説明

金属端子と導線の溶接方法、および金属端子

【課題】溶接によって金属端子と2本の導線を確実に接合可能とする。
【解決手段】一端が開放した1対のスリット3a,3bを金属端子1に形成し、そのスリット3a,3b内にそれぞれ導線2a,2bを収容し、スリット3a,3b間に形成される舌片4を熱で溶かして各導線2a,2bに接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属端子と導線の溶接方法、およびその溶接方法に用いる金属端子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属端子と導線の接続は、一般に、はんだ付けにより行なわれる。しかし、金属端子と導線のはんだ接合部は、熱サイクルを繰り返し受ける環境下では劣化しやすく、信頼性に劣る。そのため、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車等に組み込まれるモータなど、温度変化を繰り返す電装部品では、金属端子と導線を溶接することが多い。
【0003】
このように導線と溶接して接続する金属端子として、図4に示すように導線を受け入れる斜めのスリット20を先端に有し、そのスリット20と先端縁21の間に形成される先端片22をアーク熱で溶かしてスリット20内の導線に接合させるようにした金属端子が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−34110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この金属端子に2本の導線23a,23bを接続する場合、スリット20内に導線23a,23bを収容して先端片22をアーク熱で溶かすと、溶けた先端片22がスリット入口側の導線23aのみと接合してスリット奥側の導線23bと接合しないことがある。また、溶けた先端片22をスリット奥側の導線23bと確実に接合させようとすると、アーク熱が過大となってスリット入口側の導線23aを破損することがある。そのため、金属端子と2本の導線を確実に接合させるのが難しい。
【0005】
よって、2本の導線を並列に巻回して占積率を高めたコイルをハイブリッド自動車等のモータに採用する場合、金属端子と2本の導線の接合の信頼性を向上させる必要があった。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、溶接によって金属端子と2本の導線を確実に接合可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、一端が開放した1対のスリットを金属端子に形成し、前記1対のスリット内にそれぞれ導線を収容し、前記スリット間に形成される舌片を熱で溶かして前記各導線に接合させて金属端子と導線を溶接するようにした。
【0008】
この溶接方法は、前記舌片が、前記導線の位置よりも前記スリットの開放端側に、導線の位置の幅よりも幅の大きい幅広部を有し、その幅広部を熱で溶かして前記各導線に接合させるようにするとより好ましいものとなる。このようにすると、幅広部を熱で溶かして前記各導線に接合させるときに、熱で溶けた幅広部がスリット内の導線に覆いかかるので、金属端子と導線の接合がより確実になる。
【0009】
また、この発明では、上記の溶接方法に用いる金属端子として、導線を受け入れる1対のスリットを有し、その1対のスリット間に、熱で溶かして前記各スリット内の導線に接合させる舌片を有する金属端子を提供する。この金属端子は、舌片の両側に導線を振り分けて配置するので、舌片を熱で溶かしたときに舌片が各スリット内の導線に均等に接触しやすい。そのため、スリット内に収容した各導線との接合の信頼性が高い。
【0010】
この金属端子は、前記舌片の前記導線の位置よりも前記スリットの開放端側に、導線の位置の幅よりも幅の大きい幅広部を設けるとより好ましいものとなる。このようにすると、舌片を熱で溶かしたときに幅広部がスリット内の導線に覆いかかるので、スリット内に収容した各導線との接合がより確実である。
【発明の効果】
【0011】
この発明の金属端子と導線の溶接方法は、舌片の両側に導線を振り分けて配置するので、熱で溶かした舌片が各スリット内の導線に均等に接触しやすい。そのため、金属端子と導線の接合の信頼性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、この発明の金属端子の実施形態を示す。この金属端子1は、導線2a,2bを受け入れる1対のスリット3a,3bを有し、各スリット3a,3bは一端が開放している。また、スリット3a,3b間に形成される舌片4は、導線2a,2bの位置よりもスリット3a,3bの開放端側に、導線2a,2bの位置の幅よりも幅の大きい幅広部5を有する。
【0013】
また、この金属端子1は、相手部材6を受け入れるU状の接続部7を有し、接続部7をかしめて接続部7内の相手部材6と接続することができる。
【0014】
この金属端子1と導線2a,2bとの接続は、たとえば次のようにして行なう。まず、金属端子1を、スリット3a,3b間の舌片4が上を向くように配置する。つぎに、図2(a)に示すように、各スリット3a,3b内にそれぞれ導線2a,2bを収容し、舌片4の上方に溶接トーチ8を配置する。その後、図2(b)に示すように、溶接トーチ8と舌片4の間にアーク9を発生させ、アーク9の熱で舌片4を溶かして導線2a,2bに接合させる。
【0015】
さらに、図1に示す接続部7内に相手部材6を収容し、接続部7をかしめると、導線2a,2bと相手部材6が電気的に接続される。
【0016】
この金属端子1は、舌片4の両側に導線2a,2bを振り分けて配置するので、舌片4を熱で溶かしたときに、溶けた舌片4が各導線2a,2bに均等に接触しやすい。そのため、スリット3a,3b内に収容した各導線2a,2bとの接合の信頼性が高い。
【0017】
また、幅広部5の幅が、導線2a,2bの位置の舌片4の幅よりも大きいので、舌片4を熱で溶かしたときに幅広部5がスリット3a,3b内の導線2a,2bに覆いかかる。そのため、スリット3a,3b内に収容した各導線2a,2bとの接合がより確実である。
【0018】
この金属端子1は、図3に示すように、回転電機用ステータの分割コア10にインシュレータ11を介して並列に巻回した2本の導線2a,2bで構成されるコイル12と、そのコイル12に電力を供給する給電用バスバー(図示せず)とを接続する端子として用いることができる。このようにすると、2本の導線2a,2bを並列に巻回してコイル10の占積率を高めつつ、コイル10と給電用バスバーを確実に接続することができる。
【0019】
上記実施形態では、アークの熱で舌片を溶かしているが、他の方式で溶かしてもよく、たとえばレーザを舌片4に照射し、そのレーザの熱で舌片4を溶かしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の金属端子の実施形態を示す斜視図
【図2】(a)は図1の金属端子の舌片が溶ける前の状態を示す図、(b)は図1の金属端子の舌片が溶けた後の状態を示す図
【図3】図1の金属端子に、回転電機用ステータのコイルを接続した状態を示す斜視図
【図4】従来の金属端子を示す斜視図
【符号の説明】
【0021】
1 金属端子
2a,2b 導線
3a,3b スリット
4 舌片
5 幅広部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開放した1対のスリット3a,3bを金属端子1に形成し、前記1対のスリット3a,3b内にそれぞれ導線2a,2bを収容し、前記スリット3a,3b間に形成される舌片4を熱で溶かして前記各導線2a,2bに接合させる金属端子と導線の溶接方法。
【請求項2】
前記舌片4が、前記導線2a,2bの位置よりも前記スリット3a,3bの開放端側に、導線2a,2bの位置の幅よりも幅の大きい幅広部5を有し、その幅広部5を熱で溶かして前記各導線2a,2bに接合させる請求項1に記載の金属端子と導線の溶接方法。
【請求項3】
導線2a,2bを受け入れる1対のスリット3a,3bを有し、その1対のスリット3a,3b間に、熱で溶かして前記各スリット3a,3b内の導線2a,2bに接合させる舌片4を有する金属端子。
【請求項4】
前記舌片4は、前記導線2a,2bの位置よりも前記スリット3a,3bの開放端側に、導線2a,2bの位置の幅よりも幅の大きい幅広部5を有する請求項3に記載の金属端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−253159(P2007−253159A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76735(P2006−76735)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】