説明

金属溶解炉及び金属の溶解方法

【課題】金属材料を溶解させ、金属溶湯を効率よく製造することができる金属溶解炉及び金属の溶解方法を提供する。
【解決手段】本発明の金属溶解炉1は、アルミニウムを含む金属材料14を溶かして溶湯20を製造する金属溶解炉1であって、金属材料14を加熱手段4により、溶湯20とする溶解室2と、溶解室2と連通し、給湯口6を有する給湯室3と、を備え、溶解室2は、給湯口6より高い位置に、加熱手段4と、溶解室2の炉内圧を調節する炉内圧制御手段5と、を有し、炉内圧制御手段5により溶解室2内の炉内圧を変化させて溶湯20を揺動させる。本発明の金属の溶解方法は、金属溶解炉1を用いて、アルミニウムを含む金属材料14を溶解室2に装入し、金属材料14を溶解させて、溶湯20を得る溶解工程と、溶解室2内の炉内圧を変化させて溶湯20を揺動させる攪拌工程、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムを含む金属材料を溶解させて、溶湯を得る金属溶解炉及びそれを用いた金属の溶解方法に関する。更に詳しくは、アルミニウムを含む金属材料を溶解させてなる溶湯を揺動攪拌させることにより、金属材料の溶解効率に優れる金属溶解炉及びそれを用いた金属の溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界、特に、自動車業界、建材業界、電機業界等では、製品の軽量化とリサイクル化を計るため、素材としてアルミニウムの使用量が大幅に増大している。このアルミニウムを用いた成形品は、アルミニウム原料を溶解して溶湯を得て、その溶湯をダイカスト等により成形して製造されている。アルミニウム溶解炉には、直接加熱式のものと、間接加熱式のものとがあり、これらのうち熱効率等に優れる直接加熱式の溶解炉が多く用いられている。この直接加熱式の溶解炉では、被溶解物(アルミニウム原料等)を溶解室に設けた加熱バーナで加熱し、この加熱バーナから噴射される火炎及び溶解室の蓄熱により被溶解物を溶かす。そして、被溶解物の溶解により得られた溶湯は保持炉に貯留された後、保持炉から汲み出されて、ダイカスト等により成形される。
【0003】
このような直接加熱式の溶解炉では、金属材料の溶解効率を向上させるために、溶解室内の溶湯を攪拌させる装置の開発が行われている。例えば、下記特許文献1には、外部からの加熱によって溶解された溶融アルミニウムを収納する炉本体と、炉本体内の溶融アルミニウムを貫通する貫通磁力線を発生する永久磁石を有し、この永久磁石の回転に伴って貫通磁力線が溶融アルミニウムを貫通した状態で移動することにより、溶融アルミニウムに移動力を加えて炉本体内で攪拌するようにした移動磁界発生装置と、を備えたことを特徴とする攪拌装置付きアルミ溶解炉が開示されている。また、下記特許文献2では、被溶解物が投入された溶湯を撹拌することにより、前記被溶解物の溶解を促進する撹拌装置であって、溶湯を貯留する溶解槽の外部に配置され、溶解槽の側壁に沿って下向きに移動する磁界を溶解槽の内部に発生する移動磁界発生装置を具備する撹拌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−146650号公報
【特許文献2】特開2011−17521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、溶解効率に優れる金属溶解炉、及びこれを用いた金属の溶解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す通りである。
1.アルミニウムを含む金属材料を溶解して溶湯を製造する金属溶解炉であって、
前記金属材料を加熱手段により、溶湯とする溶解室と、
前記溶解室と連通し、給湯口を有する給湯室と、を備え、
前記溶解室は、前記給湯口より高い位置に、前記加熱手段と、該溶解室の炉内圧を変化させる炉内圧制御手段と、を有し、前記炉内圧制御手段により前記溶解室内の炉内圧を変化させて前記溶湯を揺動させる溶湯攪拌機能を有することを特徴とする金属溶解炉。
2.前記加熱手段が、炉内圧を加圧可能なバーナである前記1.に記載の金属溶解炉。
3.前記炉内圧制御手段が、開閉バルブである前記2.に記載の金属溶解炉。
4.前記溶解室内に、前記金属材料が載置される載置部を備える前記1.乃至前記3.のいずれかに記載の金属溶解炉。
5.前記1.乃至4.のいずれかに記載の金属溶解炉を用いた、アルミニウムを含む金属材料の溶解方法であって、
前記金属材料を溶解室に装入する装入工程と、
前記溶解室に装入された前記金属材料を予備加熱する予熱工程と、
前記溶解室内の炉内圧を変化させて、前記金属材料が溶解されてなる溶湯を揺動させる攪拌工程と、を備えることを特徴とする金属材料の溶解方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属溶解炉によれば、金属材料を加熱手段により、溶湯とする溶解室と、溶解室と連通し、給湯口を有する給湯室と、を備え、溶解室は、給湯口より高い位置に、加熱手段と、溶解室の炉内圧を変化させる炉内圧制御手段と、を有し、炉内圧制御手段により溶解室内の炉内圧を変化させて前記溶湯を揺動させる溶湯攪拌機能を有することから、溶解室内の溶湯を効率的に攪拌することができ、熱効率に優れ、金属溶湯を効果的に製造する金属溶解炉とすることができる。また、本発明の金属溶解炉における溶湯の攪拌は、溶湯全体の揺動によるものであることから、攪拌機等による攪拌に比べ静かな溶湯の流動であり、ドロスや金属酸化物の抑制に優れる金属溶解炉とすることができる。
