説明

針一体型測定装置

【課題】針突出のためのランセット押圧操作や穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を不要とし、使用者の負担を軽減して、簡単且つ快適な穿刺が可能な針一体型測定装置を提供する。
【解決手段】針一体型測定装置10は、穿刺具とバイオセンサチップを一体に備えたバイオセンサカートリッジAを装置本体Cに装填して穿刺および測定を行う。装置本体Cが、本体部5に対して移動可能に保持される可動ケース部1と、本体部5に対して移動可能に保持され、バイオセンサカートリッジAが装着されるコネクタ73と、可動ケース部1が本体部5に対して穿刺方向へ相対移動した際に、コネクタ73を本体部5に対して穿刺駆動する駆動機構30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に穿刺具を穿刺して試料を採取する針一体型測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バイオセンサチップとランセットを一体化したバイオセンサが開示されている(例えば特許文献1参照)。
図8(A)は特許文献1に記載されているバイオセンサの斜視図、図8(B)はバイオセンサの分解斜視図である。
【0003】
図8に示すように、ランセット一体型のバイオセンサ100は、チップ本体101、ランセット103及び保護カバー105を有してなる。チップ本体101は、カバー101aと基板101bとを開閉可能に有しており、カバー101aの内面には内部空間102が形成されている。内部空間102は、ランセット103を移動可能に収納できる形状をしている。
【0004】
ランセット103の先端に設けられている針104は、ランセット103の移動に伴ってチップ本体101の内部空間102の前端部に形成されている開口部102aから出没可能となっている。
内部空間102の形状は、突起103aが位置する端部において、その幅がランセット103より若干狭くなるよう湾曲しており、互いの押圧力や摩擦力によってランセット103がチップ本体101に係止されるようになっている。
【0005】
保護カバー105は針104を挿嵌する管部105aを有しており、針104の移動に伴って管部105aもチップ本体101の内部に収納可能となっている。
従って、使用前の状態では、保護カバー105を針104に被せて、針104を保護するとともに誤って使用者を傷付けないようにしている。尚、基板101bには、一対の電極端子106が設けられており、測定装置(図示省略)に電気的に接続できるようになっている。
【0006】
使用時には、保護カバー105を外して、ランセット103を押して針104をチップ本体101から突出させる。この状態で被検体を穿刺した後、針104をチップ本体101内部に収納し、チップ本体101の前端に設けられている開口部102aを被検体の穿刺口に近づけて、流出した血液を採取する。
【0007】
【特許文献1】WO02−056769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来のランセット一体型のバイオセンサ100は、穿刺に際し、保護カバー105を外し、チップ本体101から突出するランセット103の後部を押して針104をチップ本体101から突出させるため、穿刺のためのランセット押圧操作が必要であり、煩雑であるとともに、苦痛操作を自ら行うことによる使用者の負担が増大した。また、針一体型測定装置には、穿刺ボタンを備えることで、穿刺ボタンの押下操作で穿刺が行えるものもあるが、装置本体を把持して穿刺位置を定めながら、専用のボタンを押下操作しなければならないのは、やはり使用者にストレスを与えることとなった。
【0009】
従って、本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、針突出のためのランセット押圧操作や穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を不要とし、使用者の負担を軽減して、簡単且つ快適な穿刺が可能な針一体型測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、穿刺具とバイオセンサチップを一体に備えたバイオセンサカートリッジを装置本体に装填して穿刺および測定を行う針一体型測定装置であって、
前記装置本体が、
本体部に対して移動可能に保持される可動ケース部と、
前記本体部に対して移動可能に保持され、前記バイオセンサカートリッジが装着されるコネクタと、
前記可動ケース部が前記本体部に対して穿刺方向へ相対移動した際に、前記コネクタを前記本体部に対して穿刺駆動する駆動機構と、
を備えることを特徴とする針一体型測定装置により達成される。
【0011】
