説明

金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長の抑制方法、銀イオン含有飲料水の長期保存用の金属面を有する容器の加工方法、及び銀イオンを含む飲料水を収容するための容器

【課題】 金属容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法、および銀殺生物剤を含有する飲料水の長期保存に適した金属容器の加工方法を提供する。
【解決手段】 金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法が、金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱し、金属面における潜在的な還元部位を酸化するように加熱中に金属面を酸素に露出させ、銀イオンを含有する飲料水を容器に充填することを含む。金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱して、加熱時に金属面の陽性金属を酸化するように金属面を酸素に露出させることにより、あるいは、金属面における潜在的な還元部位を酸化するように金属面を酸化剤含有水溶液で処理することにより、金属面を有する容器が、銀イオン含有飲料水の長期保存用に加工される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法、および、銀殺生物剤を含有する飲料水の長期保存に適した金属容器の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の成層圏外で行われる特定の任務において、飲料水の長期保存は不可欠である。宇宙飛行士、搭乗員、およびその他の要員を、地球から、軌道を周回する宇宙ステーションや月、火星へと輸送するために、スペースシャトルやオライオンなどの宇宙船が使用される。宇宙船に搭乗する人にとって飲料水源が必要である。水リサイクルシステムが存在するが、これらは複雑であり、故障しやすく、必要に応じて適切な量の水を供給することができない。従って、状況次第では、任務中に必要な水を運ぶための貯蔵タンクもしくはその他の容器に入った飲料水源が使用される、もしくはこれらが水リサイクルシステムに加えて提供される。この場合、水は、一般的に打ち上げ直前に地上でタンクもしくは容器に充填される。
【0003】
任務中に宇宙船が飲料水の追加の供給を受けることができない状況や、打ち上げが延期される状況では、宇宙船における飲料水の長期保存が望ましい(タンクを空にして追加の飲料水を再充填する必要を無くす)。例えば、火星への飛行時や、宇宙ステーションにおける宇宙船のドッキング期間が延長され、地球への帰路で飲料水が必要になった場合、飲料水は数週間の間、宇宙船で保存される必要がある。場合によっては、飲料水は、最初の出航から帰航まで、数日、数週間、もしくは数ヶ月の間、宇宙船内に残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銀イオンは、鉛や水銀などの重金属と同様、バクテリアや、ウイルス、藻類、真菌類に対し毒作用を呈するが、ヒトに対しては、通常それらの重金属に関連する高い毒性を持たないことが知られている。プラスチックやその他のポリマで作られた容器中に飲料水源を保存するように銀殺生物剤が用いられている。約0.02ppm〜約0.4ppmの間の濃度の銀イオンにより、水質を約50CFU/ml(1mlあたりのコロニー形成単位)の微生物限度もしくはそれ以下に維持することができる。しかしながら、一般にプラスチック容器は宇宙船の打ち上げおよび着陸状況に耐えうるほど頑丈ではない。金属容器は宇宙船での用途において十分強固であるが、金属面を有する容器内では銀イオンは急速に減損することが研究によって示されている。水体積に対する金属表面積の割合が水貯蔵タンクに想定される割合に近い場合、飲料水中に0.4ppmまで含まれる初期濃度の銀イオンは、28日以内に検出限界(および有効殺菌レベル)を下回る。チューブ内のように、体積に対する表面積の割合が高い場合、減損時間はより短くなる。金属容器が銀殺生物剤を含有する飲料水の長期保存に有用となるように、金属面に起因する銀イオンの減損を低減もしくは無くす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法が、金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱し、金属面における潜在的な還元部位(potential reduction sites)を酸化するように、加熱中に金属面を酸素に露出させ、銀イオンを含有する飲料水を容器に充填することを含む。
【0006】
銀イオンを含有する飲料水の長期保存用の、金属面を有する容器の加工方法が、金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱し、金属面の陽性金属を酸化するように、加熱中に金属面を酸素に露出させることを含む。
【0007】
銀イオンを含有する飲料水の長期保存用の、金属面を有する容器の別の加工方法が、酸化剤を含有する水溶液を作り、金属面における潜在的な還元部位を酸化するように、金属面を、酸化剤を含有する水溶液で処理することを含む。
【0008】
金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する別の方法が、金属面における潜在的な銀還元部位を低減するように、金属面の一部を銀メッキし、容器に水を充填することを含む。
【0009】
