説明

金属蒸気放電灯

【課題】セラミックス発光管の封止工程において電極構成体を自重で前記発光管の細管に
挿入する時に精度良く電極構成体の位置が決まるようにする。また前記発光管から導出される外部導入線の接続強度を向上し、前記発光管の使用雰囲気を真空以外に拡大する。
【解決手段】前記電極構成体に使用される導電性サーメット製電流供給体に前記細管の内径より外径が大きなフランジ部を設け、該フランジ部にモリブデン製の外部導入線を溶接しこの接続部を保護する保護コイルを設け、この保護コイルを溶融ガラスフリットで埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両端に細管を有するセラミックス発光管において、前記セラミックス発光管の細管の管端から電極構成体を挿入し、その隙間に加熱溶融したガラスフリットで封止した金属蒸気放電灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の金属蒸気放電灯は、たとえば特許第3246463の図3(従来例1)や特許第4292330の図1(従来例2)に開示されている。すなわち、発光管本体とその両端に具備している発光管本体外径より小さい外径の細管がセラミックスからなる金属蒸気放電灯の発光管封止工程は、前記細管の端面から少なくとも電極と電流供給体からなる電極構成体を挿入し、前記電流供給体と前記細管の隙間に加熱溶融したガラスフリットを充填して気密封止している。
【0003】
また従来の電極構成体の外径は前記細管に挿入できるように前記細管の内径より小さくしてある。このため前記封止工程において前記発光管本体における電極間距離を精確に維持するためにガラスフリットを約1200度に加熱溶融する高温状態のなかで前記発光管本体と前記電極構成体を保持固定する冶具が必要である。この冶具の材料は高融点であり高価であり、また加工が非常に難しく更に大幅な費用が発生する。さらに前記発光管、前記電極構成体、ガラスフリットなどを該冶具に装着する作業は通常ドライボックス内で行われるため非常に難しく時間が必要である。
【0004】
これを解決するために従来は重力を利用し前記電極構成体が自重で前記細管内に挿入する方法が考えられた。この方法では特開2003−100254の図2(従来例3)に示されるようなニオビウム製ストッパーを前記電流供給体に溶接固定し、前記細管端部の決められた位置でガラスフリットに埋設、封止している。前記ストッパーはガラスフリットに埋設されるため膨張率などを考慮して高価なニオビウムを使うことが必要である。また前記電流供給体はアルミナが混合されており単純な金属どうしの溶接と違い簡単でなく歩留が良好でない。前記封止装置内に固定冶具を設けるのに比べ容易であるが製造コストが増加する。他に特開平9−1717197図1に前記細管内部に段を設けこの段で前記電流供給体を受け決められた位置でガラスフリットに埋設、封止されることが示されている。しかしながら前記細管内部に段を設けることは非常に難しく、現段階では商業的に実用化されていない。
【0005】
また特開2003−100254の(従来例4)に導電性サーメットからなる前記電流供給体に外部リード線を溶接、接続すると、その接続強度が弱く補強が必要であることが述べられている。単純に加熱溶融したフリットガラスで該接続部を覆うことで接続強度を補強することができるが、フリットガラスの線膨張率と外部リード線の線膨張率の整合性をとる必要がある。加えて該外部リード線がフリットガラスの加熱溶融時に溶けない耐熱特性が必要になり材質としてニオビウムに限定される。このニオビウムは高価であるばかりでなく、水素や窒素を吸収して脆化する特徴があり、真空雰囲気での使用に限定される不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3246463の図3
【特許文献2】特許第4292330の図1
【特許文献3】特開2003−100254の図2
