説明

金属製の構造体

【課題】鋳造品に部品を接合するにあたり、従来のロウ付け・溶接等に係る諸問題を解決するため、鋳造部分の鋳造に供する鋳型の空洞内部に、板・管・条等の一部を露出し、当該鋳造部分の鋳造時に、鋳型の空洞内部に注がれた溶融と当該露出部分が接触することにより、板・管・条等と鋳造部分の結合を行う製造方法及びその金属製の構造体を提供する。
【解決手段】鋳造部品2の鋳造作業において、鋳型4および鋳型によって形成される略閉空間の空洞部分5に、既に固体金属となっている構成部分1の一部を露出した状態で固定し、空洞部分5に溶融金属を充填する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、車両・船舶・航空機等の輸送機器、および住宅・ビル・プレハブ等の建造物に備わる金属製の構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の構造体の各部分間は、溶接もしくはロウ付けによって結合されていた。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術によれば、鋳造部分を有する金属製の構造体は、細長く、かつ略一定断面の形状である板・管・条等を、鋳造等の方法によって形成され自由度の高い形状をなす部分(以下、鋳造部分)に、溶接もしくはロウ付けにより結合することで、構成されるのが専らである。なお、当該鋳造部分は、結合前既に固体金属となっている。
これは優れた技術で、安価・高強度に製造可能な板・管・条等を、形状自由度の高い鋳造部分を節として組み立てることにより、当該構造体は、所要の形状・強度を得ることが可能となっている。
しかしながら、溶接もしくはロウ付けにより結合する製造方法には、幾つかの問題点がある。
溶接による結合では、結合部分が順次局所的に加熱溶解・冷却されるため、歪み・残留応力等、熱変形に係る問題が複雑な様相を呈するのを免れない。特に、大断面の管を用いる場合、結合部分の溶接長さが長くなり、上記の熱変形に係る問題に加えて、作業時間・製造原価を高める欠点がある。
また、ロウ付けによる結合では、結合部分の形成に、ロウ・即ち母材と異なる金属材料の介在が必須で、構造体全体を同材料とすることは、できない。
さらに、特に自動車・2輪車部品等、比較的小規模の構造体においては、溶接・ロウ付けの作業を複数箇所同時に行うことは稀で、製造に必要な時間は、結合箇所の数に強く依存する。このことは、設計上の大きな制約となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するため、本発明では以下の製造方法を採用する。
(A)鋳造部分の鋳造に供する鋳型の空洞内部に、板・管・条等の一部を露出し、当該鋳造部分の鋳造時に、鋳型の空洞内部に注がれた溶融金属と当該露出部分が接触することにより、板・管・条等と鋳造部分の結合を行う製造方法。
また特に高い信頼性を要求される場合や、著しく融点の異なる異種金属材料相互の結合のごとく金属組織間の結合に充分な強度が期待できない場合等に有効な補強方法として、本発明では以下の構造も、補足的に提案する。
(B)(A)に係る製造方法において、当該露出部分に、穴・突起等を設け、当該鋳造部分の固体化により、当該2部分が機械的にも抜去不能となる構造。
【作用】
【0005】
当該製造方法による結合を用いた場合、鋳造作業と結合作業が同時に行われるため、時間的・経済的に有利である。
また、結合部分全体がほぼ同時に加熱・冷却されるため、熱変形による諸問題は、溶接によって結合を行う場合に比較して、極めて単純な様相を呈する。即ち、容易な推測により充分な対策が可能である。
また、ロウ付けによる結合と異なり、結合部分の形成に、ロウ・即ち母材と異なる金属材料の介在が必須ではないので、構造体全体を同材料とすることも可能である。
さらに、特に自動車・2輪車部品等、比較的小規模の構造体においては、溶接・ロウ付けの作業を複数箇所同時に行うことは稀で、製造に必要な時間は、結合箇所の数に強く依存するのに対し、当該製造方法による結合を用いた場合、当該規模の構造体であっても、複数箇所同時の作業が容易に可能であり、製造に必要な時間は、結合箇所の数に依存しないので、設計上の制約とならない。
【実施例】
【0006】
図面に示す金属製の構造体における実施例に基づき、発明の具体例を説明する。容易に推測されるとおり、本発明は、従来溶接・ロウ付け等による結合部分を具備するあらゆる構造体に応用可能である。
