説明

釣竿用筒状体

【課題】糸通し具を竿先保護カバー部材又は尻栓に対し、極めて容易に着脱可能に保持できるようにすることである。
【解決手段】継式釣竿を収納した際の竿先部を保護する竿先保護カバー部材又は釣竿用尻栓を意味する筒状体であって、該筒状体は頭部10Tと開口端部とを有する筒状本体10Hと、該筒状本体内を長手方向に移動可能な保持部材12とを具備し、前記頭部は該保持部材が該頭部から外に落下することを防止できる形態であり、前記保持部材は糸通し具20の端部を保持できる保持部12Hを有するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継式釣竿を収納した際の竿先部を保護する竿先保護カバー部材又は釣竿用尻栓を意味する筒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
振出式や並継式等の継式釣竿では、釣りの前後には仕舞状態に収納させて運搬する。その場合に、外ガイドを有する外通し釣竿においては、仕舞状態の竿先部や、ここに集まった外ガイドを保護すべく竿先保護カバー部材を装着させる。下記特許文献1には振出式の外ガイドを有する外通し釣竿用の竿先保護カバー部材が開示されている。この竿先保護カバー部材では、外通し釣竿用の糸通し杆4をカバー本体の頭部に固定した構造が開示されている。この糸通し杆は外ガイド用であるため、カバー本体と一体化されているが不都合はない。
【特許文献1】実開昭62−167569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、中通し釣竿でも釣糸を竿管内部に挿通させる作業の際、所謂、糸通し具が必要となる。この糸通しの作業には2通りの方式がある。一つは、後端に釣糸を係止した糸通し具を釣糸導入部から挿入して、それを竿先から出すことによって釣糸を竿管内に通す作業である。他方は、糸通し具を釣竿先端から入れ、釣糸導入部からその一端部を引き出した後、この糸通し具の当該端部に釣糸を係止させた状態で、竿先に残して露出させている糸通し具の他端部を引いて糸通しさせる、所謂、トップイン方式である。これらの糸通し具は作業の前後は、巻回等して、釣人のポケットや他の容器に収納させる必要があった。こうした糸通し具を釣竿以外の場所に収納して釣りに携行することは一般的とはいえ、不便がある。
依って解決しようとする課題は、糸通し具を竿先保護カバー部材又は尻栓に対し、極めて容易に着脱可能に保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明では、継式釣竿を収納した際の竿先部を保護する竿先保護カバー部材又は釣竿用尻栓を意味する筒状体であって、該筒状体は頭部と開口端部とを有する筒状本体と、該筒状本体内を長手方向に移動可能な保持部材とを具備し、前記頭部は該保持部材が該頭部から外に落下することを防止できる形態であり、前記保持部材は、糸通し具の端部を保持できる保持部を有することを特徴とする釣竿用筒状体を提供する。
保持部とは、筒状本体の開口端部側から着脱可能に弾力的に保持できる孔、又は保持部材の側方から着脱可能に弾力的に保持できる溝、又は糸通し具端部の輪部を引っ掛ける引っ掛け部を含む。
【0005】
第2の発明では、第1の発明の前記筒状本体には、前記保持部材を前記開口端部の近くに保持させるべく該保持部材を指先で押すことのできる大きさの開口部を設けている。
第3の発明では、第1又は第2の発明の前記筒状本体はその開口端部近くに前記保持部材の前進移動を阻止する規制部を設けている。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明では、筒状本体内に有する保持部材に対し、糸通し具を保持させる際に、筒状本体の開口端部に移動させることができるため、その保持部を視認しながら極めて容易に保持させることができる。従って、夕方等の視認性の悪い時でも迅速な仕舞支度が可能となる。
【0007】
第2の発明では、保持部材に糸通し具を保持させる際に、移動可能な保持部材を押圧保持できるため、糸通し具の保持作業が容易になる。
第3の発明では、筒状本体は開口端部近くに規制部を設けているため、糸通し具を保持させる作業において保持部材を引き出した際の誤った落下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係る竿先保護カバー部材10の正面図と底面図であり、図2は図1の矢視線B−Bによる縦断面図、図3は図1とは異なって、使用状態の正面図、図4は図3の矢視線D−Dによる縦断面図である。竿先保護カバー部材10の筒状本体10Hは硬質合成樹脂材によって筒状に形成されている。その頭部10Tの中にはEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)樹脂の発泡材で形成した衝撃吸収体10TAを固定配設している。
