説明

金属多孔体の異物検出装置および金属多孔体

【課題】金属多孔体に付着した異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出可能な金属多孔体の異物検出装置の提供を課題とする。
【解決手段】本発明に係る金属多孔体の異物検出装置は、ニッケルを主成分とするシート状金属多孔体に付着した異物の検出装置であって、該異物がNiと異なる光の波長成分を
反射するものであり、少なくとも前記金属多孔体の片面にカラー撮像手段を配置し、該カラー撮像手段により撮像した画像から、複数の色調成分の画像を抽出し、該複数の色調成分の画像間の輝度の差分量を元に前記異物を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ニッケル水素電池等の二次電池の正極材料として用いられるニッケルを主成分とする金属多孔体に付着した異物を検出するための装置、及び、その装置を用いて検査した金属多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
電池用電極に使用される金属多孔体は、シート状の3次元網目状樹脂発泡体に導電処理を施し、これにニッケルを電気めっきした後、焙焼・還元することで得られるフープ材が主に使用されている。これらの金属多孔体は、スポンジ状の形態を持つため、単位体積あたりの表面積が大きなことが、電池として使用する際、良好な特性を生み出す。
【0003】
この金属多孔体に対し、近年、より高い性能が要求されてきている。そのひとつに金属多孔体表面に金属不純物をはじめとする異物が付着することを抑制することがある。金属多孔体の表面に金属不純物が付着していると、二次電池の場合には出力低下に繋がる恐れが有る。この金属不純物の中でも、電池の中で溶解、再析出しやすい銅系の異物がもっとも電池特性に影響を及ぼしやすい。
【0004】
ところが、金属多孔体は表面が凹凸構造をなしており、しかもそれがシート状の製品の厚さ方向まで網目状に形成されている。従って、生産の工程などでこの表面に異物が付着しても、人間の目では容易に判別できないため、精度良く異物を検出・除去するには、製品を最終的に使用する寸法の小片に切断し、顕微鏡や拡大鏡で1枚1枚観察して、検査することが行われていた。
しかし、この方法では連続したフープ上の製品を早い段階で切断する必要があり、生産性が低下するだけではなく、人による目視確認に頼るため、検出ミスなどの問題が発生することがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、本発明は金属多孔体に付着した異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出し、その異物の対処が容易にできる金属多孔体の異物検出装置を提供すると共に、その装置を使用して検査することにより異物付着の無い高品位の金属多孔体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、異物及び金属多孔体が反射する光の波長成分の違いを利用することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る金属多孔体の異物検出装置及び金属多孔体は、以下の特徴を有する。
【0007】
(1)本発明に係る金属多孔体の異物検出装置は、ニッケルを主成分とするシート状金属多孔体に付着した異物の検出装置であって、該異物がニッケルと異なる光の波長成分を反射するものであり、少なくとも前記金属多孔体の片面にカラー撮像手段を配置し、該カラー撮像手段により撮像した画像から、複数の色調成分の画像を抽出し、該複数の色調成分の画像間の差分量を元に前記異物を検出することを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記色調成分が、赤、青、緑の3成分の内2つ以上であることを特徴とする。
(3)上記(1)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記異物が銅を含む異物
であって、前記色調成分が、赤及び青の2成分であるか、または赤及び緑の2成分であることを特徴とする。
(4)上記(1)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記色調成分が、600nm以上の波長を持つ成分と560nm以下の波長を持つ2つの成分であることを特徴とする。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記金属多孔体に対し、カラー撮像手段と同一面側に発光手段を配置したことを特徴とする。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置において、ロール状に捲回した前記シート状金属多孔体の供給部と、該シート状金属多孔体の巻取り部とを有し、該供給部及び巻取り部の間であって、該シート状金属多孔体の片面又は両面側に、発光手段とカラー撮像手段を1組もしくは2組有することを特徴とする。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記カラー撮像手段と前記シート状金属多孔体の距離を、該カラー撮像手段の焦点距離と異なるように設定したことを特徴とする。
