金属検出機用の試験体
【課題】金属検出機の検出性能を高精度に測定するためのテストピースを提供する。
【解決手段】金属検出機40の性能検査に用いる金属片5と、金属片5を保持する保持部材20と、を備える金属検出機用の試験体10であって、保持部材20を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に金属検出機40に載置されるための基準面(B1、B2)とされ、金属片5が、基準面(B1、B2)から相互に異なる高さ(h1、h2)に保持されており、金属片5の形状が柱状であり、金属片5の長軸方向を示す識別手段33を備えたことを特徴とする金属検出機用の試験体。
【解決手段】金属検出機40の性能検査に用いる金属片5と、金属片5を保持する保持部材20と、を備える金属検出機用の試験体10であって、保持部材20を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に金属検出機40に載置されるための基準面(B1、B2)とされ、金属片5が、基準面(B1、B2)から相互に異なる高さ(h1、h2)に保持されており、金属片5の形状が柱状であり、金属片5の長軸方向を示す識別手段33を備えたことを特徴とする金属検出機用の試験体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属検出機用の試験体に関する。特に、食品等の中に混入した異物を検出する金属検出機用の試験体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に図1に示すように、金属検出機1の金属検出性能を試験するために、試験片(テストピースとも称する)2を試験片単体でまたは検査対象とする食品等の物品と共に金属検出機1の検出部3の中を搬送手段4によって通過させ、金属検出機1の検出信号レベルが所定の範囲となることを確認することにより、金属検出性能の試験が行われている。例えば金属物の通過による磁界変動によってその金属物の存在を検出する金属検出機1は、金属検出機1における高さ方向の通過位置や通過向き(特に細長い針状物に対して)によって検出性能が異なることが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
従来、金属検出機1の金属検出性能の試験に対しては、図2に示すように、平板状の樹脂に所定性状(材質、形状、サイズ)の金属片5を埋設もしくは固着した試験片2が広く用いられている(例えば、特許文献3参照)。特に図1に示した搬送手段4によって物品を搬送しながら検査する金属検出機1について、金属片5の高さに応じた検出性能を種々に試験するときに、平板状の試験片2を発泡スチロール等の樹脂板材でかさ上げすることにより金属片5の高さを変更して試験が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−058113号公報([0006])
【特許文献2】特開平9−080162号公報([0014]〜[0018])
【特許文献3】特開2007−47086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試験時において高さ方向の通過位置ごとに発泡スチロール等の樹脂板材で試験片2をかさ上げしていた場合には、高さ方向の通過位置が不正確になり、金属検出機1の検出性能を高精度に測定することが困難であった。特に食品業界にあっては、食品中への異物混入を防止するため、金属検出機1の検出性能を高精度に測定することは重要な課題となっている。
【0006】
また、発泡スチロール等のかさ上げ部材を生産ラインに持ち込むことは、かさ上げ部材の一部が欠けるなどして異物混入の原因となり、衛生管理上望ましくない。さらに、かさ上げ部材の管理が不十分であると、かさ上げ部材にゴミ等が付着して不衛生になるばかりではなく、ゴミに金属粒等が含まれていると検出性能の試験結果自体が信頼性のないものとなり、金属検出機1の検出性能に対する高精度な測定の妨げとなっていた。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の課題に鑑みてなされたもので、金属検出機の検出性能を高精度に測定するためのテストピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属検出機の性能検査に用いる金属片と、該金属片を保持する保持部材と、を備える金属検出機用の試験体であって、前記保持部材を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、前記複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に前記金属検出機に載置されるための基準面とされ、前記金属片が、前記基準面から相互に異なる高さに保持されており、前記金属片の形状が柱状であり、前記金属片の長軸方向を示す識別手段を備えたことを特徴とする金属検出機用の試験体である。
【0009】
この試験体を使用することにより、金属検出機の検出性能を高精度に測定できる。また、金属検出機に載置させる基準面を変えることで、金属検出機に対する高さ方向の通過位置を変えることができ、高さに応じて試験体を変えて検査の作業を行う必要がないため、作業の手間を省くことができ、試験体の管理が容易になる。
【0010】
さらに発泡スチロール等のかさ上げ部材を生産ラインに持ち込む必要がなくなり、衛生管理上望ましく、金属粒等のゴミが紛れ込む余地が少なくなり、検出性能の試験結果の信頼性が向上する。
【0011】
さらに針状の異物に対応でき、金属片の方向による感度も容易に測定できる。
【0012】
また本発明は、前記保持部材を形成する複数の面の形状が略正多角形である金属検出機用の試験体である。
【0013】
この場合は、保持部材の基準面が正多角形の形状と略同じなので、どのような向きに試験体を金属検出機の搬送コンベア等に載置したとしても、試験体は倒れにくい。
【0014】
また本発明は、前記保持部材が、前記基準面のうちの1つを含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面を含む仮想平面と交わる形状である金属検出機用の試験体である。
【0015】
この場合は、基準面は仮想平面により規定できるので、本発明は、保持部材の実際の面にとらわれず、実施する上で保持部材の肉抜きをして、試験体の質量を軽減させたり、材料のコストを下げたりすることができる。また試験体を反転させなくても、保持部材の基準面を容易に変えることができる。
【0016】
また本発明は、前記識別手段がさらに前記金属片の前記基準面からの高さを示す金属検出機用の試験体である。
【0017】
この場合は、試験体の中に保持されている金属片の高さ等の内容がわかる。
【0018】
また本発明は、前記保持部材が透明または半透明の樹脂である金属検出機用の試験体である。
【0019】
この場合は、保持部材に保持されている金属片の位置や形状等を目視できる。
【0020】
また本発明は、前記識別手段が前記金属片の形状を示す形状を有する金属検出機用の試験体である。
【0021】
この場合は、視覚的・直感的に保持部材に保持されている金属片の内容がわかる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属検出機の試験時に本発明に係る金属検出機用の試験体を用いることにより、金属検出機の検出性能を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の金属検出機の概要を示す斜視図である。
【図2】従来の金属検出機用のテストピースを示す(a)上面図および(b)断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図4】前記試験体における金属片の位置を示す斜視図である。
【図5】前記試験体の図形重心を示す斜視図である。
【図6】前記試験体に貼る識別手段の一例を示す図である。
【図7】前記試験体を用いる金属検出機の概要を示す斜視図である。
【図8】前記金属検出機の横側面図である。
【図9】前記試験体の載置状態を示す横側面図である。
【図10】前記試験体の変形例である試験体の載置状態を示す横側面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図13】前記試験体の変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図15】前記試験体に貼る識別手段の一例を示す図である。
【図16】前記試験体における金属片の位置を示す斜視図である。
【図17】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【図18】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【図19】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【図20】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る金属検出機用の試験体の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図3は本発明の第1の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。本発明の実施の形態に係る金属検出機用の試験体10は、金属検出機の性能検査に用いる金属片5と、金属片5を保持する保持部材20と、金属片5の性状を示す識別手段30とを備えている。
