説明

金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する装置

【課題】金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する装置であって、熱間亀裂感受性の定量的および定性的測定の向上を可能とする装置を提供する。
【解決手段】装置は鋳造用鋳型7からなり、鋳型は第1の下位容積27と第2の下位容積とを有し、第2の下位容積は第1の端部31と第2の端部33を有する筒部29として形成され、第1の端部は第1の下位容積と接続され、装置はまた測定要素35からなり、測定要素は筒部の第2の端部の内部に延設され、装置はまた筒部の広がりの方向における測定要素にかかる力および/または測定要素の位置の変化を記録する測定装置51からなり、測定装置は測定要素と連結されている、装置に関する。熱間亀裂感受性の定量的および定性的測定の向上を可能とするという目的は、実質的に全長にわたり選択してよい筒部のどの下位部分においても第2の端部の方向で筒部の断面積が減少することにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する装置において、上記装置は鋳造用鋳型からなり、上記鋳型は第1の下位容積と第2の下位容積とを有し、上記第2の下位容積は第1の端部と第2の端部を有する筒部として形成され、上記第1の端部は上記第1の下位容積と接続され、上記装置はまた測定要素からなり、上記測定要素は上記筒部の第2の端部の内部に延設され、上記装置はまた上記筒部の広がりの方向における上記測定要素にかかる力および/または上記測定要素の位置の変化を記録する測定装置からなり、上記測定装置は上記測定要素と連結されている、上記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間亀裂は、金属溶湯の凝固において著明な問題である。熱間亀裂は、固相線温度と液相線温度との間の温度範囲内で凝固または溶融中に起こる結晶間または樹枝状結晶間の不連続部に用いられる用語である。熱間割れは、顕微鏡レベルの小ささか、または数ミリあるいは数センチに及ぶことすらある。いずれにしても、それらは凝固した金属溶湯から少なくとも部分的に作られるようになっている被加工物の欠陥を表す。
【0003】
特に帯鋼鋳造またはそれと同等の連続鋳造工程について、溶湯の熱間亀裂感受性は鋳造製品の強度に直接影響するので、この熱間亀裂を受けやすい性質(熱間亀裂感受性)の知識は非常に重要である。何故なら、熱間亀裂感受性は鋳造製品の強度に直接影響を及ぼすからである。この知識は、溶接部にとっても、またある種の溶接法の使用にとっても重要である。何故なら、熱間亀裂感受性は、溶接部の耐久性に直接影響を及ぼすからである。
【0004】
これまで、特に鋼鉄やアルミニウム合金の熱間亀裂感受性の測定にはかなりの活動が行われた。しかしながら、熱間亀裂感受性という現象の充分な理解、またはシミュレーションすら、にも成功は収められなかった。熱間亀裂感受性を確実に測定できる装置も存在しない。
【0005】
鋳造用鋳型中の金属溶湯の凝固過程を取り扱う際、代表的なアプローチは、化学組成だけでなく、溶融浴温度、鋳造用鋳型温度、凝固中の温度のばらつき、収縮の結果として鋳造用鋳型において凝固中に発生する様々な力、といった溶融パラメータも測定し、評価中に考慮することであった。純粋に定性的な評価は、割れの発生領域における材料、割れの大きさ、割れの形態を目視により観察してもなされると思われる。
【0006】
熱間割れは、その大きさについて定性的に特徴付けられる。裸眼で見ることができる割れと、拡大鏡のような手段の助けを借りて可視化できる割れと、顕微鏡下でなければ見られない割れと、に一般的に区別される。割れの長さも熱間亀裂感受性の基準として用いられることが多い。既知の試験方法は、割れの発生と割れの大きさを評価できるが、ひずみについて、したがってこれに起因する応力について、結論を下すことができないという共通点を持つ。しかしながら、ひずみと応力の知識は、今後起きる割れに対する感受性を定性的に測定することを可能とするか、または今後の挙動を予測することを可能とする。
【0007】
