説明

金属蒸気放電ランプおよび照明装置

【課題】従来よりもコンパクト化が可能な金属蒸気放電ランプ等を提供する。
【解決手段】 本管部20及び本管部20から延出された給電体28,30を有する発光管12と、給電体28,30にそれぞれ接合された電力供給線36,38と、発光管12を内部に収容するとともに、電力供給線36,38の一端を外部に導出するように電力供給線36,38を挟んで端部を圧潰封止してなる内管14とを備え、給電体28は、内管14の端部が圧潰封止された方向である圧潰方向の第1の向きから電力供給線36に接合されており、給電体30は、圧潰方向の第1の向きとは反対の第2の向きから電力供給線38に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸気放電ランプ、および金属蒸気放電ランプを有する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高輝度、高効率、長寿命の金属蒸気放電ランプ、例えばメタルハライドランプ(以下、単に「ランプ」という。)は、種々の場所で広く使用されている。
上記ランプを光源として使用する従来の照明装置は、上述のランプの他に、凹状の反射面を有してランプから発せられた光を所望方向に反射させる反射板を備えている。反射板には、通常、反射板の開口(光取り出し口)が、例えば前面ガラス板によって塞がれた、所謂、閉塞型が用いられる。これは、ランプが何らかの原因で破損したときに、その破片が反射板の外部に飛散するのを防止するためである。
【0003】
近年、照明装置から前面ガラスを取り除くため、図9に示すように、発光管12を収納する内管14がさらに外管16で被覆された構造、つまり、発光管・内管・外管といった三重管構造のランプが提案されている(特許文献1)。このようなランプは、図10に示すような発光管ユニットが内管14に圧潰封止され、この内管14に外管16が被せられて口金18に固定されることにより形成されている。
【特許文献1】特開平8−236087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、店舗等のスポットライト用照明装置の光源として使用するため、ランプのさらなるコンパクト化が要求されている。しかしながら、発明者らが研究開発をしたところ、従来のランプの構造では十分にコンパクト化を図ることができないことが判明した。
従来のランプの構造では、発光管12の給電体28,30が電力供給線36,38に同じ向きから接合されているので(図10:領域82,84)、圧潰封止したときに発光管12が内管14の管軸から圧潰方向に若干ずれて支持される(図9:領域70,72)。一方、発光管12が内管14に接触したまま点灯し続けると内管14が着色してしまうという問題が発生する。したがって、ランプのコンパクト化は、発光管12が内管14に接触しない程度に留めておく必要がある。そうすると、発光管12が内管14の管軸からずれて支持されることは、その分だけ発光管12が内管14に接触しやすくなるので、ランプのコンパクト化の妨げとなる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、従来よりもコンパクト化が可能な金属蒸気放電ランプおよび金属蒸気放電ランプを有する照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属蒸気放電ランプは、本管部及び当該本管部から延出された第1及び第2の給電体を有する発光管と、前記第1及び第2の給電体にそれぞれ接合された第1及び第2の電力供給線と、前記発光管を内部に収容するとともに、前記第1及び第2の電力供給線の一端を外部に導出するように前記第1及び第2の電力供給線を挟んで端部を圧潰封止してなる密閉管とを備え、前記第1の給電体は、前記密閉管の端部が圧潰封止された方向である圧潰方向の第1の向きから前記第1の電力供給線に接合されており、前記第2の給電体は、前記圧潰方向の第1の向きとは反対の第2の向きから前記第2の電力供給線に接合されている。
【0007】
本発明に係る金属蒸気放電ランプは、本管部及び当該本管部から延出された第1及び第2の給電体を有する発光管と、前記第1及び第2の給電体にそれぞれ接合された第1及び第2の電力供給線と、前記発光管を内部に収容するとともに、前記第1及び第2の電力供給線の一端を外部に導出するように前記第1及び第2の電力供給線を挟んで端部を圧潰封止してなる密閉管とを備え、前記第1の電力供給線は、前記第1の給電体との接合部において前記密閉管の端部が圧潰封止された方向である圧潰方向に前記第1の給電体の半径と当該第1の電力供給線の半径とに相当する分だけ凹んでおり、前記第2の電力供給線は、前記第2の給電体との接合部において前記圧潰方向に前記第2の給電体の半径と当該第2の電力供給線の半径とに相当する分だけ凹んでいる。
