説明

金属板製引き出しの構造とその製造方法

【課題】底面板2における周囲に,前面板3,後面板4及び左右両側面板5を一体に連接し,前記前面板3及び後面板4における左右両端に,前記側面板5における外表面5b又は内表面に重ね接合される連結板6,7を一体に設けて成る金属板製引き出しにおいて,その低コスト化を図るとともに,引き出しの出し入れ操作の円滑性を向上する。
【解決手段】前記側面板5における外表面5b又は内表面のうち,少なくとも前記各連結片6,7が重ね接合される部分に,前記各連結板が嵌まる凹所8を凹み形成して,この凹所内で前記連結板6,7を前記側面板5に重ね接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,各種のキャビネット又は机のような什器又は家具等に使用される金属板製の引き出しにおいて,その構造と,その製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
什器又は家具等に使用される金属板製の引き出しを,
「底面板に,その周囲における前面板(鏡板),後面板及び左右両側面板を一体に連接し,これら前面板(鏡板),後面板及び左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げて成る。」
という構成にすることは,特許文献1,2等に記載されている。
【0003】
この場合,一方の特許文献1には,
「前記底面板の周囲における前面板(鏡板) と左右両側面板との相互間,及び左右両側面板と後面板との相互間の各々を,コーナー部材にて連結・結合する。」
という構成にすることが記載されている。
【0004】
また,他方の特許文献2には,その図5に示すように,
「前記前面板の左右両端に,後向きの直角に折り曲げた連結板を一体に設ける一方,前記後面板の左右両端に,前向きの直角に折り曲げた連結板を一体に設け,これらの各連結板を,前記左右前側面板の外表面に重ね合わせたのち,両側面板に対してリベットにて結合する。」
という構成にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−119167号公報
【特許文献2】実関平05−080334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1による構成の場合,前面板,後面板及び左右両側面板の相互間の結合にコーナー部材を必要とし,部品点数が多くなるから,製造価格の大幅なアップを招来するのであり,しかも,前記コーナー部材の一部が,前記左右両側面板及び後面板における外表面より突出していて,引き出しを出し入れする際に,前記コーナー部材が引っ掛かって引き出しの出し入れ操作を姐害するばかりか,前記コーナー部材が外れ落ちるおそれがあるという問題があった。
【0007】
また,特許文献2による構成の場合,部品点数の増加はなく,しかも,前面板,後面板及び左右両側面板の相互間を,前記連結板にて強固に接合することができるという利点を有する。
【0008】
しかし,その反面,前記連結板が,その板厚さの分だけ前記左右両側面板における外表面より突出していることにより,この連結板が,引き出しの出し入れ操作の際に引っ掛かる頻度が高いから,引き出しの出し入れ操作を著しく阻害するのであり,しかも,前記連結板の左右両側面板に対する重ね結合が,リベット結合であるために,この重ね結合に多大の手数を必要として,コストの大幅なアップを招来するばかりか,リベットが,引き出しの出し入れ操作を更に阻害するという問題があった。
【0009】
また,前記左右の両側面板の後端に,内向きの直角に折り曲げた連結板を一体に設けて,この連結板を,前記後面板における外表面に重ね合わせたのち,後面板に対して結合するという構成にした場合は,前記連結板が,その板厚さの分だけ前記後面板における外表面より突出することになるから,同様の問題がある。
【0010】
本発明は,これらの問題を解消した引き出しの構造を提供するとともに,その製造方法を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この技術的課題を達成するため本発明における金属板製引き出しの構造は,請求項1に記載したように,