熱間亀裂感受性はこれまで、例えば流れの長さが測定される鋳造用鋳型により定性的に測定されてきた。凝固された材料のうちで割れが起こらない長さが特徴的な数字となる。この数値は鋳造用鋳型の形状、すなわち、鋳造流路や選ばれた湯口装置の断面、に特有である。鋳造用鋳型が製造される材料も、各々の試験設備に特有である。例えば、これは、例えば鋳造用鋳型が永久鋳型として設計されている場合には鋼鉄、または砂であろう。後者の場合、砂の粒度、粒度分布、湿分、結合剤、砂の圧縮度と組成も、いっそうのパラメータとして考慮すべきである。溶融浴温度と鋳造用鋳型温度も付加的な特性値として測定される。
【0008】
熱間亀裂感受性を測定するための既知の鋳造用鋳型は、環状の形状に基づいており、その外径は一定に保たれ、その内径は可変である。凝固中、材料はコアにかぶさる程度に収縮し、肉厚、溶融浴温度、鋳造用鋳型温度、化学組成によっては割れが生じる可能性がある。この種の鋳造用鋳型の問題は、特に湯口の領域で起こる。この領域では、諸条件が再現できないことが多いからである。
【0009】
非特許文献1において、中央に湯口を持つH形の鋳造用鋳型の記載があり、この場合、引張試験機も装置内に組み込まれている。これは、力をかけ、熱間亀裂感受性について結論を出そうとして用いられており、この際、ある大きさの力と既知の温度プロフィールとの下で起こる割れが考慮される。
【0010】
それ以外では、第1の受け容積と筒状の測定容積を持つ鋳造用鋳型も用いられる。これらの鋳型の場合、第1の受け容積と筒状測定容積との接続領域においてホットスポットが通常発生する。ホットスポットとは、鋳造用鋳型の冷たい壁から最も離れた鋳造用鋳型の容積の中央領域で通常発生する凝固過程中の溶湯蓄積部である。これらの鋳造用鋳型の場合、凝固中の溶湯の収縮挙動はバーの長さで測定される。ここにおいても、溶融浴温度、鋳造用鋳型温度、溶湯の化学組成がパラメータとなる。熱間亀裂感受性は、ホットスポットの熱含量によっても影響を受ける。
【0011】
請求項の特徴部分の前の前文に係る装置は、非特許文献2に記載されている。この中で、CaoとKouは、鋳造用鋳型の棒状下位容積で凝固中に起こるひずみと、派生する合力との直接測定を記載している。非特許文献3も熱間亀裂感受性を測定するための棒状鋳造用鋳型形状を持つ試験設備を記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】S. Instone et al., "New apparatus for characterizing tensile strength development and hot cracking in the mushy zone", International Journal of Case Metals Research 12 (2000) 441-456
【非特許文献2】G. Cao, S. Kou, "Hot tearing of ternary Mg-Al-Ca alloy castings", Metallurgical and Materials Transactions 37A (2006) 3647-3663
【非特許文献3】Y. Wang et al., "An understanding of the hot tearing mechanism in AZ91 magnesium alloy", Materials Letters 53 (2002) 35-39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記の装置を用いても、凝固材料や鋳造用鋳型の温度や、最終的には凝固材料と鋳造用鋳型との両者の収縮挙動によっては、凝固材料と鋳造用鋳型の内壁との間にかなりの摩擦力が発生する。幾つかの状況下で用いられる潤滑剤は、測定値の解釈にいっそうの困難をもたらす。このように摩擦力が起こっては、有意義な解釈はほとんど不可能である。
【0014】
これまでに知られている装置は全て、熱間亀裂感受性について何らかの評価を下すことができる。しかしながら、摩擦力が起こるので、熱間亀裂感受性の精密な定量的および定性的測定に適したものはない。
【0015】
したがって、本発明の目的は、金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する装置であって、各種金属溶湯の熱間亀裂感受性の定量的および定性的測定の向上を可能とする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求項1の構成に係る装置により達成される。有益な実施形態は従属請求項の主題である。