上記構成の針一体型測定装置によれば、使用者が可動ケース部を把持した状態で本体部の計測開口を被検体に押し付けると、該本体部は被検体からの反力を受ける。この状態で本体部を被検体に更に押し付けることで、可動ケース部は本体部に対して穿刺方向へ相対移動する。そこで、駆動機構は穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を行うことなく、バイオセンサカートリッジが装着されたコネクタを本体部に対して穿刺駆動することができる。
【0012】
尚、上記構成の針一体型測定装置において、
前記駆動機構が、
前記可動ケース部を穿刺方向と逆方向へ弾性付勢するリリースバネと、
前記コネクタを介して前記バイオセンサカートリッジを穿刺方向へ弾性付勢する穿刺バネと、
前記穿刺バネの弾性付勢力に抗して前記コネクタを穿刺可能状態に保持するロック機構と、
前記可動ケース部が前記リリースバネの弾性付勢力に抗して穿刺方向へ相対移動した際に、前記ロック機構の移動規制を解除するロック解除機構と、
を備えることが望ましい。
【0013】
このような構成の針一体型測定装置によれば、可動ケースはリリースバネによって穿刺方向と逆方向へ弾性付勢される。使用者はコネクタを介して穿刺バネを圧縮し、バイオセンサカートリッジが装着されたコネクタをロック機構により穿刺可能状態とする。
そして、使用者が可動ケース部を把持した状態で本体部の計測開口を被検体に押し付けると、該本体部は被検体からの反力を受ける。この状態で本体部を被検体に更に押し付けることで、可動ケース部はリリースバネの弾性付勢力に抗して本体部に対し穿刺方向へ相対移動する。そこで、ロック解除機構がロック機構の移動規制を解除するので、駆動機構は穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を行うことなく、バイオセンサカートリッジが装着されたコネクタを本体部に対して穿刺駆動することができる。
また、被検体に対する本体部の押し付けを解放すると、可動ケースはリリースバネによって穿刺方向と逆方向へ弾性付勢される。
【0014】
また、上記構成の針一体型測定装置において、前記ロック機構が、前記本体部の側壁に設けられた係止孔と、前記コネクタに設けられ、前記係止孔に係合することにより前記コネクタを穿刺可能状態に保持する弾性係止部とを備え、
前記ロック解除機構が、前記係止孔に設けられ、先端が前記側壁の外側へ突出する可撓性解除片と、前記可撓性解除片と摺接する前記可動ケース部の内壁面に形成され、前記可撓性解除片の先端を収容可能な受容凹部と、を備えることが望ましい。
【0015】
このような構成の針一体型測定装置によれば、使用者がコネクタを介して穿刺バネを圧縮し、バイオセンサカートリッジが装着されたコネクタを所定の穿刺可能位置に移動させると、本体部の側壁に設けられた係止孔にコネクタの弾性係止部が係合し、コネクタは穿刺可能状態に保持される。
そして、使用者が可動ケース部を把持した状態で本体部の計測開口を被検体に押し付けると、該本体部は被検体からの反力を受ける。この状態で本体部を被検体に更に押し付けることで、可動ケース部はリリースバネの弾性付勢力に抗して本体部に対し穿刺方向へ相対移動する。すると、可動ケース部の内壁面に形成された受容凹部に受容されていた可撓性解除片の先端が本体部の係止孔内に押し込まれ、本体部の係止孔に対するコネクタの弾性係止部の係合を解除する。そこで、本体部に対する係合が解除されたコネクタは、穿刺駆動される。
【0016】
また、上記構成の針一体型測定装置において、前記バイオセンサカートリッジを収容する収容ケースが前記本体部の計測開口に着脱可能に装着され、
前記収容ケースの先端部が被検体からの反力を受けることにより、前記可動ケース部が前記本体部に対して穿刺方向へ相対移動されることが望ましい。
【0017】
このような構成の針一体型測定装置によれば、内方にバイオセンサカートリッジを収容したままの収容ケースが計測開口に装着されるので、バイオセンサカートリッジを本体部に装着する際に直接触らずに装着でき、誤って穿刺具の針等に触れて使用者が傷付いたり、センサチップの端子に触れて導通不良を招いたりするのを防止できる。
そして、収容ケースのバイオセンサカートリッジに対する保持が解除された状態で、収容ケースの先端部が被検体に押し付けられると、該収容ケースは被検体からの反力を受ける。この状態で収容ケースを被検体に更に押し付けることで、可動ケース部は収容ケースに対し穿刺方向へ相対移動する。そこで、駆動機構は穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を行うことなく、バイオセンサカートリッジが装着されたコネクタを本体部に対して穿刺駆動することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る針一体型測定装置によれば、駆動機構は穿刺専用の操作を行うことなく、バイオセンサカートリッジが装着されたコネクタを本体部に対して穿刺駆動することができる。
