開口356が形成されており、それら開口356は、加熱されて含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体を通過させて、その気体が小径開口部314を通過してテスト・コンパートメント330から流出できるようにするための開口である。これによって、伝熱機構316と試料362との間の空間に含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体の塊が滞留するのを、防止することができる。試料362は水分の他に更に、溶剤などの揮発性の高い成分を含有していることもあるため、乾燥プロセスの実行中に、その他の揮発性成分も試料362から離脱してくる可能性があり、しかもその揮発性成分は、強い臭気を発するもの、有毒なもの、或いは腐食性を有するものなどであることがある。そのため、排気通路として機能する担持部材315の小径開口部314に凝縮器371を装備して、試料362から離脱して出てきた水蒸気及び/または揮発性成分を、それがテスト・コンパートメントから流出した直後に、冷却水によって凝縮させるようにすることが好ましい。また、凝縮器の替わりに、或いは、凝縮器と併せて、小径開口部314に化学フィルタを装備するようにしてもよい。特に好適な1つの実施の形態においては、化学フィルタとして、活性炭などの吸着剤を備えたフィルタを使用するようにしている。試料362は、試料トレイ361の上にひろげて載置される。そして、その試料トレイ361は、試料載置部材360の上に装着される。図4に示した実施の形態では、試料載置部材360は、一般的な天秤用の計量パンである。
【0046】
図5に、本発明の更に別の実施の形態に係る測定装置410を示した。回転対称形状に形成された輻射エネルギ案内部材415は、小径開口部414を有しており、この小径開口部414の近傍の部分が、テスト・コンパートメント430を画成しているハウジング420に連結されている。輻射エネルギ案内部材415は、その対称軸心が荷重方向に延在しており、その小径開口部414が荷重方向と逆方向を向いている。輻射エネルギ案内部材415の内側面には、不図示の輻射エネルギ反射面が設けられている。輻射エネルギ案内部材415の焦点の位置に、輻射エネルギ放出機構411が配設されており、この輻射エネルギ放出機構411は、図5に示したように、あらゆる方向へ輻射エネルギ(エネルギ線)αを放出するものであり、放出された輻射エネルギαのうちの一部は、輻射エネルギ反射面によって、ディスク形の伝熱機構416の中央部へ向けて反射される。伝熱機構416は、嵌合方式の連結構造によってターンテーブル413に連結されており、このターンテーブル413は、複数の転動する球体により支持されている。駆動機構417からターンテーブル413へトルクが伝達され、このトルクの伝達は一組の摩擦車によって行うようにしてもよく、或いは図示したように、ターンテーブル413の形状に合わせて形成した歯車を使用して行うようにしてもよい。図5に示した構成では、伝熱機構416は、リング形のターンテーブル413の内周部に形成された突条458に遊嵌された状態で載置されている。尚、伝熱機構46は、連結が外れたり、その位置がずれたりすることなく連結することのできる、着脱可能な連結具を用いて取付けるようにしてもよい。
【0047】
輻射エネルギ放出機構411と試料462との間に伝熱機構416が配設されているため、輻射エネルギ放出機構411が放出した輻射エネルギαは、伝熱機構416によって吸収される。伝熱機構416は、その吸収したエネルギを、輻射熱の形態の輻射エネルギβとして試料462へ受渡す。
【0048】
ディスク形の回転対称形状の伝熱機構416には複数の開口456が形成されており、それら開口456は、加熱されて含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体を通過させて、その気体が小径開口部414を通過してテスト・コンパートメント430から流出できるようにするための開口である。また、それら開口456を形成した結果、3本のスポーク部459が形成されており、それらスポーク部459は、その断面形状を、気体の流動を促進する上で好適な翼形状としてある。そのため、それら3本のスポーク部459は、試料462へ向けて輻射エネルギを放出する輻射エネルギ放出面として機能するのみならず、それと同時に、試料462の近傍空間からの水蒸気の排除を支援するものとなっている。伝熱機構416の回転速度を低速とすることによって、略々層流状態の流れを発生させることができ、及び/または、試料462と伝熱機構416との間の空間の圧力を、幾分低下させることができる。伝熱機構416の中央部には、円錐形状の輻射エネルギ吸収部材454が配設されており、この輻射エネルギ吸収部材454は、3本のスポーク部459を連結する連結具として機能すると共に、輻射エネルギ案内部材415によって反射された輻射エネルギαの照射ターゲットを構成している。試料462は、試料トレイ461の上にひろげて載置される。そして、その試料トレイ461は、試料載置部材460の上に装着される。この図5に示した実施の形態でも、試料載置部材460は、一般的な天秤用の計量パンである。
【0049】
