説明

金属蒸気放電ランプおよび照明装置

【課題】外管と口金とのずれが少なく、外管が破損し難い金属蒸気放電ランプを提供する。
【解決手段】一端に開口部402を有し他端に閉塞部401を有する外管400と、前記外管400の開口部402に取り付けられた口金500と、一端に形成された封止部202が前記口金500と固定された状態で、他端である先端部203が前記外管閉塞部401側に位置するように前記外管400内に配置された内管200と、前記内管200内に収納された放電管100と、少なくとも一部が前記外管400の内側であって前記内管200の先端部203の外側に位置し、前記内管200の外面との間に隙間を設けた状態で前記外管400の内面に設置された保護部材300と、を備える金属蒸気放電ランプ10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸気放電ランプ及び照明装置に関し、特に、三重管構造ランプにおける管軸のずれの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属蒸気放電ランプとして、例えば図16(a)に示すように、放電管601が収納された内管602がさらに外管606で被覆された三重管構造のものがある。このような構造とすれば、放電管601の破裂により内管602が破損するようなことがあっても、それら破裂や破損によって生じた破片を外管606内に留めるため、安全性の向上が期待できる。特に三重管構造のコンパクトな金属蒸気放電ランプは、店舗などの商業施設の照明器具に用いられるため、ユーザー及びランプ・照明器具メーカともに安全性への関心は高いものがある。
【0003】
さらに、特許文献1に挙げられるように、内管602の先端部603の外側であって外管606の内側に、内管602の外面で支持され、外管606の内面に当接する規制部材604を配置し、内管602と外管606とを相互に位置規制している。図16(b)は規制部材604の形状を示す斜視図である。規制部材604は、放電管601の破裂時に、内管602の先端部603が破損した場合の破片を、外管606の閉塞部607への到達前に受け止める効果がある。その結果、規制部材604には、放電管601が破裂したとしても、外管606の閉塞部607が破損するのを防止する防爆性も期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3144888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記規制部材604を有する三重管構成のランプを実際に製作すると、図16(a)のA部に示すように、外管606と口金605とがずれたランプができてしまうことがある。その原因として、ランプの組立工程において、内管602と口金605とを固着する際、製造の誤差により、内管602の管軸yと口金605の中心軸x(口金605の長手方向の中心軸)とが一致しない場合が挙げられる。このように内管602の管軸yが口金605の中心軸xに対して傾いてしまうと、内管602の外面で支持され、外管606の内面に当接する規制部材604の作用によって、外管606の管軸zも口金605の中心軸xに対して傾いてしまう。このような外管606の管軸zと口金605の中心軸xとの不一致が生じると、口金605を照明器具のソケット(不図示)に回転装着する際に、外管606を持ってランプ600全体を管軸z回りに回転させても、口金605が中心軸x回りに回転しないため、ランプ装着時における操作性が低下する。
【0006】
本発明は、放電管破裂時における、外管の閉塞部の破損を効果的に防止しつつ、外管の管軸と口金の中心軸との傾きを少なくすることのできる金属蒸気放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る金属蒸気放電ランプは、一端に開口部を有し他端に閉塞部を有する外管と、前記外管の開口部に取り付けられた口金と、一端に形成された封止部が前記口金と固定された状態で、他端である先端部が前記閉塞部側に位置するように前記外管内に配置された内管と、前記内管内に収納された放電管と、少なくとも一部が前記外管の内側かつ前記内管の先端部の外側に位置し、前記内管の外面との間に隙間を設け前記外管の内面と接触した状態で配置された保護部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る金属蒸気放電ランプは、保護部材の少なくとも一部が外管の内側かつ内管の先端部の外側に位置するため、放電管が破裂したとしても、外管の閉塞部が破損するのを防止することができる。
また、本発明に係る金属蒸気放電ランプは、外管内に配置された保護部材と内管の外面との間に隙間を有する。したがって、外管と保護部材は接触しているが、内管と保護部材は接触しない、若しくは内管への軸規制をしないレベルで当接している状態なので、内管が多少傾いても、保護部材に接触しない範囲であれば、外管と口金との固着の位置は、内管の位置ずれによる影響を受けない。その結果、内管の管軸が口金の軸と一致していない場合でも、外管の管軸と口金の中心軸との傾きを少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様に係る照明装置を示す一部破断側面図
