説明

釣り竿用の竿体

【課題】 小径竿体を伸長状態に維持する圧接力を長期に亘って維持できる振出竿を提供する点にある。
【解決手段】 元上10の後端側端部の外周面と元竿11の先端側端部の内周面とに亘って形成した合わせ部Bによって、元上10と元竿11とを伸長状態に保持すべく構成する。元上10の後端側端面の外周面に、相手側周面に圧接する複数個の突起9を形成し、複数個の突起9の元上10の後端側端面の外周面からの突出高さを異なる高さに設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とに亘って形成した合わせ部によって、小径竿体と大径竿体とを伸長状態に保持すべく構成してある振出竿に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせ部において、小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とのいずれか一方に、相手側周面に圧接して、伸長状態を保持する突起を形成したものがあった。この突起は樹脂塗料によって形成したもので、相手側周面に圧接してやや撓みを生じ、伸長状態を保持する保持力を出していた。
【0003】
【特許文献1】特開平6−205626号(段落番号〔0020〕、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記突起は、使用期間が長期に亘ると、圧接端から摩滅を生じ、圧接力を低下させる。したがって、全ての突起が同一突出高さに形成されていると、初期段階では、全ての突起が予定された圧接力で相手側周面に対して圧接する。しかし、摩滅を生じてくると、全ての突起が摩滅を生じるところから、突起が一様に圧接力を低下させる虞があった。これによって、圧接力が弱化し、最終的には、小径竿体の伸長状態を維持できないこともあった。
【0005】
本発明の目的は、上記欠点を解消し、小径竿体を伸長状態に維持する圧接力を長期に亘って維持できる振出竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とに亘って形成した合わせ部によって、小径竿体と大径竿体とを伸長状態に保持する振出竿であって、
前記外周面又は前記内周面の少なくとも一方の周面に、相手側周面に圧接する複数個の突起を形成して前記合わせ部を構成するとともに、前記複数個の突起の前記一方の周面からの突出高さを異なる高さに設定してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、複数個の突起のうち突出高さの高いものが、初期段階では、相手側周面に圧接する。突出高さの低いものは圧接しない。長期使用によって突出高さの高い突起が摩滅してくると、嵌合力が弱くなるので、嵌合力を一定に維持しようとして、小径竿体を大径竿体に対してより引き出した状態に切り換える。
このように、嵌合力が弱くなる場合に、小径竿体を大径竿体に対してより引き出した状態に切り換える理由は、大径竿体の内周面が製作時のマンドレルの外周面に対応した緩傾斜面に形成されているので、大径竿体の内周面の竿先側程小径となっており、突起が摩滅した分だけ、大径竿体の内周面の竿先側で嵌合させようとするからである。
これによって、小径竿体の竿尻側端部の外周面が大径竿体の竿先側端部の内周面に対して竿先側にやや移動した位置で嵌合する。そうすると、次ぎに高い突起が相手側周面に圧接を開始しその接触圧力が高くなり、摩滅によって圧接力を低下させた分を、新たに接触した突起が補うこととなる。
このように、順番に突出高さの高い突起が新たに相手側周面に対して圧接を開始するので、摩滅によって圧接力を低下させた分を補い、圧接力を一定に維持できる。
【0008】
〔効果〕
突起の磨耗があっても、圧接力が急激に低下することはなく、一定した圧接を維持しながら安定した合わせ部を構成できる。しかも、突起として、突出高さを異なるものに構成してあるので、全ての突起が接触する場合に比べて、圧接力を弱くできる。これによって、小径竿体を大径竿体より引き出して伸長状態に切り換える場合に、小径竿体の竿尻側端部の外周面が大径竿体の竿先側端部の内周面に急激に圧接することはなく、一定の適度な圧接力が持続する状態で嵌合する。
したがって、操作する釣り人には衝撃の少ない伸長操作が可能になり、操作感が良好である。しかも、前記したように、圧接力が長記に亘って安定して維持されるので、操作が容易である。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記小径竿体の最外層の外側に竿尻補強パターンを配置し、前記竿尻補強パターンを、強化繊維群を竿軸線に対して傾斜する傾斜角に沿って引き揃え配置した下側プリプレグと、前記強化繊維群を前記下側プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置した上側プリプレグとを重ね合わせて構成し、前記上側プリプレグの更に外側に前記複数個の突起を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
