説明

金平糖状シリカゾルの製造方法

【課題】 金平糖状シリカ系ゾルを効率的に製造する。
【解決手段】 シリカゾルまたは珪酸アルカリ水溶液を含むシード液に、強酸の存在下、下記1)および2)の条件で珪酸液を含むフィード液を添加してシリカ粒子を成長させる。
1)シード液に含まれるシリカ100質量部に対し、フィード液に含まれるシリカが50〜2500質量部
2)フィード液に含まれるアルカリの当量数(EA)と強酸の当量数(ES)の比(EA/ES)が0.4〜8の範囲

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金平糖状という特異な形状をした非多孔質の球状シリカ粒子が溶媒に分散したゾルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の集積回路付基板の製造においては、シリコンウェーハ上に銅などの金属で回路を形成する際に凹凸あるいは段差が生じるので、これを研磨して表面の段差がなくなるように回路の金属部分を優先的に除去することが行われている。また、シリコンウェーハ上にアルミ配線を形成し、この上に絶縁膜としてシリカ等の酸化膜を設けると配線による凹凸が生じるので、この酸化膜を研磨して平坦化することが行われている。このような基板の研磨においては、研磨後の表面は段差や凹凸がなく平坦で、さらにミクロな傷等もなく平滑であることが求められており、また研磨速度が速いことも必要である。
【0003】
さらに、半導体材料は電気・電子製品の小型化や高性能化に伴い高集積化が進展しているが、例えばトランジスタ分離層にNaやK等の不純物等が残存した場合、性能が発揮されなかったり、不具合の原因となることがある。特に研磨した半導体基板や酸化膜表面にNaが付着すると、Naは拡散性が高く、酸化膜中の欠陥などに捕獲され、半導体基板に回路を形成しても絶縁不良を起こしたり、回路が短絡することがあり、また誘電率が低下することがあった。このため使用条件によって、或いは使用が長期にわたった場合に前記不具合を生じることがあるので、NaやKなどの不純物を殆ど含まない研磨用粒子が求められている。
【0004】
研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナなどが用いられている。
CMPで使用される研磨材は、通常、シリカ、アルミナ等の金属酸化物からなる平均粒子径が200nm程度の球状の研磨用粒子と、配線・回路用金属の研磨速度を早めるための酸化剤、有機酸等の添加剤及び純水などの溶媒から構成されているが、被研磨材の表面には下地の絶縁膜に形成した配線用の溝パターンに起因した段差(凹凸)が存在するので、主に凸部を研磨除去しながら共面まで研磨し、平坦な研磨面とすることが求められている。しかしながら、従来の球状の研磨用粒子では共面より上の部分を研磨した際に、凹部の下部にあった配線溝内の回路用金属が共面以下まで研磨される問題(ディッシングと呼ばれている。)があった。このようなディッシング(過研磨)が起きると配線の厚みが減少して配線抵抗が増加したり、また、この上に形成される絶縁膜の平坦性が低下するなどの問題が生じるので、ディッシングを抑制することが求められている。
【0005】
異形粒子群を含む研磨剤は、この様な凹凸を有する基材の研磨において、凸部の上端面が凹部の底面と同レベルになるまで凹部の研磨が抑制され、凸部の上端面が凹部の底面と同レベルまで研磨された後は凸部、凹部ともに同じ研磨速度で研磨できるので、ディッシング(過研磨)が起きることがなく、研磨後の表面は凹凸が無く平坦性に優れることが知られている。例えば、半導体集積回路の形成などにおける研磨においてディッシングが起きることがないので、得られる集積回路の回路抵抗を増加させることもなく、研磨後の表面は平坦性に優れているので効率的に積層集積回路を形成することができる。
【0006】
また、この様な異形粒子群を含む研磨剤の用途としては、アルミニウムディスク(アルミニウムまたはその基材上のメッキ層)や半導体多層配線基板のアルミニウム配線、光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、ガラス質材料の鏡面加工などへの適用が期待されている。
【0007】
本願特許出願人は、特願2007−261282号(特許文献1)において、金平糖状シリカゾルの製造方法として、A液(核粒子分散液または珪酸アルカリ水溶液)に、強酸の塩からなる電解質の存在下、B液(珪酸アルカリ水溶液)を添加して核粒子を成長させる際に、A液のシリカ100質量部に対して、B液のシリカ50〜2500質量部を、前記B液中のアルカリの当量数(EA)と前記電解質の当量数(EE)の比(EA/EE)が0. 4〜8の範囲となるように添加する製造方法を提案した。当該製造方法によれば、効率的に金平糖状シリカゾルを調製することができるものの、その製造工程で発生する排水にアンモニアが含まれるため、アンモニアを除去してから排水する必要があった。
【特許文献1】特願2007−261282号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金平糖状という特異な形状をしたシリカ系微粒子が溶媒に分散してなる金平糖状シリカ系ゾルを効率的に製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の第1の発明は、シリカゾルまたは珪酸アルカリ水溶液を含むシード液に、強酸の存在下、下記1)および2)の条件で珪酸液を含むフィード液を添加してシリカ粒子を成長させることを特徴とする金平糖状シリカゾルの製造方法である。
1)シード液に含まれるシリカ100質量部に対し、フィード液に含まれるシリカが50〜2500質量部
2)フィード液に含まれるアルカリの当量数(EA)と強酸の当量数(ES)の比(EA/ES)が0.4〜8の範囲
【0010】
本出願の第2の発明は、前記フィード液が[1]珪酸液または[2]珪酸液と珪酸アルカリ水溶液の混合物であることを特徴とする前記金平糖状シリカゾルの製造方法である。
本出願の第3の発明は、前記シード液がSiO2/M2O(Mはアルカリ金属、比率はモル比)が3.0〜300の範囲にあるシリカゾルであることを特徴とする前記金平糖状シリカゾルの製造方法である。
【0011】
本出願の第4の発明は、前記シード液の温度を40〜150℃の範囲に維持しながら、強酸水溶液および前記フィード液を15分〜20時間かけてそれぞれ添加することを特徴とする前記金平糖状シリカゾルの製造方法である。
本出願の第5の発明は、前記フィード液の添加後、40〜150℃の温度範囲で熟成することを特徴とする前記金平糖状シリカゾルの製造方法である。
本出願の第6の発明は、前記強酸が、硫酸、硝酸または塩酸から選ばれるものであることを特徴とする前記金平糖状シリカゾルの製造方法である。
【0012】
