説明

金属含有組成物の調製方法

(a)アニオン性粘土と金属添加物との物理的混合物を、200〜800℃の温度で焼成すること、および(b) 段階(a)の焼成された生成物を再水和すること、の段階を含む、金属含有組成物の調製方法。この方法は、不溶性金属添加物の使用を許す。この方法は、可溶性金属添加物の使用を要求せず、このことは経済上および環境上の利点を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオウ酸化物収着剤物質としての使用に適した金属含有組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属含有組成物をイオウ酸化物収着剤物質として使用することは、従来技術で知られている。一般に、マグネシウム、アルミニウム、および好ましくは金属添加物、たとえば希土類金属および/または遷移金属、たとえばバナジウムを、これらの収着剤物質は含んでいる。
【0003】
たとえば、米国特許第4,495,305号は、マグネシア−アルミナスピネルおよび希土類金属酸化物を含んでいる組成物をイオウ酸化物収着剤物質として使用する方法を開示する。水溶性マグネシウム無機塩と、アルミニウムがその中でアニオン中に存在するところの水溶性アルミニウム塩とを沈降させることによって、これらの組成物は調製される。沈降物は次に、乾燥されそして焼成されて、スピネル相を形成する。水溶性希土類金属塩を使用する、含浸または共沈によって、希土類金属がスピネル中に導入される。
【0004】
他のタイプのイオウ酸化物収着剤物質が、欧州特許第0554968号に開示されている。この物質は、MgO 30〜50重量%、La 5〜30重量%、Al 30〜50重量%、並びに任意的に添加物、たとえばセリアおよび/またはバナジアを含んでいる三元酸化物組成物である。この物質の調製は、硝酸ランタン、アルミン酸ナトリウム、および硝酸マグネシウムの共沈、並びに沈降物のエージング(aging)および焼成を含む。セリアおよび/またはバナジアは、焼成された物質にセリアおよび/またはバナジア含有溶液を含浸し、続いて第二の焼成段階を行うことによって導入される。
【0005】
欧州特許第0278535号は、アニオン性粘土をイオウ酸化物収着剤物質としてFCCプロセスに使用する方法を開示する。二価金属塩および三価金属塩を水性溶液から共沈し、続けて沈降物のエージング、ろ過、洗浄、および乾燥を行うことによって、このアニオン性粘土は調製される。任意的に、希土類金属が該アニオン性粘土中に取り込まれる。希土類金属塩と二価および三価金属塩との共沈によってか、あるいはアニオン性粘土への希土類金属塩の含浸によって、これは行われる。
【0006】
国際特許出願公開第01/12570号は、アルミニウム三水和物(たとえば、ギブサイト)および酸化マグネシウムを含んでいる懸濁物を調製し、該混合物を成形して成形体を得、そして該成形体を所望の金属添加物、たとえば硝酸セリウムおよびバナジン酸アンモニウムの水溶性塩を含んでいるスラリー中でエージングすることによって、金属添加物を含有するアニオン性粘土含有成形体の調製方法を記載する。
【特許文献1】米国特許第4,495,305号公報
【特許文献2】欧州特許第0554968号公報
【特許文献3】欧州特許第0278535号公報
【特許文献4】国際特許出願公開第01/12570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、イオウ酸化物収着剤物質としての使用に適した物質の新規な調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
a. アニオン性粘土と金属添加物との物理的混合物を、200〜800℃の温度で焼成すること、および
b. 段階a)の焼成された生成物を再水和すること
の段階を、本発明に従う方法は含む。
【発明の効果】
【0009】
上述の従来技術の方法とは対照的に、本発明に従う方法は、金属添加物として可溶性塩を使用することを要求しない。したがって、金属添加物として本発明の方法に使用されるために不溶性化合物、たとえばバストネサイト(希土類金属化合物の混合物)、金属炭酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属重炭酸塩、金属ヒドロキシ炭酸塩等の使用を、本発明に従う方法は許す。
【0010】
