説明

金属製のルアー

【課題】接合強度が大きく、かつ、止着部材をルアー本体にガタ付きなく固定し得る金属製のルアーを提供する。
【解決手段】ルアー本体23は左右の一対の側面26を形成し互いに別々に成形された一対の半体24を包含し、各半体24には挿通孔31を構成する溝31Gが形成されており、各半体24には各々一対の側面26において開口する貫通した係合孔50が形成されており、抜止め手段は、係合孔50の部位において止着部材43の一部を包み、かつ、一対の側面26の各開口53において露出する係合部材60を包含し、係合部材60の露出端面63が一対の側面26の各開口53においてカシメられていることで、一対の半体24が互いに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタルジグと呼ばれる金属製のルアー(以下、メタルジグという)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉛製のメタルジグに加えて、タングステンやタングステン合金製のメタルジグが使用されている。かかるタングステン製等のメタルジグは鉛製のそれに比べ、比重が大きいので、小型ないし薄型になり、食いが細い時期にも魚がかかり易いなどの種々の利点を有する。
【0003】
その一方で、タングステンは硬いので、ルアー本体に仕掛けの止着部材を固定し難く、そのため、止着部材がガタ付くというテーマがあった。かかる止着部材の固定方法の一例として下記の特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−339278(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記タングステン製等のメタルジグにおいては、たとえば、2枚に分割した左半体と右半体とを互いに接着することがなされているが、タングステンは極めて硬いため、落とした場合に左半体と右半体とが互いに分離するなどの問題があった。
したがって、本発明の目的は接合強度が大きく、かつ、止着部材をルアー本体にガタ付きなく固定し得る金属製のルアーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、タングステンまたはタングステン合金で形成され前後方向Xに延びる挿通孔31が形成されたルアー本体23と、前記挿通孔31に挿通され、端部に成形された仕掛け止着部35,37が前記ルアー本体23の前方および後方において突出する止着部材43と、前記止着部材43を前記ルアー本体23に抜止め保持する抜止め手段とを備えた金属製のルアーであって、前記ルアー本体23は左右の一対の側面26を形成し互いに別々に成形された一対の半体24を包含し、前記各半体24の少なくとも一方には前記挿通孔31を構成する溝31Gが形成されており、前記各半体24には各々前記一対の側面26において開口する貫通した係合孔50が形成されており、ここにおいて、前記抜止め手段は、前記係合孔50の部位において前記止着部材43の一部を包み、かつ、前記一対の側面26の各開口53において露出する係合部材60を包含し、前記係合部材60の一対の露出端63が前記一対の側面26の各開口53においてカシメられていることで、前記一対の半体24が互いに結合されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、延性金属からなる係合部材60が止着部材43の一部を鋳包んでおり、該係合部材60は前記一対の側面の開口において各露出端63がカシメられていることで、係合孔においてルアー本体に係合していると共に両半体をカシメにより互いに一体に固定している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明のメタルジグの一実施例を示し、図1Aおよび図1Bは係合 部材60をカシメる前の状態で示す側面図および底面図、図1Cは同係合部材60をカ シメた後の状態で示す底面図である。
【図2】図2Aはカシメる前の状態で示すメタルジグの斜視図、図2Bは同透視図 である。
【図3】図3Aはルアー本体の左半体を示す外側面図、図3Bは同内側面図、図3C は止着部材および係合部材を示す斜視図である。
【図4】図4Aはカシメる前の要部を示す平面断面図、図4Bは同側面断面図、図4 Cはカシメた後の要部を示す側面断面図である。 なお、図4A〜図4Cにおいて網点は係合部材60を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な実施例においては、前記係合孔50および係合部材60が前記前後方向Xに離間した複数の箇所に設けられている。