本出願の第7の発明は、非多孔質球状微粒子の表面に複数の疣状突起を有する金平糖状シリカ微粒子であって、ナトリウム滴定法により測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.7〜10の範囲にあり、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲にあり、粒子径変動係数が3.0〜20%の範囲にある金平糖状シリカ微粒子が溶媒に分散してなる金平糖状シリカゾルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、前記金平糖状シリカ微粒子が溶媒に分散した金平糖状シリカゾルを効率的に得ることができる。特に、原料のシリカ微粒子の平均粒子径、強酸の使用量および粒子成長条件などを調整することにより、生成する金平糖状シリカ微粒子の形状(表面粗度)を制御することが可能となった。
また、本発明に係る金平糖状シリカゾルの製造方法は、原料にアンモニアが含まれないため、製造工程にて発生する排水について、アンモニア除去処理が不要であり、実用的に優れた製造方法と言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[金平糖状シリカゾルの製造方法]
以下、本発明の金平糖状シリカゾルの製造方法について具体的に説明する。
【0015】
シリカゾルを含むシード液
シード液としては、従来公知のシリカゾルを用いることができる。このようなシリカゾルとしては、本願出願人による特開昭63−64911号公報に記載の方法で得られるシリカゾル、あるいはこのときシード粒子として用いられる比較的小さな粒子径を有するシリカ粒子の分散液を好適に用いることができる。
この様なシリカゾルの分散質であるシリカ微粒子の粒子径については、本発明の金平糖状シリカゾルの製造方法に適用して、粒子成長の基点となる核粒子となって、粒子成長により平均粒子径(D2)が10〜100nm(画像解析法により測定される)の球状シリカ微粒子を得ることが可能な大きさであれば格別に限定されるものではないが、例えば、画像解析法により測定される平均粒子径が70nm以下のシリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子の粒子径が70nmを越えると、本発明の製造方法に適用しても金平糖状シリカゾルを得られない場合がある。なお、粒子径の下限は、核粒子として機能すれば特に制限はないが珪酸のオリゴマー以上、特に10量体以上であることが好ましい。
【0016】
前記シリカゾルのシリカ濃度は、シリカゾルの分散質であるシリカ微粒子の粒子径によっても異なるがシリカとして0.005〜10質量%、さらには0. 01〜5質量%の範囲にあることが好ましい。シリカ濃度が0. 005質量%未満の場合は、核粒子が少なすぎて、強酸および珪酸液を含むフィード液の供給速度を遅くする必要があり、供給速度を低下させない場合は新たな微粒子が発生し、これが核粒子として作用するために得られるゾルの粒子径分布がブロードになることがあり、金平糖状シリカゾルの調製上、非効率的となる。
シリカ濃度が10質量%を越えると、濃度が高すぎて珪酸アルカリ水溶液を含むフィード液および/または強酸を供給する際に核粒子同士が凝集することがあり、この場合も粒子径分布がブロードになると共に互いに付着した粒子が生成する傾向があるため、金平糖状シリカゾルの調製にとって好ましくない。
【0017】
前記シード液として使用するシリカゾルのSiO2/M2O(Mはアルカリ金属、比率はモル比)については、3.0〜300の範囲のものを使用することが推奨される。
SiO2/M2Oが3.0未満の場合は、アルカリ金属が過剰であるため、粗大な粒子成長を招くおそれがある。SiO2/M2Oが300を超える場合は、溶解度が下がるため、核粒子が多数生成し、粒度分布が広くなる傾向が強くなる。SiO2/M2Oの範囲については、好適には 4.0〜150の範囲が推奨される。
前記アルカリ金属(M)は、通常はナトリウムまたはカリウムとなる。
【0018】
前記シード液のpHは8〜12、特に9. 5〜11. 5の範囲にあることが望ましい。pHが8未満の場合は、核粒子表面の反応性が低いため、供給された珪酸液が表面に析出する速度が遅く、このため未反応の珪酸アルカリが増加したり、新たな微粒子が発生し、これが核粒子として作用するために得られるゾルの粒子径分布がブロードになったり、凝集粒子が得られることがあり、金平糖状シリカゾルの効率的な生成には望ましくない。pHが12を越えると、シリカの溶解度が高くなるためシリカの析出が遅くなり、このため粒子成長が遅くなる傾向がある。
必要に応じて、前記シード液のpH調整はアルカリ添加によって行うことができる。具体的には、NaOH、KOHなどのアルカリ金属水酸化物や、アンモニア水、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、アミン化合物等を用いることができる。なお、上記シリカゾルまたは珪酸アルカリ水溶液を含むシード液の調製時の温度には特に制限はなく、通常10〜30℃の範囲である。
【0019】
珪酸液を含むフィード液
本発明では、前記シリカゾルまたは珪酸アルカリ水溶液を含むシード液に、強酸の存在下、珪酸液を含むフィード液を添加してシリカ微粒子の粒子成長を行う。ここで、強酸については、予めシード液中に一部または全部を添加しておくこともできるが、珪酸液を含むフィード液と共に、それぞれ連続的にあるいは断続的に添加しても良い。
珪酸液を含むフィード液としては、通常は、1)珪酸液単体または2)珪酸液と珪酸アルカリ水溶液の混合物が使用される。
【0020】
珪酸アルカリ水溶液として、具体的には、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、NH4 OH、第4級アンモニウムハイドライドなどの珪酸アルカリ塩の水溶液が挙げられる。この中でも、珪酸ナトリウム(水硝子)、珪酸カリウム等は好適に用いることができる。また、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)などの加水分解性有機化合物を過剰のNaOHなどを用いて加水分解して得られる珪酸アルカリ水溶液なども使用可能である。
珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度については、通常は1〜10質量%の範囲が推奨される。1質量%未満では、珪酸アルカリが加水分解してしまう。10質量%を超える場合は、アルカリ金族濃度が高くなりすぎるため、混合による拡散が不充分になり、粒度分布が広くなる。珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度のより好適な範囲は、3〜7質量%の範囲が推奨される。
【0021】
珪酸液は、珪酸アルカリ水溶液を脱アルカリすることにより得られる珪酸の低重合物の水溶液を意味する。より具体的には、アルカリ金属珪酸塩、第3級アンモニウム珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩またはグアニジン珪酸塩から選ばれる水溶性珪酸塩を脱アルカリすることにより調製することができる。この種の珪酸液は、通常、pHは2〜4、SiO2/Na2O(モル比)が100〜5,000、SiO2濃度10重量%以下、好ましくは2〜7重量%のものが、常温でのゲル化が生じ難く、比較的安定であり、実用的に原料として使用される。
