説明

野獣類河川侵入防止構造

【課題】従来の野獣類侵入防止柵に河川侵入防止構造を併用する。
【解決手段】農地・果樹園・植林地等に侵入するサル・シカ・イノシシなどの野獣類の被害を防ぐ野獣類防止構造において、野獣類が野獣柵の開口部である河川部分から侵入しようとすると赤外線センサーが作動して野獣類の侵入を認識する機構と、該野獣類を認識するとポンプを介して河川の水をくみ上げかつ野獣類に向かって放水噴射する制御盤とが作動制御する機構と、前記センサー・制御盤・ポンプへの電源をバッテリーを用いた機構とから構成される野獣類河川侵入防止構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農地・果実園・植林地等に侵入するサル・シカ・イノシシなどの野獣類による被害を防止する方法において、特に野獣類の河川からの侵入を防ぐ野獣類河川侵入防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の野獣類侵入防止柵としては、例えば本願出願人が開発して特開2003−9754号で開示されている防止柵などがある。
【特許文献1】特開2003−9754公報 この「動物侵入防止柵」の発明は、特にサルなどの動物に対する侵入防止効果を向上させた動物侵入防止柵を提供するものであって、その主要な構成は地面から上方に向かって延びるように配置された網手段と、該網手段の上端から上方に向かって延びるように配置された壁手段と、前記網手段および壁手段を支持する支持手段を備え対象動物が飛び超えられない高さを有しているところにある。
【0003】
具体的には図8に示すように、動物侵入防止柵11はサル等の動物を対象とした動物侵入防止柵であり、動物の侵入を防止したい領域の全周にわたって、あるいは動物の通過を阻止した線に沿って連動的に配置される。この動物侵入防止柵11は、上記領域の全周または上記線に沿って所定間隔(例えば1ないし5m)で地面に立てられた支柱12と、この支柱12に支持され地面から上方に延びる金網14と支柱12に支持され金網14の上端から上方に延びるシート16とを備えている。また、支柱12は金網の金属でできており、従来のフェンス用支柱、牧柵用支柱などと同様に、その下端部分が地中に埋められたコンクリート製の基礎18の固定用孔内に挿入固定され地面から上方に向かって略垂直に延びるように配置されている。また、支柱12の上端には延長部材20が接続されており、この延長部材20は対象動物の侵入方向、すなわち動物侵入防止柵11で囲まれた領域の外側方向の斜め上方に向かって延びるように支柱2の上端にボルトなどの固定手段によって取り付けられている。
【0004】
更に、金網14は上端が下側横連結部材22に巻き付けられ支柱12と重なる部分がこの支柱12に針金あるいは取付け金具にて固定されることによって、地面から上方に向かって延びるように配置され支柱12および下側横連結部材22に支持されている。
【0005】
更に、シート16は延長部材20の上端を接続するワイヤ26と、下側横連結部材22との間に配置されている。従って、シート16は金網14の上端から上方に向かって延びるように配置されている。また、シート16は、ポリエステル織物、塩化ビニル、EVA、酢酸ビニル等で形成されたキャンバスシートで形成されている。このシート16の高さ(上下方向長さ)は金網14の最上部まで登ったサルが飛びついてもシート16の上縁に手が掛けられないように、約120cm以上にされるとともにシート6の上縁は地面からサルが跳び上がっても上縁に手が掛けられないような高さ位置、例えば地面から300乃至350cm程度の位置に配置されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の動物侵入防止柵は、農地や果樹園などの平地若しくは河川などの障害物のないところには適しているが、河川のあるところでは全く効果が得られず多くの問題がある。例えば、谷底に河川を有する山林においては河川に防止柵を設置できないので、多くの野獣類が川づたいに移動して山林の樹木や果樹園の果物が食べられてしまう。