説明

金属酸化物処理粉末及びこれを用いた金属酸化物分散物

【課題】
溶媒中に分散させても、沈降、ゲル化することなく、分散安定性に優れた金属酸化物処理粉末である。
【解決手段】
表面が成分(a)(ジメチコン/メチコン)コポリマーと成分(b)有機チタネート及び/又は成分(c)トリアルコシキアルキルシランで被覆されたことを特徴とする金属酸化物処理粉末に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ジメチコン/メチコン)コポリマーと有機チタネート及び/又はトリアルコシキアルキルシランで被覆されたことを特徴とする金属酸化物処理粉末に関するものであり、より詳細には、二次凝集を防ぎ、化粧料、塗料、インキ等に配合しても分散安定性に優れた金属酸化物処理粉末及びこれを配合した金属酸化物分散物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白色顔料や紫外線遮蔽剤として汎用されている酸化亜鉛や酸化チタン等の金属酸化物は、表面活性が高く、凝集力が強いため、化粧料、塗料、インキ等に配合する際、凝集を生じその結果としての沈降、他の配合成分である高分子と相互作用によりゲル化等の分散安定性上の問題を引き起こしやすい素材である。このため従来より、金属酸化物の表面を反応性アルキルポリシロキサンやメチルハイドロジェンポリシロキサンで表面被覆する技術(例えば、特許文献1参照)や、気相中でシリコーン化合物を処理する技術(例えば、特許文献2参照)等を利用して、分散安定性を改良していた。
【0003】
【特許文献1】特開平11−148028号公報
【特許文献2】特開平9−48716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、何れもシリコーン化合物により表面被覆の技術であり、シリコーン油への分散安定性は向上されるが、シリコーン油以外の油剤に対する分散安定性は必ずしも、良好ではなかった。
【0005】
化粧料、塗料、インキ等は、シリコーン油以外に、トリグリセライド、油脂、エステル油等の様々な油剤が配合されるため、シリコーン油に加えこれら油剤中においても分散安定性を向上できる技術の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(ジメチコン/メチコン)コポリマーと有機チタネート及び/又はトリアルコシキアルキルシランで被覆された金属酸化物処理粉末が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は表面が成分(a)(ジメチコン/メチコン)コポリマーと成分(b)有機チタネート及び/又は成分(c)トリアルコキシアルキルシランで被覆されたことを特徴とする金属酸化物処理粉末を提供するものである。
【0008】
また、金属酸化物100質量部に対して、成分(a)を0.5〜10質量部、成分(b)を0.5〜10質量部、被覆したことを特徴とする前記金属酸化物処理粉末を提供するものである。そして、金属酸化物100質量部に対して、成分(a)を0.5〜10質量部、成分(c)を0.5〜10質量部、被覆したことを特徴とする前記金属酸化物処理粉末を提供するものである。
【0009】
そして、前記金属酸化物が酸化亜鉛であることを特徴とする前記何れかの金属酸化物処理粉末を提供するものである。
【0010】
更に、前記何れかの項記載の金属酸化物処理粉末を成分(d)シリコーン油中に分散してなることを特徴とする金属酸化物分散物、更に成分(e)として、シリコーン系分散剤を配合することを特徴とする前記金属酸化物分散物、湿式粉砕処理して得られることを特徴とする前記何れかの金属酸化物分散物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属酸化物粉体処理物は、溶媒中に分散させても、沈降、ゲル化することなく、分散安定性に優れた粉体処理物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられ、これらを一種又は二種用いることができる。これらの金属酸化物の粒径、形状等特に限定はされないが、好ましくは紫外線防御効果の高い1〜100nmの粒径範囲の金属酸化物を用いることにより、紫外線防御効果がより優れた油中水型日焼け止め化粧料を得ることができる。
【0013】
本発明に用いられる成分(a)(ジメチコン/メチコン)コポリマーは、INTERNATIONAL NOMENCLATURE of COSMETIC INGREDIENTSに(ジメチコン/メチコン)コポリマーとして収載されている化合物であり、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンからなる共重合体である。通常、粉体の表面処理剤として用いられ、粉体に撥水性を付与し、しかも経時的に水素を発生し難い表面処理剤として汎用されている。具体的には、好ましい化合物として下記一般式(1)で示される化合物が例示できる。
【0014】
【化4】

