説明

釣竿受具の使用方法

【課題】
船釣り等において、仕掛けに当たりが来たときに、釣竿の合わせの操作のあと釣竿受具から釣竿を外すときに、煩わしく手間の掛かる操作をすることなく素早く確実に外すことができる釣竿受具を提供する。
【解決手段】
釣竿受具(A)は、釣竿(102)に取り付けられる係合具(8)と、取付台具(1)、基台(2)、支柱(3)及び取付調整具(4)を有し係合具(8)を取り付けた釣竿(102)を受ける竿受け(B)とを備えている。係合具(8)は、釣竿(102)の上下の動きにより竿受け(B)の係合部(6,61)に着脱できるとともに、係合部(6,61)に係合している状態では、釣竿(102)の長さ方向の動きと、軸周方向の回転を止めることができる。竿受け(B)は、竿尻を受ける有底形状の竿尻受具(7)を備えており、竿尻受具(7)の上部は釣竿(102)が竿尻を支点として有底体(71)内で上昇回動できるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿受具の使用方法に関するものである。更に詳しくは、例えば船釣りにおいて使用され、釣人が釣竿を手で持っていないときにも仕掛けに当たりが来たときや船の揺れや波によって釣竿が抜け外れないようにし、更にリールが垂れ下がらないように保持できる釣竿受具であって、仕掛けに当たりが来たときに、釣竿の合わせの操作ができると共に、釣竿受具から釣竿を外すとき、素早く確実に外すことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船釣りにおいては、船縁に釣竿受具を装着し、この釣竿受具によって釣竿を保持して仕掛けを海中に垂らすようにする。船釣りでは、当たりが来たとき以外にも、例えば釣りのポイントを変えたり、餌籠に餌を補充する場合にもリールを操作して仕掛けを巻き取る必要がある。従って、船釣りにおいては、リールを操作する頻度が高くなり、その操作性の善し悪しは重要である。
【0003】
船釣りにおけるリールの操作性を高めたものとしては、特許文献1に記載された竿受けがある。この竿受けは、リールのアームを受け、更に竿尻を固定具で挟み付けることによって、リールが垂れ下がらない水平な状態で釣竿を保持し、釣竿を持たないでもリールの操作を可能にして、必要なら片手だけで仕掛けの巻き取りができるようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−144027
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された竿受けには、次のような課題があった。
竿受けは、釣人が釣竿を手で持っていないときに、仕掛けに当たりが来たときや船の揺れや波によって釣竿が抜け外れないように竿尻を固定具で挟み付けて固定するようになっている。そして、竿受けから釣竿を外す場合は、解除レバーを操作して固定具による竿尻の固定を解除する。
【0006】
このため、仕掛けに当たりが来たときは、釣竿を操作して合わせた後、魚が海面近くへ上がるまでリールを手動または電動で巻き上げ、同時に魚の引きに合わせて釣竿の操作を行って仕掛けが緩まないようにし、最後は魚を船側へ寄せるために竿受けから釣竿を外し、釣人が釣竿を抱き込むように操作する必要がある。
【0007】
特許文献1記載の竿受けでは、釣竿を竿受けから外すときには、例えば左手で釣竿を持ち、右手で固定具の解除レバーを操作する。しかし、この操作をすることによって、釣竿の操作のタイミングが遅れてしまうことがあった。また、竿尻の固定を解除した一瞬、仕掛けにかかる魚の引きで釣竿の先が海面側へ大きく振れてしまい、仕掛けが緩んでしまう課題もあった。これにより、結果的に魚を逃がしてしまうことがあった。
【0008】
更には、上記竿受けはスピニングリール専用であり、タイコリールや電動リール等、アーム部分のない他のタイプのリールを取り付けた釣竿を装着することはできなかった。また、竿受けは、スピニングリールのアームを支える構造であるため、スピニングリールの取付位置に制限があるという課題もあった。
【0009】
(本発明の目的)
本発明の目的は、例えば船釣りにおいて使用され、釣人が釣竿を手で持っていないときにも仕掛けに当たりが来たときや船の揺れや波によって釣竿が抜け外れないようにし、更にリールが垂れ下がらないように保持でき、仕掛けに当たりが来たときに、釣竿の合わせの操作ができると共に、釣竿受具から釣竿を外すとき、従来のように固定具の解除レバーを操作する等、煩わしく手間の掛かる操作をする必要がなく、素早く確実に外すことができる釣竿受具の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