従って、針突出のためのランセット押圧操作や穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を不要とし、使用者の負担を軽減して、簡単且つ快適な穿刺が可能な針一体型測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る針一体型測定装置の好適な実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
尚、今回開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、下記する意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る針一体型測定装置の構成図、図2は図1に示したバイオセンサセットの分解斜視図、図3は図1に示した針一体型測定装置のIII−III矢視を模式的に表した断面図である。
本実施形態に係る針一体型測定装置10は、図1に示すように、後述する穿刺具25とバイオセンサチップ23を一体に備えたバイオセンサカートリッジAと、バイオセンサカートリッジAを収容保持する収容ケースBと、バイオセンサカートリッジAを装填して穿刺および測定を行う装置本体Cと、を有する。
【0021】
バイオセンサカートリッジAは、図2に示すように、外装カバー11を有する。外装カバー11の内部には、弾性体37を先端に装着するバイオセンサチップ23と、穿刺具25とが挟持固定される。
【0022】
本実施形態の外装カバー11は、上蓋部11aと下蓋部11bとをヒンジ部11cとによって接続した一体構造で形成されているが、上蓋部11aと下蓋部11bとをヒンジ部11cで切り離した別体構成としてもよい。
上蓋部11aの内面には通気・余剰血排出路12が前後端に渡って形成され、通気・余剰血排出路12は不図示の減圧式採血補助機構に連通して負圧が付与される。装置本体Cの内部には減圧式採血補助機構に連通する気密室が形成され、気密室の負圧は計測開口39(図3参照)に挿着されたバイオセンサカートリッジAの通気・余剰血排出路12を介して被検体の穿刺口から流出した血液を吸引し、バイオセンサカートリッジAの試料採取口29に効果的に導入する。
【0023】
上蓋部11aと下蓋部11bの先端内面にはチップ押さえリブ13,13が突設され、チップ押さえリブ13は、上蓋部11aと下蓋部11bとが接合された状態で、弾性体37の切欠部37aに進入してバイオセンサチップ23を直接表裏面から挟持する。
また、上蓋部11aと下蓋部11bの先端内面には抜け止めピン14,14が突設され、これら抜け止めピン14は、上蓋部11aと下蓋部11bとが接合された状態で、弾性体37に押圧されて外装カバー11からの弾性体37の抜けを規制する。これにより、バイオセンサチップ23と弾性体37とは、接着剤を使用せずに外装カバー11によって強固に一体固定される。
【0024】
上蓋部11aと下蓋部11bには接合凸部13aと接合凹部13bが形成され、接合凸部13aと接合凹部13bは、上蓋部11aと下蓋部11bとが接合された状態で嵌合して相互に熱融着される。
そこで、バイオセンサカートリッジAは、上蓋部11aと下蓋部11bの上下から力を加えながら、これら接合凸部13aと接合凹部13bを熱融着することで、複数(本実施形態では4箇所)の接合部で、弾性体37およびバイオセンサチップ23を強固に挟み込む構造となっている。
【0025】
尚、バイオセンサカートリッジAの外周部には、係合手段41(図1参照)を構成する4つの係止突起45が突設され、各係止突起45は収容ケースBに設けられた係合凹部47(図1参照)と係合する。
【0026】
バイオセンサチップ23は、図2に示すように、樹脂材料により板状に形成した穿刺具25の上面に収容される。弾性体37は、バイオセンサチップ23を収容した穿刺具25の先端に挿着される。
穿刺具25は矩形板状に形成され、長手方向一端に穿刺用器具Nが突出される。穿刺用器具Nとしては、例えば中空の注射針や、ランセット(lancet;槍状刀)針や、カニューレ(cannula;套管)等が挙げられる。これらの針は、樹脂に固着されていても良いし、樹脂で一体化(針自体も樹脂で成形)されていても良い。本実施形態では、穿刺用器具Nの一例として樹脂にランセット針が固着されたものが例示されている。
【0027】
穿刺具本体21の上面には、バイオセンサチップ23を載置する収容部21aが周壁21bによって形成されている。バイオセンサチップ23は、周壁21bに包囲された状態で収容部21aに収容され、接着剤を使用しないで簡単に組み付けされるようになっている。
