説明

野菜及び花卉植物の食害防止剤

【課題】人、植物、ペット、土壌などに悪影響を及ぼさないようにするとともに、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等が好んで摂取し、摂取後は元の場所で死ぬようにした野菜及び花卉類に対する食害防止剤であり、さらに原材料の殆どが有機物質であるため食べ残しは土壌分解されるという従来に無い、環境保全型で安全性の極めて高いナメクジ、カタツムリ、マイマイ等の腹足類に属する軟体動物による植物の食害防止剤を提供するものである。
【解決手段】重量比でそれぞれリン酸鉄1〜5%、炭酸カルシウム2〜5%、穀物糠90〜97%の混合粉体に、椎茸の煮汁またはホップ水溶液等の腹足類誘引剤を加えてペレット化、乾燥することにより、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等の腹足類に属する軟体動物による植物の食害防止剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等の腹足類に属する軟体動物からの野菜及び花卉植物に対する食害防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭菜園、ガーデニングを楽しむ人が増え、それに伴い農薬の使用量も増えている。しかし、野菜や花は作りたいが農薬は使いたくないという安全指向者も急増している。農薬を使用しない場合、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等による被害は甚大なものになっている。これら害虫は夜行性であり駆除法は農薬の使用が一般的である。特許文献1、特許文献2、特許文献3に見られるように、使用されている農薬としては、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、カーバメイト系があり、液剤、粉剤、エアゾール、固形剤として使用されている。
ただ、これらの薬剤は臭いが強かったりしてペット類に対して好ましくなく、植物の薬害の心配もあり環境上好ましくない。
また、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等に対しては、特許文献4のような土壌処理剤もあるが、これらの成分は植物の根より吸収し植物に残留する恐れもある。
このような観点から、人、植物、ペット、土壌などに悪影響を及ぼすことに不安を抱き
使用を嫌がる人も多い。
【特許文献1】特開2001−213705号
【特許文献2】特開H06−329688号
【特許文献3】特開2004−35499号
【特許文献4】特開2002−68902号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、環境保全型で安全性の極めて高いナメクジ、カタツムリ、マイマイ等の腹足類に属する軟体動物による植物の食害防止剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
人、植物、ペット、土壌などに悪影響を及ぼさないようにするとともに、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等が好んで摂取し、摂取後は元の場所で死ぬようにしたものであり、さらに原材料の殆どが有機物質であるため食べ残しは土壌分解されるという従来に無いものである。
つまり、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等が好んで摂取するように加工されており、植物への食害を起こす前に摂取させることができ、殺虫剤や有害物質を一切使用しない極めて安全性の高いものであり、人、植物、土壌、ペット等への悪影響が無い環境保全型植物保護剤である。
また、摂取後直ちに居場所に戻るため、死骸が残らない、さらに原材料の殆んどが有機物質であり、食べ残しは土壌分解される等優れた効果を有する。
【0005】
本発明による食害防止剤は、リン酸鉄と炭酸カルシウムと、穀物糠の混合粉体に椎茸の煮汁またはホップ水溶液を加えて混合し、ペレットに加工後乾燥させたことを特徴とする食害防止剤に関するものである。
本剤の成分である炭酸カルシウムとリン酸鉄および穀物糠の添加目的について以下述べる。
まず、腹足類に属する軟体動物であるナメクジ、カタツムリ、マイマイ等はブロック塀廻りを徘徊しているが、これはセメントに含まれているカルシウムを摂取していると言われている。このようにナメクジ、カタツムリ、マイマイ等はカルシウムを好んで摂取する。そのため当剤は、カルシウム源として炭酸カルシウムを添加している。
また、当剤にはリン酸鉄を含むが、この理由は、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等がリン酸鉄を摂取すると直ちに内臓に変化を生じ、食害を停止し居場所に戻る。その後、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等は食物を摂取不能となる。
当剤にはさらにナメクジ誘引剤として椎茸の煮汁またはホップ水溶液を含む。椎茸の煮汁やホップの香りにより、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等は急速に集まり当剤を摂取する。
【発明の効果】
【0006】
当剤は、ナメクジ、カタツムリ、マイマイ等類が好んで摂取するとともに、居場所に戻って死ぬため土壌や植物の表面を汚染せず、土壌中で自然分解する材料から構成される、人やペットにやさしい環境対応型の植物食害防止剤の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願発明には、リン酸鉄のうち、好ましくは燐酸第二鉄を用いる。鉄として20%以上含有し、不燃性であるため特に危険性はない。また人に対する有害性もない。
このリン酸第二鉄に、炭酸カルシウム、米糠、大麦麦糠の粉体を混合し、5wt%椎茸煮汁により水分を水分10〜20%に調整した後、ミキサーにて練り3.5〜5mmにペレット化し、天日または乾燥機により仕上げる。椎茸は乾物を使用する。なお、椎茸の海外物又は火力による高温熱風乾燥したものは、香気が少ないため使用量は多くする必要がある。
配合比率の最適な範囲を下記する。
米糠 35〜60%
麦糠 35〜60%
炭酸カルシウム 2〜5%
リン酸第二鉄 1〜5%
椎茸煮汁 5〜15%
【実施例1】
【0008】
(食害防止剤の調整)
リン酸第二鉄に、炭酸カルシウム、米糠、大麦麦糠の粉末を混合し、5wt%椎茸煮汁により水分を10〜20%に調整した後、ミキサーにて練り3.5〜5mmにペレット化し、天日又は乾燥機により仕上げ、食害防止剤を調整した。乾燥前の配合割合は下記の通りである。
米糠 40%
麦糠 40%
炭酸カルシウム 3%
リン酸第二鉄 2%
椎茸煮汁 15%
【実施例2】
【0009】
(たばこ育苗ハウス内での試験)
1.2月上旬より、たばこ苗に食害発生。
2.夕刻、通路及びたばこ苗周辺に本剤を散布。
3.散布後、食害はなし。毎年1回散布する殺虫剤が不要となった。
【実施例3】
【0010】
(椎茸栽培での試験)
1.毎年3月よりナメクジ類が出没し多大な被害があり。
2.原木の周辺に本剤を散布。
3.食害は例年の20〜30%に減少した。
【実施例4】
【0011】
(牛舎内での試験)
1.牛舎内は、餌が豊富なためナメクジ等が多量に発生していた。
2.牛舎内に本剤を散布(1m当り50g)。
3.3日目で本剤20〜30%の残量を確認。
4.4日目に本剤を1回目と同量処理。
5.6日目に約50%本剤残量確認。
6.7日目の残量は前日と差はない事を確認。摂取量が減った事により、効果あり。(死骸については、5〜6匹程度であり、居場所にて自然衰退したものと考えられる)
牛舎にて測定した本剤の摂取量を表1に示す。
【表1】