【0026】
金属片5は球状であり、典型的な異物の一形状を模擬している。
【0027】
保持部材20は、図4に示すように、保持部材20を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、この複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に金属検出機に載置されるための基準面(B1、B2、B3)を有し、基準面(B1、B2、B3)から各々相互に異なる高さ(h1、h2、h3)に金属片5を保持するようになっている。そして、保持部材20は、略立方体であり、保持部材20を形成する複数の面(B1、B2、B3)の形状が略正多角形である正方形の形状を有している。
【0028】
また、図5に示すように、保持部材20の図形重心Gが、例えば基準面B1の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B1の図形中心Cと保持部材20の図形重心Gとの距離gが、基準面B1の図形中心Cを通り基準面B1の辺a1および辺a4と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。すなわち、保持部材20をある平面に置いた場合に、その平面の傾きをどの方向に略45度傾けても、保持部材20が略倒れ始める立体形状になっている。要するに、保持部材20は、ある基準面に対して安定で、その基準面からの所定の高さを有するようになっている。なお上述の線分は、図形中心Cを通り基準面B1の辺a1、a2、a3、a4のいずれかと交わっていればよい。したがって線分の長さdは、略辺a1、a2、a3、a4のいずれかの長さから基準面B1の対角線の長さになる。
【0029】
また図5に示したように、保持部材20が、基準面B1、B2、B3のうちの1つ(例えば基準面B1)を含む仮想平面P1が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B2)を含む仮想平面P2と交わる形状であるように形成されている。
【0030】
識別手段30は、図6に示すように例えばラベル30a、30b、30cであり、金属片5の性状である金属片5の材質や形状やサイズや基準面B1、B2、B3からの高さ等を示すようになっている。そして金属片5の性状が表示された面を上にするように、例えばラベル30aが貼られた面を上にして、試験体10を置くと、基準面B1から金属片5までの高さが高さh1になるようになっている。
【0031】
次に、金属片5のサイズは、直径0.5mmである。なお金属片5のサイズは、本実施の形態に限定されず、さらに小さくても大きくてもよい。
【0032】
保持部材20のサイズは、一辺の長さが50mmである。なお保持部材20のサイズは、金属検出機の大きさにより決まり、例えば搬送路からの高さが後述するサーチコイルの中心付近の高さをカバーできることが好ましい。
【0033】
識別手段30であるラベル30a、30b、30cの厚さは、保持部材20の基準面から金属片5までの距離に対して、十分薄くなっている。
【0034】
次に、金属片5の材質は、例えば鉄やステンレスであり、他の金属でもよく、食品等の検査対象に混入しうる材質が好ましい。
【0035】
保持部材20は、透明または半透明の樹脂で非金属の材料からできている。非金属の材料としては、例えば、ポリアミド系合成高分子、アクリル等が挙げられ、欠けにくいといった耐摩耗性があり、軽くて、加工しやすい材質が好ましい。さらに金属片5を保持する位置を安定させるため、外力や温度に対して変形しにくい材質が好ましい。なお、欠けにくいように、保持部材20は面取りされている。
【0036】
ラベル30a、30b、30cは、シート状の樹脂製であり、洗浄や摩擦に対して剥がれにくいように保持部材20に接着剤により貼られている。
【0037】
次に、金属片5の埋め込み方を説明する。
【0038】
まず、樹脂製の保持部材20に対して、金属片5を埋め込む所定の位置からの距離が最も短い基準面から、金属片5の直径と略同じ径のドリル等でその距離分の深さの穴を開ける。接着剤等を穴の底に少し入れ、金属片5をその穴に落とし金属片5の位置を固定する。さらに接着剤を詰め込み、金属片5を保持部材20の中に埋設させる。このように容易に金属片5を所定の位置に保持できるようになっている。
【0039】
次に、本発明の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を利用する金属検出機の一例を示す。
【0040】
図7は、試験体を用いる金属検出機の概要を示す斜視図である。金属検出機40は、食品等の検査対象41を矢印方向に搬送する搬送コンベア42と、搬送コンベア42の搬送路42a上を搬送される食品等の検査対象41に混入している金属異物を検出する検出部43と、検出部43から出力された検出信号に基づいて金属異物の有無を判定する制御部(図示せず)と、金属検出機40を操作するための所定の操作入力を行うと共に情報の表示等を行う操作表示部(図示せず)とを備える。
【0041】
検出部43は、図8に示すように搬送コンベア42を囲むように配置されていて、その内部に検査対象41中の磁気を検出するサーチコイル44を有している。このサーチコイル44の中心付近、すなわちサーチコイル44の高さHの中間辺りが最も感度が低い。
【0042】
金属検出機40は、搬送コンベア42により搬送されてきた検査対象41が検出部43のトンネル中を通過し検出部43の中に金属がある場合には、検出部43のサーチコイル44によって信号を検出する。そして金属検出機40は、その信号に基づき制御部により金属異物の有無を判定し、その結果を操作表示部に表示するようになっている。
【0043】
次に、金属検出機用の試験体の使用法について図面に基づき説明する。
【0044】
まず、所望の金属片5の高さと、検査対象41の大きさ等に適した金属片5の大きさと、製造工程で混入しそうな金属の材質とを含む試験体10を選択する。このとき、識別手段30であるラベル30a、30b、30cにより、金属片5の性状を確認する。なお保持部材20により保持されている金属片5の高さの選択については後述する。
【0045】
そして図7に示したように、検査対象41が搬送されている搬送コンベア42の搬送路42a上に試験体10を載置する。このとき、検査を行いたい高さが表示されたラベル30a等が貼られた面を上にするように、試験体10を搬送路42a上に載置する。例えば、図9(a)に示すように金属片5の高さが高さh1=10mmになるように載置する。ここで、搬送コンベア42を運転させたまま、試験体10は載置される。
【0046】
そして試験体10は検査対象41と共に搬送され、検出部43の中を通過する。検出部43のサーチコイル44の感度が正常であるならば、金属片5が検出される。検出されない場合は、搬送コンベア42を止め、サーチコイル44の感度を調節し、再度、試験体10を通過させ調整を行う。
【0047】
これらの調整動作を他の金属片5の高さでも行う。例えば、図9(b)および(c)に示すように、試験体10の保持部材20の基準面を変えて、基準面からの高さを高さh2=30mmや高さh3=2mmにして、搬送路42a上に載置させる。このように試験体10は搬送路42a上に載置させる基準面を変えるだけで、金属片5の高さを変えることができるようになっている。
【0048】
また、図7や図8に示されたように、検査対象41が重なり合うことがある。そのため、金属片5の高さは、搬送路42a上からの検査対象41の高さにおいて想定される上限付近の高さと、検査対象41の厚み分の高さと、搬送路42a付近の高さ等とであることが好ましい。
【0049】
以上、本実施の形態に係る金属検出機用の試験体10を用いることにより、金属検出機40における高さ方向の通過位置まで検査できるので、金属検出機40の検出性能を高精度に測定することができる。すなわち保持部材20により搬送路42aの面から所定の高さに金属片5を保持でき、サーチコイル44の中心付近の位置まで検査できるので、金属検出機40の検出性能を高精度に測定することができる。しかも、かさ上げ部材でかさ上げをする必要がないため、測定を繰り返す場合に高さ方向の通過位置のばらつきがなく正確に金属検出機40の検出性能を測定することができる。
【0050】
また、基準面B1、B2、B3が正方形の形状と略同じ形状であるため、どのような向きに試験体10を搬送コンベア42に置いたとしても、加速に対して試験体10は倒れにくい。また搬送コンベア42に振動があっても、どの向きに対しても安定した状態で載置できる。そして搬送コンベア42に載置する際、向きを考慮せず試験体10を載置できる。
【0051】
また保持部材20の図形重心Gが、基準面(B1、B2、B3)の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面(B1、B2、B3)の図形中心Cと保持部材20の図形重心Gとの各距離gが、基準面(B1、B2、B3)の図形中心Cを通り基準面(B1、B2、B3)の辺と交わる線分の長さdの略半分であるため、試験体10の重心が低く、搬送コンベア42に載置する際、特に倒れにくい。
【0052】
保持部材20が、基準面B1、B2、B3のうちの1つ(例えば基準面B1)を含む仮想平面P1が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B2)を含む仮想平面P2と交わる形状であることにより、基準面は仮想平面によって規定できるので、保持部材の実平面にとらわれず、実施する上で保持部材の肉抜きをして、試験体の質量を軽減させたり、材料のコストを下げたりすることができる。また、各基準面B1、B2、B3を含む各仮想平面が互いに直交するように金属片5の位置が設定されているので、ラベル30a、30b、30cを貼る面は、各々基準面B1、B2、B3に対向する面になり、ラベルの厚さが金属片5の保持される位置に影響を与えない。さらに試験体10を反転させなくても、搬送路42aに載置させる保持部材20の基準面B1、B2、B3を容易に変えることができる。