飲料水の長期保存用の容器は金属面を含み、金属面の還元電位を低下させるように容器の金属面は酸化され、金属面の還元電位をさらに低下させるように前記金属面が銀イオン含有溶液で処理される。
【0010】
銀イオンを含む飲料水を収容するための容器は、銀イオンの還元を防ぐように陽性元素金属の大部分が酸化された金属面と、容器から飲料水を放出するための出口と、出口において微生物が容器から出るのを防ぐためのフィルタと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法を示す流れ図である。
【図2】金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する別の方法を示す流れ図である。
【図3】金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制するさらに別の方法を示す流れ図である。
【図4】金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制するさらに別の方法を示す流れ図である。
【図5】インコネル718面と接触する溶液中の銀イオン濃度を示すグラフである。
【図6】E−BRITE(登録商標)面と接触する溶液中の銀イオン濃度を示すグラフである。
【図7】飲料水の長期保存用容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、金属容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法、および銀殺生物剤を含有する飲料水の長期保存に適した金属容器の加工方法を提供する。本発明により、飲料水の長期保存を提供する「ゼロ・メンテナンス」方法が可能となる。飲料水は処理された金属容器に充填され、飲料水の供給を保つための追加のステップを必要としない。銀を還元する能力がある金属容器表面の潜在的な部位(potential sites)が酸化によって低減され、飲料水中の銀イオンの還元が低減され、これに続いて生じる還元が防止される。容器の酸化および/または不動態化された金属面により、貯蔵された飲料水中の銀イオンをより効果的に保存する、還元能力が抑えられた容器が提供される。
【0013】
飲料水は複数の微生物抑制手段を利用することができる。飲料水はフッ化銀などの銀塩とともに貯蔵タンクもしくは容器に充填されて、水と銀イオンの水溶液を生成する。水溶液中の銀イオンは、予め適切に浄化され消毒されたシステムにおける微生物の成長を抑制し、制限する殺生物剤としての役割を果たす。また、タンクもしくは容器は、銀殺生物剤に加えて、ユースポイント・フィルタ(point−of−use filter)などの濾過作用浄水システムを用いることができる。約0.1μmの孔径を有するフィルタにより、飲料水に存在しうる微生物がタンクもしくは容器に残るのを防ぐとともに、宇宙船要員によって使用あるいは消費されるのを防ぐ。飲料水は一般的に、規制基準、あるいは顧客もしくはエンドユーザ仕様書に規定された一定の品質要求事項を満たさなければならない。
【0014】
種々の銀塩は、水溶液中のバクテリア、ウイルス、藻類、および真菌類(総称して「微生物」と呼ぶ)の成長を抑える殺生物剤として機能する銀イオン源としての役割を果たす。適切な銀塩は、フッ化銀(I)、硫酸銀、亜硫酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、およびこれらの組み合わせを含む。事実上、水中で解離して銀イオンおよびこれに関連する対イオンを生成するあらゆる銀化合物が銀イオン源としての役割を果たす。対イオンが受け入れ難いレベルの毒性をもたらさない限り、それらの銀化合物は一般的に適している。また、対イオンの存在を排除するように、銀イオンが電解により生成されてもよい。
【0015】
約0.02ppm〜約0.05ppmの範囲のできる限り低い銀イオン濃度は、抗菌特性を示す。飲料水中の約0.4ppmまでの銀イオン濃度は概ねヒトに安全であると考えられる。0.4ppmを上回る銀イオン濃度は抗菌効果を提供しつづけるが、高い濃度はまたヒトに対する毒性の危険(例えば、銀沈着症)を呈し始める。したがって、銀を含む飲料水に関するほとんどの規則や規定では、銀イオンは特定の閾値を下回ることが要求される(例えば、0.5ppm)。殺生物剤として銀イオンを利用する飲料水は、銀イオン濃度が約0.05ppm〜約0.4ppmの間である場合、一般的に抗菌の見地から効果的であるとともに、毒性の見地からも容認できるものと考えられる。
【0016】
上で述べたように、一般的にプラスチック容器は一部の宇宙船の飲料水貯蔵タンクや容器としての機能を果たす強度や保全性に欠ける。水貯蔵タンクや容器を含むさまざまな宇宙船のコンポーネントは離陸時や着陸時に衝撃や、振動、その他の力を受けやすい。これらの力の結果、一般的に金属貯蔵タンクや容器がより条件に合った物理的特性を提供する。金属タンクや容器のほうが離陸時や着陸時に宇宙船のコンポーネントに及ぼされる力に耐えることができる。貯蔵タンクや容器、およびバルブなどの関連コンポーネントの用途に適切な金属は、オーステナイト・クロムニッケル合金(300シリーズ)、フェライトおよびマルテンサイト・クロム合金(ferritic and martensitic chromium alloys)(400シリーズ);オーステナイト・ニッケル・クロム合金(例えば、ニューヨーク州ニューハートフォードのスペシャルメタルズ社から入手可能なインコネル合金)、およびフェライト合金(ペンシルヴェニア州ブラッケンリッジのアレゲーニー・ラドラム社から入手可能なE−BRITE(登録商標))などのその他の金属合金、およびこれらの組み合わせを含む様々なステンレス鋼の形態を含む。
