説明

釣り用ホルダー

【課題】 あらゆる方向の引きに対して取付ベースに負担がかからず、また船が激しい揺れた場合でもリールの重みで釣竿が勢いよく立ち上がることがない釣り用ホルダーを提供する。
【解決手段】 竿先を上下動可能に釣竿を支持する保持部と、保持部の下に位置して寝かせた状態の釣竿を下支えする竿受け部と、さらに所定角度に起立した状態で釣竿を支持する竿支持部とからなり、竿支持部は、竿受け部に対して傾倒可能に設ける一方、その下端には係合溝を設けると共に、係合溝に脱着可能に係合して竿支持部を起立状態に固定するホルダーリングを竿受け部に挿通状態で掛止して設けた。また、竿受け部は俯角調整可能とした。また、保持部と竿受け部をフレームに設けてホルダー本体とし、該ホルダー本体には、さらにリールが取付可能な固定台を釣竿の保持部および竿受け部とは別個独立に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿のホルダーを魚の引きに応じて旋回させることができる構造に係り、特に船釣りに使用する釣り用ホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船縁に固定可能な釣竿のホルダーは存在した(例えば、特許文献1を参照)。即ち、従来のホルダーは、船縁に幅と厚み方向から取付けられる取付ベースに、竿先を上下動可能とする釣竿保持部を設けたものである。
【0003】
このホルダーによれば、釣竿を釣糸の巻取りやシャクリに必要な上下動を可能とした状態で船縁に固定できる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−165542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のホルダーは、釣竿(保持部)を一定の角度に固定支持する機能がなかったため、仕掛け投入後のいわゆる当たり待ちの状態で、釣竿を寝かせた状態でしか保持できず、釣竿を45度以上立てた状態で当たり待ちを行うトローリングには不向きであった。
【0006】
こうした問題点に加えて従来のホルダーは、竿先の上下方向の運動を許容するものの、水平(左右)方向については常に同じ向きに固定されるものであるため、魚の引きが左右に激しく移動した場合、その力が取付ベースに作用して、船縁からホルダーが不用意に外れるおそれがあった。また、ホルダーが外れないまでも、ぐらつきが生じやすく、その都度、取付ベースを船縁に締め直すなどの煩わしさがあった。さらに、強固に取付ベースを固定している場合、船縁自体を損傷するおそれもあった。
【0007】
さらに、従来のホルダーは、リールを釣竿または竿保持部に固定するものであったため、リールが釣竿と常に連動して上下動することを許容することになる。例えば、船が波に揉まれて、ローリングやホッピングなどにより上下に揺れた場合、リールが重りとなって釣竿が勢いよく起き上がることがあった。このとき、釣竿が人に当たれば怪我のおそれがあり、また船に当たれば釣竿や船を損傷させるおそれもある。特に、大型の魚を釣る際は、数キロから十数キロもある電動リールを使用することがあり、この場合、リールが重りとなったときの反動が大きいため、上述した問題への対処が重要となる。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、あらゆる方向の引きに対しても取付ベースに負担がかからず、また船が激しい揺れた場合でもリールの重みで釣竿が勢いよく立ち上がることがない釣り用ホルダーを提供することである。さらに、トローリングにも兼用できる構造をも開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、竿先を上下動可能に釣竿を支持する保持部と、該保持部の下に位置して寝かせた状態の釣竿を下支えする竿受け部と、さらに所定角度に起立した状態で釣竿を支持する竿支持部とからなり、該竿支持部は、竿受け部に対して傾倒可能に設ける一方、その下端には係合溝を設けると共に、該係合溝に脱着可能に係合して前記竿支持部を起立状態に固定するホルダーリングを竿受け部に挿通状態で掛止して設けるという手段を用いた。
【0010】
この手段により、本ホルダーをトローリングにも使用することができる。なお、竿支持部の係合溝からホルダーリングを外せば、竿支持部が傾倒するから、釣竿を竿受け部に寝かせた状態として当たり待ちを行うことも可能である。
【0011】
また、竿受け部を俯角調整可能とすることで、竿受け部により釣竿の保持角度(寝かせた状態での当たり待ち角度)を微調整することも可能である。
【0012】
他方、ホルダー本体にリールが取付可能な固定台を設けることで、ホルダー本体全体として釣竿と共にリールの旋回運動は可能であるが、釣竿の保持部とは別個独立に固定されるため、リールは釣竿の上下動と連動しない。