【図2】本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプの放電管を示す断面図
【図3】本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプを示す一部破断側面図
【図4】本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプの保護部材を示す斜視図
【図5】本発明の一態様に係る保護部材を説明するための図
【図6】本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプの組み立て方法を示す図
【図7】変形例1に係る保護部材を説明するための図
【図8】変形例2に係る保護部材を説明するための図
【図9】変形例3に係る保護部材を説明するための図
【図10】変形例4に係る保護部材を説明するための図
【図11】変形例5に係る保護部材を説明するための図
【図12】変形例6に係る保護部材を説明するための図
【図13】変形例7に係る金属蒸気放電ランプを説明するための図
【図14】変形例8に係る金属蒸気放電ランプを説明するための図
【図15】変形例9に係る金属蒸気放電ランプを説明するための図
【図16】従来の一態様に係る金属蒸気放電ランプを示す図であって、(a)は金属蒸気放電ランプを示す一部破断側面図、(b)は従来の規制部材の形状を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面における部材の縮尺は実際のものとは異なる。また、本発明において、数値範囲を示す符号「〜」は、その両端の数値を含む。
【0011】
[照明装置]
図1は、本発明の一態様に係る照明装置を示す一部破断側面図である。図1に示すように、本発明の一態様に係る照明装置1は、スポットライト照明装置であって、金属蒸気放電ランプ10と、当該ランプ10が内部に配置された照明器具20とを備える。
【0012】
金属蒸気放電ランプ10は、放電管100、内管200、保護部材300、外管400及び口金500を備える3重管構造の金属蒸気放電ランプである。その詳細については後述する。
【0013】
照明器具20は、金属蒸気放電ランプ10から発せられた光を前方に反射させる凹状の反射面21を有する反射鏡22と、当該反射鏡22内に組み込まれたランプ装着用のソケット23と、壁や天井に反射鏡22を取着するための取着具24とを備える。
【0014】
反射鏡22は、前面に設けられた光取り出し用の開口部25が、ガラス板等のカバーによって塞がれておらず、開放状態である。この構成の金属蒸気放電ランプ10は放熱性に優れているが、放電管100の破裂により内管200および外管400が破損した場合、それら破裂や破損によって生じた破片が照明器具20の外部へと飛散するおそれがある。したがって、照明器具20には、外管400が破損し難い金属蒸気放電ランプ10を取り付けることが好ましい。
【0015】
ソケット23は、供給線26を介して壁や天井に埋め込まれた点灯装置(不図示)と電気的に接続されており、ソケット23に金属蒸気放電ランプ10の口金500を挿着すれば安定器から金属蒸気放電ランプ10に電力が供給される。
【0016】
取着具24は、壁や天井に回動自在に取り付けられたアーム27を有し、当該アーム27の先端には反射鏡22が回動自在に軸着されている。照明装置1から放射される光の向きは、アーム27または反射鏡22を回動させることにより調節可能である。なお、本発明に係る照明装置は、スポットライト照明装置に限定されず、他の用途の照明装置であっても良い。
【0017】
[金属蒸気放電ランプ]
図2は金属蒸気放電ランプに収納されている放電管を示す断面図である。
図2に示すように、放電管100は、内部に気密封止された放電空間101を有する本管部102と、当該本管部102から放電管100の管軸(金属蒸気放電ランプ10の長手方向の中心軸であるランプ軸Xと一致している)方向両側に延出するように配置された細管部103,104と、本管部102と細管部103,104との隙間を埋める接合部105,106とからなる外囲器107を有している。
【0018】
外囲器107は、例えばアルミナセラミックで形成された焼き嵌め型である。なお、外囲器107は、アルミナセラミックで形成されたものに限定されず、その他の透光性セラミック(例えば、希土類アルミナガーネットセラミックなど)、石英ガラス等で形成されていても良い。また、図面において、放電管100は、本管部102、細管部103,104および接合部105,106を接合して形成した焼き嵌めタイプであるが、本管部102、細管部103,104および接合部105,106が一体的に成形された一体型でもよい。また、複数の部材を接合して本管部102を形成してもよい。
