説明

金属蒸気放電ランプ

【課題】安全性を確保しつつ、照明装置の大型化を抑制することのできる金属蒸気放電ランプを提供する。
【解決手段】保護管11に対して保護管11軸方向であって保護管11の底に向けて重力、慣性力をはじめとする力が作用したとき、口金40に保護管11を係止させるので、保護管11に対して保護管11の長手方向であって保護管11の底に向けて重力、慣性力をはじめとする力が作用したときに、保護管11と口金40とを接合する耐熱性接着剤がユーザーの使用状況いかんによって完全に脱落していたとしても、保護管11が容易に脱落することを抑制できるので、単に保護管を耐熱性接着剤で口金に接合させた場合に比べて安全性を向上させることができ、また、照明装置側に安全性確保のための保護壁を設ける必要がなくなるので、照明装置の大型化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸気放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内用照明装置、特に店舗用照明装置に対して小型化、高輝度化の要求が高まっており、この要求に応えることのできる光源としてメタルハライドランプ(HIDランプ)が注目を浴びている。
【0003】
第1の従来のメタルハライドランプは、屋内用途を想定した小型化の要請に応えるべく、図11に示すように、硬質ガラス製の外管111と、この外管111の内部に配置された発光管130と、これら外管111と発光管130との間に位置し、かつ発光管130を囲繞する石英ガラス製のスリーブ120とを備えている(特許文献1を参照)。
【0004】
さらに、第2の従来のメタルハライドランプでは、より小型化を進めるために、図12に示すように、一端部に閉塞部を有し、かつ他端部にピンチシール部311を有する石英ガラス管311と、この石英ガラス管311の内部に配された発光管330とを備えている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-283996号公報
【特許文献2】特開平11-96973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第2の従来のメタルハライドランプでは、小型化の要請に応えられるものの、発光管330を覆うものが一つの石英ガラス管311のみであるため、当該メタルハライドランプを照明装置に用いる際、発光管330の破損および有害紫外線照射に対する安全性対策等のために上記照明装置に前面ガラスが必須となる。しかし、前面ガラスを用いるとその保持機構を設ける必要が生じて照明装置全体が大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、安全性を確保しつつ、照明装置の大型化を抑制することのできる金属蒸気放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の金属蒸気放電ランプでは、発光管と、前記発光管が収納された気密管と、前記気密管を覆う保護管と、前記気密管の一端部に接続された接続部を含む口金とを備えた金属蒸気放電ランプであって、前記接続部は、外周面の一部が凹入する溝形状の凹部を有し、前記保護管は、内周面の一部が突出する凸部を有し、前記保護管は、前記接続部に外接し且つ前記凸部が前記凹部に挿入された状態で、前記凹部に配された接着剤により前記接続部に固着されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、金属蒸気放電ランプでは、上記気密管を、保護管で覆い、保護管が上記口金に二重の脱落防止構造で取り付けられた構成を採用したので、上記保護管に対して保護管の軸方向に沿って保護管の閉塞端に向けて重力、慣性力をはじめとする力が作用しても、上記保護管が容易に脱落することを抑制でき、保護管脱落に対する安全性を向上させることができる。
【0010】
上記気密管が、例えば紫外線を吸収可能な材料で形成され、上記保護管が、例えば低波長の紫外線を吸収可能な材料で形成され、かつ発光管破裂に対して十分な強度を持つ場合、発光管破損および有害紫外線照射に対する安全性が確保され、好ましい。
【0011】
金属蒸気放電ランプでは、単に保護管が耐熱性接着剤で口金に接合された場合に比べて、上記保護管が脱落し難いので、発光管破損および有害紫外線照射に対する安全性が確実となって好ましい。
【0012】