【0008】
また、加熱手段が、炉内圧を加圧可能なバーナである場合には、溶解室内の炉内圧を効率的に加圧させることができ、溶解室内の炉内圧の変動を容易に行うことができる。
【0009】
また、炉内圧制御手段が、溶解室の内部と外部とを連通可能とする開閉バルブである場合には、溶解室内の炉内圧を容易に増減させることができ、その炉内圧の増減により溶湯を揺動させて、金属溶解炉内の溶湯を効率的に攪拌することができる。
【0010】
更に、溶解室内に、金属材料を載置する載置部が設けられている場合には、載置部に投置かれる金属材料は、載置部において、加熱手段により生じる熱(燃焼排気ガス)及び輻射熱等により予備加熱が施されことから、より溶解効率に優れる金属溶解炉とすることができる。
【0011】
また、本発明の金属材料の溶解方法によれば、本発明の金属溶解炉を用いて、金属材料を溶解室に装入する装入工程と、前記溶解室に装入された前記金属材料を予備加熱する予熱工程と、溶解室内の炉内圧を変化させて、前記金属材料が溶解されてなる溶湯を揺動させる攪拌工程と、を備えることから、加熱手段により生じる熱や溶解室内の輻射熱等からの予備加熱を施すことができると共に、溶解室内の溶湯を効率的に攪拌することができ、熱効率並びに溶解効率に優れる金属材料の溶解方法とすることができる。また、本発明における溶湯の攪拌は、溶湯全体の静かな揺動によるものであることから、ドロスや金属酸化物の発生が抑制され、それらの不純物の混入が少ない溶湯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の金属溶解炉の一例を説明する模式的な平面図である。
【図2】図1におけるA−B−C線の模式的な断面図である。
【図3】本発明の金属溶解炉の一例を説明するD−D線の模式的な平面断面図である。
【図4】本発明の金属溶解炉の一例を説明するE−E線の模式的な平面断面図である。
【図5】本発明における炉内圧制御手段の一例を説明する模式的な説明図である。
【図6】他の態様の炉内圧制御手段の構成を説明する模式的な説明図である。
【図7】他の態様の炉内圧制御手段の構成を説明する模式的な説明図である。
【図8】他の態様の炉内圧制御手段の構成を説明する模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
[1]金属溶解炉
本発明の金属溶解炉は、アルミニウムを含む金属材料を溶解して溶湯を製造する金属溶解炉であって、前記金属材料を加熱手段により、溶湯とする溶解室と、前記溶解室と連通し、給湯口を有する給湯室と、を備え、前記溶解室は、前記給湯口より高い位置に、前記加熱手段と、該溶解室の炉内圧を調節する炉内圧制御手段と、を有し、前記炉内圧制御手段により前記溶解室内の炉内圧を変化させて前記溶湯を揺動させる溶湯攪拌機能を有することを特徴とする(例えば、図1〜図4参照)。
【0015】
本発明の金属溶解炉としては、例えば、図1〜図4に示されるように、加熱手段4及び炉内圧制御手段5を有する溶解室2と、給湯室3とを備える金属溶解炉本体1とすることができる。
金属溶解炉本体1は、本体下部に凹状の形状を有し、溶湯20を収納する溶解槽12を備えることができる。この溶解槽12は、溶解室2の下部からなり、連通路7により給湯室3と連通して設けられている。溶解槽12では、被溶解物の金属材料14、及び金属材料14が溶解された溶湯20を収納し、金属材料14の溶解が行われる。
【0016】
溶解室2を構成する形状は、特に限定されない。例えば、図1〜4に示される、天井面の一部が傾斜した直方体、若しくは、立方体形状、円筒形状、多面体形状等とすることができる。また、溶解室2は、溶解層12内の溶湯20が連通路7に充満されることにより、密閉可能な空間を形成することができる。
【0017】
溶解室2は、金属溶解炉本体1内部に設けられており、給湯室と仕切部8により区分けられている。溶解室2は、加熱手段4を備えており、溶解室2内部に装入(投入)された金属材料14を、加熱手段4等により溶解させて、溶湯20を得ることができる。
溶解室2の構造は、特に限定されない。金属材料14を加熱できるだけの空間と、金属材料14が溶解されて得られる溶湯20を収納(保持)できる溶解層12とを少なくとも有する構造であればよい。
また、金属溶解炉本体1は、溶解室2を構成する壁の一部に、材料装入(投入)口10を設けることができる。この材料装入口10の場所としては、溶解槽12の底部より高い位置であり、且つ、平面図において給湯室3と反対側の位置にあることが好ましい。材料装入口10は、溶解室2内部に金属材料14を装入でき、且つ、閉塞できる開閉可能の構造であれば、その構造及び取付状態は、特に限定されない。
【0018】
溶解室2としては、更に、溶解室2の内部に材料載置部9を備えることができる。この材料載置部9は、材料装入口10に併設することができ、溶解室2内に装入された金属材料14を載置する場所(部分)とすることができる。
【0019】
材料載置部9は、材料装入口10と併設され、且つ、材料装入口10の反対側は、溶解槽12と隣接させて設けることが好ましい。更に、材料載置部9は、溶解槽12より高い位置とし、平面方向に対して3〜10度(より好ましくは4〜6度)の角度で、材料装入口10から溶解槽12に向けて、下方に傾斜する傾斜面の形状が好ましい。また、この場合、溶解槽12を形成する面のうち、材料載置部9と接する面は、平面方向に対して30〜50度(より好ましくは35〜45度)の角度で、材料装入口10から給湯室3に向けて、下方に傾斜する傾斜面の形状が好ましい。