【0019】
放電空間101内には、発光物質である金属ハロゲン化物、始動補助ガスである希ガス、および、緩衝ガスである水銀がそれぞれ所定量封入されている。金属ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化ジスプロシウム、ヨウ化ホルミウム、ヨウ化ツリウム、ヨウ化タリウム、ヨウ化セリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化インジウム、ヨウ化スカンジウム等が用いられる。なお、金属ハロゲン化物は、発光色により適宜決定される。
【0020】
放電管100は、先端部が本管部102の放電空間101内で互いに対向し、基端部が細管部103,104に挿入された一対の電極108,109を有する。
電極108,109は、電極棒110,111と、当該電極棒110,111の先端部(放電空間101内で互いに対向する側の端部)に設けられた電極コイル112,113とを有する。電極108,109の他端部は、細管部103,104内において給電体114,115の一端部と接合されており、給電体114,115は、細管部103,104内に流し込まれたフリットからなるシール材116,117によって封着されている。
【0021】
図3は、本発明の一態様に係る金属蒸気放電ランプを示す一部破断側面図である。給電体114,115は、電力供給線118,119および金属箔120,121および外部リード線122,123を介して、口金500のシェル部502およびアイレット部503とそれぞれ電気的に接続されている。導入線122,123は、例えば、モリブデン製で径が0.7[mm]の第1外部リード線124,125と、ニッケル製で径が0.6[mm]の第2外部リード線126,127との継線であり、第1外部リード線124,125は金属箔120,121と接続され、第2外部リード線126,127は口金500と接続されている。ニッケル等の金属線は弾性を有するためリード線と口金の接続や光中心位置合わせ等の作業性が向上する。
【0022】
一方の電力供給線118は、他方の電力供給線119および当該電力供給線119に接続された給電体115と対向する部分が、例えば石英ガラスなどからなるスリーブ128で被覆されている。このような構成とすれば、ランプ寿命末期に放電管100でリークが生じたとしても、反対極性となる部材間で生じる放電によって想定外の大きな電流が流れ続けることを抑制する効果がある。これにより点灯装置が損傷するなどの不具合を未然に防止することができる。
【0023】
内管200は、例えば、封止部202、先端部203および中間部205からなる片封止型の気密容器である。封止部202は、例えばピンチシール法による圧潰封止で形成されており、内管200の口金側端部を構成している。封止部202には、電力供給線118,119の一端部と、金属箔120,121の全体と、導入線122,123の一端部とが封止されている。先端部203は、内管200の口金500とは反対側の端部を構成しており、外管400の閉塞部401と対向している。
【0024】
先端部203には、内管200内を真空引きする際に用いた排気管の残部であるチップオフ部分201が存在している。内管200内を真空引きすることによって、給電体114,115や電力供給線118,119等の金属部材が高温にさらされ酸化するのを防止することができる。なお、内管200内を真空にする代わりに、前記内管200内に窒素等の不活性ガスを充満させることによっても、金属部材が酸化するのを防止することができる。
【0025】
先端部203は、例えば略半球状や平坦形状である場合において、中間部205の外径は13[mm]〜17[mm]、肉厚は1[mm]〜2[mm]である。内管200は、中間部205が例えば略円筒状であって、当該中間部205内に放電管100の外囲器107が配置されている。なお、中間部205の形状は略円筒状に限定されず、多角形や楕円の筒状等円筒以外の筒状であっても良い。また、中間部205の内径および外径は必ずしも内管200の管軸方向に沿って均一である必要はなく、例えば放電管100の本管部102に相当する位置の内径および外径が、それ以外の位置の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち一部に膨出部を有する中膨形状であっても良い。これにより、放電管100の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0026】
内管200は、例えば石英ガラスで形成されている。なお、内管200は、石英ガラスで形成されたものに限定されず、アルミナセラミック等の透光性セラミック、硬質ガラス等で形成されていても良い。内管200の口金500側は、口金500、若しくは外管400と例えばセメント(図示せず)等の固着剤により結合されている。内管200と外管400の隙間dは、平均で1[mm]〜3[mm]になるよう設計されていることが好ましい。
