説明

釣竿

【課題】 竿部が幅方向に捩れるのを極力防止できるとともに、当たりを明確にすることが可能な釣竿を提供すること。
【解決手段】 釣竿12は、板状に形成した竿部22の片面28aに、釣糸挿通孔63,72を形成する環状部62,72をそれぞれ有する複数の釣糸ガイド52,54,56,58を並設させている。環状部62,72のうち、穂先26a側に配置されたトップガイド52の環状部62が前記竿部22の表面28aに設けられている。前記環状部62,72のうち、前記トップガイド52よりも元部26b側の釣糸ガイド54,56,58の環状部72は、脚部76により前記竿部22の片面28aから離間させて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撓り方向を所定の方向に特定した釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、釣竿は魚の種類や釣り方などに応じて種々のものが使い分けされている。
その中でも、例えば氷上で行うワカサギ釣りなどは釣竿の長さが他に比べて極端に短く、釣り上げ時の口切れを防止するために極めて軟らかい調子の釣竿を使用する点で他の釣りに比べて特殊な部分が多い。
例えば特許文献1には、厚さを薄くして板状にした釣竿が記載されている。このような板状の釣竿は、魚の当たりを取り易くするため、釣竿の曲がり方向を上下方向のみに規制することができる。このような板状の釣竿は断面が丸い釣竿より捩れ難いため、魚の当たりが釣竿の上下動となって明確に現れ易い。逆に言うと、断面が丸い釣竿のように捩れ易い釣竿は当たりが捩れとなって現れてしまうので、当たりが分かり難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−276626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に開示された釣竿に取り付けた釣糸ガイドの高さが低いと、釣りの最中に釣糸が釣竿の上面に接し易くなる。ワカサギ釣りであれば例えば氷面に穴を開ける穴釣りを行うことがあるが、このような場合、竿の表面に釣糸が凍りつくなどして引きがあっても釣糸の動きを悪化させるおそれがある。このため、逆に魚の当たりが不明確となるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、竿部が幅方向に捩れるのを極力防止できるとともに、当たりを明確にすることが可能な釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る、板状に形成した竿部の片面に、釣糸挿通孔を形成する環状部をそれぞれ有する複数の釣糸ガイドを並設させた釣竿にあっては、前記環状部のうち、穂先側に配置されたトップガイドの環状部が前記竿部の片面に設けられ、前記環状部のうち、前記トップガイドよりも元部側の釣糸ガイドの環状部は、支脚部により前記竿部の片面から離間させて設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、前記元部側の環状部は、前記竿部のうち、前記釣糸ガイドが配設された面の鉛直上方の領域内に配置されていることが好適である。
また、前記元部側の釣糸ガイドの環状部の釣糸挿通孔のうち前記片面に対して近接する端部を、前記トップガイドの環状部の釣糸挿通孔のうち前記片面に対して離れた端部よりも前記片面に対して遠い位置としたことが好適である。
また、前記トップガイドよりも元部側の釣糸ガイドの環状部の中心を前記竿部の片面に対して同一距離離間させたことが好適である。
また、前記穂先側の環状部の内径を、それよりも元部側の環状部の内径よりも小さくしたことが好適である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、竿部を板状に形成することによって、竿部の撓り方向を板厚方向(例えば上下方向)に限定でき、上下方向に直交する左右方向(板幅方向)の捩れ(撓り)をできるだけ防止できる。また、元部側のガイドの環状部を竿部の片面(表面)から離しているので、元部側のガイドを通過する釣糸を竿部の表面や裏面等に触れ難くすることができる。
したがって、この発明によれば、竿部の撓り方向をより板厚方向(所定の方向)だけに特定し易くすることができ、釣糸が竿部に触れるのを防止できるので、当たりをより確実に認識し易くすることができる。
【0009】
また、元部側の環状部を竿部の幅の内側に配置することによって、幅方向に竿部が捩れるのを極力防止することができる。