【0022】
珪酸アルカリ水溶液と珪酸液を混合して使用する場合については、フィード液のアルカリ金属濃度調整の目的で両者を混合して使用するものである。この場合珪酸アルカリ水溶液100質量部(シリカ換算)に対して、珪酸液を10〜30質量部(シリカ換算)で混合することが好ましい。
【0023】
珪酸液を含むフィード液を添加する際のシード液の温度は40〜150℃、さらには60〜100℃の範囲にあることが望ましい。温度が40℃未満では、珪酸の反応速度が遅く、未反応の珪酸が多くなったり、所望の大きさの粒子が得られないことがある。分散液の温度が150℃を越えると、操作圧力が高くなり過ぎて装置費用が高くなると共に生産能力が低下し経済性が低下する問題がある。また、反応速度、粒子成長速度を速める効果も実用的には小さい。
【0024】
フィード液の添加に要する時間については、通常は15分〜20時間の範囲が好ましい。15分未満の場合はシード粒子の表面への成長が進まず反応系内に微小粒子が発生し易くなる。また、20時間を越える場合は、生成する粒子の表面粗度が低下する傾向が強くなる。フィード液の添加に要する時間の好適な範囲は、1時間〜15時間の範囲が推奨される。
【0025】
珪酸液を含むフィード液の使用量については、核粒子を成長させるときの温度や反応時間にもよるが、通常はシード液中に含まれるシリカ100質量部に対して、シリカ換算で50〜2500質量部の範囲であることが好ましい。50質量部未満では、粒子成長自体が低調であるため、必要な表面粗度を示す金平糖状シリカゾルを効率的に得ることが容易ではない。2500質量部を超える場合は、核粒子の成長が進行し過ぎるために、表面が平坦化したシリカ微粒子となる傾向が大きくなる。
珪酸液を含むフィード液の更に好適な添加量(シリカ換算)は、80〜1800質量部の範囲である。
【0026】
強酸水溶液
本発明に用いる強酸水溶液の使用量は、珪酸液を含むフィード液中に含まれるアルカリの当量数(EA)と強酸水溶液における強酸の当量数(ES)の比(EA/ES)が、0. 4〜8、特に0. 4〜5の範囲にとなるようにすることが好ましい。比(EA/ES)が0. 4未満の場合は、分散液中の強酸濃度が高すぎて、粒子が凝集することがある。比(EA/ES)が8を越えると、強酸の量が少ないため粒子の成長速度が不充分となり、従来の酸性珪酸液を供給して核粒子の粒子成長を行うのと変わるところがない。また、前記した強酸が珪酸アルカリのアルカリを受容して核粒子の粒子成長に用いられる珪酸の生成が少なくなり、所望の粒子径の粒子を得ることができないことがある。
強酸の種類としては、硫酸、硝酸、塩酸などが好適に使用される。これらの酸はそのまま用いても良いが、水で希釈して用いることも可能である。
【0027】
前記強酸水溶液は、強酸の濃度が0. 05〜10質量%の範囲にあることが好ましい。また、好適には0.1〜5質量%の範囲が推奨される。このような強酸は、その一部または全部を予めシード液に添加しておいてもよく、フィード液と共にそれぞれ連続的にあるいは断続的に添加してもよい。
【0028】
なお、シード液に添加するフィード液については、必要に応じて、水で希釈したりあるいは濃縮してSiO2 の濃度が0. 5〜10質量%、さらには1〜7質量%の範囲となるように調節することが好ましい。SiO2濃度が0. 5質量%未満の場合は、濃度が低すぎて生産効率が低く、また製品としての使用に際して濃縮を必要とすることがある。他方、SiO2濃度が10質量%を越えると、シリカ粒子の凝集が起きる傾向があり、均一な粒子径のシリカ粒子が単分散したゾルが得られないことがある。
【0029】
シード液にフィード液を供給して核粒子を成長させる間、所望によりアルカリまたは酸を添加しながら分散液のpHを8〜13、好ましくは10〜12の範囲に維持しても良い。添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、あるいはトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を用いることができ、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、あるいは酢酸などの有機酸を用いることができる。
【0030】
熟成・脱イオン
前記フィード液の添加後、必要に応じてこれを熟成する。熟成温度は40〜150℃、好ましくは60〜100℃の範囲とし、熟成時間は熟成温度によっても異なるが30分〜5時間程度である。このような熟成を行うことによって粒子径がより均一で、安定性に優れたシリカゾルを得ることができる。
また、所望により、得られたシリカゾルの温度を概ね40℃以下に冷却した後、分散液中のイオンを除去しても良い。分散液中のイオンを除去する方法としては従来公知の方法を採用することができ、例えば、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、イオン交換膜法などの方法が挙げられる。脱イオンは、残存するアニオン量がSiO2 の0. 01質量%以下、好ましくは0. 005質量%以下とすることが好ましい。残存イオン量が0. 01質量%以下であれば、後述する濃度にもよるが、充分な安定性を備えたシリカゾルを得ることができ、多くの用途において不純物の影響が見られない。
【0031】
得られたシリカゾルは、必要に応じて濃縮する。濃縮方法としては通常、限外濾過膜法、蒸留法あるいはこれらの組合せからなる方法などが採用され、濃縮後のシリカゾルの濃度はSiO2 に換算して概ね10〜50質量%の範囲である。当該シリカゾルは、使用に際して適宜希釈して、あるいはさらに濃縮して用いられる。
【0032】
[金平糖状シリカゾル]
本発明の金平糖状シリカゾルを構成するシリカ微粒子は、非多孔質球状微粒子の表面に複数の疣状突起を有する球状シリカ微粒子であり、その形状は概ね金平糖に類似したものである。この様な複数の疣状突起を有する表面については表面粗度によりその範囲が規定される。
本発明において表面粗度は、ナトリウム滴定法により測定される比表面積(単位質量当りの表面積)の値を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積の値を(SA2)としたとき、表面粗度=(SA1)/(SA2)として定義される。
【0033】
ここで、ナトリウム滴定法により測定される比表面積(SA1)は、シリカゾルに対して水酸化ナトリウム溶液を滴定したときの水酸化ナトリウム溶液の消費量からシリカ微粒子の比表面積を求めるものであり、実際の表面積を反映したものと言える。なお、比表面積の測定については、ナトリウム滴定法に代えて、窒素吸着法により行っても構わない。
【0034】
また、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積(SA2)については、透過型電子顕微鏡により、試料シリカゾルを写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定したときの平均値を平均粒子径(D2)とし、次に試料シリカゾルに分散するシリカ微粒子を理想的な球状粒子と仮定して、次式(1)より比表面積(SA2)が算定される。