竿尻を支点とする釣竿の上下の回動により竿受けの係合部に着脱できるとともに、係合部に係合している状態では、釣竿の長さ方向の動きと、軸周方向の回転を止めることができる釣竿受具の使用方法であって、
竿受けは、釣竿の竿尻を挿入する受体を有する竿尻受具を備え、受体に竿尻を挿入した釣竿は竿尻を支点として受体内で上昇回動ができ、
係合具を取り付けた釣竿を、竿尻を支点とする回動により上から下へ降ろして、係合具を竿受けの係合部に係合させて装着し、
釣竿を外すときは、竿尻を支点とする回動により釣竿を下から上へ上げて係合具と係合部の係合を解除し、
当たりが来たときに竿尻を支点として上昇回動させることにより釣竿を上げて当たりに合わせ、その動作によって竿受けから釣竿を外すことがきるようにした、
釣竿受具の使用方法である。
【0011】
釣竿受具は、
釣竿に取り付けられる係合具と、
取付手段を有し、係合具を取り付けた釣竿を受ける竿受けと、
を備えており、
係合具は、釣竿の上下の動きにより竿受けの係合部に着脱できるとともに、係合部に係合している状態では、釣竿の長さ方向の動きと、軸周方向の回転を止めることができるよう構成することができる。
【0012】
釣竿受具は、
竿受けは、竿尻を受ける有底形状の竿尻受具を備えており、竿尻受具の上部は釣竿が竿尻を支点として有底体内で上昇回動できるよう構成することができる。
【0013】
釣竿受具は、
係合具は複数の割り子で構成されており、それらの割り子は釣竿を挟んだ位置で相互に着脱できるよう構成することができる。
【0014】
釣竿受具は、
係合具は、釣竿の直径の違いに合わせるための内径調整手段を備えるよう構成することができる。
【0015】
釣竿受具は、
竿受けの係合部に、係合具を係合位置へ案内する案内部が設けられるよう構成することができる。
【0016】
釣竿受具は、
竿受けの高さまたは前後位置を調整するための調整手段を備えるよう構成することができる。
【0017】
竿尻受具は、竿尻を入れることができる形状のものに底部を有する構造である。底部は、全部を塞いでいる構造に限定されるものではなく、一部が開口していてもよい。要は竿尻を所要の箇所で止めることができる構造であれば、底部が板状であるものの他、突起状、棒状、網状など各種公知のものが採用できる。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲にいう割り子とは、係合具を構成し、係合具が装着される釣竿を挟むように組み合わせられる複数の構成体である。割り子は、釣竿を挟むようにして組み合わせて一体化することにより釣竿に装着することができ、それらを分解することにより釣竿から取り外すことができる。
【0019】
(作用)
本発明の作用を説明する。なお、ここでは、本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与し説明するが、この符号の付与は、あくまで説明の理解を助けるためであって各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0020】
釣竿(102)に係合具(8)を取り付ける。船釣りの場合、船縁(100)に釣竿受具(A)を取り付ける。釣竿(102)を上から下へ降ろし、係合具(8)を竿受け(B)の係合部(6,61)に係合させて装着する。釣竿(102)を外すときは、逆に釣竿(102)を下から上へ上げて係合具(8)と係合部(6,61)の係合を解除する。
【0021】
係合具(8)を竿受け(B)の係合部(6,61)に係合させて釣竿(102)を装着した状態においては、釣竿(102)の長さ方向の動きと、軸周方向の回転を止めることができる。
つまり、仕掛けに当たりが来たときや潮の流れなどによって釣竿(102)が下方向へ引っ張られたり先方向へ引っ張られたりても、釣竿(102)が外れることはない。また、釣竿(102)がリール(R)の重みで軸周方向へ回転してリールが垂れ下がることがなく、常にリール(R)を見やすく操作しやすい上部に位置させた状態で保持できる。
【0022】
また、係合具(8)と、竿受け(B)の係合部(6,61)の係合によって、上記のように釣竿を保持できるので、釣竿に取り付けられるリール(R)はどのようなタイプのものでもよく、リール(R)の種類に関して汎用であり、リール(R)の取付位置にも制限を受けることはない。
【0023】
竿受け(B)が竿尻を受ける有底形状の竿尻受具(7)を備えており、竿尻受具(7)の上部は釣竿(102)が竿尻を支点として有底体(71)内で上昇回動できるよう構成されているものは、当たりが来たときに釣人(使用者)が釣竿(102)を持ち、竿尻を支点として上昇回動させることにより、釣竿(102)を上げて当たりに合わせ、また、その動作によって竿受け(B)から釣竿(102)を外すこともできる。
