説明

釣竿保持装置

【課題】釣竿を上下させながら保持する釣竿保持装置に関し、釣竿の揺動ストロークを変更でき、電動機や往復運動機構を内蔵したケーシング内への海水や湿気の浸入をより確実に防止できるようにする。
【解決手段】竿受台2を揺動する駆動ユニット7は、基端を固定台1に枢支されたケーシング8と、軸方向移動自在に設けた往復動杆11と、この往復動杆を囲んで装着された密閉蛇腹15と、往復動杆11を進退させる往復運動機構10と、往復動杆11の先端に軸着されて竿受台2に当接するローラ13とを備え、この駆動ユニットを傾動するストローク調整ねじ16を備えている。電動機9や往復運動機構10は、密閉蛇腹15で封止されたケーシング8内に設けられている。ストローク調整ねじ16は、竿受台2の支点ピン3とローラ13の当接位置との間隔を変化させ、釣竿の上下揺動ストロークを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣船の船縁などに取り付けて釣竿を自動的に上下揺動させながら保持する釣竿保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚釣りは、釣竿の先端から垂らした釣糸に餌と釣針とを付けて行われるが、魚の注意を引くため及び餌が生きているように見せかけるために、釣竿を上下に揺動させながら魚が食い付くのを待っている。しかし、竿を常に手で持って動かしているのは疲れるし、他の作業のために釣竿から手を離さなければならないこともあり、また一人で複数本の竿を使って釣をするときは、総ての竿を手で持って動かすことは、不可能である。そこで一時的に竿を保持する固定の竿受や、竿を自動的に揺動させながら保持する竿受装置が提案されている。
【0003】
固定の竿受は、釣船の船縁に固定できるようにした基台に竿を支持する竿受台を取り付けただけのもので、竿を積極的に上下動させる構造ではない。竿受を船縁に取り付けたり、釣糸に浮きが設けられているような場合には、船の揺れや波によって水中の餌も動くけれども、魚の注意を引くための動きとしては、不十分な場合が多い。
【0004】
そこで、電池や漁船のバッテリーで回転する電動機を駆動源として、竿受を積極的に揺動させる機構を備えた竿受装置が提案されている。これらの装置は、船縁等に固定的に設置される固定台と、この固定台に取り付けられた電動機及びカムやクランクなどの往復運動機構と、この往復運動機構により揺動駆動される竿受とを備えている。
【特許文献1】特開平7‐241153号公報
【特許文献2】特開平8‐126458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
釣竿の揺動機構を設けた竿受装置では、釣竿の長さや釣ろうとする魚の種類に応じて、竿の揺動周期や揺動ストロークを変更したいという要求がある。
【0006】
しかし、釣竿を揺動させながら支持する従来の竿受装置は、竿の揺動ストロークを変更できないか、あるいは変更できるものでは構造が複雑であるという問題と、装置内に海水や湿気が浸入するのを防止するのが難しいという問題があった。
【0007】
すなわち、この種の装置は、竿の往復運動機構としてカムやクランクを用いているが、これらの機構は、ストローク調整が困難であるため、竿の揺動ストロークを変化させることができるようにしようとすると、カムやクランクで往復揺動するレバーを設けて、このレバーと竿受台との連結位置を変更できるような機構を付加する必要があり、構造が複雑になってコスト高になる。
【0008】
また、往復運動機構やストローク調整機構は、ケーシングに内蔵して海水や湿気の入らない密封構造とする必要があるが、特にストローク調整機構を設けた構造では、密封装置の構造が複雑になり、密封装置の損傷によって装置内部に海水や塩気を含んだ湿気が進入して、装置寿命を著しく低下させるという問題があった。
【0009】