したがって、本発明に従う方法は、より広く多彩な金属添加物の使用を可能にする。さらに、本発明に従う方法は可溶性塩の使用を必要としないので、そのような塩を使用することに付随する問題を防ぐことができる。典型的なこのような問題は、イオウ酸化物収着剤物質が塩のアニオン(たとえば、硝酸イオン、硫酸イオン、塩素イオン)で汚染されること、およびイオウ酸化物収着剤物質を加熱したときに、環境上有害なガス、たとえばNO、Cl、SO等が発生することである。これらの問題は、該物質をろ過し、洗浄することによって防がれることができるけれども、これらの方法は、工業的に望ましくなく、また望ましくないアニオンを含有する排水流を発生する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
アニオン性粘土
【0012】
層間にアニオンおよび水分子が存在する、二価および三価金属水酸化物の特定の組み合わせから構成された、正に帯電した層からなる結晶構造を、アニオン性粘土は持つ。ハイドロタルサイトは天然産のアニオン性粘土の例であり、このものでは、Mgが二価金属であり、Alが三価金属であり、また炭酸イオンが、存在する主要なアニオンである。メイクスネライトはアニオン性粘土であり、このものでは、Mgが二価金属であり、Alが三価金属であり、また水酸イオンが、存在する主要なアニオンである。
【0013】
本明細書でアニオン性粘土と呼ばれる物質を説明するために、多様な語、たとえばハイドロタルサイト様物質および層状複水酸化物が使用される。本明細書で本発明者らは、これらの物質をアニオン性粘土と、その語にハイドロタルサイト様物質および層状複水酸化物を包含して、呼ぶ。
【0014】
本発明に従う方法に使用されるべきアニオン性粘土として好適な三価金属(M3+)は、Al3+、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、およびこれらの組み合わせを包含する。好適な二価金属(M2+)は、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+、およびこれらの組み合わせを包含する。
【0015】
特に好まれるアニオン性粘土は、Mg−Alアニオン性粘土、Zn−Alアニオン性粘土、Fe−Alアニオン性粘土、Mg−Feアニオン性粘土、Zn−Feアニオン性粘土、Mg−Crアニオン性粘土、Mg−Fe−Alアニオン性粘土、Mg−Zn−Alアニオン性粘土、Mg−Al−Ceアニオン性粘土、Mg−Ca−Alアニオン性粘土、Cu−Alアニオン性粘土、Cu−Crアニオン性粘土、Ni−Alアニオン性粘土、Co−Ni−Alアニオン性粘土、およびこれらのアニオン性粘土の2以上の混合物、たとえばMg−Alアニオン性粘土とZn−Feアニオン性粘土との混合物である。
【0016】
アニオン性粘土には各種の積層秩序、たとえば国際特許出願公開第01/12550号に従えば、通常の3R積層および3R積層が存在する。これらは全て、本発明に従う方法に使用されることができる。アニオン性粘土の種々の積層秩序に関するもっと多くの情報については、BookinおよびDrits著、Clay and Clay Minerals、第41巻、第5号、551〜557ページおよび558〜564ページが参照される。
【0017】
本発明に従う方法に使用されるべきアニオン性粘土は、従来技術で知られた任意の方法によって調製されることができる。三つの当該方法が以下に例示される。
【0018】
第一の調製方法は、水性溶液から二価および三価金属源を共沈し、続いて沈降物をエージングすることを含む。任意的に、エージングされた沈降物は、熱処理され、そして再水和される。熱処理および/若しくは再水和の前または後に、アニオン性粘土は成形されて、成形体を形成することができる。
【0019】
第二の調製方法は、水性懸濁された三価金属源および二価金属源を混合し、そして該混合物をエージングして、アニオン性粘土を生成し、任意的に、続いて熱処理および再水和段階を行うことを含む。熱処理および/若しくは再水和の前または後に、アニオン性粘土は成形されて、成形体を形成することができる。
【0020】
第三の調製方法は、水性懸濁された二価および三価金属源を混合し、該混合物を成形して成形体を形成し、そして水性懸濁された該成形体をエージングして、アニオン性粘土含有体を形成し、任意的に、続いて熱処理および再水和段階を行うことを含む。アニオン性粘土の最終量の少なくとも一部は、成形後に形成されるけれども、成形前に、いくらかのアニオン性粘土、好ましくは最終量の5〜75重量%が、形成されていてもよい。
【0021】
第一の調製方法は、可溶性の二価および三価金属源、すなわち水溶性塩の使用を要求する。第二および第三の方法は、少なくとも1の水不溶性金属源、たとえば酸化物、水酸化物、炭酸塩、またはヒドロキシ炭酸塩を使用する。
【0022】
