説明

金銭処理システム

【課題】煩雑な作業を要することなく、POSレジスタ装置が停止した後の入金処理を実施すること。
【解決手段】POSレジスタ装置は、接続確立処理において金銭処理装置が入金保留状態にあるか否かを判断し、入金保留状態にあった場合、金銭処理装置に対して入金返却指令を送信し、金銭処理装置は、POSレジスタ装置から入金返却指令が与えられた場合、保留庫に格納してある金銭を外部に払い出して入金保留状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続確立処理を行った後に所定の入金処理に関わる情報の送受信を行う金銭処理装置とPOS(Point Of Sales)レジスタ装置とを備えた金銭処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今のスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗には、金銭処理システムが導入されている。金銭処理システムは、上位装置となるPOSレジスタ装置と、自動釣銭機として用いられる金銭処理装置とを備え、互いの間において以下に記載するような金銭の入金処理を行うようにしている。
【0003】
例えば、POSレジスタ装置においては、商品金額の入力が終了すると、その合計金額が演算され、該演算された合計金額に対応する入金許可指令が金銭処理装置に送信されて応答待機状態となる。入金許可指令が与えられた金銭処理装置では、硬貨もしくは紙幣等の金銭が投入された場合にこれが鑑別され、正規の金銭が保留庫に一旦格納される。さらに金銭処理装置では、保留庫に格納した金銭の額に応じた入金額情報がPOSレジスタ装置に返信され、入金保留状態となる。入金額情報が与えられたPOSレジスタ装置では、金銭処理装置に対して入金終了指令が送信される。POSレジスタ装置から入金終了指令が与えられた金銭処理装置では、入金保留状態が解除され、保留庫に格納した金銭が収納庫に収納されることになる。
【0004】
一方、POSレジスタ装置では、商品の合計金額と金銭処理装置から与えられた入金額情報に対応した金額との差額が演算され、その演算結果に応じて金銭処理装置に出金指令が送信される。出金指令が与えられた金銭処理装置では、出金指令に応じた金銭が収納庫から釣銭として払い出す出金処理が実施される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この種の金銭処理システムでは、POSレジスタ装置及び金銭処理装置のそれぞれにおいて、起動時に接続確立を行うための処理が実施されることになり、その後に入出金処理に関わる情報の送受信を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−66185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような金銭処理システムでは、POSレジスタ装置から金銭処理装置に対して入金終了指令が与えられるまでの間、投入した金銭が保留庫に格納された状態となるため、例えば入金の取り消し操作が行われた場合、金銭の返却作業を容易に行うことが可能となる。すなわち、入金の取り消し操作が行われた場合には、保留庫に格納された金銭をそのまま外部に払い出せば、入金がなかった状態に復帰することができる。
【0008】
しかしながら、金銭処理装置が入金保留状態となったまま、停電等の障害発生によってPOSレジスタ装置が停止する事態が発生すると、再び接続確立処理を実施したとしても、そのままでは金銭処理システムにおいて入金処理を実施することができない状態となる。すなわち、停止状態にあったPOSレジスタ装置では、リセットされて再起動するため、通常の起動時と同様の状態となるが、金銭処理装置にあっては、保留庫に金銭が格納された入金保留状態のままにあるため、POSレジスタ装置との間において入金処理を実施することが困難となる。
【0009】
このため、再び金銭処理装置を使って入金処理を実施するには、例えば金銭処理装置の電源を一旦落とす等して再起動させ、入金保留状態をリセットするとともに、保留庫に格納されている金銭を外部に払い出す操作が必要となり、操作が煩雑化するのは否めない。特に、多数のPOSレジスタ装置及び金銭処理装置を取り扱う店舗においては、すべてに対して上述の操作が必要となる場合があり、作業が一層煩雑化することとなる。