また、元部から最も遠位の穂先がそれよりも元部側よりも左右方向に振れ易くなるが、元部側の釣糸ガイドの環状部の釣糸挿通孔のうち片面に対して近接する端部を、トップガイドの環状部の釣糸挿通孔のうち片面に対して離れた端部よりも片面に対して遠い位置としたことによって、穂先側の釣糸と竿部との距離を短く(小さく)することができるので、引きがあっても穂先が左右方向に捩れるのを極力防止できる。また、釣糸が板状の竿部の例えば表面や裏面等に接触していると、釣糸の動きが分かり難く、釣糸による当たりが釣竿に吸収されてしまったり、釣糸が竿部の表面や裏面上で凍りつくなどして当たりが分かり難いことがあるが、竿部のトップガイドの環状部を竿部の片面に近接させても、トップガイドは穂先にあるため、釣糸は竿部の表面に触れ難い。
トップガイドよりも元部側の釣糸ガイドの環状部の中心を竿部の片面に対して同一距離離間させることによって、トップガイド以外の釣糸ガイドは同一の釣糸ガイドを用いることができ、製造コストの抑制を図ることができるとともに、竿部の表面に対する釣糸の高さを安定させることができる。
穂先側のガイドの環状部の内径を、それよりも元部側のガイドの環状部の内径よりも小さくしたことによって、穂先側における釣糸の移動範囲をより制限できるので、穂先が幅方向に捩れるのを極力防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る釣竿を電動リールに取り付けた釣り具(釣り装置)で氷の上からワカサギ等を穴釣りしている状態を示す概略図。
【図2】第1実施形態に係る釣竿を拡大して示し、図3の2−2線に沿う概略的な縦断面図。
【図3】第1実施形態に係る釣竿を拡大して示し、図2の矢印3方向から見た概略的な平面図。
【図4】第2実施形態に係る釣竿を拡大して示し、図5の4−4線に沿う概略的な縦断面図。
【図5】第2実施形態に係る釣竿を拡大して示し、図4の矢印5方向から見た概略的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
第1実施形態について図1から図3を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る釣り具(釣り装置)10は、釣竿12と、電動リール14とを有する。
【0013】
図1から図3に示すように、釣竿12は、細長い竿部22と、竿部22の後端(元部)26bに形成され例えば電動リール14に装着される装着部24とを有する。装着部24は、樹脂材等により例えば円柱状に形成されていても良いし、電動リール14に対する竿部22の後述する上面(表面)28a及び下面(裏面)28bを明確に規定するため、例えば楕円状等に形成されていても良い。
【0014】
竿部22は、例えば金属、合成樹脂、カーボン、ガラス等の繊維強化樹脂や天然の木材等で、その幅Wが厚さTに比べて大きい、扁平で真っ直ぐな板状に形成され、竿部22の長さは例えば100cm以下(好ましくは10cmから50cm程度)である。なお、図3に示す竿部22の幅W(2.0mmから20.0mm(好ましくは3.0mmから10.0mm))は穂先26a側から元部26b側まで一定(例えば6.0mm)であることが好ましい。
【0015】
竿部22は、板伏に形成することで図1に示すように、図2中の板厚Tの方向(上下方向)の曲がり(撓り)を許容するが、図3中の幅Wの方向(左右方向)の曲がりを規制する。すなわち、本実施形態に係る竿部22は撓り方向を所定の方向(上下方向)に規定しており、竿部22が捩れ難く、魚の当たりを竿部22の上下方向の動きとして明確にすることが出来る。
【0016】
図2に示すように、この実施形態の釣竿12の竿部22は例えば同一の繊維強化樹脂材等を積層した、第1から第4層32,34,36,38で形成されている。第1から第4層32,34,36,38の後端は揃えられて装着部24に固定されている。ここでは、第1層32の下側に第2層34が、第2層34の下側に第3層36が、第3層36の下側に第4層38が固定されている。そして、第1層32は第1から第4層32,34,36,38のうちで最も長く、竿部22の片面である表面(上面)28aを形成する。第2層34は第1から第4層32,34,36,38のうちで第1層32に次いで長く形成され、その上面は第1層32の下面に接着等により固定されている。第3層36は第2層34に次いで長く形成され、その上面は第2層34の下面に接着等により固定されている。第4層38は第1から第4層32,34,36,38のうちで最も短く形成され、その上面は第3層36の下面に接着等により固定されている。そして、第1層32の上面が竿部22の上面28aを形成するのに対して、第1層32から第3層32,34,36の先端側下面、及び第4層38の下面は、竿部22の下面28bを形成する。
したがって、竿部22が曲がっていない状態で上面28aは水平面状になっている。
【0017】