エージングの語は、懸濁物を熱条件または水熱条件で30分間〜3日間処理することを言う。本明細書の文脈では、水(または水蒸気)の存在下に100℃超の温度および大気圧超の圧力、たとえば自己発生圧力におけることを、水熱条件は意味する。熱条件は、15〜100℃の温度および大気圧を言う。再水和は、熱処理された物質を水またはアニオンの水性溶液と、熱条件または水熱条件で接触させることを言い、以下にさらに説明される。
【0023】
過剰の二価および/または三価金属源が、アニオン性粘土を調製するために使用されたならば、アニオン性粘土と、反応していない(アニオン性粘土と反応していないことを意味する。)二価および/または三価金属源、たとえばブルーサイト、MgO、(水)酸化鉄および/または(水)酸化亜鉛との組成物が形成されていたかも知れない。このような組成物が、本発明に従う方法にアニオン性粘土として使用されることもできる。
【0024】
「反応していない二価および/または三価金属源」の語句は、アニオン性粘土と反応していない二価および/または三価金属源のことを言う。したがって、アニオン性粘土調製工程の間にアルミニウム三水和物から形成されたベーマイトは、この定義に従い、反応していないアルミニウム源とみなされる。
【0025】
アニオン性粘土の調製後、アニオン性粘土はイオン交換に付されていてもよい。イオン交換後、層間の電荷補償性アニオンは、他のアニオンで置き換えられる。好適なアニオンの例は、炭酸イオン、重炭酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、バナジン酸イオン、タングステン酸イオン、ホウ酸イオン、リン酸イオン、支柱となるアニオン、たとえばHVO、V4−、HV124−、V3−、V10286−、Mo246−、PW12403−、B(OH)、B(OH)2−、[B(OH)、[B(OH)2−、HBO2−、HGaO2−、CrO2−、およびケギン型(Keggin)イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、並びにこれらの混合物である。
【0026】
所望であれば、問題のアニオンがイオン交換されるアニオンであることを確実にするように、交換溶液のpHが調整される。
【0027】
金属添加物
【0028】
本発明に従う方法に使用されるべき好適な金属添加物は、アルカリ土類金属(たとえば、Mg、CaおよびBa)、第IIIA族遷移金属、第IVA族遷移金属(たとえば、Ti、Zr)、第VA族遷移金属(たとえば、V、Nb)、第VIA族遷移金属(たとえば、Cr、Mo、W)、第VIIA族遷移金属(たとえば、Mn)、第VIIIA族遷移金属(たとえば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt)、第IB族遷移金属(たとえば、Cu)、第IIB族遷移金属(たとえば、Zn)、第IIIB族元素(たとえば、Al、Ga)、第IVB族元素(たとえば、Si、Sn)、ランタニド(たとえば、La、Ce)、並びにこれらの混合物の群から選ばれた金属を含有する金属である。但し、この金属は、段階a)のアニオン性粘土を構成する二価および三価金属と異なっていることを条件とする。
【0029】
好まれる金属は、Ce、V、Zn、La、W、Mo、Fe、およびCuである。
【0030】
金属添加物は、好ましくは所望の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、またはヒドロキシ炭酸塩である。
【0031】
焼成
【0032】
本発明の方法の最初の段階は、既に形成されたアニオン性粘土と金属添加物との物理的混合物を焼成することを含む。したがって、この発明の方法は、既に存在するアニオン性粘土から出発し、これが次に添加物と混合される。完全に形成されたアニオン性粘土に添加物を加えることを、物理的混合物の調製は必要とすることが強調されるべきである。まだアニオン性粘土の形成の過程にある、二価および三価化合物の混合物であって、その中でアニオン性粘土の最終量の100%未満しか形成されていないところの混合物に、添加物を加えることを本発明の方法は含まない。
【0033】
この物理的混合物は、各種の様式で調製されることができる。乾燥粉体として、または(水性)懸濁されて、該懸濁によってスラリー、ゾル、若しくはゲルを形成して、アニオン性粘土と金属添加物とは混合されることができる。後者の場合には、金属添加物とアニオン性粘土とは、懸濁物に粉体、ゾル、またはゲルとして加えられ、そして続いて乾燥されて、該混合物は調製される。
【0034】
アニオン性粘土に金属添加物の溶液を含浸することによって、このような物理的混合物を調製することも可能である。しかし、物理的混合物の調製に、溶解されていない金属添加物を(したがって、乾燥粉体として、スラリー、ゾル、またはゲルとして)使用することが好まれる。