【0015】
(a、bはそれぞれ正の整数で、a+b=7〜50、a:b=1:0.2〜1:4)
【0016】
本発明において金属酸化物に表面被覆成分(a)の割合は、金属酸化物100部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1.5〜8質量部がより好ましい。この範囲で表面被覆すれば、凝集が無く、分散安定性により優れた金属酸化物処理粉末を得ることができる。
【0017】
本発明に用いられる成分(b)有機チタネートは、例えば、長鎖カルボン酸型、ピロリン酸型、亜リン酸型、アミノ酸型等のアルキルチタネート等が挙げられるが、分散安定化の観点より、炭素数8〜24のアルキル基を有するアルキルチタネートが好ましく、これらは下記一般式(2)で示される化合物が例示できる。
【0018】
【化5】

【0019】
(pは正の整数で、p=8〜24)
【0020】
前記有機チタネートは、具体的には、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。
【0021】
これら有機チタネートの中でも、上記一般式(2)においてp=17で示されるイソプロピルトリイソステアロイルチタネートを選択すると、シリコーン油以外の油剤中での分散安定性が良好となる。
【0022】
本発明において金属酸化物に表面被覆成分(b)の割合は、金属酸化物100部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1.5〜8質量部がより好ましい。この範囲で表面被覆すれば、凝集が無く、分散安定性により優れた金属酸化物処理粉末を得ることができる。
【0023】
本発明に用いられる成分(c)トリアルコキシアルキルシランは、ケイ素原子に三つのアルコキシ基と一つのアルキル基が結合した化合物であり、該アルコキシ基が粉体表面の水酸基等と反応することにより、粉体表面を被覆する化合物である。このような成分(c)は下記一般式(3)で表すことができる。該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルコキシ基は、炭素数1〜3のアルコキシ基であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6〜18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。このようなトリアルコキシアルキルシランは、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。
【0024】
【化6】

