説明

金属加工液用の乳化剤

一般式(I):RO−(CH−CHR’−O)n(CHCH−O)−H(I)[式中、Rは12〜22個のC原子を含有する飽和および/または不飽和のアルキル部分を表し、R’はメチル−、エチル−またはプロピル−基であり、mは1〜12、好ましくは4〜10の数を表し、nは1〜10、好ましくは2〜8の数表す]で表されることを特徴とし、R部分を形成する脂肪アルコールが15〜75gI/100gのヨウ素価を有することを特徴とするアルコキシ化脂肪アルコールの、少なくとも水および水と混ざり合わない1つの油性成分、ならびに任意にさらなる成分を含有する金属加工液中の乳化剤としての使用に関する適用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工液において有用な乳化剤、ならびにこれらの乳化剤を含有する金属加工液に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学または天然油のいずれかに基づく金属加工液は技術的に既知であり、圧延、スタンピング、延伸、ピクリング、切断および押し出しを含む様々な方法のために、業界で使用されている。様々な油の水性製剤が、潤滑性を与え、ローラーを冷却するために、鋼鉄の冷間圧延における圧延油として広く用いられている。さらに、加工対象物/動作要素の効果的な潤滑と効果的な冷却を与えるために、金属加工液が合致せねばならない他の基準が存在する。例えば、圧延油は金属の表面に連続的なコーティングを与えることができなければならない。さらに、このコーティングまたはフィルムは、最小限の厚みを有さねばならないし、ロールのかみ込みで生じる高圧で維持されるように、金属に実質的に十分でなければならない。これらの潤滑性検討事項に加えて、圧延油が圧延ストリップにある程度のさび止めを与え、焼鈍作業中にきれいに燃え尽きるならば、特に有利である。残留の圧延油はきれいに揮発せねばならず、少しの炭素質析出または表面変色も残してはならない。加工される金属の種類と異なる操作条件および用いられる適用方法を考慮して、特性の最適バランスを得るべく多数の金属加工液が開発されてきた。これらの種類の大部分には、異なる脂肪および油の使用または脂肪または油の一部を石油製品、例えば鉱物油または合成潤滑油、例えば、合成炭化水素またはエステルで置き換えることが含まれている。
【0003】
乳化剤系も、幅広く様々であり、添加剤がこれらの油剤の特性を高めるために用いられている。あいにく、エマルションはかなり不安定な流体である。例えば、エマルションはしばしば合一の傾向を示し、平均粒径の増大、粒度分布の変化および最終的に油および/または水分離をもたらす。様々で厳しい処理条件下で操作した場合、この不安定性はさらにより強くなる。この点において、エマルション中の構成水質/組成物、温度、pH、不定の油および金属微粒子のような不定要素が重要かつ決定的であると考えられる。上記を考慮すると、これらの不定要素の値は、当業者に既知の幅広い範囲にわたり変化できることが挙げられる。例えば、構成水に対し0°dH(脱塩水)〜40°dHの水の硬度値が認められる。エマルションの調製後、操作中に、乳化安定性、膜形成特性および分散能といった関連特性の低下または損失の原因となる、水の蒸発または金属微粒子およびイオンの流入によってイオン強度および/または水の硬度を著しく変化/増加させてよいことも知られている。このようなエマルションの不安定性は、極めて望ましくない。金属加工エマルションの使用者は、時間が経っても変化しない特性/性能を有する安定なエマルションを強く望む。したがって、研究開発分野において、これらエマルションの生産者は乳化安定性、特に実際の様々な操作条件下での安定性の最大化を得ようと努力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】英国特許第1462357号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/089857号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/071582号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Tabelle 1」、第15頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水中油型エマルションまたはさらに多重エマルションである金属加工液の安定性課題が、1つ以上のアルコキシ化脂肪アルコールを乳化剤として用いることにより解決できることがわかった。