【0020】
金属溶解炉1が、材料載置部9備え、且つ、材料載置部9及び溶解槽12の構造が、上記の態様である場合には、溶解室2内に装入された金属材料14は、材料載置部9において、溶解室2に設けられた加熱手段4による熱及び溶解室2内の蓄熱(溶湯20から生ずる熱、輻射熱等)により、予備加熱が施される。この予備加熱により金属材料14は、表面部分の溶解が進行する。一方、材料載置部9は溶解槽12に向けて下方に傾斜された傾斜面となっていることから、表面部分が溶解された金属材料14は、自重により傾斜面を滑りながら、溶解槽12に落ちる。そして、溶解槽12に落下した金属材料14は、溶解槽12に収納されている溶湯20中で、溶湯20から生ずる熱と加熱手段4による加熱により溶解される。金属材料14が材料載置部9で予備加熱される場合、エネルギー効率に優れる溶解炉とすることができる。更に、金属材料14が、上記の通り、溶湯20内で溶解される場合、溶解が効率よく進行すると共に、金属材料14の溶解部分の空気との接触が抑制されるため、金属酸化物の発生が抑制され、ドロスや金属酸化物の少ない金属溶湯を得ることができる。
【0021】
本発明の金属溶解炉1は、少なくとも溶解室2(溶解漕12)内の溶湯20を揺動させることにより、溶湯20を攪拌する溶湯攪拌機能を有する。即ち、この溶湯攪拌機能は、溶湯20の揺動により生じる溶湯に対する攪拌機能であり、本発明の金属溶解炉としては、少なくとも溶湯20を揺動させる機能を有すればよい。
また、溶湯20の揺動は、後述の炉内圧制御手段5、或いは、加熱手段4及び炉内圧制御手段5により、溶解室2内の炉内圧を変化させることにより生じさせることができる。
【0022】
溶解室2に設けられている加熱手段4は、金属材料14を加熱により溶解して溶湯が得られるものであれば特に限定されない。例えば、ガスバーナ、重油バーナ及び電気ヒータ等が挙げられる。これらのうち、溶解室2内の炉内圧(炉内圧力)(溶解室2内の気圧)を加圧することができる(炉内圧を加圧可能な)バーナが好ましい。例えば、燃焼用空気及び排気ガス等の吸排気を調節可能な機構等を有する熱交換器を備えるバーナ等が挙げられる。更に、作業性に優れるガスバーナが好ましく、熱交換器を備えるガスバーナがより好適に用いられる。溶解室2内に収納された溶湯20は、連通路7に充満されることにより、溶解室2内を密閉状態とすることができる。そして、密閉状態の溶解室2において、炉内圧を加圧可能なバーナを加熱手段4として用いることにより、容易に炉内圧を増加させることができる。密閉状態の溶解室2の炉内圧は、バーナにより加圧されると共に、後述の炉内圧制御手段5により減圧させることにより、炉内圧の加圧と減圧とにより、溶解室2内の溶湯20の揺動を容易に生じさせることができる。
【0023】
また、本発明においては、炉内圧を加圧可能であり、且つ燃焼効率に優れるリジェネバーナ(リジェネレイティブバーナ)を用いることが特に好ましい。加熱手段4が、リジェネバーナである場合には、高温排気ガスの熱量を効果的に燃焼用空気に伝えることができ、熱効率に優れる金属溶解炉とすることができる。また、リジェネバーナが有する燃焼用給気・排気ファンから生ずる圧力(燃焼圧力)により、溶解室2内の炉内圧を効率的に加圧させることができ、溶解室2内の炉内圧変動を容易に行うことができる。更に、リジェネバーナから発生する炎は、輝炎フレームであることから、溶湯表面の全体を均一に加熱することができ、金属の酸化物の発生を抑制することができる。
尚、加熱手段4の数、取付け状態及び取付け位置等は特に問わない。
【0024】
更に、溶解室2は、給湯室3の有する給湯口6より高い位置に、炉内圧制御手段5を備える。炉内圧制御手段5としては、溶解室2内の炉内圧を変化させ、溶湯20が揺動するように、炉内圧を増減させるものであれば特に限定されない。炉内圧制御手段5による、炉内圧の変化とは、溶解室2内を加圧又は減圧して、一定の周期で大気圧とする、炉内圧の変化を連続して行う方法等が挙げられる。この炉内圧制御手段5としては、空気を供給及び排出できるコンプレッサーやブロー、並びに、溶解室2内の密閉を開放することができるバルブ(弁)等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、加熱手段4としてリジェネバーナを用い、炉内圧制御手段5としてバルブ(開閉バルブ)を用いる組み合わせが好ましい。加熱手段4としてリジェネバーナを用いることにより、溶解室2内の炉内圧が増加される。そして、炉内圧制御手段5としてバルブ(開閉バルブ)を用いることにより、溶解室2内を加圧化から大気圧への減圧化を行うことができ、効率的に溶解室2内の炉内圧の変化を生じさせることができる。
【0025】
炉内圧制御手段5に用いるバルブとしては、溶解室2を構成する壁の一部を開閉可能な状態にし、溶解室2内と外部とを連通させる連通孔を生じさせる開閉バルブが挙げられる。この開閉バルブの好ましい態様としては、間欠的に、溶解室2を構成する壁の一部を開閉可能な状態にし、溶解室2内と外部とを連通させる連通孔を生じさせる開閉バルブ(間欠バルブ)が挙げられる。この開閉バルブとしては、具体的には、図5〜図8に示される構造を有する開閉バルブが挙げられる。尚、炉内圧制御手段5としては、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0026】