【0024】
係合具(8)が複数の割り子(81,82)で構成されており、それらの割り子(81,82)は釣竿(102)を挟んだ位置で相互に着脱できるよう構成されているものは、割り子(81,82)を釣竿(102)を挟むようにして組み合わせて一体化することにより釣竿(102)に装着することができ、それらを分解することにより釣竿(102)から取り外すことができる。
【0025】
係合具(8)が釣竿(102)の直径の違いに合わせるための内径調整手段(813,814,823,824,9)を備えているものは、係合具(8)の内径が装着する釣竿(102)の取り付け部分の直径より大きいときは、内径調整手段(813,814,823,824,9)によってガタなどを生じることなく確実に取り付けることができる。
【0026】
竿受け(B)の係合部(6,61)に係合具(8)を係合位置へ案内する案内部(610)が設けられているものは、釣竿(102)を装着するとき、その動作に伴って係合具(8)を竿受け(B)の係合位置へ案内することができる。
【0027】
竿受け(B)の高さまたは前後位置(少なくとも一つが成り立つ意)を調整するための調整手段を備えているものは、釣人の身長(体格)に合わせた高さに調整することができ、釣人の姿勢を楽にさせることができる。また、例えば竿受け(B)を後方位置(船縁(100)より内側)に位置させ、更に必要に応じて低く調整することにより、釣人が椅子に座った楽な状態で当たりを待つことができるようになる。
【発明の効果】
【0028】
(a)本発明によれば、釣竿に取り付けられる係合具と係合部との係合によって、釣人が釣竿を手で持っていないときにも仕掛けに当たりが来たときや船の揺れや波によって釣竿が抜け外れることはなく、例えば竿尻を支点として釣竿を上昇回動させるだけで、釣竿の合わせの操作が簡単にできる。
また、釣竿受具から釣竿を外すとき、従来のように固定具の解除レバーを操作する等、煩わしく手間の掛かる操作をする必要がなく、上記合わせの操作と同様に釣竿を上昇回動させるだけで、素早く簡単に外すことができる。
これにより、釣竿の操作のタイミングが遅れてしまうことや、仕掛けにかかる魚の引きで釣竿の先が海面側へ大きく振れて仕掛けが緩んでしまうようなことを防止でき、魚の捕獲率を向上させることができる。
【0029】
(b)係合具と竿受けの係合部の係合によって、上記のように釣竿を保持できるので、釣竿に取り付けられるリールはどのようなタイプのものでもよく、リールの種類に関して汎用であり、リールの取付位置にも制限を受けることはない。
【0030】
(c)係合具が複数の割り子で構成されており、それらの割り子は釣竿を挟んだ位置で相互に着脱できるよう構成されているものは、割り子を釣竿を挟むようにして組み合わせて一体化することにより釣竿に装着することができ、それらを分解することにより釣竿から取り外すことができる。これにより、釣竿への係合具の取り付けが簡単にできる。
【0031】
(d)係合具が釣竿の直径の違いに合わせるための内径調整手段を備えているものは、係合具の内径が装着する釣竿の取り付け部分の直径より大きいときは、内径調整手段によってガタなどを生じることなく確実に取り付けることができる。これにより、係合具を直径の違う複数種類の釣竿に支障なく取り付けることができ、係合具に汎用性を持たせることができる。
【0032】
(e)竿受けの係合部に係合具を係合位置へ案内する案内部が設けられているものは、釣竿を装着するとき、その動作に伴って係合具を竿受けの係合位置へ案内することができ、装着を簡単かつ確実に行うことができる。
【0033】
(f)竿受けの高さまたは前後位置を調整するための調整手段を備えているものは、釣人の身長(体格)に合わせた高さに調整することができ、釣人の姿勢を楽にさせることができる。また、例えば竿受けを後方位置(船縁より内側)に位置させ、更に必要に応じて低く調整することにより、釣人が椅子に座った楽な状態で当たりを待つことができるようになる。これにより、釣人の肉体的負担を軽減でき、使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は本発明に係る釣竿受具の実施の形態を示す斜視図、
図2は釣竿受具の側面図、
図3は釣竿受具の正面図である。
なお、図1、図2、図3においては、便宜上、釣竿の竿尻側の一部を表している。
図4は取付調整具の台体の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、
図5は取付調整具の可動体の構造を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0036】
図6は係合具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、