【0053】
また、搬送路42aに載置させる保持部材20の基準面B1、B2、B3を変えるだけで、容易に搬送路42aからの金属片5の高さを正確に変えることができる。さらに1つの試験体10で金属検出機40における複数の高さ方向の通過位置の検査ができるため、高さごとに試験体を変えて検査の作業を行う必要がないため、作業の手間を省くことができる。そして試験体10の個数が少なくて済むので、試験体10の管理が容易になる。
【0054】
また、図10に示すように、基準面B1、B2、B3に対向した面も基準面にできる。すなわち、保持部材20のサイズが一辺の長さが50mmであるので、一辺の長さ50mmと各高さh1、h2、h3との差が、各々高さ40mm、20mm、48mmとなり、1つの試験体10で6つの高さのテストが実施できる。
【0055】
また、発泡スチロール等のかさ上げ部材を生産ラインに持ち込む必要がなくなり、かさ上げ部材の一部が欠けたり、かさ上げ部材にゴミ等が付着したりするなどという異物混入がなくなり、衛生管理上望ましくなる。さらに、試験体10は洗浄しやすく、管理する個数も少ないため、衛生上の管理も容易になる。したがって金属粒等のゴミが紛れ込む余地が少なくなり、検出性能の試験結果の信頼性が向上する。
【0056】
また、保持部材20が透明または半透明の樹脂であるため、保持部材20の中に封入されている金属片5の位置や形状等を目視できる。さらに識別手段30であるラベル30a、30b、30cにより、保持部材20に封入されている金属片5の保持された高さや材質等の性状が明確になり、金属検出機40の検出性能の測定の際に試験体10を誤った基準面等で使用する場合を防止できる。また、載置した基準面B1、B2、B3に対してラベル30a、30b、30cを保持部材20の上面に貼ることで、金属片5の性状が確認しやすくなる。
【0057】
なお、保持部材20により保持される金属片5の位置は、搬送路42a上を搬送される食品等の検査対象41の大きさや種類等、または、金属検出機40の検出部43のトンネルの大きさ、サーチコイル44のタイプや大きさ等によって、変えてもよい。
【0058】
また、識別手段30は、ラベル30a、30b、30cの他に、保持部材20に金属片5の性状を刻印しても、インク等で直接書き込んでもよく、外部から金属片5の性状が確認できればよい。
【0059】
なお、金属検出機用の試験体10の使用法として、金属検出機40が検査対象41の搬送中における使用法を説明したが、検査対象41の搬送中でなくてもよい。通常、金属検出機40を始動させる午前、午後の始業時等の検査対象41を搬送する前にも、金属検出機40の検出性能の測定を行い、サーチコイルの感度等の調整が行われている。また検査対象を変えたときもサーチコイルの感度等の調整が必要なため、検出性能の測定が行われる。なお金属検出機40の運転し始めと運転途中では、金属検出機40の温まり具合や環境の温度等によりサーチコイルの感度等が異なることがあるので、高精度に検出性能を保つため、検査対象41の搬送中でも測定が行われる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図11は本発明の第2の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【0061】
なお、本実施の形態は金属片の形状と識別手段の表示内容とが異なるものの、他の構成については第1の実施の形態とほぼ同様であるので、同一又はそれに相当する構成については図3〜図10に示したものと同一符号で示し、相違点について詳述する。
【0062】
図11(a)に示すように、金属検出機用の試験体10の保持部材20に保持されている金属片6の形状は円柱状である。また図11(b)および図11(c)に示すように、識別手段31のラベル31a、31bは、金属片6の材質(Fe)、断面形状の直径と長軸方向の長さ(φ0.3×1mm)、および、ラベル31aが貼られた方向から見た場合における金属片6の形状を図示している構成になっている。ラベル31aは、ラベル31a上に図示された金属片6の形状の長軸方向と、保持部材20に埋設された金属片6の長軸方向とが略一致するような位置に貼られる。そして、ラベル31bは、ラベル31b上に図示された金属片6の断面形状と、保持部材20に埋設された金属片6の断面とが略重なる位置に貼られる。
【0063】
次に、金属片6の埋め込み方を説明する。
【0064】
まず、樹脂製の保持部材20に対して、金属片6の直径をほぼ同じ径のドリルで、穴を所定の深さまで開ける。接着剤等を穴の底に少し入れ、金属片6をその穴に入れ、金属片6の位置を固定する。さらに接着剤を詰め込み、金属片6を保持部材20の中に埋設させる。このように容易に金属片6を所定の位置に保持できるようになっている。
【0065】
次に、本実施の形態に係る試験体の使用法について説明する。なお、本実施の形態は、金属片6が埋設された試験体10の向きにより、金属検出機の感度と識別手段の表示内容とが異なるものの、基本的な使用法は第1の実施の形態とほぼ同様であるので、相違点について詳述する。
【0066】
まず、図7に示したような金属検出機40の検出部43の大きさや検査対象41の大きさ等に合わせて、所望の金属片6の高さを有する試験体10を選択する。
【0067】
搬送コンベア42の搬送路42a上に試験体10を載置する際、所望の金属片6の高さの基準面が下になるように試験体10を載置する。このとき、金属片6の長軸方向が図示されたラベル31a、31bを見て確認しながら、サーチコイル44の向きを考慮して試験体10を載置する。例えば、金属片6の長軸方向が搬送方向に対して直角または水平になるように試験体10を載置する。
【0068】
そして、サーチコイル44の中を通過させ、金属片6の形状の向きに合わせたサーチコイル44の感度調整等ができるようになっている。
【0069】
以上、本実施の形態に係る金属検出機用の試験体10を用いることにより、ラベル31a、31bに図示された金属片6の形状の向きに合わせて、試験体10の載置の向きを変えるだけで、搬送コンベア42の搬送路42aからの高さ方向を加味して、金属片6の方向による金属検出機40の検出性能を容易にかつ高精度に測定できる。
【0070】
このような柱状の金属片6を用いることで、針状の異物に対する金属検出機40の検出性能を容易にかつ高精度に測定できる。
【0071】
また、金属片6が柱状で、金属片6の方向による金属検出機40の検出性能を測定する必要上、試験体10の載置の向きを変える必要がある。基準面B1、B2の形状において、辺の長さが極端に長い長方形の場合は、試験体10を載置させる向きにより、転倒に対する安定度が異なってくるため、試験体10を載置させる際に、置き方に注意する必要がある。しかし、本実施の形態は、基準面B1、B2が正方形の形状と略同じ形状であるため、試験体10を載置させる際に、転倒しないようにさほど置き方に注意する必要がない。
【0072】
また、金属片6の長軸方向がラベル31a、31bに図示されているので、容易に正確に試験体10を載置できる。また、搬送路42aに載置させる保持部材20の基準面B1、B2を変えるだけで、容易に搬送路42aからの金属片6の高さを正確に変えることができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
図12および図13は本発明の第3の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。なお、本実施の形態は識別手段の表示方法が異なるものの、他の構成については第1や第2の実施の形態とほぼ同様であるので、同一又はそれに相当する構成については図3〜図11に示したものと同一符号で示し、相違点について詳述する。
【0074】
図12に示すように、試験体10の識別手段32が金属片5の形状を示す形状、すなわち円形状になっている。そして保持部材20の樹脂の色と異なる非透明に着色されている。識別手段32は、シート状で、保持部材20の表面に貼るようになっている。
【0075】
識別手段32の円の大きさにより、保持されている金属片5の直径を表し、識別手段32の色により、金属片5の材質を区別している。
【0076】
また図13に示すように、試験体10の識別手段33が金属片6の形状を示す形状、すなわち円柱状を表した形状になっている。識別手段33の形状の長軸方向が、金属片6の長軸方向を示すようになっている。
【0077】
識別手段33の形状の長さにより、保持されている金属片6の長軸方向の長さを表し、識別手段33の色により、金属片6の材質を区別している。
【0078】
このように本実施の形態により、視覚的・直感的に金属片の性状の内容を把握することができ、誤った試験体10で金属検出機40の検出性能を測定することが防止できる。
【0079】
(第4の実施の形態)
図14は本発明の第4の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【0080】
なお、本実施の形態は保持部材の形状が異なるものの、他の構成については第1の実施の形態とほぼ同様であるので、同一又はそれに相当する構成については図3〜図10に示したものと同一符号で示し、相違点について詳述する。
【0081】