図5に示される開閉バルブは、1枚の円板状の板(円板)107からなる回転型の開閉バルブである。円板107は、円筒100内において、直径軸を中心に回転可能な状態で固定されており、モータ等の動力により、直径軸を中心に間欠的に回転する(図5B参照)。円板107を間欠的に回転させることにより、溶解室2の内部と外部とが間欠的に連通し、溶解室2の密閉状態が解除されて、溶解室2内部の圧力が外部に開放される。
【0027】
図6に示される開閉バルブは、板状のスライド104及び105からなるスライド型の開閉バルブである。スライド104は、モータ等の動力により横方向に対して左右に連続的に繰り返し摺動する。スライド104及び105は、それぞれ連通孔106a及び106bを有している。連通孔106a及び106bの位置は、スライド104が左右に摺動する際に、連通孔106a及び106bの一部が重なり合う位置に形成されている(図6B参照)。これにより、スライド104及び105が有する連通孔106a及び106bの一部が重なり合うことにより、溶解室2の内部と外部が間欠的に連通し、溶解室2の密閉状態が解除されて、溶解室2内部の圧力が外部に開放される。
【0028】
図7に示される開閉バルブは、溶解室2内部と連通する円筒100に設けられた2枚の円板状の板(円板)101及び102からなる回転型の開閉バルブである。円板101及び102は共に、2つの連通孔を中心点から同じ距離の位置に直径上に有する。また、円板101及び102は密接して設けられており、上面の円板101は、中心を軸としてモータ等の動力により等速回転をさせることができ、円板102に対して摺動回転をする(図7B参照)。そして、図5Bを上から見た図7Cに示されるように、円板101が摺動回転することにより、円板101及び102が有する連通孔の一部が重なり合うことにより、溶解室2の内部と外部が間欠的に連通し、溶解室2の密閉状態が解除されて、溶解室2内部の圧力が外部に開放される。
【0029】
図8に示される開閉バルブは、1枚の板状の蓋部108からなる回転型の開閉バルブである。蓋部108は、開閉可能な状態で、蓋部108の一端が円筒100の上部に固定されている。蓋部108は、モータ等の動力により、円筒100の上部開口口を開閉させる。蓋部108間欠的に開閉させることにより、溶解室2の内部と外部が間欠的に連通し、溶解室2の密閉状態が解除されて、溶解室2内部の圧力が外部に開放される。
【0030】
また、溶解室2に設けられる炉内圧制御手段5の取付け状態及び取付け位置等は特に問わない。本発明の金属溶解炉1は、炉内圧制御手段5を有することにより、溶解室2内の炉内圧を変化(増減)させて、溶解槽12内の溶湯20を揺動させることにより、溶解槽12の溶湯20を効率的に攪拌することができ、アルミニウムを含む金属材料14の溶解を効率的に促進し、熱効率に優れると共に、金属溶湯を効果的に製造する金属溶解炉とすることができる。
【0031】
また、炉内圧制御手段5による炉内圧の変化を生じさせる周期(サイクル)としては、好ましくは0.5〜10秒に1回、より好ましくは1〜5秒に1回、更に好ましくは1〜3秒に1回の周期で変化させる。
また、炉内圧の変化量としては、好ましくは20〜100Paであり、より好ましくは20〜50Paである。
【0032】
本発明において、加熱手段4としてリジェネバーナを用い、炉内圧制御手段5として開閉バルブを用いる組み合わせとした場合、リジェネバーナによる加圧量は、好ましくは20〜100Paであり、より好ましくは20〜50Paである。また、開閉バルブにより、溶解室2を構成する壁の一部を開閉可能な状態にし、溶解室2内と外部とを連通させる連通孔を生じさせる周期(サイクル)としては、好ましくは0.5〜10秒に1回、より好ましくは1〜5秒に1回、更に好ましくは1〜3秒に1回の周期である。また、開閉バルブによる溶解室2内と外部とを連通させている時間は、溶解室2内の加圧状態が解除されればよく、瞬間的な連通でかまわない。具体的には、0.5〜1.5秒とすることができる。
【0033】
本発明の金属溶解炉1は、給湯室3を備える。この給湯室3は、溶解室2と連通路7を介して連通しており、溶解槽12に収納される溶湯20の表面部が仕切り部8により仕切られるように設けられている。また、給湯室3の上面部は、開放して設けられており、給湯口6を備える。
また、給湯室3は、溶湯排出炉30を備えることができる。金属材料14が溶解された溶湯20は、溶湯排出路30を通って、保持室40に送られる。即ち、揺動されている溶湯20は、その揺動により、溶湯20は給湯口3から溢れ出して(オーバーフロー)、溶湯排出路30を流れていき、保持室40に送られる。
【0034】
本発明の金属溶解炉1の溶解に用いられる金属材料14は、アルミニウムを含む金属材料である。このアルミニウムを含む金属材料としては、アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物を全量とするものでもよく、一部に含むものでもよい。但し、アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物を一部に含むものである場合、アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物の含有量は、全体に対して50質量%以上である。これらのうち、アルミニウムによる金属材料が好適に用いられる。また、所謂、リタン材と称されるアルミニウムの製品以外の鋳造不良品等も用いることができる。
また、金属材料14の形状も特に限定されない。具体的には、インゴット等の塊や切削屑等のチップ等が挙げられる。これのうち、本発明の金属溶解炉1は、すぐれた熱効率と溶解能力とを有することから、金属塊(インゴット)を金属材料14として用いるのが好ましい。尚、アルミニウムインゴットと上記リタン材とを併用して用いる場合、上記リタン材の使用量としては、アルミニウムインゴット100質量部に対して、80質量部以下が好ましい。