このように主として野生シカなどの野獣類の河川から山林に侵入するのを防ぐところに、本発明が解決しようとする課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の如き課題を解決するために開発したものであり、農地・果樹園・植林地等に侵入するサル・シカ・イノシシなどの野獣類の被害を防ぐ野獣類防止構造において、前記野獣類が野獣柵の開口部である河川部分からの侵入を河川の水を放水して防ぐことを特徴とする野獣類河川侵入防止構造の提供であり、また前記野獣類河川侵入防止構造において野獣類が野獣柵の開口部である河川部分から侵入しようとすると赤外線センサーが作動して野獣類の侵入を認識する機構と該野獣類を認識するとポンプを介して河川の水をくみ上げかつ野獣類に向かって放水噴射する制御盤とが作動制御する機構と前記センサー・制御盤・ポンプへの電源をバッテリーを用いた機構とから構成される野獣類河川侵入防止構造の提供にあり、また前記野獣類河川侵入防止構造においてターンテーブル上にセンサーとノズルを配設しかつターンテーブルを適宜回転させポンプを駆動して野獣を認識した方向に放水噴射させる野獣類河川侵入防止構造の提供にあり、また前記野獣類河川侵入防止構造において放水する水の流れを河川の水をくみ上げて野獣類に放水噴水する方法とセンサーからの情報の流れを赤外線センサーが野獣類を認識すると制御盤に伝えられてポンプを駆動する方法とバッテリーからの電気の流れをバッテリーを介して制御盤とポンプへの電気を供給かつ必要に応じてバッテリーがソーラーで充電される方法とから構成される野獣類河川侵入防止構造の提供にあり、また前記野獣類河川侵入防止構造において河川と横断又は平行に配設したノズルから放水噴射させる野獣類河川侵入防止構造の提供にあり、また前記野獣類河川侵入防止構造において河川の水を常時ノズルに放流させてセンサーの作動によりノズルから放水噴射させる野獣類河川侵入防止構造の提供にあり、更に前記野獣類河川侵入防止構造において河川の両側に横断状に吸水パイプを付設したパイプ支持台を設置しかつ該パイプ支持台に野獣柵を固定した野獣類河川侵入防止構造及び河川の両側に平行状に防水パイプを数本並設しかつ該放水パイプから河川に向けて放水噴射する野獣類河川侵入防止構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、農地・果樹園・植林地等に侵入するサル・シカ・イノシシなどの野獣類の被害を防ぐ野獣類防止構造において前記野獣類が野獣柵の開口部である河川部分からの侵入を河川水を放水して防ぐことを特徴とする野獣類河川侵入防止構造であり、また前記の野獣類河川侵入防止構造において野獣類が野獣柵の開口部である河川部分から侵入しようとすると赤外線センサーが作動して野獣類の侵入を認識する機構と該野獣類を認識するとポンプを介して河川の水をくみ上げかつ野獣類に向かって放水噴射する制御盤とが作動制御する機構と前記センサー・制御盤・ポンプへの電源をバッテリーを用いた機構とから構成される野獣類河川侵入防止構造であり、また前記野獣類河川侵入防止構造においてターンテーブル上にセンサーとノズルを配設しかつターンテーブルを適宜回転させポンプを駆動して野獣を認識した方向に放水噴射させる野獣類河川侵入防止構造であり、また前記野獣類河川侵入防止構造において放水する水の流れを河川の水をくみ上げて野獣類に放水噴水する方法とセンサーからの情報の流れを赤外線センサーが野獣類を認識すると制御盤に伝えられてポンプを駆動する方法とバッテリーからの電気の流れをバッテリーを介して制御盤とポンプへの電気を供給かつ必要に応じてバッテリーがソーラーで充電される方法とから構成される野獣類河川侵入防止構造であり、また前記野獣類河川侵入防止構造において河川と横断又は平行に配設したノズルから放水噴射させる野獣類河川侵入防止構造であり、また前記の野獣類河川侵入防止構造において河川の水を常時ノズルに放流させてセンサーの作動によりノズルから放水噴射させる野獣類河川侵入防止構造であり、また前記野獣類河川侵入防止構造において河川の両側に横断状に吸水パイプを付設したパイプ支持台を設置しかつ該パイプ支持台に野獣柵を固定した野獣類河川侵入防止構造であり、また前記野獣類河川侵入防止構造において河川の両側に平行状に防水パイプを数本並設しかつ該放水パイプから河川に向けて放水噴射する野獣類河川侵入防止構造であるから、従来では得られない次のような多くの効果が得られる。
