説明

金属箔成形体

【課題】金属箔成形体の表面への装飾を容易にするとともに、材料コストの低減を図ることができる金属箔成形体を提供する。
【解決手段】ガスレンジ周囲の調理時の汚れを防止するために使用される汚れ防止板及びガスコンロ用マット等の金属箔成形体であって、汚れ防止板1(金属箔成形体)は、厚さ25μm〜100μmの金属箔により形成された基材パネル2と、基材パネル2よりも薄い厚さ3μm〜50μmの金属箔により形成され、表面に装飾印刷が施された装飾シート3とが積層されることにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスレンジ周囲の調理時の汚れを防止するために使用される汚れ防止板及びガスコンロ用マット等の金属箔成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理時においてガスレンジから周囲へ汚れが飛散することを防止するために、特許文献1及び特許文献2に提案されているようなガスレンジの周囲に立設される汚れ防止板や、特許文献3に提案されているようなガスコンロ用マット(汚れ防止シート)等の金属箔成形体が用いられている。これらの金属箔形成体は、金属箔の基材パネルを用途ごとに種々の形状に成形することにより構成されている。
近年では、金属箔成形体の外観デザイン性を向上させるために、金属箔成形体を設置した際に、使用者から視認される金属箔成形体の表面全体に、装飾印刷が施されたものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11‐264552号公報
【特許文献2】特開2000‐297937号公報
【特許文献3】実開昭62‐23836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属箔成形体を構成する基材パネルの広い表面に直接、装飾印刷を施すことは、適用可能な印刷装置に制限があり、容易ではない。
また、材料コスト削減の観点から、基材パネルを薄くすることが考えられているが、汚れ防止板に適用した場合には、それ自体で立設可能な程度の剛性を確保することが必要であり、ある程度の厚みが必要である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、金属箔成形体の表面への装飾を容易にするとともに、剛性を確保しながら材料コストの低減を図ることができる金属箔成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、厚さ25μm〜100μmの金属箔により形成された基材パネルと、該基材パネルよりも薄い厚さ3μm〜50μmの金属箔により形成され、表面に装飾印刷が施された装飾シートとが積層されていることを特徴とする金属箔成形体である。
また、本発明の金属箔成形体において、前記装飾シートは、前記基材パネルの両面に積層されていてもよい。
【0007】
厚く形成された基材パネルと、薄く形成された装飾シートとを積層することにより、金属箔成形体の総厚を薄くしながらも、金属箔成形体の用途ごとに必要な剛性を確保することができ、材料コストの低減を図ることができる。
また、厚みが薄い装飾シートの表面にあらかじめ装飾印刷を施した後に、基材パネルと積層することで、金属箔成形体の表面への装飾を容易にすることができる。
また、装飾シートの厚みを変更するだけで、金属箔成形体の総厚を管理することができるので、厚さの異なる基材パネルを、用途ごとに製造する必要がなく、合理的に製造することが可能である。
【0008】
本発明の金属箔成形体において、前記装飾シートは、前記基材パネルの少なくとも一部に積層されているとよい。
基材パネルの表面サイズ全面に印刷を施す場合は、印刷幅が広く、印刷時の印刷版の位置合わせが難しいため、見当ずれ(版ずれ)が生じた際のロスが大きくなりやすい。一方、装飾シートを基材パネル表面の一部に積層する構成とし、装飾シートを基材パネルよりも小さい幅で設けた場合には、製造が安定するとともに、汎用品の印刷版が使用できる等の利点がある。
また、基材パネルと装飾シートを一部重ねて積層することにより、その積層部分の剛性を確保できるので、金属箔成形体の全体を積層して設ける必要はなく、材料コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材パネルと装飾シートとを積層して設けることにより、金属箔成形体の表面への装飾を容易にするとともに、剛性を確保しながら材料コストの低減を図ることができるので、用途ごとに適した金属箔成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の汚れ防止板を示す斜視図である。
