説明

釣竿保持装置

【課題】釣竿保持部を基体から取り外すことなく、基体の縦と横の支持面に付け替えることが可能な釣竿保持装置の提供を目的としている。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る釣竿保持装置1は、縦フレーム2Aと横フレーム2Bとを有する船縁に取り付け可能な基体2と、基体2に装着された釣竿保持部10とを備えている。釣竿保持部10は、基体2に対してスライド可能に取り付けた軸部23に保持されており、軸部23をスライド案内溝21に沿ってスライドさせることで、基体2の縦フレーム2Aと横フレーム2Bとに選択して装着可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船縁に取り付け可能な釣竿保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、船釣りをする際、船縁に釣竿を保持するための釣竿保持装置を装着することが行われている。従来の船縁に取り付け可能な釣竿保持装置は、コの字状の基体と、この基体に取り付けた釣竿保持部とを有しており、万力等のクランプ装置で基体を船縁に取り付け、魚のあたりを待つ間、釣竿保持部に釣竿を保持させている。
【0003】
ところで、船縁は、取り付け場所や船によって形状が異なるため、コの字状の基体、及び万力を、船縁の上下方向を挟持するようにして取り付けたり、或いは、船縁の前後方向を挟持して取り付けることがあり、この取り付け方法に応じて基体に対する釣竿保持部の取り付け位置を変更できるようにした釣竿保持装置が、例えば、特許文献1で紹介されている。
【0004】
この特許文献1に開示されている釣竿保持装置は、コの字状の基体の縦と横の支持面を選択して釣竿保持部の取り付け位置を変更できるように構成されており、釣竿保持部は、基体の縦と横の支持面に対してボルトで着脱自在に取り付けできるようになっている。
【特許文献1】実開平4−80369号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した釣竿保持装置において、釣竿保持部を、それぞれ基体の縦と横の支持面に付け替える場合、釣竿保持部を一度基体から取り外さなければならず、このため付け替え操作が煩わしく、また、付け替え操作を揺れる船上で行うと、釣竿保持部やボルト等を落としてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、釣竿保持部を基体から取り外すことなく、基体の縦と横の支持面に付け替えることが可能な釣竿保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、縦フレームと横フレームとを有する船縁に取り付け可能な基体と、該基体に装着された釣竿保持部とを備える釣竿保持装置において、前記釣竿保持部は、前記基体に対してスライド可能に取り付けた軸部に保持されており、前記軸部をスライドすることで、前記基体の縦フレームと横フレームとに選択して装着可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、釣竿保持部は、前記軸部を介して基体に対してスライド可能に取り付けられており、基体の縦フレームと横フレームとに選択して装着可能であるため、釣竿保持部を基体に対して取り外す必要がなくなり、これにより付け替え作業が容易になると共に、付け替え作業中において、釣竿保持部やボルト等を落とすこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図1から図7を参照して説明する。
これらの図において、図1は、船縁に取り付けた釣竿保持装置の全体構成を示す図、図2は、釣竿保持装置の詳細な構造を示す部分断面図、図3は、釣竿保持部が回動する状態を示す部分断面図、図4は、図2に示す状態から釣竿保持部を付け替えた状態を示す部分断面図、図5は、図4に示す状態で船縁に取り付けた状態を示す部分断面図、そして、図6は、図2乃至図5に示す主要部の拡大図、図7は、図5のB方向矢視図である。
【0010】
釣竿保持装置1は、船縁50に取り付けられるように構成されており、実際に船縁50に取り付け、固定される基体2と、釣竿60を保持する釣竿保持部10とを備えて構成されている。
【0011】
前記船縁50は、図1及び図5に示すように、船によって、或いは着座する位置によって形状が異なっており、図1に示すように水平方向の張出部50aがあれば、釣竿保持装置1は、後述するクランプ機構を上下方向に締め付けて取り付け、図5に示すように、水平方向の張出部50aがない場合や短い形状であれば、同クランプ機構を水平方向に締め付けて取り付けできる。
【0012】
前記基体2は、縦フレーム2A、横フレーム2B及びクランプ支持フレーム2Cを具備したコの字状に形成されており、クランプ支持フレーム2Cに装着(螺着)されたクランプ機構3を締め付けることで、基体2を船縁50に締め付け、取り付けすることが可能となっている。このクランプ機構3は、公知の構成と同様、縦フレーム2Aと平行に延出するシャフト3aを有しており、シャフト3aの下端に装着された操作レバー3bを回転することで、シャフト3aの上端の押圧部3cを横フレーム2Bに向けて進退させ、基体2を船縁50の張出部50a(図1参照)や、船縁50の側壁50b(図5参照)に対して締め付け、取り付けすることが可能となる。
【0013】
前記基体2の横フレーム2Bの上面には、図1及び図2に示すように、釣竿保持部10が取り付けられている。この釣竿保持部10は、後述する位置変更機構によって、基体2から取り外すことなく、縦フレーム2Aの上面に移動させて取り付けすることが可能となっている(図5参照)。