ア、本発明は野獣が野獣柵の開口部である河川から侵入しようとするときに河川の水を噴射して野獣の侵入を防止する装置であるから、従来河川から侵入されていた野獣類を河川からの移動を防ぐことができる。特に、野生シカの河川侵入を完全に防止できるので山林の植樹・農地の農産物・果樹園の果実などの被害を確実に防ぐことが可能となる。
イ、河川などを横断する構造物の設置は、洪水時における流木による被害が発生するので役所が認めず従来の野獣柵には多くの問題があった。しかし本発明によれば流木による被害は全く解消されるので役所の認可が得られる野獣類の河川侵入防止構造を提供できる。ウ、すなわち、本発明の構造にすれば野生シカなどの野獣類が野獣柵の開口部である河川部分から侵入しようとしたときに、河川の水を放水して河川から侵入する野生シカなどの野獣類の侵入を防止できる。
エ、更に本発明の構造によれば、河川の水を汲み上げて野獣類に放水噴射する「水の流れ」と、赤外線センサーが野獣類を認識して制御盤に情報を伝達して制御盤のポンプが駆動する「情報の流」と、バッテリー制御盤及びポンプへ電気供給し必要があればバッテリーはソーラーで充電される「電気の流れ」とによって構成されているので、従来方法では全く得られない野獣類の河川への侵入防止構造を提供することができる。
【実施例1】
【0009】
以下、図面に従って本発明構造の実施例について説明する。
【0010】
図1から図4までは、本発明の野獣類河川侵入防止構造を示したものであり、図1は農地・果樹園・植林地等に野獣類が野獣柵の開口部である河川部分からの侵入を河川の水を放水して防ぐ構造であり、その特徴は野生シカを赤外線センサーを介しキャッチして制御盤に伝達させて河川の水をポンプで上げてノズルを介して放水噴射させて野生シカなどの野獣類を退却させるところにある。図2と図3は原理的には図1の場合と同じであり、他の構造を示したものである。
【0011】
まず図1の構造は、ポンプ1・バッテリ2・吸水パイプ3・放水パイプ4・ノズル5・ターンテーブル6とから構成されている放水ポンプAと、山林・原野・里山などの河川Bと、従来公知の野獣柵Cと、野獣類の代表格でもある野生シカDと、から構成されている野獣類河川侵入防止構造である。この構造にすることによって、野獣柵Cが設置されていない河川Bに野生シカDが侵入されるとセンサーSがキャッチして放水ポンプ4が作動し、吸水ポンプ3から河川の水をポンプ1が吸い上げ放水ポンプAを介して放水ポンプ4の先端に取り付けてあるノズル5から野生シカDに向けて放水噴射されるので、驚いた野生シカDは野獣柵Cに侵入せずに引き返すことになる。なお、ターンテーブル6によって、センサーSとノズル5を自在に回転させることができるので、常に野生シカDの標的作動が可能となる。
【0012】
次に図2の構造は、基本的には図1と同じ構造であるが放水パイプ4が河川Bの両側にパイプ支持台8を介し野獣柵Cに固定されているところに特徴を有する。このパイプ支持台8、8との間に取り付けられている放水パイプ4から河川Bに向けて放水噴射されることになっているので、センサーSが野生シカDをキャッチすれば河川Bの水が放水パイプ4に放水されて野生シカBはそれ以上侵入できないことになる。
【0013】
また図3の構造は、図2に示した防水パイプ4が河川の両側に並置されているので野生シカDが大量に発生している地域の河川Bにおいては最適となる。例えば、群れをなして移動する大量の野生シカDを侵入させない場合は、放水パイプ4を多く配設することによって完全かつ確実に侵入を防ぐことが可能となる。なお、図4に示すようにセンサーSを作動する場合は制御盤8内設されている制御室Eで遠隔操作することもできる。
【0014】
更に、図6と図7によって放水噴射の作動について説明する。まず図6は噴射制御の説明概要図であり、野生シカなどの野獣が野獣柵の開口部である河川部分から侵入しようとしたときに河川の水を放水して野生シカなどの野獣の侵入を防止する構造であるから、まず赤外線センサーが侵入しようとする野生シカなどの野獣類を認識し、ついで野獣類を認識すると制御盤を制御させポンプの作動によって河川の水をくみ上げて河川の水を野獣に向けて放水噴射する。なお、バッテリーがセンサー・制御盤・ポンプへの電源となる。また、河川が広い場所などではターンテーブル上にセンサーとノズルを配設してターンテーブルを適宜回転させ、野獣を認識した場合はポンプを駆動して野獣を認識した方向へ放水噴射させる。
【0015】