【0035】
[2]金属の溶解方法
本発明の金属の溶解方法は、上述の金属溶解炉1を用いた金属材料14の溶解方法であって、金属材料14を溶解室2に装入する装入工程と、前記溶解室2に装入された前記金属材料14を予備加熱する予熱工程と、溶解室2内の炉内圧を変化させて、金属材料14が溶解されてなる溶湯20を揺動させる攪拌工程、を備えることを特徴とする。
【0036】
上記装入工程は、溶解して溶湯20とする金属材料14を、金属溶解炉1が有する溶解室2内に装入する工程である。金属材料14の溶解室2への装入は、扉や蓋等により構成されている金属装入口10から行われる。
そして、溶解室2内に装入された金属材料14は、溶解室2に設置されている加熱手段4等による加熱により溶解されて、溶湯20となる。
【0037】
上記予熱工程は、溶解される金属材料14を、溶解室2内で予備加熱される工程である。金属溶解炉1が、材料載置部9を有する場合、溶解室2内に装入される金属材料14は、材料載置部9において、加熱手段により生じる熱(燃焼排気ガス)及び輻射熱等により予備加熱がされる。予備加熱が施されことにより、より効率的に金属材料14の溶解を図ることができる。
また、金属溶解炉1が有する材料載置部9が、平面方向に対して、材料装入口10から溶解槽12に向けて、下方に傾斜する傾斜面である場合には、予備加熱により金属材料14が、加熱されると、金属材料14の表面部分が溶解し、自重により傾斜面を滑りながら、溶解槽12に落ちる。そして、溶解槽12に落下した金属材料14は、溶解槽12に収納されている溶湯20中で、溶湯20から生ずる加熱と加熱手段4から生ずる加熱により溶解される。
【0038】
上記攪拌工程は、溶解室2内の炉内圧を変化させることにより、溶湯20に揺動を生じさせて、その溶湯20の揺動により、溶湯20自体を攪拌する工程である。
また、溶解室2内の炉内圧の変化としては、溶解室2が有する炉内圧制御手段5により、溶解室2内の炉内圧を周期的に増減させる変化とすることができる。この攪拌工程における炉内圧の変化については、上述の金属溶解炉1における、炉内圧制御手段、炉内圧の変化、炉内圧の変化を生じさせる周期、及び、炉内圧の変化量に関する記載をそのまま適用することができる。
【0039】
攪拌工程により、溶湯20が攪拌されることにより、溶解室2内の溶湯20を効率的に攪拌することができ、熱効率並びに溶解効率に優れる金属材料の溶解方法とすることができる。また、溶湯20の揺動による攪拌は、溶湯全体の静かな揺動によるものであることから、ドロスや金属酸化物の発生が抑制され、それらの不純物の混入が少ない溶湯を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例及び参照する図に何ら制約されるものではない。
【0041】
[1]金属溶解炉
実施例1(図1〜4及び図5参照)
実施例1の金属溶解炉1は、溶解室2と2つの給湯室3a及び3bとを有し、溶湯接触側(溶解室2内部側)は耐蝕性耐火物を使用されると共に断熱材で形成され、保温構造を有している。
溶解室2と給湯室3a及び3bとは、仕切部8により区切られて形成されており、給湯室3の幅よりやや細い幅で形成された連通路7a及び7bにより、連通して設けられている。
また、給湯室3の反対方向となる、金属溶解炉本体の後ろ側には、溶解する金属材料14を、溶解室2内に装入する材料装入口10が設けられている。
【0042】
金属溶解炉本体1の下部(底部)には、金属材料14が加熱されて得られる金属溶湯20を収納する、凹形状の溶解槽12が設けられている。この溶解槽12は、溶解室2の下部からなり、連通炉7a及び7bにより、給湯室3a及び3bと連通して設けられている。溶解槽12を形成する面のうち、材料載置部9と接する面は、平面方向に対して36度の角度で、材料装入口10から給湯室3に向けて、下方に傾斜する傾斜面として設けられている。
【0043】
また、溶解室2内において、材料装入口10側には材料載置部9が設けられている。この材料載置部9は、加熱により金属材料の表面が溶解された場合に、溶解槽12に滑り落ちるように、平面方向に対して4度の角度で、材料装入口10から溶解槽12に向けて、下方に傾斜する傾斜面として設けられている。
【0044】
溶解室2を形成する天井部において、給湯口6より高い位置となる、給湯室3側の天井部には、加熱手段4(4a〜4d)としてリジェネバーナが、直線上に等間隔で4つ設けられている。この加熱手段4は、材料載置部9に置かれる金属材料14を予備加熱すると共に溶解槽12に収納される溶湯20及び金属材料14を効率的に加熱するために、溶解室の中心方向に向けて設置されている。具体的には、加熱手段4が設置されている溶解室2を構成する天井部の給湯室側の面の一部を傾斜させることにより、溶解室の中心方向に向けて設置されている。これにより、リジェネバーナの火炎が、溶解室2の中心部に向けて放射され、溶湯20の表面を均一に加熱することができる。
【0045】
また、溶解室2を形成する天井部において、給湯口6より高い位置となる、材料装入部10側の天井部には、円筒100を介して図5に示される炉内圧制御手段5が1つ設けられている。