【0014】
釣竿保持部10は、釣竿60が載置されるY字状の竿受け部12と、釣竿緊締具15aを具備する竿掛け部15と、これら竿受け部12と竿掛け部15を支持する台座17とを有している。
【0015】
前記竿受け部12は、台座17に対して矢印A方向に揺動することができ、それにより、その位置を上下方向で調整可能に構成されている。具体的には、竿受け部12は、その本体12aの基端部が支持部12bによって台座17に対して揺動可能に軸支されると共に、本体12aには、ボルト13が螺入されている。このボルト13は、本体12aの下面から下側に突出しており、その突出端には、ツマミ13aが装着されている。このため、本体12aを台座17に対して持ち上げ、ツマミ13aを回転操作してボルト13の位置(突出量)を調整することで、竿受け部12の位置を上下方向で調整できる。
【0016】
前記竿掛け部15は、台座17に対して取り付けられており、実釣時において、釣竿60の元竿に取着される釣竿緊締具15aを着脱可能にしている。この場合、公知のように、レバー15bを操作することで、釣竿緊締具15aは竿掛け部15から取り外しできるよう構成されている。
【0017】
前記釣竿保持部10は、位置変更機構20を構成する軸部23をスライド操作することによって基体2から取り外すことなく、横フレーム2B及び縦フレーム2Aの上面に対して、選択的に取り付けることが可能となっている。
【0018】
以下、位置変更機構20の構成について詳細に説明する。
前記基体2の縦フレーム2Aと横フレーム2Bとが略直角に交差する部位である交差部Kは、基体2が縦フレーム2Aと横フレーム2Bに変移するように屈曲する角を形成しており、この交差部Kには、縦フレームから交差部を通って横フレームに通じるスライド案内溝21が形成されている。このスライド案内溝21は、交差部領域を通って縦フレーム2A側および横フレーム2B側へと延びており、縦フレーム2Aの表面から横フレーム2Bの表面にかけて連続するように開口する略L字形の貫通長孔として形成されている。具体的には、図6に明確に示されるように、スライド案内溝21は、幅の狭い第1の溝部21aと幅の広い第2の溝部21bとから成っており、第1の溝部21a内に挿通された軸部23の基端部が第2の溝部21b内に突出し、その突出端部に、軸部23がスライド案内溝21から脱落しないようにする抜け止めのナット23aが螺合されている。そして、軸部23は、スライド案内溝21に遊嵌され、後述するように、スライド案内溝21の中をこれに沿って縦フレーム2A側から横フレーム2B側、及び横フレーム2B側から縦フレーム2A側にスライドで移動することにより、その先端部を横フレーム2B表面側と縦フレーム2A側とにおいて選択的に突出させることができる。なお、ナット23aは第1の溝部21aと第2の溝部21bとの間の段差部29に係合し得るようになっている。この段差部29は、基体2の横フレーム2B及び縦フレーム2Aの定位置に釣竿保持部10を位置決めするため、スライド案内溝21の縦フレーム2A側および横フレーム2B側の所定位置にそれぞれ設けられている(図2等参照)。
【0019】
また、このようにして基体2から突出する軸部23は、釣竿保持部10を支持しており、上記したようにスライドすることで、釣竿保持部10を、選択的に縦フレーム2Aの表面、及び横フレーム2Bの表面のいずれかに移動させて取り付ける機能を有する。この場合、軸部23には、雄ネジ部23bが形成されており、その部分にナット部材24が螺合されている。このナット部材24は、一端に摘み24aを具備し且つ軸方向に延出して内側に軸部23aの雄ネジ部23bと螺合する雌ネジ部を有する袋ナットとして構成されており、軸部23に螺合されるナット部材24は、前記釣竿保持部10の台座17に形成された挿通孔17aに挿通され、摘み24aを台座17の表面から露出させている。
【0020】
この結果、摘み24aを回転して締め付け操作することで、図1及び図2に示すように、台座17(釣竿保持部10)は、ナット23aと摘み24aとの間で挟圧され、横フレーム2Bの表面に押圧され、移動が規制されて取り付けられる。
【0021】
また、ナット部材24を緩めると、ナット23aと摘み24aとの間での挟圧状態が解除され、台座17(釣竿保持部10)は、軸部23(ナット部材24を構成する袋ナット)に沿って上方に移動することが可能となる。すなわち、緩めたナット部材24が軸部23に螺合したままで釣竿保持部10を軸部23に沿って上方に移動させ、横フレーム2Bから離して軸部23をスライド案内溝21に沿って縦フレーム2A側にスライドし(図3参照)、これに伴って釣竿保持部10を縦フレーム2A側に移動させることで、釣竿保持部10を基体2から取り外すことなく、縦フレーム2Aの表面に移動させて取り付けることができる。なお、この場合、図6に示すように、軸部23の先端部には、例えば、周方向溝が形成されており、この部分にC型のリング状部材で構成された抜け止め23dが装着されている。このような抜け止め23dを装着しておくことで、ナット部材24を緩めていっても、最終的に、その雌ネジ部が抜け止め部23dに引っ掛かってナット部材24が軸部23から抜けて脱落することを防止している。
【0022】
そして、釣竿保持部10を、縦フレーム2A側にスライドして移動させた後は、再び摘み24aを締め付け操作することで、図4に示すように、台座17(釣竿保持部10)を、縦フレーム2Aの表面に押圧して、移動を規制して取り付けることができ、これにより、図5に示すように、クランプ機構3を水平方向に締め付けて釣竿保持装置1を取り付けることが可能となる。