「金属板製の底面板における周囲に一体に連接した前面板,後面板及び左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げし,前記前面板及び後面板における左右両端に,前記左右両側面板における外表面又は内表面に重ね接合される連結板を一体に設けて成る引き出しにおいて,
前記左右両側面板のうち少なくとも前記各連結片が重ね接合される部分に,前記各連結板が嵌まる凹所が凹み形成され,この凹所内で前記連結板が前記側面板に接合されている。」
ことを特徴としている。
【0012】
請求項2は,
「金属板製の底面板における周囲に一体に連接した前面板,後面板及び左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げし,前記左右両側面板における後端に,前記後面板における外表面又は内表面に重ね接合される連結板を一体に設けて成る引き出しにおいて,
前記後面板のうち少なくとも前記連結片が重ね接合される部分に,前記連結板が嵌まる凹所が凹み形成され,この凹所内で前記連結板が前記後面板に接合されている。」
ことを特徴としている。
【0013】
請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記各連結板における前記左右前側面板又は前記後面板への重ね接合が,スポット溶接である。」
ことを特徴としている。
【0014】
請求項4は,
「前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記凹所は,前記左右両側面板又は前記後面板のうち高さ方向の一部に設けられていることに加えて,前記左右両側面板又は前記後面板における全長にわたって延びる溝型の構成である。」
ことを特徴としている。
【0015】
請求項5は,
「前記請求項4の記載において,前記溝型構成にした凹所は,前記左右両側面板又は前記後面板のうち前記底面板から適宜寸法だけ高い部位に設けられている。」
ことを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載したように,
「前記請求項4の記載において,前記溝型構成にした凹所は,前記左右両側面板又は前記後面板のうち前記底面板に近い部位と,これよりも高い部位との両方に設けられている。」
ことを特徴としている。
【0017】
次に,本発明における金属板製引き出しの製造方法は,請求項7に記載したように,
「一枚の金属板にて,底面板の周囲に前面板,後面板及び左右両側面板を一体に連接された展開状態にして製造する工程と,
前記左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げる工程と,前記前面板及び前記後面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げる工程と,
前記前面板及び後面板の起立折リ曲げ工程よりも前に,これら前面板及び後面板における左右両端に,前記左右両側面板における外表面又は内表面に重ね接合される連結板を一体に設ける工程を備えるとともに,
前記左右両側面板の起立折り曲げ工程よりも前に,当該両側面板のうち,前記各連結板が重ね接合される部分に,前記各連結板が嵌まる凹所を凹み形成する工程を備え,
更に,前記左右両側面板及び前記前面板並びに前記後面板を起立折り曲げしてから,前記各連結板を,前記凹所内で前記側面板に接合する工程を備えている。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した構成によると,前面板及び後面板の両端に一体に設けた連結板を,左右両側面板における外表面又は内表面に重ね接合する場合に,前記連結板が前記左右両側面板の外表面又は内表面から突出する寸法を,凹所の深さの分だけ低くすることができるか,或いは,前記連結片が前記左右両側面板の外表面又は内表面から突出しないように構成することができる。
【0019】
これにより,引き出しの出し入れ操作の際に,前記連結板が引っ掛かることの頻度を低減できるから,引き出しの出し入れ操作の円滑性を大幅に向上できる。
【0020】
また,請求項2によると,左右両側面板と後面板との連結に際し,前記左右両側面板に一体に設けた連結片が,前記後面板における外表面又は内表面から突出する寸法を,凹所の深さの分だけ低くすることができるか,或いは,前記連結片が前記後面板の外表面又は内表面から突出しないように構成することができる。