実施例1で設けられている炉内圧制御手段5としては、図5に示される開閉バルブAを用いた。図5に示される開閉バルブAは、溶解室2内部と連通する円筒100内に設けられた1枚の円板状の板(円板)107からなる回転型の開閉バルブである。円板107は、円筒100内において、直径軸を中心に回転可能な状態で固定されており、モータ(図示せず)により、直径軸を中心に間欠的に回転して、円筒100内を間欠的に開閉する。そして、円板107を間欠的に回転させることにより円筒100内及び熔解室2内部において、密閉状態と開放状態とを交互に間欠的に形成することができる。
【0046】
実施例2(図6参照)
実施例2における金属溶解炉は、実施例1における図5に示される炉内圧制御手段5に代えて、炉内圧制御手段5として図6に示される開閉バルブBを、図1及び図4に示されるように、給湯口6より高い位置となる、材料装入部10側の天井部に円筒100aを介して設けられている。
図6に示される開閉バルブBは、溶解室2内部と連通する円筒100a上に設けられた2枚の板状のスライド104及び105からなるスライド型の開閉バルブである。スライド104は、モータ(図示せず)により横方向に対して左右に連続的に繰り返し摺動する。スライド104及び105は、それぞれ連通孔106a及び106bを有している。連通孔106a及び106bの位置は、スライド104が左右に摺動する際に、連通孔106a及び106bの一部が重なり合う位置に形成されている。これにより、スライド104及び105が有する連通孔106a及び106bの少なくとも一部が重なり合うことにより、溶解室2の内部と外部が間欠的に連通され、溶解室2の密閉状態が解除される。それにより、溶解室2内部の圧力が外部に開放される。
【0047】
実施例3(図7参照)
実施例3における金属溶解炉は、炉内圧制御手段5として、実施例1での図5に示される開閉バルブに代えて、図7に示される開閉バルブCを、図1及び図4に示されるように、給湯口6より高い位置となる、材料装入部10側の天井部に円筒100aを介して設けられている。
図7に示される開閉バルブCは、溶解室2内部と連通する円筒100a上と円筒100bの間に設けられた、2枚の同じ大きさの円板状の板(円板)101及び102からなる回転型の開閉バルブAである。円板101及び102は、それぞれ2つの連通孔〔(103a、103b)及び(103c、103d)〕を全く同じ位置に有する(直径上に、中心点から同じ距離の位置)。円板101及び102は密接して設けられており、上面の円板101は、中心を軸としてモータ(図示せず)により回転させることができ、円板102に対して摺動回転をする(図7B参照)。そして、図7Bを上から見た図7Cに示されるように、円板101が摺動回転することにより、円板101及び102が有する連通孔の少なくとも一部が重なり合うことにより、溶解室2の内部と外部が間欠的に連通され、溶解室2の密閉状態が解除される。それにより、溶解室2内部の圧力が外部に開放される。
【0048】
実施例4(図8参照)
実施例4における金属溶解炉は、炉内圧制御手段5として、実施例1での図5に示される開閉バルブに代えて、図8に示される開閉バルブDを、給湯口6より高い位置となる材料装入部10側の天井部に円筒100を介して設けられている(図1及び図4参照)。
図8に示される開閉バルブDは、溶解室2内部と連通する円筒100上に設けられた1枚の板の蓋部108からなる開閉型の開閉バルブである。蓋部108は、開閉可能な状態で、蓋部108の一端が円筒100の上部に固定されている。蓋部108は、モータ(図示せず)等の動力により、円筒100の上部開口部を開閉させる。蓋部108を間欠的に開閉させることにより円筒100内及び熔解室2内部において、密閉状態と開放状態とを形成することができる。
【0049】
[2]金属の溶解方法
実施例5
上記実施例1の金属溶解炉1を用いて、金属溶湯を調製した。また、本実施例に用いた金属溶解炉1は、溶解室2の容積が15mであり、アルミ溶解能力が2000kg/h、アルミ溶湯の保持量が12,400kg/hであった。また、リジェネバーナとしては、テラ・コーポレーション(豊通テクノ)社製、(型式名)「RC−100R」を用いた。また、このリジェネバーナの仕様を以下に示す。尚、燃料としては、LPGガス(熱量:115.534MJ/Nm)を用いた。
(1)定格燃焼量;837.2MJ/h
(2)使用温度;1000℃以下
(3)溶解室2への供給圧力(排ガス及び空気の供給圧力);0.49kPa
【0050】
金属材料として、大きさが約65cm四方のアルミニウムのインゴット(500kg)2個を順次、材料装入口10より装入し、溶解室2内の材料載置部9に置き、加熱手段4のリジェネバーナにより、アルミニウムインゴットを加熱した。アルミニウムインゴットは、材料載置部9で予備加熱された後、溶解槽12で溶解されて、アルミニウムの溶湯(950kg/0.5h、0.35m/0.5h)を得た。得られた溶湯は、溶解槽12及び給湯室3に収容された。即ち、得られたアルミニウム溶湯は、1時間あたり、2000kgのアルミニウムインゴットに対して、1950kgであった。
【0051】
引き続き、連続的に、1時間あたり2000kgのアルミニウムを溶解して、溶湯を得るように、約30分毎に、アルミニウムのインゴット(500kg)2個を、材料装入口10より装入し、溶解室2内に装入された金属材料14は、材料載置部9において、加熱手段により生じる熱(燃焼排気ガス)及び輻射熱等により、予備加熱に供された。そして、予備加熱が施された、アルミニウムインゴットは、表面部分が溶解し、自重により材料載置部9(傾斜面)を滑りながら、溶解槽12の溶湯中に落ち、溶湯中におけるリジェネバーナの加熱及び溶湯から生じる加熱により溶解されて、溶湯が連続的に製造された。溶湯は、揺動により、給湯室3bの給湯口3bから溢れ出して(オーバーフローして)、溶湯排出路30を流れていき、保持室40に保持された。