驚くべきことに、この種類のエマルションは、様々で厳しい処理条件下で高い乳化安定性を示すだけでなく、良好な泡立ち性および良好な潤滑性を示す。また、前記種類の乳化剤は、濃度変化に対し高い応答性を示す。作成者は、乳化剤含量を変えることにより要望通りにエマルションの油滴の径に直接影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】市販の5EO製品と比較した、乳化剤AおよびBについての泡立ち挙動を示す図である。
【図2】製剤Cと比較した、製剤AおよびBについての泡立ち挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第一の態様は、一般式(I):
【化1】

[式中、Rは12〜22個のC原子を含有する飽和および/または不飽和のアルキル部分を表し、R’はメチル−、エチル−またはプロピル−基であり、mは1〜12、好ましくは4〜10の数を表し、nは1〜10、好ましくは2〜8の数を表す]
で表されることを特徴とするアルコキシ化脂肪アルコールの、少なくとも水および水と混ざり合わない1つの油性成分ならびに任意にさらなる成分を含有する金属加工液中での乳化剤としての使用に関する。式(I)のR部分は、15〜75gI/100gのヨウ素価を示す。
【0009】
式(I)で表される化合物は既知である。脂肪アルコール部分に不飽和のアルキル部分を有するのが好ましく、そのためモノ−、ジ−、トリ−またはオリゴ不飽和アルキル基が全て適している。アルキル部分「R」は、分枝または直鎖であってもよい。式(I)で表される化合物の調製に使用する好適な脂肪アルコールは、12〜22、好ましくは14〜20個のC原子を有するモノ不飽和脂肪アルコールから選択される。直鎖アルコールが分枝アルコールよりも好適である。
【0010】
これに関して、好適な不飽和脂肪アルコールは、10−ウンデセン−1−オール、(Z)−9−オクタデセン−1−オール(一般名:オレイルアルコール)、(E)−9−オクタデセン−1−オール(一般名:エライジルアルコール)、(Z,Z)−9,12−オクタデカジエン−1−オール(一般名:リノレイルアルコール)、(Z,Z,Z)−9,12,15−オクタデカトリエン−1−オール(一般名:リノレニルアルコール)、(Z)−13−ドコセン−1−オール(一般名:エルシルアルコール)、および(E)−13−ドコセン−1−オール(一般名:ブラシジルアルコール)である。最も好ましくは、オレイルアルコールである。
【0011】
これに関して、好適な飽和脂肪アルコールは、ヘキサノール−1、ヘプタノール−1、オクタノール−1、ノナノール−1、デカノール−1、ウンデカノール−1、ドデカノール−1、トリデカノール−1、テトラデカノール−1、ペンタデカノール−1、ヘキサペンタノール−1、ヘプタデカノール−1、オクタデカノール−1、ノナデカノール−1、エイコサノール−1、ヘンエイコサノール−1およびベヘニルアルコール−1である。この飽和、分枝アルコールの他に、ゲルベ型アルコールなどもまた適している。最も好ましくは、セチルアルコール(=ヘキサデカン−1−オール)である。
【0012】
式(I)のアルコール部分「R」について言えば、ヨウ素価もまた関連する。ヨウ素価(例えばDGF法、C−V 17aに従って測定)の好ましい範囲は、15〜75、好ましくは20〜75、より好ましくは20〜55、最も好ましくは、25〜50gI/100gである。この値は、常に、式(I)で表されるアルコキシレートの調製に使用する脂肪アルコールの全体構造に関連する。
【0013】
式(I)で表される成分は混合アルコキシレートすなわちプロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはペンチレンオキシドと共に、少なくともエチレンオキシド部分を含有し、最も好ましいアルコキシドは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドである。添え字mおよびnは、数字であり、統計的に分布する製造の種類によるアルコキシド量としての整数または割合数であってよい。しかしながら、本発明の教示は、アルコキシドの狭い範囲を有するアルコキシドも含む。