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、金銭処理装置を再起動させる等、煩雑な作業を要することなく、POSレジスタ装置が停止した後の入金処理を実施することのできる金銭処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る金銭処理システムは、接続確立処理を行った後に所定の入金処理に関わる情報の送受信を行う金銭処理装置とPOSレジスタ装置とを備え、前記金銭処理装置は、POSレジスタ装置から入金許可指令が与えられた後に金銭が投入された場合にこれを鑑別して正規の金銭を保留庫に一旦格納し、かつ前記保留庫に格納した金銭の額に応じた入金額情報を前記POSレジスタ装置に返信して入金保留状態となり、その後、前記POSレジスタ装置から入金終了指令が与えられた場合に入金保留状態を解除して前記保留庫に格納した金銭を収納庫に収納する入金処理を実施し、前記POSレジスタ装置は、入金指示が操作入力された場合に金銭処理装置に入金許可指令を与えて応答待機状態となり、その後、前記金銭処理装置から入金額情報が与えられた場合に前記金銭処理装置に対して入金終了指令を送信するようにした金銭処理システムにおいて、POSレジスタ装置は、接続確立処理において金銭処理装置が入金保留状態にあるか否かを判断し、入金保留状態にあった場合、前記金銭処理装置に対して入金返却指令を送信し、金銭処理装置は、POSレジスタ装置から入金返却指令が与えられた場合、保留庫に格納してある金銭を外部に払い出して入金保留状態を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、POSレジスタ装置が停止状態から再起動して接続確立処理を行った際に、金銭処理装置が入金保留状態にあった場合、POSレジスタ装置から金銭処理装置に入金返却指令が与えられ、金銭処理装置の保留庫に格納してある金銭が外部に払い出されて入金保留状態が解除されることになる。従って、金銭処理装置を再起動させる等、煩雑な作業を要することなく、POSレジスタ装置が再起動した後に入金処理を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である金銭処理システムに適用されるPOSレジスタ装置及び金銭処理装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した金銭処理装置の内部構成を概念的に示す平面図である。
【図3】図3は、図1に示した金銭処理装置の内部構成を概念的に示す側面図である。
【図4】図4は、図1に示したPOSレジスタ装置及び金銭処理装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】図5は、図4に示したPOSレジスタ装置のレジスタ制御手段が繰り返し実施するメイン処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図4に示したPOSレジスタ装置のレジスタ制御手段と自動釣銭機の制御手段との間で実施される釣銭モード処理の詳細内容を示すフローチャートである。
【図7】図7は、図4に示したPOSレジスタ装置のレジスタ制御手段が実施する接続確立処理の詳細内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る金銭処理システムの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態である金銭処理システムを示したものである。ここで例示する金銭処理システムは、POSレジスタ装置10と、自動釣銭機20として用いられる金銭処理装置とを備えて構成し、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗において以下に記載するような金銭の入金処理を行うものである。
【0016】
(POSレジスタ装置の外観構造)
POSレジスタ装置10は、図1に示すように、装置本体11の上面に入力手段12及び表示手段13を備えている。入力手段12は、商品情報の入力や自動釣銭機20に対する指令の入力を行うもので、テンキーや各種機能キーを備えて構成してある。表示手段13は、操作者に対して各種情報を表示するためのもので、比較的大型の液晶表示器によって構成してある。
【0017】
(自動釣銭機の構造)
自動釣銭機20は、図1〜図3に示すように、直方体状を成す装置本体21の前端部に硬貨投入口22、硬貨出金口23、紙幣投入口24、紙幣出金口25を備えている。
【0018】
