説明

金属板の成形方法

【課題】 ピーンフォーミングにおいて凹んだ部分がさらに落ち込むことなく、また盛り上がりすぎることがない金属板の成形方法を提供する。
【解決手段】 金属板71が凹むことにより形成された要板金修理部71kを、所定のエネルギーを有する投射体で凹んだ側から衝撃し、金属板71が凹む前の状態に近づくように板金修理を行うピーンフォーミング工程を有する金属板71の成形方法であって、要板金修理部71kが、金属板71の主面上に平面視で線状をなす溝形状で形成されており、ピーンフォーミング工程で、金属板71の主面上に要板金修理部を覆うように配置された際に該主面で要板金修理部の線方向に直交する方向で、該要板金修理部71kから遠ざかるにつれて幅が狭くなる形状をなし、該主面を露出させる窓部が該線方向に間欠的に備えられた保護用マスク72を用いて要板金修理部の板金修理を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、衝突事故などで凹んだ自動車のボディ(金属板)を板金修理する方法としては、ハンマーで叩いて矯正する方法や、凹んだ部分を治具で強制的に引き戻す方法などがある。
【0003】
ハンマーで叩いて矯正するにはボディの内側からの作業となるため、修理箇所周辺の内装品を取り外す必要があり、手間も時間もかかる。また、治具で引き戻す方法にしても、治具を凹んだ部分に取り付けるために溶接をする必要があるため、同様に内装を取り外す必要がある。
【0004】
そこで、下記特許文献1に示すごとく、ショット(投射体)の投射エネルギーを利用した加工法としてスケールを除去したり疲労強度の増大を図ったりする際に用いられるショットピーニングを金属板の成形に利用した技術、すなわち、ショットを投射して金属板を衝撃したとき、衝撃した面側に凸状となるように金属板が変形する現象を利用した成形(ピーンフォーミング)の技術が本発明者らによって提案された。事実、この技術を採用することにより、表側からショットを投射して金属板の成形を行うようにしているため、内装品を取り外す必要がなく比較的簡便に修理できることが分かっている。
【特許文献1】特開2004−130368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、最近になって、金属板の凹みに対してピーンフォーミングを行いその凹んだ部分を盛り上げて金属板の主表面を平たくしようとすると逆に盛り上がり過ぎてしまうケースが出てきた。また、ショットの投射エネルギーを制御しても、凹んだ部分が盛り上がらずその凹みがさらに落ち込んでしまうケースが出てきた。この原因を本発明者らが詳細に調べたところ、次のような知見を得た。すなわち、凹み部分にショットを投射する際に、ピーンフォーミングにおいて投射面は本来球面に盛り上がるものであるので、凹み部分が盛り上がってくる際にその領域で盛り上がり具合にズレが生じ、凹み部分全域が盛り上がったときには過度に盛り上がってしまう部分が発生してしまうことになる。また、通常凹み部分は底部にむかって傾斜しているため、ショットがまっすぐ金属板に投射されるとその傾斜面での投射エネルギー吸収が減り、十分な衝撃を得ることができず、変形が途中で止まることもある。これにより、凹んだ部分を平たくするには、ショットの当てる位置を調整する必要があり、作業者に熟練の技を必要としていた。
【0006】
これまでは、比較的大きな凹みに対してピーンフォーミングが行われていたが、その凹みが小さくなるにしたがって、また線状に凹んでいる場合には、その凹み部分の底に直接投射を行うと盛り上がることなく、そのまま落ち込む方向に変形が寄与してしまい、これに対しても策を講じることが急務である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ピーンフォーミングにおいて凹んだ部分がさらに落ち込むことなく、また盛り上がりすぎることがない金属板の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の金属板の成形方法は、
金属板が凹むことにより形成された要板金修理部に、所定のエネルギーを有する多数の投射体を凹んだ側から衝突させて衝撃を付与し、金属板が凹む前の状態に近づくようにピーンフォーミングによって板金修理を行う金属板の成形方法であって、
要板金修理部の該投射体を直接衝突させるべき部位を露出させるために所定のパターンで開口する窓部を備え、窓部以外の部分は要板金修理部に対し該投射体が直接衝突しないように被覆して該投射体の衝突エネルギーを緩和するマスキング部材を用い、そのマスキング部材を金属板の凹んだ側の表面である主表面上に要板金修理部を覆うように一時的に固定して当該要板金修理部をマスキングし、そのマスキング部材の窓部を通じて要板金修理部の該投射体を直接衝突させるべき部位に投射体を衝突させ、その窓部以外の部分では投射体をマスキング部材の窓部以外の部分に投射体を衝突させて要板金修理部へ直接衝突させないようにして要板金修理部の板金修理を行うことを特徴とする。
【0009】