以上に提示した複数の実施の形態は、種々の特性並びに様々な特徴を備えた重量計測式水分量測定装置の幾つかの構成例を示したものである。それら実施の形態は、理解を容易にすることを目的として、数多くの特性並びに特徴を、複数の実施の形態に振り分けて説明したものであり、以上に示した数多くの特徴及び特性は、1つの測定装置の中に任意に組合せて利用し得るものである。更に、シャフトが輻射エネルギ放出機構の開口を貫通して延在する構成とする替わりに、シャフトが輻射エネルギ放出機構の外側を延在するようにした構成も本発明の範囲に包含される。また、本発明は、1本のシャフトだけを備えた構成にだけに限定されるものでもない。更に、連続的に回転運動を行うことは、本発明が機能する上で必須の条件ではない。即ち、シャフト及び/または輻射エネルギ放出面が、その回転方向を正方向と逆方向とに切換えて回転振動するようにしてもよく、そのようなものも本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、計量セルの構成やハウジングの構成を図1に例示した構成としたものに限定されず、試料の上方に輻射エネルギ放出機構を配設した構成のあらゆる公知の測定装置に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】測定装置の断面図である。この測定装置はハウジングを備えており、このハウジングの中にテスト・コンパートメントと計量セルとが並置されている。この測定装置は更に、輻射エネルギ放出機構を備えており、この輻射エネルギ放出機構は、ヒンジを介してハウジングに連結され実質的に水平に延在するヒンジ軸心を中心とした揺動運動により上下動する蓋部材の中に配設されている。この測定装置は更に、蓋部材の中に組込まれた吸引機構と、計量セルとテスト・コンパートメントとの間に設けられた断熱機能を提供する吸気通路とを備えている。
【図2a】図1の拡大詳細図として示した輻射エネルギ放出面の断面図であり、輻射エネルギ放出面は複数の突条を備えている。
【図2b】図2aに示した方向Xから見た図2aの輻射エネルギ放出面の平面図であり、第1の構成例に係る突条を備えた輻射エネルギ放出面を示した図である。
【図2c】図2bに示した方向Xから見た図2aの輻射エネルギ放出面の平面図であり、第2の構成例に係る突条を備えた輻射エネルギ放出面を示した図である。
【図3a】輻射エネルギ放出機構を組込んだ伝熱機構を示した断面図である。
【図3b】図3aに示した方向Zから見た図3aの輻射エネルギ放出面の平面図である。
【図4】更に別の実施の形態を示した断面図であり、ただしその測定装置のうちのテスト・コンパートメントの部分だけを示した図である。テスト・コンパートメントの中には、輻射エネルギ放出機構、試料、試料載置部材、シャフト、それに、伝熱機構が配設されており、伝熱機構は複数の開口を有するものであり、また、伝熱機構は着脱可能な取付具を介してシャフトに連結されている。
【図5】更に別の実施の形態を示した断面図であり、ただしその測定装置のうちのテスト・コンパートメントの部分だけを示した図である。テスト・コンパートメントの中には、輻射エネルギ放出機構、輻射エネルギ案内部材、試料、試料載置部材、それに、複数の転動する球体で支持されたターンテーブルが配設されており、ターンテーブルには伝熱機構が装着されている。
【符号の説明】
【0051】
10、310、410…測定装置
11、211、311、411…輻射エネルギ放出機構
12、112、212…輻射エネルギ放出面
13、213、313…シャフト
14…ベアリング
15、415…輻射エネルギ案内部材
16、116、216、316、416…伝熱機構
17、317、417…モータ
20、320、420…ハウジング
21…固定ハウジング部材
22…可動ハウジング部材
23…支柱
24…貫通口
27…通気ダクト
28…壁体
29…ヒンジ
30、330、430…テスト・コンパートメント
32…第2の輻射エネルギ放出機構
43…計量セル
44…校正分銅操作機構
45…電子回路モジュール
46…固定部
47…荷重入力部
48…校正分銅載置座
49…校正分銅
50…分銅受け
51…信号伝達手段
53…連結部材
60、360、460…試料載置部材
61、361、461…試料トレイ
62、362、462…試料
70…吸引機構
90…イオナイザ
117、117B、117C…突条
118B、118C…凹部
119、219…周縁部
314、414…小径開口部
315…担持部材
355…着脱可能な連結具
356、456…開口
371…凝縮器
413…転動する複数の球体に支持されたターンテーブル
454…輻射エネルギ吸収部材
458…円形の突条
459…スポーク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量計測式水分量測定のための測定装置(10、310、410)であって、少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)と、計量セル(43)と、該計量セル(43)と連結可能な試料載置部材(60、360、460)とを備え、前記試料載置部材(60、360、460)は、該試料載置部材(60、360、460)に試料(62、362、462)を載置することと、該試料載置部材(60、360、460)から試料(62、362、462)を除去することとが可能に構成されている、測定装置(10)において、
前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)は、荷重方向に関して試料(62、362、462)の上方及び/または下方に配設されており、前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)と試料(62、362、462)との間に、少なくとも1つの回転可能に支持された伝熱機構(16、116、216、316、416)が配設されており、前記伝熱機構(16、116、216、316、416)の回転軸心は、試料(61、362、462)または前記試料載置部材(60、360、460)が延展する平面に直交する方向に延在しており、前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、前記輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)の輻射エネルギαの少なくとも一部を吸収することができ、また、その吸収した輻射エネルギαを、輻射熱の形態の輻射エネルギβとして、該伝熱機構(16、116、216、316、416)の少なくとも1つの輻射エネルギ放出面(12、112、212)を介して試料(62、362、462)へ受渡すことができ、また更に、該伝熱機構が回転可能であることによって、試料(62、362、462)の表面の全域にその輻射エネルギを照射できるようにしてある、