【0035】
物理的混合物中の金属添加物含有量は、酸化物として計算されて、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは5〜20重量%の範囲にある。物理的混合物中のアニオン性粘土含有量は、全ての百分率が乾燥固形分含有量基準で、好ましくは40〜99重量%、より好ましくは70〜99重量%、最も好ましくは80〜95重量%の範囲にある。
【0036】
好ましくは、物理的混合物は焼成前に粉砕される。アニオン性粘土および金属添加物は、乾燥粉体として、または懸濁されて粉砕されることができる。代わりに、または物理的混合物の粉砕に追加して、アニオン性粘土および金属添加物は、物理的混合物を形成する前に個別に粉砕される。粉砕に使用されることができる装置は、ボールミル、高せん断ミキサー、コロイドミキサー、混練機、超音波をスラリー中に導入することができる電気変換器、およびこれらの組み合わせを包含する。
【0037】
物理的混合物が水性懸濁されて調製されるならば、分散剤が懸濁物に加えられることができる。好適な分散剤は、アルミニウムクロロヒドロール(aluminium chlorohydrol)、アルミニウムゲル、リン酸塩(たとえば、リン酸アンモニウム、リン酸アルミニウム)、界面活性剤、糖、デンプン、ポリマー、ゲル化剤、膨潤性粘土等を包含する。酸または塩基が該懸濁物に加えられることもできる。
【0038】
焼成前に、物理的混合物は成形されて、成形体を形成することができる。好適な成形方法の例は、噴霧乾燥、ペレット化、押出、およびビーズ化である。
【0039】
200〜800℃、より好ましくは300〜700℃、最も好ましくは350〜600℃の範囲の温度で、物理的混合物は焼成される。0.25〜25時間、好ましくは1〜8時間、最も好ましくは2〜6時間、焼成は実施される。全ての工業型の焼成炉、たとえば固定床または回転焼成炉が使用されることができる。
【0040】
各種の雰囲気で、たとえば空気、酸素、不活性雰囲気(たとえば、N)、水蒸気、またはこれらの混合物中で、焼成は実施されることができる。
【0041】
このようにして得られた焼成された物質は、再水和性酸化物を含有していなければならない。形成された再水和性酸化物の量は、アニオン性粘土のタイプ、金属添加物、および焼成温度に依存する。全て酸化物として計算され、かつ酸化物として計算された組成物の全重量当たり、焼成された物質は好ましくは、再水和性酸化物を5〜100%、より好ましくは30〜100%、最も好ましくは50〜100%含有する。
【0042】
再水和性酸化物の量は、以下のように計算されることができる。アニオン性粘土の特性としての003面の粉末X線回折ラインの強度が、焼成前並びに焼成および再水和後に測定される。焼成前のラインの強度と比較した再水和後の(重量%で表された)強度は、段階a)後の焼成された物質中の再水和性酸化物の百分率として受けとられる。これから、全組成物中の再水和性酸化物の重量%が、計算されることができる。
【0043】
非再水和性酸化物の例は、スピネル相である。
【0044】
本発明の他の実施態様では、物理的混合物の調製および焼成は、1段階で実施される。その場合、金属添加物は、アニオン性粘土に、その焼成の間に加えられる。十分な混合能力を持ち、かつ混合機並びに焼成炉として有効に使用されることができる焼成炉を使用することが、この方法には要求される。
【0045】
最初にアニオン性粘土と金属添加物との物理的混合物を調製し、その後、焼成の間に、異なった金属添加物または同じ金属添加物の追加量を加えることによって、上記の方法を組み合わせることも可能である。
【0046】
再水和
【0047】
焼成された混合物を水またはアニオンの水性溶液と接触させることによって、焼成された物質の再水和は実施される。焼成された混合物を十分な液体噴霧がされたろ過床上を通過させることによって、または焼成された混合物を液体中に懸濁することによって、これは実施されることができる。再水和の間の液体の温度は好ましくは、25〜350℃、好ましくは25〜200℃、より好ましくは50〜150℃であり、好みの温度は、アニオン性粘土の性質並びに金属添加物のタイプおよび量に依存する。再水和は、約20分間〜20時間、好ましくは30分間〜8時間、より好ましくは1〜4時間行われる。
【0048】
再水和の間、高せん断ミキサー、コロイドミキサー、ボールミル、混練機、超音波をスラリー中に導入することができる電気変換器等を使用することによって、懸濁物は粉砕されることができる。
【0049】