【0010】
この場合、係合部材60により半体24同士が前後に離れた複数の箇所でカシメられているので、両半体24同士の結合が安定する。
【0011】
本発明の更に好適な実施例においては、前記係合部材60は前記止着部材43を鋳包んだ第1部61と、前記第1部61から前記各側面26に向かって延びる一対の第2部62とが一体に形成され、前記第2部62の径よりも前記第1部61の径の方が大きいことで、前記第1部61が前記各半体24に対し左右方向Yに係合している。
【0012】
この場合、係合孔50において係合部材60の第1部61が係合し、一方、開口53において第2部62がカシメられている。そのため、延性の高い係合部材60が第1部61と第2部62との間で各半体を挟んでおり、各半体24が係合部材60に確実に保持される。
すなわち、一対の半体24,24を前記開口53において係合部材60でカシメただけでは硬い各半体24,24の分割面28において各半体24,24間に微少な隙間ができ易く、これによりガタ付きが生じ易いが、本実施例の場合には、かかるガタ付きが生じ難い。
【実施例】
【0013】
以下、本発明のメタルジグの一実施例を図1〜図4にしたがって説明する。
本メタルジグはルアー本体23、止着部材43および複数個の係合部材60からなる。
【0014】
図1において、ルアー本体23は粉末冶金法によって製造された比重14.0から19.35(好ましくは16以上)のタングステン合金からなる。
図1および図2に示すように当該ルアー本体23は、魚の形状に似せて前部25から後部27に亘ってプレート状に一体成形されている。
【0015】
ルアー本体23を成形するタングステン合金は、タングステンとこれより比重の小さいニッケル、モリブデンおよびコバルトのうち1または2以上の金属を含んだもので、タングステン含有量は70重量%以上100重量%未満とされている。また、タングステン合金のルアー本体23は、ルアー全体の60重量%以上の重さを有している。
【0016】
このようにタングステン含有量を70重量%以上とする理由は、ルアーに必要な比重(比重14.0以上)を得るためであり、また、含有量を100重量%未満とした理由は、タングステンの融点が3380℃と高く高温でなければ焼結しないためであるが、ニッケルを添加することによって焼結温度を1500℃程度に下げることができるからである。
【0017】
図1Cの前記ルアー本体23は左右の一対の側面26を形成し互いに別々に成形された一対の半体24を包含する。前記各半体24,24は、両者の分割面28を中心に面対称であり、当該分割面28において互いに接着剤で接着されている。
【0018】
図3Bの前記各半体24の分割面28には、それぞれ、挿通孔31を構成する溝31Gが形成されている。前記溝31Gは前後方向Xに延びて図2Bのルアー本体23を貫通する。図3A,図3Bの前記各半体24には各々前記一対の側面26において開口する係合孔50が形成されている。前記係合孔50は左右方向Yに延びてルアー本体23を貫通する。
【0019】
図2Bに示すように、止着部材43は前記挿通孔31に挿通され、端部に成形された仕掛け止着部35,37が前記ルアー本体23の前方および後方において突出する。前方の仕掛け止着部35にはラインを止着する。後方の前記仕掛け止着部37には図示しないスプリットリングを介してフックを止着する。
【0020】
止着部材43は、たとえば鉄、ステンレス、チタン合金等の金属製の線材からなり、図示するように前後の端部に、それぞれ、既述した仕掛け止着部35,37が一体に成形されている。止着部材43の太さや形状は様々なものを使用でき、たとえば、断面が円形の他に角形にした線材でもよいし、あるいは、板材でもよい。
【0021】
図2Bおよび図3Cに示すように、前記止着部材43は前後方向Xに離れた複数の箇所において、部分的に係合部材60に鋳包まれており、これにより、止着部材43と係合部材60とが互いに固着されている。前記係合部材60は叩かれてカシメられることで、図2Bの前記止着部材43を前記ルアー本体23に抜止め保持する抜止め手段を構成しており、前記止着部材43やルアー本体23を形成する金属より融点が低く、かつ、延性の大きい鉛や鉄系金属等で形成されている。
前記係合部材60のカシメは係合部材60の第2部62が叩きカシメられてもよいし、溶かしてカシメられてもよいし、溶かした上で叩きカシメられてもよいし、あるいは、溶けなくても昇温されて軟化した上で叩きカシメられてもよい。
