説明

釣竿

【課題】握持部で魚信等を良好に感じとることができる釣竿を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の釣竿1は、握持部8と、一端側が釣竿1の竿杆5に直接に接触され他端側が握持部8の外周領域Rへと延在されて成る振動伝達片30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、特に手元側の握持部で魚信等を感じとることができる釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣りでは、浮きの動きによって、あるいは、釣竿を通じて直接に伝わる振動によって、魚の当たりが見極められる。
【0003】
また、釣竿には、竿杆を直接に握持するタイプのものと、竿杆の手元側外周に設けられる握持部を握るタイプのものとがある。前者のタイプの釣竿は、竿杆を握る手に直接に魚信等の振動が伝わるため、魚の当たりやルアーの泳動などを感じ取り易いという利点があるが、竿杆を握る手が滑ったり、竿杆を長時間握っていると手が痛くなるなどの問題が生じる場合もある。一方、後者のタイプの釣竿は、握持部が設けられているため、釣竿を握り易い(手が滑ったり痛くなったりしない)という利点がある反面、竿杆に直接に触れないため、握持部を握る手に魚信等の振動が伝わり難く、魚の当たりやルアーの泳動などを感じ取ることが難しいという欠点がある。
【0004】
このため、例えば特許文献1には、握持部を握る手に魚信等の振動を伝え易くする釣竿構造が開示されている。具体的には、竿素材(竿杆)に接触するように握持部に伝動本体部を埋め込んで、伝動本体部の端部を握持部の表面に面一に臨むように位置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−273374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される構造では、伝動本体部が握持部に接触した状態で埋め込まれているため、竿杆から伝動本体部を通じて伝わる魚信等の振動が握持部に緩和(吸収)されてしまい。伝動本体部の端部に振動がうまく伝わらない。また、伝動本体部の端部が握持部の表面と面一であるため、握持部を握る手の指腹の一部だけが伝動本体部の端部に触れている状態にすぎず(伝動本体部の端部に触れる指が同時に握持部にも触れている状態であり)、したがって、魚の当たりやルアーの泳動などを感じ取り難い。
【0007】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、握持部で魚信等を良好に感じとることができる釣竿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、握持部が設けられた釣竿であって、一端側が釣竿の竿杆に直接に接触され他端側が前記握持部の外周領域へと延在されて成る振動伝達片を有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、握持部を有するため、釣竿を握り易いとともに、竿杆に直接に接触する振動伝達片が握持部の外周領域へと延在されている(振動伝達片の他端が、握持部の表面と面一ではなく、握持部の表面外へと延び出ている)ため、握持部を握る手の指(指腹)を握持部から離した状態で(握持部に触れないで)振動伝達片に触れさせることができ、したがって、竿杆から振動伝達片を通じて伝わる魚信等の振動(魚の当たりやルアーの泳動など)を握持部によって緩和されることなく指の腹全体で明確に感じ取ることが可能になる。
【0010】
なお、上記構成において、握持部の「外周領域」とは、握持部の外周面を取り囲む領域(握持部の外周面の径方向外側の領域、すなわち、握持部の長手方向先端を通って握持部の長手方向に対して垂直な面と、握持部の長手方向基端を通って握持部の長手方向に対して垂直な面との間に位置する空間)のことである。
【0011】
また、上記構成において、振動伝達片の他端側は、握持部を握る手の指で触れることができる位置まで延在することが好ましい。この場合、振動伝達片の他端側は、握持部の長手方向に延びる指載せ部を有することが好ましい。また、釣竿がリール載置を有する場合、振動伝達片の他端側は、リール載置部の設置領域まで延びることが更に好ましい。この場合、振動伝達片の他端側は、リール載置部の設置側(リール配置側)へと延びてもよく、あるいは、リール載置部の設置側と反対の側へと延びてもよい。
【0012】
また、上記構成において、振動伝達片の他端側は、握持部に固定されない自由端である(すなわち、振動伝達片がその一端側で片持ち支持される)ことが好ましい。また、上記構成において、振動伝達片の一端側は、握持部の内側で竿杆に接触されて(取り付けられて)握持部から突出されてもよく、あるいは、握持部の外側で竿杆に接触されて(取り付けられて)そのまま握持部の外周領域へと延在されてもよい。更に、上記構成において、振動伝達片の他端側は、握持部と接触しない部分を有することが好ましい。これによれば、竿杆から振動伝達片を通じて伝わる魚信等の振動が握持部によって大きく緩和(吸収)されない。このことから、振動伝達片は、その全体にわたって握持部と接触しないことが更に好ましい(無論、一部が握持部に接触しても構わない)。また、上記構成において、振動伝達片は、可撓性を有し、指で押さえると弾性変形する素材で形成されるのが好ましい。その場合、振動伝達片は握持部よりも硬質な材料から成ることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、握持部で魚信等を良好に感じとることができる釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る釣竿の全体側面図である。