上記二重の脱落防止構造を、接着剤による接合と、係止部と被係止部とによる係止で実現すれば、単に上記保護管を接着剤で上記口金に接合させた場合に比べて保護管脱落に対する安全性を向上させることができる。
【0013】
上記口金が上記保護管を係止するように、上記口金に係止部を、上記保護管に被係止部を備えさせた構成を採用すれば、上記保護管に対して重力、慣性力をはじめとする力が作用しても、上記保護管が容易に脱落することを抑制でき、よって、単に上記保護管を接着剤で上記口金に接合させた場合に比べて保護管脱落に対する安全性を向上させることができる。
【0014】
したがって、金属蒸気放電ランプでは、上記接着剤がユーザーの使用状況いかんによって仮に接合機能を失ったとしても、上記保護管に対して重力、慣性力をはじめとする力が作用したときに上記口金に上記保護管を係止させ、上記保護管が容易に脱落することを抑制できる。
【0015】
上記気密管の一端がピンチシールされており、ピンチシールされた端部が上記口金の接合部に挿入され、上記接合部が上記保護管の開口部に挿入され、当該接合部に上記係止部が設けられている場合、気密管と口金との接合手段および保護管を係止する手段とを接合部に集約することができる。したがって、口金をかしめることによって保護管を口金に接合し、かつ保護管開口部近傍にステムが設けられた場合に比べて、当該放電ランプでは、保護管の軸方向長さを短縮でき、すなわち金属蒸気放電ランプの軸方向長さを短縮できるので、金属蒸気放電ランプの大型化を抑制することができる。
【0016】
上記接合部外周面に上記係止部が設けられている場合、保護管の外周面に設けられた凸部を口金の内周面に設けられた凹部で係止するものに比べて、係止部を設けることが容易となる。
【0017】
上記被係止部として上記保護管の内周面において保護管の径方向に凸部を設け、上記係止部として上記接合部において保護管の内周面と対向する面に上記凸部を係止する凹部を設けた場合、あるいは、上記被係止部として上記接合部の外周面と対向する面に凹部を設け、上記係止部として上記接合部の外周面において接合部の径方向に上記凹部を係止する凸部を設けた場合、上記保護管を上記口金に係止させることが容易に実現できる。
【0018】
上記口金が、回転されることによってこれに対応するソケットに取り付けられ、上記凹部が、上記口金が回転される場合おいて上記凸部を係止することができる構造となっている場合、金属蒸気放電ランプを照明装置に取り付ける際、保護管脱落の誘発を抑制することができ、好ましい。
【0019】
上記各金属蒸気放電ランプを屋内用照明装置に装着すれば、金属蒸気放電ランプに保護管が設けられているため、保護管が設けられていない金属蒸気放電ランプに比べて、照明装置側に発光管破損に対する安全性確保のための保護壁を設ける必要がなくなり、照明装置の大型化を抑制し、また軽量化を図ることができ、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1におけるメタルハライドランプの概略分解図である。
【図2】(a)は、実施の形態1における保護管の概略斜視図であり、(b)は、その保護管を開口部側から見た概略構成図である。
【図3】(a)は、実施の形態1における口金の概略構成図であり、(b)は、当該口金のA断面矢視図であり、(c)は、当該口金のB断面矢視図である。
【図4】(a)は、実施の形態1において口金の接合部に設けられた凹部の第2のバリエーションを示す概略構成図であり、(b)は、口金の接合部に設けられた凹部の第3のバリエーションを示す概略構成図である。
【図5】(a)は、実施の形態1において口金の接合部に設けられた凹部の第4のバリエーションを示す概略構成図であり、(b)は、実施の形態1において口金の接合部に設けられた凹部の第5のバリエーションを示す概略構成図である。
【図6】(a)は、実施の形態1における口金の接合部の第2のバリエーションを示した概略構成図であり、(b)は、当該口金の接合部のA断面矢視図であり、(c)は、当該口金の接合部のB断面矢視図である。
【図7】(a)は、実施の形態1におけるメタルハライドランプの要部組立工程図であり、(b)は、実施の形態1における保護管の開口縁のC面矢視図、同図(c)は、気密管のピンチシール部のD断面矢視図である。
【図8】(a)は、実施の形態1において保護管の凸部を口金の接合部に設けられた凹部に嵌める手順を示した要部組立工程図であり、(b)は、(a)で示した保護管と口金のフランジ部との接合面を示すE断面矢視図であり、(c)は、保護管の凸部を口金の接合部に設けられた凹部に嵌める工程が完了した状態を示す要部組み立て工程図であり、(d)は、(c)で示した保護管と口金のフランジ部との接合面を示すF断面矢視図である。