バッチ式でまたは連続的に、任意的に、出願公開された米国特許出願第2003−0003035号に従う連続多段階操作で、再水和は行われることができる。たとえば、再水和懸濁物は、供給原料調製槽中で調製され、そこから懸濁物は、2以上の転化槽を通して連続的にポンプ輸送される。所望であれば、追加の添加物、酸、または塩基が、転化槽のいずれか内の懸濁物に加えられることができる。該槽のそれぞれが、それ自身の望ましい温度に調整されることができる。
【0050】
再水和液体中に好適に存在するアニオンの例は、無機アニオン、たとえばNO、NO、CO2−、HCO、SO2−、SONH2−、SCN、S2−、SeO、F、Cl、Br、I、ClO、ClO、BrO、およびIO、ケイ酸イオン、アルミン酸イオン、およびメタケイ酸イオン、有機アニオン、たとえば酢酸イオン、シュウ酸イオン、ギ酸イオン、長鎖カルボキシルイオン(たとえば、セバシン酸イオン、カプリン酸イオンおよびカプリル酸イオン(CPL))、アルキル硫酸イオン(たとえば、ドデシル硫酸イオン(DS)およびドデシルベンゼン硫酸イオン)、ステアリン酸イオン、安息香酸イオン、フタロシアニンテトラスルホン酸イオン、およびポリマー状アニオン、たとえばポリスチレンスルホン酸イオン、ポリイミドイオン、ビニル安息香酸イオン、およびビニルジアクリル酸イオン、並びにpH依存性のホウ素含有アニオン、ビスマス含有アニオン、タリウム含有アニオン、リン含有アニオン、ケイ素含有アニオン、クロム含有アニオン、バナジウム含有アニオン、タングステン含有アニオン、モリブデン含有アニオン、鉄含有アニオン、ニオビウム含有アニオン、タンタル含有アニオン、マンガン含有アニオン、アルミニウム含有アニオン、およびガリウム含有アニオンを含む。
【0051】
さらに、再水和の間に追加の金属を組み入れることが可能である。これらの追加の金属および段階a)の金属添加物中に存在する金属は、アルカリ土類金属(たとえば、Mg、CaおよびBa)、第IIIA族遷移金属、第IVA族遷移金属(たとえば、Ti、Zr)、第VA族遷移金属(たとえば、V、Nb)、第VIA族遷移金属(たとえば、Cr、Mo、W)、第VIIA族遷移金属(たとえば、Mn)、第VIIIA族遷移金属(たとえば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt)、第IB族遷移金属(たとえば、Cu)、第IIB族遷移金属(たとえば、Zn)、第IIIB族元素(たとえば、Al、Ga)、第IVB族元素(たとえば、Si、Sn)、ランタニド(たとえば、La、Ce)、並びにこれらの混合物の群から独立に選ばれる。しかし、追加の金属および金属添加物中に存在する金属は両方とも、段階a)のアニオン性粘土を構成する二価および三価金属と異なっている。
【0052】
アニオン性粘土のタイプ、金属添加物のタイプ、焼成温度および再水和条件に応じて、得られる金属含有組成物は、(i)アニオン性粘土の中に分布された、および/またはアニオン性粘土の層内に取り込まれた金属添加物に由来する金属を持つアニオン性粘土、または(ii)二価金属、三価金属、および金属添加物に由来する金属を含んでいる混合酸化物であることができる。
【0053】
アンモニウム遷移金属化合物、たとえばヘプタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、バナジン酸アンモニウム、ジクロム酸アンモニウム、チタン酸アンモニウム、および/またはジルコン酸アンモニウムの存在下に、焼成された物質を再水和することも可能である。これは、D.Levinら(Chem.Mater.誌、第8巻、1996年、836〜843ページ;ACS.Symp.Ser.誌、第622巻、1996年、237〜249ページ;Stud.Surf,Sci.Catal.誌、第118巻、1998年、359〜367ページ)に従うカチオン性層状物質の形成をもたらすことができる。
【0054】
本発明の方法に従って調製された金属含有組成物は、その後再び焼成されそして任意的に再水和されて、金属含有組成物を形成することができる。
【0055】
このようにして形成された物質は、各種の目的、たとえばFCCプロセス用の触媒または収着剤として使用されることができる。この焼成にその後の再水和が続いて行われるならば、金属含有組成物は、最初の再水和段階後に形成された組成物に類似して形成されるが、機械的強度は増加する。
【0056】
これらの第二の焼成および再水和段階は、最初の焼成および再水和段階と同じか、あるいは異なる条件下に実施されることができる。
【0057】
