説明

釣竿と釣糸ガイド

【課題】釣竿ガイドが竿体に対して動き難くなっている釣糸ガイドの提供。
【解決手段】釣糸ガイドの足部の左右両側にはそれぞれ外方に張り出した一対の張出し部が形成され、且つ、左右両側は足元から前記一対の張出し部に向かって漸次幅狭となっている。また、一対の張出し部の足元側付け根は、前記足部の全長を100%とした場合に、足先から70〜80%の範囲に位置する。この足部を竿体sに載置して巻き糸tを巻き付けた後張出し部の足元側付け根間またはその前後方向近傍から引き出すと、張出し部の直前から足元側に引き締められ締付力の強くなった巻列部が存在することになり、足部はズレ移動し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き糸の巻き付けにより竿体に緊縛される釣糸ガイドと、当該釣糸ガイドが緊縛された釣竿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、釣糸ガイドを竿体に対して固定する場合には、竿体上に釣糸ガイドの足部を載置した状態で足部と竿体とに亘って巻き糸を巻き付けることで、先ず釣糸ガイドを竿体に対して緊縛しておく。次に、その緊縛した状態で、接着性のある合成樹脂剤を巻き糸の巻き付け部分に塗布して固めている。
而して、上記のように固定しておいても、釣糸ガイドに対してその足部が巻き付け部分から抜け出す方向に力が掛かると、足部が容易にズレ動き、極端な場合には抜け出てしまう場合がある。
そこで、足部のズレ移動を阻止するために、特許文献1、2では、足部の左右両側に外方に張り出すように一対の張出し部を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第455238号の類似意匠登録第1号公報
【特許文献2】実公昭62−1904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に従って足部に張出し部を形成していても、依然として足部は比較的容易にズレ動いてしまう。
それ故、本発明は、上記課題を解決するために、足部形状の工夫された釣糸ガイドと、その釣竿ガイドを使用することで釣糸ガイドの足部を竿体に対し一層強固に固定できた釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
通常は作業効率を考慮して、ワインディングマシーンを用い、巻き糸に一定のテンションを掛けながら巻き付け作業をしている。而して、張出し部の足元側直前は幅狭になっているため、その部位では張出し部より巻き糸の締付力が相対的に弱くなっている。本発明者は、足部の張出し部の位置等を工夫することで、巻き糸の糸端処理作業で巻き終わり側の糸巻列を引き締めるときに張出し部の直前の糸巻列部が引締められるようにして、足部のズレ移動を効果的に阻止することに成功した。
【0006】
本発明の請求項1の発明は、釣竿ガイドの足部と竿体とに亘って巻き糸が巻き付けられて前記足部が前記竿体に緊縛された釣竿用の釣糸ガイドにおいて、前記足部の幅方向両側から外方にそれぞれ張出す一対の張出し部の足元側付け根は、前記足部の全長を100%とした場合に、足先から70〜80%の範囲に位置し、且つ前記足部はその足元から前記足元側付け根まで漸次幅狭になっていることを特徴とする釣糸ガイドである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、一対の張出し部の形成部位の最大足幅寸法は、足元の足幅寸法と同じかまたはそれより小さく設定されていることを特徴とする釣糸ガイドである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した釣糸ガイドが竿体に対して緊縛されてなる釣竿である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の釣竿によれば、釣糸ガイドが竿体に対して強固に緊縛されており、抜け出る方向に力が掛かっても動き難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る釣竿の斜視図である。
【図2】図1の釣竿に取付けられた釣糸ガイドの斜視図である。
【図3】図2の釣糸ガイドの上面図である。
【図4】図1の釣竿を製造するための、巻き糸の巻き付け作業の説明図である。
【図5】図4に続く、巻き糸の糸端処理作業の説明図である。
【図6】図4、図5に関連して、糸巻列部から巻き糸が引き出された後の引締め作業開始前、途中、終了後の状態変化を示す図である。
【図7】図4、図5に関連して、巻き付け部位毎に締付力が異なることを示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る釣糸ガイドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る釣竿1を、図1〜図7に従って説明する。
先ず、釣糸ガイド3の全体構造を、図1、図2に従って説明する。
釣糸ガイド3のガイドフレームは、リング保持部5と、リング保持部5の下側から直接延出して竿尻側に延びる足部7とが一体に形成されてなる。足部7は全体として略舌片状をなしており、竿体sの外周面に対応して若干曲成されている。リング保持部5には硬質材料製のガイドリング13が内嵌され固定されている。上記したガイドフレームは、1枚の金属製平板材をプレス加工して所定のフレーム形状に打ち抜き、さらに曲げ加工して所定の立体形状に成形することにより形成されている。