周壁21bは、穿刺具本体21の先端で切欠開口部21cとなって開口される。この切欠開口部21cには、穿刺用器具Nの直上に下り勾配で傾斜する傾斜導入面21dが形成されている。
【0028】
傾斜導入面21dは、下り傾斜の下端が穿刺用器具Nの根元に近接し、上端がバイオセンサチップ23の先端に近接する。つまり、傾斜導入面21dの上端近傍には試料採取口29が配置される。また、試料採取口29を挟み傾斜導入面21dの反対側には外装カバー11の上蓋部11aに設けた通気・余剰血排出路12が配置される。
これにより、傾斜導入面21dと反対側に位置する通気・余剰血排出路12に負圧が付与されると、試料採取口29へ到達する主流路が形成されて、穿刺用器具Nの根元に到達した血液が試料採取口29へ効率よく導入されるようになっている。
【0029】
また、両側周壁21b,21bの略中央部には、内側に係止突起22,22が突設され、係止突起22,22はバイオセンサチップ23に形成された係止凹部26,26を係止してバイオセンサチップ23の穿刺時における軸線方向の移動を規制するようになっている。
【0030】
バイオセンサチップ23は、互いに対向する2枚の基板27a,27bと、この2枚の基板27a,27b間に挟装されるスペーサ層28を有している。基板27aのスペーサ層28側の表面には、検知用電極31a,31bが設けられており、先端部(図2において左下端部)は互いに対向する方向へL字状に曲げられて、所定間隔を保持している。
バイオセンサチップ23の後端部27cにおいては、基板27aが基板27bおよびスペーサ層28よりも延設されており、検知用電極31a,31bが基板27a上に露出している。
【0031】
バイオセンサチップ23の先端から、2つの検知用電極31a,31bが対向している部分にかけて、2枚の基板27a,27bおよびスペーサ層28により中空反応部33が形成されている。
この中空反応部33の先端には、被検体に穿刺用器具Nを穿刺して採取した試料としての血液を中空反応部33に導入する試料採取口29が開口して設けられている。この試料採取口29は穿刺用器具Nに近接して配置され、少量の試料でも確実に採取することができ、使用者の負担を軽減することができるようになっている。
【0032】
中空反応部33においては、検知用電極31a,31bは露出しており、中空反応部33における検知用電極31a,31bの直上或いは近傍に、例えば酵素とメディエータを固定化し試料中の成分(例えば、血液中のグルコース)と反応して電流を発生する試薬35が設けられている。従って、中空反応部33は、試料採取口29から採取された例えば血液等の試料が、試薬35と生化学反応する部分となる。
【0033】
試薬35の例としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)やグリコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、コレステロールオキシダーゼ、ウリガーゼ等の酵素と、フェリシアン化カリウム、フェロセン、ベンゾキノン等の電子受容体が挙げられる。また、血液を試料とする場合には、被検体の採血負担を考慮すると、中空反応部33の容積は1μL(マイクロリットル)以下が好ましく、特に300nL(ナノリットル)以下であることが好ましい。このような微小な中空反応部33であると、チップ本体の直径は小さくても検体の充分な血液量が採取可能となる。また、穿刺針は、直径が1000μm以下であることが好ましい。
【0034】
基板27a,27bおよびスペーサ層28の材質としては、絶縁性材料のフィルムが選ばれ、絶縁性材料としては、セラミックス、ガラス、紙、生分解性材料(例えば、ポリ乳酸微生物生産ポリエステル等)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂、UV硬化樹脂等のプラスチック材料を例示することができる。機械的強度、柔軟性、およびチップの作製や加工の容易さ等から、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料が好ましい。代表的なPET樹脂としては、メリネックスやテトロン(以上、商品名、帝人デュポンフィルム株式会社製)、ルミラー(商品名、東レ株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
次に、弾性体37について説明する。
バイオセンサカートリッジAの先端に装着される弾性体37の前端面37bには、環状凹部38が形成されており、環状凹部38は中央底部に円柱状の突出部40を形成している。