図14に示すように、金属検出機用の試験体11における保持部材21の形状が、略正四面体である。試験体11の識別手段34のラベル34a、34b、34cには、図15に示すように、ラベル34a、34b、34cが貼られた基準面B4、B5、B6から金属片5までの各距離が表示されている。
【0082】
図16に示すように、保持部材21は、正多角形である正三角形の形状と略同じ形状の少なくとも2つの基準面(B4、B5、B6)を有し、基準面(B4、B5、B6)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0083】
また、保持部材20の図形重心Gが、例えば基準面B4の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B4の図形中心Cと保持部材21の図形重心Gとの距離gが、基準面B4の図形中心Cを通り基準面B4の辺a5および辺a6と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。ここで、線分の長さdは、基準面B4の図形中心Cを通り辺a5、a6、a7のいずれかと交わる線分の長さである。
【0084】
また保持部材21は、基準面B4、B5、B6のうち1つが他の少なくとも1つの基準面と交わるように、例えば基準面B4またはB5を含む仮想平面が形成されるようになっている。
【0085】
以上のような保持部材21の形状でも、第1の実施の形態と同じような効果を実現できる。
【0086】
なお、図17から図20に示すように、保持部材の立体形状として、さまざまな立体形状を用いることができる。
【0087】
図17に示すように、金属検出機用の試験体12の保持部材22の形状は、立方体に近い直方体でも良い。すなわち、保持部材22は、正多角形である正方形の形状と略同じ少なくとも2つの基準面(B7、B8、B9)を有し、基準面(B7、B8、B9)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0088】
また保持部材22の図形重心Gが、例えば基準面B7の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B7の図形中心Cと保持部材22の図形重心Gとの距離gが、基準面B7の図形中心Cを通り例えば基準面B7の辺a8および辺a9と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0089】
また保持部材22は、基準面B7、B8、B9のうちの1つ(例えば基準面B7)を含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B8)を含む仮想平面と交わる形状であるように形成されている。
【0090】
図18に示すように、金属検出機用の試験体13の保持部材23の形状は、三角柱でも良い。すなわち、保持部材23は、正多角形である正方形や正三角形の形状と略同じ少なくとも2つの基準面(B10、B11、B12)を有し、基準面(B10、B11、B12)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0091】
また保持部材23の図形重心Gが、例えば基準面B10の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B10の図形中心Cと保持部材23の図形重心Gとの距離gが、例えば基準面B10の図形中心Cを通り基準面B10の辺a10および辺a11と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0092】
また保持部材23は、基準面B10、B11、B12のうちの1つ(例えば基準面B10)を含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B11)を含む仮想平面と交わる形状であるように形成されている。
【0093】
図19に示すように、金属検出機用の試験体14の保持部材24の形状は、円柱でも良い。すなわち、保持部材24は、無限の正多角形である円の形状と略同じ2つの基準面B13、B14を有し、基準面B13、B14から各々相互に異なる高さh1、h2に金属片5を保持するようになっている。
【0094】
また保持部材24の図形重心Gが、例えば基準面B13の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B13の図形中心Cと保持部材24の図形重心Gとの距離gが、基準面B13の図形中心Cを通り基準面B13の円周と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0095】
図20に示すように、金属検出機用の試験体15の保持部材25の形状は、基準面が台形の四角柱でも良い。すなわち、保持部材25は、正多角形である正方形の形状と略同じ形状の少なくとも2つの基準面(B15、B16、B17)を有し、基準面(B15、B16、B17)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0096】
また保持部材25の図形重心Gが、例えば基準面B15の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B15の図形中心Cと保持部材25の図形重心Gとの距離gが、基準面B15の図形中心Cを通り例えば基準面B15の辺a12および辺a13と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0097】
また保持部材25は、基準面B15、B16、B17のうちの1つ(例えば基準面B15)を含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B16)を含む仮想平面と交わる形状であるように形成されている。
【0098】
保持部材が以上のような形状であっても、上述の実施の形態と同じような効果を実現できる。
【0099】
なお、図7に示した検出部43は、検出部43の入り口付近に配置され、検査対象41に直流磁界を印加するための1対の直流磁界印加用磁石と、1対の直流磁界印加用磁石の近傍に配置され、1対の直流磁界印加用磁石の両磁極間を検査対象41が通過する際に起こる磁界分布の変化を検出する1対の磁界分布変化検出コイルとをさらに備えてもよい。また検出部43は、渦電流方式でもよい。
【0100】
また図8に示したサーチコイル44は、いわゆる垂直型であるが、水平型のサーチコイルを搬送路42aの上下に配置してもよい。この場合、搬送路42aの上下に設置された水平型のサーチコイル間の中間付近における金属検出機の検出性能を測定できるような金属片の高さを有する試験体が好ましい。
【0101】
また、検査対象の搬送方法は、図7に示した搬送コンベアの他に、傾斜面を下らせる方法でもよい。また、検査対象は、食品に限られず、薬等錠剤でもよい。
【0102】
また、試験体における保持部材の基準面は、平面でなくてもよい。例えば基準面を凹ませたような形状でもよい。このとき保持部材の各頂点により基準面の仮想平面が規定されている。この場合、保持部材の肉抜きができ、試験体の質量を軽減させ、材料のコストを下げることができる。
【0103】
また、各実施の形態について記載した保持部材への金属片の埋め込み方については、保持部材や金属片の大きさや形状に応じて適宜変更することが可能であり、標準的な試験体を量産するにあたっては保持部材を金型成形することが好適で、均質かつ安価な試験体を提供できることは言うまでもない。ただし、金属片の埋め込み方や保持部材の成形方法はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0104】
5、6 金属片
10、11、12、13、14、15 金属検出機用の試験体
20、21、22、23、24、25 保持部材
30、31、32、33、34 識別手段
30a、30b、30c、31a、31b、34a、34b、34c ラベル
40 金属検出機
P1、P2 仮想平面
B1〜B15 基準面
a1〜a13 辺
C 図形中心
G 図形重心
d 線分の長さ
g 距離
h1、h2、h3 高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属検出機用の試験体に関する。特に、食品等の中に混入した異物を検出する金属検出機用の試験体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に図1に示すように、金属検出機1の金属検出性能を試験するために、試験片(テストピースとも称する)2を試験片単体でまたは検査対象とする食品等の物品と共に金属検出機1の検出部3の中を搬送手段4によって通過させ、金属検出機1の検出信号レベルが所定の範囲となることを確認することにより、金属検出性能の試験が行われている。例えば金属物の通過による磁界変動によってその金属物の存在を検出する金属検出機1は、金属検出機1における高さ方向の通過位置や通過向き(特に細長い針状物に対して)によって検出性能が異なることが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
従来、金属検出機1の金属検出性能の試験に対しては、図2に示すように、平板状の樹脂に所定性状(材質、形状、サイズ)の金属片5を埋設もしくは固着した試験片2が広く用いられている(例えば、特許文献3参照)。特に図1に示した搬送手段4によって物品を搬送しながら検査する金属検出機1について、金属片5の高さに応じた検出性能を種々に試験するときに、平板状の試験片2を発泡スチロール等の樹脂板材でかさ上げすることにより金属片5の高さを変更して試験が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−058113号公報([0006])