【0027】
外管400は、開口部(ネック部)402と、閉塞部401と、それら開口部402および閉塞部401の間の中間部403とで構成される有底筒状であって、放電管100の破裂によって内管200が破損した場合に、それら破裂や破損で生じた破片が飛散するのを防止する役割を果たす。したがって、図1に示すような開口部25がカバーで塞がれていない照明器具20に使用しても破片が飛散しない。なお、閉塞部401は、略半球状、若しくは平坦形状が好ましい。また、必ずしも同一部材で閉塞する必要はなく、例えば金属やセラミック等の別部材を用いて閉塞しても良い。
【0028】
中間部403は、金属蒸気放電ランプ10のコンパクト性を確保するために、内管200の中間部205と同じ略円筒状であることが好ましい。また、外管400の中間部403の内面と内管200の中間部205の外面との隙間は、外管400の管軸(ランプ軸Xと一致している)と直交する方向において略均一であることが好ましい。組立工程において外管400を内管200に被せる際のクリアランスを確保するためには、前記隙間が平均で1[mm]〜3[mm]になるよう設計されていることが好ましい。
【0029】
なお、中間部403の形状は略円筒状に限定されず、多角形や楕円の筒状等円筒以外の筒状であっても良い。また、中間部403の内径および外径は必ずしも外管の管軸方向に沿って均一である必要はなく、例えば放電管100の本管部102に相当する位置の内径および外径が、それ以外の位置の内径および外径よりも大きくなっているような形状、すなわち一部に膨出部を有する中膨形状であっても良い。膨出部を設けることにより放電管からの熱による外管の温度上昇を低減することで、硬質ガラスの歪点からの裕度ができて適合する照明器具20の選択の幅を広げることができる。さらに、放電管破損時の安全性も向上する。その場合、前記隙間が最大で5[mm]になるよう設計されていることが好ましい。
【0030】
さらに構成として外管400の落下防止のため、開口部402付近に内側凸部を設け、口金500に例えば、溝形状の被係合部を設けても良い。その場合、無機接着剤等の接着剤を介している場合であっても良い。また、口金500に被係合部を設けていない場合は、外管400の内側に凸部(図示せず)を設け、その凸部と口金500との間に接着剤を配することで係合されていても良い。外管400は、例えば硬質ガラスで形成されている。なお、外管400は、硬質ガラスで形成されたものに限定されず、アルミナセラミック等の透光性セラミック、石英ガラス等で形成されていても良い。
【0031】
コンパクトな照明器具への適合に関して、外管400の寸法については、封止部202付近のネック部の外径が23[mm]以下、最大外径が27[mm]以下が好ましい。更に、ランプのネック部の外径も上記の様に小さいと、器具の反射鏡ネック部の開口径を小さくすることで可能となるため、器具の反射効率を高めることができる。
【0032】
外管400は、口金500に、例えばセメント等の接着剤(図示せず)を用いて固着されている。外管400の内部は、後述する口金500の通気孔(図示せず)を介して外管300の内部と外部とが連通した大気状態とされていても良いし、通気孔(図示せず)を塞ぐことで減圧状態にされていても良いし、不活性ガスが充満されていても良い。金属蒸気放電ランプ10は、外管中間部403の最大外径は20[mm]〜27[mm]、ネック部の外径は20[mm]〜23[mm]、外管中間部の肉厚は1[mm]〜2[mm]が好ましい。
【0033】
図4は、保護部材300の一例を示す斜視図である。保護部材300は、従来の規制部材に替えて用いるものであり、規制部材と異なり、内管200の管軸yと外管400の管軸zとを規制する機能を持たず、防爆性能のみを持つ。このため、部材名を保護部材とした。
保護部材300は、図4にみられるように、円盤型の板状部301を有すると共に、板状部301の外周部302に沿って、等間隔に4つのL字型の爪303〜306が延設されている。なお、図4に示す保護部材300は、板状部301と爪303〜306とを一枚の板材から折り曲げ加工により作製しているが、爪303〜306と板状部301とを別に作製し、これらを板状部301の外周部302に対して溶接もしくはかしめることにより固定させてもよい。保護部材300の材質は弾性を有するものに加え、金属蒸気放電ランプ10の点灯時の発熱に耐えられるよう、200[℃]、好ましくは300[℃]の耐熱性を持つものが望ましい。
例えば保護部材300は、弾性および耐熱性の観点からアルミニウム、ステンレス等の金属で、0.1[mm]〜0.5[mm]の厚みが好ましい。
図5は、図2における外管閉塞部401付近の拡大図であり、外管400、保護部材300、及び内管200との位置関係を示す断面図である。板状部301の外径は外管400の内径よりも小さく、爪303〜306を含む保護部材300の最大外径は、外管400の内径よりも大きい。そのため、保護部材300が外管400に挿入される際、爪303〜306は縮径する一方、弾性による復元力のため、外管400内面に向かって押圧が生じ、その結果、保護部材300は外管400の内面に設置される。
