説明

釣竿

【課題】上記特許文献1以外の手法により、釣糸の噛み込みを防止できる釣糸導入部付近の構造を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂製竿管10に長孔を設け、該長孔に配設して、釣糸を竿管内に導入する導入孔GHを有する長孔用ガイド部材G2を配設しており、該長孔用ガイド部材の後側であって、竿管表面から離れた位置に硬質のガイド部材G1を保持した枠体12が、該硬質ガイド部材の保持部の前側部から前方に延伸すると共に、前記長孔用ガイド部材に近づく方向の傾斜部12Kを有し、該傾斜部から更に前記導入孔に対応した第1の孔H1を形成した延伸部12Eを有し、前記傾斜部には前記第1孔とは離隔し、前記硬質ガイド部材を通過した釣糸を挿通させて前記導入孔に導く第2の孔H2を設けており、該第2の孔の前端位置PH2では、該前端の裏面位置とその位置に対面する竿管表面又は長孔用ガイド部材との間の隙間寸法が、釣糸が噛み込まないよう釣糸直径よりも大きいよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中通し釣竿の釣糸導入部付近の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
中通し釣竿では、釣糸を外部から竿管内部に導入する必要がある。この釣糸を導入する形態として、リールから釣竿に設けた導入孔に直接に導入するのでは、釣糸が導入孔近くの竿管表面に接触して糸抵抗が増大する。そこで、導入孔の後側であって、竿管表面から離れた位置に硬質のガイド部材を保持する形態が採られることが多い。その一つの形態が、本出願人による下記特許文献1に開示されている。このように硬質ガイド部材を保持している枠体にも長孔を設け、リールから引き出された釣糸を、硬質ガイド部材、枠体の長孔、そして導入孔という順に通して竿管内部に導入させる。
【特許文献1】特開平11−266748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記枠体を採用した場合、仕掛けの投擲時に、リールから引き出された釣糸が釣糸導入部付近で弛み、弛んだ釣糸が枠体と竿管や長孔用ガイド部材との間に噛み込み挟持されることがある。これを防止するために、上記特許文献1では挟持される虞のある部分に充填部を設けることを開示している。こうした充填部によって隙間を充填する構造以外にも釣糸の噛み込みを防止する構造が考えられる。
従って解決しようとする課題は、上記特許文献1以外の手法により、釣糸の噛み込みを防止できる釣糸導入部付近の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明では、繊維強化樹脂製竿管に長孔を設け、該長孔に配設して、釣糸を竿管内に導入する導入孔を有する長孔用ガイド部材を配設しており、該長孔用ガイド部材の後側であって、竿管表面から離れた位置に硬質のガイド部材を保持した枠体が、該硬質ガイド部材の保持部の前側部から前方に延伸すると共に、前記長孔用ガイド部材に近づく方向の傾斜部を有し、該傾斜部から更に前記導入孔に対応した第1の孔を形成した延伸部を有し、前記傾斜部には前記第1孔とは離隔し、前記硬質ガイド部材を通過した釣糸を挿通させて前記導入孔に導く第2の孔を設けており、該第2の孔の前端位置では、該前端の裏面位置とその位置に対面する竿管表面又は長孔用ガイド部材との間の隙間寸法が、釣糸が噛み込まないよう釣糸直径よりも大きいことを特徴とする中通し釣竿を提供する。
【0005】
請求項2では、前記第1孔と第2孔との間の枠体領域は、枠体の幅方向中央部がその幅方向端部辺りよりも竿管表面側に窪んでいる請求項1記載の中通し釣竿を提供する。
請求項3では、前記延伸部が前記長孔用ガイド部材を押圧するか、又は僅かな隙間を介して上に覆い被さっている請求項1または2記載の中通し釣竿を提供する。僅かな隙間とは、0.5mm以下である。
請求項4では、前記導入孔の前端内側位置と硬質ガイド部材の竿管から最も遠い縁部とを直線で結んだ該直線ラインが、前記第2孔を通過する位置における左右方向孔幅が該第2孔の中の左右方向最大孔幅か又はこれに近い大きさである請求項1〜3の何れか1記載の中通し釣竿を提供する。硬質ガイド部材の竿管から最も遠い縁部を要件としたのは、スピニングリールを使用し、導入孔を下側にして投擲を行う場合を考えてのことである。下側にする場合は、投擲時の釣糸は、平均的な意味において上記直線ラインに沿う可能性が高い。従って、導入孔を上側にして使用する場合は下記作用効果は期待し難い。
【発明の効果】
【0006】
仕掛けの投入時等において、枠体領域において釣糸が弛んだ場合、その弛んだ釣糸は傾斜部の前端付近で噛み込む可能性があるが、本発明の請求項1では、硬質ガイド部材を通過した釣糸を挿通させて前記導入孔に導く第2の孔は、導入孔に対応した第1の孔とは分離しており、第2の孔の前端位置では、該前端の裏面位置とその位置に対面する竿管表面又は長孔用ガイド部材との間の隙間寸法が、釣糸が噛み込まないよう釣糸直径よりも大きいため、噛み込みが防止される。
