説明

金属線条体用リール

【課題】巻胴の外周面全体において、巻き取られた金属線条体の厚みに偏りがでることのないリールを提供する。
【解決手段】金属線条体を巻き取るリール1は、円筒状の巻胴2と、巻胴2の両端に取り付けられる一対のフランジ3とを有している。巻胴2には、フランジ3の嵌挿孔32に嵌挿する嵌挿突起22が両端に形成され、フランジ3には、巻胴2の嵌挿突起22が嵌挿する嵌挿孔32が形成されており、フランジ3の嵌挿孔32と、嵌挿孔32に嵌挿された巻胴2の嵌挿突起22は外側から溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属線条体を巻き取るリールに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼線、スチールコード、ワイヤロープ、電線等の金属線条体を巻き取るリールは、金属線条体が巻き付けられる巻胴と、巻胴の両端に固着されるフランジを有している。
巻胴とフランジは通常、別部材として製造され、ボルトや溶接といった接合によって一体化されてリールを構成する。
【0003】
この点、特許文献1には、円筒状の巻胴の両端にフランジを設けてなる金属船巻取用リールであって、巻胴の開口端部をフランジに当接させ、当該当接させた部分を溶接により接合したものが記載されている。
また、特許文献2は、従来のリールとして、巻胴の両端に一対のフランジを溶接接合したリールに言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206636号公報
【特許文献2】特開2007−145564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2において、巻胴とフランジとを溶接によって一体化させてなるリールはいずれも、巻胴の開口端部をフランジに当接させ、当該部分を溶接している。そのため、金属線等が巻き付けられる巻胴の外周面の端部が、フランジとの溶接部分を構成することになっている。
【0006】
その結果、巻胴とフランジとを接合した作製されたリールは、金属線等が巻き付けられる巻胴の外周面の一部に、溶接による盛り上がりを生じてしまっている。そして、このリールによって金属線等を巻き取ると、巻胴の端部とその他の部分とで巻き付けられた金属線の厚みに差が出てしまったり、スムーズな巻き付けができなかったりするという問題を生じる。
【0007】
そこで本発明は、巻胴の外周面全体において、巻き取られた金属線条体の厚みに偏りがでることのないリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る金属線条体用リールは、金属線条体を巻き取るリールであって、上記金属線条体が巻き付けられる円筒状の巻胴と、上記巻胴の両端に取り付けられる一対のフランジと、両端が開口した中空の内部が、上記巻胴及び上記フランジを回転可能に支持する巻取軸が挿通される挿通孔を形成し、上記巻胴の中空内部に挿通され、上記一対のフランジに取り付けられるガイドを介して、上記一対のフランジを連結する円筒状の中芯と、上記フランジに嵌挿されると共に、上記中芯が取り付けられ、上記中芯に形成されている挿通孔内に上記巻取軸をガイドするガイドと、を有し、上記巻胴には、上記フランジに形成されている第一の嵌挿孔に嵌挿する嵌挿突起が両端に形成されており、上記フランジには、上記巻胴の嵌挿突起が嵌挿する第一の嵌挿孔と、上記ガイドが嵌挿する第二の嵌挿孔と、が形成されており、上記ガイドには、上記中芯の端部が嵌合する嵌合孔と、上記嵌合孔に嵌合した中芯の挿通孔内に、上記巻取軸をガイドするガイド孔と、が形成されており、上記フランジの第一の嵌挿孔と、当該第一の嵌挿孔に嵌挿された上記巻胴の嵌挿突起とが、外側から溶接されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記フランジと上記ガイドが一体的に構成された部材からなるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、巻胴の端部に設けられた嵌挿突起と、フランジとが、外側から溶接されているので、金属線等が巻き付けられる巻胴の外周面の端部が、フランジとの溶接部分を構成することがない。そのため、金属線条体を巻き取った際、巻胴の外周面全体において、巻き取られた金属線条体の厚みに偏りがでることがなく、スムーズに巻き取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るリールを示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るリールを示す側断面図である。
【図3】本実施形態に係るリールを示す正面図である。
【図4】本実施形態に係るリールを構成する巻胴を示す側面図である。
【図5】本実施形態に係るリールを構成する巻胴を示す正面図である。
【図6】本実施形態に係るリールを構成するフランジを示す正面図である。