【特許文献4】特開2003−100254の従来例4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記電極構成体を自重を利用し重力で前記細管内に挿入させ、簡単に封止作業ができる方法において、その前記電極構成体を目的の位置に封止するためのストッパーの構造、作り方が重要であることがわかる。該ストッパーについて前記電流供給体の一部を変形させフランジ部を設けることを考えた。方法としては部分的に加熱し、軸方向に圧縮するこにより球状のフランジを作成した。図6に示すように前記電流供給体の円柱部端に電極を接続し、反対のフランジ部端に外部導入線を接続した前記電極構成体を前記細管に挿入し、その隙間に加熱溶融したガラスフリットを充填し気密、封止した。前記電極構成体は自重で前記細管に進入し球状フランジ部が前記細管の内径端に接触して固定される。本方法では製造コストがほとんどかからず非常に安価に該ストッパーを形成でき前記電極構成体を目的の位置に封止、固定できた。
【0008】
しかしながらガラスフリットが点灯時の高温から消灯時の室温に低下するときに少し収縮があり、前記電流供給体が前記発光管内中心に押し込められる作用が発生する。この力により前記細管内径端部に接触した球状フランジ部が細管内面から外側に押し広げ、このために前記細管に縦の大きなクラックが発生し、気密が保てなくなる不具合が発生した。本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、前記発光管封止工程の能率改善と前記電極構成体の強度を増し、前記細管部の品質を向上することにより、前記セラミックス発光管を組込んだ金属蒸気放電灯の利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はセラミックス発光管本体とその両端に具備している発光管本体外径より小さい外径のセラミックス細管で形成され、前記細管に少なくとも電極、電流供給体、外部導入線とからなる電極構成体が挿入されており、前記電流供給体はモリブデン等の高融点金属とアルミナからなる導電性サーメットであり、前記細管と前記電流供給体との隙間に加熱溶融させたガラスフリットを流し込んで封止したことを特徴とした発光管を有する金属蒸気放電灯において、前記電流供給体が前記細管内に挿入される円柱部と前記細管内径より大きな外径を持ち、前記細管端部に隣接するフランジ部で構成されていて、前記電流供給体の円柱部の外径をA、前記細管の内径をB、前記電流供給体のフランジ部の外径をCとすると (C-A)/2>(B-A) であることを特徴とする。これにより前記細管内径と前記電流供給体の隙間を無視してフランジ部の端部が前記細管端面に接するか近接して前記電極構成体が自重で前記細管内に挿入され時に自動的に目的の位置に固定される。また前記電流供給体のフランジ部は細管内に挿入される円柱部より外径が太いため、接続する外部導入線の線径を円柱部の外径より太くでき溶接強度を増すことができる。
【0010】
さらに、前記電流供給体の細管内部に挿入される円柱部の外径をA、円柱面とフランジ部端面の交点における曲率半径をr、前記細管内径をBとすると、r<(B-A)/2であり、フランジ端面と円柱面が交わる角度をαとするとα≦90°が成り立つか、前記曲率半径rが
r≧(B-A)/2であり、前記細管端部に隣接するフランジ面の周状接点より円筒部がフランジ部側に存在することが好ましい。これにより前記フランジ部が球状におけるように前記細管端面の内部から押し広げる作用を抑制でき前記細管に発生するクラックを防止しできる。
【0011】
また、上記電極構成体における電流供給体に接続される外部導入線がモリブデンで電流供給体フランジ部との接続部にモリブデン製の保護コイルが設けてあることにより、該コイル構造による縦横の伸縮性の増加を利用しモリブデンより大きな線膨張率を持つガラスフリットに該保護コイルが埋設されても大きく破壊的なクラックの発生を防止でき、該ガラスフリットがフランジ部と外部導入線の接続部を補強し接続強度を更に向上できる。また外部導入線をガス脆化が発生するニオビウムからモリブデンにすることにより発光管使用雰囲気の制限が広がり該金属蒸気放電灯の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明は、セラミック製発光管封止工程およびの該電極構成体の製造工程が容易になり生産性を向上できる。また該発光管の外部導入線にモリブデンを採用でき、該発光管の使用雰囲気を真空に限定する必要が無くなり、セラミック製発光管を利用した金属蒸気放電灯の使用範囲が広がり利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明に係わる電極構成体が挿入、封着された発光管の断面図である。