【0021】
請求項3によると,前記連結板の側面板又は後面板への重ね結合がスポット溶接であることにより,この重ね結合に要する手数及びコストを,リベット結合の場合に比べて大幅に低減できるとともに,引き出しの出し入れ操作を更に向上できる。
【0022】
請求項4によると,前記凹所を,前記左右両側面板又は後面板のうち高さ方向の一部に設けることに加えて,前記左右両側面板又は後面板における全長にわたって延びる溝型の構成にしたことにより,前記左右両側面板又は後面板のうち前記凹所が設けられていない部分は,前記左右両側面板又は後面板における全長にわたって直線的に延びていて,この直線的に延びる部分が,引き出しを出し入れ操作するときのガイドを構成するから,前記引き出しの円滑な出し入れを実現できるほか,前記溝型構成の凹所にて,前記左右両側面板又は後面板を補強することができる。
【0023】
この場合,請求項5によると,前記側面板のうち前記したように引き出しのガイドをなす部分が,引き出しの底部に設けられているから,そのガイド性をより向上できる。
【0024】
これに加えて,請求項6によると,前記側面板のうち引き出しのガイドをなす部分が,引き出しの底部に近い部分と,これより高い部分との二箇所に設けられているから,そのガイド性を更に向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態による引き出しを示す斜視図である。
【図2】図1のII-II視拡大断面図である。
【図3】図1のIII-III視拡大断面図である。
【図4】図1のIV-IV視拡大断面図である。
【図5】図1のV-V視拡大断面図である。
【図6】前記引き出しの展開斜視図である。
【図7】引き出しの左右両側面板を曲げ加工した状態を示す展開斜視図である。
【図8】引き出しの前面板及び後面板を曲げ加工した状態を示す展開斜視図である。
【図9】第2の実施の形態による引き出しを示す斜視図である。
【図10】図9のX-X視拡大断面図である。
【図11】図9のXI-XI視拡大断面図である。
【図12】曲げ加工の途中の状態を示す斜視図である。
【図13】第3の実施の形態による引き出しを示す斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV視拡大断面図である。
【図15】図13のXV−XV視拡大断面図である。
【図16】図13,図14及び図15のXVI−XVI視拡大断面図である。
【図17】図13,図14及び図15のXVII−XVII視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の本発明の実施の形態を,図1〜図17の図面について説明する。
[第1の実施形態]
図1〜図5は,第1の実施の形態による金属板製の引き出し1を示している。
【0027】
この引き出し1は,平面視において長方形等の矩形にした底面板2と,この底面板2の前側における前面板(鏡板) 3と,前記底面板2の後側における後面板4と,前記底面板2の左右両側における側面板5とによって,トレー型に構成されている。
【0028】
前記前面板3は,前記底面板2の周囲に一体に連接して上向きに折リ曲げて成る構成であり,その上端縁には,安全性(当該上端縁が刃物にならないこと)と,当該前面板3の補強を兼ねた断面下向きコ字状の折り返し板3aが一体に設けられ,この前面板3における略中央部分には,把手孔3bが穿設されている。なお,前記折り返し板3aは,後述する連結板6の上端部を囲う構成である。
【0029】
前記後面板4は,前記底面板2の周囲に一体に連接して上向きに折り曲げて成る構成であり,その上端縁には,同じく安全性と補強とを兼ねた内側への折り返し板4aが一体に設けられている。
【0030】
前記左右両側面板5は,前記後面板4と同様に,前記底面板2の周囲に一体に連接して上向きに折り曲げて成る構成であり,その上端縁には,安全性と補強とを兼ねた内側への折り返し板5aが一体に設けられている。
【0031】
前記前面板3の左右両端には,連結板6が一体に設けられ,この両連結板6は,前記前面板3を前記底面板2に対して起立するように折リ曲げたときに,前記左右両側面板5における外表面5b又は内表面に対して重なるように,後向きの直角に折り曲げられている。
【0032】