ことを特徴とする測定装置(10、310、410)。
【請求項2】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、該伝熱機構の回転軸心に直交する平面に略々沿って延展する形状とされており、前記輻射エネルギ放出面(12、112、212)は、該伝熱機構(16、116、216、316、416)の試料(62、362、462)に対向する表面に略々対応していることを特徴とする請求項1記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項3】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)の回転軸心は、荷重方向に平行であることを特徴とする請求項1又は2記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項4】
輻射エネルギ放出面(12、112、212)は、円形または扇形の領域であることを特徴とする請求項1乃至2の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項5】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、前記輻射エネルギ放出面(12、112、212)に、好ましくは荷重方向に向けられた複数の開口(356、456)及び/または切欠部を有しており、及び/または、前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、多孔質材料で形成されており、それによって気体が該伝熱機構を荷重方向に通過できるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項6】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、少なくとも1つの開口または切欠部(456)を有しており、該開口または切欠部が形成されることによって、該伝熱機構に少なくとも1本のスポーク部(459)が形成されており、該スポーク部はプロペラ翼または羽根板の形状に形成されており、該スポーク部(45)によって、好ましくは荷重方向と逆向きの気体の流れが発生されるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項7】
前記輻射エネルギ放出面(12、112、212)は少なくとも1つの突条(117、117B、117C)、溝、チャネル部、または凹部(118B、118C)を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項8】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、その少なくとも一部が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、セラミック材料、またはガラス材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項9】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、前記ハウジングに固定された1つまたは複数のベアリングを貫通して延在するシャフト(13、213、323)を介して駆動機構(17、317、417)に連結されており、または、前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、複数の転動する球体の上に回転可能に載置され歯車段を介して駆動機構(17、317、417)に連結されたターンテーブル(413)に支持されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項10】
前記伝熱機構(16、116、216、316、416)は、着脱可能な連結具を介して前記シャフト(13、213、313)に連結されており、または、着脱可能な連結具を介して転動する球体に支持された前記ターンテーブル(413)に連結されていることを特徴とする請求項9記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)は、発熱プレート、金属箔発熱体、放熱ラジエータ、電磁誘導コイル、ハロゲンランプ、またはクオーツランプであることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)は、輻射エネルギを案内する輻射エネルギ案内部材(15、415)の中に配設されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の測定装置(10、310、410)。
【請求項13】
前記輻射エネルギ案内部材(15、415)は、金属製の平板状部材(15)か、または、少なくとも一方の側が開口し、その内側面に反射面が設けられ、該反射面によって前記輻射エネルギ放出機構(11、32、211、311、411)の輻射エネルギαを前記伝熱機構(416)上に合焦させることができるようにした輻射エネルギ案内部材(415)であることを特徴とする請求項12記載の測定装置(10、310、410)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−26315(P2008−26315A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−179228(P2007−179228)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland