説明

金属粉加圧装置

【課題】ヒューム等の金属粉をペレット状に押し固める金属粉加圧装置において、加圧ブロックに嵌合したスリーブの位置ずれを防止する。
【解決手段】加圧ブロック2に嵌合し、内側に加圧室22を形成するスリーブと、加圧室22に挿入されて金属粉を加圧するプランジャと、加圧ブロック2の側面に設けられたシャッタガイド41と、シャッタガイド41に案内されて開閉し、加圧室22の開口を閉鎖及び開放するシャッタ40と、を含んで構成される金属粉加圧装置であり、シャッタ40の先端部に凹部44が形成され、開いたときに、凹部44が加圧室22の開口を開放し且つ凹部両脇の凸部45がスリーブのフランジ24に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属加工時に発生する金属粉を押し固める装置に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラズマアークやレーザによる金属の熱切断加工時には、ヒュームと呼ばれる酸化鉄を主成分とした金属粉が発生する。このヒュームに代表される金属加工時の金属粉は、特許文献1,2に開示されるような金属粉加圧装置を使用して押し固められ、ペレット状にして排出される。
【0003】
金属粉加圧装置は、ホッパ等に集められた金属粉を加圧室内に収容し、油圧シリンダ等の加圧用アクチュエータにより駆動されるプランジャで加圧することで、加圧室内の金属粉を押し固める装置である。加圧室は、加圧ブロックに嵌合した円筒状スリーブの内側に形成され、該スリーブの一端から加圧室内にプランジャが挿入されて摺動し、スリーブの他端側へ金属粉を加圧する。当該加圧室は、スリーブの他端を通し開口しており、当該開口を開閉するシャッタが設けられている。シャッタは、開閉用アクチュエータにより駆動され、加圧ブロックに設けられたシャッタガイドに案内されて開閉動作し、加圧時に閉じてスリーブ開口を閉鎖し、金属粉加圧を可能とする一方、加圧後には開いて、スリーブ開口を開放し、加圧により形成された金属粉ペレットの排出を可能とする。なお、特許文献1,2において、加圧室は圧縮室、プランジャは可動ロッド、加圧ブロックはボックス本体、スリーブは内筒、シャッタはゲート、シャッタガイドはガイドブロックと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−224892号公報
【特許文献2】特開2002−224893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記金属粉加圧装置において、加圧室を形成するスリーブは、通常、加圧ブロックに嵌合させてあるだけで、摩耗や破損時には抜き出して交換できるようにしてある。これに起因して、金属粉加圧後にシャッタを開いてプランジャにより金属粉ペレットを押し出すときに、プランジャの摺動に伴ってスリーブが一緒に動き、抜き出し方向へ位置ずれを起こす場合がある。すなわち、シャッタを閉じて加圧するときには当該シャッタがスリーブ押さえとして機能するのでスリーブの移動は抑えられるが、シャッタを開けてプランジャを摺動させる金属粉ペレットの排出時には、シャッタによる押さえがなくなるので、加工ブロックに嵌合されているだけのスリーブは、位置ずれを生じ得る。
したがって、このようなスリーブの位置ずれを防止すべく何らかの工夫が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して提案する金属粉加圧装置は、加圧ブロックに嵌合し、内側に加圧室を形成するスリーブと、該スリーブの一端から前記加圧室に挿入されるプランジャと、該プランジャを駆動する加圧用アクチュエータと、前記スリーブの他端が位置する前記加圧ブロックの側面に設けられたシャッタガイドと、該シャッタガイドに案内されて開閉し、前記スリーブ他端の開口を閉鎖及び開放するシャッタと、該シャッタを駆動する開閉用アクチュエータと、を含んで構成される金属粉加圧装置であり、
前記シャッタの先端部に凹部が形成され、開いたときに、当該凹部が前記スリーブの開口を開放し且つ該凹部両脇の凸部が前記スリーブの他端面に当接する、金属粉加圧装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記提案に係る金属粉加圧装置は、シャッタ先端部に凹部を形成したことにより、その両脇の凸部によって、開いたときにスリーブを押さえることができる。すなわち、シャッタを開けてプランジャを摺動させる金属粉ペレットの排出時に、シャッタの凹部が金属粉ペレットの排出を許容すると共に、シャッタの凸部がスリーブ押さえとして機能し、スリーブの位置ずれ発生が抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】金属粉加圧装置の実施形態を示した平面図。