【実施例5】
【0012】
(家庭菜園での試験)
1.菜園に食害が多く発生しているが、夜行性のため駆除が困難であった。
2.野菜、花、通路周辺に本剤を散布。
3.食害は、見られなくなった。

【実施例6】
【0013】
(プランターでの試験)
1.ナメクジが好むペチュニア3本植えの鉢を2個準備し、それぞれにナメクジ10匹を放し、ポリ容器をかぶせ、一方の容器内には当剤約8gを一方の容器内には散布しないで観察した。
2.当剤を散布した容器内での食害は殆んどなかったが、散布していない容器内のペチュニアは、1日目より食害を受け、3日目には3本共70〜80%の葉に食害が見られた。5〜6日後には、ほぼ100%の食害を受けた。
表2に結果を示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量比1〜5%のリン酸鉄と重量比2〜5%の炭酸カルシウムと重量比90〜97%の穀物糠からなる混合粉体に、含水率が略20%となるように椎茸の煮汁またはホップ水溶液を加えて各成分が均質になるまで混合し、ペレット状態に加工した後に乾燥させたことを特徴とするナメクジ、カタツムリ、マイマイ等の腹足類に属する軟体動物からの野菜及び花卉植物に対する食害防止剤

【請求項2】
穀物糠は米糠または麦糠からなることを特徴とする請求項1の野菜及び花卉植物に対する食害防止剤。

【公開番号】特開2010−1263(P2010−1263A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162809(P2008−162809)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(501339333)有限会社マイ・ガーデン (1)
【Fターム(参考)】