【0025】
(m、nはそれぞれ正の整数で、m=6〜20、n=1〜3)
【0026】
これらトリアルコキシアルキルシランの中でも、上記一般式(3)においてm=7、n=2であるトリエトキシオクチルシランを選択すると、シリコーン油以外の油剤中での分散安定性が良好となる。アルキル基の炭素数が8以上であるとシリコーン油以外の油剤中での分散安定性が良好となる。
【0027】
本発明において金属酸化物に表面被覆成分(c)の割合は、金属酸化物100部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1.5〜8質量部がより好ましい。この範囲で表面被覆すれば、凝集が無く、分散安定性により優れた金属酸化物処理粉末を得ることができる。
【0028】
本発明において金属酸化物表面に成分(a)〜(c)の表面処理剤を被覆する方法は、特に限定されず、通常公知の処理方法が用いられる。具体的には、成分(a)〜(c)の処理剤と金属酸化物とを直接混合する方法、直接金属酸化物と混合し加熱して被覆する乾式被覆方法、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン等の溶媒に成分(a)〜(c)の処理剤を溶解又は分散し、この溶液又は分散液に金属酸化物を添加し、混合後、前記溶媒を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法、溶媒に溶解又は分散した成分(a)〜成分(c)の処理剤を流動層中で粉体にスプレーコートする気相被覆方法、メカノケミカル方法等が挙げられる。
【0029】
次に、本発明の金属酸化物分散物について説明する。本発明の金属酸化物分散物は、前記説明した何れかの金属酸化物粉体を成分(d)シリコーン油中に分散してなることを特徴とするものである。
【0030】
このような成分(d)は、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、トリストリメチルシロキシアルキルシラン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、部分架橋型オルガノポリシロキサン、ポリオキシ変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられ、これらより一種又は二種以上用いることができる。
【0031】
これら成分(d)の中より、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、動粘度が1.0〜6.0mm/sのジメチルポリシロキサン等の揮発性シリコーンを選択すると、より汎用性の金属酸化物分散物を得ることができる。
【0032】
尚、本発明の金属酸化物分散物には、成分(d)以外に油剤を併用することができる。このような油剤としては、例えば、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャトロプシュワックス、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素系類、カルナウバロウ、ミツロウ、ラノリンワックス、キャンデリラ等の天然ロウ類、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、モクロウ等の油脂類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、N−ラウロイルーL−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0033】
本発明の金属酸化物分散物における前記金属酸化物処理粉末と成分(d)の配合割合は、前記金属酸化物処理粉末1質量部に対し、0.1〜99質量部、成分(d)以外の油剤は0〜10質量部が好ましい。
【0034】
本発明の金属酸化物分散物には、更に成分(e)としてシリコーン系分散剤を配合することにより、より分散安定性を向上させることができる。このような成分(e)は、親油基としてポリシロキサン鎖や炭化水素基等を有し、親水基としてポリオキシエチレン等のポリオキシアルキレン基等を有するものである。尚、前記親水基の位置は、ペンダント型、ブロック型、末端型等の何れでも良い。このようなシリコーン系界面活性剤は、具体的には、長鎖炭化水素基含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、グリセリン変性オルガノポリシロキサン、ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられ、これより一種又は二種以上を用いることができる。
【0035】
例えば、長鎖炭化水素基含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、例えば、次の一般式(4)又は(5)で表される化合物等が挙げられる。
SiO(4−a−b−c)/2 …(4)
[前記式中、R;同一又は異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基、水素原子、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基。R;−C2m−O−(CO)−(CO)−Rで示される基(式中、m;1〜5の整数、d、eは1以上の整数、且つ、d+eが1〜200であり、R;水素原子若しくは炭素数1〜5の一価炭化水素基又は−(CO)−Rで示される有機基、R;炭素数1〜5の一価炭化水素基)。R;炭素数10〜30の一価炭化水素基。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5である。]
SiO(4−a−b−c)/2 …(5)
[前記式中、R;同一又は異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基、水素原子、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基。R;−C2m−O−(CO)−(CO)−Rで示される基(式中、m;1〜5の整数、d、eは1以上の整数、且つ、d+e≧1〜200であり、Rは水素原子若しくは炭素数1〜5の一価炭化水素基又は−(CO)−R10で示される有機基、R10は炭素数1〜5の一価炭化水素基)。R;−C2n−O−(CO)−(CO)−R11(式中、nは1〜5の整数、f、gは0以上の整数、且つ、f+g≧0〜200であり、R11は炭素数10〜30の一価炭化水素基)。a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5である。]
【0036】
これら一般式で示される長鎖炭化水素基含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの中でも、セチルジメチコンコポリオール、(PEGメチコン/オレイルPPGメチコン/ジメチコン)コポリマー等が好ましく、これらは、市販品として、ABIL EM−90、ABIL B9806、ABIL WE09(何れも、ゴールドシュミット社製)、シリコンKF−6026(信越化学工業社製)等が挙げられる
【0037】
また、他の一種であるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
[式中、R;水素原子又は炭素数1〜5の一価炭化水素基。R;−(CH−O−(CO)−(CO)−R。R;水素原子、低級アルキル基。a,b;0,1,2,3から選ばれる数。但し、a+b=3である。m,n;0又は正の整数。l;正の整数。x;0又は正の整数、y;0又は正の整数で示され、x及びyが同時に0では無い。但し、n+bは1以上の整数。]
【0040】
このようなポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、市販品として、KF6015、KF6016、KF6017、KF6028、X−22−4991(何れも、信越化学工業社製)、NUCシリコンL7002(日本ユニカー社製)、SH−3772C、SH−3775C(何れも、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)等が挙げられる。
【0041】
また、成分(e)のポリグリセリン変性オルガノポリシロキサンとしては、例えば下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0042】
【化8】

【0043】
(式中a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5である。)
【0044】
(式中Rは炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基、アミノ置換アルキル基、カルボキシル置換アルキル基あるいは下記一般式(8)で示される有機基から選択される同種または異種の有機基である。)
【0045】
【化9】

【0046】
(式中d、e、fはそれぞれ0≦d≦15、0≦e≦50、0≦f≦50の整数である。)
【0047】
[式中R2は下記一般式(9)及び/又は(10)で示されるポリグリセリン誘導体である。]
【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
(式中Rは水素基あるいは炭素数1〜30のアルキル基、又はR−(CO)−で示される有機基、Rは炭素数1〜30の炭化水素基である。Qはエーテル結合又はエステル結合を含有しても良い炭素数3〜20の二価炭化水素基を示し、iは2〜20の整数、jは1〜20の整数である。またRは下記一般式(11)で示されるケイ素含有基である。)
【0051】
【化12】