硬貨投入口22は、投入された硬貨を装置本体21の内部に受け入れるための開口であり、装置本体21の上面に形成してある。硬貨投入口22に投入された硬貨は、図示せぬ投入検出センサによって検出された後、図2に示すように、硬貨収納部26の硬貨搬送機構27によって搬送される。搬送された硬貨は、硬貨鑑別センサ28によって鑑別された後、一時保留庫29に一旦収容され、さらにその後に金種に応じた硬貨収納庫30に収納されることになる(図2中の実線矢印A)。本実施の形態では、装置本体21の内部に1円硬貨収納庫30a、50円硬貨収納庫30b、5円硬貨収納庫30c、100円硬貨収納庫30d、10円硬貨収納庫30e、500円硬貨収納庫30fが設けてあり、硬貨保留庫29を経由した後の硬貨を金種ごとに個別に収納するようにしている。硬貨保留庫29に関しては、装置本体21の内部に唯一設けてあり、すべての金種の硬貨で共用するようにしている。硬貨出金口23は、それぞれの硬貨収納庫30から搬出された硬貨を装置本体21の外部に払い出すための開口であり、装置本体21の前面に形成してある。硬貨鑑別センサ28において正規の硬貨でないと判断されたリジェクト硬貨は、図中の破線矢印Bで示すように、硬貨出金口23を介して受け皿31Aに排出されることになる。また、硬貨が一時保留庫29に保留されている状態において後述する返却終了指令が与えられた場合には、図中の二点鎖線矢印Cで示すように、一時保留庫29から硬貨返却口31Bに払い出されることになる。
【0019】
紙幣投入口24は、投入された紙幣を装置本体21の内部に受け入れるための開口であり、装置本体21の前面上部に設けてある。紙幣投入口24に投入された紙幣は、図示せぬ投入検出センサによって検出された後、図3に示すように、紙幣収納部31の紙幣搬送機構32によって搬送される。搬送された紙幣は、紙幣鑑別センサ33によって鑑別された後、紙幣保留庫34を経由して金種に応じた紙幣収納庫35に収納されることになる。本実施の形態では、装置本体21の内部に予備紙幣収納庫35a、1000円紙幣収納庫35b、混合紙幣収納庫35cが設けてあり、投入された紙幣を1000円札、5000円札及びその他の紙幣の3種類に分別して収納するようにしている。紙幣保留庫34に関しては、それぞれの紙幣収納庫35の内部において上流側となる部分に分割構成してある。紙幣出金口25は、紙幣収納庫35から搬出された紙幣を装置本体21の外部に払い出すための開口であり、装置本体21の前面下部に設けてある。
【0020】
また、装置本体21の前方部には、図1に示すように、表示手段36及び入力手段37が設けてある。表示手段36は、操作者に対して各種表示を行うためのもので、POSレジスタ装置10の表示手段13に比較して小型の液晶表示器によって構成してある。入力手段37は、操作者が各種指令を入力するためのもので、例えば複数の押ボタンスイッチによって構成してある。
【0021】
(POSレジスタ装置の制御系)
図4は、上述したPOSレジスタ装置10及び自動釣銭機20の制御系を示すブロック図である。POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40は、起動スイッチ50や入力手段12の操作により指令が与えられた場合、あるいは通信インターフェース51を通じて自動釣銭機20から各種情報が与えられた場合、メモリ52に格納したプログラムや初期データに基づいて表示手段13の表示制御を行い、かつ通信インターフェース51を通じて自動釣銭機20に各種指令を与えることにより、自動釣銭機20の動作制御を行うものである。このレジスタ制御手段40は、通信制御部41、入力制御部42、出力制御部43、演算部44、入出金制御部45、保留制御部46を有している。
【0022】
通信制御部41は、通信インターフェース51を介して接続された自動釣銭機20の通信制御部53との間において接続確立処理を行うことにより、自動釣銭機20との間において入出金処理に関わる情報の送受信制御を行うものである。入力制御部42は、入力手段12が操作された場合にこれに対応する指令を各部に与えるものである。出力制御部43は、表示指令を与えることによって表示手段13に所望の表示を行う等、表示手段13に対する表示制御を行うものである。演算部44は、入力手段12を通じて商品の金額情報が与えられた場合にこれを順次加算し、合計金額を算出する処理を行うものである。
【0023】
入出金制御部45は、自動釣銭機20との間において入出金処理に関する情報を送受信することにより、自動釣銭機20に入金処理及び出金処理を実施させるものである。より詳細に説明すると、入出金制御部45は、演算部44から合計金額情報が与えられると、この合計金額情報に応じた入金許可指令を自動釣銭機20に対して送信する処理を行う。その後、演算部44の算出した合計金額以上の入金額情報が自動釣銭機20から与えられると、これに対応して自動釣銭機20に入金終了指令を与え、さらに釣銭の出金が必要な場合、自動釣銭機20に対して出金指令を送信する処理を行う。
【0024】
保留制御部46は、通信制御部41が自動釣銭機20との間において接続確立処理を行う場合、自動釣銭機20が入金保留状態にあるか否かを判断し、入金保留状態にあった場合、自動釣銭機20に対して返却終了指令を与えるものである。