【図9】(a)は、保護管の他のバリエーションを示した概略構成図であり、(b)は、口金の接合部の第3のバリエーションを示した概略構成図である。
【図10】口金の接合部に設けられた凹部の第6のバリエーションを示した概略構成図である。
【図11】第1の従来のメタルハライドランプの概略分解図である。
【図12】第2の従来のメタルハライドランプの概略分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
<放電ランプ10の構成>
図1は、実施の形態1におけるメタルハライドランプ(例えば、消費電力70[W])の概略図であり、保護管および気密管の一部のみ断面で示している。
【0022】
図1に示すように、実施の形態1におけるメタルハライドランプ10は、一端が閉塞し、かつ他端が開口している略円筒状(一端部を除く)の保護管11と、この保護管11に収納された気密管20と、当該気密管20に収納され、金属ハロゲン化物が封入された発光管30と、保護管11他端の開口部を閉栓する口金40とを備えており、保護管11と口金40との間において保護管11の脱落を防止する構造が設けられている。保護管11の詳細な構造については後述する。
【0023】
気密管20は、例えば、石英ガラス製で、その外径が15.5[mm]、内径が13.0[mm]である。また、この気密管20は、もともと予め一端が閉塞され、かつ他端が開口した円筒状のバルブであって、内部に発光管30などを収納した後に当該他端部を公知のピンチシール法によって圧潰封止することによって、その他端部にピンチシール部21が形成されている。さらに気密管20は、石英ガラス製であるため、発光管30から発せられる光のうち人体に有害な紫外線を遮断する機能を有する。なお、気密管20は、石英ガラスに限らず、紫外線を吸収可能で、かつ可視光を透過可能な機能を有する材料で作製されていても良い。気密管20の内部は、大気圧に保たれていてもかまわないが、例えば、略真空雰囲気に保たれているか、あるいは、減圧雰囲気下、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスが充填されていても良い。
【0024】
なお、保護管11と気密管20との間は、大気圧に保たれ、あるいは、真空雰囲気、もしくは減圧雰囲気とし、または、窒素ガスなどの不活性ガスが所定の圧力で充填されていても良い。
【0025】
発光管30は、その外囲器が透光性セラミック、例えば多結晶アルミナからなり、内部に一対の電極(図示せず)を有し、放電空間を形成している発光部31と、この発光部31の両端部から延出し、当該発光部31よりも径の小さい細管部32a,32bとを有している。発光管30の内部には、発光物質として例えばヨウ化ナトリウム、ヨウ化タリウム、ヨウ化インジウムなどの金属ハロゲン化物、緩衝ガスとしての水銀、始動補助用ガスとして例えばアルゴンガス等の希ガスがそれぞれ所定量封入されている。また、発光管30の内部には、当該電極に接続された給電体22a,22bが、細管部32a,32bの他端から導出された状態で、シール材によって細管部32a,32bの他端部で封着されている。なお、給電体22a,22bの他端は、口金40を介して周知の手段によってメタルハライドランプの外部と電気的に接続可能な電力供給線23a,23bと接続されている。
<保護管11の構成>
図2(a)は、本実施の形態における保護管11の概略斜視図であり、(b)は、その保護管11を開口部12側から見た概略構成図である。
【0026】
保護管11は、例えば、その外径が20.5[mm]、内径が17.9[mm]に設定され、硬質ガラスで作製されている。保護管11は、硬質ガラスで作製されているため、発光管30が破裂しても、十分に耐えうる強度を備えており、なおかつ、気密管20が吸収し難い低波長の紫外線を吸収することができる。
【0027】
図2(b)に示すように、保護管11の開口部12の端部において、保護管11の内周面からその保護管11の長手方向の中心軸に向けて突出した凸部(被係止部)13が2つ設けられている。これら凸部13は、先端同士が互いに対向している。また、凸部13は、例えば、保護管11内周面からの高さD1が1.0[mm]、保護管11軸方向に沿って開口縁から保護管11の内方に向けて長さH1が2.0[mm]、保護管11略円周方向に幅Wが2.5[mm]となるように形成されている。
【0028】