【0014】
式(I)で表されるアルコキシ化成分は、当業者に既知の一般的方法で調製される。脂肪アルコールをアルカリ系触媒の存在下、約120〜220℃の温度、約100〜500kPaの圧力で、アルコキシドと反応させて、アルコキシ化された最終生成物を生成させる。
【0015】
エチレンオキシドの量が他のアルコキシドの量と等しいか、またはより多い、式(I)で表される成分を用いるのが特に好ましいため、すなわち、添え字については、m≧nの関係が正しい。mの好ましい値は、4〜10、特に4〜8の範囲であり、nの好ましい値は、1〜8、特に1〜5、最も好ましくは1〜3の範囲である。しかしながら、nが4〜6を表す化合物も好ましい。また、mが4〜10であり、nが1〜8または1〜5または1〜3である、式(I)で表される化合物も好ましい選択である。
【0016】
式(I)で表される化合物において、エチレンオキシドと他のアルコキシドの順序は重要ではなく、ランダム(異なるアルコキシドの混合順序)であるか、ブロック状であり得る。
【0017】
しかしながら、式(I)で表される化合物が2つのブロックを含有し、好ましくはアルキル部分に隣接する始めの1つがアルコキシド、好ましくはプロピレンオキシド、を含有し、そして最後のブロックがエチレンオキシドを含有する態様が好ましい。このような化合物は、一般式RO−(CHCR’−O)(CH−CH−O)−H、または、より簡単にRO−(PO)−(EO)Hとして記述できる。
【0018】
しかしながら、上記の一般式(I)は、少しもアルコキシド部分の特定の順序を限定するものとして理解されない。したがって、この式は、RO−(EO)−(PO)Hのようにブロック状にアルコキシ化された生成物も、ランダムに分布した同属体も含む。
【0019】
通常、式(I)で表されるこれらの化合物は、R’がメチル基を示すものが好ましく、すなわちこれらの化合物は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方を共に含有する。
【0020】
本発明のさらなる好ましい態様は、式(I)で表される成分の混合の使用に関し、Rは一方の化合物において飽和部分を表し、他方の化合物において不飽和部分を表す。式(I)で表される飽和および不飽和の化合物の混合は、広い重量比範囲で変化してよく、例えば、飽和化合物は1〜99重量%の量で存在し、不飽和化合物は99〜1重量%の量で存在する。しかし、飽和および不飽和の化合物のこれらの組み合わせを用いる場合、式(I)で表される飽和化合物の量は、式(I)で表される不飽和化合物の量よりも多くあり得る。例えば、本発明の好ましい態様において、不飽和化合物の量は51〜99重量%の範囲であり、飽和化合物の量は1〜49重量%である。
【0021】
しかしながら、最も好ましい本発明の混合は、オレイル−(C18’)およびセチル−(C14)に基づく式(I)で表される化合物を共に含有する。これらの化合物は両方、99:1〜1:99の重量比、特に4:1〜1:4の比、特に9:1〜3:1の重量比で共に存在してよい。さらに、オレイル−に基づく化合物を過剰に有するのが特に有利である。
【0022】
アルコキシ化脂肪アルコールの金属加工液用の乳化剤としての使用は、本来それ自体は新しくない。英国特許第1462357号は、乳化する目的で、脂肪アルコールアルコキシレートをジカルボン酸のジエステルと共に組み合わせることを開示する。しかしながら、英国特許第1462357号は飽和アルキル部分を有するエトキシ化脂肪アルコールのみを実施例に開示する。一方、本発明は、少なくとも2つの異なる種類のアルコキシレートを分子内に有するアルコキシ化脂肪アルコール選択する。本発明の請求項に記載された方法の使用において、このようなジカルボン酸エステルのジエステルの使用を避けることはさらに好ましい。国際公開第2008/089857号から、アルミニウム合金マグネシウムの湿式加工用冷却潤滑油が知られる。特に脂肪アルコールを含有し、プロポキシ化およびエトキシ化され、この目的のために選択されたさび止め剤と組み合わせた水混和性のエマルションの使用が開示されている。「Tabelle 1」の第15頁に、C12−C14アルコールの混合に基づき、エトキシ化、プロポキシ化された(3EO+6PO)の特定の脂肪アルコールが開示されている。これらの化合物は、本教示の意味においては好ましくなく、したがって、保護から除外し得る。エトキシ化オレイルアルコールの特定の混合と国際公開第2008/089857号の「Tabelle 1」の第15頁に示されるプロポキシ化オレイル/セチルアルコールに関しても同じである。国際公開第2008/071582号から、ヨウ素価1gI/100g以下のプロポキシ化およびエトキシ化獣脂脂肪アルコールが乳化剤として使用できることは既知である。