【0017】
通常、金属もしくは金属合金の表面(総称して「金属面」と呼ぶ)が銀イオンを含有する溶液と接触すると、銀イオンは金属面上の原子と反応する。特定の理論にとらわれず、銀イオンは金属面に存在する還元剤と相互作用することにより還元されると考えられている。一部の陽性元素金属(例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、およびアルミニウム)は一般的に、特定の合金に応じて金属合金中に様々な濃度で存在する。特に、鉄およびニッケルは多くの種類のステンレス鋼や耐食鋼に存在する。鋼鉄などそれらの陽性金属は容易に価電子を放出して還元剤として働くと考えられる。銀イオンを含む溶液がこれらの金属を有する金属面と接触したとき、溶液中の銀イオン(Ag+)は陽性金属によって還元される。例えば、銀イオンは、次の化学式に従って還元されて元素銀となる:
2Ag+(aq)+2e-→2Ag(s)(陰極)
銀はその5s原子軌道に電子を受け取り、5s軌道が埋まる。元素銀(Ag(s))は銀イオンによって付与されるものと同様の抗菌効果を提供しない。元素銀は溶液から離脱するか、あるいは金属面に個体もしくは団塊の集合体を形成する。
【0018】
例えばインコネル718表面では、インコネル718中およびその表面に存在するニッケルから電子を容易に得ることができる。ニッケルは、次の化学式に従って酸化されて電子を放出する:
Ni(s)→Ni2+(aq)+2e-
インコネル718表面では、ケイ素およびニオブの豊富な領域(インコネル718表面における最も不活性な領域)が銀還元における陰極(cathode)として機能すると考えられる。銀イオンは還元されて元素銀となり、その領域に銀の団塊を形成しやすい。また銀はインコネル718表面で他の成分と化合物および錯体を形成しうる。
【0019】
研究によれば、金属ステンレス鋼容器(インコネル718およびE−BRITE(登録商標))中に保存された水溶液中の銀イオン濃度は時間が経つにつれ減少することが示されている。出願人により行われた試験によりそれらの研究結果が確認されている。インコネル718面と接触した場合、溶液中の銀イオンの抗菌濃度は約28日後に検出限界(約0.05ppm)未満に減少した。E−BRITE(登録商標)面と接触した場合、溶液中の銀イオンの抗菌濃度は約115日後に検出限界(約0.05ppm)未満に減少した。いずれにしても、銀イオンの濃度は一定の下降経路を示した。これらの研究により、一定期間経過後(インコネル718では約28日以内、E−BRITE(登録商標)では約115日以内)、銀殺生物剤を有する金属容器内に収容された飲料水は既に所望の抗菌効果を示す適切な濃度の銀イオンを有していないことが確認された。
【0020】
本発明の方法は、前述の処理されていない金属面に比べて溶液中に銀イオンが長期間残存できる、インコネル718およびE−BRITE(登録商標)等の、銀イオン含有飲料水の長期保存用の金属面を加工する。
【0021】
一つの実施例では、容器の金属面を酸化して、金属面上に還元剤として存在する陽性元素の電位を低下させる。図1は金属面を有する容器内に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法10を示す流れ図を示す。方法10は、容器の金属面を高温に加熱し(ステップ12)、金属面を酸素に露出させて(ステップ14)酸化物層を形成させることを含む。冷却後、銀イオンを含有する飲料水が容器に充填される(ステップ16)。
【0022】
陽性金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびニッケル等の一部の遷移金属を含む。インコネル718およびE−BRITE(登録商標)では、ニッケルが主な潜在的還元剤であり、金属面上で関係する主な陽性金属であると考えられるが、その他の陽性金属も存在しうる。陽性金属は、一般的に最も外側の(価)電子殻に一つもしくは複数の電子を含む。アルカリ金属、アルカリ土類金属、および亜鉛の場合、陽性金属は容易に電子を放出して正電荷を保ち、閉殻となって完全に電子が収容された外側の電子殻を有する。遷移金属の場合、d軌道もしくはs軌道から電子が放出されて、より安定した電子配置となる。それらの陽性金属が放出した電子は飲料水に含まれる銀イオンと反応して銀イオンを還元し、元素銀もしくは前述のその他の銀化合物を形成する。本出願の目的上、酸化は分子、原子、もしくはイオンによる電子の放出とみなす。金属面上に存在する陽性金属を酸化することにより、陽性金属が電子を放出しなくなる。陽性金属を酸化することにより、金属が銀イオンと反応して銀イオンを還元するのを防ぐ。
【0023】
金属面を加熱して酸素に露出させることにより(ステップ12)、容器の金属面は酸化される。その組成に応じて、金属面が約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱される。実施例では、銀イオンの減損を抑えるように金属面を適切に処理する最も低い温度が用いられる。低温度を用いることにより、金属面の粗度を増大させる重い酸化物スケールの形成を防ぐ。金属面の組成に応じて、金属面はさまざまな期間で高温に維持される。適切な時間は約1時間から約24時間の間で金属面によってさまざまである。金属面の陽性金属の濃度が高いほど、より長い高温の期間を要する。金属面の温度はその時間の間で変化してもよい(例えば、所定の時間温度が維持され、その後上昇もしくは低下される、など)。
【0024】