竿体s上に釣糸ガイド3の足部7を載置した状態で、足部7と竿体sとに亘って巻き糸tが巻き付けられて糸巻列部zが形成されており、足部7が竿体sに対して緊縛されている。
【0012】
足部7の形状・寸法的特徴について、図3に従って詳細に説明する。
足部7は幅方向中心線に対してほぼ線対称となっている。足部7の幅方向両側の側縁は足元(A)から足先(D)側に向かって途中まで直線状に延び、且つ足先(D)側に向かう程互いに接近するよう傾斜している。即ち、足部7は、足元(A)から途中の縁(B)まで漸次幅狭となるテーパ部9になっている。なお、テーパ部9の傾斜角度(θ)は、最大で5°程度が好ましい。
【0013】
符号11、11は一対の張出し部を示す。この一対の張出し部11、11は足部7の幅方向両側から外方に向かってそれぞれほぼ三角形状に張出している。
各張出し部11の足元側付け根はテーパ部9の足先側縁端である(B)上にある。従って、以下、足元側付け根(B)と記載する。
【0014】
各張出し部11の側縁は、足元側12は急勾配になり、足先側は緩勾配になっている。足元側12は軸方向中心線に対して垂直に延びている場合に最も張出し効果が高くなるが、その前後の巻列どうしの間に隙間が出やすくなり、見た目が悪くなる。従って、図示のように、足元側12は足先側に向かって傾斜しているのが好ましい。
なお、足部7の幅方向両側の側縁は、張出し部11、11より足先(D)側では、張出し部11、11の緩傾斜縁に沿ってそのまま滑らかに内方に向かい、足先(D)で収束している。
【0015】
足部7の全長、即ち足先(D)から足元(A)の直下までの幅方向中心線の長さを100%とすると、付け根(B)はその70〜80%の範囲内にある。糸端処理作業で巻き糸tが引き出される位置は、足部7の全長の70〜80%の範囲が適当であり、それより足元(A)側では巻き糸tが弛みやすく、それより足先(D)側では巻き糸tが引出し難くなる。従って、その範囲から巻き糸tを引き出すことを前提として、両側の付け根(B)の位置が設定されている。
【0016】
また、一対の張出し部11、11の形成部位の最大足幅寸法、この実施の形態の場合には張出し部11、11を構成する三角形の頂点(C)間の距離寸法(x1)は、足元(A)の足幅寸法(x2)と同じか僅かに小さくなっており、張出し量が抑えられている。張出し部11が足元(A)より外方に張出す量が多くなると、特に細い竿体sに取付けた際に、張出し部が膨出して美観を損ねるからである。
【0017】
次に、巻き糸tを使って足部7を竿体に対して緊縛する作業を、糸巻き付け作業と糸端処理作業に分けて、図4、図5の工程毎の状態遷移図に従って説明する。
先ず、巻き付け作業はワインディングマシーンを用いて以下の工程順に行う。
(工程1)
釣糸ガイド3を竿体sの所定位置に載置し、竿体sのうち足部7より竿尻側へやや離れた辺りから、一定のテンションを掛けながら巻き糸tを巻き付け始めて足部7まで延ばし、足部7と竿体sとに亘ってさらに巻き付けを続ける。
【0018】
(工程2)
残り数巻きのところで、抜き輪rを挟んでおく。この挟む部位は、対向する付け根(B)、(B)を結ぶ線上またはその近傍である。尚、図5の場合は残り9巻きの所で抜き輪rを挟んでいる。
(工程3)
さらに、巻き付けを続けて、足部7の足元(A)上より1巻き余分に巻き付けて糸巻列部zを形成する。
以上で、糸巻き付け作業を終了する。
【0019】
(工程4.5.6)
巻き終えると、巻き糸tの端部を抜き輪rに通した後、抜き輪rを引張り、糸巻列部zの巻列(9)と巻列(10)の間から引き抜く。
それにより、巻き糸tの端部が糸巻列部zと竿体sとの間に巻き終わり側から引き込まれ、さらに、抜き輪rに追従して巻列(9)と巻列(10)の間から引き出される。
(工程7.8)
引き出された巻き糸tをそのまま巻き始め方向に引張って引き締めを行う。その後、引き出された巻き糸tの根元を切る。
以上で、糸端処理作業を終了する。
【0020】
上記の作業は、いずれも従来から慣用的に行われてきたものである。しかしながら、本発明では、釣り糸ガイド3の足部7が従来品と異なる形状的特徴を有しているために、糸巻列部zから巻き糸tが引き出された後の引締め作業により締付け状態の特異的な変化が起こる。
以下で、糸巻列部zから巻き糸tが引き出された後の引締め作業開始前、途中、終了後の状態変化を、図6、図7に従って詳細に説明する。
【0021】
(工程6)終了により形成された糸巻列部zは一定の同じテンション(D)を掛けられた巻き糸tが巻き付けられたものであり、図6(1)に示すように、上方から見ると、リング保持部5に掛かっている巻列(1)を除いては、各巻列の列長は略同じになっている。
テンションが同じなので、各巻列の足部7及び竿体sに対する締付力は、各巻列が足部7のどの部位に掛かるかで違っている。即ち、図7(1)に示すように、張出し部11の形成部位、即ち相対的に幅広の場合には、締付力(E1)は相対的に強くなり、図7(2)に示すように、張出し部11の足元(A)側直前、即ち、相対的に幅狭の場合には、締付力(E2)は相対的に弱くなっている。
従って、張出し部11が抜け出す方向に向かってズレ動き易い状態、換言すれば実質的に抜け勝手な状態になっている。
【0022】