SA2=6000/(D2×ρ) ・・・ (1)
ただし、式(1)において、ρは試料粒子の密度で、シリカの場合2.2である。
この関係式は、前記仮定に基づくものであるので、この比表面積(SA2)の値は、平均粒子径(SA2)に対応した、球状で表面が平滑なシリカ微粒子の比表面積に対応するものと言える。
【0035】
ここで比表面積は単位質量当りの表面積を示すから、表面粗度(SA1)/(SA2)の値については、粒子が球状であって、粒子表面が多くの疣状突起を有する程、(SA1)/(SA2)の値は大きくなり、粒子表面の疣状突起が少なく、平滑であるほど、(SA1)/(SA2)の値は小さくなり、その値は1に近づく。
本発明において、金平糖状シリカ微粒子の表面粗度は1.7〜10の範囲にある。表面粗度が1.7未満の場合、突起の割合が少ないかあるいは、疣状突起自体がシリカ微粒子の粒子径に比べて小さ過ぎ、球状シリカ微粒子に近くなる。表面粗度の値が10を超える場合は、合成が容易ではない。表面粗度の範囲としては、1.7〜8の範囲が好適である。
【0036】
本発明に係る金平糖状シリカゾルの分散質である金平糖状シリカ微粒子の表面状態については、前記表面粗度に加えて、粒子径変動係数(CV値)が3.0〜20%の範囲にあるものが推奨される。
ここで、粒子径の変動係数(CV値)とは、粒子半径の不均一性の度合を意味する。具体的には、電子顕微鏡による写真投影図における球状シリカ微粒子の最長径を2等分する位置を該球状シリカ微粒子の中心とし、該中心から最長径の一方の端を角度0度とし、そこから10度ずつ0度から180度までの半径を測定し、それらの値から半径の平均値および標準偏差を算定する。更に該標準偏差を該平均値で除すことにより、粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求める。
本出願においては、任意の50個の粒子について、それぞれ粒子径の変動係数を求め、それらの平均値を粒子径の変動係数(CV値)とした。
【0037】
粒子径の変動係数が3.0%未満の場合は、表面の起伏が少ない球状粒子に近くなる。粒子径の変動係数が20%を超える場合については、表面が極めて起伏に富む状態になるが、本発明に係る製造方法によって調製することは容易ではない。また、その様なシリカ微粒子は、その組成によっては、疣状突起部分の強度が低くなる場合があり、研磨材用途に適さない場合が生じかねない。
粒子径の変動係数(CV値)については、好ましくは3.3〜15%の範囲が推奨される。また、更に好ましくは、5.0〜12%の範囲が推奨される。
前記表面粗度および粒子径変動係数の条件が、本発明の設定範囲を満たす金平糖状シリカ微粒子は、微細な疣状突起または突起様構造を有するものであり、この様な構造は、例えば精密な研磨用途に好適なものと言える。
【0038】
前記金平糖状シリカ微粒子は、球状であることが必要であり、棒状、勾玉状、細長い形状、数珠状、卵状など、異形粒子を含まない。本発明の金平糖状シリカ微粒子は球状であり、異形シリカ粒子と区別される。
本発明において球状とは、真球度が0.8〜1.0の範囲にあるものを言う。ここで真球度とは、透過型電子顕微鏡により写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)の平均値を意味する。真球度が0.8未満の場合は、シリカ微粒子が球状とは云えず、前記の異形粒子に該当する場合が生じる。
【0039】
本発明の金平糖状シリカ微粒子は、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)の値が10〜150nmの範囲にあり、この点で従来の表面に突起状構造を有するシリカ系微粒子と区別される。
なお、後記する本発明の金平糖状シリカゾルの製造方法により、金平糖状シリカゾルを調製する場合、平均粒子径(D2)が150nm超える場合は、原料の核微粒子の大きさにもよるが、一般にビルトアップ工程が進行し過ぎるため突起が平坦化する傾向が著しくなる。また、10nm未満の場合は、必要な表面粗度をもったシリカ微粒子を調製することが容易ではない。
【0040】
前記シリカ微粒子が分散する溶媒については、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒のいずれであっても良い。
【0041】
オルガノゾル
本発明の製造方法によって得られた金平糖状シリカゾルは、有機溶媒で置換することによってオルガノゾルを製造することができる。置換方法としては従来公知の方法を採用することができ、有機溶媒の沸点が概ね水より高い場合には、有機溶媒を加えて蒸留することによって得ることができる。また、有機溶媒の沸点が低い場合には本願出願人の出願による特開昭59−8614号公報に開示した限外濾過膜法などによって得ることができる。得られるオルガノゾルの濃度はSiO2に換算して10〜50重量%の範囲である。また、このオルガノゾルは、使用に際して適宜希釈して、あるいはさらに濃縮して用いることができる。
【0042】
[研磨用組成物]
本発明に係る研磨用粒子分散液は、それ自体で研摩剤として使用可能なものであるが、所望により、添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加して使用しても構わない。前記研磨用粒子分散液にこれらの成分を添加して得られる混合物を本発明においては、「研磨用組成物」と呼称する。
【0043】
研磨促進剤
本発明に係る研磨用組成物には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素などおよびこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本発明に係る研磨用組成物が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0044】
界面活性剤及び/又は親水性化合物
研磨用組成物の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。
界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
【0045】
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
【0046】
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくはノ非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0047】
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
【0048】
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