【0008】
(8)上記(6)又は(7)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記カラー撮像手段設置部とシート状金属多孔体の巻取り部との間に、異物検出箇所を明示するマーキング手段が形成されていることを特徴とする。
(9)上記(8)のに記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記マーキング手段は、異物が存在する箇所を前記シート状金属多孔体の走行方向に伸びる1本または複数本の線で記載することを特徴とする。
(10)上記(8)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、
前記マーキング手段が、シート状金属多孔体に開口箇所を設ける手段であることを特徴とする。
(11)上記(8)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記マーキング手段が、シート状金属多孔体に光遮蔽部材を貼り付ける手段であることを特徴とする。
(12)上記(11)に記載の金属多孔体の異物検出装置において、前記光遮蔽部材が前記シート状金属多孔体と同一組成からなる金属多孔体であることを特徴とする。
【0009】
(13)本発明に係る2次電池用金属多孔体は、上記(1)〜(12)のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置による異物検出工程を経たことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金属多孔体の異物検出装置により、ニッケルを主成分とする金属多孔体に付着した異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出することが可能となる。特に、銅を含む金属異物の検出に有効である。このため、該異物の対処が容易になり、本発明に係る異物検出装置を使用して検査・処理を経た異物付着の無い高品位の金属多孔体は、例えば、2次電池等に好ましく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る金属多孔体の異物検出装置は、ニッケルを主成分とするシート状金属多孔体に付着した異物の検出装置であって、該異物がニッケルと異なる光の波長成分を反射するものであり、少なくとも前記金属多孔体の片面にカラー撮像手段を配置し、該カラー撮像手段により撮像した画像から、複数の色調成分の画像を抽出し、該複数の色調成分の画像間の差分量を元に前記異物を検出することを特徴とする。
金属多孔体上に付着した異物は、金属多孔体が凹凸構造であるため、そのまだら模様の中に隠れてしまい微小な異物の検出が困難である。しかし、ニッケルを主成分とする金属多孔体の場合、金属多孔体は白色〜黒色の無色であるのに対し、異物が有色であれば、カラーカメラのような撮像素子で撮像すると、異物部の色のスペクトル成分が異なるものと
なる。このことに着目して、複数の色調画像の差分から、異物部分の画像を抽出することができる。このため、金属多孔体の下地金属であるニッケルと異なる光の波長成分を反射する異物であれば有効に検出することが可能である。異物としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属不純物をはじめとする金属異物や、特に、電池の中で溶解、再析出して電池特性に影響を及ぼしやすい銅を含む銅系異物を検出・除去することが好ましい。
光学式であれば、他の検出原理に比べ検出素子を小さくできるので微小な異物の検出が可能となる。カラー撮像手段としては、カラーカメラに限られず、例えば、カラーラインセンサ等であってもよい。
【0012】
前記色調成分は、赤、青、緑の3成分の内2つ以上であることを特徴とする。撮像した画像は、赤、青、緑の三原色を用いて画像を抽出することにより、標準的な装置を使用することができるので、装置が簡便化できる。赤、青、緑の全てに基づいて画像を抽出しても良いし、それらのうちの2色のみを用いてその差分を計算することができる。
【0013】
撮像した画像は、赤、青、緑の三原色のうちの2色のみを用いてその差分を計算することができる。この場合、特に前記異物が銅である場合には、赤成分と青成分の間に最も大きな差が生じるので、緑成分を使用するより、感度が増す。