【図7】本実施形態に係るリールを構成するガイドを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るリールについて、図を参照して説明する。
図1から図3に示されるように、本実施形態に係るリール1は、鋼線、スチールコード、ワイヤロープ、電線等の金属線条体を巻き取るリールであって、巻胴2、一対のフランジ3、中芯4、一対のガイド5、及び巻取軸6から構成される。
【0013】
巻胴2には、その両端に一対のフランジ3が固着されており、中空の内部には中芯4が挿通されている。また、一対のフランジ3には夫々、その中心部にガイド5が固着されており、一方のガイド5には中芯4の一端が嵌合し、他方のガイド5には中芯4の他端が嵌合している。さらに、リール1を回転可能に支持する巻取軸6が、ガイド5に形成されているガイド孔5にガイドされて、中芯4の挿通孔41内に挿通されている。
【0014】
巻胴2は、両端が開口した中空円筒状の部材であって、その外周面には巻き取った金属線条体が巻き付けられる。
この巻胴2には、図4及び図5に示されるように、貫通孔21、嵌挿突起22、及び係止孔23が形成されている。
【0015】
貫通孔21は、巻胴2の筒状の中空部によって構成され、当該貫通孔21には中芯4が挿通される。
嵌挿突起22は、巻胴2の両開口端部において、端部から外側に張り出して形成されている。この嵌挿突起22は、フランジ3の嵌挿孔32の深さよりも短く張り出して形成されており、嵌挿孔32に嵌挿された際、嵌挿孔32を完全に塞がないようになっている。また、この嵌挿突起22は複数、本例では4つ、等間隔で形成されている。
係止孔23は、巻胴2の外周面に形成された小孔であり、リール1によって巻き取る金属線条体の始端が係止される。この係止孔23は、本例では2つ形成しているが、その数は特に限定されない。
【0016】
この巻胴2は、嵌挿突起22をフランジ3の嵌挿孔32に嵌挿させて取り付けられる。この嵌挿の際には、図2に示されるように、嵌挿孔32の深さよりも僅かに短く形成された嵌挿突起22は、嵌挿孔32に嵌挿されると嵌挿孔32を半分ほど塞ぐ。そして、巻胴2とフランジ3とは、フランジ3を挟んで巻胴2が取り付けられる側とは反対の側(外側)から、嵌挿孔32の塞がっていない部分において溶接により固着される。なお、溶接はスポット溶接やアーク溶接など、各種の溶接方法によることができる。
【0017】
フランジ3は、円形状の金属板であって、熱間圧延高張力鋼板等をプレス成形することによって作製される。
このフランジ3には、図6に示されるように、嵌挿孔31、嵌挿孔32、係止孔33、装着孔34、偏心調整片35が形成されている。
【0018】
嵌挿孔31は、円形のフランジ3の中心部に形成された略円形状の孔であり、ガイド5が嵌挿される。この嵌挿孔31は、ガイド5の嵌挿部5bの断面形状に即して円形状に切り欠いた上、当該円形状に切り欠いた円形状の孔の外縁の4箇所をさらに、弧状に切り欠いて切欠部を形成した形状からなる。この切欠部は、嵌挿孔31に嵌合したガイド5とフランジ3とを溶接するための溶接部31aを構成する。
【0019】
嵌挿孔32は、嵌挿孔31の外側に形成された弧状の孔であり、等間隔に4つ形成されている。この嵌挿孔32は、巻胴2の嵌挿突起22に対応して形成されており、巻胴2の嵌挿突起22が嵌挿される。
【0020】
係止孔33は、巻胴2に巻きつけられた金属線条体の終端を係止するための孔であり、フランジ3の周縁部近傍に形成されている。なお、この係止孔33は、本例では4つ形成しているが、その数は特に限定されない。
【0021】
装着孔34は、リール1を回転させるための部材を装着させるための孔であり、フランジ3の中心から偏心した位置に形成されている。巻取軸6によって回転可能に支持されたリール1は、装着孔34に装着した部材によって巻取軸6を中心にして周方向に回転させることができ、これにより金属線条体を巻き取ることができる。
【0022】
偏心調整片35は、装着孔5を形成したことによって偏心した重心を調整するための重りであり、これにより、フランジ3の重心が中心と一致するように調整されている。
【0023】
このフランジ3には、巻胴2とガイド5が取り付けられる。
フランジ3の嵌挿孔32に嵌挿された巻胴2の嵌挿突起22は、フランジ3を挟んで巻胴2が取り付けられる側とは反対の側(外側)から、嵌挿孔32において、溶接によってフランジ3に固着される。
フランジ3の嵌挿孔31に嵌挿されたガイド5の嵌挿部5bは、フランジ3を挟んで巻胴2が取り付けられる側とは反対の側(外側)から、溶接部31aにおいて、溶接によってフランジ3に固着される。
なお、上述のとおり、いずれの溶接もスポット溶接やアーク溶接など、各種の溶接方法によることができる。
【0024】
中芯4は、両端が開口した中空円筒状の棒状部材である。
この中芯4は、巻胴2の貫通孔21内に収められ、その両端部は夫々、ガイド5の嵌合孔51に嵌合してガイド5に取り付けられ、ガイド5同士を連結する。