【0023】
本発明のエマルションの油成分に関しては、該成分は鉱物油、合成潤滑油、天然トリグリセリドおよび全ての記載した基剤流体の混合からなる群から選択され得ると示す。鉱物油は、石油の掘削、次いで分画、そして精製によって得られる。本発明の金属加工液に有利な他の既知の油成分は、エステル、ポリ−アルファ−オレフィン、ポリグリコール等であり、全て疎水性の性質を有しており、そのため本発明の金属加工液の調製に適当である。さらに、特にエステルは、(a)植物性および動物性脂肪のような天然エステルおよびグリセロールと脂肪酸のトリグリセリドである油、および(b)多価アルコール(ポリオール)と天然および合成由来の脂肪酸の合成エステルからなる群から選択してよい。合成エステルの例は、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどのような脂肪酸およびポリオールである。
【0024】
本発明の金属加工液としては、好ましくは水中油型エマルションであり、その最終使用において、濃縮含量は通常高くても20重量%、好ましくは15重量%未満および最も好ましくは10重量%未満である。しかしながら、濃縮されたエマルションに対し、油含量は60重量%、例えば50重量%であってさえよい。
【0025】
通常、これら式(I)で表される化合物は、式中のR’がメチル基を表し、すなわちこれらの化合物は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの両方を共に含むのが好ましい。
【0026】
本発明の乳化剤は、最終の金属加工液中に、好ましくは0.1〜25重量%の量、より好ましくは1〜15重量%の量、最も好ましくは1.5〜10重量%の量で存在する。
【0027】
本発明の金属加工液は、好ましくは水中油型(o/w)エマルションであり、より詳細には0.1μmより大きい平均粒径を有する(o/w)マクロエマルションである。好ましい範囲は、0.1〜100μmであり、最も好ましくは0.1〜45μmである。
【0028】
さらに、金属加工液は、硫黄添加剤、例えば硫化油または脂肪、耐磨耗剤および/またはさび止め剤、消泡剤、殺生物剤および金不活性化剤と同様に極圧添加剤、および/または可溶化剤のようなあらゆる種類の汎用添加剤を含んでよい。したがって、本発明の好ましい態様は、少なくとも水および水と混ざり合わない1つの油性成分、ならびに硫黄添加剤、耐磨耗剤および/または極圧添加剤、さび止め剤、消泡剤、殺生物剤、金不活性化剤および/または可溶化剤の群から選択される任意にさらなる成分を含有する金属加工液中の乳化剤としての、一般式(I)により特徴付けられるアルコキシ化脂肪アルコールの使用に関する。
【0029】
さび止め剤は、本発明の金属加工液において非常に好ましい添加剤である。さび止め剤は、通常、限定するわけではないが、脂肪酸、脂肪酸アミンおよびアルキルアミン、ならびにアルカノールアミドの混合を含有する系から選択される。
【0030】
通常の金不活性化剤は、アゾール群から選択され得る。実例としてのアゾール型さび止め剤は、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、メルカプト−ベンゾトリアゾールのナトリウム塩、ナフトトリアゾール、メチレンビス−ベンゾトリアゾール、ドデシルトリアゾールおよびブチルベンゾトリアゾール、好ましくはトルトリアゾールである。
【0031】
本発明の乳化剤に加えて、異なる構造のさらなる乳化剤が金属加工液において好ましい成分である。他の乳化剤がより親水性である場合、通常、1つの乳化剤は本質的に疎水性である。共乳化剤は、例えば、エトキシ化脂肪アルコール、アルコキシ化脂肪酸またはフェノール型乳化剤から選択される。5つまでの異なる乳化剤が金属加工液中に存在できる。