金属面を高温に上昇させる少なくとも一部の期間、金属面が酸素源に露出される(ステップ14)。高温状態で金属面を酸素に露出させることにより、金属面上の酸化されやすい金属(還元剤および陽性金属を含む)が酸化される(すなわち、電子を失う)。例えば、インコネル718およびE−BRITE(登録商標)の両方の成分であり、金属面に存在するニッケル(Ni)は、酸素およびその他の利用可能な原子と反応して酸化ニッケル(NiO2)、炭酸ニッケル(NiCO3)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、およびこれらの組み合わせを形成する。酸化が起こるように金属面を純酸素に露出させる必要はない。通常の空気は金属面の金属の酸化を促進するのに十分な酸素を含有する。
【0025】
一旦酸化されると、還元剤として機能するニッケルやその他の金属の還元電位(reduction potential)は減少する。一旦酸化されると、(NiO2、NiCO3、Ni(OH)2等の)ニッケルは、金属面と接触する銀イオンと相互作用しうる電子を容易に放出しない。以前たやすく利用できた電子は既に他の原子との結合に関与している。後に容器に充填される(ステップ16)銀イオンを含有する飲料水が、適切な濃度の銀イオンを所定の期間維持することができるように、金属面における潜在的な還元部位を十分酸化するに足る時間、金属面が加熱され、酸素に露出される。飲料水が15ヶ月まで保存される状況では、金属面における全ての潜在的な還元部位の酸化が完了もしくはほぼ完了しなければならない。一般的に、約60分〜約4時間の間続けて酸素に露出させれば、金属面のほとんどの潜在的な還元部位を十分酸化するもしくはほぼ十分に酸化するのに十分である。金属面における潜在的な還元部位は、容器に充填される飲料水中の銀イオンの最終濃度が、約15ヵ月後に飲料水中の銀イオンの初期濃度の少なくとも約50%を含むように酸化される。
【0026】
金属面を加熱するステップおよび金属面を酸素に露出させるステップは、通常の焼き戻しステップおよび析出硬化ステップとは別に行われるものである。以下の例1に示すように、通常の焼き戻しステップおよび析出硬化ステップは金属面の潜在的な還元部位を低減するものではない。実施例では、金属面を再加熱するために必要となる余分なエネルギーを無くすだけでなく焼き戻し後の冷却に必要な時間を無くすように、上述の加熱ステップおよび酸素露出ステップが、通常の焼き戻しステップおよび析出硬化ステップの後に続けて行われてもよい。
【0027】
別の実施例では、酸化剤を含有する溶液に金属面を露出させて処理することにより容器の金属面を不動態化する。図2は、金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑えるための方法20を示す流れ図を示す。方法20は、酸化剤を含有する溶液を準備し(ステップ22)、酸化剤を含有する溶液で容器の金属面を処理する(ステップ24)ことを含む。次いで、銀イオンを含有する飲料水が容器に充填される(ステップ26)。
【0028】
酸化剤を含有する溶液を準備し(ステップ22)、容器に充填される銀イオン含有飲料水に金属面が曝される前に、金属面を不動態化するように酸化剤含有溶液を容器に加える(ステップ24)。酸化剤を含有する溶液が金属面の陽性金属と反応して、陽性金属を酸化する。陽性金属が酸化剤と反応するときに、陽性金属は一つもしくは複数の電子を放出する。酸化剤は、酸化還元反応において電子を得る原子もしくは化合物である。酸化還元反応では、酸化剤は電子を得るとともに自身は還元され、還元剤は電子を失うとともに自身は酸化される。
【0029】
銀イオンと反応して銀イオンを還元しうる金属面の部位の数を低減するように、さまざまな酸化剤が用いられる。硝酸、過酸化物、およびハロゲン化合物は酸化剤のほんの数例である。さまざまな濃度の酸化剤が溶液に加えられる。高濃度の酸化剤を有する溶液は、低濃度の酸化剤を有する溶液よりも素早く金属面の陽性金属を酸化することができる。また一部の酸化剤は他の酸化剤に比べてより素早く、より余すところなく反応する。容器に充填された銀イオンを含有する飲料水が適切な銀イオン濃度を所定期間保つことができるように、金属面の潜在的な還元部位を十分酸化するに足る時間、金属面が酸化剤を含有する溶液に曝される。飲料水が15ヶ月まで保存される状況では、金属面における全ての潜在的な還元部位の酸化が完了もしくはほぼ完了しなければならない。一般的に、約2日〜約3週間、酸化剤を含有する溶液に曝せば、金属面のほとんどの潜在的な還元部位を十分酸化するもしくはほぼ十分に酸化するのに十分である。一旦露出、化学処理が完了すれば、容器から酸化剤を含有する溶液が除去され、容器に銀イオンを含有する飲料水が充填される(ステップ26)。
【0030】
一実施例では、フッ化銀(I)(AgF)水溶液は、酸化剤の含有溶液としての役割を果たす。フッ化銀を水に加えて、約10ppm〜約200ppmの濃度のフッ化銀を用意する。次いで約3週間までの期間、金属面がこの溶液に露出、処理される。金属面の陽性金属(還元剤)が溶液中の銀イオンと反応すると、陽性金属は酸化され、銀イオンは還元される。これらの反応時に酸化された陽性金属は、その後さらに他の銀イオンを還元することはできない。必要な露出時間の後、フッ化銀溶液が容器から取り除かれる。次いで、目標水準(通常、約0.4ppm)のフッ化銀を含有する飲料水が容器に充填される。
【0031】
