説明

釣竿のトップカバー

【課題】従来のトップカバーでは、竿先端部全体を収容し、汎用性を確保しようとすると、トップカバー全体が大きく不格好なものとなってしまう。
【解決手段】観音開きで展開状態となる一対のカバーハーフ3の内側凹部に変形可能なクッション片を填装し、カバーハーフ3の縁4にスライダーファスナー13を取付け、さらにカバーハーフ3を可撓性のある素材で形成する。トップカバー1に竿先端部を収容して閉じると、カバーハーフ3からの弾性的な押圧を利用して無理なく竿先端部全体を被包できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿のトップカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣竿のトップカバーは、釣竿の種類に応じて従来から種々のものがある。そのうち左右に2分割されたタイプのトップカバーは振出し式の釣竿に用いると、穂先側が下を向くと竿管が遊動することから、特許文献1のトップカバーでは、一対のカバーハーフの内側凹部に変形可能な保護部材を填装し、そこに竿管と共に穂先側のガイドを完全に収容すると共に係止板より後側にくる元竿側ではガイドを外方に臨ませながら抱持固定することで、係止板との協働により竿管の遊動を阻止しガイドの曲げや破損を防止することが提案されている。
また特許文献2の様に、竿先部全体を収容してカバーする所謂フルカバータイプのトップカバーも提案されている。このトップカバーは、変形部材は填装せず、元竿部をベルト固定すると共に、内側面に突設した中竿保持受け座により、中竿を保持する事により元竿と中竿の2箇所で支承固定する事で、釣竿の折損を防止する様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−172368号公報
【特許文献2】実開昭53−102486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、特許文献1のトップカバーでは、元竿側のガイドが外側に裸出してしまうので、何かに不用意に当たれば容易に破損してしまう。
また、特許文献2のトップカバーでは、変形部材が填装されておらず、竿や装着されるガイドに合わせて外形や中竿保持受け座を設定する必要があり、汎用性を持たせる事が極めて難しかった。また変形部材を填装し、保護機能を高めようとした場合、大型化してしまう欠点があった。
それ故、本発明は、竿先端部全体を収容してカバーするタイプのトップカバーであり、必要以上に大型化しないと共に、装着されるガイドの大きさ等が変化しても対応できる汎用性の高さを備え、保護機能にも優れるトップカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
元竿側のガイドは、穂先側のガイドより大きいので、ただ単に保護機能を高める為に、穂先側を被包した変形可能な保護部材で元竿側も被包しようとすると、穂先側よりも保護部材であるクッション片の厚みをかなり増やすことになり、結果としてトップカバー全体が大きく不格好なものとなってしまう。さらに、元竿側のガイドどうしも大きさが異なるため、各ガイドに対応してクッション片の凹み度合いを調整して製作するとなると、非常に面倒であり、現実的ではない。
本発明者は、鋭意研究の結果、カバーを可撓性のある素材で形成し、ファスナーで閉じ合わせてカバーでクッション片を押圧することで、穂先側よりクッション片の厚みを減らしても、元竿側をクッション片で安定的に被包することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の請求項1の発明は、基部に竿体取付具を有する釣竿のトップカバーにおいて、観音開きで展開状態となる一対のカバーハーフと、前記一対のカバーハーフの内側凹部にそれぞれ填装された変形可能なクッション片と、前記一対のカバーハーフの縁にそれぞれ設けられ、互いに閉じ合わされて前記内側凹部を閉鎖するファスナーとを備え、前記カバーハーフを可撓性のある素材で形成したことを特徴とする釣竿のトップカバーである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した釣竿のトップカバーにおいて、一対のカバーハーフの内側凹部の先端側ではクッション片はオフセット配置されていることを特徴とする釣竿のトップカバーである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した釣竿のトップカバーにおいて、クッション片はカバーハーフの内側凹部に着脱自在に填装されていることを特徴とする釣竿のトップカバーである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトップカバーは竿先端部全体を収容してカバーできるタイプのものであり、コンパクトで製作が容易であり、十分な穂先保護機能を有すると共に汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るトップカバーの閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】図1のトップカバーの側面図である。
【図3】図1のトップカバーの開いた状態を示す斜視図である。
【図4】図3のトップカバーを開いて釣竿の先端部を配置した状態を示す平面図である。