【0013】
またこの構成において、釣竿の保持部近傍に竿先からリールへの釣糸をくぐらせるプーリーを設けることによって、上述したトローリング時に釣糸を釣竿とほぼ平行するように導引することができる。
【0014】
上記プーリーの取付け位置は釣竿保持部の近傍であれば厳格に定めるものではないが、リールの前方に一体的に取付けることが好ましい。
【0015】
なお、ホルダー本体を旋回可能に支持する取付ベースに、船縁に固定可能なクランプを備えることで、本発明ホルダーを船釣りに使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した手段によれば、釣竿の保持部を備えたホルダー本体を旋回可能に設けたので、使用者の意思または魚の引きに追従して釣竿を水平方向に旋回させることができるから、釣竿に作用する力をあらゆる方向に分散できる。従って、取付ベースに無理な力がかからず、ホルダーが不要に船縁から外れたり、ぐらつきが一切生じない。特に、本発明では竿受け部と竿支持部の二段階角度で釣竿を保持することができるので、両者を切り替えることで、本発明ホルダーをトローリング用ホルダーとして使用することもできる。その切り替えもまた、竿支持部の係合溝へのホルダーリングの係脱という簡単な操作によって行うことができる。さらにまた、竿受け部を俯角調整可能としたので、釣竿の保持角度を多段階に微調整することも可能である。また、ホルダー本体に釣竿の保持部とは別個独立にリールの固定台を設けたので、リールが釣竿の上下動に連動することはなく、従って、釣竿を単独で上下動することができると共に、仮に船が上下に揺れた場合でもリールが重りとなって、その反動により釣竿が不用意に起き上がる危険性がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明の一実施形態に係る釣り用ホルダーの全体を示したものである。同図において、1はホルダー本体であり、釣竿Sの後端を袋ナット等の適宜手段によって保持する保持部10を、フレーム11の前方上端に枢支された軸10aを回転軸として竿先が上下動するように取付けてなる。また、この保持部10の下に位置して、フレーム11には竿受け部12が保持部10(釣竿S)と同方向に突設されている。この竿受け部12は、その後端を枢軸12aによって上下動可能に枢支すると共に、先端には凹状の釣竿Sの抱持部12bが設けられ、さらに軸線上の2箇所に俯角調整孔12cが形成されている。これと共に、フレーム11には俯角調整孔12cと連通する俯角決定孔11a・11bが形成されており、両孔12c・11a・11bをピン等(図示せず)で連結することによって、枢軸12aを回転軸として竿受け部12の俯角を微調整することができる。ここでは前方(図面、右側)の俯角調整孔12cと俯角決定孔11aを連結している。なお、両孔の数はこの実施形態に限定されない。さらにホルダー本体1において、フレーム11には円筒軸13が縦軸状に垂設されている。
【0018】
2は取付ベースであって、主として上記円筒軸13を回動可能に挿入して、ホルダー本体1全体を旋回可能に枢支する支柱パイプ2aと、当該取付ベース2を船縁に固定するためのクランプ3とからなる。
【0019】
一方、取付ベース2には下部構造として、ホルダー本体1と共に当該取付ベース2を船縁に取付けるためのクランプ3が具備されている。このクランプ3は、縦方向の挟持部30と横方向(厚み方向)の挟持部31それぞれが、外管31a・32aと内管31b・32bの挿入により伸縮可能に構成されており、長さ決定のためのピン孔P1・P2を備える。また縦方向の挟持部30の下端にはアゴ状のアタッチメント33が、また横方向の挟持部31の先端には垂下状のアタッチメント34が設けられており、垂下状アタッチメント34はその根元に回動軸を備え、船縁の形状に応じて回転させることにより、面で船縁を挟持するものである。ただし、この種釣り用ホルダーにおいて、船縁固定用のクランプは従来も存在するため、公知の構造を採用することもできる。
【0020】
なお、本実施形態では、釣竿Sの保持部10を上下動可能としたので、釣竿Sをシャクリ動作できると共に、ホルダー本体1を旋回可能に設けたため、魚が左右に引いた場合でもこれに追従して魚の引く方向に竿先を向けることができる。従って、このような三次元動作によって、釣竿Sや釣糸に無理な力が作用せず、より高い釣果を期待できるものである。
【0021】