通常、ピーンフォーミングを行うと金属板の被投射面(直接衝突させた部位)はその周囲の非投射面の剛体拘束を受け、被投射面は曲げ変形成分によって盛り上がりが生じる(本来球面に盛り上がる)。上記本発明のごとく、投射体を直接衝突させるべき部位に対応して形成された窓部を備えるマスキング部材で要板金修理部をマスキングすることで、要板金修理部の盛り上がりを調整することができる。ひいては、盛り上がりを調整することができるので、盛り上がりすぎるといったこともなくなり、熟練の技を必要とせず窓部によって露出された部分に投射体を投射するだけという簡単作業でより平坦に近づけることができる。そして、例えば投射体を投射する投射ヘッドを2次元的または3次元的にコントローラで制御して衝突させたい部位だけに投射体をあてることもできるが、そのような高価な設備を必要とせず、マスキング部材という極めて簡単な構造にもかかわらず同等の効果を得ることができ安価である。
【0010】
また、マスキング部材の具体的な態様として
金属板の主表面上に固定された時に要板金修理部の最深底部に対応する位置が窓部以外の部分とすることができる。これにより、要板金修理部の最深底部に対しては、投射体がマスキング部材に衝突し、該要板金修理部の最深底部には直接衝突しないようにすることができ、最深底部のさらなる沈み(凹み)を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の金属板の成形方法は、
要板金修理部が、長手状に延びる溝状に形成されたもののときに好適に使用することができ、その時のマスキング部材の具体的な態様として、その溝状の最深底部の長手方向の両側にその長手方向に沿って延びる長手状の窓部を備え、かつその長手状の窓部を起点として溝状の最深底部から遠ざかる方向に延びる周辺の窓部を長手方向において間欠的に備えることができる。また、窓部が、最深底部から遠ざかるにつれて幅が狭くなる形状をなすことができる。これにより、上記窓部に対応する要板金修理部の位置(部位)に投射体が投射されるので、投射面が分散され、長手状に延びる溝状に形成された要板金修理部をより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。
【0012】
また本発明の金属板の成形方法は、
マスキング部材が、要板金修理部の最深底部を線状又は帯状に被う紐状部材を含み、投射体の投射時に、要板金修理部の最深底部に対しては、投射体が当該紐状部材に衝突し、該要板金修理部の最深底部には直接衝突しないようにすることができる。これにより、最深底部を被う紐状部材に投射体が衝突するので、投射体による衝突エネルギーが紐状部材に緩和され、最深底部への衝撃の付与を抑制または防止することができる。ひいては、最深底部に投射体が衝突しないので、凹みがさらに沈むことを防止し、要板金修理部を平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。
【0013】
また、本発明の金属板の成形方法は、
要板金修理部が、平面視で円形状を含む点状に凹んで形成されたもののときに好適に使用することができ、その時のマスキング部材の具体的な態様として、その点状の凹みの最深底部から放射線上に沿って延びる形でその最深底部における周方向に間欠的に開口された窓部を有することができる。また、窓部が、最深底部から遠ざかるにつれて幅が拡がったあと、狭くなる形状とすることができる。これにより、上記窓部に対応する要板金修理部の位置(部位)に投射体が投射されるので、投射面が分散され、平面視で円形状長手状に延びる溝状に形成された要板金修理部をより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。
【0014】
また、マスキング部材の具体的な態様として、
窓部が、最深底部から所定角度間隔で放射線上に沿って延びる形で幅が拡がったあと狭くなる形状をなす第1窓部と、その隣り合う2つの第1窓部の間で該第1窓部よりも小さく最深底部から放射線上に沿って延びる形で幅が拡がったあと狭くなる形状をなす第2窓部とを含むことができる。これにより、大きさの異なる窓部を組合せることで、より細かく投射面を設定することができ、ひいては、要板金修理部をより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の金属板の成形方法は、
金属板が凹むことにより形成された要板金修理部を、所定のエネルギーを有する投射体で凹んだ側から衝撃し、金属板が凹む前の状態に近づくように板金修理を行うピーンフォーミング工程を有する金属板の成形方法であって、
要板金修理部が、金属板の主表面上に平面視で線状をなす溝形状で形成されており、
ピーンフォーミング工程で、金属板の主表面上に要板金修理部を覆うように配置された際に該主表面で要板金修理部の線方向に直交する方向で、該要板金修理部から遠ざかるにつれて幅が狭くなる形状をなし、該主表面を露出させる窓部が該線方向に間欠的に備えられたマスキング部材を用いて要板金修理部をマスキングし、そのマスキング部材の窓部に対応する要板金修理部の特定の領域に投射体を衝撃させて板金修理を行うことを特徴とする。
【0016】
通常、ピーンフォーミングを行うと金属板の被投射面はその周囲の非投射面の剛体拘束を受け、被投射面は曲げ変形成分によって盛り上がりが生じる(本来球面に盛り上がる)。本発明のごとく、金属板が凹むことにより形成された要板金修理部が平面視で線状をなす溝形状の場合に、マスキング部材を用いて、該主表面で要板金修理部の線方向に直交する方向で該要板金修理部から遠ざかるにつれて幅が狭くなる領域に部分的に投射することで、被投射面が要板金修理部の底部に近づくにつれて広くなり、すなわち凹むにつれて被投射面が広くなり、盛り上がりのズレを調整することができる。また、投射する領域(被投射面)を線方向に対して間欠的に設けることで、換言すれば、線方向に対して投射体を投射しない非投射面を被投射面で挟むことで、非投射面が被投射面の盛り上がりを拘束し過剰な盛り上がりを抑えることができる。ひいては、盛り上がりのズレが解消されるので、盛り上がりすぎるといったこともなくなり、熟練の技を必要とせず窓部によって露出された部分に投射体を投射するだけという簡単作業でより平坦に近づけることができる。