【0032】
本発明の乳化剤は、好ましくはさび止め剤および共乳化剤のような他の添加剤、油および水と共に好ましくは併用または混合され、それ自体が次いで既製の金属加工液を作るために用いられる濃縮物を形成する。
【0033】
したがって、本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの式(I)の乳化剤、1つの共乳化剤、さび止め剤、油性成分および任意に他の成分を含有し、式(I)の乳化剤の量が少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最大で30重量%、好ましくは最大で25重量%であることを特徴とするエマルション濃縮物に関する。
【0034】
エマルション濃縮物は、商品化された水混和性金属加工液について一般的な形である。これらの濃縮物は、通常、少なくとも2つの異なる乳化剤、さび止め剤系および基剤油(鉱物油、エステル油、ポリグリコールなど)、ならびに消泡剤、殺生物剤、可溶化剤および極圧添加剤および/または耐磨耗添加剤(いわゆるEP/AW添加剤)のような任意に追加の成分を含んでなる乳化剤系を含有する。このような濃縮物中で、全ての成分の合計が100重量%となる条件で、乳化剤量は5〜30重量%の範囲であり、基剤油は好ましくは50〜75重量%の量で存在し、さび止め剤は5〜15重量%の量で存在し、殺生物剤は0.01〜1重量%の量で使用され、可溶化剤は好ましくは1〜5重量%の量で存在し、EP/AW添加剤は2〜10重量%の量で使用される。水も、5〜25重量%といったより少量で存在しうるが、任意の成分にすぎない。
【0035】
本発明のエマルションは、2つの異なる方法:直接的に、(それらの最終使用における)エマルションを、本発明のアルコキシ化脂肪アルコールを含有する乳化性油の水中での乳化作用によって調整する方法。間接的に、まず第1に濃縮エマルションを作り(または前記濃縮物を用い)、第2にこの濃縮エマルションを水で簡単に希釈することによって2段階でエマルションを調製する方法で得ることができる。濃縮エマルションは、約60重量%の油を水にアルコキシ化脂肪アルコール乳化剤で安定化した、水中油型エマルションである。最終エマルションは、濃縮エマルションを水で簡単に希釈することにより調製できる。
【0036】
本発明のさらなる側面は、金属加工工程における金属加工液の使用に向けられる。通常の金属加工工程は、金属除去を伴うあるいは伴わない金属の弾性変形、塑性変形または冷間加工を含む。これらの操作のいくつかにおいては、金属片は鋼鉄およびアルミニウムの圧延および延伸のように変形されるのみであり、一方その他においては、切断、研磨、ブローチ削り、金属の機械加工および穴開けのように、金属は変形されるよりもむしろ除去され変形される。製造される金属加工装置および金属加工品が作り出される金属材料は、鋼鉄、成形鉄、および鉄合金、ならびにアルミニウム合金であり、他の鉄を含まない合金はチタン、マグネシウム、銅、錫および真ちゅうのような成分を含む。
【0037】
本出願の最後の態様は、少なくとも水相、水と混和できない油相、乳化剤、ならびに乳化剤、共乳化剤、さび止め剤、金不活性化剤、消泡剤、殺生物剤、EP−および/またはAW−添加剤、可溶化剤の群から選択される追加の成分を含有し、流体が、請求項1で示される式(I)で表される少なくとも1つの化合物を乳化剤として0.1〜20.0重量%の量で含有することを特徴とする金属加工液に関する。
【実施例】
【0038】
2つの新規な乳化剤を一般的なアルコキシ化法を用いて合成し、5部のエチレンオキシドを有する市販の非イオン性乳化剤と比較して、異なる適用試験を行った。
【0039】
〔1. 乳化剤Aの合成〕
333gのオレイル/セチルアルコールを、1.4gのKOH溶液と混合し、真空下で乾燥させた。次いで、まず初めに、221gのプロピレンオキシド(PO)を、170〜180℃および最大5バールの圧力で添加した。プロポキシ化反応を行った後、146gのエチレンオキシド(EO)を同一条件下で添加した。オキシドの良好な取り込みの後、反応をさらに60分間続けた。次いで、反応混合物を冷却し、中和し、Tonsil(登録商標)とCelatom(登録商標)を通してろ過し、淡黄色液体生成物を得た。この物質の性質を明らかにすべく、次の物理的データを測定した。
【0040】
