説明

重金属汚染土壌の浄化方法

【課題】重金属汚染土壌を効率良く浄化する方法の提供。
【解決手段】重金属汚染土壌を原位置で洗浄する方法であって、粘土を重金属汚染土壌に散布した後、薬剤水溶液で洗浄することを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属汚染土壌を、効率良く浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重金属で汚染された土壌の浄化法の一つとして、薬剤洗浄(例えば、特許文献1)が知られている。この方法は、重金属汚染土壌に薬剤水溶液を投入し、混合および/または撹拌によって重金属を溶出せしめ、上澄み水中の重金属を除去するものであり、重金属を根本的に除去するという意味で優れた方法である。しかしながら、洗浄対象となる重金属汚染土壌の下方に位置する土壌層の透水係数が大きい場合、薬剤水溶液が土壌の下方向に浸透してしまうおそれがあった。薬剤水溶液が浸透により失われると、薬剤による土壌洗浄の効率が落ちてしまうという問題が生じる。
【0003】
一方、水田での下方向への水の浸透を抑制する方法のひとつとして、ベントナイトを水田に施用する方法が知られている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、土壌洗浄における薬剤洗浄は、通常の代かきや水稲栽培(湛水深で10cm以下)よりも用水がかなり多く(湛水深で20cm以上)、薬剤の投入を伴い、さらには薬剤水溶液と土壌との混合を伴う工程であり、たとえ薬剤洗浄の前にベントナイトを施用したとしても、薬剤洗浄時に通常の水稲栽培の湛水時と同様の漏水防止効果が得られるかどうかは知られていなかった。
更に、薬剤洗浄に用いられる水は多量で、土壌層には高い水圧がかかるため、薬剤洗浄時には、通常の水稲栽培の湛水時よりも、土壌層の透水係数が小さいことが必要とされる。
また、一般に、土壌中の2μm以下の土壌粒子が多くなるほど土壌沈降層が緻密になり、空隙径が減少するので、垂直方向の浸透が小さくなることも知られている(非特許文献2)。しかしながら、2μm以下の粒子を多く含む土壌を添加して土壌中含有される2μm以下の粒子を増やしても、垂直方向の浸透抑制効果はわずかであり、ほとんど行われてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−169381号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】富士岡義一、土壌改良剤による水田および砂丘畑の改良、土壌の物理性、7、pp.44-54、1963
【非特許文献2】足立一日出、代かきによる浸透抑制の研究、農工報、32、pp.1-62、1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、重金属含有土壌を原位置で洗浄する際の薬剤水溶液の浸透を抑制し、重金属汚染土壌を効率良く浄化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、斯かる現状に鑑み、種々検討した結果、土壌洗浄を行う前に粘土を施用すれば、薬剤水溶液および/または洗浄水の浸透が抑制され、重金属汚染土壌を効率良く洗浄できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、重金属汚染土壌を原位置で洗浄する方法であって、粘土を重金属汚染土壌に散布した後、薬剤水溶液で重金属汚染土壌を洗浄することを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重金属含有土壌を原位置で洗浄する際、薬剤水溶液が土壌の下方向へ浸透するのを抑制し、重金属汚染土壌を効率良く浄化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で浄化対象となる重金属汚染土壌としては、市街地、山林、工場跡地、農用地、沼地、更には排土等で、鉛、カドミウム、ヒ素等の重金属元素の単体、化合物又はイオンを含有する土壌が挙げられる。例えば平成3年環境庁告示第46号に定める方法によって測定される重金属類の溶出量が土壌環境基準を超える土壌や、土壌1kg当たり鉛重量で400mg以上の鉛を含有する鉛含有土壌、土壌1kg当たりカドミウム重量で2mg以上のカドミウムを含有するカドミウム含有土壌、土壌1kg当たりヒ素重量で30mg以上のヒ素を含有するヒ素含有土壌等の土壌に好適に適用することができる。特に、カドミウム含有水田土壌および水田転換畑土壌、更に、カドミウム濃度が0.1〜5ppmの水田土壌および水田転換畑土壌の浄化に好適である。