【図2】図1に示す汚れ防止板の展開平面図である。
【図3】図1に示す汚れ防止板の要部断面図である。
【図4】本発明のその他の実施形態の汚れ防止板を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の金属箔成形体の一実施形態である汚れ防止板について、図面を参照して説明する。
本実施形態の汚れ防止板1は、図1に示すように、ガスコンロ10のトッププレート11の周囲に立設されて使用されるものである。なお、図1においては、ガスコンロ10を構成するガスバーナー等の図示を省略している。
【0012】
汚れ防止板1は、図1から図3に示すように、厚みの厚い金属箔により形成された基材パネル2と、この基材パネル2よりも薄い金属箔により形成され、表面に装飾印刷が施された装飾シート3とが積層されて構成されており、装飾シート3は、基材パネル2の幅方向(図2では左右方向)の両端部を除く範囲に貼り合わされている。
【0013】
基材パネル2は、厚さ25μm〜100μmの金属箔により形成され、例えば、JIS規格における3000系合金のアルミニウム等の剛性の高い材料が使用される。また、装飾シート3は、基材パネル2よりも薄い厚さ3μm〜50μmの金属箔により形成され、例えば、JIS規格における1000系や8000系合金のアルミニウム等の比較的軟質で印刷に適した材料が使用される。この装飾シート3には、図3に示すように、基材パネル2との接合面とは反対側の面に印刷により装飾(印刷層31)が施されている。
また、基材パネル2と装飾シート3とは接着剤等の接着層32を介して貼り合わせられている。
【0014】
汚れ防止板1には、その周縁にわたって縁巻部4が形成され、装飾シート3の上下方向の両端縁部が、縁巻部4に巻き込まれて基材パネル2と一体化されている。これにより、汚れ防止板1の交換作業中に、その外周縁部に手が触れた際にも手を傷つける危険がない。また、縁巻部4を設けることにより、汚れ防止板1全体の剛性を高めることができる。
【0015】
また、汚れ防止板1には、図1に示すように、幅方向で折り曲げる為の折り目5が、上下方向にわたって形成されており、これら折り目5によって汚れ防止板1が中央部6A及びその両側部6Bに区画されている。なお、装飾シート3は、基材パネル2の両側端部を除く部分であって、これら折り目5を跨って貼り付けられている。
そして、汚れ防止板1の表面全体には、連続模様の微細なエンボス加工が施されている。エンボスの模様は、特に限定されず、例えば、絹目、布目、波目、梨地、格子、円形、三角形、四角形、多角形等の模様が挙げられる。このように表面全体に施したエンボス加工により、全体の剛性が高められるとともに、表面の光沢を抑えて外観を向上させることができる。
また、折り目5によって区画された中央部6A及び両側部6Bの平坦部には、複数の凹部7が形成され、全体の剛性が高められている。
なお、この汚れ防止板1の製造に際して、エンボスや凹部7、縁巻部4の成形は、基材パネル2と装飾シート3との積層後に基材パネル2と装飾シート3とが重ねられた状態で施される。
そして、このようにして構成された汚れ防止板1をガスコンロ10のトッププレート11の周囲に設置する際には、両側部6Bの下部に設けられた土台部21を折り曲げることにより、汚れ防止板1を安定させた状態で立設させることができる。
【0016】
このように、本実施形態の汚れ防止板によれば、厚く形成された基材パネル2と、薄く形成された装飾シート3とを積層することにより、汚れ防止板1の総厚を薄くしながらも必要な剛性を確保することができるので、材料コストの低減を図ることができる。
また、厚みが薄く比較的軟質に設けられた装飾シート3の表面に、あらかじめ装飾印刷を施した後に、基材パネル2と積層することで、汚れ防止板1への装飾を容易にすることができる。
また、装飾シート3の厚みを変更するだけで、汚れ防止板1の総厚を管理することができるので、厚さの異なる基材パネル2を、用途ごとに製造する必要がなく、合理的に製造することが可能である。
【0017】
また、本実施形態のように、装飾シート3を基材パネル2表面の一部に積層する構成とし、装飾の印刷幅を狭くすることにより、広幅印刷の場合と比べて製造が安定するだけでなく、汎用品の印刷版が使用できる等、サイズの大きい汚れ防止板等の金属箔成形体に対しても容易に装飾を施すことができる。