【0022】
図3Cの前記係合部材60は前記止着部材43を鋳包んだ第1部61と、前記第1部61から前記各側面26に向かって(左右方向Yに)延びる一対の第2部62とが一体に成形されている。図4Cの前記第1部61は前記係合孔50の部位において前記止着部材43の一部を包む。前記第2部62は前記一対の側面26の各開口53において露出する。
【0023】
図4Bに示すように前記係合孔50は前記第1部61が嵌り込む略方形の第1孔51と、前記第2部62が貫通する略円錐台形の一対の第2孔52とを包含する。前記第1孔51および第2孔52は左右方向Yに連なっている。
【0024】
図3の前記係合孔50のうちの第1孔51は前記挿通孔31の一部を構成している。前記第1孔51に嵌る第1部61は、前後の挿通孔31の部分よりも図3Bの上下方向Zおよび図4Bの左右方向Yに大きい。
【0025】
前記第2孔52は開口53から第1孔51に向かって径小となるテーパ円錐台状で、つまり、第2孔52は開口53に向かって末広がりのテーパ円錐台状である。このような形状により、前記第2部62を叩かなくても溶かしてカシメただけでも硬化時に鉛が縮んでカシメる作用が得られるだろう。
なお、図3の前記係合孔50および係合部材60は、互いに同数で、前後方向Xに離間した複数の箇所に設けられている。
【0026】
前記第2部62の径よりも前記第1部61の径の方が大きいことで、前記第1部61が前記各半体24に対し左右方向Yに係合している。図4Bおよび図4Cに示すように、前記係合部材60の各露出端63は前記一対の側面26の各開口53において叩かれてカシメられていることで、各第1部61と第2部62との間に各半体24が挟み付けられると共に、前記一対の半体24が互いに結合されている。更に、前記カシメにより、係合部材60が前記各半体24に対し前後方向Xおよび上下方向Xに係合し、これにより、止着部材43がルアー本体23に係合部材60を介して固着される。
【0027】
なお、ルアー本体23には、図示しない魚の目、鱗模様、色彩等を描き更に、全体を合成樹脂等の被覆層でコーティングしてメタルジグが仕上げられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明はメタルジグに利用できる。
【符号の説明】
【0029】
23:ルアー本体
24:半体
25:前部
26:側面
27:後部
28:分割面
31:挿通孔
31G:溝
35:止着部
37:止着部
43:止着部材
45:フック
50:係合孔
51:第1孔
52:第2孔
53:開口
60:係合部材
61:第1部
62:第2部
63:露出端
X:前後方向
Y:左右方向
Z:上下方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンまたはタングステン合金で形成され前後方向Xに延びる挿通孔31が形成されたルアー本体23と、前記挿通孔31に挿通され、端部に成形された仕掛け止着部35,37が前記ルアー本体23の前方および後方において突出する止着部材43と、前記止着部材43を前記ルアー本体23に抜止め保持する抜止め手段とを備えた金属製のルアーであって、
前記ルアー本体23は左右の一対の側面26を形成し互いに別々に成形された一対の半体24を包含し、
前記各半体24の少なくとも一方には前記挿通孔31を構成する溝31Gが形成されており、前記各半体24には各々前記一対の側面26において開口する貫通した係合孔50が形成されており、
ここにおいて、前記抜止め手段は、前記係合孔50の部位において前記止着部材43の一部を包み、かつ、前記一対の側面26の各開口53において露出する係合部材60を包含し、前記係合部材60の一対の露出端63が前記一対の側面26の各開口53においてカシメられていることで、前記一対の半体24が互いに結合されている。
【請求項2】
請求項1の金属製のルアーにおいて、前記係合孔50および係合部材60が前記前後方向Xに離間した複数の箇所に設けられている。
【請求項3】
請求項2の金属製のルアーにおいて、前記係合部材60は前記止着部材43を鋳包んだ第1部61と、前記第1部61から前記各側面26に向かって延びる一対の第2部62とが一体に形成され、
前記第2部62の径よりも前記第1部61の径の方が大きいことで、前記第1部61が前記各半体24に対し左右方向Yに係合している。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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