【0034】
この場合、図5に示すように、ランプ軸X方向における保護部材300の位置を調整することにより、保護部材300の少なくとも一部を、外管400の内側であって、前記内管200の先端部203の外側に位置するように配置する。
【0035】
この状態において、保護部材300は、外管400の内面に接触しているが、内管200の外面には接触していない。すなわち、保護部材300が内管200の外面との間に隙間を設けた状態で配置されている。放電管100破損時の外管閉塞部401への内管200破損時の破片の飛散について、保護部材300を設けない場合は、破損した直後における封入ガスの拡散速度の方が破片の速度よりも大きいため、封入ガスのほうが外管400に先に到達し、外管400の内面に跳ね返ってきたガスにより飛散破片が押し戻され、これにより破片の速度低下が生じる。前記隙間が小さすぎる場合は、破片の速度低下は十分とならず、防爆効果は低い。逆に隙間が大きすぎる場合はランプ全体の寸法形状が大きくなり、コンパクト性に欠ける。
【0036】
しかし、保護部材300を設ける事により、内管200のチップオフ部分201と板状部301との隙間における内管200の管軸方向の距離である距離204は10[mm]以下、同様に外管400の閉塞部401の内面と保護部材300の板状部301との、保護部材300の板状部301に対する垂直距離である距離406は10[mm]以下となり、コンパクト性も確保することができる。
【0037】
上述のように、金属蒸気放電ランプ10では、保護部材300は、内管200の外面との間に隙間を設けた状態、若しくは内管200の軸規制をしないレベルで当接した状態で、外管400の内面に取り付けられている。すなわち、保護部材300は、内管200の管軸yと外管の管軸zを規制していない。このため、内管200が外管400及び口金500に収納される空間の範囲内で内管200の管軸yに傾きがあっても、外管400を口金500に結合させることができる。したがって、外管400の管軸zと口金500の中心軸xとのずれを少なくできる。
また、保護部材300は、外管400の内側であって、内管200のチップオフ部分201の外側に位置するよう配置される。そのため、放電管100の破裂時に内管200が破損した場合でも、保護部材300は、外管400の破損を防ぎやすくなる。
図5に示すように、保護部材300は、その全部が外管400の閉塞部401の内側であって、内管200の先端部203の外側に位置している。この構成では、内管200の先端部203と保護部材300との間の距離が大きいので、放電管100の破裂時の外管400の破損防止効果もさらに期待できる。なお、保護部材300は、必ずしもその全体が先端部203の外側に位置している必要はなく、一部のみが先端部203の外側に位置している構成であっても良い。
[金属蒸気放電ランプの製造方法]
金属蒸気放電ランプ10の製造方法を以下に説明する。
【0038】
まず、図6の(a)に示すように、放電管100を収納した内管200と口金500とを準備し、内管200の封止部202と口金500の放電管100側の部分との少なくとも一方に接着剤(例えば無機接着剤等)を塗布した後、両者を接合する。これにより、図6の(b)に示すように、内管200が口金500に取着されることになる。次に、図6(c)に示すように、保護部材300を外管400内に配置する。保護部材300の外管400内への挿入・配置方法については上述した通りである。次いで、保護部材300を設置した外管400と口金500が取着された内管200とを準備し、口金500の放電管100側にある接着部504と外管400の開口部402との少なくとも一方に接着剤(例えば無機接着剤等)を塗布した後、内管200を外管400内に相対的に挿入する。内管200、外管400それぞれと口金500とを固着する接着剤は、金属蒸気放電ランプ10の点灯時の発熱に耐えられるよう、200[℃]、寿命末期等の内管200内での異常放電時の安全性を考慮すると好ましくは800[℃]の耐熱性を持つものが望ましい。なお、本実施例の口金500では、エジソンベースのものを示したが、スワン式であっても構わない。
[変形例]
以上、本発明に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明に係る金属蒸気放電ランプおよび照明装置は、上記の実施の形態に限定されないことはいうまでもない。
[変形例1]
図7は保護部材310の形状を示す斜視図である。保護部材310は、正八角形型の板状部311に、板状部311の外周部312に沿って、等間隔に4つのL字型の爪313〜316が延設されている。なお、これらの爪313〜316は板状部311とは別に製作されたものを、板状部311の外周部312に対して溶接もしくはかしめることにより固定させてもよい。