一方、(工程7)で引き出された巻き糸tを引張って引締め作業を開始すると、巻き終わり側の巻列(1)側から引張られていく。巻列(2〜9)はテーパ部9に掛かっているので、巻列(2)、(3)‥‥、(9)と巻き終わり側から巻き始め側に向かって順次スムーズに引張られ、即ち、テンションがスムーズに伝搬し、巻き始め側に向かって滑り落ちしながら引き締められていく。上方から見れば、図6(2)に示すように、巻き終わり側の巻列(1)側から引張られるので、引き締め中は巻列(1)側から列長が順次小さくなっていく。
【0023】
そして、(8工程)を終了すると、巻列(1〜9)は一様に引き締められてテンションが増大しており、結果として、各巻列のテーパ部9及び竿体sに対する締付力が強くなっている。即ち、(工程6)で形成された、張出し部11の側縁のうち足元側12の(足元に向かう方向側の)直前が締付力が強くなった領域に変わっており、上方から見れば、図6(3)に示すように、巻列(1)、(2)‥‥、(9)の列長がそれより巻き始め側の巻列の列長より一様に小さくなっている。
このように、従来から慣用的に行ってきた糸端処理により、張出し部11の側縁のうち足元側12の直前の締付力は強くなっている。
【0024】
上記のようにして釣糸ガイド3が竿体sに緊縛された釣竿1では、張出し部11の足元側直前では上記したように締付力が強くなっている。従って、張出し部11、延いては足部のズレ移動が効果的に阻止される。
しかも、テンションの増大を通常の糸端処理作業を利用して行っており、余分な工程を必要としない。さらに、釣糸ガイド3の竿体sへの巻き付け作業の際には、従来と同じ程度のテンションを巻き糸tに掛ければよいので、巻き付け作業の際に釣糸ガイド3が竿体sに対して滑り易くなることもない。
【0025】
本発明の第2の実施の形態に係る釣糸ガイド21について、図8に従って説明する。
第1の実施の形態に係る所謂シングルフットタイプの釣糸ガイド3に対して、この釣糸ガイド21は所謂ダブルフット二本足タイプになっており、前後方向に足部23、25がそれぞれ設けられている。この釣糸ガイド21の足部23、25はテーパ部と一対の張出し部を備えており、それらは釣糸ガイド3の足部7のテーパ部9と一対の張出し部11、11にそれぞれ共通の形状・寸法的特徴を備えている。従って、巻き糸tを竿体及び足部に亘って巻き付けた後に、一対の張出し部の足元側付け根間またはその前後方向近傍から引き出させば、第1の実施の形態と同様な効果を奏する。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成が上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
例えば、張出し部自体の具体的な形状は特に限定されない。例えば、特許文献1や特許文献2の釣糸ガイドは、張出し部が足元側に位置していたり、張出し部の前方がテーパ状になっていなかったりしたために、引き締め作業中に張出し部までテンションが上手く伝搬せず、足部が結果としてズレ動きし易かったものであるから、それらの張出し部自体の形状アイデアは本発明でもそのまま利用できる。
いずれにしても、特許請求されている形状等を除いては、従来からあるまたは将来案出される形状や製造を任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る釣竿によれば、従来から慣用されている巻き糸を利用した釣糸ガイドと竿体との緊縛作業をするだけでありながら、釣糸ガイドを竿体に強固に固定して釣糸ガイドの竿体に対するズレ移動を効果的に阻止できる。
【符号の説明】
【0028】
1‥‥釣竿
3‥‥釣糸ガイド(第1の実施の形態) 5‥‥リング保持部
7‥‥足部 9‥‥テーパ部
11、11‥‥一対の張出し部
s‥‥竿体
t‥‥巻き糸 z‥‥糸巻列部
A‥‥足元 B‥‥付け根
C‥‥頂点 D‥‥足先
x1‥‥一対の張出し部11、11の形成部位の最大幅寸法
x2‥‥足元の幅寸法
21‥‥釣糸ガイド(第2の実施の形態)
23、25‥‥足部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿ガイドの足部と竿体とに亘って巻き糸が巻き付けられて前記足部が前記竿体に緊縛された釣竿用の釣糸ガイドにおいて、
前記足部の幅方向両側から外方にそれぞれ張出す一対の張出し部の足元側付け根は、前記足部の全長を100%とした場合に、足先から70〜80%の範囲に位置し、且つ前記足部はその足元から前記足元側付け根まで漸次幅狭になっていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、
一対の張出し部の形成部位の最大足幅寸法は、足元の足幅寸法と同じかまたはそれより小さく設定されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項3】
請求項1または2に記載した釣糸ガイドが竿体に対して緊縛されてなる釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−158209(P2010−158209A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3016(P2009−3016)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000237385)富士工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】