【特許文献2】特開平9−080162号公報([0014]〜[0018])
【特許文献3】特開2007−47086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試験時において高さ方向の通過位置ごとに発泡スチロール等の樹脂板材で試験片2をかさ上げしていた場合には、高さ方向の通過位置が不正確になり、金属検出機1の検出性能を高精度に測定することが困難であった。特に食品業界にあっては、食品中への異物混入を防止するため、金属検出機1の検出性能を高精度に測定することは重要な課題となっている。
【0006】
また、発泡スチロール等のかさ上げ部材を生産ラインに持ち込むことは、かさ上げ部材の一部が欠けるなどして異物混入の原因となり、衛生管理上望ましくない。さらに、かさ上げ部材の管理が不十分であると、かさ上げ部材にゴミ等が付着して不衛生になるばかりではなく、ゴミに金属粒等が含まれていると検出性能の試験結果自体が信頼性のないものとなり、金属検出機1の検出性能に対する高精度な測定の妨げとなっていた。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の課題に鑑みてなされたもので、金属検出機の検出性能を高精度に測定するためのテストピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属検出機の性能検査に用いる金属片と、該金属片を保持する保持部材と、を備える金属検出機用の試験体であって、前記保持部材を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、前記複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に前記金属検出機に載置されるための基準面とされ、前記金属片が、前記基準面から相互に異なる高さに保持されており、前記金属片の形状が柱状であり、前記金属片の長軸方向を示す識別手段を備えたことを特徴とする金属検出機用の試験体である。
【0009】
この試験体を使用することにより、金属検出機の検出性能を高精度に測定できる。また、金属検出機に載置させる基準面を変えることで、金属検出機に対する高さ方向の通過位置を変えることができ、高さに応じて試験体を変えて検査の作業を行う必要がないため、作業の手間を省くことができ、試験体の管理が容易になる。
【0010】
さらに発泡スチロール等のかさ上げ部材を生産ラインに持ち込む必要がなくなり、衛生管理上望ましく、金属粒等のゴミが紛れ込む余地が少なくなり、検出性能の試験結果の信頼性が向上する。
【0011】
さらに針状の異物に対応でき、金属片の方向による感度も容易に測定できる。
【0012】
また本発明は、前記保持部材を形成する複数の面の形状が略正多角形である金属検出機用の試験体である。
【0013】
この場合は、保持部材の基準面が正多角形の形状と略同じなので、どのような向きに試験体を金属検出機の搬送コンベア等に載置したとしても、試験体は倒れにくい。
【0014】
また本発明は、前記保持部材が、前記基準面のうちの1つを含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面を含む仮想平面と交わる形状である金属検出機用の試験体である。
【0015】
この場合は、基準面は仮想平面により規定できるので、本発明は、保持部材の実際の面にとらわれず、実施する上で保持部材の肉抜きをして、試験体の質量を軽減させたり、材料のコストを下げたりすることができる。また試験体を反転させなくても、保持部材の基準面を容易に変えることができる。
【0016】
また本発明は、前記識別手段がさらに前記金属片の前記基準面からの高さを示す金属検出機用の試験体である。
【0017】
この場合は、試験体の中に保持されている金属片の高さ等の内容がわかる。
【0018】
また本発明は、前記保持部材が透明または半透明の樹脂である金属検出機用の試験体である。
【0019】
この場合は、保持部材に保持されている金属片の位置や形状等を目視できる。
【0020】
また本発明は、前記識別手段が前記金属片の形状を示す形状を有する金属検出機用の試験体である。
【0021】
この場合は、視覚的・直感的に保持部材に保持されている金属片の内容がわかる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属検出機の試験時に本発明に係る金属検出機用の試験体を用いることにより、金属検出機の検出性能を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の金属検出機の概要を示す斜視図である。
【図2】従来の金属検出機用のテストピースを示す(a)上面図および(b)断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図4】前記試験体における金属片の位置を示す斜視図である。
【図5】前記試験体の図形重心を示す斜視図である。
【図6】前記試験体に貼る識別手段の一例を示す図である。
【図7】前記試験体を用いる金属検出機の概要を示す斜視図である。
【図8】前記金属検出機の横側面図である。
【図9】前記試験体の載置状態を示す横側面図である。
【図10】前記試験体の変形例である試験体の載置状態を示す横側面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図13】前記試験体の変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【図15】前記試験体に貼る識別手段の一例を示す図である。
【図16】前記試験体における金属片の位置を示す斜視図である。
【図17】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【図18】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【図19】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【図20】前記金属検出機用の試験体における他の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る金属検出機用の試験体の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図3は本発明の第1の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。本発明の実施の形態に係る金属検出機用の試験体10は、金属検出機の性能検査に用いる金属片5と、金属片5を保持する保持部材20と、金属片5の性状を示す識別手段30とを備えている。
【0026】
金属片5は球状であり、典型的な異物の一形状を模擬している。
【0027】
保持部材20は、図4に示すように、保持部材20を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、この複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に金属検出機に載置されるための基準面(B1、B2、B3)を有し、基準面(B1、B2、B3)から各々相互に異なる高さ(h1、h2、h3)に金属片5を保持するようになっている。そして、保持部材20は、略立方体であり、保持部材20を形成する複数の面(B1、B2、B3)の形状が略正多角形である正方形の形状を有している。
【0028】
また、図5に示すように、保持部材20の図形重心Gが、例えば基準面B1の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B1の図形中心Cと保持部材20の図形重心Gとの距離gが、基準面B1の図形中心Cを通り基準面B1の辺a1および辺a4と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。すなわち、保持部材20をある平面に置いた場合に、その平面の傾きをどの方向に略45度傾けても、保持部材20が略倒れ始める立体形状になっている。要するに、保持部材20は、ある基準面に対して安定で、その基準面からの所定の高さを有するようになっている。なお上述の線分は、図形中心Cを通り基準面B1の辺a1、a2、a3、a4のいずれかと交わっていればよい。したがって線分の長さdは、略辺a1、a2、a3、a4のいずれかの長さから基準面B1の対角線の長さになる。
【0029】
また図5に示したように、保持部材20が、基準面B1、B2、B3のうちの1つ(例えば基準面B1)を含む仮想平面P1が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B2)を含む仮想平面P2と交わる形状であるように形成されている。
【0030】
識別手段30は、図6に示すように例えばラベル30a、30b、30cであり、金属片5の性状である金属片5の材質や形状やサイズや基準面B1、B2、B3からの高さ等を示すようになっている。そして金属片5の性状が表示された面を上にするように、例えばラベル30aが貼られた面を上にして、試験体10を置くと、基準面B1から金属片5までの高さが高さh1になるようになっている。
【0031】
次に、金属片5のサイズは、直径0.5mmである。なお金属片5のサイズは、本実施の形態に限定されず、さらに小さくても大きくてもよい。
【0032】