この変形例1における保護部材310の板状部311は正八角形型であるが、板状部については円盤型、正八角形型にこだわらず、楕円型や他の多角形型をとることができる。爪313〜316の形、数、それぞれの爪の配置についても制限は無く、任意に選択できる。
また、多角形であることで、板状部と爪とを一枚の板材で形成する場合、爪が板状部の辺上に位置していれば、図4に示す実施例と比べて爪を折り曲げて形成しやすい等の効果がある。
[変形例2]
図8は変形例2に係る外管400、保護部材320、及び内管200との位置関係を示す断面図である。図に示すように、外管400の閉塞部401の最端部より多少開口部402寄りの部位に径方向に対向して内方に突出した突部404、405を形成している。
保護部材320は弾性を有する材料で構成した円盤状とし、弾性変形により前記突部404、405を乗り越えて、外管400の先端部へ嵌め入れることにより、内管200の外面と外管400の内面との間の隙間であり、かつ外管400の内面と接触した状態で配置することができる。このように、突部404、405によって保護部材320を保持する構造でも実施できる。この構成により、接着剤や、保護部材にツメを設けることによる固着をする必要がないため、材料コストの削減やランプ作製時の作業性の向上を図ることができる。
[変形例3]
図9(a)は変形例3に係る外管400、保護部材330、及び内管200との位置関係を示す断面図である。外管400の閉塞部は半球形状である。
図9(b)は保護部材330の形状を示す斜視図である。図にみられるように、保護部材330は半球形状であり、弾性を有する材料で構成する。この半球状の保護部材330を外管400の先端部へ圧入し、弾性による復元力で外管400の内面を押圧して固定するようにしたのが変形例3である。なお、保護部材330は半球状の空間331を有しているので、内管200のチップオフ部分201と保護部材330の頂部までに距離を大きくとることができ、その分、放電管破損時の飛散破片が保護部材330に到達するまでの飛散破片の速度低下が大きく、一層の防爆効果が期待できる。
[変形例4]
図10(a)は、変形例4に係る外管400、保護部材340、および内管200の位置関係を示す断面図である。保護部材340は、図10(b)に示すように複数の金属線341・・・342・・・をメッシュ状に組み合わせたもので、円形の輪郭を有する。この保護部材340を外管400の先端部へ挿入し、接着剤で外管400の内壁に固定している。
【0039】
保護部材340がメッシュ状であるので、金属線341、342の隙間から出射光が漏れることができるので、照明装置において輝度低下が起こり難い。さらに、板状金属で構成した場合よりも保護部材の質量は小さくなるため、ランプの軽量化が可能となる。
[変形例5]
保護部材としては、図11に示す保護部材350のように、外管400の頂部に接着剤407で接着した構成としても良い。
【0040】
この構成により、接着剤が衝撃吸収材の役割を果たすため十分な安全性を確保すると同時に、保護部材350を固着しているため、ランプ点灯時に保護部材350が振動することはなく、異音の発生等の不具合を抑制することができる。
【0041】
また、接着剤だけを外管閉塞部の内側に配置(塗布)して、保護部材としての役割をすることも可能である。
なお、図11では、外管の先端部が平面形状となっているが、保護部材を同様に平面形状にした場合、接触面積を確保し易いため接着剤での固着作業性の向上を図ることができる。但し、外管の先端部の形状は、平坦形状に限定されず、例えば半球形状のものでも良い。
[変形例6]
保護部材の形状は、図12に示す保護部材360のように十文字形状としても良い。
【0042】
この構成により、円盤形状のものに比べて、中央部が凹みやすく、衝撃を吸収しやすいため、十分な安全性を確保することができる。
[変形例7]
内管200は、図13に示すように、口金500内に設けたホルダ12で封止部202を保持することにより口金500に固定されていても良い。ホルダ12には封止部202の形状にあわせた差込口(不図示)が設けられており、その差込口に封止部202の先端を差し込むことによって、封止部202は口金500に固定される。
【0043】
この場合、ホルダ12を口金500に固定する前にホルダ12に封止部202を固定することで、封止部202の固定と、内管200の第2のリード線126,127の口金500への固定とを別々に行うことができ、金属蒸気放電ランプ10を組立やすくすることができる。ホルダ12には、その外周面に鍔形状の大径部12aが設けられ、大径部12aが口金500の外管側の端部408に係止されている。なお、例えば、大径部12aの口金500とは反対側(金属蒸気放電ランプ10頂部側)に外管400の開口部402を当接する等して、外管400をホルダ12に固定してもよい。
[変形例8]