【0017】
本発明は、金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する装置であって、上記装置は鋳造用鋳型からなり、上記鋳型は第1の下位容積と第2の下位容積とを有し、上記第2の下位容積は第1の端部と第2の端部を有する筒部として形成され、上記第1の端部は上記第1の下位容積と接続され、上記装置はまた測定要素からなり、上記測定要素は上記筒部の第2の端部の内部に延設され、上記装置はまた上記筒部の広がりの方向における上記測定要素にかかる力および/または上記測定要素の位置の変化を記録する測定装置からなり、上記測定装置は上記測定要素と連結されており、実質的に全長にわたり選択してよい筒部のどの下位部分においても上記第2の端部の方向で上記筒部の断面積が減少することを特徴とする、上記装置を提供する。
【0018】
ここで、“鋳造用鋳型”という用語は、金属溶湯がその内容積内に収容されるか受入れられる、またはその内部で作られるのに適している全ての容器を含む。
【0019】
ここで、“容積”という用語は、溶湯を受入れるのに利用できる内容積を本質的に意味する。鋳造用鋳型の内容積は、少なくとも2つの下位容積から構成される。
【0020】
実質的に全長にわたり選択してよい筒部のどの下位部分においても上記第2の端部の方向で上記筒部の断面積が減少するという特徴的構成は、上記筒部の広がりの方向において断面積が一定であるような下位部分は上記筒部の全長にわたり実質的に存在しない、ということを意味すると本質的に解釈するべきである。このため、凝固材料と鋳造用鋳型の壁との間の摩擦力による測定の改ざんが回避される。例えば、上記筒部は円形断面を有してよく、その直径は第2の端部に向かう全ての下位部分で減少し、したがって当該部分は円錐台形である。
【0021】
既知の測定装置と比べ、本発明に係る装置は特に、鋳造用鋳型に対する凝固材料の収縮は、主として筒部の広がりの方向で影響を及ぼし、凝固材料が鋳造用鋳型の壁から直ちに取外され、結果的に、凝固溶湯と鋳造用鋳型の壁との間の摩擦作用は何ら測定されない、という利点がある。
【0022】
さらに、鋳造用鋳型内の溶湯は一般的に鋳造用鋳型の材料そのもの以上に収縮するので、測定は鋳造用鋳型そのものの収縮挙動とは無関係である。
【0023】
本発明に係る装置は主として、マグネシウム溶湯の熱間亀裂感受性を測定するために開発された。しかしながら、試験設備および測定された特性値のために、本装置はマグネシウム合金だけでなく、アルミニウム、亜鉛および非鉄金属や、鋼鉄その他の金属溶湯にも使用できる。
【0024】
本発明に係る形状および多種多様の鋳造用鋳型材料の使用可能性は、本質的に本装置が凝固中の全ての材料を測定できることを意味する。したがって、熱間亀裂感受性を測定する標準化可能な測定セルがはじめて入手できる。したがって、定性的評価だけでなく、同時に定量的評価も可能である。また、多種多様な材料の熱間亀裂感受性の直接的比較もはじめて可能となる。
【0025】
重力により引き起こされた測定への静水圧的影響または他の影響を最小にするため、筒部が実質的に水平方向に延設するのが有利である。
【0026】
温度測定要素は、筒部の広がりの方向に沿って配置されるのが好ましい。一方では、これらは評価の目的で温度を記録するためのものでよい。他方では、これらは、鋳造用鋳型の壁の温度を調整し、これに応じて凝固溶湯の温度を調整するのに用いてよい。この目的で、少なくとも1つの温度測定要素を第1の下位容積内に配置すれば好都合である。例えば、この温度測定要素は鋳造用鋳型の内容積に伸縮式に挿入可能であればよく、これは、第1の下位容積と第2の下位容積との接続領域におけるホットスポットの温度が測定できるようにするためである。
【0027】
第1の下位容積および/または筒部が加熱装置および/または冷却装置を備えていれば、温度調整と制御に好都合である。これにより、溶湯の凝固過程が特定の様式で制御できる。この点で、第2の端部が第1の端部より冷たくなり、したがって、溶湯がまず第2の端部で凝固し、張力に抗して測定要素に接続されるように筒部の温度が制御できれば特に好都合である。この結果、溶湯の収縮挙動により引き起こされる引張力の測定が凝固過程のできるだけ早い時期に正確に実施できる。