また、中芯4の中空部分は挿通孔41を構成する。この挿通孔41の径は、巻取軸6の径より僅かに大きく、ガイド5のガイド孔52内へ挿通された巻取軸6が、この挿通孔41内に挿通される。
【0025】
ガイド5は、フランジ3の中心部に取り付けられて、中芯4の挿通孔41内に巻取軸6をガイドする部材である。
このガイド5は、図7に示されるように、円形状からなる係止部5aと、掛止部5aよりも小径の円形状からなる嵌挿部5bとから構成され、嵌合孔51、及びガイド孔52が形成されている。
【0026】
嵌挿部5bは、フランジ3の嵌挿孔31に内側から嵌挿し、係止部5aによってフランジ3で係止される。
【0027】
嵌挿孔51は、中芯4の端部が嵌合するための孔であり、中芯4の径よりも僅かに大きい径を有する。
また、ガイド孔52は、リール1を回転可能に支持する巻取軸6を、中芯4の挿通孔41内にガイドするための孔であり、巻取軸6の径よりも僅かに大きい径を有する。
この嵌挿孔51とガイド孔52は連通して一体的な貫通孔を形成しており、これにより、ガイド孔52からガイドされた巻取軸6が、嵌挿孔51を介して中芯4の挿通孔41内に挿通される。なお、中芯4に挿通された巻取軸6はさらに、他端側のガイド5の嵌合孔51及びガイド孔52に挿通される。
【0028】
フランジ3の嵌挿孔31に嵌挿部5bを嵌挿したガイド5とフランジ3とは、嵌挿孔31の溶接部31aにおいて、溶接によって固着される。なお、溶接は上記と同様、スポット溶接やアーク溶接など、各種の溶接方法によることができる。
【0029】
以上の部材から構成されたリール1を使用する場合には、まずリール1を巻取機に装着する。この際、巻取軸6を支持すると共に、フランジ3の装着孔34に、フランジ3を周まわりに回転させるための駆動機構を装着させる。
リール1を巻取機に装着させ終わると、巻き取る金属線条体の始端を巻胴2の係止孔23に係止させる。そして、リール1を所定の方向に回転させて金属線条体を巻胴2に巻き付ける。
巻き取りが終了したときは適宜、金属線条体の終端をフランジ3の係止孔33に係止させるなどするとよい。
【0030】
以上の本実施形態に係るリール1によれば、巻胴2とフランジ3が、フランジ3を挟んで巻胴2が取り付けられる側とは反対の側(外側)から、溶接部31aにおいて、溶接によってフランジ3に固着されるため、金属線条体が巻き付けられる巻胴2の外周面が全周にわたって平滑になっている。そのため、金属線条体を巻き取った際、巻胴2の外周面全体において、巻き取られた金属線条体の厚みに偏りがでることがなく、スムーズに巻き取りを行うことができる。
【0031】
なお、以上の本実施形態においては、フランジ3とガイド5とを別部材によって構成したが、これに限らず、フランジ3とガイド5とを一体的に成形した部材として構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 リール
2 巻胴
21 貫通孔
22 嵌挿突起
23 係止孔
3 フランジ
31 嵌挿孔
31a 溶接部
32 嵌挿孔
33 係止孔
34 装着孔
35 偏心調整片
4 中芯
5 ガイド
5a 係止部
5b 嵌挿部
51 嵌挿孔
52 ガイド孔
6 巻取軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線条体を巻き取るリールであって、
上記金属線条体が巻き付けられる円筒状の巻胴と、
上記巻胴の両端に取り付けられる一対のフランジと、
両端が開口した中空の内部が、上記巻胴及び上記フランジを回転可能に支持する巻取軸が挿通される挿通孔を形成し、上記巻胴の中空内部に挿通され、上記一対のフランジに取り付けられるガイドを介して、上記一対のフランジを連結する円筒状の中芯と、
上記フランジに嵌挿されると共に、上記中芯が取り付けられ、上記中芯に形成されている挿通孔内に上記巻取軸をガイドするガイドと、を有し、
上記巻胴には、
上記フランジに形成されている第一の嵌挿孔に嵌挿する嵌挿突起が両端に形成されており、
上記フランジには、
上記巻胴の嵌挿突起が嵌挿する第一の嵌挿孔と、
上記ガイドが嵌挿する第二の嵌挿孔と、が形成されており、
上記ガイドには、
上記中芯の端部が嵌合する嵌合孔と、
上記嵌合孔に嵌合した中芯の挿通孔内に、上記巻取軸をガイドするガイド孔と、が形成されており、
上記フランジの第一の嵌挿孔と、当該第一の嵌挿孔に嵌挿された上記巻胴の嵌挿突起とが、外側から溶接されている、
ことを特徴とする金属線条体用リール。
【請求項2】
上記フランジと上記ガイドが一体的に構成された部材からなる、
請求項1記載の金属線条体用リール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−82554(P2013−82554A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225348(P2011−225348)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(397003219)司ゴム電材株式会社 (10)
【Fターム(参考)】