この追加の焼成段階および/またはこの再水和段階の間に、追加の金属が取り込まれることができる。これらの追加の金属、再水和段階b)(すなわち、最初の再水和段階)の間に任意的に取り込まれた追加の金属、および段階a)の金属添加物中に存在する金属は、アルカリ土類金属(たとえば、Mg、CaおよびBa)、第IIIA族遷移金属、第IVA族遷移金属(たとえば、Ti、Zr)、第VA族遷移金属(たとえば、V、Nb)、第VIA族遷移金属(たとえば、Cr、Mo、W)、第VIIA族遷移金属(たとえば、Mn)、第VIIIA族遷移金属(たとえば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt)、第IB族遷移金属(たとえば、Cu)、第IIB族遷移金属(たとえば、Zn)、第IIIB族元素(たとえば、Al、Ga)、第IVB族元素(たとえば、Si、Sn)、ランタニド(たとえば、La、Ce)、並びにこれらの混合物の群から独立に選ばれる。しかし、追加の金属および金属添加物中に存在する金属は、段階a)のアニオン性粘土を構成する二価および三価金属と異なっている。
【0058】
さらに、この追加の再水和段階の間に、アニオンが加えられることができる。好適なアニオンは、最初の再水和段階に関連して上述されたものである。最初および追加の再水和段階の間に加えられるアニオンは、同じまたは異なっていることができる。
【0059】
所望であれば、本発明の方法に従って調製された金属含有組成物は、慣用の触媒または収着剤の成分、たとえばシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ジルコニア、チタニア、ボリア、(変性された)粘土、たとえばカオリン、酸浸出性カオリン、脱アルミニウムカオリン、酸活性化モンモリロナイトまたはサポナイト、スメクタイト、およびベントナイト、(変性されたまたはドープされた)リン酸アルミニウム、ゼオライト(たとえば、ゼオライトX、Y、REY、USY、RE−USY、またはZSM−5、ゼオライトベータ、シリカライト)、リン酸塩(たとえば、メタまたはピロリン酸塩)、孔制御剤(たとえば、糖、界面活性剤、ポリマー)、収着剤、充填剤、並びにこれらの組み合わせと混合されることができる。
【0060】
これらの触媒または収着剤の成分を、焼成される前または再水和段階中の物理的混合物に加えることも可能である。
【0061】
金属含有組成物は、任意的に上記の慣用の触媒成分の1以上と混合され、成形されて、成形体を形成することができる。好適な成形方法は、噴霧乾燥、ペレット化、(任意的に、混練と組み合わされた)押出、ビーズ化、若しくは触媒および収着剤の分野で使用される任意の他の慣用の成形方法、またはこれらの組み合わせを包含する。
【0062】
金属含有組成物の使用方法
【0063】
本発明に従う方法によって調製された金属含有組成物は、イオウ酸化物収着剤物質としての使用に非常に適している。したがって、該物質は、この目的のためにFCC触媒またはFCC触媒添加物中に取り込まれることができる。さらに、該金属含有組成物は、他の源、たとえば発電所からのイオウ酸化物放出の吸着に使用されることができる。
【0064】
イオウ酸化物収着剤物質は、一般に良好な窒素酸化物収着剤物質であるので、たとえばFCC触媒、FCC触媒添加物等中の窒素酸化物収着剤物質として、金属含有組成物は同様に好適だろう。
【0065】
さらに、他の目的、たとえば製鋼工場、発電所、およびセメント工場からのHCN、アンモニア、Cl、およびHClのようなガスを除去することに、ガソリンおよびジーゼルのような燃料中のイオウおよび/または窒素含有量の低減のために、COをCOへ転化するための添加物として、並びにフィッシャー・トロプシュ合成、水素化処理(水素化脱硫、水素化脱窒素、脱金属)、水素化分解、水素化、脱水素化、アルキル化、異性化、フリーデル・クラフツプロセス、アンモニア合成等用の触媒組成物中にまたは触媒組成物として、金属含有組成物は使用されることができる。
【0066】
所望であれば、金属含有組成物は、有機薬品で処理され、それによって粘土(これは、一般に性質が親水性である。)の表面をより疎水性にすることができる。金属含有組成物が、有機媒体中により容易に分散することを、これは許す。
【0067】
ナノ複合物質(すなわち、約500nm未満の直径を持つ粒子)として施与されるときは、プラスチック、樹脂、ゴム、およびポリマーに、金属含有組成物は好適に使用されることができる。疎水性表面を持つナノ複合物質、たとえば有機薬品での処理によって得られたものは、この目的に特に適している。
【0068】
金属含有組成物は、公知の手順を使用して、柱状構造にされ、薄片化され、および/または剥離性にされることもできる。
【実施例1】
【0069】