【0011】
本発明で用いる粘土としては、モンモリロナイトを含む膨潤性粉末、乾燥ベースで2μm以下の粒子を30質量%以上含有する粉末などが挙げられる。
モンモリロナイトを含む膨潤性粉末としては、例えばベントナイト等が挙げられ、特に、Na-モンモリロナイトないしCa-モンモリロナイトを含む膨潤性ベントナイトが、膨潤により土壌中の間隙量を減少させるので、粘土として好ましい。モンモリロナイトは、結晶構造に水を取り込んで膨潤することにより、土壌を圧密して、土壌中の間隙を減少させ、透水係数を小さくする。膨潤が大きいので、Na-モンモリロナイトを含むベントナイトが、粘土として、より好ましい。膨潤効果を十分に得ながら添加量を減らすために、ベントナイトはモンモリロナイトを乾燥状態の質量含有率で40質量%以上含むことが好ましい。
【0012】
また、乾燥ベースで2μm以下の粒子を30質量%以上含有する粉末としては、例えば重埴土、砂質埴土、軽埴土、シルト質埴土等が挙げられる。土壌中の2μm以下の粒子は、土壌の間隙に詰まり、土壌層の縦方向の透水を減少させる。少ない添加量で粘土による浸透抑制効果を得るために、粘土中の2μm以下の粒子量が、30質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。
鉱物の表面電荷による分散効果を期待できるので、粘土中の珪酸塩鉱物および/またはアルミノ珪酸塩鉱物の質量含有率は、合計で40質量%以上であるのが好ましい。
【0013】
粘土を散布するには、肥料散布機などを用いることができる。
粘土の施用量は、0.5〜10t/10a、特に0.5〜3t/10aであるのが、十分な浸透抑制効果が得られるとともに、重金属の抽出が阻害されないので好ましい。
【0014】
本発明においては、荒起しにより、粘土と土壌を混合することができる。荒起しは、ロータリー等の耕転機構と該耕転機構を牽引するトラクター等の牽引装置とで構成される土壌耕転装置を用いて、重金属汚染土壌を細かく砕く工程である。重金属汚染土壌と水の混合性を増加させることができ、重金属の抽出効率を上げることもできる。荒起しは、粘土散布の前又は後のいずれでも行うことができる。土塊をできるだけ解砕するため、荒起しは数回行うのが好ましい。また、土塊をできるだけ解砕するため、荒起し時の土壌撹拌装置の速度は、低速であることが好ましい。
【0015】
また、ロータリー等の縦方向に撹拌することができる撹拌機構と該撹拌機構を牽引するトラクター等の牽引装置とで構成される土壌撹拌装置などを用いたスラリー化により、粘土と土壌を混合して浸透抑制効果をより高めることもできる。スラリー化は、重金属汚染土壌に水を注入し、ロータリー等の縦方向に撹拌することができる撹拌機構と該撹拌機構を牽引するトラクター等の牽引装置とで構成される土壌撹拌装置などを用いて、土壌と水とを撹拌する工程である。洗浄対象土壌からの縦方向の浸透を抑制することができ、重金属の抽出効率を上げることもできる。
なお、本発明により浄化する重金属汚染土壌の範囲を、囲むように波板を打ち込み(波板打ち)、水を注入した汚染土壌からの横方向の液漏れや浸透を防ぐこともできる。
【0016】
スラリー化に用いる水は、注入した水の水面の高さの平均と施工前の土壌表面の高さの平均との差が0〜10cm、特に1〜5cmになるように注入するのが好ましい。これらの高さは、水面に対して垂直になるよう張ったスケール、水面に対して垂直になるよう差し込んだ物差しなどにより測定される。
注入した水の水面の高さの平均と土壌表面の高さの平均との差が0cm未満では、水中に土粒子が均一に分散しないため、土粒子の移動が阻害されて、透水係数の小さい層を形成することができない。また、注入する水の量が10cmを超えると、土粒子が分級してしまい、浸透を抑制することができない。
【0017】
なお、透水係数とは、水面に対して垂直に浸透する水の一日あたりの量を示し、具体的には、静置開始時から静置終了時までの水面の高さの変化(mm)から、水の蒸発量(mm)を引き、降雨量(mm)を加えた値を、静置時間(日)で割った値で求められる。
【0018】