突出部40の中心には弾性体37を貫通する貫通穴42が穿設され、貫通穴42には穿刺用器具Nが挿通する。貫通穴42は、穿刺用器具Nの外径より大きく形成される。弾性体37の軸線方向の寸法は、穿刺用器具Nの先端までを覆う長さとなっている。つまり、穿刺用器具Nは、貫通穴42の内部に収納される。
【0036】
この弾性体37は、前端面37bが軸線方向に押圧されることで圧縮変形される。また、同様の押圧力が作用した際に、突出部40も環状凹部38の底面近傍まで潰れるように変形する。この圧縮変形が生じることにより、穿刺用器具Nが弾性体37の前端面37bから相対的に突出される。この押圧力は、後述する穿刺バネ12(図3参照)によって付与される。
【0037】
このように、バイオセンサカートリッジAは、先端に装着された弾性体37を被検体に押し付けると、弾性体37が圧縮変形し、内部に挿通された穿刺用器具Nが相対的に突出して被検体を穿刺する。そして、押し付け力が弱められると、弾性体37の復元力によって穿刺用器具Nが被検体から抜かれ、穿刺口から試料が流出し、一回の穿刺動作のみで流出試料の採取が可能となっている。
【0038】
なお、本実施形態において、弾性体37は、軸線直交方向の断面形状が楕円形状で形成されている。弾性体37は、断面楕円形状となることで、断面円形状よりもクッション体積を小さくして(圧縮変形の力を小さくして)、少ない駆動力での穿刺を可能としている。また、流出試料の採取中には、後述する押し当てバネ7の弾性付勢力により、バイオセンサチップ23の試料採取口29に連通する弾性体37の貫通穴42を備えた弾性体37(バイオセンサカートリッジAの先端部)は、被検体に適度に押し当てられる。
【0039】
弾性体37は、少なくとも天然ゴム、合成ゴム、スポンジのいずれか一つを必須材料として含有する。弾性体37の主材料として、少なくとも天然ゴム、合成ゴム、スポンジのいずれかが使用されることで、原材料の入手が容易となり、所望硬度の弾性体37を、良好な成形性によって安価に生産できる。また、弾性体37は、ブリードによる染みだし物質の被検体への付着を阻止するコーティング材にて表面が覆われてもよい。これにより、染みだし物質が採取試料に混入することによる測定成功率の低下が抑止できるとともに、被検体への影響も防止できる。
【0040】
また、弾性体37の貫通穴42の内壁面には不図示の界面活性剤が塗布され、界面活性剤は試料採取口29への試料の導入を容易にしている。尚、この界面活性剤は、試料採取口29および中空反応部33の内壁にも塗布されている。
【0041】
次に、収容ケースBについて説明する。
収容ケースBは、図3に示すように、両端開口部の一方が装置外に突出するようにバイオセンサカートリッジAと伴に装置本体Cの計測開口39に挿着される。収容ケースBとバイオセンサカートリッジAとの間には、バイオセンサカートリッジAが装置本体Cに装着された後、バイオセンサカートリッジAに対しての保持を解除可能とする係合手段41(図1参照)が設けられている。
【0042】
収容ケースBは、両端の開口した透明性を有する樹脂材からなる円筒状に形成され、バイオセンサカートリッジAを同一軸線上に保持する。収容ケースBは、バイオセンサカートリッジ全体を完全に収容保持するものではなく、少なくとも弾性体37および穿刺用器具Nを覆うように保持する。
【0043】
収容ケースBの装置挿入側開口部43における内周面には、前述の4つの係止突起45と伴に係合手段41を構成する4つの係合凹部47が凹設されている。また、収容ケースBの装置挿入側開口部43における外周面には、装置本体Cの計測開口39に挿入されて穿刺および測定を行う際の位置決めおよび抜け止めとして機能する環状溝49が凹設されている。
【0044】
バイオセンサカートリッジAを保持した収容ケースBは、バイオセンサカートリッジAと共に装置本体Cの計測開口39に挿入される(図4参照)。
収容ケースBとバイオセンサカートリッジAとの間に設けられた係合手段41は、後に詳述するように、バイオセンサカートリッジAの後端部27cがコネクタ73の端子挿入部51(図3参照)に保持された状態で収容ケースBを先端開口部53側へ相対移動させることによって、収容ケースBのバイオセンサカートリッジAに対する保持を解除することができる。
【0045】
収容ケースBは、使用時に、バイオセンサカートリッジAを抜脱する装置挿入側開口部43から突出している後端部27cを装置本体Cの端子挿入部51に挿着するようにして、バイオセンサカートリッジAを装置本体Cの計測開口39に装着する。そして、装置本体Cに挿入された収容ケースB自体は、被検体の当接部として利用される。
【0046】
即ち、これら収容ケースBおよびバイオセンサカートリッジAからバイオセンサセット55が構成されている。
バイオセンサセット55は、図示しない包装フィルム内に個別に密閉包装されることにより、バイオセンサカートリッジAを無菌状態に保持する。また、収容ケースBに収容されていることで、使用者はバイオセンサカートリッジAの弾性体37や穿刺用器具N(図2参照)に触れることもなく、安全性が確保される。