図7は係合具の取付構造を示す分解斜視図、
図8は係合受具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、
図9は竿尻受具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、
図10は係合受具と係合具の係合状態を示し、(a)は正面視説明図、(b)は側面視説明図である。
【0037】
釣竿受具Aは、例えば船釣りにおいて使用される。船釣りでは、船縁に取り付けた釣竿受具Aに釣竿を装着するようにする。
釣竿受具Aは、取付台具1、竿受けB及び係合具8により構成されている。更に、竿受けBは、基台2、支柱3、取付調整具4、支持ロッド5、係合受具6及び竿尻受具7により構成されている。
【0038】
各部材の材質は、係合具8がアルミニウム製であり、他の部材は合成樹脂製のツマミ部分を除いてステンレススチール製である。なお、各部材の材質は、上記に限定されるものではなく、強度や防錆性等に問題がなければ他の金属材料を採用することもできる。
【0039】
まず、釣竿受具Aを構成する各部材の構造を説明する。
(取付台具1)
図1ないし図3を参照する。
取付台具1は、側面視ほぼ「コ」字状に形成された台本体10を有している。台本体10の上面板11には、後述する竿受けBの基台2を固定するためのネジ孔12が四箇所に設けてある。また、上面板11と直角を成す側面板13の上部には、同じく基台2を固定するためのネジ孔14が四箇所に設けてある。
【0040】
そして、上面板11と相対向する側には、二箇所に取付片15が設けてある。各取付片15には、上下方向にネジ孔16が設けてあり、ネジ孔16には先端部に押圧板18を有する締付ネジ17が螺合して取り付けてある。なお、上面板11と取付片15の間隔は段階的に設定できるようになっている。取付台具1は、締付ネジ17を回し、押圧板18と上面板11で船縁等を挟み付けることにより固定できる。
【0041】
(竿受けB:基台2、支柱3)
図1ないし図3を参照する。
基台2は、平面視でほぼ長方形状に形成されている。基台2の中心部には、六角形の装着孔20が設けてある。また、四隅部には上記台本体10の各ネジ孔12、14に対応する通孔22が貫通して設けてある。なお、符号21は引っ張りリングであり、後述する支柱3の抜けを防止するロックピン23の操作を行うものである。
【0042】
装着孔20には、支柱3が挿入され垂直に固定されている。支柱3は、上端部の一部が丸棒部30(断面形状が円形)であり、下側の他の部分は角棒部31(断面形状が六角形)である。丸棒部30の長さは、後述する台体40の基部取付部42の高さよりやや長く形成されており、台体40はこの部分に移動することで回動できる。支柱3の基部側には上記ロックピン23の先端が係合する径小部(図では見えない)が設けてある。
また、支柱3の上端部には、抜止ネジ32が螺着してある。抜止ネジ32は、後述する取付調整具4の抜けを防止するためのもので、丸棒部30より径大のヘッド部を有している。
【0043】
(竿受けB:取付調整具4)
図1ないし図3及び図4、図5を参照する。
取付調整具4は、支柱3に取り付けられる台体40と、台体40に締付ネジ49により角度調整ができるように取り付けられる可動体41により構成されている。
【0044】
台体40は、基部取付部42と先部取付部43を「L」字状のアーム44でつないだ構造である。基部取付部42の中心部には、上下方向に貫通して装着孔420が設けてある。基部取付部42の側部にはネジ孔423が壁部を貫通して設けられ、ネジ孔423には締付ネジ422が螺合して取り付けてある。
【0045】
装着孔420の内面には、周方向に多数の係合条421が設けてある。装着孔420は、支柱3の丸棒部30にはガタつくことなく軸周方向へ回転可能に嵌め込むことができ、かつ角棒部31の各角部に係合条421を係合させて、軸周方向へ回転できないようにして嵌め込むことができる。
【0046】
先部取付部43の中心部には、水平方向に貫通して通孔430が設けてある。先部取付部43の円形の取付面431には、周方向に多数の係合条432が通孔430を中心として放射状に設けてある。
【0047】
可動体41は、基部取付部45と先部取付部46を、ほぼ中間部で鈍角に折曲されたアーム47でつないだ構造である。基部取付部45の中心部には、水平方向に貫通してネジ孔450が設けてある。基部取付部45の円形の取付面451には、周方向に多数の係合条452がネジ孔450を中心として放射状に設けてある。
【0048】