【0017】
また、本発明の金属板の成形方法は、
溝形状をなす要板金修理部に沿って嵌め込まれる紐状部材を備え、
ピーンフォーミング工程で、マスキング部材が当該紐状部材を介して金属板の主表面上に要板金修理部を覆うように配置されて要板金修理部の板金修理を行うことができる。これによると、紐状部材が要板金修理部に沿って、好ましくは溝形状の底部に沿ってはめ込まれているので、紐状部材によってその対応する位置には投射されないので、さらに落ち込むことなく要板金修理部を盛り上がらせることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の金属板の成形方法は、
金属板が凹むことにより形成された要板金修理部を、所定のエネルギーを有する投射体で凹んだ側から衝撃し、金属板が凹む前の状態に近づくように板金修理を行うピーンフォーミング工程を有する金属板の成形方法であって、
要板金修理部が、金属板の主表面上に平面視で面状をなすとともに、底部を通る主表面の垂線(軸線)を含む断面において、底部から主表面側向かって拡がって形成されており、
ピーンフォーミング工程で、金属板の主表面上に要板金修理部を覆うように配置された際に該主表面で要板金修理部に対して軸線位置から所定角度間隔で放射線上に沿って幅が拡がったあと狭くなる形状をなし、該主表面を露出させる窓部が周方向に間欠的に備えられたマスキング部材を用いて要板金修理部をマスキングし、そのマスキング部材の窓部に対応する要板金修理部の特定の領域に投射体を衝撃させて板金修理を行うことを特徴とする。
【0019】
通常、ピーンフォーミングを行うと金属板の被投射面はその周囲の非投射面の剛体拘束を受け、被投射面は曲げ変形成分によって盛り上がりが生じる(本来球面に盛り上がる)。本発明のごとく、金属板が凹むことにより形成された要板金修理部が平面視で面状をなす場合に、マスキング部材を用いて、該主表面で要板金修理部に対して軸線位置から所定角度間隔で放射線上に沿って幅が拡がったあと狭くなる領域に部分的に投射することで、被投射面が要板金修理部の底部に近づくにつれて広くなり、盛り上がりのズレを調整することができる。すなわち、マスキング部材の窓部が放射線上に沿って形成されているので、各窓部がその底部領域で密集することで投射領域が広くなっている。また、投射する領域(被投射面)を放射線上に設けることで、周方向に対して間欠的となり、換言すれば、周方向に対して投射体を投射しない非投射面を被投射面で挟むことで、非投射面が被投射面の盛り上がりを拘束し過剰な盛り上がりを抑えることができる。ひいては、盛り上がりのズレが解消されるので、盛り上がりすぎるといったこともなくなり、熟練の技を必要とせず窓部によって露出された部分に投射体を投射するだけという簡単作業でより平坦に近づけることができる。
【0020】
また、本発明の金属板の成形方法は、
窓部が、軸線位置から所定角度間隔で放射線上に沿って要板金修理部の縁部まで幅が拡がったあと狭くなる形状をなす第1窓部と、その隣り合う該第1窓部の間で該第1窓部よりも小さい、軸線位置から放射線上に沿って幅が拡がったあと狭くなる形状をなす第2窓部とを含む構成とすることができる。これによれば、放射線上に沿って形成された第1窓部の間にそれよりも小さな第2窓部が形成されているので、要板金修理部に対して投射体を当てる領域(被投射面)及び投射体を当てない領域(非投射面)とをより細かく設定することができ、盛り上がりのズレを抑制することができる。ひいては、要板金修理部により平坦に近づけることができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の金属板の成形方法は、
金属板が凹むことにより形成された要板金修理部を、所定のエネルギーを有する投射体で凹んだ側から衝撃し、金属板が凹む前の状態に近づくように板金修理を行うピーンフォーミング工程を有する金属板の成形方法であって、
ピーンフォーミング工程で、金属板の主表面上に要板金修理部を覆うように配置された際に該主表面で要板金修理部の主表面を露出させる窓部が予め定められた方向に間欠的に備えられたマスキング部材を用いて要板金修理部をマスキングし、そのマスキング部材の窓部に対応する要板金修理部の特定の領域に投射体を衝撃させて板金修理を行うことを特徴とする。
【0022】
通常、ピーンフォーミングを行うと金属板の被投射面はその周囲の非投射面の剛体拘束を受け、被投射面は曲げ変形成分によって盛り上がりが生じる(本来球面に盛り上がる)。本発明のごとく、金属板が凹むことにより形成された要板金修理部に、マスキング部材を用いて、該主表面で投射する領域(被投射面)を予め定められた方向に対して間欠的に設けることで、換言すれば、その定められた方向に対して投射体を投射しない非投射面を被投射面で挟むことで、非投射面が被投射面の盛り上がりを拘束し過剰な盛り上がりを抑えることができる。ひいては、盛り上がりのズレが解消されるので、盛り上がりすぎるといったこともなくなり、熟練の技を必要とせず窓部によって露出された部分に投射体を投射するだけという簡単作業でより平坦に近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ピーンフォーミングは、金属板1に多数(複数)のショット3を投射した際、図1(a)に示すように投射方向と逆方向に金属板1が盛り上がる現象を利用した成形方法である。ただし、図1(a)のように金属板1に盛り上がりが生じるのは、ショット3の投射エネルギー(運動エネルギー)を比較的小さく調整した場合であって、ショット3の投射エネルギーを高めれば、当然ながら図1(b)のように、ショット3の投射方向に落ち込みが生じる。盛り上がりの高さは、一般にはショットピーニングの程度を表すAlmenの値として知られている。