本発明に係る研磨用組成物が界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用組成物の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用組成物の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
界面活性剤または親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
【0049】
複素環化合物
本発明の研磨用組成物については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0050】
複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る研磨用組成物に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
pH調整剤
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
研磨用組成物をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
研磨用組成物をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類が使用される。
【0052】
pH緩衝剤
研磨用組成物のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水まどのリン酸塩及びホウ酸塩または有機酸などを使用することができる。
【0053】
溶媒
本発明に係る研磨用組成物については、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類など水溶性の有機溶媒を用いることができる。また、水と有機溶媒からなる混合溶媒であっても構わない。
【0054】
研磨用粒子の濃度
研磨用組成物中の(C)研磨用粒子の濃度は2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。濃度が2重量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。シリカ粒子の濃度が50重量%を越えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
【0055】
[実施例および比較例で用いた分析方法]
[1]画像解析による平均粒子径(D2)の測定方法および比表面積(SA2)の算定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定し、その平均値を平均粒子径(D2)とした。また、平均粒子径(D2)の値を前記式(1)に代入して、比表面積(SA2)を求めた。
【0056】
[2]ナトリウム滴定法による比表面積と平均粒子径の測定
1)SiO2として1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25℃)に移し、純水を加えて液量を90mlにする。(以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行った。)
2)pH3.6〜3.7になるように0.1モル/L塩酸溶液を加える。
3)塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌する。
4)pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下して、pH4.0に調整する。
5)pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.7〜9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
【0057】
6)次の式(2)からSiO21.5g当たりのpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(ml)を求め、次の〔a〕〜〔c〕に従って比表面積SA[m2/g]を求める。
〔a〕 実験式(3)にて、SAの値を求め、その値が80〜350m2/gの範囲にある場合は、その値をSAとする。
〔b〕 実験式(3)によるSAの値が350m2/gを超える場合は、改めて実験式(4)にて、SAを求め、その値をSAとする。
〔c〕 実験式(3)によるSAの値が80m2/g未満となった場合は、改めて、後記[3]の「窒素吸着法による比表面積測定」に従ってSAを測定し、その値をSAとする。
【0058】
また、平均粒子径D1(nm)は、式(5)から求める。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・ (2)
SA=29.0V−28 ・・・ (3)
SA=31.8V−28 ・・・ (4)
D1=6000/(2.2×SA) ・・・ (5)
【0059】
但し、上記式(2)における記号の意味は次の通りである。
A:SiO21.5g当たりpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)
f :0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価
C :試料のSiO2濃度(%)
W :試料採取量(g)
【0060】
[3]窒素吸着法による比表面積測定
シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカゾルの比表面積を算出した。
【0061】
[4]真球度の測定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)を測定し、それらの平均値を真球度とした。
【0062】
[5]Na2Oの定量方法
次の手順によった。
1)試料シリカゾル約10gを白金皿に採取し、0.1mgまで秤量する。
2)硝酸5mlと弗化水素酸20mlを加えて、サンドバス上で加熱し,蒸発乾固する。
3)液量が少なくなったら、更に弗化水素酸20mlを加えてサンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。
4)室温まで冷却後、硝酸2mlと水を約50ml加えて、サンドバス上で加熱溶解する。
5)室温まで冷却後、フラスコ(100ml)に入れ、水で100mlに希釈して試料溶液とする。
【0063】
6)原子吸光分光光度計(株式会社日立製作所製、Z-5300、測定モード:原子吸光、測定波長:190〜900nm、シリカ試料の場合におけるNaの検出波長は589.0nm)にて、試料溶液中に存在する各金属の含有量を測定した。この原子吸光分光光度計は、フレームにより試料を原子蒸気化し、その原子蒸気層に適当な波長の光を照射し、その際の原子によって吸収された光の強さを測定し、これにより試料中の元素濃度を定量するものである。
【0064】