竿部22はこのように同一の繊維強化樹脂材が積層されているため、竿部22は積層数が少ない穂先26a側から積層数が多い元部26b側に向かって徐々に板厚Tが増すので、柔軟さが低下し、剛性が増している。すなわち、この竿部22は穂先26a側が元部26b側に比べて曲がり易い。なお、図1に示す竿部22の第1層32の先端の下面と、第2層34の先端の下面とが当接するまで屈曲させることが可能であるように、この実施形態の竿部22は極めて軟らかい調子であることが好ましい。
なお、本実施形態の竿部22の穂先26a側の板厚は0.1mm程度で、元部26b側の板厚は0.6mm程度であることが好ましい。
【0018】
そして、竿部22の第1層32の穂先26aの上面(片面)28aには竿部22の最も先端側(穂先26a)側に設けられたトップガイド52が装着され、このトップガイド52よりも竿部22の元部26b側に設けた釣糸ガイドが元部側の釣糸ガイドであり、元部26b側に向かって適宜の間隔で、第2ガイド54、第3ガイド56及び第4ガイド58の複数の釣糸ガイドが竿部22の第1層32の上面28aに並設されている。この実施形態では第2ガイド54、第3ガイド56及び第4ガイド58は同一のもの(同一サイズで同一形状のもの)が用いられる。また、各釣糸ガイド52,54,56,58は略左右対称に形成されている。
なお、竿部22の穂先26aに対して元部26b側に釣り糸ガイド54,56,58が取り付けられているが、トップガイド52と第2ガイド54との間隔よりも、第2ガイド54と第3ガイド56との間隔の方が大きく、第2ガイド54と第3ガイド56との間隔よりも第3ガイド56と第4ガイド58との間隔の方が大きい方が好ましい。すなわち、竿部22には、元部26b側に向かうにつれて徐々に間隔を大きくして複数の釣糸ガイド(元部26b側のガイド)54,56,58が取り付けられていることが好ましい。このような構造とすると、釣糸Lと釣糸ガイド54,56,58との間の摩擦を軽減させ、かつ、釣糸ガイド54,56,58の数を減らして製造コストの削減を図りつつ、確実に釣糸Lを案内することができる。
【0019】
図2及び図3に示すトップガイド52は、釣糸挿通孔(釣糸挿通部)63を有する環状部62と、竿部22の上面28aに載置されて固定される取付部(脚部)64とを有する。
第2層34の先端位置に相当する竿部22の上面28a(第1層32の上面)には第2ガイド54が、第3層36の先端位置に相当する竿部22の上面28aには第3ガイド56が、第4層38の先端位置に相当する竿部22の上面28aには第4ガイド58が固定されている。第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58は、それぞれ、釣糸挿通孔(釣糸挿通部)73を有する環状部72と、竿部22の上面28aに載置される取付部74と、環状部72及び取付部74の間に配設される支脚部76とを有する。
なお、図2に示すように、各釣糸ガイド52,54,56,58の環状部62,72の釣糸挿通孔63,73はそれぞれ直径Dの内径を有する。
【0020】
トップガイド52の環状部62は取付部64に直接固定されている。取付部64は竿部22の長手方向に延びている。取付部64の、竿部22の上面28a(第1層32の上面)に対する接触面(取付部64の裏面)は、竿部22の上面28aに対する接触面積をできるだけ大きくするように、例えば平坦に形成されている。そして、取付部64は例えば糸巻や接着等の固定手段66により竿部22の上面28aの穂先26aに載置されて固定されている。このとき、環状部62はその一部(下側)が上面28aに接触するようにして載置され、竿部22の上面28aに対して立ち上がるように形成されている。
【0021】
第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の取付部74は、トップガイド52の取付部64と同様に形成され、各取付部74は例えば糸巻や接着等の固定手段78により竿部22の上面28aに固定されている。
第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の支脚部76は、竿部22の上面28aから上方に突設された状態にあり、環状部72を竿部22の上面28aから離間させる役割を果たす。このため、第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の釣糸挿通孔73の中心は、トップガイド52の環状部62の釣糸挿通孔63の中心よりも竿部22の上面28aに対して離れた位置にある。したがって、元部26b側の釣糸ガイド54,56,58はトップガイド52より釣糸Lを竿部22の表面28aに対して離れた位置に配置する。
【0022】