【0024】
ショット3としては、金属、ガラスおよび樹脂からなる材料群より選択された1種または2種以上で構成された小粒体を用いることができる。具体的には、金属球、ガラスビーズ、プラスチックビーズなどを用いることができる。ショット3の耐久性の面では、金属板1よりも硬質(ビッカース硬さが大きい)かつ靭性の大きい材料からなる金属球が優れる。投射対象である金属板1の厚さが概ね直径に等しい球状のショット3を用いると成形効率が良いため、特に推奨される。
【0025】
図1中の符号1a,1bは、一つのショット3によってもたらされる塑性変形域を概念的に示している。塑性変形域1aと1bの差異は、金属板1に生じる圧縮応力場の違いに起因している。多数のショット3が投射されると微小な塑性変形が累積され、金属板1の上面1p(表面)と下面1q(裏面)とで塑性変形量に差が生じる。つまり、上面1pの伸びが下面1qの伸びよりも大きい場合、金属板1は図1(a)のように盛り上がり、下面1qの伸びが上面1pの伸びよりも大きい場合、金属板1は図1(b)のように落ち込むことになる。
【0026】
このように、ピーンフォーミングとは、ショット3の投射方向とは逆側に金属板1を盛り上げる成形方法ということである。そうだとすれば、凹部の形成された金属板1のその凹部をピーンフォーミングにより平坦化することを考え得る。すなわち、図2に示すように、金属板1の凹部1kに対し、その凹部1kが開口した側から凹部1kの底に向けてショット3を次々と投射する。すると、ショット3の投射された領域は、投射方向と逆向きに盛り上がってくるので、凹部1kの全域にわたってショット3の投射を順次的にかつ満遍なく行えば、凹部1kの体積が次第に小さくなる。場合によっては、凹部1kは消滅して、金属板1は略平坦化する(図2中のカッコ内参照)。
【0027】
上記のような手法で、金属板の凹んだ箇所を隆起させることが威力を発揮する例として輸送機器、特に自動車の板金修理が挙げられる。自動車の板金修理に関していえば、内装等を取り外して内側からハンマーで叩くという、至ってシンプルな方法が主流となっているが、ピーンフォーミングを板金修理の現場に採用すると、内装等を取り外さずに済むという利点がある。
【0028】
図3に示すように、事故等により自動車40の外板40a(金属板)に形成された凹状の要板金修理部40bに対し、板金修理装置101を用いてショット3を投射する。具体的には、板金修理装置101のショット投射部12を要板金修理部40bに開口側から接近させる。そして、所定のエネルギーを有するショット3を凹んだ側から次々と投射して要板金修理部40bを引き戻し、外板40aが凹む前の状態に近づくようにピーンフォーミングを行う。特に、自動車の外板の中でも、ドア、ボンネットなど板金が不可能または極めて困難で、交換するしか修理方法のない部分に対し、ピーンフォーミングによる板金修理が有効である。
【0029】
たとえば、図4に示すように、金属板61(被板金金属板)が他の金属板63(裏側接合材)に接合部材6cを介して接合されて一体となることにより構成された組付け金属板6(ドア、ボンネット等)を板金修理する場合がある。金属板61の裏側面6qは、他の金属板63によって覆われる形となっており、両者(金属板61,63)の間には若干の中空スペースSHが形成されている。この中空スペースSHにハンマーなどの工具を介挿して金属板61に形成された凹部6k(要板金修理部)を板金することはできない。また、両者(金属板61,63)を分離させることもできない。このような状況に置かれた金属板61について、表側面6pからショット3を投射して凹部6kを板金修理する方法は有効である。なお、接合部材6cを介さずに、溶接などにより直接接合されていても同様である。
【0030】
ここで、ピーンフォーミングによる板金修理する方法は、ショットを金属板(凹部)に投射して行うため、凹部を平坦化するにはショット投射位置の調整など熟練の技が必要であるが、本発明の如く、マスキング部材を用いることでより容易に金属板の主表面を平坦に近づけることができる。図5は、金属板71の主表面71pで長手状に延びる溝状に(直線状に凹むことにより)形成された要板金修理部71kを修理する場合に用いられるマスキング部材72を示す平面図、及びその断面図である。このマスキング部材72は、例えばゴムシート等で形成することができ、ショット3が投射されたときにそのショット3の衝突エネルギーを緩和するために金属板71に直接衝突させないように、金属板71の凹んだ側の表面である主表面71p上に一時的に固定される。具体的には、マスキング部材72は、図5(a),(b)に示すように、厚さ方向に貫通しその対応する領域の金属板71の主表面71p(要板金修理部71k)を露出させる窓部73を備え、金属板71の主表面が凹むことにより形成された要板金修理部71kを被覆するように配置される。換言すれば、マスキング部材72には、金属板71の主表面71p(要板金修理部71k)のショット3を直接衝突させるべき部位に対応する位置にその部位を露出させる窓部73が形成されている。なお、マスキング部材72は、ゴムシートに限られるものではなく、上記のようにショット3が被投射面を凸状に変形させるために投射エネルギーを比較的小さく調整されているので、その投射エネルギー吸収を減少させるものであれば何を使用してもよく、例えばガムテープや塗料等を使用してもよい。