【0008】
本発明に係る照明装置は、上記に記載の金属蒸気放電ランプを有する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、圧潰封止したときに発光管の本管部が密閉管の管軸から圧潰方向にずれて支持されることがなく、発光管が密閉管に接触する事態を極力回避することができる。したがって、従来よりもコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、高圧金属蒸気放電ランプの一例として示すメタルハライドランプ10の一部切欠右側面図であり、図2は、同一部切欠正面図である。図3は、メタルハライドランプ10の外管16及び口金18を取り除いたものの一部切欠右側面図であり、図4は、同一部切欠正面図である。メタルハライドランプ10の定格電力は70[W]である。
【0011】
メタルハライドランプ10は、発光管12と当該発光管12を収容する密閉管である内管14と当該内管14に被せられた保護容器である外管16とを備える三重管構造を有し、前記内管14と前記外管16とが、E型の口金18に支持されている。
発光管12は、本管部20と当該本管部20の管軸方向両側に形成された細管部22,24とからなる外囲器26を有している。本管部20および細管部22,24は、例えば、透光性セラミックで形成されている。透光性セラミックには、例えば、アルミナセラミックを用いることができる。図1乃至図4に示す例では、外囲器26は、本管部20と細管部22,24とをそれぞれ別個に成形した後、両者を焼きばめによって一体化したものを用いているが、これに限らず、例えば、外囲器には、本管部と2つの細管部とを一体成形によって形成されたものを用いても構わない。
【0012】
本管部20は、気密封止された放電室(不図示)を有し、当該放電室には、一対の電極(不図示)が対向して配置されている。また、放電室には、金属ハロゲン化物、希ガス、および水銀がそれぞれ所定量封入されている。金属ハロゲン化物としては、ヨウ化ナトリウムやヨウ化ジスプロシウム等が用いられる。
細管部22,24の各々には、先端部に前記各電極が接合された給電体28,30が挿入されている。給電体28,30は、それぞれの細管部22,24における、本管部20とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材32,34によって封着されている。なお、図1乃至図4に現れているシール材32,34部分は、細管部22,24端部からはみ出た部分である。
【0013】
給電体28の電極とは反対側の端部は電力供給線36に電気的に接続されており、同じく、給電体30の電極とは反対側の端部は電力供給線38に電気的に接続されている。なお給電体28,30は、電力供給線36,38との接合部分にスリーブ29,31が嵌め込まれているので、その分だけ径が大きくなっている。
電力供給線36,38は、発光管12の給電体28,30にそれぞれ接合され、発光管12を支持するとともに発光管12に電力を供給する。外部から電力を供給するために、電力供給線36,38は、外部リード部分44,46を内管14の外部に導出するように、金属箔部分40,42でピンチシールされている。なお、一方の電力供給線36において、少なくとも他方の電力供給線38やこれに接続された給電体30と対向する部分は、例えば石英ガラスからなるスリーブ48で被覆されている。外部リード部分44は口金18のシェル部60に、外部リード部分46は口金18のアイレット部62にそれぞれ電気的に接続されている。
【0014】
上記した発光管12等は、図1乃至図4に示すように、筒状、例えば円筒状をした内管14内に収納されている。内管14は、例えば石英ガラスからなり、前記金属箔部分40,42の存する側の一端部部分は、いわゆるピンチシール法によって圧潰され当該金属箔部分40,42相当部分において気密封止されている。したがって、内管14は、片封止型の密閉管であるといえる。ここで、内管14において前記圧潰封止されてなる部分をピンチシール部50と称することとする。
【0015】
内管14内を真空にするのは、ランプ点灯時に高温にさらされる前記給電体28,30、電力供給線36,38等の金属部材の酸化を防止するためである。酸化防止の観点から、内管14の内部(であって、発光管12の外部)は、真空にするのではなく、不活性ガスを充満させることとしても構わない。
なお、前記ピンチシール部50は口金18に支持され、両者は無機接着剤54によって固着されている。無機接着剤54は、シリカおよびアルミナを主成分とするものであり、1000℃の耐熱温度を有する。
【0016】