別の実施例では、高温酸化処理と、酸化剤を含有する溶液を用いた不動態化処理と、が組み合わされて、還元電位がほとんどないもしくは全くない金属面を提供する。図3は、金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑えるための方法30を示す流れ図を示す。方法30は、容器の金属面を高温に加熱し(ステップ32)、金属面を酸素に露出させ(ステップ34)、容器の金属面を酸化剤含有溶液で処理する(ステップ36)ことを含む。次いで銀イオンを含有する飲料水が容器に充填される(ステップ38)。高温酸化処理(ステップ32,34)が上述したように行われる。次いで上述の不動態化処理が高温酸化処理に続いて行われる。不動態化処理は、高温酸化処理時に酸化を逃れた可能性のある金属面のあらゆる潜在的な還元部位をさらに酸化する。続いて行われる不動態化処理は、金属面の陽性金属の還元電位をさらに低下させる。高温酸化処理と不動態化処理とを組み合わせることにより、飲料水の質に対するさらなる利点がある。
【0032】
金属面を有する容器に保存された飲料水中における、銀イオンの所望の抗菌濃度を維持することが本発明の主要目的であるが、銀イオン濃度を維持するための役割を果たす処理はまた、飲料水のニッケル濃度に関する付加的な効果を提供する。高温酸化処理および酸化剤不動態化処理はまた、処理された容器内に保存された飲料水中のニッケルイオンの濃度に影響を及ぼす。その他の一部の金属同様、ニッケルは通常、飲用水や飲料水中の一定の濃度限度を超えることはできない。一般的に言えば、飲用水中のニッケル濃度は0.3ppmを下回る必要がある。高温酸化処理のみで処理されたインコネル718容器では、ニッケル濃度は、試験開始時の検出限界(0.05ppm)未満から、約6ヶ月後には約0.1ppmに、約10ヵ月後には約0.25ppmに上昇した。処理容器に保存された飲料水に存在する銀イオンは許容可能な濃度レベルに保たれていたが、飲料水中のニッケルの濃度は上昇した。ニッケル濃度の一貫した上昇は、高温酸化処理だけの容器での水の保存が約10ヶ月を若干上回る程度のみにおいて適することを示唆している。ところが、高温酸化と酸化剤不動態化の両方で処理したインコネル718容器では、ニッケル濃度は15ヶ月後も検出限界を下回るレベルに保たれていた。高温酸化処理と不動態化処理とが組み合わされた場合、銀イオン濃度とニッケル濃度の両方が所望の限界の範囲内であった。
【0033】
別の実施例では、容器の金属面の一部に銀メッキが施される。図4は、銀メッキされた金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑える方法40を示す流れ図を示す。方法40は、金属面の一部を銀メッキすることを含む(ステップ42)。実施例では、銀メッキは連邦仕様書(Federal Specification)QQ−S−365D、もしくは米国材料試験協会(ASTM)国際試験法B700−08を満たすように実施される。一旦、金属面の一部が銀メッキされると、次いで飲料水が容器に充填される(ステップ44)。以下の例1に示すように、容器の金属面全体を銀メッキすると、ヒトに使用および消費されるには銀イオン濃度が高すぎる水が提供される。しかしながら、金属面の一部を銀メッキする場合、その金属面の一部により、保存された飲料水にとって必要な銀イオン濃度を提供、維持することができる。実施例では、保存された水が必ずしも容器の全金属面と接触しているわけではないため、銀メッキされた金属面の一部は、飲料水が供給されるときに飲料水と接触するように容器内に配置される(例えば、出口管、ダクト、もしくはニードルなどの金属面もしくはそれらの近傍の金属面)。
【0034】
容器の容積に対する、一部の銀メッキされた金属面の表面積に応じて、容器に充填される飲料水は銀イオンを含有しても含有していなくてもよい。例えば、初期濃度の銀イオンを有する飲料水の銀イオン濃度を維持するように、金属面の一部が銀メッキされる。もう一つの方法として、容器に充填される銀イオンを含有していない飲料水に銀イオンを提供するように、金属面の比較的大きな部分が銀メッキされる。後者の場合、飲料水を使用する前に、銀メッキからの銀イオンが容器に充填された飲料水に入ったかどうかを確かめるために、さらなる時間が必要である。実施例では、銀メッキされた金属面の一部は、飲料水が供給されるときに飲料水と接触するように容器内に配置される(例えば、出口管、ダクト、もしくはニードルなどの金属面もしくはそれらの近傍の金属面)。
【0035】
方法40は、飲料水を提供する以外の目的で、容器および金属面を加工するように用いられてもよい。方法40は、例1に示すように、飲料水に要求される所望の銀イオン濃度よりも高い銀イオン濃度を保存された水に与える可能性を示す。飲料水の保存とは別にその他の応用例が銀イオン濃度増加の利益を享受する。
【0036】
(例)
候補となる飲料水貯蔵容器材料が、異なる処理にかけられ、次いで銀イオンを含有する飲料水に曝された。現在スペースシャトルに用いられる正規の飲料水貯蔵タンクと同等の表面積対体積比を備えた寸法を有する材料テストパネルを用いて実験を行った。実験が行われる各条件に対して複数のテストパネルが使用された。使用された飲料水は0.35±0.05ppmの銀濃度を有していた。飲料水に銀イオンを供給するようにフッ化銀(I)(AgF)が用いられ、フッ化銀は99%以上の純度であった。容器内の飲料水中の銀イオンの平均濃度がある期間に亘って観察された。
【0037】
(例1−インコネル718)
図5および表1〜5は、インコネル718パネルの実験の結果を示す。一組の未処理の(基準)インコネル718テストパネルは、銀イオンを含有する飲料水に曝す前に何も処理を行わなかった。未処理のインコネル718テストパネルの結果(参照符号50)は、飲料水中の銀イオンの量が急速に減少することを示した。4週間後、飲料水中の銀イオン濃度は検出限界(0.05ppm)未満であった。通常の焼き戻し処理および析出硬化処理は、テストパネルに銀イオンが曝されたときに銀イオンの減損を防ぐようにはインコネル718パネルを酸化もしくは不動態化しなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