市販のハイドロタルサイト(Reheis社から供給、Mg/Alモル比2.2)91.2gを蒸留水694g中に分散することによって、スラリーが調製された。
【0070】
硝酸ランタン16.0gを蒸留水41gに分散することによって、溶液が調製された。この溶液が、前もって調製されたスラリーに加えられた。得られたスラリーのpHが水酸化アンモニウムで9に調整され、それから直ちに対流式オーブン中110℃で乾燥された。乾燥された粉体は、500℃で4時間焼成された。
【0071】
得られた焼成粉体の小分け分20.0gが、1Mの炭酸ナトリウム溶液650g中で、85℃において一晩再水和された。このスラリーは、次にろ過され、蒸留水で洗われ、そして110℃で乾燥された。
【0072】
焼成後に存在する(本明細書に上記されたように測定された)再水和性酸化物の量は、90%であった。
【実施例2】
【0073】
市販のハイドロタルサイト(Reheis社から供給、Mg/Al比モル2.2)91.2gを蒸留水694g中に分散することによって、スラリーが調製された。このスラリーに、蒸留水21g中に溶解された硝酸ランタン7.97gの溶液およびBaO 3.08gが加えられた。得られたスラリーのpHが水酸化アンモニウムで9に調整され、そしてスラリーはそれから直ちに対流式オーブン中110℃で乾燥された。乾燥された粉体は、500℃で4時間焼成された。
【0074】
得られた焼成粉体の小分け分20.0gが、1Mの炭酸ナトリウム溶液650g中で、85℃において一晩再水和された。このスラリーは、次にろ過され、蒸留水で洗われ、そして110℃で乾燥された。
【0075】
焼成後に存在する再水和性酸化物の量は、95%であった。
【実施例3】
【0076】
(Reheis社から供給され、Mg/Alモル比2.2を持つ)市販のハイドロタルサイト91.2gを蒸留水694g中に分散することによって、スラリーが調製された。このスラリーに、シュウ酸鉄(II)13.52gが加えられた。得られたスラリーのpHが水酸化アンモニウムで9に調整され、それから直ちに対流式オーブン中110℃で乾燥された。乾燥された粉体は、500℃で4時間焼成された。
【0077】
得られた焼成粉体の小分け分20.0gが、1Mの炭酸ナトリウム溶液650g中で、85℃において一晩再水和された。このスラリーは、次にろ過され、蒸留水で洗われ、そして110℃で乾燥された。
【0078】
焼成後に存在する再水和性酸化物の量は、100%であった。
【実施例4】
【0079】
市販のハイドロタルサイト(Reheis社から供給、Mg/Alモル比2.2)91.2gを蒸留水694g中に分散することによって、スラリーが調製された。このスラリーに、炭酸セリウム12.99gが加えられた。得られたスラリーのpHが水酸化アンモニウムで9に調整され、それから直ちに対流式オーブン中110℃で乾燥された。乾燥された粉体は、500℃で4時間焼成された。
【0080】
得られた焼成粉体の小分け分20.0gが、1Mの炭酸ナトリウム溶液650g中で、85℃において一晩再水和された。このスラリーは、次にろ過され、蒸留水で洗われ、そして110℃で乾燥された。
【0081】
焼成後に存在する再水和性酸化物の量は、80%であった。
【実施例5】
【0082】
市販のハイドロタルサイト(Reheis社から供給、Mg/Alモル比2.2)91.2gを蒸留水694g中に分散することによって、スラリーが調製された。このスラリーに、炭酸マンガン9.72gが加えられた。得られたスラリーのpHが水酸化アンモニウムで9に調整され、そしてWaringブレンダー中で高せん断混合された。得られたスラリーは、直ちに対流式オーブン中110℃で乾燥された。乾燥された粉体は、350℃で2時間焼成された。
【0083】
得られた焼成粉体の小分け分20.0gが、1Mの炭酸ナトリウム溶液650g中で、85℃において一晩再水和された。このスラリーは、次にろ過され、蒸留水で洗われ、そして110℃で乾燥された。
【0084】
焼成後に存在する再水和性酸化物の量は、100%であった。
【実施例6】
【0085】
Ind.Eng.Chem.Res.誌、第27巻(1988年)、1356〜1360ページに記載された熱質量分析試験を使用して、実施例3および4の生成物が、FCCプロセスにおけるそれらの脱SO能力を試験された。標準の市販の脱SO添加物が、参照物質として使用された。
【0086】
既知重量のサンプルおよび同重量の標準市販添加物が、700℃で30分間窒素下に加熱された。次に、200ml/分の流量を持つ、SO 0.32%、O 2.0%、残部のNを含有するガスで、窒素が置き換えられた。30分間後、SO含有ガスは、窒素で置き換えられ、そして温度が650℃まで下げられた。15分間後、窒素は、純粋なHで置き換えられ、そしてこの条件は20分間維持された。このサイクルが3回繰り返された。サンプルのSOの捕集および水素処理の間のその放出は、サンプルの(%での)重量変化として測定された。