【0007】
請求項2では、釣糸は第2孔と第1孔とに亘って通過するため、その間の枠体領域表面に接触する虞がある。そこで、この領域の幅方向中央部を端部辺りよりも低く窪ませ、釣糸との接触を防止し、釣糸抵抗を小さくできる。
請求項3では、延伸部が長孔用ガイド部材を押圧しているか、僅かな隙間で覆い被さっているため、長孔用ガイド部材を押える部材を別途設ける必要が無い。
【0008】
請求項4では、投擲時等において、釣糸導入部付近で釣糸が弛むことが多いが、硬質ガイド部材を通過した後弛んで左右に広がろうとして第2孔を通過する場合に、孔壁に接触すると釣糸抵抗が大きくなってしまうが、最も接触する可能性の高い位置と考えられる位置、即ち、導入孔の前端内側位置と硬質ガイド部材の竿管から最も遠い縁部とを直線で結んだ該直線ラインが第2孔を通過する位置、の左右方向孔幅が最大かそれに近いため、釣糸との接触を最大限に防止でき、投擲時等の釣糸抵抗を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る中通し釣竿の要部側面図、図2は図1に対応する部分の縦断面図、図3は図1の平面図、図4は図3の矢視線D−Dの拡大横断面図、図5は図3の矢視線E−Eの拡大横断面図である。エポキシ樹脂等の合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製竿管10の適宜位置に前後に長い長孔を設け、この孔縁を覆うように、セラミックス製の硬質な長孔用ガイド部材G2を配設している。本願の説明において、上という表現は、図面における上を言っており、実際の釣りにおける上とは異なることがある。スピニングリールを用い、ガイド部材G2を下側にして釣りを行う場合では、下を意味している。
【0010】
この長孔用ガイド部材も長孔GHを有し、この長孔を介して竿管内部に釣糸Lを導入する。この導入長孔(又は長孔用ガイド部材)の適宜量後側であって、竿管表面から適宜高さ離れた位置に、セラミックス製の硬質なガイド部材G1を配設する。そのため、金属板製等の枠体12によって保持している。このガイド部材の保持部の前側部から前方に延伸し、長孔用ガイド部材に近づく方向の傾斜部12Kを有し、該傾斜部の先部は前方に延伸した延伸部12Eを有している。この延伸部には、前記導入長孔に対応し、より大き目の長孔状の第1孔H1を形成し、前記導入長孔GHの上方は開放されているが、長孔用ガイド部材G2の一部(左右上面部)を覆う寸法形状に形成している。また、前記傾斜部には、枠体領域Zを介して第1孔とは分離した後方位置に長孔状の第2孔H2を形成している。
【0011】
延伸部12Eの先部は足部12L1であり、巻回糸等によって竿管に対して固定される部位である。一方、枠体12の元側部(後方部)は、ガイド部材G1を保持した保持部から後方に向かって延伸すると共に、竿管表面に近づく方向に傾斜した傾斜部12K’となっており、その先部は足部12L2であり、ここが巻回糸等によって竿管に対して固定される。
【0012】
図示しないリールからの釣糸Lは、ガイド部材G1の孔と第2孔H2とを通り、一旦、枠体12の外側(側面視で竿管から離れる上側)に出て、第1孔H1を通り、導入長孔GHを通って竿管内部に導入される。この経路を通る釣糸は、仕掛けの投擲等の投擲時には、竿管内部の釣糸と外部の釣糸との速度の相違から、この枠体辺り(釣糸導入部近く)において弛むことが多い。即ち、ガイド部材G1を通った後において釣糸が左右側方に弛むことがあり、弛んだ釣糸が、枠体12と竿管10の表面や長孔用ガイド部材G2との間に噛み込むことが生じ易い。
【0013】
しかし、本発明では、第2孔H2の前端PH2の裏面位置と、該位置に対面する竿管表面との間の隙間寸法δは、釣糸Lの直径よりも充分大きく(例えば4倍以上等の数倍以上)、このため噛み込まない。釣糸が噛み込むためには、枠体12の下側であって第2孔前端PH2よりも前方(枠体領域Zの前側位置)に潜り込まなければならないが、枠体領域Zの存在(枠体領域の後方側縁の存在)によって釣糸は第2孔前端PH2を形成する枠体領域Zの縁に阻止され、潜り込むことが困難となる。
【0014】
第1孔と第2孔との間領域である枠体領域Zは、既述の通り、弛んだ釣糸が噛み込むことを防止するために設けているが、図2を見れば明らかであるが、この領域Zの上方には釣糸Lが通過する。この釣糸に張力が作用している場合には、領域Zの表面に接触しない様に設計するが、投擲時等、張りが弛むこともあり、この場合、特に上下の振れで領域Zと釣糸との接触が生じ、これにより釣糸抵抗が増大する。これを防止するために、図4に図示するように、枠体領域Zの左右方向の中央部を両端部近くに比べて低く、即ち、竿管表面に近づくように窪ませている。更には、もし釣糸が接触しても滑りをよくするという観点から、枠体領域Zの表面をテフロン(登録商標)コーティング、セラミックスコーティング、潤滑メッキ等の低摩擦及び/又は撥水性の高い、滑り易い材質で構成したり、鏡面状に仕上げておくとよい。また、セラミックスを枠体領域Z表面に貼り付けてもよい。仮に、釣糸が窪ませた部位に接触した場合であって、釣糸の振れが左右方向の場合は釣糸を領域Zの中心寄りに収束させる。