【0028】
実質的に水平方向に延設するのが好ましい筒部内に溶湯が入る時に、この筒部内の空気が逃げることができるように、筒部の第2の端部にガス抜き開口を設けるのが好ましい。例えば、このガス抜き開口は、測定要素の広がりの方向における上側に延設する測定要素における切欠きでよい。
【0029】
好ましくは、本装置は少なくとも部分的に鋳造用鋳型上方に位置する湯口装置を有し、鋳造用鋳型の第1の下位容積は湯口装置から金属溶湯を受け取るようになっている。この場合、溶湯は湯口装置内で作られ、溶湯と鋳造用鋳型が適当な温度になったとき、溶湯は下部排出口から鋳造用鋳型の第1の下位容積に排出される。したがって、第1の下位容積は、その上方に位置する湯口装置から溶湯を受ける上部開口を有するのが好都合である。溶湯の液面が鋳造用鋳型の第1の下位容積と第2の下位容積との接続領域に到達するとすぐに、溶湯は第2の下位容積内にも分配される。
【0030】
測定要素は摩擦なしで軸方向にできるだけ遠くに移動できるように、測定要素は鋳造用鋳型に対し、好ましくは例えばグラファイトまたはセラミックで作られたスリーブ内で、ほとんど摩擦接触なしで案内される。
【0031】
測定結果を読みだし、評価するため、測定装置と任意の温度測定要素とをコンピュータ制御読出装置と接続し、この装置で読み出すことができるのが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の大きな利点は、試験試料中の割れや、その結果起きるひずみや応力の変化を同時に検出することである。熱間亀裂感受性について定量的知見と定性的知見との両方を得ることができる。
【0033】
化学組成を別にすれば、溶融浴温度、鋳造用鋳型温度、凝固中の温度変化のような溶融パラメータ、および収縮に起因して鋳造用鋳型で凝固中に起こる諸力も本装置で測定され、評価において考慮される。さらに、材料の純粋に定性的な評価が、割れの発生、その大きさ、形状、経時的挙動について同時に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る装置の有利な一実施形態の構成を図式的に示す。
【図2】本発明に係る装置の有利な一実施形態の鋳造用鋳型の垂直縦断面を示す。
【図3】本発明に係る装置の有利な一実施形態の鋳造用鋳型の水平縦断面を示す。
【図4】2つの異なった試験における測定した引張力と経時的温度変化とをプロットしたグラフの形態の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の有利な実施形態を図1〜4に基づき以下に詳細に説明する。
【0036】
図1は、金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する装置の全体的構成を図式的に示す。本装置の主な部品は安定な水平基台1上に配置されている。水平基台1から側部で垂直に延設された保持装置3があり、この保持装置3は鋳造用鋳型7上方に湯口装置5を固定する役割を果たす。湯口装置5は実質的に、加熱可能な壁を持つ溶解炉9として設計されている円筒状容器からなる。溶解炉9は上部開口を有し、この上部開口は金属材料10を充填するのに使用でき、この金属材料10は溶解炉内部で溶解可能である。充填後、この上部注入開口はカバー11で閉じることができる。下側では、溶解炉9は排出開口13を有し、この排出開口13は蓋装置15で開閉できる。本実施形態において、蓋装置15はプラグ17であり、このプラグ17は垂直に延びるロッド19により昇降でき、このロッド19はカバー11に設けられた中央ブッシングを介して溶解炉9から外部へ導出される。図1に示されたプラグ17の下降位置では、下側の排出開口13は閉じられ、金属溶湯10は逃げられない。加熱温度を調整するため、および/または金属溶湯10がいつ適温に達したのかを判定するため、温度測定要素21が内視鏡的にまたは伸縮式にカバー11を貫通して金属溶湯10内に浸漬される。この目的で、温度測定要素21はコンピュータ23により制御される読出装置25に通信リンクを介して接続される。
【0037】