また、アルミニウム溶湯の製造において、溶解槽内のアルミニウム溶湯温度は709〜730℃、溶湯の昇温速度は1℃/分、溶解槽内の溶湯の上面の表面積(リジェネバーナから生ずる熱に直接的に接する溶湯の表面積(溶湯受熱面積))は10.3mであった。
【0052】
また、溶解室2の天井部に設けられた上記開閉バルブAにおいて、開閉蓋である円板107を5秒で1回転するように回転させて、間欠的に2.5秒間に1回、溶解室2内部と外部とを、1秒間連通させた。そして、溶解室2内の空気を外部に排出させ、2.5秒毎に1回1秒間、外気圧となるように、溶解室内の炉内圧を変化させた。アルミニウムインゴットを溶湯する際に、リジェネバーナの燃焼から生ずる燃焼圧力により、溶解室2内の圧力が高くなるが、2.5秒に1回、間欠的に、溶解室2内部と外部とを約1秒間連通させることにより、溶解室内の炉内圧を連続的に2.5秒の間隔(1サイクル)で変化させた。この場合の溶解室2内の最高炉内圧は、0.49kPaであった。
【0053】
2.5秒毎に1回、連続的に溶解室2内の炉内圧を外気圧となるように変化させることにより、溶解室2(溶解槽12)内の溶湯が揺動され、2.5秒毎に溶湯の液面が上下動をした。揺動による上下動の液面の高さの差は、溶解室2内では12mmであり、給湯室3内では100mmであった。また、2,5秒毎の揺動による上下動により、給湯口3bから溶湯排出炉30に溢れ出した流出量は2.02kg/2.5秒であり、その溶湯の温度(出湯温度)は730℃であった。また、実施例5において、1時間当たり2tのアルミニウムを溶解するのに必要なLPGガスのガス消費量は、25.47Nm/hであった。尚、このLPGガスのガス消費量の内訳は、
【0054】
また、溶解槽12及び給湯室3の溶湯の溶湯揺動量、溶解槽12及び給湯室3の溶湯の溶湯攪拌量、及び溶解燃料原単位を以下のようにして算出し、得られた値を表1に示す。また、上記製造条件及び得られた結果等を表1に併記する。
(1)溶湯揺動量として、給湯室3における揺動による液面の上下動の高さの差から、1サイクル当たりの溶湯の揺動量を算出した。
溶湯揺動量;1.2m(給湯口6の開口面積(給湯室3の底面積)の総和)×0.1m(給湯室3における溶湯の上下動の液面の高さの差)×2,400kg/m(溶湯(アルミ)の比重)=288kg/2.5秒
(2)溶湯攪拌量として、1分間における溶湯の揺動量を溶湯の攪拌量を算出した。
溶湯攪拌量;288kg(上記溶湯揺動量)×60秒÷2.5秒/サイクル=6,900kg/min
(3)溶解燃料原単位(a)としては、1tのアルミニウムを溶解するのに必要なLPGガス量を算出した。
溶解燃料原単位(a);2942.758MJ/h(LPGが1時間に燃焼して生ずる熱量の総量)÷2t(1時間当たりの得られる溶湯量)÷115.534MJ/Nm(LPGの発熱量)=12.735Nm/t
(4)溶解燃料原単位(b)としては、1tのアルミニウムを溶解するのに必要な熱量を算出した。
溶解燃料原単位(b);12.735Nm/t(上記溶解燃料原単位(a))×115.534MJ/Nm=1,471.325MJ/t
【0055】
【表1】

【0056】
比較例1
アルミニウムの溶解能力が実施例5で用いた金属溶解炉と同じ2,000kg/hである、通常用いられるタワー型の金属溶解炉を用いて、アルミニウム溶湯を製造した。
上記のタワー型の金属溶解炉は、煙道上部より材料投入の構造を有し、材料を予熱する機能を備える金属溶解炉である。また、上記のタワー型の金属溶解炉には、炉内圧制御手段はなく、炉内圧の変動による溶湯の揺動を生じさせる機能は有しない。
【0057】
上記のタワー型の金属溶解炉に金属材料として、上記実施例5と同様にして、連続的に、1時間あたり2000kgのアルミニウムを溶解して、溶湯を得るように、約30分毎に、約65cm四方のアルミニウムインゴット(500kg)2個を、タワー型の溶解炉に投入して、アルミニウム溶湯を連続的に製造した。得られたアルミニウム溶湯は、1時間あたり、2000kgのアルミニウムインゴットに対して、1880kgであった。また、比較例1において、1時間当たり2000kgのアルミニウムを溶解するのに必要なLPGガスのガス消費量は、69.20Nm/hであった。
【0058】
[3]評価方法
上記実施例5及び比較例1において、以下のようにして、燃料効率、溶解原単価、使用ガス金額、アルミ溶解ロスを算出し、評価した。得られた結果を表2に示す。尚、LPGガスの単価は、1Nm当たり161円であった。
(a)燃料効率としては、「溶解したアルミニウム量(kg)/溶解に必要なLPGガス量(LPGガス消費量)(Nm)」として、LPGガス1Nm当たりのアルミニウム溶解量を算出した。
実施例5;2000[kg]/25.47[Nm]=78.52[kg/Nm
比較例1;2000[kg]/69.20[Nm]=28.90[kg/Nm
(b)溶解原単価としては、「ガス単価/(a)燃料効率」として、アルミニウム1kgを溶解するのに必要なガスの費用を算出した。
実施例5;161[円/Nm]/78.52[kg/Nm]=2.050[円/kg]
比較例1;161[円/Nm]/28.90[kg/Nm]=5.571[円/kg]
(c)使用ガス金額としては、「(b)溶解原単価×溶解したアルミニウム量(kg)」として、1時間でアルミニウム2000kgを溶解するのに必要なガスの費用を算出した。
実施例5;2.050[円/kg]×2000[kg/h]=4,100[円/h]