また,前記後面板4の左右両端には,連結板7が一体に設けられ,この両連結板7は,前記後面板4を前記底面板2に対して起立するように折り曲げたときに,前記左右両側面板5における外表面5b又は内表面に対して重なるように,前向きの直角に折り曲げられている。
【0033】
そして,前記前面板3の両端における各連結板6,及び前記後面板4の両端における各連結板7は,前記左右両側面板5における外表面5b又は内表面に重ね合わせられ,この状態で,前記左右両側面板5に対してスポット溶接にて結合されている。
【0034】
前記左右両側面板5における外表面5b又は内表面のうち,少なくとも前記各連結板6,7が重なる部分には,少なくとも前記各連結板6, 7の板厚さtだけ凹ませて成る凹所8が設けられ,前記各連結板6,7は,この凹所8に嵌まった状態で,この凹所8内において前記左右両側面板5に対してスポット溶接にて結合されている。
【0035】
この場合,第1の実施の形態は,前記左右両側面板5の外表面5b又は内表面における凹所8を,以下に述べる構成にしている。
【0036】
すなわち,この左右両側面板5における凹所8を,前記底面板2よりも適宜寸法H1だけ上方の部分を凹ませることによって,前記側面板5における前端が後端にまで全長にわたって延びる溝型に構成している。
【0037】
この構成において,前記前面板3を前記側面板5に対して接合する連結板6は,前記側面板5に凹み形成した凹所8内に嵌まっていることにより,前記連結板6が前記側面板5の外表面5b又は内表面から突出する寸法を,前記凹所8の深さの分だけ低くすることができるか,或いは,前記連結片6が前記側面板5の外表面5b又は内表面から突出しないように構成することができる。
【0038】
一方,前記後面板4を前記側面板5に対して接合する連結板7も,前記側面板5の外表面5b又は内表面に凹み形成した凹所8内に嵌まっていることにより,前記連結板7が前記側面板5の外表面5b又は内表面から突出する寸法を,前記凹所8の深さの分だけ低くすることができるか,或いは,前記連結片6が前記側面板5の外表面5bから突出しないように構成することができる。
【0039】
これにより,前記引き出し1の出し入れの際に,前記各連結板6, 7が引っ掛かることの頻度を低減できるから,引き出し1の出し入れの円滑性を大幅に向上できる。
【0040】
更にまた,前記各連結片6,7が嵌まる凹所8は,前記側面板5における前端から後端にまで延びる溝型の構成であることにより,前記側面板5を前記凹所8によって段付き状に屈曲する部分が,前記側面板5の強度アップに寄与する一方,前記側面板5における外表面5bは,前記引き出し1における底の部分において,前記側面板5における前端から後端にまで全長にわたって直線的に延びる形態になって,この直線的に延びる部分が,前記引き出し1を出し入れするときに,前記引き出し1を円滑にガイドする作用を行なう。
【0041】
なお,前記第1の実施の形態においては,前記左右両側面板5のうち前記凹所8内の部分に,側面板5の補強を兼ねて内向きへの凹み溝9を設け,この凹み溝9に,複数本の縦溝孔10を遣宜ピッチの間隔で穿設することにより,前記各縦溝孔10に,引き出し1における中仕切り板Wを着脱可能に装着できるように構成している。
【0042】
そして,前記第1の実施の形態による引き出し1は,以下に述べる方法にて製造される。
【0043】
先ず,図6に示すように,前記底面板2を,素材の金属板から打ち抜くときに,当該底面板2の周囲に,前面板3,後面板4及び左右両側面板5を一体に連接するとともに,前記前面板3の両端に連結板6を,前記後面板の両端に連結片を各々一体に連接する。
【0044】
次いで,前記前面板3に折り返し板3a及び把手孔3bを設けるプレス等の加工,前記後面板4に折り返し板4aを設けるプレス等の加工,及び前記左右再側面板5に折り返し板5a及び凹所8を設けるプレス等の加工を施す。
【0045】
なお,これら前面板3,後面板4及び両側面板5に対する各種の加工は,各々別々に行なうようにしても良いが,一挙に行なうようにしても良い。
【0046】
次いで,図7に示すように,前記左右両側面板5を,前記底面板2に対して起立するように,折り曲げ線11に沿って直角の上向きに折り曲げる一方,前記前面板3における各連結板6及び前記後面板4における各連結板7の各々を,折リ曲げ線15,16に沿って直角の上向きに折り曲げる。
【0047】