先部取付部46は、外径が円形で内径が六角形の筒状に形成されている。先部取付部46は、内径が六角形の挿通孔460の軸線方向が上記ネジ孔450と直角になるように取り付けてある。先部取付部46の側部にはネジ孔463が壁部を貫通して設けられ、ネジ孔463には締付ネジ462が螺合して取り付けてある。先部取付部46には、挿通孔460に後述する支持ロッド5が挿通されて固定される。
【0049】
上記台体40と可動体41は、台体40の先部取付部43と可動体41の基部取付部45の係合条432、452を密着係合させ、締付ネジ49のネジ部を先部取付部43の通孔430を通り基部取付部45のネジ孔450に螺合して締め付け固定されている。
可動体41の取付角度は、係合条432、452の係合位置を変えることにより任意に設定できる。
【0050】
(竿受けB:支持ロッド5)
図1ないし図3を参照する。
支持ロッド5は、所要長さの六角棒の一端側を曲げて形成され、直線状の基部50と、基部50とは角度の異なる直線状の先部51を有している。支持ロッド5の先端部と後端部には、抜止ネジ52がそれぞれ螺着してある。抜止ネジ52は、後述する係合受具6と竿尻受具7の抜けを防止するためのもので、支持ロッド5より径大のヘッド部を有している。
【0051】
支持ロッド5は、基部50を可動体41の先部取付部46に設けてある挿通孔460に挿通され、所要の位置で締付ネジ462により固定されている。支持ロッド5の取付位置は、前後に調整ができる。
なお、上記締付ネジ422、49、462には、緩み防止のためのスプリングやスプリングワッシャ等(いずれも図示省略)を設けることもできる。
【0052】
(竿受けB:係合受具6)
図1ないし図3及び図8を参照する。
支持ロッド5の先部51には係合受具6が固定されている。
係合受具6は、ブロック体60と、その上部両側に設けられている竿受け部材61、61により構成されている。ブロック体60には、厚み方向に挿通孔63が設けてある。挿通孔63は、孔形状が中心角が直角であるV字形のアングル孔630と、その中心部に設けてある六角孔631で構成されている。
【0053】
ブロック体60の両側面600、601には、アングル孔630へ貫通してネジ孔602が二箇所ずつ設けてある。各ネジ孔602には、止めネジ603がねじ込まれている。
また、ブロック体60の底面には、六角孔631へ貫通してネジ孔604が片側二箇所ずつ設けてある。各ネジ孔604には止めネジ605がねじ込まれている。なお、アングル孔630は、例えば山形鋼で形成された杭状の釣竿受具等に取り付けるような場合に使用される。
【0054】
ブロック体60の上面606は、凹面状の曲面に形成され、竿受け部材61、61は、その両側に互いに平行に立設されている。
竿受け部材61、61は板状で、前部側の上部には円弧状の案内部610が設けられている。案内部610は、後述する係合具8の側部に係合して係合具8を係合位置へ案内することができる。また、竿受け部材61、61の内面側上部には、係合突起62がそれぞれ設けてある。係合突起62は、後述する係合具8の係合溝88と係合する。
【0055】
係合受具6は、支持ロッド5の先部51に六角孔631を嵌め込み、各ネジ孔604の止めネジ605を締め付け、更に抜止ネジ52を締め込んで支持ロッド5に固定されている。係合受具6の取付位置は、先部51に沿って調整ができる。
【0056】
(竿受けB:竿尻受具7)
図1ないし図3及び図9を参照する。
支持ロッド5の基部50の後部側には竿尻受具7が固定されている。
竿尻受具7は、ブロック体70と、その上部に固着されている受体71で構成されている。ブロック体70は、上記係合受具6のブロック体60とほぼ同様の構造を有し、厚み方向に挿通孔73が設けてある。挿通孔73は、孔形状が中心角が直角であるV字形のアングル孔730と、その中心部に設けてある六角孔731で構成されている。
【0057】
ブロック体70の両側面700、701には、アングル孔730へ貫通してネジ孔702が二箇所ずつ設けてある。各ネジ孔702には、止めネジ703がねじ込まれている。
また、ブロック体70の底面には、六角孔731へ貫通してネジ孔704が片側二箇所ずつ設けてある。各ネジ孔704には止めネジ705がねじ込まれている。
【0058】
ブロック体70の上部に固着されている受体71は、ほぼ有底円筒状に形成されている。受体71の下部側には前方へやや長い取付部710が形成され、この部分がブロック体70上部に取り付けてある。また、底板72の中心部には円形の孔720が形成されている。なお、ブロック体70に釣竿102の竿尻を垂直に差して立てることができる有底筒体(図示省略)を設けることもできる。
【0059】
この構造により、受体71の開口側の上部には斜め開口部711が形成してある。斜め開口部711が設けてあることにより、受体71に竿尻を挿入した釣竿は、竿尻を支点として受体71内で上昇回動できる。