また、2成分のみを使用して処理を行なう場合には、3成分使用時よりも高速な処理が可能となる。このため、前記色調成分は、赤及び青の2成分であるか、または赤及び緑の2成分であることが好ましい。特に、銅を含む異物を検出する場合には、赤及び青の2成分の輝度の差分を比較することが好ましい。
【0014】
以下、異物が銅を含む銅系異物である場合を例にして説明をする。
前述の通り、下地となるニッケルの反射光のスペクトルは、波長によらずほぼフラットであるのに対し、検出すべき銅系異物の反射光スペクトルは、560nmから600nmの間で大きく変化する(図7参照)。従って、この前後の波長成分を比較することにより、感度良い検出が可能となる。すなわち、前記色調成分は、600nm以上の波長を持つ成分と560nm以下の波長を持つ2つの成分であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る金属多孔体の異物検出装置は、前記金属多孔体に対し、カラー撮像手段と同一面側に発光手段を配置したことを特徴とする。金属多孔体に対し、カラー撮像手段と同一面側に発光手段を配置する場合と反対面側に配置することが出来るが、反対面側に配置した場合、金属多孔体の透過光を検出し、金属多孔体や異物の陰を撮影することになり、表面の色調の違いが検出困難となる。従って、同一面に配置するほうが好ましい。また、反対面に配置した場合、発光手段からの光量が減衰し、発光手段の大型化の問題が生じる。
【0016】
発光手段は、連続光を発生するものでも良いが、十分な光量を得るためには、高出力が要求され、その場合発熱量が大きくなり、周辺温度が上昇する問題が発生するため、ストロボタイプの照明器を使用することが望ましい。また、連続的に移動する材料上の異物の画像を取り込むため、カメラの露光時間が長くなると異物の画像が移動方向に伸び、検出すべき異物寸法の精度が低下するため、この点からも発光時間の短いストロボを使用することが望ましい。
【0017】
また、本発明に係る異物検出装置は、ロール状に捲回した前記シート状金属多孔体の供給部と、該シート状金属多孔体の巻取り部とを有し、該供給部及び巻取り部の間であって、かつ、該シート状金属多孔体の片面又は両面側に、発光手段とカラー撮像手段を1組もしくは2組有することを特徴とする。
シート状の金属多孔体上に付着した異物を検出する場合、ロール状に捲回した金属多孔
体から連続的に供給し、これを巻取り、この間に発光手段とカラー撮像手段とを配置することにより、連続的な検査が可能となり、効率のよい検査が可能となる。2組有する場合には、金属多孔体の表裏の両面の異物検出が可能となる。
【0018】
前記カラー撮像手段と前記シート状金属多孔体の距離は、該カラー撮像手段の焦点距離と異なるように設定し、取り込んだ画像のピントがずれている状態となるようにしたことを特徴とする。ピントを合わせると金属多孔体の表面の凹凸による影響で金属多孔体に赤青緑の斑点が観察され、これを異物として誤検出してしまうため、ピントをずらすことが好ましい。シート状金属多孔体が走行中に振動することにより焦点距離が一致することを妨げるために、金属多孔体の裏側にストッパー等を設けてもよい。
【0019】
また、本発明に係る異物検出装置は、前記カラー撮像手段設置部とシート状金属多孔体の巻取り部との間に、異物検出箇所を明示するマーキング手段が形成されていることを特徴とする。カラー撮像手段の情報に基づき、異物を検出したとき、その異物の存在箇所をマーキングすることにより、異物の位置の特定が容易になり、異物除去等の対処が容易になる。
【0020】
マーキング手段では、異物が存在する箇所を前記シート状金属多孔体の走行方向に伸びる1本又は複数本の線を金属多孔体上に印字することにより、異物の位置情報を明示することを特徴とする。マジック等のマーカーを使用してマーキングする際、1本または複数本の線でその異物の存在する箇所を示すことにより、異物の位置が明確になるだけでなく、線を引く作業はマーカーを上下するだけで良い為設備を簡素化することが可能となる。
【0021】
複数本の線を引く場合には、2本の線で挟むように印字する(図4参照)と後工程で異物を特定しやすくなるが、金属多孔体の端部においては、2本の線を印字できない場合もあるので、その際は、内側に1本だけの線を引けばよい(図5参照)。1本の線のみでマーキングする場合には、異物の位置が特定しにくいが、線を1本引くだけで良いため、マーキング部の構造が簡素化できるというメリットがある。
【0022】
また、前記マーキング手段は、シート状金属多孔体に開口箇所を設ける手段であってもよい。異物を検出し、その周辺に開口箇所を設ける加工をワークに施す場合、この穴の有無の情報を元に、その後の工程で異物付着個所の自動除去等の加工を容易に行うことができる。
【0023】
更に、前記マーキング手段が、シート状金属多孔体に光遮蔽部材を貼り付ける手段であってもよい。異物を検出した際、その周辺に光遮蔽部材を貼り付けても、この部材の有無の情報を元に、その後の工程で異物付着個所の自動除去等の加工を容易に行うことができる