【0031】
ここで、金属板71の要板金修理部71k(図中破線で囲まれた領域)は、主表面71pを基準として最も深くなっている最深底部71b(以下、単に底部71bともいう)が直線O1上に沿って形成され(図5(a)参照)、その底部71bから主表面に向かって傾斜する傾斜部71cが形成されている(図5(b)参照)。図5(a)に示すように、マスキング部材72の窓部73は、要板金修理部71kのショット3を直接衝突させるべき部位を露出させるように配置され、直線O1上(底部71bの長手方向)に沿って間欠的(好ましくは等間隔)に形成されている。また、窓部73は、直線O1に直交する直線O2方向で底部71bから遠ざかるにつれて幅が狭くなる形状(d≦D)を呈し、具体的には、細長で長辺側に角が形成された略楕円形状を呈する。マスキング部材72には、窓部73が底部71bの長手方向において間欠的に形成されることにより、その隣り合う窓部73の間にマスキング部材72の窓部以外の部分であるマスク部72pが形成されている。これにより、ショット3が投射されると、要板金修理部71kにおいて窓部73によって露出されてショット3が直接衝突して衝撃が付与される被投射面(直接衝突させるべき部位)と、マスク部72pによってショット3が直接衝突せず衝撃(衝突エネルギー)が緩和された状態、もしくは衝撃を受けない非投射面(直接衝突しない部位)とが構成されるので、非投射面が被投射面の盛り上がりを拘束し過剰な盛り上がりを抑制する。また、ピーンフォーミングは被投射面積に比例して盛り上がり量も大きくなるので、本発明のごとく窓部73が底部71bから遠ざかるにつれて幅が狭くなっており、換言すれば、窓部73は底部71bに近づくにつれて幅が広くなっているので、すなわち、より大きく凹んでいる底部71b周辺をより容易に盛り上げることができる。ひいては、窓部73(被投射面)が間欠的に設けられているので、要板金修理部71kの全域を投射したときのように球面状に盛り上がってくることなく、その全域が均一に盛り上がりより容易に平坦に近づけることができる。また、窓部73の幅が変化しているので盛り上がりのズレを低減することができる。
【0032】
また、図5(b),(c)に示すように、長手状に延びる溝状に形成された要板金修理部71kを板金修理する際には、マスキング部材72は、その要板金修理部71kの底部71bを線状又は帯状に被う紐状部材74を含み構成することができる。その紐状部材74、ゴム材等で形成されており、底部71bにショット3が直接衝突するのを防止するために配置され、ゴムシートと同様にショット3が衝突することにより発生する衝撃(衝突エネルギー)を緩和するものである。なお、紐状部材74は、繊維を細長く綯った縄や撚りあわせた綱などを使用してもよい。
【0033】
ここで、上記のように塑性変形が累積され金属板の上面(表面)と下面(裏面)とで塑性変形量に差が生じて上面の伸びが下面の伸びよりも大きい場合に盛り上がるが、ショット3を底部71bに直接衝突させると、その底部71bに隣接する領域(傾斜部71c)は、落ち込む方向に傾斜しており、たとえ上面側に伸びが発生したとしても盛り上がることなくさらなる落ち込みが発生しやすい。よって紐状部材74で底部71bを被うことで、すなわち、底部71bにはショット3を直接衝突させないことで、その底部71bの両側で底部71bを挟み込むように傾斜部71cを盛り上げることでより効果的に要板金修理部71kを平坦に近づけることができる。なお、紐状部材74に相当する位置をマスキング部材72のマスク部72pで形成するようにしてもよい。その場合にも、ショット3を投射したときに、マスク部72pが底部71bを被っているので、底部71bにはショット3が直接衝突することがないので、より効果的に要板金修理部71kを平坦に近づけることができる。
【0034】
図6は、図5におけるマスキング部材の変形例1を示す図である。なお、変形例1において上記実施例と同様な部分の説明は同一の符号を付して詳細な説明を省略又は簡略化する。図6(a),(b)に示すように、マスキング部材72は、金属板71の主表面71p上に固定された時に、長手状に延びる溝状に形成された要板金修理部71kの最深底部71bに対応する位置にマスク部72p(窓部以外の部分)を形成している。また、その溝状の最深底部71bの長手方向(直線O1方向)の両側にその長手方向に沿って延びる長手状の窓部73aと、その長手状の窓部73aを起点として溝状の最深底部71bから遠ざかる方向(直線O2方向)に延びる周辺の窓部73bとを備え、周辺の窓部73bは、長手方向において間欠的に形成されている。これにより、大きく凹んでいる最深底部71bの周辺(両側)に長手状の窓部73aを形成することで、その長手状の窓部73aを通じてショット3を直接衝突させることで、より容易に最深底部71bを盛り上げることができ、また、その長手状の窓部73aを起点として周辺の窓部73bを長手方向に間欠的に複数形成することで、要板金修理部71kの凹み度合にあわせて盛り上がり度合を調整することができ、凹みをより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。