一組のインコネル718テストパネルが、銀イオンを含有する飲料水に曝される前に高温酸化処理を受けた。テストパネルは590°C(1100°F)に2時間加熱された。またテストパネルはその2時間の間、高温状態で空気に曝された。テストパネルが冷却されると、テストパネルは銀イオンを含有する飲料水に露出された。高温酸化処理(参照符号52)を受けたインコネル718テストパネルの結果は、4週間後に銀イオン濃度の最初の減少を示したが、そこから濃度は増加して、約45週まで約0.25ppm(初期濃度の71%)で横ばいになった。高温酸化処理は、インコネル718表面では、飲料水中の銀イオンの許容抗菌濃度を45週まで維持する能力を示した。
【0040】
【表2】

【0041】
一組のインコネル718テストパネルが、高温酸化処理を受けた後に高濃度のフッ化銀を有する溶液で処理(不動態化処理)された。既に述べたように、テストパネルは590°C(1100°F)に加熱され、その温度状態で2時間空気に曝された。テストパネルが冷却されると、各パネルは50ppmの銀濃度を有する濃銀溶液(フッ化銀)に曝された。テストパネルは濃銀溶液に3週間曝された。3週間後、濃銀溶液を除去し、テストパネルを脱イオン水で洗浄し、銀イオンを含有する飲料水に露出させた。高温酸化処理に続いて不動態化処理を受けたインコネル718テストパネル(符号54)の結果は、約62週目まで、銀イオンが約0.31ppm(初期濃度の84%)から約0.36ppm(初期濃度の97%)の間でかなりの安定した濃度を示した。約43週目では、銀イオン濃度は0.21ppmまで下落したが、約62週目で0.35ppmまで戻った。酸化剤不動態化処理と組み合わされた高温酸化処理により、インコネル718面では、銀イオンの許容抗菌濃度が第62週目まで飲料水の初期濃度付近に維持されることが実証された。
【0042】
【表3】

【0043】
別の一組のインコネル718テストパネルが、高温酸化処理を受けた後に高濃度のフッ化銀を有する溶液で処理(不動態化処理)された。既に述べたように、テストパネルは590°C(1100°F)に加熱され、その温度状態で2時間空気に曝された。テストパネルが冷却されると、各パネルは50ppmの銀濃度を有する濃銀溶液(フッ化銀)に曝された。テストパネルは濃銀溶液に3週間曝された。3週間後、テストパネルから濃銀溶液を除去し、テストパネルを脱イオン水で洗浄し、銀イオンを含有する飲料水に露出させる前に8日間乾燥させた。高温酸化処理に続いて不動態化処理および8日間の乾燥時間を受けたインコネル718テストパネル(符号56)の結果は、約61週目まで、銀イオンが約0.33ppm(初期濃度の89%)から約0.41ppm(初期濃度の111%)の間でかなりの安定した濃度を示した。約43週目では、銀イオン濃度は0.23ppmまで下落したが、第61週目で0.36ppmまで戻った。酸化剤不動態化処理と組み合わされた高温酸化処理により、インコネル718面では、銀イオンの許容抗菌濃度が第61週目まで飲料水の初期濃度付近に維持されることが実証された。最後の処理(濃銀溶液による)が完了してから数日間が経過した後でさえ、テストパネルは銀イオン濃度を維持する能力を保ち続けた。
【0044】
【表4】

【0045】
別の一組のインコネル718テストパネルが銀メッキ処理を受けた。テストパネルの全面が銀メッキされた。テストパネルは連邦仕様書QQ−S−365Dの条件を満たすように銀メッキされた。テストパネルの銀メッキの厚さは約0.013mm(0.0005インチ)であった。テストパネルを脱イオン水で洗浄し、銀イオンを含有する飲料水に露出させた。銀メッキ処理を受けたインコネル718テストパネル(符号58)の結果は、銀イオン濃度は、約11週間後、約0.06ppm(初期濃度の116%)から約0.08ppm(初期濃度の122%)の間で徐々に増加を示した。約17週目では、銀イオン濃度は0.65ppm(初期濃度の176%)に著しく上昇した。27週間後、銀イオン濃度は0.88ppm(初期濃度の238%)まで上昇し続けて横ばいになり、45週間後には0.92ppm(初期濃度の249%)に上昇した。銀メッキ処理により、インコネル718面に曝された水の銀イオン濃度をその初期濃度以上に増加させる能力が実証された。
【0046】
【表5】

【0047】
(例2−E−BRITE(登録商標))
E−BRITE(登録商標)バルブ材を用いて同様の実験を行った。図6および表6〜8はE−BRITE(登録商標)のパネル実験の結果を示す。一組の未処理のE−BRITE(登録商標)テストパネルは、銀イオンを含有する飲料水に露出させる前に処理を受けなかった。未処理のE−BRITE(登録商標)テストパネル(符号60)の結果は、4週間後に飲料水中の銀イオン量が急速な減少(58%)を示した。11週間後、銀イオン濃度は僅かに増加したが、約17週後には検出限界(0.05ppm)を下回った。
【0048】
【表6】

【0049】
一組のE−BRITE(登録商標)テストパネルが、銀イオンを含有する飲料水に曝される前に高温酸化処理を受けた。テストパネルは590°C(1100°F)に2時間加熱された。またテストパネルはその2時間の間、高温状態で空気に曝された。テストパネルが冷却されると、銀イオンを含有する飲料水に曝された。高温酸化処理を受けたE−BRITE(登録商標)テストパネルの結果(符号62)は、11週間後に銀イオン濃度が僅かな減少(23%)を示したが、そこから銀イオン濃度は、約45週間後に0.39ppm(初期濃度の100%)の最終銀イオン濃度に増加した。高温酸化処理は、E−BRITE(登録商標)面では、飲料水中の銀イオンの許容抗菌濃度を45週まで維持する能力を実証した。