7)試料シリカゾル10gに50%硫酸水溶液2mlを加え、白金皿上にて蒸発乾固し、得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量する。次に、秤量した固形物を微量の50%硫酸水溶液に溶かし、更にフッ化水素酸20mlを加えてから、白金皿上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量する。これらの重量差よりシリカ含有量を求めた。
8)上記6)と7)の結果からSiO2分に対するNaの割合を算出し、更にNa2Oに換算した。
【0065】
[6]硫酸イオン(SO4-)の定量方法
イオンクロマトグラフィー(DIONEX社製、2010i)により測定した。イオン交換カラムで目的イオンを分離し、その電気伝導度を経時的に検出することにより分析された。
【0066】
[7]アルミニウム基板に対する研磨特性の評価方法
研磨用スラリーの調製
各実施例および各比較例で得たシリカ濃度30.5質量%の金平糖状シリカゾルに、H22、HEDP(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸)および超純水を加えて、シリカ9重量%、H220.5重量%、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸0.5重量%の研磨用スラリーを調製し、さらに必要に応じてHNO3を加えて、pH2の研磨用スラリーを調製した。
【0067】
被研磨基板
被研磨基板として、アルミニウムディスク用基板を使用した。このアルミニウムディスク用基板は、アルミニウム基板にNi−Pを10μmの厚さに無電解メッキ(Ni88%とP12%の組成の硬質Ni−Pメッキ層)をした基板(95mmΦ/25mmΦ−1.27mmt)を使用した。なお、この基板は一次研磨済みで、表面粗さ(Ra)は0.17nmであった。
【0068】
研磨試験
上記被研磨基板を、研磨装置(ナノファクター(株)製:NF300)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「アポロン」)を使用し、基板荷重0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20g/分の速度で5分間供給して研磨を行った。
研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。
【0069】
スクラッチの発生状況については、ハードディスク用ガラス基板を上記と同様に前期研磨処理および後期研磨処理を行った後、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Micro−MAX)を使用し、Zoom1にて全面観察し、65.97cm2に相当する研磨処理されたガラス基板表面のスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計し、比較例1の場合の線状痕個数に対する比を算定し、スクラッチ比として表1に記した。
【0070】
[8]粒子径変動係数の算定
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍ないし50万倍で写真撮影して得られる写真投影図における球状シリカ微粒子の最長径を2等分する位置を該球状シリカ微粒子の中心とし、該中心から最長径の一方の端を角度0度とし、そこから10度ずつ0度から180度までの半径を測定する。そして、その値から半径の平均値および標準偏差を算定する。
【0071】
更に該標準偏差を該平均値で除すことにより粒子径の変動係数(相対標準偏差)を求めた。
この測定および算定を任意の50個の粒子について行い、粒子径の変動係数の平均値をとり、その値を粒子径の変動係数(CV値)とした。なお、粒子径の変動係数(CV値)については、粒子径の変動係数(CV値)[%]=(粒子径の標準偏差/粒子径の平均値)×100として表示した。
【実施例1】
【0072】
シード液
シリカゾル(日揮触媒化成株式会社製:カタロイドSI−30、ナトリウム滴定法により測定された平均粒子径11.1nm、シリカ濃度30.49質量%、SiO2/M2O=78.7)260.7gに水を加えて、2650g(シリカ濃度3質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液25.6gを添加した。ついで、シリカゾルの温度を80℃に昇温し、30分間80℃に維持して濃度3質量%のシリカゾルからなるシード液2675.6gを調製した。
【0073】
フィード液
水硝子(AGCエスアイテック株式会社製:JIS3号水硝子、シリカ濃度24.3質量%)854gを水2112gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液2966gを調製した。次にシリカ濃度4.7質量%の珪酸液1097gを加えて、シリカ濃度6.37質量%のフィード液4063gを調製した。
【0074】
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸289.4gを水4062gで希釈して、濃度1.7質量%の硫酸水溶液4351.4gを調製した。
【0075】
核粒子の成長
80℃に維持した前記シード液全量に対して、前記フィード液全量および前記硫酸水溶液全量をそれぞれ15℃にて4時間かけて全量添加することにより、粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸水溶液の当量比(EA/ES)は1.49であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は324質量部であった。
ついで、80℃で1時間熟成を行った後、限外濾過膜により、シリカ濃度12質量%となるように濃縮を行った。次にpHが9.7になるまで水洗浄を行い、ついで、ロータリーエバポレータで濃縮してシリカ濃度30.5%のシリカゾルを得た。
【0076】
このシリカゾルについて形状等を測定した結果を表1に示す。測定結果から、このシリカゾルは金平糖状シリカゾルであることが確認された。
このシリカゾルを透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「H−800」)で撮影した写真(倍率25万倍)を図1に示す。
【実施例2】
【0077】
シード液
実施例1で使用した水硝子と同じ水硝子801.2gを水13.13Kgで希釈して10分間の混合攪拌を行った後、シリカ濃度4.7質量%の珪酸液685.4gを加え、83℃まで昇温し、30分間83℃に維持した。更に、シリカ濃度4.7質量%の珪酸液33.75Kgを3時間かけて全量添加することにより、平均粒子径12nmのシリカ微粒子が水に分散したシリカゾル(シリカ濃度3.7質量%、SiO2/M2O=29.2)からなるシード液48.37kgを調製した。このシード液のpHは10.9だった。
【0078】
フィード液