【図5】図1のトップカバーに竿先端部を収容する作業手順を説明する図である。
【図6】図1のトップカバーで竿先端部を収容したときの変形状態を説明する図である。
【図7】図6と同様に、図1のトップカバーで竿先端部を収容したときの変形状態を説明する図である。
【図8】図1のトップカバーでクッション片を着脱自在とした改変例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るトップカバー1を、図面にしたがって説明する。
図1、図2で符号3A、3Bは一対のカバーハーフを示し、これら一対のカバーハーフ3A、3Bは可撓性のある樹脂素材の一種であるEVAで構成されており、中央の折曲部5をヒンジとして観音開きするようになっている。
各カバーハーフ3A/3BはガイドGを装着した竿先端部Sとその後側の元竿Mの形状に対応して外方に膨らんだ異径筒の半割状になっており、一対のカバーハーフ3A、3Bどうしを閉じ合わせると、前側が竿先端部Sの収容部7を構成し、後側が元竿Mを受ける基部9を構成する。トップカバー1の前端は閉塞し、後端側の基部9には元竿Mを受ける受口11が形成される。
【0012】
カバーハーフ3A/3Bの縁にはスライダーファスナー13の務歯を備えたエレメント部14が配置されており、スライダーの動きによってエレメント部14が係合してカバーハーフ3A、3Bどうしが閉じ合わされる。
図3に示すように、基部9の内側面には、元竿Mをしっかりと保持するために、クロロプレンゴムまたはEPDMなどの合成ゴムで構成された滑り止め用部材15が張り合わされている。基部9の外側面には竿体取付具としての結着帯17の一端が取り付けられている。結着帯17の両端側には面ファスナーのループ側とフック側がそれぞれ添着されている。
結着帯17の表面側は面ファスナーのループ面になっており、遊端側の裏面にはフック部が取り付けられている。
【0013】
各カバーハーフ3A/3Bの内側凹部には変形可能な発泡ポリエチレンで構成されたクッション片19が填装され接着されている。カバーハーフ3A/3Bに接する側のクッション片19の形状はカバーハーフ3A/3Bの内側凹部に対応した形状になっており、カバーハーフ3A/3Bの内側凹部に埋め込まれた状態となっている。各カバーハーフ3A/3Bに填装されたクッション片19は中央の折曲部5で途切れて分離している。
【0014】
クッション片19の竿先端部Sを被包する側の形状は、カバーハーフ3A側とカバーハーフ3B側とでは異なっている部分があるので、先ず、カバーハーフ3A側で説明する。
収容される竿先端部Sの竿軸方向に沿って、クッション片19は先端部19X、中間部19Y、基部寄り部19Zと区分されており、クッション片19の中間部19Yは、カバーハーフ3Aの縁4と折曲部5とで画定される平面とほぼ面一状態で平らな上面を形成している。
【0015】
クッション片19の基部寄り部19Zは、カバーハーフ3Aの縁4と折曲部5に沿う部分を帯状に残して凹んでおり、その凹み21により中間部19Yとの境界部分ではほぼ垂直な段差壁23が形成されている。この段差壁23は上方から見て中央で屈折した浅いV字状を為しており、中央の屈折部は基部側に寄っている。
クッション片19の先端部19Xは、カバーハーフ3Aの縁4と折曲部5を超えて隆起しており、その隆起部25により先端部19Xと中間部19Yとの境界部分ではほぼ垂直な段差壁27が形成されている。この段差壁27は上方から見て中央で切頭された山状を為しており、中央の切頭部は先端側に寄っている。
上記したように、クッション片19は竿軸方向に先端部19X、中間部19Y、基部寄り部19Zと連続しており、その境界部分で段差壁23、27が形成されている。
【0016】
カバーハーフ3B側でも、収容される竿先端部の竿軸方向に中間部19Y、基部寄り部19Zと連続しており、中間部19Yと基部寄り部19Zはカバーハーフ3A側に填装されたクッション片19の中間部19Yと基部寄り部19Zと同じ構成になっており、その境界部分で段差壁23が形成されている。
一方、カバーハーフ3B側では、カバーハーフ3A側の先端部19Xに対応する位置にはクッション片19が欠落しており、カバーハーフ3Bの内側凹部の形状がそのまま裸出している。そして、中間部19Yとの境界部分には段差壁29が形成されている。カバーハーフ3Aに填装された先端部19Xの隆起部25はこの裸出した内側凹部と凹凸関係にあり、クッション片19がカバーハーフ3A側にオフセット配置された状態になっている。
【0017】
カバーハーフ3Aとカバーハーフ3Bとを折曲部5を境に折り曲げて閉じ合わせると、カバーハーフ3Aに填装されたクッション片19X/19Y/19Zとカバーハーフ3Bに填装されたクッション片19Y/19Zとが向かい合う。
カバーハーフ3A側の中間部19Yとカバーハーフ3B側の中間部19Yとは接触して所謂パーティングラインを形成し、カバーハーフ3A側の基部寄り部19Zとカバーハーフ3B側の基部寄り部19Zは凹み21があるので中央に元竿側を収容するのに十分な空洞が形成される。カバーハーフ3A側の段差壁23とカバーハーフ3B側の段差壁23は連続しており、その境界には段差は殆ど形成されない。
カバーハーフ3A側の先端部19Xは、カバーハーフ3Bの内側凹部に入り込み、カバーハーフ3A側の段差壁27とカバーハーフ3B側の段差壁29は重なり合っている。
【0018】