請求項1に係る発明に対する作用効果を奏するとともに、次ぎのような作用効果を奏する。
つまり、突起を支持する部分が、強化繊維を竿軸線に対して対称となる状態に配置した上下側プリプレグを重ねて構成したものであるので、竿軸線に沿った荷重、竿軸線に直交する荷重、及び、竿軸線に対して傾斜する荷重にもそれらの強化繊維が対抗力を発揮する。これによって、互いに嵌合した外周面と内周面との間に働く引張力、圧縮力、だけでなく、剪断力に対する対抗力を高めることができ、突起の圧接状態を強固に維持する。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、柔軟性繊維をクロスに組み合わせて構成したシート状のものに、マトリックス樹脂を含浸させて形成し前記柔軟性繊維を表出させた補助シート領域と、相手側周面に圧接する複数個の突起を突出高さが異なる状態に形成した突起領域とで合わせ部を構成し、前記突起領域を前記補助シート領域より竿尻側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
つまり、相手側周面に圧接するものとして突起領域の突起とともに補助シート領域の柔軟性繊維を導入したので、突起のみで合わせ部を構成する場合に比べて、全体として柔らかな圧接力を得ることができる。
しかも、補助シート領域を竿先側に配置してあるので、まず、突起に比べて軟らかい柔軟性繊維が圧接し、次いで、突起が圧接することになるので、徐々に、圧接力が高まり、小径竿体を引き出して伸長状態に固定するまでの操作感が良好なものとなる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記小径竿体の最外層の外側に竿尻補強パターンを配置し、前記竿尻補強パターンを、前記上側プリプレグと下側プリプレグとを重ねたバイアス領域と、前記複数個の高さの異なる突起を形成した突起領域と、前記柔軟性繊維を組み合わせた前記補助シート領域とで構成し、前記小径竿体の最外層に前記突起領域を配置するとともに、前記突起領域の竿元側に前記補助シート領域と前記バイアス領域とをその順番に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
上記のように、順番に配置することによって、部分的に相手側周面に対して圧接し圧接力を調整し易い突起領域と補助シート領域とを、先行して圧接するように構成し、急激に圧接する状態を回避して、穏かな嵌合を開始することができる。そして、全面的に圧接するバイアス領域を竿尻側に配置して、そのバイアス領域が伸長操作時の最終段階で圧接する構成によって、突起領域や補助シート領域に比べて大きな圧接力を作用させることができ、嵌合状態を確定できる。
このような構成によって、嵌合操作を操作感よく行えながら、しっかりした伸長状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
ここでは、図1に示すように、合わせ部Bとして、嵌合用の突起9を形成したものを示す。まず、小径竿体としての元上10と大径竿体としての元竿11等の竿体Aの製造から説明する。図2に示すように、マンドレル4に対してプリプレグシートを巻回して竿体Aを構成する。周方向に炭素繊維等の強化繊維を引き揃え、その引き揃えた強化繊維に対してマトリックス樹脂としてエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させてプリプレグシートを構成し、プリプレグシートを所定形状に裁断して第1メインパターン15Aとしてマンドレル4に巻回し、第1層Aaを構成する。
【0016】
同様に強化繊維を竿軸線方向に配置したプリプレグシートを所定形状に裁断して第2メインパターン15Bとしてマンドレル4に巻回して、第2層Abを構成する。最外層としての第3層Acは、第1層Aaと同じく強化繊維を周方向に配置したプリプレグシートを所定形状に裁断して第3メインパターン15Cとしてマンドレル4に巻回し、構成されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、第3層Acの外面で竿先側端部と竿尻側端部とに、軸線方向長さがメインパターン15に比べて短い竿先側補強パターン12Aと竿尻側補強パターン12Bとを巻回して、竿先側端部と竿尻側端部での補強を図っている。竿先側補強パターン12Aと竿尻側補強パターン12Bとにおいて使用されるプリプレグはメインパターン15と同様のものであり、強化繊維を周方向に引き揃えたものでなっている。
【0018】