【0060】
竿尻受具7は、支持ロッド5の基部50に六角孔731を嵌め込み、各ネジ孔704の止めネジ705を締め付け、更に抜止ネジ52を締め込んで支持ロッド5に固定されている。竿尻受具7の取付位置は、基部50に沿って調整ができる。
【0061】
(係合具8)
図1ないし図3及び図6を参照する。
係合具8は、装着孔80を釣竿に嵌め込むように取り付けて使用される。係合具8は、ほぼ円筒形状のものを軸線方向に半割りした割り子構造であり、上部材81と下部材82及びそれらを固着する固定ネジ83により構成されている。
【0062】
係合具8の両側部の後部側には、上記係合受具6の竿受け部材61、61の内面間に嵌め込まれる係合面89が平行に設けてある。各係合面89と前部側の外周面との境界部分には、段部890が設けてある。この段部890は、上記竿受け部材61、61の円弧状の案内部610に係合して案内される部分となる。
【0063】
上部材81の前部側の両側には、縦方向に孔口810が設けられ、孔口810の底部から合わせ面811まで貫通して通孔812がそれぞれ設けてある。
また、各孔口810の後部側には、半径方向にネジ孔813がそれぞれ二箇所に装着孔80へ貫通して設けてある。各ネジ孔813には、止めネジ814がねじ込んである。各ネジ孔813と各止めネジ814は、後述する各ネジ孔823と各止めネジ824と共に内径調整手段を構成する。
【0064】
下部材82の全部側の両側には、合わせ面820から下方へ向けてネジ孔821が設けてある。各ネジ孔821は、上記通孔812と連通する位置に設けられている。また、下部材82の後部側外面にも半径方向にネジ孔823がそれぞれ二箇所に装着孔80へ貫通して設けてある。各ネジ孔823には、止めネジ824がねじ込んである。
【0065】
係合具8は、上記上部材81と下部材82を合わせ面811、820で接面させ、通孔812からネジ孔821に固定ネジ83をねじ込んで固着して形成されている。
係合具8の両側に設けてある上記係合面89には、下部材82側から上部材81側へそれぞれ係合溝88が設けてある。各係合溝88は、下部材82側の下方の入り口側が拡がった誘導部880と、上部材81側の上記誘導部880に続く停止部881により構成されている。
【0066】
なお、係合具8は、割り子である上部材81と下部材82の装着孔80で釣竿を挟むようにし、固定ネジ83でそれらを一体化して釣竿の所要位置に取り付けられる。
係合具8の装着孔80の内径は、上記のように止めネジ814、824を備えていれば一種類の設定でもよいが、釣竿の直径の違いに合わせて、複数種類を設定してもよい。
【0067】
(作用)
図11は釣竿受具の使用方法の例を示す説明図である。
図11は、釣竿受具Aを下部が開放され中空の船縁100に取り付けた例を示している。なお、図11では身長の高い釣人に対応するために、図1ないし図3に示したものよりやや長い支柱3を使用している。このように、支柱3として長さの異なるものを複数用意しておけば、釣り人の身長の違いや船縁100の高さの違いに対応でき、釣り人は無理な姿勢を取らずに釣竿の操作ができるようになる。
【0068】
釣竿受具Aは、図に示すように取付台具1の台本体10の上面板11と側面板13を船針100の上面と側面に当て、木製のスペーサ101を押圧板18と船縁100の上面板とで挟むようにして締付ネジ17を締め付けて固定されている。なお、スペーサ101は必ずしも必要ではない。
また、取付調整具4の可動体41の角度は、支持ロッド5の角度、すなわち装着される釣竿102の角度が操作しやすい適宜角度になるよう設定される。
【0069】
一方、釣竿102には係合具8を取り付ける。係合具8は、装着孔80の内径が釣竿102の直径に合わせたものを使用している。係合具8は、上部材81と下部材82を固定ネジ83で締め付け固定することにより、装着孔80の内面が釣竿102に密着し、固定される。
【0070】
そして、係合具8を取り付けた釣竿102の竿尻を竿尻受具7の受体71の底面に当てて支点とし、釣竿102の先側を上から下へ回動させるように降ろし、係合具8を各竿受け部材61間に嵌め込むように装着する。このとき、係合具8の係合面89前部側の段部890が竿受け部材61の案内部610に案内され、更に係合溝88が係合突起62に嵌め込まれ、円滑な装着ができる。また、係合突起62に係合溝88が嵌るようにして係合し、停止部881が係合突起62に当たって係合具8は止まる(図10参照)。
このように、係合具8を係合受具6に係合させたり係合解除させるよう釣竿102を上下方向に動かすことにより、釣竿102の釣竿受具Aへの装着及び取り外しができる。
【0071】