内管14には、図1、図2に示すように有底筒状をした(すなわち、一端が閉塞され他端が開口されてなる筒状をした)外管16が被せられている。外管16は、例えば硬質ガラスからなり、保護管として機能する。すなわち、発光管12が破損し、内管14が損傷した場合であってもそれ以上の破片等の拡散を防ぐ役割を果たす。また、この外管16は、ランプのコンパクト性を確保するために内管14と同じ筒状、例えば円筒状であり、組立工程において外管16を内管14に被せる際のクリアランスを確保するために、内管14との間の隙間が平均で1mm〜2mmである。外管16は、その開口端部56が口金18に支持され、両者は無機接着剤54によって固着されている。
【0017】
ピンチシール(圧潰封止)は、加熱軟化させた封止予定部を、一対のピンチャー(押型)により両側から機械的に圧潰する加工法である。両側から一様に圧潰すること、及び封止予定部の肉厚が略均一であることから、圧潰方向における電力供給線36,38の軸心は内管14の管軸と略一致することとなる。
図5は、実施の形態1に係る発光管ユニットの斜視図である。
【0018】
発光管ユニットは、発光管12と電力供給線36,38とからなり、給電体28と電力供給線36とが接合され、給電体30と電力供給線38とが接合されているものである。実際の製造過程においては、まず、このような発光管ユニットを作成したうえで、これを金属箔部分40,42が内管14となる石英管の封止部予定部に位置するように挿入して、加熱軟化させた封止部予定部を圧潰している。
【0019】
実施の形態1では、図5に示すように、給電体28は電力供給線36に第1の向きから接合されており(領域74)、給電体30は電力供給線38に第1の向きの反対向きである第2の向きから接合されている(領域76)。このようにすることで、封止部予定部を圧潰封止したときに、本管部20の圧潰方向における内管14管軸からのずれを抑制することができる(領域66,68)。したがって、本管部20が内管14に接触するような事態を極力回避することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2は、電力供給線36,38の形状、及び給電体28,30と電力供給線36,38との接合関係が実施の形態1と異なり、これ以外については実施の形態1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点のみについて説明する。
【0020】
図6は、実施の形態2に係る発光管ユニットの斜視図である。
実施の形態2では、図6に示すように、電力供給線36は、給電体28との接合部において圧潰方向に給電体28の半径と電力供給線36の半径とに相当する分だけ凹んでおり(領域78)、電力供給線38は、給電体30との接合部において圧潰方向に給電体30の半径と電力供給線38の半径とに相当する分だけ凹んでいる(領域80)。このようにすることで、封止部予定部を圧潰封止したときに、本管部20の圧潰方向における内管14管軸からのずれを抑制することができる。したがって、本管部20が内管14に接触するような事態を極力回避することができる。さらに、上記のように凹みを設けることにより、給電体28,30を電力供給線36,38に接合する際に、これらの位置決めを容易にすることもできる。
【0021】
なお、電力供給線36,38に形成された凹みは、図7に示すように、比較的広い範囲で存在していてもよい。
続いて、メタルハライドランプ10を光源に有するスポットライト用の照明装置を、図8を参照しながら説明する。
図8に示すように、当該照明装置110は、照明器具112と当該照明器具112に装着されるメタルハライドランプ10とで構成される。当該照明器具112は、スポットライト用であると共に、メタルハライドランプ10からの光射出方向に前面ガラスを有しない、前方開放型の照明器具である。照明器具112は、例えば、天井に取り付けられる。このように天井等に取り付けられると、光射出方向は下方となる。したがって、この場合、照明器具は下面開放型となる。また、メタルハライドランプ10を点灯させるための安定器(不図示)は、天井内に埋め込まれる等して当該天井に設けられる。
【0022】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態としても構わない。
(1)上記実施の形態のメタルハライドランプでは、口金にE型(エジソンベース)のものを用いたが、本発明は、ピンタイプやスワン式の口金にも適用可能である。
(2)上記実施の形態のメタルハライドランプは定格電力が70[W]であったが、本発明は、定格電力20[W]〜150[W]のものに適用可能である。
(3)上記実施の形態では、本発明をメタルハライドランプに適用した例を示したが、本発明は、他の種類の高圧金属蒸気放電ランプ、例えば、高圧水銀灯、高圧ナトリウム灯等にも適用可能である。