スラリー化及び薬剤洗浄の際には、土壌撹拌装置として、ロータリー等の縦方向に撹拌することができる撹拌機構と該撹拌機構を牽引するトラクター等の牽引装置とで構成される土壌撹拌装置を用いるのが好ましく、特に、土壌と薬剤とをよく混合するため、該薬剤を含む土壌を攪拌する土壌攪拌機構であって、水平方向に延設された回転軸と、該回転軸から放射状に延設された複数の攪拌爪と、該複数の攪拌爪の回転半径の外側に螺旋状に配置された板状部材とを備える土壌攪拌機構と、該土壌攪拌機構を牽引する牽引装置とで構成されるもの(例えば、特開2007-319747号公報に記載のもの等)が好ましい。更に、撹拌機構の回転部全体の縦方向の回転半径が、水面の高さと土壌の洗浄深さの和より大きいことが好ましい。
【0019】
スラリー化の際の撹拌回数は、多いほど、下方向への薬剤水溶液の浸透が抑制されるので、スラリー化は、1回以上行うのがこのましく、特に2回以上、更に3回以上行うのが好ましい。また、作業時間や効率の点から、スラリー化は10回以下が好ましく、5回以下がより好ましい。
また、撹拌操作などによって土壌が砕かれることにより生成する土粒子が細かいほど、透水係数の小さい層で土粒子は密に詰まり、より浸透を抑制する。このため、スラリー化後の重金属汚染土壌中の土塊の5mm篩上残分が40%以下、特に30%以下になるまで攪拌するのが好ましい。
【0020】
土粒子を移動させることにより水の浸透が小さい層を形成させるため、スラリー化を行った後、スラリーを静置する。土壌粒子の沈降がほぼ収まるまでに6〜24時間を要するので、スラリー化後の静置時間は6〜24時間が好ましい。日暮れまでにスラリー化を行い翌日朝まで静置したのち洗浄を行うと、時間を効率的に使うことができる。したがって、スラリー化後の静置時間は、8〜16時間がより好ましい。
【0021】
スラリー化を行った場合には、静置した後、薬剤水溶液で土壌を洗浄する。
洗浄に用いる薬剤としては、洗浄対象土壌との混合により加水分解によって、水酸化物イオンを配位するものが好ましい。pHが低いほどカドミウムの除去効率が高くなるため、カドミウムを除去する場合は、浄化対象土壌との混合によってpHが4以下になるものが好ましい。かかる金属塩化合物としては、例えば塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、ポリ硫酸鉄等の鉄塩;硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩;塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン等のマンガン塩;塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト等のコバルト塩;塩化銅、硝酸銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。
これらの金属塩化合物は、重金属汚染土壌に直接散布することもできる。取り扱いが容易かつ濃度の調整が容易であることから、これらの金属塩の水溶液を用いるのが好ましい。水溶液の濃度は、1〜200mM、特に3〜100mMであるのが、重金属の除去効果が大きいとともに、土壌への残留が少ないので好ましい。
【0022】
原位置で、水溶液を用いて土壌洗浄する場合には、例えば、タンクを用いて金属塩化合物を水に溶解し、所定の濃度になるよう混合した後施用できるほか、所定濃度より高濃度の溶液を調製して施用した後、所定濃度になるように水を加えてもよい。また、導水時に連続的に金属塩化合物を投入できる装置により施用しても良い。
薬剤水溶液と土壌の混合は、ロータリー等の縦方向に撹拌することができる撹拌機構と該撹拌機構を牽引するトラクター等の牽引装置とで構成される土壌撹拌装置を用いるのが好ましい。更に、撹拌機構の回転部全体の縦方向の回転半径が、水面の高さと土壌の洗浄深さの和より大きいことが好ましい。
【0023】
抽出洗浄に用いる水溶液の量は、浄化対象土壌の1〜5重量倍、特に1〜2.5重量倍であるのが好ましい。
このように処理することにより、土壌中の重金属は水溶液中に抽出される。
薬剤水溶液による洗浄は、少なくとも1回、好ましくは1〜3回行われる。
【0024】