溶解炉9の排出開口13の下方には鋳造用鋳型7が配設されており、このため、プラグ17が上昇されると、溶湯10が排出開口13から鋳造用鋳型7内に流入できる。鋳造用鋳型7は2つの下位容積を持ち、第1の下位容積27は実質的に、溶解炉9から溶湯10を受け取るための開口を上部に持つ円筒状容器である。第2の下位容積27は、第1の下位容積27から実質的に水平に離れた筒部29の形状で延在している。筒部29は、第1の下位容積27の下部領域と接続された第1の端部31と、測定要素35が延在状態で挿入された第2の端部33とを有している。鋳造用鋳型7が上側の溶解炉9から充填されると、溶湯10が筒部29に流入する充填液面に達するまで、まず第1の下位容積27が満たされる。測定のためには、筒部29は完全に充填されなければならない。
【0038】
実質的に全長にわたり選択してよい筒部29のどの下位部分においても第2の端部33の方向で筒部29の断面積が減少することが、図2および3において一層明らかに見ることができる。本実施形態において、円形断面積の直径は、第1の端部31から第2の端部33に向かうテーパ角度約3度をもって筒部29の全長にわたり減少している。
【0039】
鋳造用鋳型7の外表面積の大部分には加熱または冷却装置37が備えられているので、鋳造用鋳型7の温度は第1の下位容積27と筒部29との両者において適当に制御できる。そのため、鋳造用鋳型7における溶湯10の凝固挙動は特定の様式で制御可能となる。加熱または冷却装置37を調整するためと評価目的のため、鋳造用鋳型7には、温度測定要素39、41、43、45、47も備えられており、これらの温度測定要素はそれぞれ通信リンクを介してコンピュータ制御読出装置25に接続されている。温度測定要素39は、鋳造用鋳型7の第1の下位容積27の温度を測定する。3つの温度測定要素43、45、47は、筒部29の広がりの方向に沿った様々な領域における筒部29の温度を測定する。この場合、温度測定要素47は筒部29の第2の端部33に配置されている。温度測定要素41は、第1の下位容積27を貫通して、第1の下位容積27と筒部29との接続領域内に伸縮式または内視鏡的に導かれる。このため、温度測定要素41はホットスポットでの溶湯10の温度を測定するのに用いることができる。
【0040】
筒部29の第2の端部33には測定要素35があり、この測定要素は、実質的に筒部29の広がりの方向に同軸的にピストンの形状で延在しており、鋳造用鋳型7に対して、例えばグラファイトまたはセラミックで作られたスリーブ49内にほとんど摩擦接触なしで案内される。したがって、測定要素35は軸方向に移動可能に装着される。筒部29の広がりの方向における力および/または位置を読み出すため、測定要素35は測定装置51と連結されている。この場合、測定装置51はユニバーサルジョイント53とロッド形伝達要素55を有しており、ユニバーサルジョイント53は測定要素35を伝達要素55に接続している。伝達要素55は、軸方向の力および/または位置変化を力・位置測定器57に伝達する。力・位置測定器57は同様に通信リンクを介してコンピュータ制御読出装置25に接続され、測定データの読出しと評価が行われる。
【0041】
鋳造用鋳型7および力・位置測定器57は、それらが好ましくは固定的に接続されている基台1に対し規定された位置を取る。鋳造用鋳型7および/または力・位置測定器57は、筒部29の広がりの方向で移動可能に基台1に接続されていてもよい。これは明らかに軸方向位置の精密な較正を必要とする。しかしながら、割れを引き起こすためおよび/またはある応力の下での材料の耐荷量を測定するため、例えば制御されたステッピングモータにより溶湯19に付加的な引裂力が施される可能性がある。同様に、当初の鋳造中、溶湯10の落下高さが設定でき、用いた材料に適切に適合できるように、湯口装置5は垂直方向に調整可能に保持装置3に接続されてもよい。全体の装置は例えば、1メートル未満の横方向広さを持つ台上実験として設計してもよい。第2の端部33に向かって先細になる筒部29は例えば、約20cmの長さと12〜8mmの直径を持ってよい。
【0042】
図2と3は、それぞれ鋳造用鋳型7の垂直および水平縦断面を示す。第1の端部31から第2の端部33に向かう筒部29のテーパ角度θを示して説明する。実質的に水平に延在する筒部29の第2の端部33は支持体59により下から支持され、支持体59は基台1に接続され、基台1には鋳造用鋳型7の第1の下位容積27も接続されている。測定要素35は上側に、ガス抜き開口61を測定要素35の広がりの方向で延在する切欠きの形態で有する。ガス抜き開口61は、溶湯10の充填中、実質的に水平に延在する筒部29のガス抜きを可能とする。