そして、本実施形態では、竿部22の表面28aからトップガイド52の環状部62の釣糸挿通孔63の上端(表面28aに対して離れた端部)までの高さhは、元部26b側の第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の各環状部72の釣糸挿通孔73の下端(表面28aに対して近接する端部)よりも低い位置にある。言い換えると、元部26b側の釣糸ガイド54,56,58の釣り糸挿通孔73の下端は、トップガイド52の釣り糸挿通孔63の上端より高い位置としている。すなわち、両者の孔63,73は竿部22の長手方向(中心線Cの延設方向)に重なることはなく、位相がずれて位置している。このように釣糸ガイド52,54,56,58を形成することで、元部26b側の釣糸ガイド54,56,58を通過する釣糸Lは竿部22の上面28aに接触し難くなる。元部26b側の釣糸ガイド54,56,58は、大きさも同じの同一形状であるので、釣糸Lは竿部22の表面28aから同じ距離だけ離れて元部26b側の釣糸ガイド54,56,58の釣糸挿通孔73内を通過する。なお、元部26b側の釣糸ガイド54,56,58に、大きさが同じで同一形状のもの(同一のもの)を用いることによって、釣竿12の製造コストを抑制することができるとともに、竿部22の表面28aに対する元部26b側の釣糸Lの高さを一定に保持することができる。このように、竿部22の表面28aに対する元部26b側の釣糸Lの高さを一定に保持することができることによって、釣糸Lが上下左右に振れるのを極力防止し、釣糸Lを安定して案内することができる。
【0023】
トップガイド52は元部26b側の釣糸ガイド54,56,58よりも環状部62が竿部22の表面28a近くに設けられ、釣り糸挿通孔63も竿部22の表面28aに近い。トップガイド52をこのように配置しても、トップガイド52は穂先26aにあるため釣糸Lは竿部22の表面28aに触れ難い。また、穂先26aでは釣糸Lが竿部22の上面28aに近接した位置(軸線の近く)を通るため、釣糸Lが引かれても釣竿12は捩れ難く、当たりが明確に出やすい。
【0024】
図3に示すように、竿部22の上面28aにトップガイド52、第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58が取り付けられた状態で、各環状部62,72は竿部22の幅Wの内側にあり、竿部22の左右の縁部から外側にはみ出していない。すなわち、竿部22の幅Wよりも各ガイド52,54,56,58の幅(環状部62,72の外径)が小さく、各ガイド52,54,56,58の環状部62,72の釣糸挿通孔63,73は竿部22の幅Wの中心線C上に形成されている。なお、各ガイド52,54,56,58の環状部62,72の釣糸挿通孔63,73が竿部22の幅Wの中心線C上に形成されていなくても、竿部22の表面28aと左側縁部及び右側縁部とにより形成される領域の鉛直上方の領域内に各ガイド52,54,56,58の環状部62,72が配置されていれば良い。このため、竿部22の左右の縁部よりも環状部62,72がはみ出して釣糸Lによって竿部22を左右方向に曲げる力を加える場合よりも、釣糸Lにより竿部22に左右方向への力が加わり難く、竿部22が左右方向に曲げられるのを防止できる。
【0025】
そして、本実施形態では、釣竿12の元部26b側の装着部24が、そのボディが握持部を兼ねた電動リール14に着脱可能に取り付けられている。
【0026】
なお、図1に示す電動リール14は、コンピュータとともに使用されるマウスのような形状を有し、通常、マウスのコードが延出される位置に図示しない凹部(穴部)が形成されて、その凹部に釣竿12の装着部24が着脱可能に嵌合して装着される。
【0027】
この電動リール14には、釣り人の例えば人差し指Fが配置される位置にスプールSが配設されている。なお、釣竿12の装着部24が嵌合される凹部の上側には、例えばスイッチとして機能するラインガイドLGが配設されている。釣糸が巻き取られてラインガイドLGが重り(図示せず)等によってスプールSに向かって倒されると、自動的に巻取りを停止する。
【0028】
そして、氷面Pに穴Hを形成して例えばワカサギの穴釣りを行う場合、電動リール14を台座Bの上に載置して氷面Pに形成された穴Hから釣糸Lを垂らして釣りを行う。
このとき、竿部22は構造的に上下方向(板厚方向)に容易に撓り、左右方向(板幅方向)への撓りを規制しているので、魚の当たりを容易にとることができる。そして、穂先26a側では釣糸Lが竿部22の表面28aに近接しているが、元部26b側では釣糸Lが竿部22の表面28aから離れているので、釣糸Lが竿部22の表面28aで凍り付くことが防止されている。このため、魚の引きに従って釣糸Lが動くので、魚の当たりを明確に認識できる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