【図2】図1の釣竿の握持部の拡大断面図である。
【図3】振動伝達片が線材から成る場合の図1の釣竿の握持部の平面図である。
【図4】振動伝達片が板材から成る場合の図1の釣竿の握持部の平面図である。
【図5】第1の変形例に係る振動伝達片を伴う握持部の拡大断面図である。
【図6】第2の変形例に係る振動伝達片を伴う握持部の拡大断面図である。
【図7】握持部の変形例を示す拡大断面図である。
【図8】第3の変形例に係る振動伝達片を伴う握持部の拡大断面図である。
【図9】第4の変形例に係る振動伝達片を伴う握持部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る釣竿の実施形態について説明する。
【0016】
図1〜図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態の釣竿1は、例えば磯や防波堤で使用される外ガイド付きの振り出し竿であり、穂先側の複数の竿杆が元竿側の竿杆内に順次収納可能に形成されている。具体的には、釣竿1は、穂先2を有する先竿(竿杆)4と、元竿(竿杆)5とから成っており、これらの竿杆にはそれぞれ穂先も含めて必要な数の釣糸ガイド3が設けられている。
【0017】
また、元竿5の手元側には、釣用リール9を装着可能なリール取り付け部20が設けられる。この場合、リール取り付け部20は、元竿(竿杆)5の外周に嵌着される筒状体としてのリールシート7を有する。リールシート7は、前端側に固定フード7aを有するとともに、リール9の脚部9aの竿取付部9bを載置できる平坦面としてのリール載置部7bを有する。そして、リール取り付け部20は、リール載置部7bに載置されるリール9の竿取付部9bを、リールシート7に移動可能(長手方向に移動可能)に取り付けられる移動フード23と固定フード7aとの間で挟持し、その挟持状態をリールシート7に螺着されるナット部24の締め付けにより保持することで、リール9を釣竿1に対して取り付けるようになっている。
【0018】
また、元竿5の手元側には、リールシート7の一部を外側から覆うように、手で握るための握持部8が設けられている。握持部8は、主に、コルク、木材、ゴム、合成樹脂(合成樹脂発泡材を含む)などによって形成されており、リールシート7の前方側から元竿5の基端に至るまで延在している。
【0019】
また、本実施形態では、竿杆に伝わる魚信等の振動(魚の当たりやルアーの泳動など)を受けて伝達するための振動伝達片(突片)30が握持部8に設けられている。この振動伝達片30は、例えば繊維強化樹脂によって形成されており、その一端側が握持部8の先端部に形成された通孔42に挿通されて位置されている。ここで、通孔42は、握持部8の外表面で開口するとともに、その前端側が元竿(竿杆)5の外表面に達するように延びており、具体的には、元竿5の外表面に沿って長手方向に延びる前端側孔部と、そこから握持部8の外表面の開口へと斜めに延びる傾斜孔部とから成る。
【0020】
振動伝達片30は、一端側が元竿5に直接に接触されるとともに、他端側が握持部8の外周領域Rへと延在されて成る。具体的には、振動伝達片30は、握持部8の通孔42の前端側孔部内で糸40により元竿5に対して糸巻き固定される(元竿5と直接に接触する)先端部30aと、通孔30の傾斜孔部に沿って斜めに延びる傾斜部30bと、通孔42から突出して握持部8の外表面から一定の間隙Sを隔てて握持部8の長手方向に沿って握持部8の外表面と略平行に延びる指載せ部(握持部8を握る手の指Fを載せるための部位)30cと、握持部8の外表面に向けて内側に斜めに折り返される基端部30dとから成る。
【0021】
ここで、握持部8の「外周領域R」とは、握持部8の外周面を取り囲む領域(握持部8の外周面の径方向外側の領域、すなわち、握持部8の長手方向先端を通って握持部の長手方向に対して垂直な面P1と、握持部8の長手方向基端を通って握持部8の長手方向に対して垂直な面P2との間に位置する空間)のことである。
【0022】
また、本実施形態において、指載せ部30cおよび基端部30dを含む振動伝達片30の他端側は、握持部8を握る手の指で触れることができる位置まで延在している。特に、本実施形態では、振動伝達片30の他端側がリールシート7の設置領域まで延びている。また、本実施形態では、振動伝達片30の他端側がリール載置部7bの設置側(リール9配置側)と反対の側で延在している。
【0023】
また、本実施形態において、振動伝達片30の他端側は、握持部8に固定されない自由端として形成される(すなわち、振動伝達片30がその一端側の先端部30aで片持ち支持される)。特に、本実施形態において、振動伝達片30は、その他端側が握持部8と接触せず、好ましくは全体にわたって(通孔42内も含めて)握持部8と接触しない。これによれば、竿杆から振動伝達片30を通じて伝わる魚信等の振動が握持部8によって大きく緩和(吸収)されないで済む。
【0024】