強化繊維cとしては、炭素繊維以外にガラス繊維及びボロン繊維等が使用でき、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂等が使用可能である。含浸させる樹脂としては、熱可塑性樹脂も使用できる。また、それらプリプレグの強化繊維cとしては、炭素繊維でメインパターンに20〜60トン/mm2の弾性率のもの、補強パターンに10〜20トン/mm2の弾性率のものを使用することになる。
【0019】
つぎに、合わせ部Bの構成について説明する。一般的に、合わせ部Bは、小径竿体の竿尻側端部の外周面と大径竿体の竿先側端部の内周面とを圧接させる状態に形成することによって、構成される。ここでは、小径竿体としての元上10の竿尻側端部の外周面に複数個の突起9を配置してあるものについて説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、突起9は、形態の異なるものが散点状に配置してあり、突出高さが夫々異なり、かつ、相手側周面に圧接する接触面積も異なるものが混在している。このような構成によって、作用効果の項で述べたように、突起9の相手面に対する圧接力を変化の少ない状態に維持できるのである。
【0021】
突起9の製造工程について説明する。前記した竿先側補強パターン12A、竿先側補強パターン12Bを施した状態で、図示してはいなが、成型テープで竿体全長を緊縛し、その竿体をマンドレル4に取付けた状態で焼成し、焼成後所定長に裁断し、研磨工程によって仕上加工を施す。
【0022】
図1及び図2に示すように、元上10の竿尻側端部に対して、紙製のマスキング材13を被覆する。マスキング材13には、多数の貫通孔13aが散点状に配置され、突起9の形成に利用され、各貫通孔13aの孔径は大小多種類の径に設定してある。そして、マスキング材13における各部の厚さを異なるものに設定することによって、貫通孔13aの深さを異なるものにでき、これによって、突起9の突出高さを異なるものに設定できる。
【0023】
図2(ロ)に示すように、マスキング材13を竿体Aとしての元上10の竿尻側端部に装着し、吹き付けガン14によって、吹き付け塗装を行うことができる。吹き付けガン14によって、樹脂塗料をマスキング材13に吹き付けることによって、マスキング材13の貫通孔13aを通して元上10の竿尻側端部の外周面に突起9が形成される。突起9の形態は、貫通孔13aの孔径が大きなものは大径のもので、マスキング材13の厚みが厚い部分の貫通孔13aを通して形成された突起9は突出高さが高くなる。
尚、元上10の表面塗装も同じ樹脂塗料を使用する場合には、元上10の全長に亘って、一連の動作で吹き付け塗装を行うことができる。
【0024】
以上のように、元上10の竿尻側端部に形成された突起9の高さが異なるものに形成されている。これによって、突起9が元竿11の竿先側端部の内周面に圧接し摩滅することがあっても、次に高さの高い突起9が前記内周面に接触し、圧接力が変化することを抑制する。
【0025】
〔第2実施形態〕
ここでは、突起9を形成する対象となる元上10の竿尻側端部に、バイアス式のプリプレグを配置してある形態について説明するが、第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図3及び図4に示すように、マンドレル4に対して口巻補強パターン5を施してある。口巻補強パターン5は、竿軸線Xに対して第4傾斜角θだけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対して、マトリックス樹脂としてのエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグとを重ね合わせたバイアス式の重合体である。
【0026】
図3(ロ)に示すように、口巻補強パターン5を施したマンドレル4に対して、強化繊維cを周方向に引き揃えた第1プリプレグテープ1を第1層Aaとして螺旋状に巻回する。
図3(ハ)に示すように、第1プリプレグテープ1の上から二枚のメインパターンを施す。第1メインパターン2Aは強化繊維cを竿軸線Xに沿って引き揃えたプリプレグで、第2メインパターン2Bも同一のプリプレグである。
これら二枚のプリプレグを重ねた状態でマンドレル4に巻回するか、または、順番に巻回することによって、第2層Abを構成する。
【0027】
図3(二)に示すように、二枚のプリプレグを重ねた状態でその上から更に強化繊維cを周方向に引き揃えた第2プリプレグテープ3を第3層Acとして螺旋状に巻回する。