【0043】
以上に示した装置では、以下に記載する金属溶湯の熱間亀裂感受性を測定する方法が行なわれる。まず、試験する既知の化学組成の金属材料10、例えばアルミニウム含量3%のマグネシウム、を溶解炉9に充填する。材料10の量は、筒部29が完全に満たされるのに充分な液状で鋳造用鋳型7に充填されるのに充分な量でなければならない。次に、溶解炉9を材料10の融点より高い温度、例えば715℃、に加熱する。同時に、鋳造用鋳型7中の溶湯10の以後の凝固挙動を制御できるようにするために、鋳造用鋳型7を例えば350℃の温度に予熱する。
【0044】
温度測定要素21、39、43、45、47が適温を示したらすぐに、初鋳造を開始できる。ロッド19により、溶解炉9の下側の排出開口13を閉じているプラグ17を上昇させ、金属溶湯10が排出開口13から下方に位置する鋳造用鋳型7の第1の下位容積27に流入できるようにする。これにより、溶湯10は、鋳造用鋳型7の第1の下位容積27に第1の端部31で接続された筒部29にも分配される。鋳造用鋳型7の温度は融点より下回っているので、溶湯は鋳造用鋳型7内で凝固し始める。これはまず、溶湯に比べより冷たい鋳造用鋳型7の壁で起こり、その後、内側で進行する。第1の下位容積27から最も遠い筒部29の第2の端部33では径が小さいこと、および/または加熱または冷却装置37による温度制御が適当なことに起因して、溶湯10は、測定要素35が入り込んでいる筒部29の第2の端部33でまず凝固する。この凝固は、凝固された溶湯10と測定要素35との間で非積極的な、したがって引張抵抗性の結合が形成されるという作用をもたらす。凝固中、金属材料10は収縮する。これは、特に筒部29の広がりの方向で明らかになる。鋳造用鋳型7そのものも冷えるにつれて同様に収縮するが、液体から固体への相転移を経る材料10より何倍も収縮の程度は少ない。したがって、測定要素35は、凝固された溶湯10と測定要素35との間の引張抵抗性の結合により筒部29に引き込まれる。
【0045】
半径方向においては、筒部29における凝固材料の収縮はほとんど目立たない。筒部29のテーパ状態は鋳造用鋳型7の壁と凝固した材料10との摩擦作用を防止する。これは、軸方向の著明な収縮の結果、テーパ角度がこの材料を壁から直ちにはがし、壁に沿って前進させない。その結果、測定要素35にかかる引張力の測定は、従来の装置を用いる場合より何倍も正確となる。このように、材料10の収縮が引き起こす引張力、または材料10の長さの変化を測定するのに測定要素35を用いることが可能となる。
【0046】
凝固中、ホットスポット、すなわち、第1の下位容積27と筒部29との接続領域、での温度も記録される。この領域では、溶湯10は最も長い時間液状のままであり、熱間割れが起こる確率は最大である。温度測定のため、鋳造用鋳型7の内腔を通して第1の下位容積27と筒部29との接続領域に向かって温度測定要素41を伸縮式または内視鏡式に第1の下位容積27内を導いていく。温度測定要素41は耐熱性であり、セラミックのような相当する材料を与えられている。
【0047】
凝固中、コンピュータ23により制御された読出装置25は、温度測定要素39、41、43、45、47により時間の関数として測定された温度と、力・位置測定器57により測定された測定要素35に対する引張力または後者の位置の変化との両方を読み取る。
【0048】
アルミニウム含量3%のマグネシウム溶湯、溶融温度750℃、鋳造用鋳型温度350℃で各々行われた2つの試験の結果を図4に示す。引張力とホットスポット温度を時間に対しプロットした。実線の曲線は第1の試験に関し、破線の曲線は第2の試験に関する。矢印はそれぞれの曲線に該当する軸を示す。凝固相の開始時に比較的急な上昇の後、力はほぼ一定に増加し、温度はこれに相当して逆の挙動を示す。はじめに600℃を上回る温度への上昇と、凝固相の開始時の約500℃への急激な下降の後、温度は比較的一定に減少する。これら2つの試験の測定結果は測定誤差限界内で一致するので、本発明に係る装置は熱間亀裂感受性の再現性ある定量的測定をはじめて可能とすることが判る。
【0049】