【0035】
図7は、図5におけるマスキング部材の変形例2を示す図であり、図8は、図5におけるマスキング部材の変形例3を示す図である。図7に示すように、窓部73cは、直線O1上(底部71bの長手方向)に沿って間欠的に形成され、直線O2方向に延びる長さが要板金修理部71kの略中央から両端側にいくにつれて短くなるように形成されている。これにより、窓部73cの直線O2方向への長さを凹みの態様に応じて調整することで、その凹み(要板金修理部)をより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。図8に示すように、窓部73d,73eは、直線O2方向から所定角度傾斜した状態で直線O1(底部71bの長手方向)と交叉して形成されており、直線O1上(底部71bの長手方向)に沿って間欠的に形成されている。これにより、窓部の傾きを凹みの態様に応じて調整することで、その凹み(要板金修理部)をより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。なお、図7及び図8においては、底部71bに対応する位置で上記説明した紐状部材74またはマスク部72p(窓部以外の部分)が省略されて図示されている。
【0036】
図9は、金属板81の主表面81pで円形状等の点状に形成された要板金修理部81kを修理する場合に用いられるマスキング部材82を示す平面図、及びその断面図である。このマスキング部材82は、例えばゴムシート等で形成することができ、ショット3が投射されたときにそのショット3の衝突エネルギーを緩和するために金属板81に直接衝突させないように、金属板81の凹んだ側の表面である主表面81p上に一時的に固定される。具体的には、マスキング部材82は、図9(a),(b)に示すように、厚さ方向に貫通しその対応する領域の金属板81の主表面81p(要板金修理部81k)を露出させる第1窓部83と第2窓部84とを備え、金属板81の主表面が凹むことにより形成された要板金修理部81kを被覆するように配置される。換言すれば、マスキング部材82には、金属板81の主表面81p(要板金修理部81k)のショット3を直接衝突させるべき部位に対応する位置にその部位を露出させる窓部(第1窓部83,第2窓部84)が形成されている。なお、マスキング部材82は、ゴムシートに限られるものではなく、上記のようにショット3が被投射面を凸状に変形させるために投射エネルギーを比較的小さく調整されているので、その投射エネルギー吸収を減少させるものであれば何を使用してもよく、例えばガムテープや塗料等を使用してもよい。
【0037】
ここで、金属板81の要板金修理部81k(図中破線で囲まれた領域)は、主表面81pを基準として最も深くなっている最深底部81b(以下、単に底部81bともいう)を中心とする平面視で円形状等の点状をなして形成され(図6(a)参照)、その底部81bから主表面側にむかって拡がるように傾斜する傾斜部81cが形成されている(図6(b)参照)。図6(a)に示すように、マスキング部材82の第1窓部83,第2窓部84は、要板金修理部81kのショット3を直接衝突させるべき部位を露出させるように配置され、底部81bを通る軸線O3位置を中心に所定角度間隔で放射線上に沿って延びる形で幅が拡がったあと狭くなる形状を呈し、具体的には、細長で長辺側に角が形成された略楕円形状を呈する。また、第1窓部83は、90度間隔で周方向に4つ形成され、要板金修理部81kの縁部まで幅が拡がったあと狭くなる形状を呈し、第2窓部84は、その隣り合う第1窓部83の間に30度間隔(等間隔)で2つずつ第1窓部83よりも小さく形成されている。これら第1窓部83及び第2窓部84が周方向に例えば等間隔で間欠的に形成されており、その隣り合う窓部(第1窓部,第2窓部)の間にマスキング部材82の窓部以外の部分であるマスク部82pが形成されている。
【0038】
これにより、ショット3が投射されると、要板金修理部81kにおいて第1及び第2窓部83,84によって露出されてショット3が直接衝突して衝撃が付与される被投射面(直接衝突させるべき部位)と、マスク部82pによってショット3が直接衝突せず衝撃(衝突エネルギー)が緩和された状態、もしくは衝撃を受けない非投射面(直接衝突しない部位)とが構成されるので、非投射面が被投射面の盛り上がりを拘束し過剰な盛り上がりを抑制する。また、ピーンフォーミングは被投射面積に比例して盛り上がり量も大きくなるので、本発明のごとく第1及び第2窓部83,84による占有領域は底部81bから遠ざかるにつれて狭くなっており、換言すれば、第1及び第2窓部83,84は底部81bに近づくにつれて占有領域が広くなっているので、すなわち、より大きく凹んでいる底部81b周辺をより容易に盛り上げることができる。ひいては、第1及び第2窓部83,84(被投射面)が間欠的に設けられているので、要板金修理部81kの全域を投射したときのように球面状に盛り上がってくることなく、その全域が均一に盛り上がりより容易に要板金修理部81kを平坦に近づけることができる。また、第1及び第2窓部83,84の幅が変化しているので盛り上がりのズレを低減することができる。
【0039】