上記のように係合具8が係合受具6に係合した状態では、特に係合突起62と係合溝88の係合により、釣竿102の長さ方向の動きは止められ、更に釣竿102の係合受具6の係合部を中心とした上下方向の回動も止められる。また、係合具8の係合面89と竿受け部材61との係合により釣竿102の軸周方向の回転も止められる。軸周方向の回転が止められることにより、釣竿102にリールRの重さが軸周方向に作用しても、リールRが垂れ下がることはなく、リールRの表示部が見やすく(リールRが電動である場合)、スイッチやレバーが操作しやすい上位置に位置させておくことができる。
【0072】
また、仕掛けに当たりが来たとき等、釣竿102を当たりに合わせるときは、竿尻を支点として逆に釣竿102を下から上(矢印a方向)へ回動させれば、斜め開口部711の作用で受体71と竿尻が干渉することがなく、操作は簡単にできる。
更に、最後に釣竿102を外すときは、上記と同様に竿尻を支点として釣竿102を下から上へ回動させるようにすれば、係合具8と各竿受け部材61の係合を解除することができ、釣竿102を素早く簡単に取り外すことができる。
【0073】
係合具8を係合受具6の竿受け部材61間に係合させて釣竿102を装着した状態においては、上記したように釣竿102の長さ方向の動きと、係合受具6を中心とした上下方向の回動と、軸周方向の回転を止めることができる。
【0074】
これによって、仕掛けに当たりが来たときや潮の流れなどによって釣竿102が下方向へ引っ張られたり先方向へ引っ張られたりても、釣竿102が釣竿受具Aから外れることはない。また、リールRは、操作に取り掛かりやすい上位置で維持できるので、リールRの巻き取り操作も素早く確実に行うことができる。
【0075】
このように、釣竿受具Aによれば、仕掛けに当たりが来たときの釣竿102の合わせの操作や最後の釣竿102の取り外しが素早く簡単にできるので、従来の竿受けのように、釣竿102の固定を解除するために、釣竿102の操作のタイミングが遅れてしまうことや、固定解除時において仕掛けにかかる魚の引きで釣竿102の先が海面側へ大きく振れて仕掛けが緩んでしまうようなことを防止できる。
【0076】
また、例えば係合具8を当初取り付けていた釣竿102と違う釣竿に付け替える必要が生じたときなどは、釣竿の直径より装着孔80の内径が大きいことも考えられる。その場合は、各止めネジ814、824(合計8個)を均等に締め付けて先端部を装着孔80内面から突出させ、ガタつきを防止して固定する。このときは、釣竿に傷を付けないように、釣竿にビニルテープや紙等を巻くようにするのが好ましい。
【0077】
更には、図7に示すように、釣竿102と係合具8の間に内径調整具9を介在させることもできる。内径調整具9は、ほぼ円筒形状のものを軸線方向に半割りした割り子構造であり、上部材91と下部材92により構成されている。上部材91と下部材92の前後端部には、抜け止め用の径大なフランジ93がそれぞれ設けてある。
なお、内径調整具9の材質は合成樹脂であるが、特に限定するものではなく、金属その他を採用することもできる。
【0078】
このように係合具8と内径調整具9を組み合わせた構造では、上部材91と下部材92の筒状部の肉厚を複数設定することにより、係合具8を複数の外径の異なる釣竿102に固定することができ、係合具8に汎用性を持たせることができる。
【0079】
図12は釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図である。
図12に示す例では、取付台具1の取り付け方法は、図11に示すものと同様である。
また、支柱3は図1ないし図3に示したやや短いものを使用している。更に、本例では基台2を台本体10の側面板11側に固定している。
このようにすれば、図に示すように、支持ロッド5を船縁100より後方に位置させることができ、装着される釣竿102の位置も後方へ下がる。これにより、釣人は船縁100から内方へ離れた位置で釣竿102を操作することができるようになり、例えば船縁100を超えて転落してしまう危険を軽減でき、安全性が向上する。
【0080】
図13は釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図である。
本例では、取付台具1の取り付け方法は、図11に示すものと同様である。基台2と台本体10の間に、支柱105でつながれた延長体103と取付具104が介在させてある。延長体103は、ステンレススチール製で「へ」字状に形成されており、一端側には基台2を固定するためのネジ孔(図示省略)が設けてある。延長体103の他端側には支柱105を介して取付具104が取り付けてある。取付具104は上記基台2とほぼ同じ形状に形成され、台本体10の上面板11にネジ着されている。
【0081】