【図2】図2は本発明に係わる電極構成体の図面であり、請求項1の詳細図面である。
【図3】図3は本発明に係わる電流供給体のフランジ部の一例であり、請求項2の詳細図面である。
【図4】図4は本発明に係わる電流供給体のフランジ部の一例であり、請求項3の詳細図面である。
【図5】図5は本発明に係わる電極構成体の外部導入線に保護コイルを設け、それをガラスフリットで固定保護した図面であり、請求項4の詳細図面である。
【図6】図6は球状フランジ部を設けた従来の不具合についての説明図である。
【図7】図7は本発明に係わる発光管を具備した金属蒸気放電灯の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は実施例1に係わる電極構成体を両端部の細管に有する発光管の断面図である。発光管本体の外径は8.6mm、長さは12mmである。それに続く細管は外径が2.62mm長さ12mmで内径Bが0.8mmである。この両端の細管にそれぞれ電極構成体が挿入されガラスフリットを加熱溶融して細管端部から流しこみ電極構成体との隙間を充填して気密を確保している。
【0016】
図2は図1における電極構成体の詳細図面である。請求項1で述べているように導電性サーメット製電流供給体における円柱部の外径Aは0.7mmでフランジ部の外径Cは1.2mmである。図1における細管の内径0.8mmから請求項1でのべている(C-A)/2>(B-A))を満たしている。この条件が等しいか、逆になるとフランジ部の外径の大きさが不十分になり、細管に電流供給体が挿入されるときに細管端部にて電流供給体を確実に止めるここができず電極間距離にバラツキが生じランプ特性が所望の値を確保できない不具合が発生する。
【実施例2】
【0017】
図3は実施例2に係り、図2の電流供給体の円筒部とフランジ部の接続する部分の構造を示す。フランジ面が平面で円柱部と交わる角度は90度及び90度以下にすることにより細管端部の内面に楔状に該電流供給体が接触することを防止する。本実施例では90度になっている。また円筒部とフランジ面が交わる部分の半径 r を0.04mmと非常に小さくしている。これにより請求項2のフランジ面が平面で、円筒部とフランジ面が交わる部分の接続半径 r を細管内径B、円筒部の外径Aとするとr<(B-A)/2である条件を満たしており、電極構成体がその自重で細管に進入する時、中心軸から径方向に微妙にズレが生じることがあっても電流供給体が細管端部の内面の全周に接触することが無く、細管内部から外に押し広げる力が発生せず、細管のクラックを防止できる。
【実施例3】
【0018】
図4は実施例3に係り、図2の電流供給体の円柱部とフランジ部の接続する部分の実施例2と異なる構造を示す。請求項3に述べているように円柱部とフランジ面が交わる部分の接続半径rがr≧(B-A)/2であり、細管端部に最接近する周状接点より円柱部の端がフランジ部側に存在することによりフランジ部がガラスフリットの収縮により細管に圧力を加えても、該圧力は細管端面に垂直に作用するため、細管内部から押し広げる作用を抑制でき細管に発生するクラックを防止できる。
【実施例4】
【0019】
図5は実施例4に係わり、図2における電流供給体のフランジ部に接続する外部導入に関する請求項4の詳細図面である。フランジ部を設け、円柱部の太さに制限されず太い外部導入線を接続できその接続強度が向上することを述べたが、使用環境により更なる耐震強度の向上が求められる場合が予想される。このため、フランジ部に接続された外部導入線をガラスフリットで埋設することが考えられる。外部導入線の線膨張率がガラスフリットに近いニオビウムでは問題ないが線膨張率が約4.0×10−6/℃のモリブデンではガラスフリットに大きなクラックが発生し固定保護の意味が無くなってしまう。
【0020】