実施例1で使用した水硝子と同じ水硝子14.0Kgを水71.15Kgで希釈して、シリカ濃度4.0質量%の珪酸アルカリ水溶液85.15Kgを調製した。次にシリカ濃度4.7質量%の珪酸液18.01Kgを加えて、シリカ濃度4.12質量%のフィード液103.16kgを調製した。
【0079】
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸4.73Kgを水24.86Kgで希釈して濃度4.0質量%の硫酸水溶液29.59Kgを調製した。
【0080】
核粒子の成長
83℃に維持した前記シード液全量に対して、前記フィード液全量と前記硫酸水溶液全量をそれぞれ15℃にて8時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸の当量比EA/ESは1.50であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は235質量部であった。
ついで83℃で1時間熟成を行った後、限外濾過膜によりSiO2濃度12質量%となるように濃縮を行った。次にpHが9.6になるまで水洗浄を行い、次にロータリーエパポレータで濃縮してSiO2濃度30.5%のシリカゾルを得た。
このシリカゾルについて形状等を測定した結果、このシリカゾルは金平糖状シリカゾルであることが確認された。
【実施例3】
【0081】
シード液
水硝子(AGCエスアイテック株式会社製:JIS3号水硝子、シリカ濃度24.4質量%)61.48gを水1009.95gで希釈して10分間の混合攪拌を行った後、SiO2濃度4.9%質量の珪酸液53.91gを加え、83℃まで昇温し30分間83℃に維持した。更に、SiO2濃度4.9質量%の珪酸液2527gを3時間かけて全量添加することで、平均粒子径12nmのシリカ微粒子が水に分散したシリカゾル(シリカ濃度3.9質量%、SiO2/M2O=29.6)からなるシード液3652.3gを調製した。このシード液のpHは11.1だった。
【0082】
フィード液
前記シード液の調製に使用した珪酸液と同様な、シリカ濃度4.9質量%の珪酸液6736.2gを調製した。
【0083】
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸水溶液7.74gを水959.6gで希釈し、濃度0.2質量%の硫酸水溶液967.3gを調製した。
【0084】
核粒子の成長
実施例2と同様にして粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸の当量比EA/ESは4.11であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は234質量部であった。
実施例2と同様にしてシリカ濃度30.5%のシリカゾルを得、このシリカゾルについて形状等を測定した結果、このシリカゾルは金平糖状シリカゾルであることが確認された。
【実施例4】
【0085】
シード液
実施例1で使用した水硝子と同じ水硝子695.5gを水10.59Kgで希釈して10分間の混合攪拌を行なった後、SiO2濃度4.7%質量の珪酸液194.2gを加え、83℃まで昇温し30分間83℃に維持した。更に、SiO2濃度4.7質量%の珪酸液4163gを2時間かけて全量添加することで、粒子径12nmのシリカ微粒子が水に分散したシリカゾル(シリカ濃度2.4質量%、SiO2/M2O=6.95)からなるシード液15642.7gを調製した。このシード液のpHは11.1だった。
【0086】
フィード液
前記シード液の調製に使用した珪酸液と同様な、シリカ濃度4.7質量%の珪酸液20810gを調製した。
【0087】
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸水溶液45.28gを水5613gで希釈し、濃度0.2質量%の硫酸水溶液5658gを調製した。
【0088】
核粒子の成長
フィード液と硫酸水溶液の添加時間を10時間とした以外は実施例2と同様にして粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸の当量比EA/ESは7.8であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は261質量部であった。
実施例2と同様にしてシリカ濃度30.5%のシリカゾルを得、このシリカゾルについて形状等を測定した結果、このシリカゾルは金平糖状シリカゾルであることが確認された。
【実施例5】
【0089】
シード液
シリカゾル(日揮触媒化成株式会社製:カタロイドSI−45P、窒素吸着法により測定された平均粒子径45.0nm、シリカ濃度40.0質量%、SiO2/M2O=103)150.8gに水を加えて、2010.8g(シリカ濃度3質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液45.0gを添加した。ついで、シリカゾルの温度を87℃に昇温し、30分間87℃に維持して濃度2.9質量%のシリカゾルからなるシード液2055.8gを調製した。
【0090】
フィード液
実施例1で使用した水硝子と同じ水硝子917gを水2268gで希釈して、シリカ濃度7質量%の珪酸アルカリ水溶液3185gを調製した。次にシリカ濃度4.7質量%の珪酸液1186gを加えてシリカ濃度6.4質量%のフィード液4371gを調製した。
【0091】
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸311gを水4362gで希釈して、濃度1.7質量%の硫酸水溶液4673gを調製した。
【0092】
核粒子の成長
操作温度を87℃とした以外は実施例1と同様にして粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸の当量比EA/ESは1.5であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は465質量部であった。
実施例1と同様にしてシリカ濃度30.5%のシリカゾルを得、このシリカゾルについて形状等を測定した結果、このシリカゾルは金平糖状シリカゾルであることが確認された。
【比較例1】
【0093】
シリカゾル(日揮触媒化成株式会社製:カタロイドSI−40、ナトリウム滴定法により測定される平均粒子径18nm、シリカ濃度40.0質量%)150.8gに水を加え、シリカ濃度30.5質量%のシリカゾルとした。このシリカゾルについて形状等を測定した結果を表1に示す。
【比較例2】
【0094】
シリカゾル(日揮触媒化成株式会社製:カタロイドSI−80、窒素吸着法により測定される平均粒子径80nm、シリカ濃度40.0質量%)150.8gに水を加え、シリカ濃度30.5質量%のシリカゾルとした。このシリカゾルについて形状等を測定した結果を表1に示す。
【比較例3】
【0095】
シード液
実施例1と同様にしてシード液2675.6gを調製した。
フィード液
実施例1と同様にしてフィード液4063gを調製した。
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸1232gを水4928gで希釈して、濃度5.0質量%の硫酸水溶液6160gを調製した。