薬剤水溶液による洗浄により、土壌中の重金属を水溶液中に抽出させた後、原位置にて土壌を沈降させて上澄廃液を集めることが好ましい。上澄み廃液は、一時的にピットに貯留しその後ポンプで廃水処理設備に入れても良いし、そのままポンプで洗浄区域から排水しても良い。
【0025】
一方、処理された土壌には、用いた水溶液中の金属塩化合物の一部が残存する場合や、洗浄により抽出された重金属の一部が残存する場合があるため、更に土壌を水で洗浄することにより、これらを除去するのが好ましい。
水による洗浄は、薬剤水溶液による洗浄と同様に行えば良く、土壌中の重金属の濃度、及び薬剤水溶液洗浄で用いた金属化合物の残留量が土壌環境基準以下になるまで繰り返し行うのが好ましく、少なくとも1回、特に1〜5回、水で洗浄するのが好ましい。
【0026】
なお、土壌中の重金属含有量は、「農用地土壌汚染対策地域の指定要件に係るカドミウムの量の検定の方法を定める省令」(昭和46年農林省令第47号)により、または「土壌含有量調査に係る測定方法を定める件」(平15・3・6環告19号)により、また、土壌から溶出する重金属濃度は、「土壌の汚染に係る環境基準について」(平3・8・23環告40号)に定める方法により、原子吸光法、ICP発光法、ICP質量分析法の分析機器により測定される。
【0027】
さらに、洗浄後の重金属汚染土壌を農用地土壌として用いる場合は、土壌中の塩素濃度が700ppm以下、電気伝導度が2mS/cm以下、特に1mS/cm以下になるまで、水による洗浄を繰り返し行うのが好ましい。
【0028】
洗浄後の土壌は酸性になっており、また、重金属が水溶液として残留するので、植物の栽培に適した土壌とし、土壌に溶存する重金属を不溶化させるため、土壌にアルカリ資材を施用して中和処理を行うのが好ましい。アルカリ資材としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、苦土炭カル等を用いることができる。土壌中の肥料成分であるマグネシウムとカルシウムのバランスをとるために、苦土炭カルを用いるのが、より好ましい。中和処理は、土壌のpHを5〜8、特にpH5.5〜6.5程度に調整するのが好ましい。このpH範囲において、植物の生育が健全となり、ほとんどの重金属が不溶化する。中和のためのアルカリ資材の施用量は、単位土壌あたりに対して施用する量のアルカリ資材を振り、緩衝曲線を求め、目的のpHになる量を施用すればよい。
【実施例】
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0030】
実施例1
室内でミニカラムを用いて工法のシミュレーションを行った。
重金属汚染土壌をJIS金属製篩でふるって、土塊の粒径が2mm以下となるようにした。この土壌を室内で乾燥(風乾)することにより、土壌の含水率を10%以下にした風乾土を得た。
土を保持しかつ水を通すように底部を加工した直径10cmのミニカラムに、突き固めながら土壌を厚さ5cmになるように詰めた。その上に金網を設置した。金網の上に、厚さが17cmになるように、風乾土を乗せた。これは、荒起しを行った後の土壌の状態に相当する。(荒起し)
さらに、5.9t/10a相当の膨潤性ベントナイトを、風乾土に加えた。(粘土施用)
ミニカラムに水道水を加え、重金属汚染土壌をスラリー化した後、スラリーを1晩静置した。プロペラをモーターで回転させながら金網と水面の間を2分間上下させることにより、土壌と水を混合した。金網から水面までの高さを23cmとした。(スラリー化)
スラリーにFeCl3水溶液と水道水を加え、薬剤洗浄を行った後、1晩静置し、更に、上澄み水を排水した。静置時の透水係数を測定した。プロペラをモーターで回転させながら金網と水面の間を上下させることにより、2分間、薬剤水溶液と土壌スラリーを混合した。洗浄時のFeCl3濃度を15mM、金網から水面までの高さを45cmとした。(薬剤洗浄)
さらに、ミニカラムに水道水を加え水洗浄を行った後、1晩静置し、更に、上澄み水を排水した。プロペラをモーターで回転させながら金網と水面の間を上下させることにより、2分間、水と土壌を混合した。金網から水面までの高さを45cmとした。(水洗浄)
なお、排水したすべての廃液は適切な方法で処理した。
【0031】
比較例1
膨潤性ベントナイトの施用を行わない以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示した薬剤洗浄時の下方向への透水係数の結果より、膨潤性ベントナイトを施用した実施例1では、比較例1と比較して、薬剤水溶液の浸透が抑制された。