この発明は、竿受に取り付けた釣竿の揺動ストローク、すなわち竿受の揺動角を簡単に変更することが可能で、電動機や往復運動機構を内蔵したケーシング内への海水や湿気の浸入をより確実に防止することができ、しかも構造が簡単で安価に提供することが可能な自動揺動装置を備えた釣竿保持装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、固定台1と、この固定台に支点ピン3で枢支された竿受台2と、この竿受台を揺動する駆動ユニット7とを備えた釣竿保持装置において、前記駆動ユニットは、基端を前記固定台に枢支されたケーシング8と、このケーシングの先端側に軸方向移動自在に設けた往復動杆11と、この往復動杆を囲んでケーシング8との間に装着された密閉蛇腹15と、前記往復動杆を進退させる往復運動機構10と、前記往復動杆の先端に軸着されて前記竿受台に当接するローラ13とを備え、この駆動ユニットを前記ローラの転動方向に傾動するストローク調整ねじ16を備えている釣竿保持装置を提供することにより、上記課題を解決している。
【0011】
上記のこの発明の釣竿保持装置は、固定台1を釣船の船縁などに固定して設置する。従来提供されている固定の(揺動機構を備えていない)竿受は、船縁に固定する基台と竿受台とをボルト等で締結した構造のものが多いので、既に提供されているこの種竿受装置の基台上に固定台1を取り付ける構造とするのが簡便であり、この発明の釣竿保持装置と固定の竿受とを必要に応じて交換して用いることもできるという利点がある。
【0012】
往復運動機構10は、電池や船に搭載されたバッテリー駆動の電動機を駆動源とするカム機構やクランク機構とするのが合理的で、クランクの回転中心を往復運動の軸線上からずらした早戻り機構などを用いることにより、上昇時と下降時で異なる速度とすることもできる。
【0013】
電動機9や往復運動機構10及び往復動杆11の案内部12は、密閉蛇腹15で封止されたケーシング8内に設けられ、海水や湿気から保護されている。往復動杆11の先端に設けるローラ13は、テトラフルオロエチレン樹脂などの低摩擦樹脂製とするのが摩擦の低減及び耐久性の点で好ましい。
【0014】
ストローク調整ねじ16は、駆動ユニット7をその支点18回りに傾動させ、竿受台2の支点ピン3とローラ13の当接位置との間隔を変化させることにより、往復動杆11が定まったストロークで往復動したときの竿受台2の揺動角を変化させ、これにより竿受台2に搭載された釣竿の上下揺動ストロークを変化させる。
【0015】
この発明の釣竿保持装置は、竿受台2に当接する往復動杆11の先端部分とストローク調整用のねじ16がケーシング8の外に露出しているが、これらは樹脂製やステンレス製とすることによって、塩水や湿気に耐える構造とすることができると共に、錆びたり損傷した場合に容易に交換することができる。また、密閉蛇腹15は、軸方向のみに進退する円筒ないし円錐形のものとすることができ、密閉が容易でかつ損傷し難い構造にできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明により、釣ろうとする魚の種類や釣竿の長さに応じて竿受台2の揺動角を簡単に調整することができ、かつ電動機9や往復運動機構10をケーシング8内に密閉して耐久性を向上させた簡単な構造の自動竿揺動機構を備えた釣竿保持装置を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明の好ましい一実施例を示した図である。図中、1は固定台、2は支点ピン3で固定台1に枢支された竿受台、4及び5は、竿受台2に設けられた竿受、一部を示す6は、竿受4、5で保持された釣竿である。
【0018】
7は駆動ユニットで、8はそのケーシング、9は揺動駆動用の電動機、10は往復運動機構、11は案内部12でケーシング8に軸方向移動自在に支持された往復動杆、13は往復動杆11の先端にブラケット14を介して軸支された低摩擦樹脂ローラ、15は往復動杆11の先端とケーシング8の先端側端部との間に設けられた密閉蛇腹、25は往復動杆11の先端とケーシング8の先端側端部との間に設けられた圧縮コイルばねである。16は駆動ユニット7の支点18回りの角度を設定するストローク調整ねじである。
【0019】
駆動ユニット7は、その基端の支点18を固定台1に枢着され、先端のローラ13が自重及び釣竿6の重さで支点ピン3回りに下方に揺動しようとする竿受台2の下面に当接している。図の往復運動機構10は、クランク機構で電動機9の出力軸に基端を固定されたクランク19と、当該クランクの先端と往復動杆11の基端を枢支連結する連結ロッド20で形成されている。往復動杆11は丸棒で、これを案内するストロークベアリングや低摩擦樹脂ブッシュなどの案内部12は、ケーシング8の上端内側に嵌着されている。