【0087】
SO捕集に対するSO放出の比は、有効性比として定義された。理想的有効性比は1であり、これは、捕集された全てのSOが再び放出されたことを意味し、より長い触媒寿命をもたらす。
【0088】
市販の脱SO添加物の有効性比に対する、調製されたサンプルの有効性比、すなわちSO改良度を、表1は表す。
【0089】
1のSO改良度は、調製されたサンプルが市販の添加物と同じ有効性比を持つことを意味する。1より高い改良度は、より高い有効性比が得られたことを表す。
【0090】
【表1】

【0091】
本発明に従う方法を用いて、SO排出低減用の、FCCプロセスにおける添加物としての使用に非常に適した組成物が、調製されることができることを、この表は示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. アニオン性粘土と金属添加物との物理的混合物を、200〜800℃の温度で焼成すること、および
b. 段階a)の焼成された生成物を再水和すること
の段階を含む、金属含有組成物の調製方法。
【請求項2】
物理的混合物が焼成前に粉砕される、請求項1に従う方法。
【請求項3】
物理的混合物が焼成の間に形成される、請求項1に従う方法。
【請求項4】
焼成温度が300〜700℃の範囲にある、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
焼成温度が400〜600℃の範囲にある、請求項4に従う方法。
【請求項6】
焼成された生成物が、アニオンの水性溶液中で再水和される、請求項1〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項7】
アニオン性粘土が、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Zn2+、Mn2+、Co2+、Mo2+、Ni2+、Fe2+、Sr2+、Cu2+、およびこれらの混合物からなる群から選ばれた二価金属カチオンを含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
アニオン性粘土が、Al3+、Ga3+、In3+、Bi3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Sc3+、La3+、Ce3+、およびこれらの混合物からなる群から選ばれた三価金属カチオンを含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に従う方法。
【請求項9】
金属添加物が、遷移金属、希土類金属、アルカリ土類金属、貴金属、リンおよびケイ素からなる群から選ばれた元素を含んでいる化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に従う方法。
【請求項10】
元素が、Ce、Zn、V、La、W、Mo、Fe、およびCuからなる群から選ばれる、請求項9に従う方法。
【請求項11】
物理的混合物が、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、マグネシア、チタニア、ボリア、リン酸塩、ゼオライト、および粘土からなる群から選ばれた1以上の追加の化合物を含んでいる、請求項1〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
生成物の焼成が引き続いて行われる、請求項1〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
生成物の再水和が引き続いて行われる、請求項12に従う方法。
【請求項14】
物理的混合物が、焼成前に成形されている、請求項1〜13のいずれか1項に従う方法。

【公表番号】特表2007−534593(P2007−534593A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509965(P2007−509965)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004556
【国際公開番号】WO2005/102514
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(505002495)アルベマーレ ネザーランズ ビー.ブイ. (19)
【Fターム(参考)】