【図2】図1中に示すY方向から見た一部断面を含む側面図。
【図3】図1中に示すX方向から見た側面図。
【図4】(A)開いたときのシャッタの状態を示す図3相当の図。(B)閉じたときのシャッタの状態を示す図3相当の図。(C)比較のために示す、単純な長方形のシャッタを有する金属粉加圧装置の図3相当で見た図。
【図5A】金属粉加圧前の状態を示す要部断面図。
【図5B】金属粉加圧時の状態を示す要部断面図。
【図5C】金属粉ペレットを加圧室から押し出したときの状態を示す要部断面図。
【図5D】金属粉ペレットを装置外へ排出したときの状態を示す要部断面図。
【図6】シャッタの別の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図3に、金属粉加圧装置の実施形態を平面図と側面図で示す。図1が上方から見た平面図、図2が図1中X方向から見た側面図、図3が図1中Y方向から見た側面図である。図2中、加圧ブロック及びスリーブは断面で示している。
【0010】
金属粉加圧装置は、金属板のベース1上に、加圧ブロック2と、一例として油圧シリンダを使用した加圧用アクチュエータ3及び開閉用アクチュエータ4とを、それぞれ位置合わせしてボルト止めして構成されている。加圧用及び開閉用アクチュエータ3,4としては、空気圧や水圧シリンダ、モータを使用してもよい。
【0011】
加圧ブロック2は、金属製直方体で、金属粉を貯留するホッパ等から金属粉を収容する受入孔20が形成される。この加圧ブロック2に、スリーブ21が、X方向を軸方向として嵌合している。スリーブ21は、例えばダイス鋼を材料とした円筒部品で、その内側に加圧室22が形成される。スリーブ21には加圧ブロック2の受入孔20に連通する貫通孔23が形成され、これら受入孔20及び貫通孔23を通して加圧室22内に金属粉が収容される。
【0012】
このスリーブ21の一端から加圧室22内に、プランジャ30が挿入される。プランジャ30は、接続具31により加圧用アクチュエータ3のロッド(ピストンロッド)32に接続され、加圧用アクチュエータ3の駆動により、加圧室22内でX方向に往復動作する。プランジャ30には、クロムモリブデン鋼を材料として表面にフッ素樹脂コーティングしたものを使用することができる。
【0013】
プランジャ30が挿入される一端とは反対側のスリーブ21の他端において、加圧室22は開口している。そして、この開口を閉鎖及び開放するシャッタ40が、シャッタガイド41に案内されるようにして設けられる。シャッタガイド41は、スリーブ21の他端が位置する加圧ブロック2の側面における上側と下側に、それぞれボルト止めされた断面鉤形のガイドレールである。この上下のシャッタガイド41の間に保持されて、シャッタ40がY方向において往復動作する。シャッタ40は、基端部で開閉用アクチュエータ4のロッド(ピストンロッド)42に接続され、駆動される。すなわち、ロッド42の先端部位に段差部43が周設されると共に、この段差部43を含んだロッド先端形状に相応する係合孔がシャッタ40の基端部に形成され、両者の係合によってシャッタ40がロッド42に接続される。
【0014】
スリーブ21の他端外縁にはフランジ24が周設されており、スリーブ21は、フランジ24を加圧ブロック2の側面に当接させた状態で嵌合している。周設されたフランジ24には上下に切欠平坦部があり、当該平坦部がシャッタガイド41の案内面に当接するので、スリーブ21の回転が防止され、これにより、受入孔21に対応するように貫通孔23の位置も決められる。なお、フランジ24については、部分的に形成したものでもよいし、あるいは、一端側同様にフランジを形成しない場合もあり得る。しかし、以下に説明するシャッタ40によるスリーブ押さえ機能を確実に発揮させるためには、フランジ24を全周に周設するのが好ましい。
【0015】
シャッタガイド41に沿って開閉するシャッタ40は、スリーブ21のフランジ24上を摺動する。本実施形態のシャッタ40は、図4の(A),(B)に示すように、先端部に凹部44が形成されている。なお、図4では、シャッタ40の全体が見えるように、シャッタガイド41を断面にしてある。