なお、凸部13は、以下に述べる接合部の凹部によって係止されることができれば、上記構成、寸法に限定されない。
本実施の形態では、保護管11の開口縁をその外周から保護管11軸に向けて窪ませることによって、凸部13を設けている。
<口金40の構成>
図3(a)は、口金40の概略構成図であり、同図(b)は、A断面矢視図であり、同図(c)は、B断面矢視図である。図3(a)に示すように、口金40は、端子部42、フランジ部43を備えており、フランジ部43の主面に外形が略円柱状の接合部41を備えている。接合部41は、碍子としての機能を有する物質、例えば、ステアタイトセラミックなどで作製され、その長手方向の中心軸がフランジ部43主面の円心を通っている。接合部41では、気密管20のピンチシール部21を支持するために、接合部41の長手方向の中心軸を含み、かつその中心軸方向に外周面とともに切り込まれたようなスリット41aが設けられている。気密管20は、そのピンチシール部21がスリット41aに挿入され、耐熱性接着剤によって口金40に接合されて支持されることになる。
【0029】
なお、接合部41において、必ずしも接合部41の外周面とともに切り込まれたようなスリット41aを設ける必要はなく、気密管20のピンチシール部21の寸法に応じたものであれば良い。例えば、接合部41において、その天面に接合部41の長手方向の中心軸方向に窪む凹部が設けられ、当該凹部に気密管20のピンチシール部21が嵌っていてもよい。
【0030】
また、略円柱状の接合部41は、上記スリット41aによって2分割された部分を備えることになる。各分割部の外周曲面に既述した凸部13を係止する凹部(係止部)44が設けられている。なお、この凹部44を周方向に対して垂直に切った断面の内側の輪郭形状は、略コの字状、あるいは一辺を欠いた矩形状、台形状、あるいは正方形状である。
(凹部のバリエーション1)
以下、凹部の第1のバリエーションについて説明する。図3(a)に示すように、この凹部44は、接合部41の円周方向に設けられた溝状であって、上記スリット41aの主面と直交する方向から上記各分割部を見たときに分割部の外周曲面の円周方向における半分の位置で凸部13が接合部41の円周方向に回転する運動を止めることができる。つまり、この凹部44は、互いに向かい合う2つの側壁を有し、かつこれらの側壁の一端部が凸部13を挿入するために開口し、他端部が凸部13の上記回転運動を止めるための壁を有する。
【0031】
第1の実施の形態では、口金40の端子部42が、回転されて照明装置に固定される螺旋形状となっており、溝状凹部44は、接合部41の円周方向であってかつ端子部42が回転され固定される方向に向けて凸部13が溝を進行したとき上記位置で凸部13を止めることができるように設けられている。そして、凹部44は、例えば、その深さD2が2.25[mm]に設定され、凹部のバリエーション1では、凹部44において接合部41の長手方向の中心軸方向の幅H2が、上記開口部から上記壁までほぼ均一に3.0[mm]となるように設定されている。
【0032】
端子部42は、上記形状に限定されず、端子部42が照明装置に回転され固定される構成であれば良い。
なお、凸部13の上記回転運動を止めるための壁が設けられている位置は、既述の位置に限定されず、スリット41aの主面と直交する方向から上記各分割部を見たときに分割部の外周曲面の円周方向における半分の位置から当該円周方向のどちらにずれていてもよい。ただし、後述する脱落防止の効果を確実に発揮させるためには、当該壁は既述の位置に設けられていることが好ましく、さらに、当該壁が既述の位置から凸部13の上記進行方向にずれていれば、後述する脱落防止の効果をより確実に発揮させることができ、よりいっそう好ましい。
(凹部のバリエーション2およびバリエーション3)
図4(a)は、凹部の第2のバリエーションを示す概略構成図であり、同図(b)は、凹部の第3のバリエーションを示す概略構成図である。凹部の第2、第3のバリエーションと凹部の第1のバリエーションとの相違は、凹部の長手方向(接合部41の円周方向)における凹部の幅にあり、ランプ光が鉛直下向きに照射されるようにランプを固定した際、凹部44b、44cの側壁のうち、下側に位置する側壁(図4では、上側)は、バリエーション2ではその幅H2が凸部13を挿入するにしたがって拡がるように(図4(a)参照)、バリエーション3では幅H2が凸部13を挿入するにしたがって段階的に拡がるように(図4(b)参照)形成されている。例えば、凹部44b,44cにおいて凸部13を挿入する開口部での幅H2が4.0[mm]であり、その後、連続的に、あるいは段階的に幅H2が増加し、最終的には5.0[mm]とする。これにより、保護管11と口金40との接着剤による接合が劣化し、保護管11と口金40とが凸部13と凹部44b,44cとによる係止のみで脱落防止を維持している状態において、外部から振動などが加わっても、保護管11がその振動などによって回転し、口金40から外れて脱落するのを防止することができ、凹部のバリエーション2および3で示した凹部44b,44cの脱落防止効果が凹部のバリエーション1で示した凹部44に比べて向上する。