比較例1;5.571[円/kg]×2000[kg/h]=11,140[円/h]
(d)アルミ溶解ロスとしては、「[〔得られたアルミニウム溶湯量(kg)−原料として用いたアルミニウムインゴット量(kg)〕/原料として用いたアルミニウムインゴット量(kg)]×100」として、ドロスや酸化物の副生、或いは燃焼されることによりアルミニウムの溶解の際に生じたロスを算出した。
実施例5;〔(2000[kg]−1950[kg])/2000[kg]〕×100=2.5[%]
比較例1;〔(2000[kg]−1880[kg])/2000[kg]〕×100=6[%]
【0059】
【表2】

【0060】
[4]実施例の効果
以上より、本実施例の金属溶解炉1によると、金属材料14を加熱手段4により、溶湯20とする溶解室2、及び、溶解室2と連通し、給湯口6を有する給湯室3を備え、溶解室2は、給湯口6より高い位置に、加熱手段4と、溶解室2内の炉内圧を調節する炉内圧制御手段5と、を有し、炉内圧制御手段5により溶解室2内の炉内圧を変化させて溶湯20を揺動させることから、溶解室2内の溶湯20を効率的に攪拌することができ、熱効率に優れる金溶解炉とすることができ、金属溶湯を効果的に製造することができる。
【0061】
また、加熱手段4がリジェネバーナである場合には、高温排気ガスの熱量を効果的に燃焼用空気に伝えることができ、熱効率に優れる。更に、リジェネバーナから生ずる燃焼圧力により溶解室2の炉内圧を効率的に加圧させることができ、溶解室の炉内圧変動を容易に行うことができる。
【0062】
また、炉内圧制御手段5が、開閉バルブである場合には、効率的に溶解室2内の炉内圧を変動させることができ、炉内圧の変動から金属溶解炉1内の金属溶湯は揺動し、金属溶湯が攪拌されることにより、熱効率に優れる金溶解炉とすることができる。
【0063】
また、表2の結果より、上記実施例の金属溶解炉1を用いて、金属材料14を溶解室2に装入し、溶解室2に装入された金属材料14を予備加熱する予熱工程と、金属材料14を溶解して、溶湯20を得る溶解工程と、溶解室2内の炉内圧を変化させて溶湯20を揺動させる攪拌工程と、を備える本実施例の金属材料の溶解方法によると、LPGガスの消費量を低減することができ、燃料効率に優れる金属の溶解方法とすることができる。また、溶解原単価及び使用ガス金額の抑制に優れ、且つ、アルミ溶解ロスの抑制にも優れ、効率的に溶湯を得ることができる優れた金属材料の溶解方法とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の金属溶解炉及び金属の溶解方法は、金属溶湯を製造する技術として、広く利用される。特に、アルミニウムの金属溶湯の製造に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1;金属溶解炉本体、2;溶解室、3;給湯室、4(4a〜4d);加熱手段、5;炉内圧制御手段、6(6a〜6b);給湯口(給湯室の給湯口)、7(7a、7b);連通路、8;仕切部、9;材料載置部、10;材料装入口、12;溶解槽、14;金属材料、20;溶湯、30;溶湯排出路、40;保持室(溶湯受け部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含む金属材料を溶解して溶湯を製造する金属溶解炉であって、
前記金属材料を加熱手段により、溶湯とする溶解室と、
前記溶解室と連通し、給湯口を有する給湯室と、を備え、
前記溶解室は、前記給湯口より高い位置に、前記加熱手段と、該溶解室の炉内圧を
変化させる炉内圧制御手段と、を有し、前記炉内圧制御手段により前記溶解室内の炉内圧を変化させて前記溶湯を揺動させる溶湯攪拌機能を有することを特徴とする金属溶解炉。
【請求項2】
前記加熱手段が、炉内圧を加圧可能なバーナである請求項1に記載の金属溶解炉。
【請求項3】
前記炉内圧制御手段が、開閉バルブである請求項2に記載の金属溶解炉。
【請求項4】
前記溶解室内に、前記金属材料が載置される載置部を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属溶解炉。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の金属溶解炉を用いた、アルミニウムを含む金属材料の溶解方法であって、
前記金属材料を溶解室に装入する装入工程と、
前記溶解室に装入された前記金属材料を予備加熱する予熱工程と、
前記溶解室内の炉内圧を変化させて、前記金属材料が溶解されてなる溶湯を揺動させる攪拌工程と、を備えることを特徴とする金属材料の溶解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−193922(P2012−193922A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59594(P2011−59594)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年9月24日 東海逓信印刷株式会社発行の「パンフレット」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年9月24日 インターネットアドレス「http://www.aicere.co.jp/」に発表
【出願人】(501417848)アイチセラテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】