【表1】

【0041】
〔2.乳化剤Bの合成〕
244gのオレイル/セチルアルコールを、1.4gのKOH溶液と混合し、真空下で乾燥させた。次いで、まず初めに214gのプロピレンオキシドを、170〜180℃および最大5バールの圧力で添加した。プロポキシ化反応を行った後、243gのエチレンオキシドを同一条件下で添加した。オキシドの良好な取り込みの後、反応をさらに60分間続けた。次いで、反応混合物を冷却し、中和し、Tonsil(登録商標)とCelatom(登録商標)を通してろ過し、淡黄色液体生成物を得た。この物質の性質を明らかにすべく、乳化剤Aと同じデータを測定した。
【0042】
【表2】

【0043】
〔3.泡立ち性の比較〕
乳化剤A、乳化剤Bおよび5EOを有する市販の非イオン性乳化剤を、泡立ちの観点から比較した。3成分を評価するため、Sita Foam Tester(登録商標)R−2000を用いて以下に記載する試験をおこなった。
・1%水溶液の調製
・溶液300mlをビーカーに入れる
・次の設定値を用いて攪拌条件下で試験を行った
試料量: 300ml
温度: 20℃ 許容誤差:+/−0.5℃
撹拌速度: 1100分−1
攪拌時間: 10秒 サイクル: 3
測定区間: 10秒
泡分解時間: 20分/0ml泡の高さ
洗浄: 短縮
・それぞれの区間および、20分経過した減衰について泡の高さを記録した。
・平均値を図(時間に対する泡の高さ)に示した。
【0044】
市販の5EO製品と比較した、乳化剤AおよびBについての泡の増大および減少を図1に示す。新規乳化剤AおよびBのより高いHLB値にも関わらず、新規な乳化剤の両方がより高い泡立ち傾向を有する市販の5EO乳化剤よりもずっと少ない泡を生じたことが明らかにわかる。
【0045】
〔4.潤滑性〕
既に試験した3つの乳化剤全てを、基剤流体、さび止めパッケージおよび乳化剤パッェージを含有する基本骨格製剤中に用いた。以下の製剤を、乳化剤AおよびBの評価に用いた。
【0046】
【表3】

【0047】
3つの骨格製剤を、Reichert Rigを用いて潤滑性を評価した。測定した摩擦傷(Wear scars)を以下に記載する。
【0048】
【表4】

【0049】
新規な乳化剤は共に、他の市販の乳化剤に匹敵する性能を示した。
【0050】
〔5.製剤の泡立ち性の比較〕
潤滑性試験用に準備した3つの製剤全てを、純粋な乳化剤として同じ泡立ち性試験を行った。
【0051】
製剤Cと比較した、製剤AおよびBについての泡の増大および減少を図2に示す。純粋な乳化剤の結果と結論は、使用した骨格製剤に明確に映し出され得る。
【0052】
〔6.異なる基剤流体中のエマルション挙動〕
異なる基剤流体についての多用途性を示すために、3つの乳化剤全てを4流体:異なる化学構造の2つのエステル(トリメチロールプロパン−トリオレエート=TMP−トリオレエート;2−エチルヘキシルオレエート=2−EH−オレエート)および2つの石油流体(ナフテン油;パラフィン系油)に特定の割合で混合した。
【0053】
次いで、これらの濃縮物を粒径測定のために水で5%に希釈した。油滴分布の平均値、メジアン値および最大値を測定した。3つの値全ては、理想的に極めて等しくあるべきである。しかし、より大きい液滴が存在する場合、x軸の対数目盛りのためにより高い逸脱が許容され得る。平均値は粒径に等しく、対数目盛りを認める場合、算術中間粒径を示す。全ての油滴の50%が測定されるまで、メジアン値は粒径を示す。最大値は、エマルション中に高い割合で存在する粒径を示す。
【0054】
4つの基剤流体中の新規乳化剤のいずれもについての結果を以下の表1および2に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
乳化剤Aは全ての種類の基剤流体に非常に適当であり、一方、乳化剤Bは、高濃度のモノ−エステルおよび概して石油化学の基剤油に関して、より効果的であることがわかる。
【0058】
比較例として、乳化剤AおよびBについて行った同じ測定を実験例Cについて行った。表3に見られるように、液滴粒度は乳化剤Cの濃度にのみ弱い影響を受け、エマルション特性は、本発明によって調製したエマルションよりもより低い有利性であった。特に、乳化剤Cの濃度は、本発明の乳化剤AおよびBと同じような様態を液滴粒度にもたらさなかった。