【0096】
核粒子の成長
80℃に維持した前記シード液全量に対して、前記フィード液全量および前記硫酸水溶液全量をそれぞれ15℃にて4時間かけて全量添加することにより、粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸水溶液の当量比(EA/ES)は0.35であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は324質量部であった。
ついで、80℃で1時間熟成を行ったが、粒子が凝集し良好な分散状態のシリカゾルを得ることができなかった。
【比較例4】
【0097】
シード液
実施例1と同様にしてシード液2675.6gを調製した。
フィード液
実施例1と同様にしてフィード液4063gを調製した。
硫酸水溶液
濃度25質量%の硫酸43.1gを水592.2gで希釈して、濃度1.7質量%の硫酸水溶液635.3gを調製した。
【0098】
核粒子の成長
実施例1と同様にして粒子成長を行った。ここで、フィード液のアルカリと硫酸の当量比EA/ESは10.0であり、シード液に含まれるシリカ100質量部に対するフィード液に含まれるシリカ量は324質量部であった。
実施例1と同様にしてシリカ濃度30.5%のシリカゾルを得、このシリカゾルについて形状等を測定した結果、このシリカゾルは本発明に規定する金平糖状シリカゾルに該当しないものであることが分かった。
【比較例5】
【0099】
核粒子分散液の調製
シリカゾル(日揮触媒化成株式会社製:カタロイドSI-40、画像解析法により測定された平均粒子径21.2nm、SiO2 濃度40.7質量%)102.4gに水を加えて、4170g(SiO2 濃度1質量%)とし、更にシリカゾルのpHが11となるように濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ついで、シリカゾルの温度を80℃に昇温し、30分間80℃に維持して核粒子分散液とした。
【0100】
核粒子の成長
水硝子(AGCエスアイテック株式会社製:JIS3号水硝子、SiO2 濃度24質量%)575gを水2185gで希釈して、珪酸アルカリ水溶液2760gを調製した。また、電解質としての硫酸アンモニウム(三菱化学株式会社製)98.0gに水2352gを加えて、電解質水溶液2450gを調製した。
そして、温度を80℃に維持した前記核粒子分散液全量に対して、前記珪酸アルカリ水溶液および前記電解質水溶液を、それぞれ15℃にて1時間かけて全量添加することにより粒子成長を行った。
【0101】
ここで、珪酸アルカリ水溶液のアルカリと電解質の当量比EA/EEは1.0であった。
ついで、80℃で1時間熟成を行った後、粒子成長した核粒子分散液のpHが9.1になるまで限外濾過膜により洗浄を行った。ついで、濃縮してSiO2 濃度20質量%の金平糖状シリカゾルを得た。この金平糖状シリカゾルについて分析を行なった結果を表1に示す。
【0102】
排水からのアンモニア除去
核粒子の成長工程で生じた排水(限外濾過による洗浄に使用した液)については、アンモニア(NH3)濃度を測定したところ2500mg/lであった。そこで、この排水について、特開2000−301137号の実施例1における排水からのアンモニア除去方法に準じて、アンモニア除去処理を実施した。この処理後のアンモニア濃度は10mg/lであった。
なお、実施例1〜5の製造工程により生じた排水については、原料にアンモニアを含まないため、アンモニア除去の必要は無かった。
【0103】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明方法によって得られる金平糖状シリカゾルは、研磨材として高い実用性を有するものである。また、優れた充填性、吸油性、電気特性、光学特性あるいは物理特性を有するが故に、塗料添加剤、樹脂添加剤、インク受容層の成分、化粧料の成分などへの適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】このシリカゾルを透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「H−800」)で撮影した写真(倍率25万倍)を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカゾルを含むシード液に、強酸の存在下、下記1)および2)の条件で珪酸液を含むフィード液を添加してシリカ粒子を成長させることを特徴とする金平糖状シリカゾルの製造方法。
1)シード液に含まれるシリカ100質量部に対し、フィード液に含まれるシリカが50〜2500質量部
2)フィード液に含まれるアルカリの当量数(EA)と強酸の当量数(ES)の比(EA/ES)が0.4〜8の範囲
【請求項2】
前記フィード液が[1]珪酸液または[2]珪酸液と珪酸アルカリ水溶液の混合物であることを特徴とする請求項1記載の金平糖状シリカゾルの製造方法。
【請求項3】
前記シード液のSiO2/M2O(Mはアルカリ金属、比率はモル比)が3.0〜300の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の金平糖状シリカゾルの製造方法。
【請求項4】
前記シード液の温度を40〜150℃の範囲に維持しながら、強酸水溶液および前記フィード液を15分〜20時間かけてそれぞれ添加することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の金平糖状シリカゾルの製造方法。
【請求項5】
前記フィード液の添加後、40〜150℃の温度範囲で熟成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金平糖状シリカゾルの製造方法。
【請求項6】
前記強酸が、硫酸、硝酸または塩酸から選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金平糖状シリカゾルの製造方法。
【請求項7】
非多孔質球状微粒子の表面に複数の疣状突起を有する金平糖状シリカ微粒子であって、ナトリウム滴定法により測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.7〜10の範囲にあり、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が10〜150nmの範囲にあり、粒子径変動係数が3.0〜20%の範囲にある金平糖状シリカ微粒子が溶媒に分散してなる金平糖状シリカゾル。

【図1】
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【公開番号】特開2010−24119(P2010−24119A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190634(P2008−190634)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】