【0047】
このバイオセンサセット55は、収容ケースBが、バイオセンサカートリッジAの挿着補助手段、被検体への当接部、およびバイオセンサカートリッジAを挿着した後の装置本体Cの保護キャップとしても機能する。また、バイオセンサセット55は、バイオセンサカートリッジAの使用後の廃棄用ケースとしても使用可能である。バイオセンサセット55は、衛生面から使い捨てされることが好ましい。
【0048】
バイオセンサカートリッジAは、図1および図3に示すように、収容ケースBの内周面に凹設した係合凹部47に、バイオセンサカートリッジAの外周部に突設した係止突起45が圧入嵌合することで、軸線方向の移動が規制されて、収容ケースB内に保持される。
【0049】
そして、収容ケースBは、バイオセンサカートリッジAの後端部27cが端子挿入部51に保持固定された状態で、先端開口部53側へ移動されると、図5に示すように、係合凹部47から係止突起45が離脱し、軸線方向の移動規制が解除される。
即ち、バイオセンサカートリッジAは、収容ケースBに保持された状態で装置本体Cの計測開口39に挿入され、後端部27cを端子挿入部51に保持固定させた状態で収容ケースBのみを移動することで、係合手段41による保持が解除される。これにより、バイオセンサカートリッジAを直接触らずに装填が行えるようになっている。
【0050】
そして、先端開口部53側へ移動させられた収容ケースBは、図5に示すように、装置挿入側開口部43の外周面に凹設された環状溝49が、計測開口39の開口部に配設されたOリング57に嵌合し、位置決めおよび抜け止めされる。
この状態では、バイオセンサカートリッジAの後端部27cが後述するコネクタ73の端子挿入部51に挿着状態となっていることから、収容ケースBとの係合が解除されたバイオセンサカートリッジAは、収容ケースBの軸線方向に相対移動し、穿刺用器具Nが穿刺可能となる。
【0051】
次に、装置本体Cについて説明する。図4はバイオセンサカートリッジを装填した針一体型測定装置の概略構成断面図である。
本実施形態の装置本体Cは、図3及び図4に示すように、本体部5に対して移動可能に保持される可動ケース部1と、本体部5に対して移動可能に保持され、バイオセンサカートリッジAが装着されるコネクタ73と、コネクタ73に設けられバイオセンサカートリッジAが着脱可能に装着される端子挿入部51と、可動ケース部1が本体部5に対して穿刺方向(図中下方)へ相対移動した際に、コネクタ73を本体部5に対して穿刺駆動する駆動機構30と、を備える。
【0052】
本実施形態の駆動機構30は、本体部5に対して可動ケース部1を穿刺方向と逆方向へ弾性付勢するリリースバネ3と、コネクタ73を介してバイオセンサカートリッジAを穿刺方向へ弾性付勢する穿刺バネ12と、穿刺バネ12の弾性付勢力に抗してコネクタ73を穿刺可能状態に保持するロック機構70と、可動ケース部1がリリースバネ3の弾性付勢力に抗して穿刺方向へ相対移動した際に、ロック機構70の移動規制を解除するロック解除機構80と、穿刺後の試料の採取中にコネクタ73を介してバイオセンサカートリッジAの先端部を穿刺方向に付勢する押し当てバネ7と、を備える。
【0053】
リリースバネ3は、本体部5の上壁5bと可動ケース部1の天壁1bとの間に介装された圧縮コイルバネである。
穿刺バネ12は、コネクタ73の基端部から延設された軸部9の後端部と本体部5の上壁5bとの間に介装された圧縮コイルバネである。
【0054】
また、押し当てバネ7も、本体部5の内壁5cとコネクタ73の基端部との間に介装された圧縮コイルバネである。
そして、図3に示すようなコネクタ後退前の状態では、穿刺バネ12が付勢力を発生せず、押し当てバネ7のみがコネクタ73を穿刺方向へ付勢している。また、
【0055】
ロック機構70は、本体部5の側壁5aに設けられた係止孔15と、コネクタ73に設けられ、係止孔15に係合することによりコネクタ73を穿刺可能状態に保持する弾性係止部74と、を備える。
また、ロック解除機構80は、係止孔15内に一体的に延設され、穿刺方向へ延びる先端が側壁5aの外側へ突出する可撓性解除片17と、可撓性解除片17と摺接する可動ケース部1の内壁面に形成され、可撓性解除片17の先端を収容可能な受容凹部19と、を備える。即ち、コネクタ73の弾性係止部74は、可撓性解除片17の内側への移動にて押圧されて係止孔15との係止が解除される。
【0056】
図4に示すように、本体部5には、電源65と、装着したバイオセンサカートリッジAにて採取した試料の電気的特性を計測する測定制御部67と、表示部69とが、互いに電気的に接続されて設けられている。