【0020】
往復動杆11の先端に設けた鍔状のブラケット14とケーシング8の先端部との間には、往復動杆11を上方に付勢する圧縮コイルばね25が装架されている。また、ブラケット14とケーシング8の先端部との間に、往復動杆11の往復動部を密閉する蛇腹15が、その上限端の固定部にパッキン等を介して気密に固定されている。ローラ13は、ブラケット14に自由回転状態で軸支されている。
【0021】
ストローク調整ねじ16は、基端に摘み21を備えたねじで、中間にナット22を螺合した後、先端に小さな係合ナット23を螺合して接着剤で固定した構造である。ナット23は、その前後面が球面となっている。固定台1にはストローク調整ねじ16の装着部に側方(図の手前側)からナット22及びねじ16を挿入する凹部が形成してあり、またケーシング8の対応部分にもねじの先端と係合ナット23とを側方から挿入する連結ブラケット24が固着されている。ストローク調整ねじ16は、ナット23を含めて固定台1及び連結ブラケット24の凹所に側方から挿入して装着される。
【0022】
電動機9は、漁船のバッテリーで駆動するもので、たとえば自動車のワイパー駆動用の電動機を用いるのが小型で、かつ適当な減速比の減速機が内蔵されているために好都合である。この電動機に電気を供給する接点は、ケーシング8の適宜な箇所に設けておく。竿から電動機9に作用する負荷は、竿を上昇させるときに大きくなり下降時に小さくなる。圧縮コイルばね25は、この負荷変動を均一にする作用をしている。このような往復動杆11を上方に付勢するばねを設けることにより、電動機9の容量を小さくできる。
【0023】
以上説明した装置は、固定台1を釣船の船縁に固定し、電動機9を回転駆動することにより、ローラ13が上下動して、竿受台2を支点ピン3回りに揺動させることにより、釣竿6を上下に往復揺動させる。調整ねじ16を螺進させると、竿受台の支点ピン3とローラ13との間隔が大きくなり、釣竿6の揺動ストロークは小さくなる。逆に調整ねじ16を退避させると、支点ピン3とローラ13の距離が短くなって、釣竿6の揺動ストロークは大きくなる。
【0024】
竿受台2は支点ピン3回りに揺動運動し、ローラ13は往復動杆11の軸方向に直線往復動するが、ローラ13の転動により、力の伝達が円滑に行われる。また、ストローク調整ねじ16を進退させたときの駆動ユニット7の揺動もローラ13の回転によって竿受台2との間に摩擦を生ずることなく円滑に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態を模式的に示す側面図
【符号の説明】
【0026】
1 固定台
2 竿受台
3 支点ピン
7 駆動ユニット
8 ケーシング
10 往復運動機構
11 往復動杆
13 低摩擦樹脂ローラ
15 密閉蛇腹
16 調整ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定台(1)と、この固定台に支点ピン(3)で枢支された竿受台(2)と、この竿受台を揺動する駆動ユニット(7)とを備えた釣竿保持装置において、前記駆動ユニットは、基端を前記固定台に枢支されたケーシング(8)と、このケーシングの先端側に軸方向移動自在に設けた往復動杆(11)と、この往復動杆を囲んでケーシング(8)との間に装着された密閉蛇腹(15)と、前記往復動杆を進退させる往復運動機構(10)と、前記往復動杆の先端に軸着されて前記竿受台に当接するローラ(13)とを備え、この駆動ユニットを前記ローラの転動方向に傾動するストローク調整ねじ(16)を備えている、釣竿保持装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−149278(P2006−149278A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344515(P2004−344515)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(393021303)
【Fターム(参考)】