【0025】
(自動釣銭機の制御系)
自動釣銭機20の制御手段は、入力手段37を通じて指令が与えられた場合、あるいは硬貨鑑別センサ28、紙幣鑑別センサ33から検出信号が与えられた場合、さらには上位装置であるPOSレジスタ装置10から各種指令が与えられた場合、メモリ54に格納したプログラムや初期データに基づいて表示手段36の表示制御、硬貨搬送機構27の駆動制御、紙幣搬送機構32の駆動制御を行うものである。図4からも明らかなように、自動釣銭機20の制御手段60は、通信制御部61、入力制御部62、出力制御部63、搬送制御部64、入出金処理部65、返却終了処理部66を有している。
【0026】
通信制御部61は、通信インターフェース53を介して接続されたPOSレジスタ装置10の通信制御部41からの要求に従って接続確立処理を行うことにより、POSレジスタ装置10との間において入出金処理に関わる情報の送受信制御を行うものである。入力制御部62は、入力手段37が操作された場合にこれに対応する指令を各部に与えるものである。出力制御部63は、表示指令を与えることによって表示手段36に所望の表示を行う等、表示手段36に対する表示制御を行うものである。搬送制御部64は、搬送指令が与えられた場合に、この搬送指令に従って硬貨搬送機構27、紙幣搬送機構32の駆動を制御するものである。
【0027】
入出金処理部65は、POSレジスタ装置10から入力許可指令が与えられた後に貨幣が投入された場合に、入金許可指令に従って貨幣の入金処理を行い、かつPOSレジスタ装置10から出金指令が与えられた場合に、出金指令に従って貨幣の出金処理を行うものである。
【0028】
返却終了処理部66は、POSレジスタ装置10から入金返却指令が与えられた場合、硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に格納してある金銭を硬貨返却口31Bや紙幣出金口25から装置本体21の外部に払い出す処理を行うものである。
【0029】
(処理の内容)
図5は、POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40が繰り返し実施するメイン処理の内容を示したフローチャートであり、図6は、POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40と自動釣銭機20の制御手段60との間で実施される釣銭モード処理の詳細内容を示すフローチャートである。以下、これらのフローチャートを参照しながら、POSレジスタ装置10及び自動釣銭機20の動作について説明する。
【0030】
図5に示すメイン処理では、POSレジスタ装置10において起動スイッチ50がONされると、レジスタ制御手段40の通信制御部41により、自動釣銭機20の通信制御部61との間において接続確立処理が行われる(ステップS10)。自動釣銭機20との間において接続が確立すると、入出金処理に関する情報の送受信が可能となり、自動釣銭機20との間で釣銭モード処理(入金処理及び出金処理)が繰り返し行われることになる(ステップS100)。
【0031】
釣銭モード処理においては、まず、図6の(a)に示すように、POSレジスタ装置10が入力手段12からの入力待機状態にあり(ステップS101)、購入商品の金額情報が入力されると(ステップS101:YES)、演算部44によって入力金額を順次加算する処理が行われる(ステップS102)。すべての金額情報の入力が終了し、合計金額が演算された後に入力手段12を通じて入力終了指令が入力されると(ステップS103:YES)、レジスタ制御手段40は、通信制御部41を通じて自動釣銭機20に合計金額に対応した入金許可指令を送信し(ステップS104、ステップS105)、その後、自動釣銭機20に入金額要求を送信し(ステップS106)、応答待ちとなる(ステップS107)。
【0032】
一方、図6の(b)に示すように、起動スイッチ55がONされた自動釣銭機20では、通信制御部61を通じてPOSレジスタ装置10からの入金許可指令を監視した状態にある(ステップS201)。
【0033】
この状態において、POSレジスタ装置10から入金許可指令が与えられると(ステップS201:YES)、制御手段60は、入出金処理部65を通じて自動釣銭機20を入金許可状態に設定し(ステップS202)、その後、図示せぬ投入検出センサを通じて硬貨投入口22及び紙幣投入口24に対する入金の監視を行う(ステップS203)。入金を検出しなかった場合(ステップS203:NO)、制御手段60の入出金処理部65は、後述するステップS204〜ステップS207の処理を経ることなく手順をステップS208に進める。
【0034】