【0016】
図4(A)に示すように、凹部44は、シャッタ40が開いたときに、スリーブ21他端の開口(加圧室22)を開放する。一方このとき同時に、凹部44の両脇に形成される凸部45が、スリーブ21の他端面に、すなわち本実施形態の場合はフランジ24が形成されているので当該フランジ24に、当接する。この凹部44を形成したシャッタ40の先端部形状により、フランジ24のほぼ半分程度が、シャッタ40により押さえられることになる。つまり、シャッタ40を開けると共にプランジャ30を摺動させ、加圧室22から金属粉ペレットを排出するときに、シャッタ40の凹部44が金属粉ペレットの排出を許容すると共に、その凹部44の両脇にある凸部45が、スリーブ21の抜け出しを防止するスリーブ押さえとして機能し、スリーブ21の位置ずれ発生が抑止される。
【0017】
また、シャッタ40の先端部に凹部44及び凸部45が形成されることにより、シャッタ40の開閉ストロークの短縮と加圧時におけるシャッタ40の耐圧性の向上との両立が可能になる。図4(B)に示すように、凹部44を形成したことにより、シャッタ40の開から閉へのストロークは、凹部44の底面がスリーブ21の開口を超えるだけのストロークで良い。すなわち、シャッタ40のストロークは、スリーブ21の開口直径と同程度とすることができる。シャッタ40のストロークが短ければ、加圧後にシャッタ40を開くとき、加圧室22内でシャッタ40に押し付けられている金属粉ペレットとシャッタ40とがこすれる距離を短くすることができ、金属粉ペレットの型崩れを抑制することができる。
【0018】
一方で、このように開から閉へのシャッタストロークが短くとも、シャッタ40が閉じたとき、凹部44両脇にある凸部45がシャッタガイド41の端近くまで移動するので、シャッタ閉時におけるシャッタガイド41とシャッタ40との接触域を広く(長く)とることができる。当該接触域が広ければそれだけ圧力が分散されるので、プランジャ30の加圧に対するシャッタ40の耐圧性が、経時的な劣化も含め向上する。
【0019】
比較のために示した図4(C)を参照すると、この金属粉加圧装置は、凹部44及び凸部45の無い単純な長方形のシャッタ40’を有する。長方形シャッタ40’では、開から閉へのストロークを、先端面がスリーブ21の開口を超えるだけ、すなわち開口直径と同程度の短いストロークd1とした場合、シャッタ閉時におけるシャッタガイド41とシャッタ40’との接触域が図4(B)に比べて狭い(短い)。逆に、シャッタ40’の開から閉へのストロークを、先端面がシャッタガイド41の端近くまで移動する長いストロークd2とした場合、加圧後にシャッタ40’を開くとき、加圧室22内でシャッタ40’に押し付けられている金属粉ペレットとシャッタ40’とがこすれる距離が長くなる。つまり、図4(C)の比較例では、短いストロークと接触域の広さとを両立させることはできない。図4の(A),(B)に示す本実施形態の金属粉加圧装置と(C)に示す比較例の金属粉加圧装置とを比べれば、凹部44を形成したシャッタ40の方が、上記の点で優れていることが分かる。
【0020】
図5A〜図5Dに、本実施形態の金属粉加圧装置における金属粉ペレット成形工程につき順を追って示している。
【0021】
まず、図5Aに示すように、プランジャ30が後退位置にあり且つシャッタ40が閉じた状態で、金属粉を集めたホッパ等から受入孔20及び貫通孔23を通して加圧室22内に金属粉が収容される。次いで、図5Bに示すように、加圧用アクチュエータ3によりプランジャ30が前進し、加圧室22内の金属粉をシャッタ40に押し付けるように加圧する。このときのシャッタ40は、上述したように、凸部45がシャッタガイド41の端近くまで前進して閉じた状態にあり、シャッタガイド41とシャッタ40との接触域が広い。
【0022】
所定の圧力をかけて金属粉を加圧した後、図5Cに示すように、開閉用アクチュエータ4によりシャッタ40が後退して開き、スリーブ21の他端にある加圧室22の開口が開放される。このときのシャッタ40の閉から開へのストロークは、上述したように、凹部44の底面がほぼ加圧室22の開口直径分だけ移動する程度であり、加圧室22内の金属粉ペレットと開動作するシャッタ40とがこすれる距離は短い。
【0023】