なお,前記両側面板5の折り曲げと,前記各連結板6,7の折り曲げとは,同時に行なうようにしても良いが,別々に行なうようにしても良い。
【0048】
次いで,図8に示すように,前記前面板3を,前記底面板2に対して起立するように,折り曲げ線12に沿って直角の上向きに折り曲げる一方,前記後面板4を,前記底面板2に対して起立するように,折り曲げ線13に沿って直角の上向きに折り曲げる。
【0049】
なお,前記前面板3の折り曲げと,前記後面板4の折り曲げとは,同時に行なうようにしても良いが,別々に行なうようにしても良い。
【0050】
この場合,別の製造方法においては,前記前面板3及び前記後面板4を前記側面板2に対して起立するように曲げ加工する前に,これらの上面又は下面に,図6に二点鎖線で示すように,第1の金型Aを密接し,この状態で前記第1の金型Aの横方に配設した第2の金型を上下動することによって,前記前面板3及び前記後面板4の起立曲げ加工と,これら前面板3及び後面板4における各連結片6, 7の曲げ加工とを同時(一挙)に行なうようにすることができる。
【0051】
このようにして,前記前面板3及び前記後面板4を折り曲げることにより,これらにおける各連結板6,7は,前記左右両側面板5における外表面5bに対して,当該連結板6,7が前記外表面5bに予め凹み形成されている凹所8内に嵌まるように重なることになるから,この状態で,前記各連結板6, 7を,前記両側面板5に対してスポット溶接にて接合するのであり,このスポット溶接の痕跡を符号17で示している。
【0052】
これら一例の工程を経ることにより,図1に示す構成の引き出し1を製造することができる。
【0053】
[第2の実施形態]
次に,図9〜図12は,第2の実施の形態による引き出し1′を示している。
【0054】
この第2実施の形態による引き出し1′は,
「金属板製の底面板2′における周囲に,前面板3′,後面板4′,及び左右両側面板5′を一体に連接し,これら前面板3′,後面板4′及び左右両側面板5′を,前記底面板2′に対して起立するように折リ曲げし,前記前面板3′及び後面板4′における左右両端に,前記左右前側面板5′における外表面5b′又は内表面に重ねてスポット溶接にて接合される連結板6′,7′を一体に設けて成る。」
という構成である点において前記第1の実施の形態による引き出し1の場合と同様であるが,以下に述べるように,前記左右両側面板5′における外表面5b′又は内表面に凹み形成する凹所8′の形態において相違している。
【0055】
すなわち,前記左右両側面板5′の外表面5b′又は内表面における凹所8′を,底面から適宜高さH1と,上端縁から適宜高さH2との間の部分に,溝型の断面にして,当該側面板5′の前端から後端にまで全長にわたって延びるように構成したものである。
【0056】
この構成によると,前記側面板5′を前記凹所8′によって段付き状に屈曲する部分が,高さ方向の二箇所,つまり,底部と,上端部との二箇所に設けられることになるから,前記側面板5′の強度を更にアップすることができる。
【0057】
これに加えて,前記左右両側面板5′における外表面5b′は,前記凹所8′の下側の部分と,上側の部分との二箇所において,前記側面板5′の全長にわたって延びるという構成になるから,引き出し1′の出し入れ操作に際しての摩擦抵抗を低減できるとともに,引き出し1′の左右へのガタ付きを低減できる利点がある。
【0058】
そして,この第2の実施の形態による引き出し1′の製造に際しては,前記第1の実施の形態による引き出し1の場合と同様に,
(i) .素材の金属板から底面板2′を,その周囲に,連結板6′付き前面板3′,連結板7′付き後面板4′及び左右両側面板5′を一体に連接して製造する工程。
(ii).前記前面板3′前記後面板4′及び前記左右両側面板5′に対して施す各種の曲げ加工等の工程。
(iii) .前記左右両側面板5′を,前記底面板2′に対して起立するように折り曲げ加工する工程。
(iv) .前記前面板3′における各連結板6′及び前記後面板4′における各連結板7′を,上向きに折り曲げ加工する工程。
(v) .これらに次いで,図12に示すように,前記前面板3′及び後面板4′を,折り曲げ線12′,13′に沿って,前記底面板2′に対して起立するように折り曲げ加工することによって,前記各連結板6′,7′を,前記両側面板5′の外表面5bに重ね合わせる工程。
(vi).前記各連結板6′,7′を,前記両側面板5′に対してスポット溶接にて結合する工程。