これに対して硬貨投入口22もしくは紙幣投入口24からの入金を確認した場合(ステップS203:YES)、制御手段60は、硬貨鑑別センサ28もしくは紙幣鑑別センサ33を介して貨幣の鑑別を行い(ステップS204)、正規の貨幣を一旦硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に格納する処理を行う(ステップS205)。貨幣を硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に格納した制御手段60は、POSレジスタ装置10から入金額の要求があるか否かを判断し(ステップS206)、入金額要求を受信した場合(ステップS206:YES)、入金額に対応した入金額情報をPOSレジスタ装置10に送信する(ステップS207)。入金額要求がない場合(ステップS206:NO)、制御手段60は、ステップS207を実施することなく手順を進める。その後、制御手段60は、POSレジスタ装置10から入金終了指令があったか否かを判断する(ステップS208)。入金終了指令がなかった場合(ステップS208:NO)、自動釣銭機20の制御手段60は、手順をステップS203にリターンさせて上述したステップS203〜ステップS208の処理を繰り返し実行する。
【0035】
図6の(a)のステップS107において自動釣銭機20から入金額情報を受信したPOSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40は(ステップS107:YES)、入金終了操作があったか否かを判断し(ステップS108)、入金終了操作があった場合(ステップS108:YES)、入金額情報によって特定される入金額が購入商品の合計金額以上である場合(ステップS109:YES)、自動釣銭機20に対して入金終了指令を送信し(ステップS110)、その後、自動釣銭機20からの応答待ちとなる(ステップS111)。
【0036】
ここで、POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40から送信される入金終了指令には、釣銭あり終了指令、釣銭なし終了指令及び返却終了指令の3種類がある。すなわち、ステップS109において入金額が合計金額よりも大きい場合、レジスタ制御手段40は、ステップS110において自動釣銭機20に対し釣銭あり終了指令を送信する。これに対して入金額と合計金額とが一致した場合には、ステップS110において自動釣銭機20に対し釣銭なし終了指令を送信する。一方、POSレジスタ装置10においてキャンセル操作が入力された場合、レジスタ制御手段40は、ステップS110において自動釣銭機20に対し返却終了指令を送信する。
【0037】
図6の(b)のステップS208において入金終了指令が与えられた自動釣銭機20の制御手段60は(ステップS208:YES)、自動釣銭機20を入金禁止状態に設定し(ステップS209)、その後、ステップS208で受信した入金終了指令が上述した3種類のいずれであったのかを判断する(ステップS210→ステップS211→ステップS212)。
【0038】
入金終了指令が釣銭なし終了指令であった場合(ステップS210:YES)、制御手段60は、搬送制御部64を通じて硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に格納した貨幣を金種に対応する硬貨収納庫30や紙幣収納庫35に搬送する処理を行い(ステップS213)、POSレジスタ装置10に対して入金終了指令応答を送信した後(ステップS214)、POSレジスタ装置10から出金指令があるか否かを監視する(ステップS215)。
【0039】
これに対して入金終了指令が釣銭あり終了指令であった場合(ステップS210:NO→ステップS211:YES)、制御手段60は、ステップS213の処理を実施することなく手順をステップS214に進め、POSレジスタ装置10に対して入金終了応答を送信した後(ステップS214)、POSレジスタ装置10から出金指令があるか否かを監視する(ステップS215)。
【0040】
一方、入金終了指令が返却終了指令であった場合(ステップS210:NO→ステップS211:NO)、制御手段60は、返却終了処理部66を通じて硬貨保留庫29や紙幣保留庫34の払出処理を実施する(ステップS212)。具体的には、自動釣銭機20の制御手段60により、返却終了処理部66を通じて硬貨搬送機構27もしくは紙幣搬送機構32が駆動し、硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に格納されていた貨幣が硬貨返却口31Bや紙幣出金口25から装置本体21の外部に払い出されることになる。これにより、POSレジスタ装置10からキャンセル操作が入力された場合には、入金した後であっても、入金された貨幣を返却することができるようになる。硬貨保留庫29や紙幣保留庫34の払出処理を実施した制御手段60は、ステップS213の処理を実施することなく手順をステップS214に進め、POSレジスタ装置10に対して入金終了応答を送信した後(ステップS214)、POSレジスタ装置10から出金指令があるか否かを監視する(ステップS215)。