【0009】
一方、該頭部とは逆側の端部近くは、筒状本体の円周方向の大半が除去された円弧状部に形成されており、その内面には適宜厚さのゴムシート10Sが接着等で固定されている。このゴムシートの頭部側端部10STの近くから前記頭部方向の途中位置までに亘っては、筒状本体10Hの円周方向の一部が切り欠かれた切欠部10Kが設けられており、残っている筒状本体外周部の成す円周角(この場合、約300度)は前記円弧状部(この場合、約120度)よりも大きい。頭部10Tから遠い側の上記切欠部10Kの端部位置に筒状本体10Hの開口端部10Eがある。
【0010】
適宜数のバンド孔10BHを有するバンド10Bが、前記円弧状部の外周側に固定されており、同じく円弧状部の外周側には前記バンド孔を係止させる突起部10BKが突出している。
【0011】
筒状本体内には頭部10T位置から開口端部10Eの位置に亘って移動可能な外径の円柱状の保持部材12を有している。この保持部材は上記衝撃吸収体10TAと同じEVAの発泡体で形成されている。この例の保持部材12は筒状本体10Hの内面を適宜圧力で押圧しているが、その圧力は、糸通し具を保持した状態で軽く振る程度で落下する強さである。或いは、保持部材12は筒状本体10Hの内面を全く押圧していなくてもよい。
【0012】
筒状本体の衝撃吸収体10TAを含む頭部10Tには空気抜き孔10THが設けられており、保持部材12の移動が容易に行えるようにしている。
また、図1の切欠部10Kが、図示の形態よりも2点鎖線10K’で示すように長く、少なくとも頭部位置に収納した保持部材12に至る延長切欠部10K’を設けている場合は、この保持部材を初めて引き出す際に、この切欠部10K’に露出している部分を指で摘むようにして引き出すことができて好ましい。更には、収納状態にある保持部材12の上端12Eの位置まで切り欠いていると、この上端を小径物や爪等で押せば容易に押し出せ、保持部材12が筒状本体10H内面に強く押圧していて、筒状本体を軽く振った程度では出て来ない場合でも引き出せる。
【0013】
また、延長切欠部10K’が保持部材12に至っていたり、上端12Eの位置まで切り欠いている場合、保持部材12が筒状本体10H内面を強く押圧せず、筒状本体を軽く振った程度で出てくるか、或いは全く押圧していない状態に構成してもよい。更には、切欠部10Kを上端12Eの位置まで切り欠いている場合、そこから空気が抜け出るため、前記の空気抜き孔10THは無くてもよい。
【0014】
この例の保持部材12の中心位置には、貫通孔12Hを設けている。これは釣竿仕舞時等に糸通し具を圧入して保持させるためのものであり、貫通していなくてもよい。また、必要時には適宜な力で抜き去れる必要がある。こうした力の関係から、少なくとも孔の周囲壁部領域は弾力性のある材料で形成することが必要となる。また、この例では既述のように、保持部材12が重力程度では落下しないように筒状本体10Hの内面を押圧するように構成するため、保持部材の外径を筒状本体の内径程度にする他、保持部材の外周部に弾力性を持たせる必要がある。結局、保持部材全体をEVA樹脂の発泡体で形成しているが、その他の材料として、ウレタン発泡材やゴム等でもよい。また、これらの材料は衝撃吸収体10TAにも使用できる。
【0015】
既述の適宜厚さのゴムシート10Sは、硬質樹脂製の筒状本体10Hを仕舞状態の竿先に被せた際に竿杆表面が傷付くことを防止することも目的とするが、頭部側の縁部10STは筒状本体の開口端部10E付近に位置しており、保持部材12が引き出された際に前進を規制停止させて落下を防止する規制部としての意義もある。勿論、規制部はこのゴムシートとは別体にして設けてもよい。
【0016】
保持部材12を筒状本体10Hの開口端部10E付近にまで引き出せば、該開口端部側からその貫通孔12Hを視認し易くなり、糸通し具20の先部を挿入保持させる作業が極めて容易、迅速になる。この糸通し具としては、中通し竿用の糸通し具があるが、その他、上記文献1の外ガイド用糸通し杆類似のものを、竿先保護カバー部材に固定させるのではなく、使用がより便利になるように分離可能にすべく、保持部材12に対して着脱可能に保持させることも可能である。
【0017】