熱間割れの発生は、力曲線において段部または短い下降として表れるであろう。したがって、試験において測定される最大の引張力は、1つ以上の熱間割れが発生したかどうかということ、およびそれらの熱間割れの形状と範囲に依存している。したがって、規定された凝固間隔後に測定される最大力は、熱間割れの大きさおよび/または個数の定量的尺度となる。例えば、アルミニウム含量1%とホットスポット温度300℃の場合、900N未満の引張力は大きな既存の熱間割れを示していることがわかる。これは目視観察の結果から確認されている。この場合に適度の大きさの割れがあると、900N〜1100Nの引張力が測定でき、熱間割れがない場合、または極めて小さい熱間割れだけがある場合、1100Nより大の引張力が測定できる。
【符号の説明】
【0050】
1 水平基台
3 保持装置
5 湯口装置
7 鋳造用鋳型
9 溶解炉
10 金属材料
11 カバー
13 排出開口
15 蓋装置
17 プラグ
19 ロッド
21 温度測定要素
23 コンピュータ
25 読出装置
27 第1の下位容積
29 筒部
31 第1の端部
33 第2の端部
35 測定要素
37 加熱または冷却装置
39、41、43、45、47 温度測定要素
49 スリーブ
51 測定装置
53 ユニバーサルジョイント
55 伝達要素
57 力・位置測定器
59 支持体
61 ガス抜き開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯(10)の熱間亀裂感受性を測定する装置において、
上記装置は鋳造用鋳型(7)からなり、上記鋳型は第1の下位容積(27)と第2の下位容積とを有し、
上記第2の下位容積は第1の端部(31)と第2の端部(33)を有する筒部(29)として形成され、
上記第1の端部(31)は上記第1の下位容積(27)と接続され、
上記装置はまた測定要素(35)からなり、上記測定要素は上記筒部(29)の第2の端部(33)の内部に延設され、
上記装置はまた上記筒部(29)の広がりの方向における上記測定要素(35)にかかる力および/または上記測定要素(35)の位置の変化を記録する測定装置(51)からなり、
上記測定装置(51)は上記測定要素(35)と連結されており、
実質的に全長にわたり選択してよい筒部(29)のどの下位部分においても上記第2の端部(33)の方向で上記筒部(29)の断面積が減少する
ことを特徴とする上記装置。
【請求項2】
上記筒部(29)は実質的に水平方向に延在する
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
温度測定要素(43、45、47)が上記筒部(29)の広がりの方向に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも1つの温度測定要素(41)が上記第1の下位容積(27)内に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3に記載の装置。
【請求項5】
上記第1の下位容積(27)が加熱装置(37)を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
上記第1の下位容積(27)が冷却装置(37)を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
上記筒部(29)が加熱装置(37)を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
上記筒部(29)が加熱装置(37)を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
ガス抜き開口(61)が上記筒部(29)上記第2の端部(33)に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−42443(P2010−42443A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−158388(P2009−158388)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(599036761)ゲーカーエスエス フオルシユングスツエントルーム ゲーエストハフト ゲーエムベーハー (22)