【0015】
また、この例では記述の様に、延伸部12Eは長孔用ガイド部材G2の左右上面部を覆う寸法形状に形成しており、長孔用ガイド部材G2表面との隙間は、竿管の長孔の周囲壁に接着固定した該ガイド部材G2が、仮りに接着がとれても、外れてガイドの用を成さないということのない様に0.2mm程度としている。また、好ましくは上側から押圧させる。こうして別部品により部材G2を押える必要がない。
【0016】
図2は、釣糸Lが硬質ガイド部材G1の孔の竿管から最も遠い側を通り、長孔用ガイド部材G2の前端内側位置において接触している張力の作用した状態を図示している。この釣糸が枠体の傾斜部12Kと交差する位置Pにおける第2孔H2の左右方向幅寸法は、該第2孔での最大幅MDよりも幾分小さいが、第2孔の最大幅に近い大きさである。図2における釣糸Lは、導入孔GHを下側にした場合の投擲時の釣糸の平均的な位置を示している。投擲時では釣糸はこの第2孔を通過する際に(上下や)左右に振れることが多く、第2孔の周縁に接触し易い。接触すれば釣糸抵抗が増大するが、接触するとすればこの位置Pで接触する可能性が最も高いと考えられる。従って、この位置Pでの第2孔の幅が大きいことは、その接触を生じさせ難いといえ、延いては投擲時の釣糸抵抗を低減できる。
【0017】
図3に現われているように、第2孔は、楕円形状(又は卵形状)をなしており、MDで示す最大幅位置よりも前方は漸次縮径している。投擲時には、基本的には位置Pの所が最も接触可能性が高いが、釣糸Lは、硬質ガイド部材G1の孔の範囲で通過位置が変動でき、風等種々の要因で振れたりもする。従って、仮に釣糸が幅MDの位置以降で種々に振れ、第2孔H2の縁に当る場合も、先部程幅狭であるため、導入孔GHに入る前に、左右方向の振れを抑制できる。
【0018】
以上説明した長孔用ガイド部材は硬質部材で形成し、これで竿管に形成した長孔の縁を完全に覆っているが、例えば、硬質部材では上記長孔用ガイド部材G2の前端部分と後端部分を形成し、左右側部は、必ずしも硬質ではない合成樹脂等によって形成するというように、幾つかに分割して形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、イカ釣り用のエギロッド等の中通し釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に係る中通し釣竿の要部側面図である。
【図2】図2は図1に対応する部分の縦断面図である。
【図3】図3は図1の平面図である。
【図4】図4は図3の矢視線D−Dの拡大横断面図である。
【図5】図5は図3の矢視線E−Eの拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 竿管
12 枠体
12E 延伸部
12K 傾斜部
G1 硬質ガイド部材
G2 長孔用ガイド部材
GH 導入孔
H1 第1孔
H2 第2孔
Z 枠体領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂製竿管に長孔を設け、該長孔に配設して、釣糸を竿管内に導入する導入孔を有する長孔用ガイド部材を配設しており、
該長孔用ガイド部材の後側であって、竿管表面から離れた位置に硬質のガイド部材を保持した枠体が、該硬質ガイド部材の保持部の前側部から前方に延伸すると共に、前記長孔用ガイド部材に近づく方向の傾斜部を有し、該傾斜部から更に前記導入孔に対応した第1の孔を形成した延伸部を有し、
前記傾斜部には前記第1孔とは離隔し、前記硬質ガイド部材を通過した釣糸を挿通させて前記導入孔に導く第2の孔を設けており、
該第2の孔の前端位置では、該前端の裏面位置とその位置に対面する竿管表面又は長孔用ガイド部材との間の隙間寸法が、釣糸が噛み込まないよう釣糸直径よりも大きい
ことを特徴とする中通し釣竿。
【請求項2】
前記第1孔と第2孔との間の枠体領域は、枠体の幅方向中央部がその幅方向端部辺りよりも竿管表面側に窪んでいる請求項1記載の中通し釣竿。
【請求項3】
前記延伸部が前記長孔用ガイド部材を押圧するか、又は僅かな隙間を介して上に覆い被さっている請求項1または2記載の中通し釣竿。
【請求項4】
前記導入孔の前端内側位置と硬質ガイド部材の竿管から最も遠い縁部とを直線で結んだ該直線ラインが、前記第2孔を通過する位置における左右方向孔幅が該第2孔の中の左右方向最大孔幅か又はこれに近い大きさである請求項1〜3の何れか1記載の中通し釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34197(P2006−34197A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220562(P2004−220562)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】