【0059】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Rは12〜22個のC原子を含有する飽和および/または不飽和のアルキル部分を表し、R’はメチル−、エチル−またはプロピル−基であり、mは1〜12、好ましくは4〜10の数を表し、nは1〜10、好ましくは2〜8の数を表す]
で表されることを特徴とし、R部分を形成する脂肪アルコールが15〜75gI/100gのヨウ素価を有することを特徴とする、アルコキシ化脂肪アルコールの、少なくとも水および水と混ざり合わない1つの油性成分ならびに任意にさらなる成分を含有する金属加工液中での、乳化剤としての使用。
【請求項2】
Rはオレイル部分を表し、R’はメチル基を表す、式(I)で表される成分を使用することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
一方の化合物は基Rとして不飽和部分を含有し、もう一方の化合物はRとして飽和部分を含有する、式(I)で表される少なくとも2つの異なる化合物の混合物を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
一方の化合物は基Rとしてオレイル部分を含有し、もう一方の化合物は基Rとしてセチル部分を含有する、式(I)の少なくとも2つの異なる化合物の混合物を使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
式(I)で表される乳化剤が、0.1〜25重量%、好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは1.5〜10重量%の量で、金属加工液中に存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
ヨウ素価が20〜55gI/100gの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
金属加工液がエマルション、好ましくは水中油型のエマルションであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
式(I)において、エチレンオキシド部分とプロピレンオキシド部分がランダムに分布していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
式(I)において、アルコキシドをブロック状に添加し、脂肪アルコール基に隣接するプロピレンオキシド、次いでエチレンオキシドブロックが続くことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
式(I)において、添え字nは1〜5、好ましくは1〜3の値を表すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
ジカルボン酸のジエステルの共使用を除くことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
式(I)の乳化剤の量が少なくとも2重量%であり、最大30重量%であり、好ましくは3〜25重量%であることを特徴とする、少なくとも1つの式(I)の乳化剤、少なくとも1つの追加の乳化剤、さび止め剤系、油性成分および任意に他の成分を含有するエマルション濃縮物。
【請求項13】
請求項1で示される式(I)で表される少なくとも1つの化合物を乳化剤として0.1〜20.0重量%の量で含有することを特徴とする、少なくとも水相、水と混和できない油相、少なくとも1つの乳化剤、ならびにさび止め剤、金不活性化剤、消泡剤、および/または殺生物剤の群から選択される追加の成分を含む金属加工液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−502121(P2012−502121A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525451(P2011−525451)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006228
【国際公開番号】WO2010/025874
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】