(4)実施の形態2では、給電体28は電力供給線36に第1の向きから接合されており(領域78)、同様に、給電体30は電力供給線38に第1の向きから接合されている(領域80)。しかしながら、本発明は、これに限らず、給電体28は電力供給線36に第1の向きから接合されており、給電体30は電力供給線38に第2の向きから接合されることとしてもよい。この場合、電力供給線38の段差は、図6に示した向きとは反対向きに形成される。
(5)上記実施の形態では、三重管構造を有するランプを示したが、本発明は、これに限らず、二重管構造を有するランプでも適用可能である。
(6)上記実施の形態では、口金が発光管の一端のみに存在する片封止型のランプを示したが、本発明は、これに限らず、口金が発光管の両端に存在する両封止方のランプでも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る金属蒸気放電ランプは、例えば、コンパクト性が要求されると共に、前方開放型の照明器具に装着しても安全性が確保できるランプとして好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るメタルハライドランプ10の一部切欠右側面図である。
【図2】本発明に係るメタルハライドランプ10の一部切欠正面図である。
【図3】本発明に係るメタルハライドランプ10の外管16及び口金18を取り除いたものの一部切欠右側面図である。
【図4】本発明に係るメタルハライドランプ10の外管16及び口金18を取り除いたものの一部切欠正面図である。
【図5】実施の形態1に係る発光管ユニットの斜視図である。
【図6】実施の形態2に係る発光管ユニットの斜視図である。
【図7】変形例に係る発光管ユニットの斜視図である。
【図8】照明装置の外観図である。
【図9】従来のメタルハライドランプの一部切欠右側面図である。
【図10】従来のメタルハライドランプの発光管、電力供給線の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 メタルハライドランプ
12 発光管
14 内管
16 外管
18 口金
20 本管部
22,24 細管部
26 外囲器
28,30 給電体
29,31 スリーブ
32,34 シール材
36,38 電力供給線
40,42 金属箔部分
44,46 外部リード部分
48 スリーブ
50 ピンチシール部
54 無機接着剤
56 開口端部
60 シェル部
62 アイレット部
110 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管部及び当該本管部から延出された第1及び第2の給電体を有する発光管と、
前記第1及び第2の給電体にそれぞれ接合された第1及び第2の電力供給線と、
前記発光管を内部に収容するとともに、前記第1及び第2の電力供給線の一端を外部に導出するように前記第1及び第2の電力供給線を挟んで端部を圧潰封止してなる密閉管とを備え、
前記第1の給電体は、前記密閉管の端部が圧潰封止された方向である圧潰方向の第1の向きから前記第1の電力供給線に接合されており、前記第2の給電体は、前記圧潰方向の第1の向きとは反対の第2の向きから前記第2の電力供給線に接合されていること
を特徴とする金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
本管部及び当該本管部から延出された第1及び第2の給電体を有する発光管と、
前記第1及び第2の給電体にそれぞれ接合された第1及び第2の電力供給線と、
前記発光管を内部に収容するとともに、前記第1及び第2の電力供給線の一端を外部に導出するように前記第1及び第2の電力供給線を挟んで端部を圧潰封止してなる密閉管とを備え、
前記第1の電力供給線は、前記第1の給電体との接合部において前記密閉管の端部が圧潰封止された方向である圧潰方向に前記第1の給電体の半径と当該第1の電力供給線の半径とに相当する分だけ凹んでおり、前記第2の電力供給線は、前記第2の給電体との接合部において前記圧潰方向に前記第2の給電体の半径と当該第2の電力供給線の半径とに相当する分だけ凹んでいること
を特徴とする金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属蒸気放電ランプを有する照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−323941(P2007−323941A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152666(P2006−152666)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】