(凹部のバリエーション4およびバリエーション5)
図5(a)は、凹部の第4のバリエーションを示す概略構成図であり、同図(b)は、凹部の第5のバリエーションを示す概略構成図である。凹部のバリエーション4,5と凹部のバリエーション1,2,3との相違は、凹部の長手方向(接合部41の円周方向)における凹部の幅にあり、凹部のバリエーション4,5では、その幅H2は凸部13を挿入するにしたがって拡がるように、あるいは幅H2が凸部13を挿入するにしたがって段階的に拡がり、途中で最大幅をとって、その後連続的または段階的に狭まるように形成されている。例えば、凹部44d,44eにおいて凸部13を挿入する挿入口での幅H2が3.0[mm]であり、その後、連続的に、あるいは段階的に幅H2が増加し、最大で5.0[mm]とする。これにより、保護管11と口金40との接着剤による接合が劣化し、保護管11と口金40とが凸部13と凹部44d,44eとによる係止のみで脱落防止を維持している状態において、外部から振動などが加わっても、保護管11がその振動などによって回転し、口金40から外れて脱落するのを防止することができる。
【0033】
そのうえ、当該構成を採用すれば、凹部のバリエーション2,3において凸部13を係止する機能を発揮する凹部44b,44cの最大幅部を、当該最大幅部における接合部41の径方向から見たとき、最大幅部の角度が鋭角となるのに対して、凹部のバリエーション4,5では、凸部13を係止する機能を発揮する凹部44d,44eの最大幅部を、当該最大幅部における接合部41の径方向から見たとき、最大幅部の角度が鈍角となるので、口金40の接合部41に採用する材料の選択、加工の精度に左右されることなく凹部44d,eにおいてその幅H2が最大となる箇所を確実に形成することができ、凹部のバリエーション2,3と比べて当該最大幅部に保護管11の凸部13が確実に嵌まり、接着剤が劣化して凸部13と凹部44d,44eとの係止のみで脱落防止を維持している状態でも凹部のバリエーション2,3に比べて確実に脱落を防止することができる。
【0034】
なお、凹部のバリエーション4,5において、凹部44d,44eの幅H2が最大となる箇所は、スリット41aの主面と直交する方向から上記各分割部を見たときに分割部の外周曲面の円周方向における半分の位置に設けられているが、当該半分の位置から当該円周方向のどちらにずれていてもかまわない。ただし、上記脱落防止の効果をより確実に発揮させるためには、当該最大幅部は既述の位置に設けられていることが好ましく、さらに当該最大幅部が既述の位置から凸部13の上記進行方向にずれていれば、上記脱落防止の効果をより確実に発揮させることができ、よりいっそう好ましい。
(接合部の第1のバリエーション)
以下、接合部の第1のバリエーションについて説明する。図3(b),(c)に示すように、略円柱状の接合部41の外周面では、真円柱の周面を面取りすることによって現れる2つの平面が接合部41の長手方向の中心軸に沿ってかつ互いに平行となるよう設けられている。既述した凹部44,44b,44c,44d,44eは、当該2つの平面において接合部41の長手方向における中心軸の方向に平行な辺から周方向に溝状に形成されている。
(接合部の第2のバリエーション)
図6(a)は、接合部の第2のバリエーションを示した概略構成図であり、同図(b)は、A断面矢視図、同図(c)は、B断面矢視図である。接合部の第1のバリエーションにおいて図3で示した接合部41の外周面の構成に限定されず、図6に示すように、接合部71の軸方向に垂直な平面において外周線の曲率が一律でなくても良い。例えば、図6に示すように接合部41の長手方向における中心軸の方向に垂直な平面において外周線の形状が略楕円型でもよい。その根拠については後述する。なお、図6に示すD3,H3は、図3で示したD2,H2と同じ寸法である。
<保護間11、気密管20、口金40のはめあい関係について>