シャッタ40が開くと、加圧用アクチュエータ3によりプランジャ30が金属粉ペレットの厚み分だけ前進し、金属粉ペレットをスリーブ21他端の開口から押し出す。このプランジャ30が前進して金属粉ペレットを押し出す際に、上述したように、凹部44及び凸部45を有するシャッタ40の先端部形状により、スリーブ21のフランジ24のほぼ半分程度がシャッタ40により押さえられ、スリーブ21の抜け出しを防止するスリーブ押さえの機能が発揮されて、スリーブ21の位置ずれ発生が抑止される。
【0024】
次いで、図5Dに示すように、開閉用アクチュエータ4によってシャッタ40が前進して閉じつつ、開口から押し出された金属粉ペレットを図示せぬ排出経路へ排出する。そして、シャッタ40が閉じると、加圧用アクチュエータ3によってプランジャ30が後退し、図5Aの状態へ復帰して後続工程が繰り返される。
【0025】
図6にシャッタの別の形態を示す。図6中、(A)は加圧ブロックの断面と共に図1のY方向から見て示すシャッタの端面図、(B)は加圧ブロックの断面と共に上から見て示すシャッタの断面図、(C)は上から見たシャッタの平面図、(D)は図1のX方向から見たシャッタの側面図である。
【0026】
この例のシャッタ400は、凹部404の両脇に形成される凸部405の先端形状が、図1〜図5に示すシャッタ40と相異している。すなわち、凸部405の先端面は、前進するときに、下側のシャッタガイド401の案内面上に落ちた金属粉を、該案内面に形成の落とし溝406へ掻き出すべく傾斜がつけられる。図6の(B)又は(C)から分かるように、下側にくる凸部405は、上からみた場合に、スリーブ21側を下底、反対側を上底とした台形をなすように、先端辺が傾斜している。シャッタガイド401の案内面には、凸部405の先端面傾斜に対応させて、案内面の中央付近とスリーブ21から遠い方の端とに、シャッタ400の進行方向に沿った2条の落とし溝406が凹設される。
【0027】
シャッタ400は、凹部404の両脇に形成される凸部405のどちらを下にして取り付けても良いように、凹部405の両方とも先端面を同様に傾斜させてある。シャッタガイド401の案内面上に落ちた金属粉は、シャッタ400と案内面との間に噛み込まないように、シャッタ400が前進するとき、凸部405先端面の傾斜によって落とし溝406に掻き落とされる。
【符号の説明】
【0028】
1 ベース
2 加圧ブロック
20 受入孔
21 スリーブ
22 加圧室
23 貫通孔
24 フランジ
3 加圧用アクチュエータ
30 プランジャ
31 接続具
32 ロッド
4 開閉用アクチュエータ
40 シャッタ
41 シャッタガイド
42 ロッド
43 段差部
44 凹部
45 凸部
400 シャッタ
401 シャッタガイド
404 凹部
405 凸部
406 落とし溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ブロックに嵌合し、内側に加圧室を形成するスリーブと、
該スリーブの一端から前記加圧室に挿入されるプランジャと、
該プランジャを駆動する加圧用アクチュエータと、
前記スリーブの他端が位置する前記加圧ブロックの側面に設けられたシャッタガイドと、
該シャッタガイドに案内されて開閉し、前記スリーブ他端の開口を閉鎖及び開放するシャッタと、
該シャッタを駆動する開閉用アクチュエータと、
を含んで構成され、
前記シャッタは、先端部に凹部が形成され、開いたときに、当該凹部が前記スリーブの開口を開放し且つ該凹部両脇の凸部が前記スリーブの他端面に当接する、
金属粉加圧装置。
【請求項2】
前記スリーブの他端にフランジが形成され、
前記シャッタは、開いたときに、前記凹部が前記スリーブの開口を開放し且つ該凹部両脇の凸部が前記フランジに当接する、
請求項1記載の金属粉加圧装置。
【請求項3】
前記シャッタガイドの案内面に落とし溝が形成され、
前記シャッタの凸部先端面が、前記案内面上の金属粉を前記落とし溝へ掻き出すように傾斜している、
請求項1又は請求項2記載の金属粉加圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40578(P2012−40578A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182178(P2010−182178)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000105394)コータキ精機株式会社 (16)