この対策として、この外部導入線のフランジ部に接続さる部分に保護コイルを設けガラスフリットで固定保護することを実施した。コイル状の保護コイルは線材自体の線膨張率より構造体としての見かけの膨張率が大きくなり線材単体とでの接着ではクラックが発生する線膨張率が大きなガラスと接してもガラスにクラックを発生させない。本実施例では線膨張係数約4.0×10−6/℃のモリブデン線で太さ0.7mmの外部導入線をフランジ部に接続し、この接続部に前述のモリブデン線できた保護コイルを設け、この保護コイルをDy,Al,Siの酸化物を主成分とした線膨張係数が約6.5×10−6/℃のフリットガラスで溶融埋設した。これにより外部導入線とフランジ部の接続強度を強化でき、店舗、屋内体育館などの静かな場所での使用に加え、衝撃が加わるスタジオ、ステージなどでも使用できるようになった。なお本外部導入線固定用ガラスフリットと円柱部を主に気密封止するガラスフリットは溶融温度が近ければそれぞれ線膨張率や組成を変えて最適化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は両端に細管を有するセラミックス発光管において、セラミックス発光管の細管の管端から電極構成体を挿入し、その隙間に加熱溶融したガラスフリットで封止する工程が合理化でき生産性の工場に寄与できる。また外部導入線にモリブデンを採用することにより該セラミックス発光管の使用雰囲気が真空に限定されず利便性が向上する。
【符号の説明】
【0022】
1 セラミックス製発光管本体
2 セラミックス製細管
2a セラミックス製細管の内径B
3 電極構成体
3a 電極
3b 導電性サーメット製電流供給体
3b1 円柱部
3b2 フランジ部
3b3 円柱部の外径A
3b4 フランジ部の外径C
3b5 接続半径r
3b6 フランジ面
3b7 円柱部(3b1)とフランジ面(3b6)とが交わる角度α
3b8 細管端部に隣接する円周状接点X
3b9 円柱部の端Y
3b2a 球状フランジ部
3c 外部導入線
3d 保護コイル
4 溶融ガラスフリット
5 消灯時、電極構成体を発光管中心に押し込む力
6 球状フランジ部(3b2a)が細管端部の内部から外側に押し広げる力
7 本発明の発光管
8 外管
9 口金













【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管本体とその両端に具備している発光管本体外径より小さい外径の細管がセラミックスで形成され、前記細管に少なくとも電極、電流供給体、外部導入線とからなる電極構成体が挿入されており、前記電流供給体はモリブデン等の高融点金属とアルミナからなる導電性サーメットであり、前記細管と前記電流供給体との隙間に加熱溶融させたガラスフリットを流し込んでシールした発光管を有する金属蒸気放電灯において、前記電流供給体が前記細管内に挿入される円柱部と前記細管内径より大きな外径を持ち、前記細管端部に隣接するフランジ部で構成されていて、前記電流供給体の円柱部の外径をA、前記細管の内径をB、前記電流供給体のフランジ部の外径をCとすると(C-A)/2>(B-A) であることを特徴とした金属蒸気放電灯。
【請求項2】
前記電流供給体の細管内部に挿入される円柱部の外径をA、円柱面とフランジ面の交点における接続半径をr、前記細管内径をBとすると、 r<(B-A)/2であり、フランジ面と円柱面が交わる角度をαとするとα≦90°が成り立つこと特徴とする請求項1の金属蒸気放電灯。
【請求項3】
前記電流供給体の細管内部に挿入される円柱部の外径をA、円柱面とフランジ面の交点における接続半径をr、前記細管内径をBとすると、r≧(B-A)/2であり、前記細管端部に隣接する円周状接点Xより円柱部の端Yがフランジ部側に存在することを特徴とする請求項1の金属蒸気放電灯。
【請求項4】
前記電流供給体に接続される前記外部導入線がモリブデンで前記電流供給体のフランジ部との接続部にモリブデン製保護コイルが設けてあり、該保護コイルが加熱溶融したガラスフリットで覆われていることを特徴とした請求項1と請求項2と請求項3の金属蒸気放電灯。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249270(P2011−249270A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124041(P2010−124041)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(310000015)
【Fターム(参考)】