【0050】
【表7】

【0051】
一組のE−BRITE(登録商標)テストパネルが、それぞれ、銀イオンを含有する飲料水に曝される前に高濃度のフッ化銀溶液で処理された。これらのテストパネルは加熱されなかった。各テストパネルは、25ppmの銀濃度を有する濃銀溶液(フッ化銀)に曝された。テストパネルは濃銀溶液に24時間曝された。24時間後、濃銀溶液を除去し、テストパネルを脱イオン水で洗浄し、銀イオンを含有する飲料水に露出させた。不動態化処理を受けたE−BRITE(登録商標)テストパネルの結果(符号64)は、11週間後に銀イオン濃度が僅かな減少(23%)を示したが、そこから銀イオン濃度は、約45週間後に0.42ppm(初期濃度の108%)の最終銀イオン濃度に増加した。E−BRITE(登録商標)面では、酸化剤不動態化処理のみで飲料水中の銀イオンの許容抗菌濃度を45週まで初期濃度付近に維持する能力が実証された。
【0052】
【表8】

【0053】
上記の例は、処理されたインコネル718およびE−BRITE(登録商標)の表面が銀イオン濃度を数週間維持する能力を示す。結果の外挿は、処理面が飲料水中の銀イオン濃度をテストされた期間よりも遥かに長い範囲に亘って維持することを示唆している。
【0054】
一実施例では、本発明の方法は飲料水の長期保存用の容器を提供する。図7は、容器70の概略側面図を示す。容器70は金属面72を含む。金属面72は、ステンレス鋼、金属合金、もしくは上記のその他の金属でもよい。また容器70は、容器70内の水を供給するための出口74を含む。フィルタ76は、出口74を通して供給される前の水を濾過し、殺生物剤の存在にもかかわらず水中で成長した微生物を除去する。金属面72を有する容器70は、容器70の金属面72を酸化することにより飲料水の長期保存用に加工される。容器70の金属面72を酸化することにより金属面72の還元電位を低下させる。また容器70の金属面72は銀イオンを含有する溶液で処理されて、金属面72の還元電位を更に低下させる。図7は単一の容器70の側面図である。容器70は伸縮継手もしくは金属蛇腹式の側壁を有するベロー式タンクでもよい。本発明の方法は小型の特徴部および/または溝を有する容器の複雑な形状を処理するのに効果的である。
【0055】
別の実施例では、容器70の金属面72の一部が銀メッキされる。容器部分78は金属面72の一部である。容器70から供給される飲料水は、容器部分78付近の容積部分を通流しなければならないため、供給される飲料水の銀イオン濃度を増加もしくは維持するように銀イオン源を設けるために理想的に配置される。容器部分78の表面積は、容器70の全体積、および容器70から供給される飲料水の所望の銀イオン濃度に基づいて決定される。
【0056】
別の実施例では、銀イオンを含む飲料水を収容する容器が、金属面と、容器から飲料水を供給する出口と、フィルタと、を有する。容器の金属面に存在する陽性元素金属の大部分が酸化されて、銀イオンの還元を防止する。また、バルブ、配管、およびその他の容器の金属面やシステムコンポーネントが酸化されて、銀イオンの還元を防止する。フィルタにより微生物が容器の出口から出るのを防ぐ。
【0057】
本発明の実施例により、金属面を有する容器内に、銀殺生物剤を含有する飲料水を長期保存することができる。金属面を高温で酸化し、酸化剤を含有する溶液で金属面を不動態化すること、ならびに酸化と不動態化とを組み合わせることにより、銀イオンと反応して銀イオンを還元するおそれのある金属面上の部位の数を減少させる。ひとたび還元サイトが酸化および/または不動態化されれば、銀イオンを含有する飲料水は銀イオンの抗菌効果を損なうことなく金属面と接触することができる。また容器の金属面の一部を銀メッキすることにより、銀イオンと反応して銀イオンを還元するおそれのある金属面上の部位の数を減少させる。銀メッキされた金属面はまた、容器に保存された飲料水に銀イオンを提供する。
【0058】
実施例を参照しながら本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更がなされ、本発明の要素と同等のものに置き換えられうることが当業者にとって理解されるであろう。さらに、本発明の真の範囲を逸脱することなく特定の状況もしくは材料に適合するように、種々の変更が本発明の教示に対してなされうる。したがって、本発明は開示の特定の実施例に限定されるものではなく、付記の特許請求の範囲に含まれる全ての実施例を包含することを意図するものである。
【符号の説明】
【0059】
10…金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属面を有する容器に保存された飲料水中の微生物の成長を抑制する方法であって、
前記容器の前記金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱し、
前記金属面における潜在的な還元部位を酸化するように、加熱中に前記容器の前記金属面を酸素に露出させ、
銀イオンを含有する飲料水を前記容器に充填することを備えた抑制方法。
【請求項2】
前記容器の前記金属面が、約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度で約1時間〜約24時間加熱されることを特徴とする請求項1に記載の抑制方法。
【請求項3】