第2プリプレグテープ3を巻回した後に、外側竿尻補強パターン6を巻回する。つまり、竿尻補強パターン6は、竿軸線Xに対して第3傾斜角θだけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対してエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグ6Aと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグ6Aの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグ6Aとを重ね合わせたバイアス式重合体である。
【0028】
このように、バイアス式の外側竿尻補強パターン6を施すことによって、元上10の竿尻側端部の外周面を元竿9の竿先側端部の内周面に圧接させて振出竿を伸長状態に保持した場合に、強化繊維cを竿軸線Xを挟んで対称に配置しているので、それらの強化繊維cが竿軸線Xに沿った荷重、及び、竿軸線Xに直交する荷重のみならず、竿軸線Xに傾斜する荷重に対しても対抗力を発揮し、合わせ部位での対剪断力を強化する。
【0029】
以上のように構成された元上10の外側竿尻補強パターン6の上から、図2で示したように、吹き付け塗装によって突起9を形成する。図4で示すように、突起9については、突出高さが種々あり、相手側周面への接触面積も異なるものに構成する。
【0030】
〔第3実施形態〕
元上10の竿尻側端部の外周面に、突起9を形成する以外に異なる種類のプリプレグを施す形態について説明する。第2実施形態と異なる部分について主として説明する。
図5(イ)(ロ)に示すように、口巻き補強パターン5と内側竿尻補強パターン7とをマンドレル4に巻回するとともに、マンドレル4に巻回した口巻き補強パターン5及び内側竿尻補強パターン7の上から第1層Aaとしての第1プリプレグテープ1を巻回する。
【0031】
内側竿尻補強パターン7の構成としては、口巻き補強パターン5と同様の構成を採る。つまり、内側竿尻補強パターン7は、竿軸線Xに対して第1傾斜角θだけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対してエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグとを重ね合わせたバイアス式重合体である。
【0032】
図5(ハ)に示すように、第1プリプレグテープ1の上から二枚のメインパターンを施す。第1メインパターン2Aは強化繊維cを竿軸線Xに沿って引き揃えたプリプレグで、第2メインパターン2Bも同一のプリプレグである。
これら二枚のプリプレグを重ねた状態でマンドレル4に巻回するか、または、順番に巻回することによって、第2層Abを構成する。第2メインパターン2Bの上から中間竿尻補強パターン8を巻回する。
【0033】
中間竿尻補強パターン8の構成としては、内側竿尻補強パターン7と同様の構成を採る。つまり、中間竿尻補強パターン8は、竿軸線Xに対して第2傾斜角θだけ傾斜させて引き揃えた炭素繊維等の強化繊維cに対してエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成した上側プリプレグと、強化繊維cの引き揃え向きを、上側プリプレグの強化繊維cと竿軸線Xを挟んで対称に配置して形成した下側プリプレグとを重ね合わせたバイアス式重合体である。
【0034】
さらに、図5(二)に示すように、第3段として第2メインパターン2B及び中間竿尻補強パターン8の上から外側層としての第2プリプレグテープ3を巻回し、第2プリプレグテープ3の上から外側竿尻補強パターン6を巻回するようにしてある。
【0035】
外側竿尻補強パターン6の構成としては、次ぎのようなものである。
第2実施形態においては、外側竿尻補強パターン6としては、強化繊維cを竿軸線Xに対して傾斜させて形成したプリプレグをその強化繊維cが互いに交差する状態となるように重ね合わせた重合体6Aを使用していた。
ここでは、重合体6Aとともに、次ぎのような補助シート6Bを重ね合わせて使用するようにする。
【0036】
つまり、図6(ハ)に示すように、補助シート6Bは、炭素繊維等の強化繊維cを円周方向に引き揃えたものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6aに、図6(イ)(ロ)に示すように、ナイロンやポリエステル等の柔軟性の高い合成樹脂繊維c又は天然繊維cをクロス組したものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6bを重ね合わせ、炭素繊維等を円周方向に引き揃えたプリプレグ6aが内側となるように、重合体6Aの上から巻回する。
図6(ハ)に示すように、補助シート6Bの軸線方向に沿った長さは重合体6Aよりは短く、重合体6Aの竿先側に位置するように補助シート6Bを巻回する。
【0037】
以上記載したように、各パターンを順次マンドレル4に巻回することによって、竿体Aを構成する。また、各補強パターンにおける強化繊維の傾斜角θは、0°から90°の範囲で設定できるものであるが、望ましくは、45°から80°の範囲に設定するのがよい。さらに、第1傾斜角θ1〜第4傾斜角θ4までの傾斜角を同一角に設定してもよく、各傾斜角を異なる角度に設定してもよい。