釣竿の先端部を収容する場合には、図4に示すように、元竿Mを基部9で受け、竿先端部Sのうち、穂先側のガイド付き竿管S1を中間部19Yで受け、元竿側のガイド付き竿管S2をカバーハーフ3に填装されたクッション片19の基部寄り部19Zで受けることになる。
【0019】
上記した構成のトップカバー1に竿先端部Sを収容する場合には、図5に示すように、カバーハーフ3A側で竿先端部Sと元竿Mを受け止めさせて位置決めしてから、カバーハーフ3Bを閉じ合わせ、スライダーファスナー13で係合閉塞すると共に、基部9では結着帯17を巻き回して面ファスナーで係合固定する。
【0020】
トップカバー1に竿先端部Sを収容して閉じると、図6に示すように、カバーハーフ3A側の中間部19Yとカバーハーフ3B側の中間部19Yは変形により中央で穂先側のガイド付き竿管S1を被包した状態となっている。元竿側でもカバーハーフ3A側の基部寄り部19Zとカバーハーフ3B側の基部寄り部19Zにより画定された空洞内において元竿側のガイド付き竿管S2は、カバーハーフ3A/3Bからの弾性的な押圧を利用して無理なく被包できている。
トップカバー1の先端部では、内部がカバーハーフ3Aに填装された先端部19Xだけで隙間無く埋め込まれているので、穂先側の竿管に伸長方向への力が掛かっても段差壁27に押されるので遊動しない。基部寄り部19Zのように竿軸方向にパーティングラインが形成されていると、竿管がパーティングラインの間を徐々に拡げるので、穂先側の竿管に伸長方向への力が繰り返し掛かると長期的には遊動領域が形成され易いが、上記したようにこの実施の形態では竿管の遊動方向にはパーティングラインが無く垂直の段差壁27が立ちはだかっているので、上記のような不都合も無い。
【0021】
また、トップカバー1に竿先端部Sを収容して閉じたときには、図7に示すように、カバー3は外方に膨らむが、その分だけファスナー13側が収縮するので、カバー3に無理な負荷が掛かることはない。
【0022】
上記の実施の形態では、クッション片19はカバーハーフ3A/3Bに固定されているが、図8に示すように、クッション片19側とカバーハーフ3A/3B側に面ファスナー31のループ側33とフック側35を取付けて、着脱自在にしてもよい。
このように構成すれば、クッション片19が汚れた場合には取り外して洗浄できる。また、長期使用により、クッション片19の凹んだ状態への永久変形が進行した場合には、クッション片19を交換することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成が上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、カバーハーフ3B側の先端部ではクッション片19が完全に欠落しているが、クッション片19を薄く設けてもよい。
いずれにしても、特許請求されている形状等を除いては、従来からあるまたは将来案出される形状や製造を任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るトップカバーによれば、竿先端部全体を収容してカバーできるタイプでありながらコンパクトで製作が容易であり、十分な穂先保護機能を有すると共に汎用性が高い。
【符号の説明】
【0025】
1‥‥トップカバー
3‥‥カバー
3A、3B‥‥カバーハーフ 4‥‥縁
5‥‥折曲部 7‥‥収容部
9‥‥基部 11‥‥受口
13‥‥スライダーファスナー 14‥‥エレメント部
15‥‥滑り止め用部材 17‥‥結着帯
19‥‥クッション片
19X‥‥先端部 19Y‥‥中間部 19Z‥‥基部寄り部
21‥‥凹み 23‥‥段差壁
25‥‥隆起部 27‥‥段差壁
29‥‥段差壁 31‥‥面ファスナー
33‥‥ループ側 35‥‥フック側
S‥‥竿先端部 S1‥‥穂先側のガイド付き竿管
S2‥‥元竿側のガイド付き竿管 M‥‥元竿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部に竿体取付具を有する釣竿のトップカバーにおいて、観音開きで展開状態となる一対のカバーハーフと、前記一対のカバーハーフの内側凹部にそれぞれ填装された変形可能なクッション片と、前記一対のカバーハーフの縁にそれぞれ設けられ、互いに閉じ合わされて前記内側凹部を閉鎖するファスナーとを備え、前記カバーハーフを可撓性のある素材で形成したことを特徴とする釣竿のトップカバー。
【請求項2】
請求項1に記載した釣竿のトップカバーにおいて、
一対のカバーハーフの内側凹部の先端側ではクッション片はオフセット配置されていることを特徴とする釣竿のトップカバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載した釣竿のトップカバーにおいて、
クッション片はカバーハーフの内側凹部に着脱自在に填装されていることを特徴とする釣竿のトップカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−244958(P2012−244958A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120462(P2011−120462)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000237385)富士工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】