前記金属面における潜在的な還元部位を酸化するように、前記容器の前記金属面を、約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度で約60分〜約4時間の間、空気に露出させることを特徴とする請求項1に記載の抑制方法。
【請求項4】
前記容器に充填される前記飲料水が、約0.02ppm〜約0.4ppmの濃度の銀イオンを含有することを特徴とする請求項1に記載の抑制方法。
【請求項5】
前記金属面を加熱し、前記金属面を酸素に露出させた後、前記金属面における潜在的な還元部位をさらに酸化するように、前記容器の前記金属面を、酸化剤を含有する溶液で処理することをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の抑制方法。
【請求項6】
前記金属面を、前記酸化剤を含有する溶液で約2日〜約3週間処理することを特徴とする請求項5に記載の抑制方法。
【請求項7】
前記酸化剤を含有する溶液が、約10ppm〜約200ppmの濃度の銀イオンを含有することを特徴とする請求項5に記載の抑制方法。
【請求項8】
前記銀イオンが、フッ化銀(I)、硫酸銀、亜硫酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酢酸銀、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された一つもしくは複数の銀塩の解離によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の抑制方法。
【請求項9】
前記容器に充填された前記飲料水中の銀イオンの最終濃度が、約15ヵ月後に前記飲料水中の銀イオンの初期濃度の少なくとも約50%を含むように、前記容器の潜在的な還元部位が酸化されることを特徴とする請求項1に記載の抑制方法。
【請求項10】
前記金属面が、陽性金属を備えることを特徴とする請求項1に記載の抑制方法。
【請求項11】
前記金属面がニッケルを備え、前記金属面の露出したニッケルの少なくとも大部分が酸化されて、酸化ニッケル(NiO2)、炭酸ニッケル(NiCO3)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された化合物を形成することを特徴とする請求項10に記載の抑制方法。
【請求項12】
銀イオンを含有する飲料水の長期保存用の金属面を有する容器の加工方法であって、
前記容器の前記金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱し、
前記金属面の陽性金属を酸化するように、加熱中に前記容器の前記金属面を酸素に露出させることを備えた加工方法。
【請求項13】
前記金属面の陽性金属を酸化するように、前記容器の前記金属面を、約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度で約60分〜約4時間の間、空気に露出させることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
【請求項14】
前記容器に充填された飲料水中の銀イオンが約15ヶ月後にせいぜい50%しか減少しないように、前記容器の陽性金属を酸化することを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
【請求項15】
前記金属面の陽性金属をさらに酸化するように、前記容器の前記金属面を、酸化剤を含有する溶液で処理することをさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
【請求項16】
前記酸化剤を含有する溶液が、約10ppm〜約200ppmの濃度の銀イオンを含有することを特徴とする請求項15に記載の加工方法。
【請求項17】
前記金属面は、金属、合金、ステンレス鋼、耐食鋼、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の加工方法。
【請求項18】
銀イオンを含有する飲料水の長期保存用の金属面を有する容器の加工方法であって、
酸化剤を含有する水溶液を作り、
前記金属面における潜在的な還元部位を酸化するように、前記容器の前記金属面を、前記酸化剤を含有する水溶液で処理することを備えた加工方法。
【請求項19】
金属面を有する容器に保存された水の銀イオン濃度を調節する方法であって、
前記金属面における潜在的な銀還元部位を低減するように、前記金属面の一部を銀メッキし、
前記容器に飲料水を充填することを備えた調節方法。
【請求項20】
金属面を有する飲料水の長期保存用の容器であって、前記金属面を約480°C(900°F)〜約870°C(1600°F)の温度に加熱し、加熱中に前記金属面の還元電位を低下させるように前記金属面を酸素に露出させることにより、前記金属面を酸化し、前記金属面の還元電位をさらに低下させるように、前記金属面を銀イオン含有溶液で処理した容器。
【請求項21】
銀イオンを含む飲料水を収容するための容器であって、
銀イオンの還元を防ぐように、その表面上に存在する陽性元素金属の大部分が酸化された金属面と、
前記容器から飲料水を放出させるための出口と、
前記出口において微生物が前記容器から出るのを防ぐためのフィルタと、
を備えた容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121646(P2011−121646A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241589(P2010−241589)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】