【0024】
前記光遮蔽部材は、前記シート状金属多孔体と同一組成からなる金属多孔体であることを特徴とする。光遮蔽部材の材質は特に限定されるものではないが、光遮蔽部材がワークと同一の組成からなる材料であれば、仮に、後工程で除去できず製品中に混入しても、このワークが使用される製品の特性に悪影響を与えることが無い。更に、金属多孔体であれば、ワークと金属多孔体同士の界面接触となり、上面から軽く圧縮するだけで、両者が自己接着し、特殊な接着剤等を使用しなくても貼り付けが可能であるため、好ましい。
【0025】
マーキング手段が線の印字、開口部の形成又は光遮蔽部材の貼り付けのいずれの方法であっても、これらの情報をもとに後工程で異物の除去が可能となる。この際、異物付着箇所がマーキングされていても、金属多孔体の表面に付着した小さな異物を金属多孔体が流れている状態で目視確認することは容易ではないが、シート状の金属多孔体を平面状に走
行させ、下部から照明を当てると、マーキング箇所(異物)を容易に見つけることができる。
【0026】
本発明に係る2次電池用金属多孔体は、前記金属多孔体の異物検出装置による異物検出工程を経たことを特徴とする。本発明に係る異物検出装置を使用して付着異物を検出し、該異物を除去した金属多孔体は、例えば、異物が付着していると特性が劣化する2次電池用の材料として使用すると効果的である。
【0027】
以上説明したように、本発明はニッケルを主成分とする金属多孔体に付着した銅系異物を連続的に効率よく、容易に、かつ、確実に検出し、その異物の対処が容易にできると共に、この装置を使用して検査することにより異物付着の無い高品位の金属多孔体を得ることができる。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の第1の実施例を示す概略構成図である。
ニッケル成分からなる金属多孔体は、図中左側の供給部に設置されたステンレス金属製のリールに捲回されており、図においては反時計周りに回転しながら、シート状の金属多孔体を送り出している。この金属多孔体は、その後、搬送用のローラーや走行する金属多孔体を押さえるローラ(ワーク押さえローラー)を経由し、平面部を通過する。この平面部において、金属多孔体の上側には発光手段としてキセノン・ストロボ照明器(15W)を2台設置し、金属多孔体に対し同一面となる上部にカラーカメラを設置した。なお、発光手段は、上述した周辺温度上昇抑制及び異物寸法の精度低下抑制の観点から、発光時間の短いストロボを使用した。
【0029】
カメラとシート状の金属多孔体との間は、本実施例では405mmに設定した。本実施例に使用したカメラの焦点距離は415mmであったが、このカメラの焦点距離と実際の対象物との距離を一致させると(即ちピントを合わせると)金属多孔体の表面の凹凸による影響で赤青緑の斑点が観察され、これを異物として誤検出してしまった。そこで、カメラのピントを10mmずらすことにより、画像がぼけ、これにより誤検出がなくなった。
また、走行する金属多孔体が走行中の振動により焦点距離が一致する(ピントが合う)状態になることを避けるために、走行する金属多孔体の裏側には、図のように「ワーク受け」を設けてストッパーとして使用した。
【0030】
カラーカメラでは、発光手段により照明された光の金属多孔体からの反射光を検出し、赤、青、緑の成分の画像を抽出した。この3色の画像を比較すると、ベースとなるニッケル金属多孔体部では、3色の輝度の差が小さいが、銅を含む異物の付着部(銅系異物付着部)では、赤色の輝度と緑や青の輝度が大きく異なる。従って、これらの輝度の差を計算し、この輝度の差が一定以上となる箇所を銅系異物付着部として特定した。
尚、ここでは3色の画像の相互比較を行なって、最大の差が発生した値を用いて計算を行なったが、他の方法として、赤成分と青成分の2色の差のみを利用して計算して同様の検出が可能であった。
【0031】
下地となるニッケルの反射光のスペクトルと検出すべき銅異物のスペクトルを比較した結果を図7に示す。このように、560nmから600nmの間で大きく反射率が変化している。この反射率の差が、取り込んだ画像の輝度の差となる。この560nmから600nmの間の波長の両側の色を利用すると精度良く銅系異物の検出が出来きる。特に、赤、緑、青の3色間では、赤と青の間で最も反射率に差が発生するため、この2色間で比較した。
【0032】
上記差分を計算した画像において、ある一定以上(設定した閾値以上)の値を持つ部分
を異物と認識した。この閾値は取り込んだ画像の平均輝度とその輝度のばらつきから良好範囲を設定し、その良好範囲をプラス側、マイナス側のいずれかに超過する場合に異物存在箇所として抽出するような計算を行なった。