次に図7は噴射制御の作用概要図であり、河川の水を汲み上げ野獣に放水噴射する「水の流れ」になっており、また赤外線センサーが野獣を認識すると制御盤に情報が伝えられ制御盤はポンプを駆動する「情報の流れ」になっており、またバッテリーが制御盤とポンプ電気を供給し、必要があればバッテリーはソーラーでも充電される「電気の流」になっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の野獣類河川侵入防止構造を示した概要図。
【図2】図1に示した構造の他の実施例を示した概要図。
【図3】図1に示した構造の他の実施例を示した概要図。
【図4】本発明構造の要部を示した説明概要図。
【図5】本発明構造の要部を示した説明概要図。
【図6】本発明構造の要部を示した説明概要図。
【図7】本発明構造の要部を示した説明概要図。
【図8a】従来の一般的な野獣柵を示した説明概要図。
【図8b】従来の一般的な野獣柵を示した説明概要図。
【図8c】従来の一般的な野獣柵を示した説明概要図。
【符号の説明】
【0017】
1 ポンプ 2 バッテリ
3 吸水パイプ 4 放水パイプ
5 ノズル 6 ターンテーブル
7 放水噴射 8 パイプ支持台
11 動物侵入防止柵 12 支柱
14 金網 16 シート
22 下側横連結部材 24 上側横連結部材
26 ワイヤ
A 放水ポンプ B 河川
C 野獣柵 D 野生シカ
E 制御室 S センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地・果樹園・植林地等に侵入するサル・シカ・イノシシなどの野獣類の被害を防ぐ野獣類防止構造において、前記野獣類が野獣柵の開口部である河川部分からの侵入を河川の水を放水して防ぐことを特徴とする野獣類河川侵入防止構造。
【請求項2】
請求項1記載の野獣類河川侵入防止構造において、野獣類が野獣柵の開口部である河川部分から侵入しようとすると赤外線センサーが作動して野獣類の侵入を認識する機構と、該野獣類を認識するとポンプを介して河川の水をくみ上げかつ野獣類に向かって放水噴射する制御盤とが作動制御する機構と、前記センサー・制御盤・ポンプへの電源をバッテリーを用いた機構とから構成される請求項1記載の野獣類河川侵入防止構造。
【請求項3】
請求項2記載の野獣類河川侵入防止構造において、ターンテーブル上にセンサーとノズルを配設しかつターンテーブルを適宜回転させポンプを駆動して野獣を認識した方向に放水噴射させる請求項2記載の野獣類河川侵入防止構造。
【請求項4】
請求項3記載の野獣類河川侵入防止構造において、放水する水の流れを河川の水をくみ上げて野獣類に放水噴水する方法と、センサーからの情報の流れを赤外線センサーが野獣類を認識すると制御盤に伝えられてポンプを駆動する方法と、バッテリーからの電気の流れをバッテリーを介して制御盤とポンプへの電気を供給かつ必要に応じてバッテリーがソーラーで充電される方法と、から構成される請求項1乃至請求項3記載の野獣類河川侵入防止構造。
【請求項5】
請求項4記載の野獣類河川侵入防止構造において、河川と横断又は平行に配設したノズルから放水噴射させる請求項4記載の野獣類河川侵入防止構造。
【請求項6】
請求項5記載の野獣類河川侵入防止構造において、河川の水を常時ノズルに放流させてセンサーの作動によりノズルから放水噴射させる請求項5記載の野獣類河川侵入防止構造。
【請求項7】
請求項2記載の野獣類河川侵入防止構造において、河川の両側に横断状に吸水パイプを付設したパイプ支持台を設置しかつ該パイプ支持台に野獣柵を固定した請求項2及び4記載の野獣類河川侵入防止構造。
【請求項8】
請求項5記載の野獣類河川侵入防止構造において、河川の両側に平行状に防水パイプを数本並設しかつ該放水パイプから河川に向けて放水噴射する請求項3及び4記載の野獣類河川侵入防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【公開番号】特開2011−15631(P2011−15631A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161685(P2009−161685)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(592231446)北原電牧株式会社 (18)
【Fターム(参考)】