竿部22を板状に形成することによって、竿部22の撓り方向を例えば上下方向に限定でき、上下方向に直交する左右方向の捩れ(撓り)をできるだけ防止できる。このとき、元部26bから最も遠位の穂先26aがそれよりも元部26b側よりも左右方向に振れ易くなるが、トップガイド52の環状部62は竿部22の上面28aと釣糸Lとの距離を小さくしているので、引きがあっても穂先26aが左右方向に捩れるのを極力防止できる。また、釣糸Lが板状の竿部22の表面28aに接触していると釣糸Lが竿部22の表面28a上で凍りつくなどして当たりが分かり難くことがあるが、竿部22のトップガイド52の環状部62を竿部22の片面28aに近接させても、トップガイド52は穂先26aにあるため、釣糸Lは竿部22の表面28aに触れ難い。また、元部26b側のガイド54,56,58の環状部62を竿部22の表面28aから離しているので、ガイド54,56,58を通過する釣糸Lを竿部22の表面28aに触れ難くすることができる。
したがって、この発明によれば、竿部22の撓り方向をより上下方向(所定の方向)だけに特定し易くすることができ、釣糸Lが竿部22の表面28aに触れるのを防止できるので、当たりをより確実に認識し易くすることができる。
【0030】
なお、本実施形態とは竿部の形状が異なる例えば断面が丸形状や円筒状の竿部を有する釣竿であれば、竿部の穂先とトップガイドによりガイドされる釣糸との距離が小さい場合であっても、上下方向だけでなく、左右方向にも同様に撓らせることができるので、竿部の撓り方向を限定する機能はなく、その場合のトップガイドの配置と、この撓り方向を規定した板状の竿部22を用いる本実施形態によるトップガイド52の配置とは明確に区別できる。
【0031】
なお、本実施形態では、トップガイド52及び釣糸ガイド54,56,58を竿部22の上面28aに取り付ける構造としたが、竿部22の下面に取り付ける構造としても良い。この場合、トップガイド52及び釣糸ガイド54,56,58が取り付けられている面を上面(表面)と規定する。
【0032】
次に、第2実施形態について図4および図5を用いて説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0033】
第2実施形態は、竿部22が一枚の板材で装着部24に固定され、かつ、竿部22の穂先26aから元部26bまで同じ厚みT(例えば0.1から0.6mm)を有するように形成されている。また、竿部22の穂先26a側が元部26b側に比べて幅Wが狭い、先細のテーパ状に形成されている。例えば穂先26a側の幅が2.0mmで、元部26b側の幅が10.0mmである。このため、穂先26a側が元部26b側に比べて図4に示す板厚Tの方向(上下方向)に曲がり易い。
穂先26a側は、元部26b側よりも幅Wが狭く、元部26b側に比べて捩れ易くはなっているが、図5に示すようにトップガイド52の環状部62の外径よりも大きな幅を有するとともに、第1実施形態と同様に、トップガイド52により、より竿部22の上面28aに近い位置を釣糸Lが通過するので、竿部22の穂先26aが図5に示す幅Wの方向(左右方向)に捩れるのを極力防止する構造としている。
【0034】
なお、図示しないが、竿部22の厚みTが、穂先26a側が薄く、元部26b側が厚く形成されていれば、幅Wが同一であっても穂先26a側を曲げ易く、元部26b側を穂先26a側に対して剛性を有するように形成できる。
【0035】
図4及び図5に示すように、トップガイド52の環状部62の釣糸挿通孔63の内径D1は、元部26b側の第2から第4のガイド54,56,58の環状部72a,72b,72cの釣糸挿通孔73a,73b,73cの内径D2,D3,D4よりも小さく形成されている。このように、トップガイド52の環状部62の内径D1を、それよりも元部26b側の釣糸ガイド54,56,58の環状部72a,72b,72cの内径D2,D3,D4よりも小さくしたことによって、穂先26a側における釣糸Lの移動範囲をより制限できる。したがって、穂先26aが幅方向に捩れるのを極力防止できる。
【0036】
そして、第2ガイド54の環状部72aの釣糸挿通孔73aの内径D2は第3ガイド56の環状部72bの釣糸挿通孔73bの内径D3よりも小さく、第3ガイド56の環状部72bの釣糸挿通孔73bの内径D3は第4ガイド58の環状部72cの釣糸挿通孔73cの内径D4よりも小さく形成されている。すなわち、元部26b側の釣糸ガイド54,56,58の釣り糸挿通孔73a,73b,73cの径D2,D3,D4を元部26b側に近づくにつれて徐々に大きくしている。このため、例えば釣糸Lが張った状態のときに、トップガイド52と図1に示すリール14のスプールSとの間で、釣糸Lに釣り糸ガイド54,56,58によって大きな力が加えられるのを防止できる。