内管200の封止部202は、図14に示すように、当該封止部202と外管400との間に配置された鍔状部材13によっても支持された状態で口金500に固定されていても良い。鍔状部材13は、外管400の開口部402側から接着剤11を流し込んだ場合、接着剤11が放電管100側に流れるのを防止するための部材であって、封止部202に外嵌されている。鍔状部材13の略中央には、封止部202の形状に合わせた孔部13aが形成されている。孔部13aの形状は、封止部202をランプ軸Xと直交する面で切断したときの横断面の形状と略同一であって、鍔状部材13は孔部13a内に圧入されている。また、鍔状部材13の外周面は外管400の内面と接触している。鍔状部材13と封止部202との間、および、鍔状部材13と外管400との間には隙間がほとんどなく、隙間から接着剤11が漏れないようになっている。
[変形例9]
内管200の封止部202は、図15に示すように、接着剤を用いず、鍔状部材13によって内管200が支持された状態で、口金500に固定されていても良い。さらに、口金500内に設けられたクリップ(図示せず。)等の弾性のある金属部材によって内管200が支持された状態で口金500に固定されていても良い。これらの場合、内管200と外管400との間、または内管200と口金500との間の接着工程を省くことができる。
[その他]
本発明の保護部材は、保護部材と内管の外面との間に隙間を設けた状態で、外管に配置されている。そのため、実施例及び変形例以外にも、外管の閉塞部側から保護部材を管軸方向に見たとき、保護部材が内管先端部を覆うように形成できる。この形状を採用すると、放電管破損により内管が破損し、内管の一部分が飛散した場合でも、その破片は保護部材で留まる。その結果、外管先端部の破損を防止することができる。
【0044】
なお、各変形例に記載されている保護部材の形状、外管の形状、固着方法については、各変形例毎に限定されるものではなく、適宜、夫々の組合せを選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、放電管、内管および外管を備えた、特に消費電力が100W以下の低ワットタイプでコンパクトな三重管構造の金属蒸気放電ランプに利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 照明装置
10 金属蒸気放電ランプ
100 放電管
200 内管
203 先端部
300 保護部材
400 外管
401 閉塞部
402 開口部
500 口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有し他端に閉塞部を有する外管と、
前記外管の開口部に取り付けられた口金と、
前記外管内に配置され、一端に形成された封止部が前記口金と固定された状態で、他端である先端部が前記閉塞部側に位置するように取り付けられている内管と、
前記内管内に収納された放電管と、
少なくとも一部が前記外管の内側かつ前記内管の先端部の外側に位置し、前記内管の外面との間に隙間を設け前記外管の内面と接触した状態で配置された保護部材と、
を備えることを特徴とする金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
前記保護部材は、その全部が前記外管の内側かつ前記内管の先端部の外側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
前記保護部材は、少なくとも一部が弾性を有し、当該一部を弾性変形させた状態で前記外管内に配置され、前記一部による押圧力により前記外管の内面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
前記保護部材は、接着剤により前記外管の内面に固着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項5】
前記保護部材は、その一部を前記外管の内側に設けられた係合部と係合させることにより前記外管の内面に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項6】
前記保護部材は、前記外管の閉塞部側から管軸方向に見たとき、内管先端部を覆うように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項7】
前記保護部材は、200[℃]の耐熱性のある材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項8】
前記保護部材は、弾性を有する材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−43589(P2012−43589A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182594(P2010−182594)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】