実際の保持作業では、切欠部10Kを介して、図4に矢印で示す方向から保持部材12の外周面を指で押さえてその位置に保持して挿入作業を行う。指で押さえるための開口部としては、切欠部ではなく、押圧のためのみの円形状開口等でもよい。
この例の竿先保護カバー部材10は、その筒状本体10Hの外周面に切欠部10Kを設けており、また、軸方向に長く形成しているので、移動ガイド等の外ガイド付き釣竿の竿先保護カバー部材として適している。即ち、上記切欠部10Kは保持部材12を側面から押圧保持するためのみならず、仕舞時の各竿杆の移動ガイド等の外ガイドを切欠部の左右両壁部で挟んで整列保持させることに都合がよい。
【0018】
上記のようにして糸通し具20の先部を貫通孔12Hで保持した保持部材12を、当該糸通し具で押して頭部側に押しやる。この例では、頭部の衝撃吸収体10TAに当接する位置(図3の12’)まで押し込む。糸通し具20が、釣糸導入部から挿入するタイプの糸通し具の場合は比較的短いものがあり、例えばその短い糸通し具の保持されていない他端部側を穂先竿内に挿通させるという仕舞い形態が可能である。この糸通し具を保持させて仕舞うと、糸通し具を釣竿とは別の場所に仕舞う必要が無くなり、釣り準備の際に非常に便利である。また、長い糸通し具を保持させてもよい。
【0019】
図5は本発明に係る竿先保護カバー部材の他の形態例の要部正面図であり、図6はその矢視線E−Eによる横断面図である。上記例と異なるのは、保持部材12の貫通孔12Hの代わりに長手方向に沿った溝12Mが形成されていることである。この例での溝底は保持部材12の径方向中心に位置している。例えば、糸通し具の先端部に釣糸結着輪を設けている場合のように、その先端部から図4に示す保持部材12の貫通孔12Hに押し込むことで、結着輪が変形してしまう等の不都合な場合に、糸通し具を保持部材の側方から溝12Mに挟持させることで保持できる。この場合、糸通し具を保持部材12の中心に位置させることができるため、仕舞い状態において該糸通し具を中心部に位置させて、糸通し具の他端部を穂先竿内に挿入することができる。
【0020】
しかし、溝はその底が保持部材の表面近くに位置した浅いものでもよい。更には、貫通孔と溝とを組み合わせて、複数種類(複数個)の糸通し具20を保持可能にしてもよい。
上記例の竿先保護カバー部材の他、本願の筒状体を釣竿用尻栓に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、継式釣竿を収納した際の竿先部を保護する竿先保護カバー部材又は釣竿用尻栓に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明に係る竿先保護カバー部材の正面図と底面図である。
【図2】図2は図1の矢視線B−Bによる縦断面図である。
【図3】図3は図1とは異なる状態の正面図である。
【図4】図4は図3の矢視線D−Dによる縦断面図である。
【図5】図5は本発明に係る竿先保護カバー部材の他の形態例の要部正面図である。
【図6】図6は図5の矢視線E−Eによる横断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 竿先保護カバー部材(筒状体)
10K 開口部(切欠部)
10E 開口端部
10H 筒状本体
12H 孔
12M 溝
12 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継式釣竿を収納した際の竿先部を保護する竿先保護カバー部材又は釣竿用尻栓を意味する筒状体であって、
該筒状体は頭部と開口端部とを有する筒状本体と、該筒状本体内を長手方向に移動可能な保持部材とを具備し、前記頭部は該保持部材が該頭部から外に落下することを防止できる形態であり、
前記保持部材は糸通し具の端部を保持できる保持部を有する
ことを特徴とする釣竿用筒状体。
【請求項2】
前記筒状本体には、前記保持部材を前記開口端部の近くに保持させるべく該保持部材を指先で押すことのできる大きさの開口部を設けている請求項1記載の釣竿用筒状体。
【請求項3】
前記筒状本体はその開口端部近くに前記保持部材の前進移動を阻止する規制部を設けている請求項1又は2記載の釣竿用筒状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−82030(P2009−82030A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253503(P2007−253503)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】