【0037】
本実施形態では、第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の支脚部76はそれぞれ同一長さに形成され、竿部22の表面28aに対する環状部72a,72b,72cの釣糸挿通孔73a,73b,73cの下端までの距離を同一に設定しているが、第2ガイド54の支脚部76が第3ガイド56の支脚部76よりも短く、第3ガイド56の支脚部76が第4ガイド58の支脚部76よりも短く形成されていることも好適である。
【0038】
そして、竿部22の表面28aからトップガイド52の環状部62の釣糸挿通孔63の上端までの高さhは、第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の各環状部72a,72b,72cの釣糸挿通孔73a,73b,73cの下端よりも低い位置にある。すなわち、第1実施形態と同様に、トップガイドの釣り糸挿通孔63と、第2ガイド54、第3ガイド56、第4ガイド58の釣糸挿通孔73a,73b,73cとは位相がずれて位置している。このように釣糸ガイド52,54,56,58を形成することで、トップガイド52とスプールSとの間の釣糸Lの方向を元部26b側の釣糸ガイド54,56,58でガイドする釣糸Lを、竿部22の上面28aに接触し難くすることができる。
【0039】
また、この実施形態では元部26b側の釣糸ガイド54,56,58の環状部72a,72b,72cの内径D2,D3,D4をそれぞれ異なるものとして説明したが、第1実施形態で説明したように、製造コストを抑制する観点から同一の釣り糸ガイドを用いても良いことはもちろんである。
【0040】
また、上述した第1、第2実施形態ではトップガイド52は環状部62に取付部64が直接取り付けられた構造として説明したが、短い支脚部が環状部62と取付部64との間に配設されていても良い。
また、上述した第1、第2実施形態では電動リール14を用いることとしたが、釣竿12の装着部24に取り付けられるのは電動リール14に限らない。このため、通常のグリップやリールシートを有する握持部を設けても良い。
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【符号の説明】
【0041】
T…板厚、L…釣糸、C…中心線、12…釣竿、22…竿部、24…装着部、26a…穂先、26b…元部、28a…上面(表面)、28b…下面(裏面)、32…第1層、34…第2層、36…第3層、38…第4層、52…トップガイド、54,56,58…元部側釣糸ガイド、62…環状部、63…釣糸挿通孔、64…取付部、66…固定手段、72…環状部、73…釣糸挿通孔、74…取付部、76…支脚部、78…固定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成した竿部の片面に、釣糸挿通孔を形成する環状部をそれぞれ有する複数の釣糸ガイドを並設させた釣竿において、
前記環状部のうち、穂先側に配置されたトップガイドの環状部が前記竿部の片面に設けられ、
前記環状部のうち、前記トップガイドよりも元部側の釣糸ガイドの環状部は、支脚部により前記竿部の片面から離間させて設けられていることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記元部側の釣糸ガイドの環状部は、前記竿部のうち、前記釣糸ガイドが配設された面の鉛直上方の領域内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記元部側の釣糸ガイドの環状部の釣糸挿通孔のうち前記片面に対して近接する端部を、前記トップガイドの環状部の釣糸挿通孔のうち前記片面に対して離れた端部よりも前記片面に対して遠い位置としたことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記トップガイドよりも元部側の釣糸ガイドの環状部の中心を前記竿部の片面に対して同一距離離間させたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の釣竿。
【請求項5】
前記穂先側の環状部の内径を、それよりも元部側の釣糸ガイドの環状部の内径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44902(P2012−44902A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188612(P2010−188612)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】