【0038】
補助シート6Bにおける竿体の表側に位置するプリプレグ6bについて詳述すると、図6(イ)に示すように、プリプレグ6bは柔軟性の高い合成樹脂繊維c又は天然繊維cをクロス編みして、繊維cを亀の子状に配置する形状を呈している。図6(ロ)に示すように、繊維cに含浸させた樹脂は研磨加工を施して削り取っているので、繊維cだけが表面に表出した状態となっており、亀の子状の凹部が形成されている。
したがって、このプリプレグ6bが合わせ部Bの表面に位置して、相手側の合わせ部Bを構成するプリプレグと圧接する状態となっても、亀の子状の凹部の存在によって、水分が介在しても水分は亀の子状の凹部に溜まるだけで圧接状態を強化する方向には作用せず、合わせ部Bの固着状態が緩和される。
この補助シート6Bは、繊維体にマトリックス樹脂を含浸させてプリプレグとして完成させた後に、重合体6Aの上から巻回し、その状態で焼成して一体化する。
【0039】
図6に示すように、一体化した状態で、補助シート6Bを施した補助シート領域とその竿尻側に続く外周面に対して研磨加工を施して、繊維を樹脂部分から浮き立たせるようにする。つまり、補助シート6B部分に研磨加工を施すと、硬い樹脂部分が削り取られ、軟らかい繊維体部分は柔軟性があるので砥石に接触してもその研削作用を受けずに、それから逃げることができる為に繊維体部分に囲まれた部分6cが凹むこととなり、繊維体部分が相対的に表出することとなる。
以上のような補助シート6Bを設けた後に、補助シート6Bより更に竿尻側に、前記した突起9を形成する。突起9の形成方法については、既に、詳述したので、ここでは省略する。
【0040】
ここに、重合体6Aと補助シート6Bとの配置状態について説明する。つまり、図6(ハ)(二)に示すように、内側に位置する重合体6Aは、合わせ部Bの長さに相当する長さで配置される。これに対して、補助シート6Bについては、重合体6Aより短く、かつ、竿先側に寄った位置に配置されている。このように、重合体6Aを合わせ部Bに相当する長さで設置していても、合わせ部Bの長さよりも短くしてあるので、元上10を元竿11より引き出し操作した場合に、重合体6Aと補助シート6Bの竿先端が元竿11の竿先端よりは突出することはなく、美観の向上を図ることができる。
しかも、重合体6Aを合わせ部Bの竿先側の肩部分に設けてあるので、この部分の強度を向上させることができ、元上10の合わせ部Bにおける竿先側端近傍に発生する「際折れ」と言われている竿の折損を回避できる。
【0041】
〔第4実施形態〕
ここでは、第3実施形態で記載した第3補強パターン6とは異なる構成となるものについて説明する。ただし、第4実施形態では、第3補強パターン6を施すまでの構成は、第1実施形態で示したものから第3実施形態で示したものまでのものだけに止まらず、他の構成のものについても適用できる。
【0042】
外側竿尻補強パターン6の構成としては、次ぎのようなものである。
第3実施形態においては、外側竿尻補強パターン6としては、強化繊維cを竿軸線Xに対して傾斜させて形成したプリプレグをその強化繊維cが互いに交差する状態となるように重ね合わせた重合体6Aを使用していた。
ここでは、重合体6Aとともに、次ぎのような補助シート6Bを重ね合わせて使用するようにする。
【0043】
つまり、図7(イ)に示すように、補助シート6Bは、炭素繊維等の強化繊維cを円周方向に引き揃えたものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6aに、ナイロンやポリエステル等の柔軟性の高い合成樹脂繊維c又は天然繊維cをクロス組したものにエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグ6bを重ね合わせ、炭素繊維等を円周方向に引き揃えたプリプレグ6aが内側となるように、重合体6Aの上から巻回する。
図7(ロ)に示すように、補助シート6Bの軸線方向に沿った長さは重合体6Aよりは短く、重合体6Aの中間位置に位置するように補助シート6Bを巻回する。
【0044】
補助シート6Bを設けた後に、補助シート6Bより竿先側に、前記した突起9を形成する。突起9の形成方法については、既に、詳述したので、ここでは省略する。補助シート6Bより竿尻側においては、重合体6Aがそのまま表出した状態にある。
【0045】
以上のように、外側竿尻補強パターン6としては、竿先側から竿尻側に向けて、突起9を施した突起領域L、柔軟性繊維cを表出させた補助シート領域M、重合体6Aを表出させたバイアス領域Nをその順番に配置して、突起9、柔軟性繊維c、重合体6Aの表面を、相手側周面に夫々圧接させた状態で、合わせ部Bを構成する。