これによれば、延長体103を適宜長さに設定することによって、支持ロッド5と釣竿102の前後位置及び高さを適宜調整できる。
図に示すように、支持ロッド5を後方位置(船縁より内側)に位置させ、更に低く調整することにより、例えば釣人が椅子に座った楽な状態で当たりを待つことができるようになり、更にリールRや釣竿102の操作もできるようになるので、釣人の肉体的負担を軽減できる。
【0082】
図14は釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図である。
本例では、取付台具1と基台2の取り付け方法は、図11に示すものと同様である。
支持ロッド5aは、図1ないし図3に示したものより先部51がやや長いものを使用している。この構造によれば、係合受具6に対する取付位置を矢印b方向に適宜調整することにより、支持ロッド5a及び釣竿102の前後位置を調整できる。
【0083】
図15は釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図である。
本例では、上記図12に示すものと同様に、基台2を台本体10の側面板11側に固定している。そして、取付台具1の台本体10の側面板13を船縁100aの上面に被せるようにし、更に締付ネジ17を船縁100aの海側に位置させて取り付けてある。
このようにして、上記船縁100とは異なり内部に空洞のない中実の船縁100aにも固定できる。
【0084】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る釣竿受具の実施の形態を示す斜視図。
【図2】釣竿受具の側面図。
【図3】釣竿受具の正面図。
【図4】取付調整具の台体の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図。
【図5】取付調整具の可動体の構造を示し、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図6】係合具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図。
【図7】係合具の取付構造を示す分解斜視図。
【図8】係合受具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図。
【図9】竿尻受具の構造を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図。
【図10】係合受具と係合具の係合状態を示し、(a)は正面視説明図、(b)は側面視説明図。
【図11】釣竿受具の使用方法の例を示す説明図。
【図12】釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図。
【図13】釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図。
【図14】釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図。
【図15】釣竿受具の使用方法の他の例を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿尻を支点とする釣竿の上下の回動により竿受けの係合部に着脱できるとともに、係合部に係合している状態では、釣竿の長さ方向の動きと、軸周方向の回転を止めることができる釣竿受具の使用方法であって、
竿受けは、釣竿の竿尻を挿入する受体を有する竿尻受具を備え、受体に竿尻を挿入した釣竿は竿尻を支点として受体内で上昇回動ができ、
係合具を取り付けた釣竿を、竿尻を支点とする回動により上から下へ降ろして、係合具を竿受けの係合部に係合させて装着し、
釣竿を外すときは、竿尻を支点とする回動により釣竿を下から上へ上げて係合具と係合部の係合を解除し、
当たりが来たときに竿尻を支点として上昇回動させることにより釣竿を上げて当たりに合わせ、その動作によって竿受けから釣竿を外すことがきるようにした、
釣竿受具の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−195252(P2009−195252A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137559(P2009−137559)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2004−253328(P2004−253328)の分割
【原出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(591181023)
【Fターム(参考)】