以下に、保護管11、気密管20、口金40のはめあい関係を説明する。図7,8は、本実施の形態におけるメタルハライドランプの要部組立工程図であり、図7(a)は、保護管11、気密管20、口金40の組み立て順を示す概略工程図、図7(b)は、保護管11の開口縁におけるC面矢視図、図7(c)は、気密管20のピンチシール部21のD断面矢視図であり、図8(a)は、保護管11の凸部13を口金40の接合部41の凹部44に嵌める手順を示した概略工程図、図8(b)は、E断面矢視図、図8(d)は、F断面矢視図である。
【0035】
図7(a)に示すように、口金40の接合部41に設けられたスリット41aに気密管20のピンチシール部21を挿入し、例えば耐熱温度1000[℃]以上の耐熱性無機接着剤例えば、朝日化学工業(株)製のスミセラム(登録商標、商標登録番号第1269142号)あるいは日産化学工業(株)製のボンド・エックス(登録商標、商標登録番号第2598133号)などで接合する。そして、気密管20および接合部41を覆うようにこれらに保護管11を被せ、保護管11の開口縁と口金40のフランジ部43とを接触させる。このとき、耐熱温度1000[℃]以上の耐熱性無機接着剤を開口縁とフランジ部43との間に塗布しておく。したがって、保護管11の開口縁と口金40のフランジ部43との間に耐熱性無機接着剤が介在する場合がある。
【0036】
既述したように、口金40の接合部41では、その外周面において2つの平面が接合部41軸方向に沿ってかつ互いに平行となるように設けられているため、気密管20の外径と近似した内径を有する保護管11を採用しても、気密管20のピンチシール部21を接合部41のスリットに挿入した後に、保護管11に設けられた凸部13を保護管11の開口縁における接合予定のフランジ部43主面に到達させることができる(図8(a),(b))。
【0037】
そして、図8(a)に示すように、保護管11の開口縁を口金40のフランジ部43に接触させた状態で口金40を固定しつつ、保護管11を端子部42が回転され照明装置に固定される方向と同じ方向に回転させる。
【0038】
すると、図8(c),(d)に示すように、保護管11の凸部13が口金40の接合部41に設けられた凹部44に進入し、かつ、凹部44に係止される。この状態で、塗布された無機接着剤を焼成することにより保護管11の開口部12と口金40のフランジ部43とを接合する。
<その他>
なお、保護管11と口金40との間において凹凸関係が逆転していても良い。すなわち、保護管11に凹部が設けられ、口金40の接合部41に凸部が設けられていても良い。図9(a)は、保護管の他のバリエーションを示した概略構成図であり、同図(b)は、口金の接合部の第3のバリエーションを示した概略構成図である。例えば、図9(a)に示すように、保護管51に略L字状の切欠部54を設け、口金の接合部61外周面に凸部63を設けて、保護管51に対して保護管51の長手方向であって閉塞された保護管51の端部に向けて重力、慣性力をはじめとする力が作用したとき保護管51が口金60に係止されるようにしても良い。
【0039】
また、既述のように、接合部41は、接後部41の軸方向に垂直な平面において外周線の曲率を一律にせず、例えば、図6に示すように、当該平面において外周線の形状を略楕円型にした場合、当該略楕円の曲率の低い領域が、上記互いに平行な2平面に相当する領域に設けられていれば、気密管20のピンチシール部21を接合部71のスリット71aに挿入した後に、保護管11の凸部13を接合部71に干渉させることなく口金70のフランジ部73主面に到達させることができる。
【0040】
すなわち、気密管20のピンチシール部21を接合部71のスリットに挿入した後に、保護管11の凸部13をフランジ部73主面に到達させることができ、そのうえ凸部13をフランジ部73主面に到達させた後、保護管11を保護管11の円周方向に回転させることによって保護管11の脱落防止すなわち保護管11の長手方向に沿って保護管11の底に向けて重力、慣性力をはじめとする力が作用したとき保護管11の凸部13が接合部71の凹部74に係止されるように接合部71の長手方向に垂直な平面における接合部71の外周線の形状が定められていれば良い。
【0041】
なお、図10に示すように、例えば、口金80の接合部81の外周面にその端面からその軸方向に第1の凹部84dが設けられ、かつ、接合部81の略円周方向に第2の凹部84eが第1の凹部84dと連通させて設けられていても良い。当該構成によっても、凸部13を口金80のフランジ部83主面に到達させることができる。図10は、凹部の第6のバリエーションを示す口金80の概略構成図である。