また、図9(a),(b)に示すように、マスキング部材82は、金属板81の主表面81p上に固定された時に、円形状等の点状で形成された要板金修理部81kの底部81bに対応する位置にマスク部82p(窓部以外の部分)を形成している。具体的には、第1及び第2窓部83,84は、底部81bを通る軸線O3位置から所定距離オフセットした位置を起点として放射線上に沿って延びる形で幅が拡がったあと狭くなる形状で形成されている。よって、マスク部82pで底部81bを被うことで、すなわち、底部81bにはショット3が直接衝突させないことで、その底部81bを囲み込むように傾斜部81cを盛り上げることでより効果的に要板金修理部81kを平坦に近づけることができる。
【0040】
図10は、図9におけるマスキング部材の変形例を示す図である。なお、この変形例において上記実施例と同様な部分の説明は同一の符号を付して詳細な説明を省略又は簡略化する。図10に示すように、第2窓部は、上記したように隣り合う2つの第1窓部83の間に30度間隔で2つ形成される第2窓部84,84(図中左上側)に限定するものではなく、窓部85のように(図中右上側)、その隣り合う2つの第1窓部83の間で1つのみ形成してもよく、また省略する(形成しない)こともできる(図中左下側)。さらに、窓部86のように(図中右下側)、底部81bを通る軸線O3位置から所定距離オフセットした位置を起点とした第1窓部83よりもさらに所定距離隔てた位置を起点として放射線上に沿って延びる形で形成することもできる。これにより、平面視で形が整わずゆがんで凹んだ点状の凹みに対しても、自由度を持たせて窓部の大きさ、位置などを調整することで、その凹みをより平坦(凹む前の状態)に近づけることができる。
【0041】
なお、要板金修理部の形状として平面視で直線状および円形状のものを例示して説明したが、これらに限定されるものではなく、例えば楕円形状、多角形状などにも適用することができ、その場合にも要板金修理部における底部を基準として、予め定められた方向に対して間欠的に形成された窓部を備えるマスキング部材を配置し、ショットの衝撃を受ける被投射面と、ショットの衝撃を受けない非投射面との位置を調整することにより、非投射面が被投射面の盛り上がりを拘束し過剰な盛り上がりが抑制され、その金属板の主表面を平坦化することが容易となる。
【0042】
次に、板金修理装置101の概要を図11に示す。ショットを圧縮空気によって加速するブロワー型の板金修理装置101は、主にショット投射部12と本体部70を有して構成されている。本体部70は、ショットを蓄えるためのホッパ62、ショットに運動エネルギーを付与するための圧縮空気を生成する圧縮機60、圧縮空気とショットとをショット投射部12に送るための送給機64、送給機64とショット投射部12とを連通する連通管18、当該板金修理装置101を動作させるための操作部52を備えている。また、本体部70の底部に車輪50,50を設けたため、容易に移動可能になっている。
【0043】
ショット投射部12は、モータ等のアクチュエータ12bと、そのアクチュエータ12bによって揺動される首振部12aとを含んで構成された角度可変機構を備えている。この角度可変機構により、ショット3の投射方向が調整される。また、圧縮機60にて生成された圧縮空気は連通管18に送られる。連通管18には、樹脂製あるいは金属製のフレキシブルホースを採用するとよい。一方、ホッパ62はA,B,CおよびDで示される複数の区画に分かれてその各々にショットを蓄えるとともに、各区画から個別にショットを供給できるようになっている。つまり、形状、材質等の異なる複数種類のショットを状況に応じて使い分けることが可能である。なお、操作部52からの入力はコントローラ54に伝送され、コントローラ54は入力された命令に応じて、アクチュエータ12b、圧縮機60および送給機64の動作を制御する。また、ショット投射部12は、作業者が直接把持して扱えるハンドツールの形態としてもよいし、マニピュレータ等に固定する形態としてもよい。
【0044】
図3に戻って説明をする。板金修理装置101において、ショット投射部12は、フレキシブルホースにより構成された連通管18により本体部70に繋がっている。そのため、要板金修理部40bの凹凸変化(要するに凹み深さの違い)に追従する形で自在に可動であり、要板金修理部40bの全域を隈なくショット3で衝撃できる。また、外板40aを衝撃を印加した側に盛り上げるにはショット3のエネルギーを調整することが重要であるが、板金修理装置101では、要板金修理部40bとショット投射部12との距離をコントロールすることで、ショット3のエネルギーをコントロールすることも可能になっているため、エネルギー微調整等の点において有利である。すなわち、本発明のごとく要板金修理部40bに上記説明したマスキング部材を予め配置させることで、作業者は全域をすみ無くショット3で衝撃するだけで、盛り上がりすぎることなく、そして落ち込むことなくより容易に凹部を盛り上げて平坦に近づけることができる。
【0045】
また、投射したショット3が周囲に飛散しないようにするとともに、ショット3を回収する手段として、自動車40の外板40aに密着可能な回収カバー65を板金修理装置101の一部として設けることができる。回収カバー65には、ショット投射部12の先を挿入するための開口が設けられている。また、回収カバー65は、たとえば透明あるいは半透明の樹脂により構成することができる。したがって、回収カバー65にて要板金修理部40bを覆い、ショット投射部12の位置調整をしながらピーンフォーミングをすることができる。また、回収カバー65には、ショット回収管67が連通されている。このショット回収管67から圧送されたショット3は、ホッパ62に戻される。
【0046】