【0041】
この間、図6の(a)のステップS111において自動釣銭機20から入金終了応答を受信したレジスタ制御手段40は(ステップS111:YES)、釣銭があるか否かを判断し(ステップS112)、釣銭がある場合(ステップS112:YES)、自動釣銭機20に出金指令を送信し(ステップS113)、今回の釣銭モード処理を終了する。尚、釣銭がない場合、レジスタ制御手段40は、ステップS113の処理を実施することなく、今回の釣銭モード処理を終了する(ステップS112:NO)。
【0042】
図6の(b)のステップS215においてPOSレジスタ装置10から出金指令が与えられた場合(ステップS215:YES)、自動釣銭機20の制御手段60は、搬送制御部64を通じて硬貨収納庫30や紙幣収納庫35に収納された貨幣を釣銭として硬貨出金口23もしくは紙幣出金口25から払い出す処理を実施し(ステップS216)、その後、ステップS208で受信した入金終了指令が釣銭あり終了であった場合(ステップS217:YES)、搬送制御部64を通じて硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に格納した貨幣を金種に対応する硬貨収納庫30や紙幣収納庫35に搬送する処理を行い(ステップS218)、今回の釣銭モード処理を終了する。尚、POSレジスタ装置10から出金指令が与えられなかった場合(ステップS215:NO)、自動釣銭機20の制御手段60は、ステップS216〜ステップS218の処理を経ることなく今回の釣銭モード処理を終了する。
【0043】
上述した状況は、例えば、POSレジスタ装置10において操作者(レジ担当者)による購入商品の登録が終了し、その合計金額以上の貨幣を商品購入者から預かった操作者がこれを自動釣銭機20に投入した場面であり、購入商品の登録が終了した後にPOSレジスタ装置10から自動釣銭機20の制御手段60に対して入金許可指令が与えられる。一方、貨幣が投入された自動釣銭機20からPOSレジスタ装置10に入金額情報が送信されると、POSレジスタ装置10において(釣銭)=(入金額)−(購入合計金額)が算出され、釣銭がある場合には釣銭に対応した出金指令が入金終了指令の後に自動釣銭機20に出力される。出金指令が与えられた自動釣銭機20では、釣銭に相当する貨幣が硬貨出金口23もしくは紙幣出金口25から払い出され、POSレジスタ装置10から出力されたレシートとともにこの釣銭が商品購入者に手渡される。
【0044】
以降、この金銭処理システムにおいては、上述した釣銭モード処理が繰り返し実施され、自動釣銭機20において貨幣が入出金されることになる。
【0045】
1日の営業が終了し、釣銭モード処理を終了すると、図5に示すように、POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40によって自動釣銭機20との間の接続開放処理が実施され(ステップS300)、POSレジスタ装置10及び自動釣銭機20の電源がOFFされる。
【0046】
ここで、上記のように接続開放処理が実施された後であれば、再び起動スイッチ50,55をONすることで、図5に示したメイン処理が実行され、POSレジスタ装置10及び自動釣銭機20の間で釣銭モード処理を実施することが可能となる。
【0047】
しかしながら、自動釣銭機20が図6の(b)のステップS208においてPOSレジスタ装置10からの入金終了指令の受信待ちの状態となったまま、停電等の障害発生によってPOSレジスタ装置10が停止する事態が発生すると、自動釣銭機20においては、硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に貨幣が格納されたままとなるため、再びPOSレジスタ装置10が起動したとしても入金処理を実施することが困難となる。
【0048】
このため、上述した金銭処理システムでは、POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40が実施する接続確立処理において自動釣銭機20の硬貨保留庫29や紙幣保留庫34に貨幣が格納されている場合、これを払い出すことによって入出金処理を実施できるようにしている。
【0049】