この計算において、ばらつきの範囲を±4.5σ(σ:標準偏差)と設定した時に最も精度良く、通常の良好部と異物部を分離することができたが、±3σから±6σの範囲であれば、画像処理として実現可能であった。即ち、±3σ以下の領域に閾値を設定すると異物が存在しない箇所でも異物があると誤検出する頻度が高くなり、反対に±6σ以上に設定すると実際に異物が存在していても見逃すことが多くなった。
【0033】
表1に本装置で検出できた銅系異物(銅を含む異物)の種類と大きさをまとめた。表1に記載したように検出することを目的とする銅系の異物であれば、材質は純銅でもリン青銅でも黄銅でも検出でき、φ0.15mm以上の異物を検出することができた。一方、本装置ではφ0.1mm以下の銅異物や検出する必要がないニッケルの異物は検出しなかった。
【0034】
【表1】

【0035】
この様に異物が検出された場合には、発光手段とカラーカメラが設置された後段に配置された市販のマジックからなるマーキングペンで、その異物の周辺に異物の存在を示す印字を行った。印字の方法は、図4に示すように2本の線で挟むように印字したが、金属多孔体の端部においては、2本の線を印字できない場合もあるので、その際は、内側に1本だけの線を印字した。
なお、上述のようにこの印字手段は図5に示すように、1本だけの印字をすることにより、異物の位置を示すこともできる。印字位置は通常は異物の上部・下部のどちらでも構わないが、シート上金属多孔体の端部においては、印字可能な位置に設定する必要がある(図5の端部異物の場合を参照)。このように1本だけで印字をする場合、異物の位置が特定しにくいが、線を1本引くだけで良いため、マーキング部の構造が簡素化できるというメリットがある。
【0036】
この様に、マーキングされた金属多孔体は、その後段の作業者により異物が除去される。この際、マーキングされていても、金属多孔体の表面に付着した小さな異物を金属多孔体が流れている状態で目視確認することは容易ではないが、シート状の金属多孔体を平面状に走行させ、下部から照明を当てると、マーキング箇所(異物)を容易に見つけることができることも見出した。このため、本実施例では、金属多孔体の下部に平面状の照明装
置を設置した。異物は除去するだけではなく、異物が付着したワーク周辺を切断除去することも可能であり、本実施例では、作業者は手動で切断作業を行った。
【0037】
また、切断除去した後、その後の金属多孔体は除去部を除いて再度接続し、継続して巻取り部に巻き取っても良いし、接続作業を行うことなく、切断毎に新たな巻取り用のリールに巻きつけることもできる。
本実施例では、切断除去した場合には、切断部の前後を重ね合わせ、その箇所を圧着用のローラーで圧縮することにより、接続した。一般に、金属多孔体はマジックテープ(登録商標)のような自己接続性が有り、重ね合わせ部を圧縮するだけで接着剤を用いることなく接続が可能となる。
【実施例2】
【0038】
図2は、本発明の第2の実施例を示す概略構成図である。
本発明の基本的な構成は、第1の実施例と同じである。以下に、主に異なる点とその作用または補足説明を記す。
1)供給部のリール回転方向と繰り出し位置を変更した。
この様に、供給部及び巻取り部のリール繰り出し位置や回転方向は、なんら本発明に制限を加えるものではない。
2)カラー撮像手段にカラーラインセンサを採用した。
カラーカメラのような2次元撮像素子を使用せず、1次元のカラーラインセンサを使用しても、ワークが連続的に走行しているので、異物の大きさを計算上認知することができる。
【0039】
3)カラーラインセンサと照明が2セット設置し、シート状金属多孔体の上下(表裏)から異物を検知した。
ワークの上面(表面)、下面(裏面)の両面に付着した異物が検出可能となる。
4)マーキング手段に穴あけパンチを採用した。
穴あけパンチでマーキングした場合、異物を除去しなくても、後工程でこのパンチ穴の情報を元に自動的に切断除去するなどの加工が可能となる。従って、ここでは第1の実施例で示した目視検査作業者は、異物を除去しなくても良いので、補助的な役割をするだけで良い。
尚、マーキング用の穴は、図6に示すように異物に対し、走行方向で横になる位置に直径20mmの穴を空けた。但し、異物と穴が重なることを避けるために、異物が図中中心より下にあるときは上に空け、上側にあるときは下側に空けると良い。
【実施例3】
【0040】
図3は、本発明の第3の実施例を示す概略構成図である。
本発明の基本的な構成は、第2の実施例と同じである。以下に、主に異なる点のみを記す。
1)マーキングは遮光片を貼り付けて行った。
穴あけパンチでマーキングした場合と同様に、異物を除去しなくても、後工程でこの遮光片の情報を元に自動的に切断除去するなどの加工が可能となる。
ここでは、遮光片として、検査対象の金属多孔体と同一素材で作られた直径30mmの円形のシートを貼り付けるようにした。この様に同一の素材を使用すると、仮にこの遮光片が製品となる金属多孔体に貼り付けられたまま流出しても、後工程で大きな問題となることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の異物検出装置の概略構成を示す概略構成図。