保持部材20のサイズは、一辺の長さが50mmである。なお保持部材20のサイズは、金属検出機の大きさにより決まり、例えば搬送路からの高さが後述するサーチコイルの中心付近の高さをカバーできることが好ましい。
【0033】
識別手段30であるラベル30a、30b、30cの厚さは、保持部材20の基準面から金属片5までの距離に対して、十分薄くなっている。
【0034】
次に、金属片5の材質は、例えば鉄やステンレスであり、他の金属でもよく、食品等の検査対象に混入しうる材質が好ましい。
【0035】
保持部材20は、透明または半透明の樹脂で非金属の材料からできている。非金属の材料としては、例えば、ポリアミド系合成高分子、アクリル等が挙げられ、欠けにくいといった耐摩耗性があり、軽くて、加工しやすい材質が好ましい。さらに金属片5を保持する位置を安定させるため、外力や温度に対して変形しにくい材質が好ましい。なお、欠けにくいように、保持部材20は面取りされている。
【0036】
ラベル30a、30b、30cは、シート状の樹脂製であり、洗浄や摩擦に対して剥がれにくいように保持部材20に接着剤により貼られている。
【0037】
次に、金属片5の埋め込み方を説明する。
【0038】
まず、樹脂製の保持部材20に対して、金属片5を埋め込む所定の位置からの距離が最も短い基準面から、金属片5の直径と略同じ径のドリル等でその距離分の深さの穴を開ける。接着剤等を穴の底に少し入れ、金属片5をその穴に落とし金属片5の位置を固定する。さらに接着剤を詰め込み、金属片5を保持部材20の中に埋設させる。このように容易に金属片5を所定の位置に保持できるようになっている。
【0039】
次に、本発明の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を利用する金属検出機の一例を示す。
【0040】
図7は、試験体を用いる金属検出機の概要を示す斜視図である。金属検出機40は、食品等の検査対象41を矢印方向に搬送する搬送コンベア42と、搬送コンベア42の搬送路42a上を搬送される食品等の検査対象41に混入している金属異物を検出する検出部43と、検出部43から出力された検出信号に基づいて金属異物の有無を判定する制御部(図示せず)と、金属検出機40を操作するための所定の操作入力を行うと共に情報の表示等を行う操作表示部(図示せず)とを備える。
【0041】
検出部43は、図8に示すように搬送コンベア42を囲むように配置されていて、その内部に検査対象41中の磁気を検出するサーチコイル44を有している。このサーチコイル44の中心付近、すなわちサーチコイル44の高さHの中間辺りが最も感度が低い。
【0042】
金属検出機40は、搬送コンベア42により搬送されてきた検査対象41が検出部43のトンネル中を通過し検出部43の中に金属がある場合には、検出部43のサーチコイル44によって信号を検出する。そして金属検出機40は、その信号に基づき制御部により金属異物の有無を判定し、その結果を操作表示部に表示するようになっている。
【0043】
次に、金属検出機用の試験体の使用法について図面に基づき説明する。
【0044】
まず、所望の金属片5の高さと、検査対象41の大きさ等に適した金属片5の大きさと、製造工程で混入しそうな金属の材質とを含む試験体10を選択する。このとき、識別手段30であるラベル30a、30b、30cにより、金属片5の性状を確認する。なお保持部材20により保持されている金属片5の高さの選択については後述する。
【0045】
そして図7に示したように、検査対象41が搬送されている搬送コンベア42の搬送路42a上に試験体10を載置する。このとき、検査を行いたい高さが表示されたラベル30a等が貼られた面を上にするように、試験体10を搬送路42a上に載置する。例えば、図9(a)に示すように金属片5の高さが高さh1=10mmになるように載置する。ここで、搬送コンベア42を運転させたまま、試験体10は載置される。
【0046】
そして試験体10は検査対象41と共に搬送され、検出部43の中を通過する。検出部43のサーチコイル44の感度が正常であるならば、金属片5が検出される。検出されない場合は、搬送コンベア42を止め、サーチコイル44の感度を調節し、再度、試験体10を通過させ調整を行う。
【0047】
これらの調整動作を他の金属片5の高さでも行う。例えば、図9(b)および(c)に示すように、試験体10の保持部材20の基準面を変えて、基準面からの高さを高さh2=30mmや高さh3=2mmにして、搬送路42a上に載置させる。このように試験体10は搬送路42a上に載置させる基準面を変えるだけで、金属片5の高さを変えることができるようになっている。
【0048】
また、図7や図8に示されたように、検査対象41が重なり合うことがある。そのため、金属片5の高さは、搬送路42a上からの検査対象41の高さにおいて想定される上限付近の高さと、検査対象41の厚み分の高さと、搬送路42a付近の高さ等とであることが好ましい。
【0049】
以上、本実施の形態に係る金属検出機用の試験体10を用いることにより、金属検出機40における高さ方向の通過位置まで検査できるので、金属検出機40の検出性能を高精度に測定することができる。すなわち保持部材20により搬送路42aの面から所定の高さに金属片5を保持でき、サーチコイル44の中心付近の位置まで検査できるので、金属検出機40の検出性能を高精度に測定することができる。しかも、かさ上げ部材でかさ上げをする必要がないため、測定を繰り返す場合に高さ方向の通過位置のばらつきがなく正確に金属検出機40の検出性能を測定することができる。
【0050】
また、基準面B1、B2、B3が正方形の形状と略同じ形状であるため、どのような向きに試験体10を搬送コンベア42に置いたとしても、加速に対して試験体10は倒れにくい。また搬送コンベア42に振動があっても、どの向きに対しても安定した状態で載置できる。そして搬送コンベア42に載置する際、向きを考慮せず試験体10を載置できる。
【0051】
また保持部材20の図形重心Gが、基準面(B1、B2、B3)の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面(B1、B2、B3)の図形中心Cと保持部材20の図形重心Gとの各距離gが、基準面(B1、B2、B3)の図形中心Cを通り基準面(B1、B2、B3)の辺と交わる線分の長さdの略半分であるため、試験体10の重心が低く、搬送コンベア42に載置する際、特に倒れにくい。
【0052】
保持部材20が、基準面B1、B2、B3のうちの1つ(例えば基準面B1)を含む仮想平面P1が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B2)を含む仮想平面P2と交わる形状であることにより、基準面は仮想平面によって規定できるので、保持部材の実平面にとらわれず、実施する上で保持部材の肉抜きをして、試験体の質量を軽減させたり、材料のコストを下げたりすることができる。また、各基準面B1、B2、B3を含む各仮想平面が互いに直交するように金属片5の位置が設定されているので、ラベル30a、30b、30cを貼る面は、各々基準面B1、B2、B3に対向する面になり、ラベルの厚さが金属片5の保持される位置に影響を与えない。さらに試験体10を反転させなくても、搬送路42aに載置させる保持部材20の基準面B1、B2、B3を容易に変えることができる。
【0053】
また、搬送路42aに載置させる保持部材20の基準面B1、B2、B3を変えるだけで、容易に搬送路42aからの金属片5の高さを正確に変えることができる。さらに1つの試験体10で金属検出機40における複数の高さ方向の通過位置の検査ができるため、高さごとに試験体を変えて検査の作業を行う必要がないため、作業の手間を省くことができる。そして試験体10の個数が少なくて済むので、試験体10の管理が容易になる。
【0054】
また、図10に示すように、基準面B1、B2、B3に対向した面も基準面にできる。すなわち、保持部材20のサイズが一辺の長さが50mmであるので、一辺の長さ50mmと各高さh1、h2、h3との差が、各々高さ40mm、20mm、48mmとなり、1つの試験体10で6つの高さのテストが実施できる。
【0055】
また、発泡スチロール等のかさ上げ部材を生産ラインに持ち込む必要がなくなり、かさ上げ部材の一部が欠けたり、かさ上げ部材にゴミ等が付着したりするなどという異物混入がなくなり、衛生管理上望ましくなる。さらに、試験体10は洗浄しやすく、管理する個数も少ないため、衛生上の管理も容易になる。したがって金属粒等のゴミが紛れ込む余地が少なくなり、検出性能の試験結果の信頼性が向上する。
【0056】
また、保持部材20が透明または半透明の樹脂であるため、保持部材20の中に封入されている金属片5の位置や形状等を目視できる。さらに識別手段30であるラベル30a、30b、30cにより、保持部材20に封入されている金属片5の保持された高さや材質等の性状が明確になり、金属検出機40の検出性能の測定の際に試験体10を誤った基準面等で使用する場合を防止できる。また、載置した基準面B1、B2、B3に対してラベル30a、30b、30cを保持部材20の上面に貼ることで、金属片5の性状が確認しやすくなる。
【0057】
なお、保持部材20により保持される金属片5の位置は、搬送路42a上を搬送される食品等の検査対象41の大きさや種類等、または、金属検出機40の検出部43のトンネルの大きさ、サーチコイル44のタイプや大きさ等によって、変えてもよい。
【0058】
また、識別手段30は、ラベル30a、30b、30cの他に、保持部材20に金属片5の性状を刻印しても、インク等で直接書き込んでもよく、外部から金属片5の性状が確認できればよい。