を経ることにより製造される。
【0059】
[第3の実施形態]
次に,図13〜図17は,第3の実施の形態による引き出し1″を示している。
【0060】
この第3実施の形態による引き出し1″は,
「金属板製の底面板2″における周囲に,前面板3″,後面板4″,及び左右両側面板5″を一体に連接し,これら前面板3″,後面板4″及び左右両側面板5″を,前記底面板2″に対して起立するように折リ曲げし,前記前面板3″における左右両端に,前記左右前側面板5″における外表面5b″又は内表面に重ねてスポット溶接にて接合される連結板6″を一体に設ける一方,前記左右両側面板5″の後端に,前記後面板4″における外表面4b″又は内表面に重ねてスポット溶接にて接合される連結板7″を一体に設けて成る。」
という構成である。
【0061】
この第3の実施形態の引き出し1″においては,前記左右の両側面板5″に,その内表面側に密着する折り返し板5a″を一体に設けて,この折り返し板5a″を側面板5″に対してスポット溶接にて固着する一方,前記折り返し板5a″の前端を,前記側面板5″よりも前方に突出して,この前端の部分に対して,図13及び図16に示すように,前記前面板3″に一体に設けた連結片6″を重ね合わせてスポット溶接することによって,前記前面板3″と両側面板5″との相互間を連結するという構成にしている。
【0062】
この構成にすることにより,前記折り返し板5a″のうち側面板5″より前方に突出する部分が,前記側面板5″の外表面5b″より凹んだ凹所8″の形態になるから,この凹所8″によって,前記連結板6″が,前記左右両側面5″の外表面5b″から突出することがないか,突出を低くするという構成にできる。
【0063】
なお,前記両側面板5″の内表面側への折り返し板5a″には,前記第1の実施形態の引き出し1の場合と同様に,側面板5″の補強を兼ねて内向きへの凹み溝9″を設け,この凹み溝9″に,複数本の縦溝孔10″を適宜ピッチの間隔で穿設することにより,前記各縦溝孔10″に,引き出し1″における中仕切り板W″を着脱可能に装着できる構成にしている。
【0064】
更に,前記第3の実施形態の引き出し1″においては,前記後面板4″のうち底面板2″から適宜高さH1だけ高い部分を,外表面4b″から適宜寸法だけ内向きに凹ませて凹所8a″を設け,前記両側面板5″の後端に一体に設けた連結片7″を,前記凹所8a″内に嵌めた状態で,前記後面板4″に対して重ね合わせてスポット溶接にすることによって,両側面板5″と後面板4″との相互間を連結するという構成にしている。
【0065】
これにより,前記両側面板5″の後端に一体に設けた連結片7″が,前記後面板4″における外表面4b″から突出する寸法を,前記凹所8a″の深さの分だけ低くすることができるか,或いは,前記連結片7″が前記後面板4″の外表面4b″から突出しないように構成することができる。
【0066】
また,前記第3の実施形態の引き出し1″においては,前記第1の実施形態の引き出し1のように,前面板3に把手孔3bを穿設することに代えて,前記前面板3″の上端を,前向きにL字状に折り曲げることによって把手3b″を設けるという構成にしている。
【0067】
そして,この第3の実施の形態による引き出し1″の製造に際しては,前記第1及び第2の実施の形態による場合と略同様に,少なくとも,
(i).素材の金属板から底面板2″を,その周囲に,連結板6″付き前面板3″,後面板4″及び連結片7″付き左右両側面板5″を一体に連接し,更に,前記側面板5″に折り返し板5a″に一体に連接して製造する工程。
(ii).前記前面板3″,前記後面板4″及び前記左右両側面板5″に対して施す縁曲げ加工,及び前記両側面板5″に対する折り返し板5a″の曲げ加工とスポット溶接,並びに,前記前面板3″に対する把手3b″,前記連結板6″,7″の曲げ加工等の工程。
(iii).次いで,前記後面板4″を,前記底面板2″に対して起立するように折り曲げ加工する工程。
(iv).次いで,前記両側面板5″を,前記底面板2″に対して起立するように折り曲げ加工して,この側面板5″における連結板7″を,前記後面板4″に重ね合わせてスポット溶接する工程。
(v).次いで,前記前面板3″を,前記底面板2″に対して起立するように折り曲げ加
工して,この前面板3″における連結板6″を,前記両側面板5′における折り返し板5a″に重ね合わせてスポット溶接する工程。