本体部5に対して穿刺方向に移動自在に配設されたコネクタ73は、リード線等の導体79a,79bを介して測定制御部67に電気的に接続されており、バイオセンサチップ23の検知用電極31a,31bによって得られた試料と試薬35との反応電流が、測定制御部67に伝達されるようになっている。
【0057】
次に、血糖値測定を例に挙げて、上記した針一体型測定装置10の動作を説明する。
図5は穿刺前の状態を表す動作説明図、図6は穿刺時の状態を表す動作説明図、図7は穿刺後の測定中の状態を表す動作説明図である。
針一体型測定装置10は、小型であり、例えば、使用者が片手で持つことが可能なハンディタイプとなり、使用者が自分で操作できるようになっている。
本実施形態に係る針一体型測定装置10を使用するには、先ず、密閉包装されたバイオセンサセット55を包装フィルムから出し、収容ケースBの側部を手指で摘み、図4に示したように、バイオセンサカートリッジAの後端部27cをコネクタ73の端子挿入部51に差し込む。
【0058】
すると、バイオセンサカートリッジAの検知用電極31a,31bが、コネクタ73の端子挿入部51に挿着され、バイオセンサチップ23が測定制御部67と電気的に接続状態となる。
そこで、装置本体Cは、端子挿入部51に装着されたバイオセンサカートリッジAの検出が可能となる。即ち、本実施形態に係る針一体型測定装置10は、穿刺動作前においてもバイオセンサチップ11の動作確認や装着状態の確認が可能となる。
【0059】
更に、バイオセンサセット55を計測開口39内の奥側へ押し入れることにより、コネクタ73を介して押し当てバネ7及び穿刺バネ12が圧縮される。そして、軸部9の後端部に設けられたロック機構70の弾性係止部74が係止孔15に係合することにより、コネクタ73の移動が規制され、該コネクタ73が穿刺可能状態に保持される。
【0060】
次いで、収容ケースBが先端開口部53側へ引き出されて相当移動されることにより、係合凹部47が係止突起45から外れ、環状溝49がOリング57に嵌合して位置決めおよび抜け止めされる。これにより、バイオセンサカートリッジAは、収容ケースBに対して軸線方向の相対的な移動が可能となって、穿刺可能状態となる(図5参照)。
【0061】
この状態で、図5に示すように、収容ケースBの先端に被検体Mを当てて、収容ケースBの先端開口部53を塞ぐ。計測開口39に挿入された収容ケースBは、突出された先端開口部53が、被検体Mである例えば指に押し当てられることで、内方のバイオセンサカートリッジAにて穿刺を行う際の位置決め手段として利用される。
【0062】
この状態で、使用者が可動ケース部1を把持した状態で本体部5の計測開口に装着された収容ケースBの先端開口部53を被検体Mに押し付けると、該本体部5は被検体Mからの反力を受ける。この状態で本体部5を被検体Mに更に押し付けることで、可動ケース部1はリリースバネ3の弾性付勢力に抗して本体部5に対し穿刺方向(図中下方向)へ相対移動する。
【0063】
すると、可動ケース部1の内壁面に形成された受容凹部19に受容されていた可撓性解除片17の先端が本体部5の係止孔15内に押し込まれ、本体部5の係止孔5に対するコネクタ73の弾性係止部74の係合を解除する。そこで、本体部5に対する係合が解除されたコネクタ73は、穿刺バネ12及び押し当てバネ7の付勢力にて穿刺方向へ移動され、バイオセンサカートリッジAを穿刺駆動する。
【0064】
押し出されたバイオセンサカートリッジAは、図6に示すように、弾性体37が被検体Mに押し付けられて圧縮変形されるので、相対的に突出した穿刺用器具N(図2参照)によって穿刺を行う。
【0065】
押し付け力によって変形した弾性体37は、復元力によって元の形状に戻る。これに伴って、バイオセンサカートリッジAは若干後退され、穿刺用器具Nが被検体Mから抜かれる。
被検体Mから穿刺用器具Nが抜かれると、その穿刺穴から流出する血液が、図2に示すバイオセンサチップ23の試料採取口29へ導かれ、試料採取口29から中空反応部33へと流入する。このような流出試料の採取中には、穿刺バネ12の付勢力は殆ど作用しないが、押し当てバネ7の弾性付勢力によって、弾性体37が被検体Mに適度に押し当てられた状態となる。そこで、弾性体37の貫通穴42は、血液を試料採取口29へ良好に導くことができる。
【0066】
尚、本実施形態に係る針一体型測定装置10は、穿刺の直前に、不図示の減圧式採血補助機構から負圧を装置本体C内に付与し、計測開口39を介してバイオセンサカートリッジAに作用させる。これにより、穿刺穴から流出する血液が効率よくバイオセンサチップ23の試料採取口29に吸引される。
【0067】
バイオセンサチップ(血糖値センサチップ)23は、GOD又はGDHの酵素とフェリシアン化カリウムを試薬35として、中空反応部33に設けている。そこで、中空反応部33に流入した血液が試薬35と反応すると、電流が発生し、この電流が基板27aの検知用電極31a,31bに流れ、測定制御部67に入力される。これにより、血液中の成分が計測され、その計測結果が装置本体Cの表示部69に表示される。