【0052】
(式中gは1≦g≦5の整数であり、hは0≦h≦500の整数である。)
【0053】
このようなポリグリセリン変性オルガノポリシロキサンは、市販品として、KF6104、KF6105(何れも、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0054】
本発明の金属酸化物分散物における成分(e)の配合量は、金属酸化物処理粉末1質量部に対し、0.05〜1質量部が好ましい。
【0055】
本発明の金属酸化物分散物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、成分(d)と成分(e)を混合し、これに前記金属酸化物処理粉末を添加し、均一分散することにより得ることができる。この際に、均一分散する機器としては、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル等が挙げれるが、より好ましくは媒体を用いたボールミルやビーズミル等の湿式粉砕処理機器である。
【0056】
本発明の金属酸化物分散物には、上記成分に加え、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、上述した以外の粉体や界面活性剤、ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、着色剤、香料、化粧料用成分等を配合可能である。
【0057】
本発明の金属酸化物処理粉末、金属酸化物分散物は、化粧料、医薬品、塗料、インキ等に応用可能である。
【0058】
次に実施例をもって本発明をより詳細に説明する。本発明はこれらにより、何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0059】
本発明品1〜5及び比較品1〜4:金属酸化物処理粉末の溶媒分散性
表1に示す組成の金属酸化物処理粉末を下記の製造方法にて調整し、溶媒中での分散安定性を評価した。
【0060】
【表1】

【0061】
(製造方法)
イソプロピルアルコール100部と成分2〜5を混合し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)中で成分1と混合する。その後、減圧下、60℃でイソプロピルアルコールを回収し、金属酸化物処理粉末を得た。
【0062】
(評価方法1)溶媒中での分散安定性
一般に粉体の分散性が良好であると、分散物の粘度が低下することにより、分散安定性を粘度値測定から評価した。上記製造方法にて処理した金属酸化物処理粉末を60部、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(KF6017、信越化学社製)を5部、流動パラフィン(ハイコールK−230、カネダ社製)10部、デカメチルシクロペンタシロキサン(KF995、信越化学工業社製)15部、メトキシケイ皮酸オクチル10部を均一に混合し、分散体を得た。その分散体を30℃恒温槽にて1ヶ月保管後、B型粘度計にて分散物の粘度を測定し、分散安定性を下記の基準に従って判断した。
(溶媒中での分散安定性に関する評価基準)
(評価) :(判定)
粘度値が0以上1000mPa・s未満 : ◎
粘度値が1000以上1万mPa・s未満 : ○
粘度値が1万以上10万mPa・s未満 : △
粘度値が10万mPa・s以上 : ×
【0063】
本発明品1〜5の金属酸化物処理粉末は「溶媒中での分散安定性」の項目において優れた金属物酸化粉末であった。一方、処理剤としてトリエトキシカプリルシラン及びイソプロピルトリイソステアロイルチタネートを用いない比較品1、処理剤としてトリエトキシカプリルシラン及びイソプロピルトリイソステアロイルチタネートを用いず、メチルハイドロジェンポリシロキサンの代わりにジメチルポリシロキサンで処理した比較品2の金属酸化物処理粉末、メチルハイドロジェンポリシロキサンの代わりのジメチルポリシロキサンとトリエトキシカプリルシラン又はイソプロピルトリイソステアロイルチタネートで処理を施した比較品3、4の金属酸化物処理粉末は溶媒中での分散安定性の項目において劣っていた。
【実施例2】
【0064】
本発明品6〜10及び比較品5〜8:金属酸化物処理粉末分散物の分散安定性
表2に示す組成の金属酸化物分散物を下記の製造方法にて調整し、処理物の分散性、溶媒中での分散安定性を評価した。
【0065】
【表2】