を経ることにより製造される。
【符号の説明】
【0068】
1,1′,1″ 引き出し
2,2′,2″ 底面板
3,3′,3″ 前面板
4,4′,4″ 後面板
5,5′,5″ 側面板
5b,5b′,5b″ 側面板の外表面
6,6′,6″ 前面板の連結板
7,7′ 後面板の連結板
7″ 側面板の連結板
8,8′,8″ 凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板製の底面板における周囲に一体に連接した前面板,後面板及び左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げし,前記前面板及び後面板における左右両端に,前記左右両側面板における外表面又は内表面に重ね接合される連結板を一体に設けて成る引き出しにおいて,
前記左右両側面板のうち少なくとも前記各連結片が重ね接合される部分に,前記各連結板が嵌まる凹所が凹み形成され,この凹所内で前記連結板が前記側面板に接合されていることを特徴とする金属板製引き出しの構造。
【請求項2】
金属板製の底面板における周囲に一体に連接した前面板,後面板及び左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げし,前記左右両側面板における後端に,前記後面板における外表面又は内表面に重ね接合される連結板を一体に設けて成る引き出しにおいて,
前記後面板のうち少なくとも前記連結片が重ね接合される部分に,前記連結板が嵌まる凹所が凹み形成され,この凹所内で前記連結板が前記後面板に接合されていることを特徴とする金属板製引き出しの構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記各連結板における前記左右前側面板又は前記後面板への重ね接合が,スポット溶接であることを特徴とする金属板製引き出しの構造。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記凹所は,前記左右両側面板又は前記後面板のうち高さ方向の一部に設けられていることに加えて,前記左右両側面板又は前記後面板における全長にわたって延びる溝型の構成であることを特徴とする金属板製引き出しの構造。
【請求項5】
前記請求項4の記載において,前記溝型構成にした凹所は,前記左右両側面板又は前記後面板のうち前記底面板から適宜寸法だけ高い部位に設けられていることを特徴とする金属板製引き出しの構造。
【請求項6】
前記請求項4の記載において,前記溝型構成にした凹所は,前記左右両側面板又は前記後面板のうち前記底面板に近い部位と,これよりも高い部位との両方に設けられていることを特徴とする金属板製引き出しの構造。
【請求項7】
一枚の金属板にて,底面板の周囲に前面板,後面板及び左右両側面板を一体に連接された展開状態にして製造する工程と,
前記左右両側面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げる工程と,前記前面板及び前記後面板を,前記底面板に対して起立するように折り曲げる工程と,
前記前面板及び後面板の起立折リ曲げ工程よりも前に,これら前面板及び後面板における左右両端に,前記左右両側面板における外表面又は内表面に重ね接合される連結板を一体に設ける工程を備えるとともに,
前記左右両側面板の起立折り曲げ工程よりも前に,当該両側面板のうち,前記各連結板が重ね接合される部分に,前記各連結板が嵌まる凹所を凹み形成する工程を備え,
更に,前記左右両側面板及び前記前面板並びに前記後面板を起立折り曲げしてから,前記各連結板を,前記凹所内で前記側面板に接合する工程を備えている,
ことを特徴とする金属板製引き出しの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−34586(P2013−34586A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171988(P2011−171988)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(504279511)コージ産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】