【0068】
このように、上記駆動機構30によれば、針突出のためのランセット押圧操作や穿刺ボタン押下操作等の穿刺専用の操作を行うことなく、バイオセンサカートリッジAが装着されたコネクタ73を本体部5に対して穿刺駆動することができる。
従って、本実施形態の針一体型測定装置10は、穿刺用器具Nとバイオセンサチップ23を一体に備えたバイオセンサカートリッジAを、コネクタ73により駆動して穿刺および試料の採取を行いながら、採取した試料の情報をバイオセンサチップ23から装置本体Cに伝達でき、短時間且つ容易な測定を可能にして、使用者の負担を軽減することができる。特に、糖尿病の患者では、一日に数回血糖値を測定する必要があるので、その効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る針一体型測定装置の構成図である。
【図2】図1に示したバイオセンサセットの分解斜視図である。
【図3】図1に示した針一体型測定装置のIII−III矢視を模式的に表した断面図である。
【図4】バイオセンサカートリッジを装填した針一体型測定装置の概略構成断面図である。
【図5】穿刺前の状態を表す動作説明図である。
【図6】穿刺時の状態を表す動作説明図である。
【図7】穿刺後の測定中の状態を表す動作説明図である。
【図8】(A)は特許文献1に記載されているバイオセンサの斜視図、図8(B)はバイオセンサの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
1…可動ケース部
3…リリースバネ
5…本体部
5a…本体部の側壁
7…押し当てバネ
9…軸部
10…針一体型測定装置
12…穿刺バネ
15…係止孔
17…可撓性解除片
19…受容凹部
23…バイオセンサチップ
25…穿刺具
30…駆動機構
39…計測開口
70…ロック機構
73…コネクタ
74…弾性係止部
80…ロック解除機構
A…バイオセンサカートリッジ
B…収容ケース
C…装置本体
M…被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺具とバイオセンサチップを一体に備えたバイオセンサカートリッジを装置本体に装填して穿刺および測定を行う針一体型測定装置であって、
前記装置本体が、
本体部に対して移動可能に保持される可動ケース部と、
前記本体部に対して移動可能に保持され、前記バイオセンサカートリッジが装着されるコネクタと、
前記可動ケース部が前記本体部に対して穿刺方向へ相対移動した際に、前記コネクタを前記本体部に対して穿刺駆動する駆動機構と、
を備えることを特徴とする針一体型測定装置。
【請求項2】
前記駆動機構が、
前記可動ケース部を穿刺方向と逆方向へ弾性付勢するリリースバネと、
前記コネクタを介して前記バイオセンサカートリッジを穿刺方向へ弾性付勢する穿刺バネと、
前記穿刺バネの弾性付勢力に抗して前記コネクタを穿刺可能状態に保持するロック機構と、
前記可動ケース部が前記リリースバネの弾性付勢力に抗して穿刺方向へ相対移動した際に、前記ロック機構の移動規制を解除するロック解除機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の針一体型測定装置。
【請求項3】
前記ロック機構が、前記本体部の側壁に設けられた係止孔と、前記コネクタに設けられ、前記係止孔に係合することにより前記コネクタを穿刺可能状態に保持する弾性係止部とを備え、
前記ロック解除機構が、前記係止孔に設けられ、先端が前記側壁の外側へ突出する可撓性解除片と、前記可撓性解除片と摺接する前記可動ケース部の内壁面に形成され、前記可撓性解除片の先端を収容可能な受容凹部と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の針一体型測定装置。
【請求項4】
前記バイオセンサカートリッジを収容する収容ケースが前記本体部の計測開口に着脱可能に装着され、
前記収容ケースの先端部が被検体からの反力を受けることにより、前記可動ケース部が前記本体部に対して穿刺方向へ相対移動されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の針一体型測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268755(P2009−268755A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122599(P2008−122599)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】