【0066】
(製造方法)
成分(1)〜(11)を均一に混合し、三井鉱山(株)製のSC−MILL(SC100)にてジルコニアビーズ3mmを用い、5時間分散させ、処理物を得た。
【0067】
(評価方法2)処理物の分散性
粉体の分散度合いによって処理物の粘度値が変化することから、処理物を30℃恒温槽にて1ヶ月保管後、B型粘度計にて分散体の粘度を測定し、分散安定性を下記の基準に従って判断した。
(処理物の分散安定性に関する評価基準)
(評価) :(判定)
粘度値が0以上1000mPa・s未満 : ◎
粘度値が1000以上1万mPa・s未満 : ○
粘度値が1万以上10万mPa・s未満 : △
粘度値が10万mPa・s以上 : ×
【0068】
(評価方法3)溶媒中での分散安定性
上記製造方法にて処理した金属酸化物分散物を70部、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(KF6017、信越化学社製)を5部、流動パラフィン(ハイコールK−230、カネダ社製)10部、デカメチルシクロペンタシロキサン(KF995、信越化学社製)5部、メトキシケイ皮酸オクチル10部を均一に混合し、分散体を得た。その分散体を30℃恒温槽にて1ヶ月保管後、B型粘度計にて分散体の粘度を測定し、分散安定性を下記の基準に従って判断した。
(溶媒中での分散安定性に関する評価基準)
(評価) :(判定)
粘度値が0以上1000mPa・s未満 : ◎
粘度値が1000以上1万mPa・s未満 : ○
粘度値が1万以上10万mPa・s未満 : △
粘度値が10万mPa・s以上 : ×
【0069】
本発明品6〜10の金属酸化物分散物は「分散物の分散性」、「溶媒中での分散安定性」の全項目において優れた金属酸化物分散物であった。一方、トリエトキシカプリルシラン及びイソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理を施していない金属酸化物粉末を用いた比較品5の金属酸化物分散物は溶媒中での分散安定性に劣っていた。トリエトキシカプリルシラン及びイソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理を施さず、メチルハイドロジェンポリシロキサンの代わりにジメチルポリシロキサン処理を施した金属酸化物粉末を用いた比較品6の金属酸化物分散物、メチルハイドロジェンポリシロキサンの代わりのジメチルポリシロキサンとトリエトキシカプリルシラン処理又はイソプロピルトリイソステアロイルチタネート処理を施した金属酸化物粉末を用いた比較品7、8の金属酸化物分散物は分散物の分散性、溶媒中での分散安定性の全項目において劣っていた。
【実施例3】
【0070】
金属酸化物処理粉末
(成分) (%)
1.酸化亜鉛(注2) 93.0
2.メチルハイドロジェンポリシロキサン 4.0
3.イソプロピルトリイソステアロイルチタネート 3.0
(注2)FINEX−50(堺化学工業社製)
【0071】
(製造方法)
イソプロピルアルコール100部と成分2〜3を混合し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)中で成分1と混合する。その後、減圧下、60℃でイソプロピルアルコールを回収し、金属酸化物処理粉末を得た。
実施例3の金属酸化物処理粉末は、溶媒中での分散安定性の項目において優れた金属酸化物処理粉末であった。
【実施例4】
【0072】
金属酸化物分散物
(成分) (%)
1.実施例2の金属酸化物処理粉末 50.0
2.デカメチルシクロペンタシロキサン 30.0
3.ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 15.0
4.流動パラフィン 5.0
(製造方法)
成分(1)〜(4)を均一に混合し、三井鉱山社製のSC−MILL(SC100)にてジルコニアビーズ1mmを用い、ビーズミル処理で5時間分散させ、分散物を得た。
実施例4の金属酸化物処理物は、処理物の分散性、溶媒中での分散安定性の全項目において優れた金属酸化物分散物であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が成分(a)(ジメチコン/メチコン)コポリマーと成分(b)有機チタネート及び/又は成分(c)トリアルコキシアルキルシランで被覆されたことを特徴とする金属酸化物処理粉末。
【請求項2】
前記成分(a)が下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の金属酸化物処理粉末。
【化1】

(a、bはそれぞれ正の整数で、a+b=7〜50、a:b=1:0.2〜1:4)
【請求項3】
前記成分(b)が下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属酸化物処理粉末。
【化2】

(pは正の整数で、p=8〜24)
【請求項4】
前記成分(c)が下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の金属酸化物処理粉末。
【化3】

(m、nはそれぞれ正の整数で、m=6〜20、n=1〜3)
【請求項5】
金属酸化物100質量部に対して、成分(a)を0.5〜10質量部、成分(b)を0.5〜10質量部、被覆したことを特徴とする請求項1記載の金属酸化物処理粉末。
【請求項6】
金属酸化物100質量部に対して、成分(a)を0.5〜10質量部、成分(c)を0.5〜10質量部、被覆したことを特徴とする請求項1記載の金属酸化物処理粉末。
【請求項7】
前記金属酸化物が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1〜6の何れかの項記載の金属酸化物処理粉末。
【請求項8】
前記請求項1〜7の何れかの項記載の金属酸化物処理粉末を成分(d)シリコーン油中に分散してなることを特徴とする金属酸化物分散物。
【請求項9】
前記成分(d)が揮発性シリコーンであることを特徴とする請求項8記載の金属酸化物分散物。
【請求項10】
更に成分(e)として、シリコーン系分散剤を配合することを特徴とする請求項8又は9記載の金属酸化物分散物。
【請求項11】
前記成分(e)が、ポリオキシエチレン変性ポリジメチルシロキサン、ポリグリセリン変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサンから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項10記載の金属酸化物分散物。
【請求項12】
湿式粉砕処理して得られることを特徴とする請求項8〜11の何れかの項記載の金属酸化物分散物。

【公開番号】特開2007−291379(P2007−291379A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94369(P2007−94369)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】