【0042】
既述した凹部のバリエーション2,3,4,5,6(図4,5,10参照)と接合部のバリエーション(図3,6参照)とは自由に組み合わせることができる。すなわち、接合部71において、凹部44b,44c,44d,44eを、また、第1の凹部84dと第2の凹部84eとを連通させて、設けてもよい。
【0043】
凹部のバリエーション6(図10参照)に凹部のバリエーション2,3,4,5(図4,5参照)を組み合わせることも可能である。すなわち、第1の凹部84dと凹部44b,44c,44d,44eとを組み合わせてもよい。
【0044】
もちろん、凹部の第1のバリエーションである凹部44において、ランプ光が鉛直下向きに照射されるようにランプを固定した際、凹部44の側壁のうち、下側に位置する側壁(図3では、上側)に凹凸を設けもよいことはいうまでもない。
【0045】
また、保護管11の凸部13を係止する凹部44を、接合部41の外周面に設けることのできる限度において、保護管11の凸部13が保護管11の開口端よりもその内方に設けられていてもよい。例えば、接合部41において、その軸方向の中間で接合部41の外周面に上述した形態で凹部44を設け、接合部41の凹部44が凸部13を係止できるように、保護管11の内周面に凸部13を設けても良い。もちろん、保護管11の開口縁に凸部13が設けられた保護管11は、凸部13が開口縁よりもその内方に設けられた保護管11に比べて、凸部13の形成が容易である点で、優れていることはいうまでもない。
《実施の形態1における金属蒸気放電ランプの効果》
本実施の形態における金属蒸気放電ランプでは、口金40にフランジ部43が設けられており、保護管11が、発光管30を内包した気密管20を覆って、かつその開口縁でフランジ部43と無機接着剤により接合されているため、発光管30の破損および有害紫外線照射に対する安全性が確保されている。
【0046】
また、本実施の形態にかかる金属蒸気放電ランプでは、被係止部として、保護管11の開口部においてその内周面に凸部13が設けられ、係止部として口金40接合部41の外周面に設けられた凹部44と凸部13とが係合関係にあるため、保護管11の軸方向であって保護管11の閉塞端に向けて保護管11に対して重力、慣性力をはじめとする力が作用しても、それらの力に抗して口金40接合部41の凹部44が保護管11開口部12の凸部13を係止することができる。
【0047】
したがって、当該金属蒸気放電ランプでは、保護管11開口部と口金40のフランジ部43とを接合する無機接着剤の接合機能が完全に失われても、保護管11が容易に脱落することがなく、単に保護管を口金に無機接着剤で接合した放電ランプに比べて安全性が高い。
【0048】
なお、当該金属蒸気放電ランプでは、接着剤の接合機能が実用的に維持されている場合において、当該係止関係を構成していなくても、その接合機能が実用的に失われて脱落しようとするときに凸部13を係止することができ、いわば、二重の脱落防止機能を備えており、単に保護管を口金に無機接着剤で接合した放電ランプに比べて安全性が高い。
【0049】
なおかつ、当該金属蒸気放電ランプでは、発光管30の破裂に対して十分な強度を持ち、なおかつ気密管20が吸収できない低波長の紫外線を吸収可能な硬質ガラス製の保護管11が容易に脱落することを抑制できることから、単に保護管11を耐熱性接着剤で口金40に接合させた金属蒸気放電ランプに比べて、発光管30の破損および有害紫外線照射に対する安全性を向上させることができる。
【0050】
当該金属蒸気放電ランプでは、気密管20のピンチシール部21が挿入された接合部40の外周面に保護管11係止部として凹部44が設けられているため、接合部40に気密管20と口金40との接合手段および保護管11と口金40との係合手段とを接合部に集約することができる。したがって、口金をかしめることによって保護管を口金に接合し、かつ保護管開口部近傍にステムが設けられた場合に比べて、保護管11の軸方向長さを短縮でき、すなわち金属蒸気放電ランプの軸方向長さを短縮できるので、金属蒸気放電ランプの大型化を抑制することができる。
【0051】
また、当該金属蒸気放電ランプでは、上述した係合構造を採用したため、保護管11と口金40との接合に無機接着剤で接合するという手段を採用することができ、当該金属蒸気放電ランプの作製を容易にすることができる。
【0052】