さらに、本実施形態においては、汚れ防止板1の折り目5部分まで基材パネル2と装飾シート3を一部重ねて積層することにより、折り曲げ部が補強され、縁巻部4にクラックが生じにくくなっている。このように、強度が必要な部分に装飾シート3を重ねることにより必要な強度を確保できるので、装飾シート3を汚れ防止板1の全体に積層して設ける必要はなく、さらに材料コストの低減を図ることができる。
また、装飾印刷を施す際には、乾燥炉で熱衝撃を受けるため、材料の物性が損なわれるおそれがある。しかし、本実施形態の汚れ防止板1においては、装飾シート3に印刷を施した後に基材パネル2に貼り付ける構成としていることから、必要な剛性を確実に確保することができる。
【0018】
なお、本発明は、基材パネル2の片面に装飾シート3を積層し、その反対側の面に直接装飾を施すことを妨げるものではない。
また、図4に示すように、基材パネル2の両面に装飾シート3を積層することにより、汚れ防止板50の両面に装飾を施すことができる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明に係る汚れ防止板の実施例について説明する。
表1に示すように、種々の厚みで形成した基材パネルと装飾シートとを組合せて汚れ防止板を作製し、装飾の容易性を確認した。
図2に示すように、基材パネル2は、3004系合金のアルミニウムにより幅W1:1230mmで形成し、表1に示すように試料ごとに厚みを変更したものを用意した。また、装飾シート3は、8021系合金のアルミニウムにより基材パネル2の幅W1と同じ幅で形成して汚れ防止板1の全体に積層したものと、幅W1よりも小さい幅W2:570mmで形成して汚れ防止板1の中央部のみに装飾が施されるようにしたものとを用意した。なお、これら装飾シート3においても、基材パネル2と同様に、試料ごとに厚みを変更したものを用意した。これら幅を異ならせた装飾シート3について、表1に示す「装飾シートの面積」において、基材パネル2と装飾シート3とを同幅に形成した試料については「基=装」と記載した。また、装飾シート3を基材パネル2の幅W1よりも小さい幅W2で形成した試料については「基>装」と記載した。
【0020】
また、表1の「印刷コスト」は、装飾シート3の表面への印刷に係るコストを評価したものであり、基材パネル2と同幅の装飾シート3を用いた場合には、広幅印刷が必要となりコストが高くなることから「△」とし、印刷幅を小さくした印刷が可能なものについては「○」として評価した。
【0021】
「貼り合わせ」は、基材パネル2と装飾シート3との貼り合わせの容易性を評価したものであり、貼り合わせ可能であったものを「○」、貼り合わせ不可能であったものを「×」として評価した。
また、実施例14,15の試料は、図4に示すように、基材パネル2の両面に装飾シート3を積層して形成したものである。それ以外の試料は、図3に示すように、基材パネル2の片面に装飾シート3を積層することにより形成した。
【0022】
【表1】

【0023】
表1からわかるように、基材パネルを厚さ25μm〜100μmに形成し、装飾シートを基材パネルよりも薄い厚さ3μm〜50μmに形成することにより、汚れ防止板の総厚を薄くしながらも、必要な剛性を確保できる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、汚れ防止板の適用例を説明したが、本発明は、ガスレンジ周囲に設置される汚れ防止板の他にも、ガスコンロ用マットや換気扇カバー等の金属箔成形体に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 汚れ防止板(金属箔成形体)
2 基材パネル
3 装飾シート
4 縁巻部
5 折り目
6A 中央部
6B 側部
7 凹部
10 ガスコンロ
11 トッププレート
21 土台部
31 印刷層
32 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ25μm〜100μmの金属箔により形成された基材パネルと、該基材パネルよりも薄い厚さ3μm〜50μmの金属箔により形成され、表面に装飾印刷が施された装飾シートとが積層されていることを特徴とする金属箔成形体。
【請求項2】
前記装飾シートが、前記基材パネルの両面に積層されていることを特徴とする請求項1記載の金属箔成形体。
【請求項3】
前記装飾シートは、前記基材パネルの少なくとも一部に積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属箔成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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