図1に、鋳造部分を有する金属製の構造体の製造工程中、当該鋳造部分の鋳造作業準備時において、鋳型の空洞内部に、当該構造体の構成部分のうち、既に固体金属となっているものの一部を露出している状態を、断面図として示す。
図2に、図1に示した鋳造部分を有する金属製の構造体が完成し、当該鋳造部分の鋳造時に、鋳型の空洞内部に注がれた溶融金属と当該露出部分が接触することにより、当該露出部分と鋳造部分の結合された状態を、図1と同一部位の断面図として示した。
図3に、鋳造部分を有する金属製の構造体のうち、当該露出部分に、穴・突起等を設け、当該鋳造部分の固体化により、当該2部分が機械的に抜去不能となる構造を採用した派生形を、図1と同一部位の断面図として示した。
図1・図2および図3に断面図を示した鋳造部分を有する金属製の構造体は、(1)既に固体金属となっている構成部分の例として、2本の管状部材を、(2)鋳造部分の例として、1個の継手を、それぞれ具備する。
図1に示した構造体の製造工程中、当該鋳造部分の鋳造作業準備時においては、(3)鋳型▲1▼および(4)鋳型▲2▼によって形成される略閉空間の(4)空洞部分に、(1)既に固体金属となっている構成部分の一部を露出した状態で固定されている。
本図に示すように、(1)既に固体金属となっている構成部分が管材の場合、当該空洞部分の内部は(6)中子によって占められ、完成時には空洞となることにより、当該構造体は軽量となる。
当該鋳造作業により、図2に示す如く、(4)空洞部分には溶融金属が充填され、冷却・凝固によって固体化し、(2)鋳造部分となる。このとき、(1)既に固体金属となっている構成部分のうち、(4)空洞部分に露出している部分は、当該溶融金属と直接接触し昇温され、ロウ付けもしくは溶接に近しい状態となり、(2)鋳造部分と固着する。本発明では、この効果により継手を形成する。
なお、さらに図3に示す如く、(1)既に固体金属となっている構成部分のうち、(4)空洞部分に露出している部分に(7)穴もしくは(8)突起を設けることにより、(2)鋳造部分の冷却・凝固の後には機械的にも抜去不能となる構造が、容易に得られる。
【発明の効果】
【0007】
鋳造部分を有する金属製の構造体において本発明を適用すると、以下のような利点がある。
▲1▼鋳造作業と結合作業が同時に行われるため、時間的・経済的に有利である
▲2▼熱変形による諸問題が、容易な推測により充分な対策が可能である
▲3▼ロウ付けによる結合と異なり、構造体全体を同材料とすることも可能である
▲4▼特に自動車・2輪車部品等、比較的小規模の構造体においても、複数箇所同時の作業が容易に可能であり、製造に必要な時間は、結合箇所の数に依存しないので、設計上の制約とならない。
このことより、本発明の適用は、製造段階において時間的・経済的な有利性に貢献するばかりでなく、設計・開発の段階における時間的・経済的な負担をも著しく低減するので、企業の利益に貢献しうる。
また同時に、こうした時間的・経済的な負担の低減は、材料・燃料等の資源の節約を通して、環境問題にも充分に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳造作業準備時の断面図
【図2】鋳造作業後の断面図▲1▼
【図3】鋳造作業後の断面図▲2▼
【符号の説明】
(1)既に固体金属となっている構成部分
(2)鋳造部分
(3)鋳型▲1▼
(4)鋳型▲2▼
(5)空洞部分
(6)中子
(7)穴
(8)突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造部分を有する金属製の構造体において、当該鋳造部分の鋳造に供する鋳型の空洞内部に、当該構造体の構成部分のうち、既に固体金属となっているものの一部を露出し、当該鋳造部分の鋳造時に、鋳型の空洞内部に注がれた溶融金属と当該露出部分が接触することにより、当該露出部分と鋳造部分の結合を行う製造方法、および、当該製造方法を用いて製造された構造体。
【請求項2】
請求項1に係る製造方法において、当該露出部分に、穴・突起等を設け、当該鋳造部分の固体化により、当該2部分が機械的にも抜去不能となる構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−137059(P2008−137059A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350579(P2006−350579)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(596012087)