【0059】
なお、金属検出機用の試験体10の使用法として、金属検出機40が検査対象41の搬送中における使用法を説明したが、検査対象41の搬送中でなくてもよい。通常、金属検出機40を始動させる午前、午後の始業時等の検査対象41を搬送する前にも、金属検出機40の検出性能の測定を行い、サーチコイルの感度等の調整が行われている。また検査対象を変えたときもサーチコイルの感度等の調整が必要なため、検出性能の測定が行われる。なお金属検出機40の運転し始めと運転途中では、金属検出機40の温まり具合や環境の温度等によりサーチコイルの感度等が異なることがあるので、高精度に検出性能を保つため、検査対象41の搬送中でも測定が行われる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図11は本発明の第2の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【0061】
なお、本実施の形態は金属片の形状と識別手段の表示内容とが異なるものの、他の構成については第1の実施の形態とほぼ同様であるので、同一又はそれに相当する構成については図3〜図10に示したものと同一符号で示し、相違点について詳述する。
【0062】
図11(a)に示すように、金属検出機用の試験体10の保持部材20に保持されている金属片6の形状は円柱状である。また図11(b)および図11(c)に示すように、識別手段31のラベル31a、31bは、金属片6の材質(Fe)、断面形状の直径と長軸方向の長さ(φ0.3×1mm)、および、ラベル31aが貼られた方向から見た場合における金属片6の形状を図示している構成になっている。ラベル31aは、ラベル31a上に図示された金属片6の形状の長軸方向と、保持部材20に埋設された金属片6の長軸方向とが略一致するような位置に貼られる。そして、ラベル31bは、ラベル31b上に図示された金属片6の断面形状と、保持部材20に埋設された金属片6の断面とが略重なる位置に貼られる。
【0063】
次に、金属片6の埋め込み方を説明する。
【0064】
まず、樹脂製の保持部材20に対して、金属片6の直径をほぼ同じ径のドリルで、穴を所定の深さまで開ける。接着剤等を穴の底に少し入れ、金属片6をその穴に入れ、金属片6の位置を固定する。さらに接着剤を詰め込み、金属片6を保持部材20の中に埋設させる。このように容易に金属片6を所定の位置に保持できるようになっている。
【0065】
次に、本実施の形態に係る試験体の使用法について説明する。なお、本実施の形態は、金属片6が埋設された試験体10の向きにより、金属検出機の感度と識別手段の表示内容とが異なるものの、基本的な使用法は第1の実施の形態とほぼ同様であるので、相違点について詳述する。
【0066】
まず、図7に示したような金属検出機40の検出部43の大きさや検査対象41の大きさ等に合わせて、所望の金属片6の高さを有する試験体10を選択する。
【0067】
搬送コンベア42の搬送路42a上に試験体10を載置する際、所望の金属片6の高さの基準面が下になるように試験体10を載置する。このとき、金属片6の長軸方向が図示されたラベル31a、31bを見て確認しながら、サーチコイル44の向きを考慮して試験体10を載置する。例えば、金属片6の長軸方向が搬送方向に対して直角または水平になるように試験体10を載置する。
【0068】
そして、サーチコイル44の中を通過させ、金属片6の形状の向きに合わせたサーチコイル44の感度調整等ができるようになっている。
【0069】
以上、本実施の形態に係る金属検出機用の試験体10を用いることにより、ラベル31a、31bに図示された金属片6の形状の向きに合わせて、試験体10の載置の向きを変えるだけで、搬送コンベア42の搬送路42aからの高さ方向を加味して、金属片6の方向による金属検出機40の検出性能を容易にかつ高精度に測定できる。
【0070】
このような柱状の金属片6を用いることで、針状の異物に対する金属検出機40の検出性能を容易にかつ高精度に測定できる。
【0071】
また、金属片6が柱状で、金属片6の方向による金属検出機40の検出性能を測定する必要上、試験体10の載置の向きを変える必要がある。基準面B1、B2の形状において、辺の長さが極端に長い長方形の場合は、試験体10を載置させる向きにより、転倒に対する安定度が異なってくるため、試験体10を載置させる際に、置き方に注意する必要がある。しかし、本実施の形態は、基準面B1、B2が正方形の形状と略同じ形状であるため、試験体10を載置させる際に、転倒しないようにさほど置き方に注意する必要がない。
【0072】
また、金属片6の長軸方向がラベル31a、31bに図示されているので、容易に正確に試験体10を載置できる。また、搬送路42aに載置させる保持部材20の基準面B1、B2を変えるだけで、容易に搬送路42aからの金属片6の高さを正確に変えることができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
図12および図13は本発明の第3の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。なお、本実施の形態は識別手段の表示方法が異なるものの、他の構成については第1や第2の実施の形態とほぼ同様であるので、同一又はそれに相当する構成については図3〜図11に示したものと同一符号で示し、相違点について詳述する。
【0074】
図12に示すように、試験体10の識別手段32が金属片5の形状を示す形状、すなわち円形状になっている。そして保持部材20の樹脂の色と異なる非透明に着色されている。識別手段32は、シート状で、保持部材20の表面に貼るようになっている。
【0075】
識別手段32の円の大きさにより、保持されている金属片5の直径を表し、識別手段32の色により、金属片5の材質を区別している。
【0076】
また図13に示すように、試験体10の識別手段33が金属片6の形状を示す形状、すなわち円柱状を表した形状になっている。識別手段33の形状の長軸方向が、金属片6の長軸方向を示すようになっている。
【0077】
識別手段33の形状の長さにより、保持されている金属片6の長軸方向の長さを表し、識別手段33の色により、金属片6の材質を区別している。
【0078】
このように本実施の形態により、視覚的・直感的に金属片の性状の内容を把握することができ、誤った試験体10で金属検出機40の検出性能を測定することが防止できる。
【0079】
(第4の実施の形態)
図14は本発明の第4の実施の形態に係る金属検出機用の試験体を示す斜視図である。
【0080】
なお、本実施の形態は保持部材の形状が異なるものの、他の構成については第1の実施の形態とほぼ同様であるので、同一又はそれに相当する構成については図3〜図10に示したものと同一符号で示し、相違点について詳述する。
【0081】
図14に示すように、金属検出機用の試験体11における保持部材21の形状が、略正四面体である。試験体11の識別手段34のラベル34a、34b、34cには、図15に示すように、ラベル34a、34b、34cが貼られた基準面B4、B5、B6から金属片5までの各距離が表示されている。
【0082】
図16に示すように、保持部材21は、正多角形である正三角形の形状と略同じ形状の少なくとも2つの基準面(B4、B5、B6)を有し、基準面(B4、B5、B6)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0083】
また、保持部材20の図形重心Gが、例えば基準面B4の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B4の図形中心Cと保持部材21の図形重心Gとの距離gが、基準面B4の図形中心Cを通り基準面B4の辺a5および辺a6と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。ここで、線分の長さdは、基準面B4の図形中心Cを通り辺a5、a6、a7のいずれかと交わる線分の長さである。
【0084】
また保持部材21は、基準面B4、B5、B6のうち1つが他の少なくとも1つの基準面と交わるように、例えば基準面B4またはB5を含む仮想平面が形成されるようになっている。
【0085】
以上のような保持部材21の形状でも、第1の実施の形態と同じような効果を実現できる。
【0086】
なお、図17から図20に示すように、保持部材の立体形状として、さまざまな立体形状を用いることができる。
【0087】
図17に示すように、金属検出機用の試験体12の保持部材22の形状は、立方体に近い直方体でも良い。すなわち、保持部材22は、正多角形である正方形の形状と略同じ少なくとも2つの基準面(B7、B8、B9)を有し、基準面(B7、B8、B9)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0088】
また保持部材22の図形重心Gが、例えば基準面B7の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B7の図形中心Cと保持部材22の図形重心Gとの距離gが、基準面B7の図形中心Cを通り例えば基準面B7の辺a8および辺a9と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0089】
また保持部材22は、基準面B7、B8、B9のうちの1つ(例えば基準面B7)を含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B8)を含む仮想平面と交わる形状であるように形成されている。
【0090】