【図2】本発明の他の異物検出装置の概略構成を示す概略構成図。
【図3】本発明の更に他の異物検出装置の概略構成を示す概略構成図。
【図4】本発明の異物検出装置において、マジックによるマーキング手段で、2本線で挟んで異物の位置を明示する場合の説明図。
【図5】本発明の異物検出装置において、マジックによるマーキング手段で、1本線で異物の位置を明示する場合の説明図。
【図6】本発明の異物検出装置において、開口によるマーキングを行う場合の説明図。
【図7】銅異物とニッケル下地の分光反射率の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルを主成分とするシート状金属多孔体に付着した異物の検出装置であって、該異物がニッケルと異なる光の波長成分を反射するものであり、少なくとも前記金属多孔体の片面にカラー撮像手段を配置し、該カラー撮像手段により撮像した画像から、複数の色調成分の画像を抽出し、該複数の色調成分の画像間の輝度の差分量を元に前記異物を検出することを特徴とする金属多孔体の異物検出装置。
【請求項2】
前記色調成分が、赤、青、緑の3成分の内2つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項3】
前記異物が銅を含む異物であって、前記色調成分が、赤及び青の2成分であるか、または赤及び緑の2成分であることを特徴とする請求項1に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項4】
前記色調成分が、600nm以上の波長を持つ成分と560nm以下の波長を持つ2つの成分であることを特徴とする請求項1に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項5】
前記金属多孔体に対し、カラー撮像手段と同一面側に発光手段を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項6】
ロール状に捲回した前記シート状金属多孔体の供給部と、該シート状金属多孔体の巻取り部とを有し、該供給部及び巻取り部の間であって、該シート状金属多孔体の片面又は両面側に、発光手段とカラー撮像手段を1組もしくは2組有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項7】
前記カラー撮像手段と前記シート状金属多孔体の距離を、該カラー撮像手段の焦点距離と異なるように設定したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項8】
前記カラー撮像手段の設置部とシート状金属多孔体の巻取り部との間に、異物検出箇所を明示するマーキング手段が形成されていることを特徴とする請求項6又は7のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項9】
前記マーキング手段は、異物が存在する箇所を前記シート状金属多孔体の走行方向に伸びる1本または複数本の線で記載することを特徴とした請求項8に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項10】
前記マーキング手段が、シート状金属多孔体に開口箇所を設ける手段であることを特徴とする請求項8に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項11】
前記マーキング手段が、シート状金属多孔体に光遮蔽部材を貼り付ける手段であることを特徴とする請求項8に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項12】
前記光遮蔽部材が前記シート状金属多孔体と同一組成からなる金属多孔体であることを特徴とする請求項11に記載の金属多孔体の異物検出装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一に記載の金属多孔体の異物検出装置による異物検出工程を経たことを特徴とする2次電池用金属多孔体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−176648(P2009−176648A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16021(P2008−16021)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(591174368)富山住友電工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】