【0023】
すなわち、ナット部材24を螺合操作するだけで、釣竿保持部10は、基体2から外れることなく、所望のフレーム(縦フレーム2A又は2B)に対して、押圧、取り付けすることができ、また、この時にナット部材24は、抜け止め23dによって軸部23に対し抜け止めされ、軸部23から脱落することが防止されている。なお、交差部Kの上面側には釣竿保持部10が縦フレーム2Aから横フレーム2Bにスライド移動するときに引っ掛からずスムーズに通過できるように円弧状に形成され、交差部Kの屈曲は、内面側より上面側の曲率が小さく形成されている。
【0024】
また、上記した構成では、釣竿保持部10に係合部18が設けられており、縦フレーム2A及び横フレーム2Bには、釣竿保持部10を上述したようにスライドさせた際、係合部18と係合される被係合部28が設けられている。この場合、係合部18は、竿受け部12側に設けられた突起で構成され、被係合部28は、この突起(係合部18)が嵌合する凹部として構成されている。このため、図3から図4に示すように、釣竿保持部10を、横フレーム2Bから縦フレーム2Aにスライドする際(縦フレーム2Aから横フレーム2Bにスライドする際も同様)、釣竿保持部10を、軸部23を中心にして周方向に略180°回転させることで、横フレーム2B、縦フレーム2Aのいずれの場合も、係合部18を被係合部28に嵌合させることが可能となる。
【0025】
このように、釣竿保持部10と基体2に、係合部18及び被係合部28を設けておくことにより、ナット部材24を締め付けて釣竿保持部10を押圧しながら取り付ける際、台座17の回動やガタ付きが規制され、釣竿保持部10の固定状態の安定化が図れるようになる。
【0026】
もちろん、係合部18や被係合部28の形状や、配設位置については特に限定されることはなく、例えば、上記したように、釣竿保持部10を、軸部23を中心にして回転させなくても、両者が係合できるように構成されていても良い。また、そのような係合部18や被係合部28を配設しない構成であっても良い。
【0027】
上記した実施形態の釣竿保持装置1によれば、船縁の状態に合わせて、釣竿保持部10を基体2から取り外すことなく、回動させるだけで、縦フレーム2A、及び横フレーム2Bのいずれかに選択的に付け替え操作することができる。このため、付け替え操作が容易に行えると共に、付け替え操作で、釣竿保持部やボルト等の部品を落とすことが防止される。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、釣竿保持部10(台座17)は基体2に装着された軸部23をスライド操作することで、縦フレーム2A、横フレーム2Bの表面に移動できるように構成されていれば良く、台座17を取り付ける基体の構造(フレーム構造)等については、特に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】船縁に取り付けた釣竿保持装置の全体構成を示す図。
【図2】釣竿保持装置の詳細な構造を示す部分断面図。
【図3】釣竿保持部が回動する状態を示す部分断面図。
【図4】図2に示す状態から釣竿保持部を付け替えた状態を示す部分断面図。
【図5】図4に示す状態で船縁に取り付けた状態を示す部分断面図。
【図6】図2乃至図5に示す主要部の拡大図。
【図7】図5のB方向矢視図。
【符号の説明】
【0030】
1 釣竿保持装置
2 基体
2A 縦フレーム
2B 横フレーム
3 クランプ機構
10 釣竿保持部
17 台座
18 係合部
20 位置変更機構
21 スライド案内溝
23 軸部
24 ナット部材
28 被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦フレームと横フレームとを有する船縁に取り付け可能な基体と、該基体に装着された釣竿保持部とを備える釣竿保持装置において、
前記釣竿保持部は、前記基体に対してスライド可能に取り付けた軸部に保持されており、前記軸部をスライドすることで、前記基体の縦フレームと横フレームとに選択して装着可能であることを特徴とする釣竿保持装置。
【請求項2】
前記基体は、縦フレームから横フレームに通じるスライド案内溝を有し、
前記軸部は、前記スライド案内溝に沿って縦フレーム側と横フレーム側との間にわたってスライド可能に前記基体に対して支持されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿保持装置。
【請求項3】
前記軸部にナット部材を螺合し、前記ナット部材の螺合操作によって前記釣竿保持部を縦フレームまたは横フレームに押圧可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣竿保持装置。
【請求項4】
前記釣竿保持部には、係合部が設けられており、前記縦フレーム及び横フレームには、前記釣竿保持部を移動させた際、前記係合部と係合される被係合部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の釣竿保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−201434(P2009−201434A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48407(P2008−48407)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】