【0034】
実施例2
A圃場においてカラム試験を行った。
A圃場に直径30cmの円筒(カラム)を打ち込み、ハンドスコップで荒起しした後(荒起し)、2.0t/10a相当の膨潤性ベントナイトを加えた。(粘土施用)
カラムに河川水を加えスラリー化した後、1晩静置した。小型モーターとプロペラで土壌と河川水を混合した。水深と洗浄深さの合計は20cmとした。(スラリー化)
薬剤水溶液を加えて薬剤洗浄を行った後、1晩静置し、更に、排水した。静置時の透水係数を測定した。小型モーターとプロペラで薬剤水溶液と土壌スラリーを混合した。薬剤洗浄時のFeCl3濃度は15mM、薬剤洗浄時の水深と洗浄深さの合計は45cmとした。(薬剤洗浄)
河川水をカラムに加え水洗浄を行った後、静置し、更に、排水した。小型モーターとプロペラで水と土壌を混合した。水洗浄時の水深と洗浄深さの合計は45cmとした。(水洗浄)
更に、洗浄前の土壌及び洗浄後の土壌のCd含有量を分析し、Cd除去率を求めた。
なお、排水したすべての廃液は適切な方法で処理した。
【0035】
比較例2
A圃場において、膨潤性ベントナイトの施用を行わない以外は実施例2と同様の操作を行った。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示した薬剤洗浄時の下方向への透水係数の結果より、膨潤性ベントナイトを施用した実施例2では、比較例2と比較して、薬剤水溶液の浸透が抑制された。
【0038】
実施例3
室内でミニカラムを用いて工法のシミュレーションを行った。
重金属汚染土壌(粒径が20μm以上の粒子を68質量%、粒径が20μm以下かつ2μm以上の粒子を18質量%、粒径が2μm以下の粒子を14質量%、それぞれ含むもの)を、JIS金属製網篩でふるって、土塊の径が2mm以下となるようにした。この土壌を室内で乾燥(風乾)することにより、土壌の含水率を10%以下にした風乾土を得た。
重埴土から、水簸により、粘土(粒径が2μm以下の土壌粒子)を得た。水簸(スイヒ)はビーカーを用いて3回行った。なお、水簸(スイヒ)は、水を用いた分級操作であり、陶芸用粘土を得るのによく利用される。
実施例1で用いたミニカラムの金網の上に、厚さが17cmになるように、風乾土を乗せた。(荒起し)
風乾土に、所定量の粘土(粒径が2μm以下の土壌粒子)を加えた。(粘土施用)
実施例1と同様の操作を行い、風乾土(重金属汚染土壌)をスラリー化した後、1日静置した。金網から水面までの高さは、23cmとした。(スラリー化)
実施例1と同様に薬剤洗浄を行った後、1日静置し、更に、上澄み水を排水した。静置時の透水係数を測定した。洗浄時のFeCl3濃度が15mM、金網から水面までの高さが45cmとなるようにした。(薬剤洗浄)
さらに、実施例1と同様に水洗浄を行った後、1日静置し、更に、上澄み水を排水した。金網から水面までの高さが45cmになるようにした。(水洗浄)
なお、排水したすべての廃液は適切な方法で処理した。
【0039】
【表3】

【0040】
土壌に2μm以下の粒子を加えることにより、垂直方向の浸透が抑制された(透水係数を小さくする)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属汚染土壌を原位置で洗浄する方法であって、粘土を重金属汚染土壌に散布した後、薬剤水溶液で洗浄することを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
粘土が、モンモリロナイトを含む膨潤性粉末である請求項1記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
重金属汚染土壌が、カドミウム含有水田土壌又は水田転換畑土壌である請求項1又は2記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
粘土を、0.5〜10t/10a散布する請求項1〜3のいずれか1項記載の重金属汚染土壌の浄化方法。

【公開番号】特開2011−513(P2011−513A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143933(P2009−143933)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】