そして、当該金属蒸気放電ランプでは、上記構成を採用したことにより、当該金属蒸気放電ランプを装着予定の下面開放型照明装置に硬質ガラス製の前面ガラスを設ける必要が無くなるので、当該前面ガラスを固定する部材を省略することができ、照明装置の小型化・軽量化を推進することができる。
【0053】
そのうえ、当該金属蒸気放電ランプでは、凹部44が、保護管11の円周方向に溝状に設けられ、かつ、上記口金40を照明装置に固定する回転方向において凸部13を係止するように設けられていることから、当該金属蒸気放電ランプを照明装置に取り付ける際、保護管脱落の誘発を抑制することができる。
【0054】
また、口金40の接合部41を、ステアタイトセラミックなどの粉体材料を用い、その成型手段に粉体加工を用いる場合、本実施の形態では、保護管11の凸部13を係止する接合部41の凹部44が略円柱状接合部41の外周面に形成されていることから、保護管の外周面と口金の内周面との間で係合関係を形成するランプに比べて、口金側の係止部である凹部44の成型が容易である。同様の理由から、口金側の係止部を凸部63に成型することも容易である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、金属蒸気放電ランプの大型化を抑制しながら、発光管破損および有害紫外線照射に対する安全性を確保することのできる保護管を設けることができ、なおかつ、保護管脱落のおそれを抑制することができるので、本発明を輸送機械等の前照灯等に採用することができ、その産業上の利用可能性は非常に広くかつ大きい。
【符号の説明】
【0056】
10 メタルハライドランプ
11,51 保護管
12 開口部
13,63 凸部
20 気密管
21 ピンチシール部
22a,22b 給電体
23a,23b 電力供給線
30 発光管
31 発光部
32a,32b 細管部
40,60,70,80 口金
41,61,71,81 接合部
41a,71a スリット
42,72 端子部
43,73,83 フランジ部
44,44b,44c,44d,44e,
54,74,84d,84e 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、前記発光管が収納された気密管と、前記気密管を覆う保護管と、前記気密管の一端部に接続された接続部を含む口金とを備えた金属蒸気放電ランプであって、
前記接続部は、外周面の一部が凹入する溝形状の凹部を有し、
前記保護管は、内周面の一部が突出する凸部を有し、
前記保護管は、前記接続部に外接し且つ前記凸部が前記凹部に挿入された状態で、前記凹部に配された接着剤により前記接続部に固着されていることを特徴とする
金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
前記接続部の溝形状の凹部は、保護管の管軸と平行な方向であって一端側に向かって延出していることを特徴とする
請求項1に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
前記凹部は前記外周面から接続部の中心軸に向かって凹入し、
前記凸部は前記内周面から保護管の管軸に向かって突出していることを特徴とする
請求項2に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
前記接続部の凹部は、前記保護管の管軸と平行な方向を一端側に延出した後に、周方向に延出する「L」字状をし、前記保護管の凸部は前記凹部の周方向に延出している部分に位置していることを特徴する
請求項3に記載の金属蒸気放電ランプ。
【請求項5】
前記接続部の凹部は、前記保護管の管軸と平行な方向を一端側に延出した後に、
周方向に延出する「L」字状をし、前記接着剤は前記凹部の周方向に延出している部分に位置していることを特徴する
請求項3に記載の金属蒸気放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−192463(P2010−192463A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130092(P2010−130092)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【分割の表示】特願2006−24433(P2006−24433)の分割
【原出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】