図7は、POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40が実施する接続確立処理の詳細内容を示すフローチャートである。図7に示す接続確立処理においてPOSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40は、自動釣銭機20のIDを読み出し(ステップS11)、このIDが該当する自動釣銭機20のものであるか否かを判断する(ステップS12)。尚、接続を取り違える等の操作ミスにより、読み出したIDが該当する自動釣銭機20のものでなかった場合(ステップS12:NO)、レジスタ制御手段40は、直ちに異常終了して今回の接続確立処理を中断する。
【0050】
一方、読み出したIDが該当する自動釣銭機20のものであった場合(ステップS12:YES)、レジスタ制御手段40は、次に、保留制御部46を通じて自動釣銭機20の状態を読み出し(ステップS13)、読み出した自動釣銭機20の状態が入金保留状態であるか否かを判断する(ステップS14)。
【0051】
POSレジスタ装置10のレジスタ制御手段40は、ステップS14において自動釣銭機20が入金保留状態にあると判断した場合(ステップS14:YES)、保留制御部46を通じ、自動釣銭機20に対して返却終了指令を送信する処理を行うようにしている(ステップS15)。
【0052】
POSレジスタ装置10から返却終了指令を受信した自動釣銭機20は、当該POSレジスタ装置10が停止している間、POSレジスタ装置10からの入金終了指令を監視した状態にある(ステップS208)。従って、POSレジスタ装置10から返却終了指令を受信した場合、自動釣銭機20においては、ステップS208において手順がステップS209以降に進み、ステップS208で受信した入金終了指令の種類に応じた処理が実施されることになる(ステップS210→ステップS211→ステップS212)。つまり、返却終了指令を受信した自動釣銭機20においては、制御手段60により、返却終了処理部66を通じて硬貨保留庫29や紙幣保留庫34の払出処理が行われる。この結果、自動釣銭機20が起動スイッチ53によって起動した場合と同等の状態となり、再起動させる等の煩雑な作業を要することなく、POSレジスタ装置10との間において釣銭モード処理を実施することができるようになる。
【0053】
尚、上述した実施の形態では、硬貨及び紙幣を取り扱う金銭処理装置を適用した金銭処理システムを例示しているが、硬貨及び紙幣のいずれか一方を取り扱うものにももちろん適用することは可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 POSレジスタ装置
20 自動釣銭機
27 硬貨搬送機構
29 硬貨保留庫
30 硬貨収納庫
32 紙幣搬送機構
34 紙幣保留庫
35 紙幣収納庫
40 レジスタ制御手段
43 出力制御部
44 演算部
45 入出金制御部
46 保留制御部
60 制御手段
65 入出金処理部
66 返却終了処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続確立処理を行った後に所定の入金処理に関わる情報の送受信を行う金銭処理装置とPOSレジスタ装置とを備え、
前記金銭処理装置は、POSレジスタ装置から入金許可指令が与えられた後に金銭が投入された場合にこれを鑑別して正規の金銭を保留庫に一旦格納し、かつ前記保留庫に格納した金銭の額に応じた入金額情報を前記POSレジスタ装置に返信して入金保留状態となり、その後、前記POSレジスタ装置から入金終了指令が与えられた場合に入金保留状態を解除して前記保留庫に格納した金銭を収納庫に収納する入金処理を実施し、
前記POSレジスタ装置は、入金指示が操作入力された場合に金銭処理装置に入金許可指令を与えて応答待機状態となり、その後、前記金銭処理装置から入金額情報が与えられた場合に前記金銭処理装置に対して入金終了指令を送信するようにした金銭処理システムにおいて、
POSレジスタ装置は、接続確立処理において金銭処理装置が入金保留状態にあるか否かを判断し、入金保留状態にあった場合、前記金銭処理装置に対して入金返却指令を送信し、
金銭処理装置は、POSレジスタ装置から入金返却指令が与えられた場合、保留庫に格納してある金銭を外部に払い出して入金保留状態を解除する
ことを特徴とする金銭処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−65416(P2011−65416A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215471(P2009−215471)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】