図18に示すように、金属検出機用の試験体13の保持部材23の形状は、三角柱でも良い。すなわち、保持部材23は、正多角形である正方形や正三角形の形状と略同じ少なくとも2つの基準面(B10、B11、B12)を有し、基準面(B10、B11、B12)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0091】
また保持部材23の図形重心Gが、例えば基準面B10の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B10の図形中心Cと保持部材23の図形重心Gとの距離gが、例えば基準面B10の図形中心Cを通り基準面B10の辺a10および辺a11と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0092】
また保持部材23は、基準面B10、B11、B12のうちの1つ(例えば基準面B10)を含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B11)を含む仮想平面と交わる形状であるように形成されている。
【0093】
図19に示すように、金属検出機用の試験体14の保持部材24の形状は、円柱でも良い。すなわち、保持部材24は、無限の正多角形である円の形状と略同じ2つの基準面B13、B14を有し、基準面B13、B14から各々相互に異なる高さh1、h2に金属片5を保持するようになっている。
【0094】
また保持部材24の図形重心Gが、例えば基準面B13の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B13の図形中心Cと保持部材24の図形重心Gとの距離gが、基準面B13の図形中心Cを通り基準面B13の円周と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0095】
図20に示すように、金属検出機用の試験体15の保持部材25の形状は、基準面が台形の四角柱でも良い。すなわち、保持部材25は、正多角形である正方形の形状と略同じ形状の少なくとも2つの基準面(B15、B16、B17)を有し、基準面(B15、B16、B17)から各々相互に異なる高さh1、h2、h3に金属片5を保持するようになっている。
【0096】
また保持部材25の図形重心Gが、例えば基準面B15の図形中心Cから略垂直方向にあり、基準面B15の図形中心Cと保持部材25の図形重心Gとの距離gが、基準面B15の図形中心Cを通り例えば基準面B15の辺a12および辺a13と交わる線分の長さdの略半分になるようになっている。
【0097】
また保持部材25は、基準面B15、B16、B17のうちの1つ(例えば基準面B15)を含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面(例えば基準面B16)を含む仮想平面と交わる形状であるように形成されている。
【0098】
保持部材が以上のような形状であっても、上述の実施の形態と同じような効果を実現できる。
【0099】
なお、図7に示した検出部43は、検出部43の入り口付近に配置され、検査対象41に直流磁界を印加するための1対の直流磁界印加用磁石と、1対の直流磁界印加用磁石の近傍に配置され、1対の直流磁界印加用磁石の両磁極間を検査対象41が通過する際に起こる磁界分布の変化を検出する1対の磁界分布変化検出コイルとをさらに備えてもよい。また検出部43は、渦電流方式でもよい。
【0100】
また図8に示したサーチコイル44は、いわゆる垂直型であるが、水平型のサーチコイルを搬送路42aの上下に配置してもよい。この場合、搬送路42aの上下に設置された水平型のサーチコイル間の中間付近における金属検出機の検出性能を測定できるような金属片の高さを有する試験体が好ましい。
【0101】
また、検査対象の搬送方法は、図7に示した搬送コンベアの他に、傾斜面を下らせる方法でもよい。また、検査対象は、食品に限られず、薬等錠剤でもよい。
【0102】
また、試験体における保持部材の基準面は、平面でなくてもよい。例えば基準面を凹ませたような形状でもよい。このとき保持部材の各頂点により基準面の仮想平面が規定されている。この場合、保持部材の肉抜きができ、試験体の質量を軽減させ、材料のコストを下げることができる。
【0103】
また、各実施の形態について記載した保持部材への金属片の埋め込み方については、保持部材や金属片の大きさや形状に応じて適宜変更することが可能であり、標準的な試験体を量産するにあたっては保持部材を金型成形することが好適で、均質かつ安価な試験体を提供できることは言うまでもない。ただし、金属片の埋め込み方や保持部材の成形方法はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0104】
5、6 金属片
10、11、12、13、14、15 金属検出機用の試験体
20、21、22、23、24、25 保持部材
30、31、32、33、34 識別手段
30a、30b、30c、31a、31b、34a、34b、34c ラベル
40 金属検出機
P1、P2 仮想平面
B1〜B15 基準面
a1〜a13 辺
C 図形中心
G 図形重心
d 線分の長さ
g 距離
h1、h2、h3 高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属検出機の性能検査に用いる金属片と、該金属片を保持する保持部材と、を備える金属検出機用の試験体であって、
前記保持部材を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、前記複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に前記金属検出機に載置されるための基準面とされ、
前記金属片が、前記基準面から相互に異なる高さに保持されており、
前記金属片の形状が柱状であり、
前記金属片の長軸方向を示す識別手段を備えたことを特徴とする金属検出機用の試験体。
【請求項2】
前記保持部材を形成する複数の面の形状が略正多角形である請求項1に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項3】
前記保持部材が、前記基準面のうちの1つを含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面を含む仮想平面と交わる形状である請求項1または請求項2に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項4】
前記識別手段がさらに前記金属片の前記基準面からの高さを示す請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項5】
前記保持部材が透明または半透明の樹脂である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項6】
前記識別手段が前記金属片の形状を示す形状を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項1】
金属検出機の性能検査に用いる金属片と、該金属片を保持する保持部材と、を備える金属検出機用の試験体であって、
前記保持部材を形成する複数の面の形状が多角形の形状をなし、前記複数の面のうち少なくとも2つの面が検査時に前記金属検出機に載置されるための基準面とされ、
前記金属片が、前記基準面から相互に異なる高さに保持されており、
前記金属片の形状が柱状であり、
前記金属片の長軸方向を示す識別手段を備えたことを特徴とする金属検出機用の試験体。
【請求項2】
前記保持部材を形成する複数の面の形状が略正多角形である請求項1に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項3】
前記保持部材が、前記基準面のうちの1つを含む仮想平面が他の少なくとも1つの基準面を含む仮想平面と交わる形状である請求項1または請求項2に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項4】
前記識別手段がさらに前記金属片の前記基準面からの高さを示す請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項5】
前記保持部材が透明または半透明の樹脂である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金属検出機用の試験体。
【請求項6】
前記識別手段が前記金属片の形状を示す形状を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の金属検出機用の試験体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−88341(P2012−88341A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27110(P2012−27110)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2007−91801(P2007−91801)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2007−91801(P2007−91801)の分割
【原出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
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