ショット3が飛散しても問題ないように区画されたエリアで、しかもショット3を循環させずに板金修理を行うならば、回収カバー65やショット回収管67を設ける必要もない。
【0047】
なお、要板金修理部40bを完全に元通りに修復するに至らなかった場合でも、凹む前の状態に近づいているならば、それはそれで十分に修理効果があったものと考え得る。また、凹む前の状態に近づいたかどうかは、凹み箇所(要板金修理部40b)の体積の増減を基準に判断することができる。つまり、凹み箇所の体積が減少していれば、凹む前の状態に近づいたものとみなす。
【0048】
本実施形態は、自動車40の板金修理を例に説明したが、自動車に限らず、たとえば金属製家具、電化製品、建築物などにも本発明を適用できることはもちろんである。また、板金修理装置101を顧客の自宅等まで運搬し、出張板金修理サービスを提供するといったことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ピーンフォーミングの原理説明図。
【図2】凹部を凹む前の状態に近づける方法を説明する図。
【図3】ピーンフォーミングにより自動車の板金修理を行う様子を示す図。
【図4】ピーンフォーミングにより板金修理を行う好適例を説明する図。
【図5】マスキング部材を示す平面図及び断面図。
【図6】図5におけるマスキング部材の変形例1を示す平面図及び断面図。
【図7】図5におけるマスキング部材の変形例2を示す平面図。
【図8】図5におけるマスキング部材の変形例3を示す平面図。
【図9】別の例のマスキング部材を示す平面図及び断面図。
【図10】図9におけるマスキング部材の変形例を示す平面図
【図11】板金修理装置の概要を説明する図。
【符号の説明】
【0050】
1,71,81 金属板
1k,6k,40b,71k,81k 凹部(要板金修理部)
3 ショット
12 ショット投射部
40 自動車(構造物)
40a 外板
71b,81b 底部(最深底部)
72,82 マスキング部材
73,73a,73b,73c,73d,73e,83,84,85,86 窓部(第1窓部,第2窓部)
74 紐状部材
101 板金修理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板が凹むことにより形成された要板金修理部に、所定のエネルギーを有する多数の投射体を凹んだ側から衝突させて衝撃を付与し、前記金属板が凹む前の状態に近づくようにピーンフォーミングによって板金修理を行う金属板の成形方法であって、
前記要板金修理部の該投射体を直接衝突させるべき部位を露出させるために所定のパターンで開口する窓部を備え、窓部以外の部分は前記要板金修理部に対し該投射体が直接衝突しないように被覆して該投射体の衝突エネルギーを緩和するマスキング部材を用い、そのマスキング部材を前記金属板の前記凹んだ側の表面である主表面上に前記要板金修理部を覆うように一時的に固定して当該要板金修理部をマスキングし、そのマスキング部材の窓部を通じて前記要板金修理部の該投射体を直接衝突させるべき部位に投射体を衝突させ、その窓部以外の部分では前記投射体をマスキング部材の前記窓部以外の部分に前記投射体を衝突させて前記要板金修理部へ直接衝突させないようにして前記要板金修理部の板金修理を行うことを特徴とする金属板の成形方法。
【請求項2】
前記マスキング部材は、前記金属板の主表面上に固定された時に前記要板金修理部の最深底部に対応する位置が窓部以外の部分とされ、
前記要板金修理部の最深底部に対しては、前記投射体が前記マスキング部材に衝突し、該要板金修理部の最深底部には直接衝突しないようにされる請求項1に記載の金属板の成形方法。
【請求項3】
前記要板金修理部が、長手状に延びる溝状に形成されたものであり、
前記マスキング部材は、その溝状の最深底部の長手方向の両側にその長手方向に沿って延びる長手状の窓部を備え、かつその長手状の窓部を起点として前記溝状の最深底部から遠ざかる方向に延びる周辺の窓部を前記長手方向において間欠的に備える請求項1又は2に記載の金属板の成形方法。
【請求項4】
前記窓部が、前記最深底部から遠ざかるにつれて幅が狭くなる形状をなす請求項3に記載の金属板の成形方法。
【請求項5】
前記マスキング部材が、前記要板金修理部の最深底部を線状又は帯状に被う紐状部材を含み、
前記投射体の投射時に、前記要板金修理部の最深底部に対しては、前記投射体が当該紐状部材に衝突し、該要板金修理部の最深底部には直接衝突しないようにする請求項3又は4に記載の金属板の成形方法。
【請求項6】
前記要板金修理部が、平面視で円形状を含む点状に凹んで形成され、
前記マスキング部材が、その点状の凹みの最深底部から放射線上に沿って延びる形でその最深底部における周方向に間欠的に開口された窓部を有する請求項1又は2に記載の金属板の成形方法。
【請求項7】
前記窓部が、前記最深底部から遠ざかるにつれて幅が拡がったあと、狭くなる形状をなす請求項6に記載の金属板の成形方法。
【請求項8】
前記窓部が、前記最深底部から所定角度間隔で放射線上に沿って延びる形で幅が拡がったあと狭くなる形状をなす第1窓部と、その隣り合う2つの第1窓部の間で該第1窓部よりも小さく前記最深底部から放射線上に沿って延びる形で幅が拡がったあと狭くなる形状をなす第2窓部とを含む請求項7に記載の金属板の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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