【0046】
〔別実施構造〕
(1) 合わせ部Bを構成する対象は、元上10、元竿11以外の中竿等に適用してもよい。
(2) 突起9を形成する位置は、大径竿体の内周面に設けてもよい。
(3) 突起9を形成するには、吹き付け方法以外に型を使用した成形方法を使用してもよい。
(4) 本発明の構成は、振出竿式の渓流竿、鮎竿等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】元上と元竿との合わせ部に突起を設けて、両者を嵌合させた状態を示す縦断側面図
【図2】(イ)はメインパターン及び補強パターンをマンドレルに巻回する前の状態を示す斜視図、(ロ)は突起を形成している状態を示す斜視図
【図3】(イ)は口巻き補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図、(ロ)は第1プリプレグテープを巻回している状態を示す斜視図、(ハ)は第1、第2メインパターンを巻回する前の状態を示す斜視図、(ニ)は第2プリプレグテープを巻回し、外側竿尻補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図
【図4】外側竿尻補強パターンのうえに突起を設けて、元上と元竿との嵌合状態を示す縦断側面図
【図5】(イ)は口巻き補強パターンと内側竿尻補強パターンを巻回する前の状態を示す斜視図、(ロ)は第1プリプレグテープを巻回している状態を示す斜視図、(ハ)は第1、第2メインパターンと中間竿尻補強パターンとを巻回する前の状態を示す斜視図、(ニ)は第2プリプレグテープを巻回している状態を示す斜視図
【図6】(イ)は補助シートのクロス組みプリプレグの強化繊維のクロス組み状態を示す拡大断面図、(ロ)は(イ)の縦断面図、(ハ)は補助シートを巻回する前の状態を示す斜視図、(二)竿尻端部に補助シートを施して元上を引き出した状態を示す縦断側面図
【図7】(イ)外側竿尻補強パターンとして、突起領域、補助シート領域、バイアス領域とで構成したもので、バイアス領域を施したものに、突起と補助シートを施す前の状態を示す斜視図(ロ)外側竿尻補強パターンとして、突起領域、補助シート領域、バイアス領域を施して元上を引き出した状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0048】
6 外側竿尻補強パターン
9 突起
10 元上(小径竿体)
9 元竿(大径竿体)
B 合わせ部
θ3 傾斜角
c 強化繊維(柔軟性繊維)
X 竿軸線
L 突起領域
M 補助シート領域
N バイアス領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径竿体の外周面と大径竿体の内周面とに亘って形成した合わせ部によって、小径竿体と大径竿体とを伸長状態に保持する振出竿であって、
前記外周面又は前記内周面の少なくとも一方の周面に、相手側周面に圧接する複数個の突起を形成して前記合わせ部を構成するとともに、前記複数個の突起の前記一方の周面からの突出高さを異なる高さに設定してある振出竿。
【請求項2】
前記小径竿体の最外層の外側に竿尻補強パターンを配置し、前記竿尻補強パターンを、強化繊維群を竿軸線に対して傾斜する傾斜角に沿って引き揃え配置した下側プリプレグと、前記強化繊維群を前記下側プリプレグの強化繊維群と前記竿軸線に対して対称となる状態に引き揃え配置した上側プリプレグとを重ね合わせて構成し、前記上側プリプレグの更に外側に前記複数個の突起を設けてある請求項1記載の振出竿。
【請求項3】
柔軟性繊維をクロスに組み合わせて構成したシート状のものに、マトリックス樹脂を含浸させて形成し前記柔軟性繊維を表出させた補助シート領域と、相手側周面に圧接する複数個の突起を突出高さが異なる状態に形成した突起領域とで合わせ部を構成し、前記突起領域を前記補助シート領域より竿尻側に配置してある請求項1又は2記載の振出竿。
【請求項4】
前記小径竿体の最外層の外側に竿尻補強パターンを配置し、前記竿尻補強パターンを、前記上側プリプレグと下側プリプレグとを重ねたバイアス領域と、前記複数個の高さの異なる突起を形成した突起領域と、前記柔軟性繊維を組み合わせた前記補助シート領域とで構成し、前記小径竿体の最外層に前記突起領域を配置するとともに、前記突起領域の竿元側に前記補助シート領域と前記バイアス領域とをその順番に配置してある請求項1又は2記載の振出竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−263819(P2008−263819A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109382(P2007−109382)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】