また、本実施形態では、ホルダー本体1に釣竿保持部10や竿受け部12とは別個独立にリールRの固定台14を設け、蝶ナット14a等によりホルダー本体1に固定してる。このため、相当重量のリールRは釣竿Sの上下同操作と縁が切れた状態となり、釣竿Sのシャクリ動作を阻害することがない上、釣り船がローリングやホッピングした場合にもリールRの重みによって釣竿Sが不用意にバウンドする恐れがない。なお、4はリールRの前方に設けた釣糸用のプーリーである。即ち、当該プーリー4は、竿先からリールRに至る釣糸をくぐらせるものであり、釣竿Sをシャクリ動作やトローリング時の起立させた状態において、ラインL2となるべき釣糸SをラインL1のように釣竿Sを寝かせたときと同じ姿勢とするため、巻取りや繰り出しに無理な力が加わらず、糸切れ等の不都合を解消するものである。
【0022】
続いて、5は竿受け部12とは別途に設けられた竿支持部であり、6はそのホルダーリングである。即ち、本実施形態に係る釣り用ホルダーは、図2に示したように、トローリング用として釣竿Sを所定角度に起立させた状態に保持する竿支持部5を竿受け部12と別途に設けたものである。この竿支持部5は、アーム部5aを竿受け部12の中途に回転軸5bを介して上下動可能に取付けると共に、アーム5aの先端には角度調整部材5cを介して竿受け部12のもの12bと同様の抱持部5dを設けたものである。また、アーム5aの後端には係合溝5eが形成されている。これに対して、アーム5aの後方に位置して、竿受け部12には、C状チャンネル型のホルダーリング6が挿通状態で掛止されている。
【0023】
そして、図3に示したように、ホルダーリング6の下辺部6aをアーム5aの係合溝5eに係合させることによって、アーム5aの前傾(竿受け部12側への回転)が規制されると共に、竿支持部5を起立した状態に保持して、トローリングによる当たり待ち状態に釣竿Sを保持することができる。他方、ホルダーリング6の係合を解除するには、竿支持部5(アーム5a)を後方に回転することによって、係合溝5eからホルダーリング5が容易に脱する。そして、両者係合が解除されたときは、図4に示すように、竿支持部5は前傾方向に降りて、その抱持部5dに釣竿Sを保持した状態でアーム5aが竿受け部12の抱持部12bに保持され、釣竿Sを寝かせた状態とすることができる。
【0024】
このように、本実施形態に係る釣り用ホルダーによれば、アーム5aの係合溝5eに対するホルダーリング6の係脱によって、釣竿Sを通常(寝かせた状態)の当たり待ちとトローリング時の当たり待ちを切り替えることができる。また、この切り替えは、複雑な機構を採用することなく、ホルダーリング6の係脱のみという極めて簡単な操作によって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る釣り用ホルダーの全体側面図
【図2】同ホルダーの要部側面図(起立状態)
【図3】同、要部拡大斜視図
【図4】同、要部側面図(係合解除)
【符号の説明】
【0026】
1 ホルダー本体
2 取付ベース
3 クランプ
4 プーリー
5 竿支持部
10 釣竿の保持部
12 竿受け部
13 円筒軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿先を上下動可能に釣竿を支持する保持部と、該保持部の下に位置して寝かせた状態の釣竿を下支えする竿受け部と、さらに所定角度に起立した状態で釣竿を支持する竿支持部とからなり、該竿支持部は、竿受け部に対して傾倒可能に設ける一方、その下端には係合溝を設けると共に、該係合溝に脱着可能に係合して前記竿支持部を起立状態に固定するホルダーリングを竿受け部に挿通状態で掛止して設けたことを特徴とする釣り用ホルダー。
【請求項2】
竿受け部は俯角調整可能とした請求項1記載の釣り用ホルダー。
【請求項3】
保持部と竿受け部をフレームに設けてホルダー本体とし、該ホルダー本体には、さらにリールが取付可能な固定台を釣竿の保持部および竿受け部とは別個独立に設けた請求項1または2記載の釣り用ホルダー。
【請求項4】
下部構造として船縁に固定可能な取付ベースを設けた請求項1、2または3記載の釣り用ホルダー。
【請求項5】
ホルダー本体を取付ベースに対して相対的に旋回可能に連結した請求項1から4のうち何れか一項記載の釣り用ホルダー。
【請求項6】
釣竿の保持部近傍に竿先からリールへの釣糸をくぐらせるプーリーを設けた請求項1から5のうち何れ一項記載の釣り用ホルダー。
【請求項7】
プーリーはリールの前方に一体的に取付けられる請求項6記載の釣り用ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−14308(P2007−14308A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201893(P2005−201893)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000137878)株式会社ミヤマエ (16)
【Fターム(参考)】