また、本実施形態の振動伝達片30は、可撓性を有し、指で押さえると弾性変形する素材で形成されている、特に、振動伝達片30は、握持部8よりも硬質な材料から成り、図3に示されるように線材(例えば金属線)を屈曲させて形成され、あるいは、図4に示されるように板材によって形成される。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、竿杆に直接に接触する振動伝達片30が握持部8の外周領域Rへと延在されている(振動伝達片30の他端が、握持部8の表面と面一ではなく、握持部8の表面外へと延び出ている)ため、握持部8を握る手の指(指腹)Fを握持部8から離した状態で(握持部に触れないで・・・図2参照)振動伝達片30に触れさせることができ、したがって、竿杆から振動伝達片30を通じて伝わる魚信等の振動(魚の当たりやルアーの泳動など)を握持部8によって緩和されることなく指Fの腹全体で明確に感じ取ることが可能になる。
【0026】
図5は振動伝達片30の第1の変形例を示している。この変形例では、振動伝達片30がリール載置部7bの設置側で延びている。また、この場合、振動伝達片30の指載せ部30cは、移動フード23の外面形状に合わせて若干斜め下方へ延びており、前述した実施形態のように親指で触れるのではなく、人差し指で触れることができる。なお、それ以外の構成は前述した実施形態と同じである。したがって、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
図6は振動伝達片30の第2の変形例を示している。この変形例では、振動伝達片30の内側に斜めに折り返される基端部30dが握持部8の外表面に形成された凹部50内に収納されている。なお、それ以外の構成は前述した実施形態と同じである。したがって、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、振動伝達片30基端部30dが凹部50内に収納されているため、振動伝達片30の基端側に釣糸や異物等が引っ掛かることを防止できる。
【0028】
図7は握持部8の変形例を示している。この変形例では、握持部8は、通孔42を有する前側握持部8aと、リールシート7と一体を成す中央握持部8bと、元竿5の基端側に位置する後側握持部8cとから成っている。ここで、前側握持部8aおよび後側握持部8cは発泡合成樹脂等によって形成され、また、中央握持部8bは前側握持部8aよりもやや硬質な材料(ABS等)により形成される。なお、それ以外の構成は前述した実施形態と同じである。したがって、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
図8は振動伝達片30の第3の変形例を示している。この変形例では、振動伝達片30の先端部30aが糸40によって固定されず、握持部8によって保持されている。具体的には、握持部8の通孔42Aの内径が前述した実施形態の通孔42よりも小径に形成され、振動伝達片30が通孔42Aにおいて握持部8と接触(圧接)した状態で保持される。この場合、振動伝達片30の先端部30aは元竿5と直接に接触するように位置される。なお、振動伝達片30を通孔42Aで保持するのではなく、振動伝達片30を握持部8の内周面と元竿5の外周面との間で挟持してもよい。それ以外の構成は前述した実施形態と同じであり、したがって、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
図9は振動伝達片30の第4の変形例を示している。前述した実施形態では、振動伝達片30の一端側(先端側)が、握持部8の内側で元竿5に接触されて(取り付けられて)握持部8から突出されていたが、この変形例では、振動伝達片30Aが、握持部8の外側(握持部8の前方側)で元竿5に接触して取り付けられて(糸40により糸巻き固定されて)そのまま握持部8の外周領域Rへと延在されている。具体的には、振動伝達片30Aは、握持部8の前方側で元竿5に接触して糸40により固定される先端部30Aaと、そこから握持部8の外周領域Rへと立ち上がるように延びる延在部30Abと、握持部8の外表面に向けて内側に折り返される基端部30Acとから成る。ここで、握持部8の外周領域Rに位置する延在部30Abの基端側は前述した指載せ部として機能し得る。なお、それ以外の構成は前述した実施形態と同じであり、したがって、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 釣竿
8 握持部
30 振動伝達片
30c 指載せ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
握持部が設けられた釣竿であって、一端側が釣竿の竿杆に直接に接触され他端側が前記握持部の外周領域へと延在されて成る振動伝達片を有することを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記振動伝達片の他端側が前記握持部と接触しない部分を有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記振動伝達片の他端側が前記握持部の長手方向に延びる指載せ部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記振動伝達片が前記握持部よりも硬質な材料から成ることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228182(P2012−228182A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96515(P2011−96515)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】