説明

釣糸ガイドと竿体装着筒

【課題】強度を要求される筒状装着方式の釣糸ガイドを、1枚のフレームで構成すると、ガイド枠と竿体装着筒を強固に固定する事が出来なかった。
【解決手段】係合穴部31は、差込み口29が軸方向他端側を向き、且つ差込み口29の径方向内方の縁には抱え込み用凸部33が形成されている。差込み片13の先端側に折曲部分15、17を形成しておき、竿体装着筒19側の係合穴部31に差込み口29から先端部を押し込んで抱え込み用凸部33に、折曲部分17を沿わせる。その後、導糸環部5を引き起こし、筒本体21上の嵌合凹部23に嵌合させる。このように組付けると、差込み片13は、差込み片13の先端部は抱え込み用凸部33を抱き込んだ状態で掛止される。したがって、差込み片13はぶらぶらせず、抜け止めも阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿体装着筒を用いて竿体に外嵌装着する筒状装着方式の釣糸ガイドと、その構成部品である竿体装着筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、筒状装着方式の場合には、釣糸ガイドは一枚の金属板からの打ち抜きおよび折り曲げにより立体成形されたガイド枠と、ガイド枠の取付台座となる竿体装着筒とから構成されている。
この際、フレーム強度が要求されるガイドの場合は、導糸環部と筒装着環部が形成されたガイド枠2枚を一対とし、竿体装着筒の前後に嵌合した釣糸ガイドが典型的なものとなっている。(特許文献1)
しかし、このガイドはガイド枠が2枚必要になる事から、1枚で同様の効果を得る事を目的とし、ガイド枠には導糸環部と筒装着環部と差込み片が形成されており、筒装着環部を竿体装着筒に外嵌すると共に、差込み片を竿体装着筒上に形成された差込み穴に差込むことにより、ガイド枠を竿体装着筒に組付けて一体にしたガイドが提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52−59694号公報
【特許文献2】実開昭57−122270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この提案では、先ず竿体装着筒上に形成された差込み穴(=係合部)に差込み片(=支持片)を軸方向一方側から差込むと共に、同じ方向から筒装着環部を竿体装着筒の外周面に嵌合させている。このような組付け構造では、差込み片は安定的な掛止機能を発揮し得ず、ガイド枠は竿体装着筒に対してガタつきやすい状態となり、また、差込み方向と逆方向の外力が加えられると容易く抜け出てしまう。
また、差込み片は筒装着環部または導糸環部のいずれかの内縁から内方に突出するようにいずれかの環部内を切り欠いて形成している。そのため、差込み片が形成された方の環部は一部が欠損することになり、竿体やリングの保持強度は十分ではなかった。
【0005】
それ故、本発明は、上記課題を解決するために、ガイド枠の差込み片が竿体装着筒に対して安定的に掛止された構造の釣糸ガイドと、その釣糸ガイドを構成する特徴的な形状の竿体装着筒を提供することを目的とする。
また、本発明は、差込み片を導糸環部と筒装着環部との間の連結部の内部を切り欠いて形成したガイド枠を備えた釣り糸ガイドと、その釣糸ガイドを構成する特徴的な形状の竿体装着筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、竿体装着筒の形状を工夫することにより、ガイド枠の差込み片を竿体装着筒に対して安定的に掛止できること、さらにはガイド枠の連結部の形状を糸絡み防止の形状にすることにより、結果として差込み片を導糸環部と筒装着環部との間の連結部の内部を切り欠いて形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の請求項1の発明は、導糸環部と筒装着環部と差込み片を有するガイド枠と、竿体装着筒とからなり、前記筒装着環部を前記竿体装着筒に一端側で外嵌させると共に、前記差込み片の先端部を前記竿体装着筒に形成された係合穴部に差込んで一体とする釣糸ガイドにおいて、前記係合穴部は、差込み口が軸方向他端側乃至径方向外方を向き、且つ前記差込み口の径方向内方乃至軸方向他端側の縁には抱え込み用凸部が形成されており、前記差込み片の先端部を、前記差込み口から前記係合穴部内に前記抱え込み用凸部に沿って折曲状態で差込み、且つ前記係合穴部から出た部分を折曲して一端側に引き起こし、その先の前記筒装着環部を前記竿体装着筒に外嵌させることで、前記差込み片に前記抱え込み用凸部を抱き込ませて掛止させたことを特徴とする釣糸ガイドである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、係合穴部は、差込み口が軸方向他端側を向き、且つ前記差込み口の径方向内方側に抱え込み用凸部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイドである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、係合穴部は、差込み口が径方向外方を向き、且つ前記差込み口の軸方向他端側に抱え込み用凸部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイドである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した釣糸ガイドにおいて、 ガイド枠の差込み片は導糸環部と筒装着環部との間の連結部の内部を切り欠いて形成されたものであることを特徴とする釣糸ガイドである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した釣糸ガイドを構成する筒状装着筒である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の釣糸ガイドによれば、竿体装着筒が特徴的な形状を有しているため、ガイド枠が竿体装着筒に対してガタつかず、抜け止めも阻止された状態で取り付けられる。
また、本発明のガイド枠の差込み片は連結部内を切り欠いて形成でき、導糸環部や筒装着環部の内縁はその全周にわたって万遍無くリングや竿体を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る釣糸ガイドの斜視図である。
【図2】図1の釣糸ガイドの分解斜視図である。
【図3】図2のガイド枠の展開図である。
【図4】図2の竿体装着筒の破断斜視図である。
【図5】図2のガイド枠の竿体装着筒への組付け方法の説明図である。
【図6】図5の方法で組付けた状態の破断斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る釣糸ガイドの破断斜視図である。
【図8】図7のガイド枠の破断斜視図である。
【図9】図7の竿体装着筒の破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態に係る釣糸ガイド1、図1から図6に従って説明する。
先ず、釣糸ガイド1の概略的な全体構造を、図1と図2に従って説明する。
釣糸ガイド1は筒状装着方式のものであり、リングRと、リングRが内嵌されるガイド枠3と、ガイド枠3を取り付けた竿体装着筒19とからなり、これらが組み合わされて一体となっている。
【0015】
次に、ガイド枠3の特徴的形状を、図3の展開図にしたがって説明する。
ガイド枠3は、1枚の金属製平板材をプレス加工により所定のフレーム形状に打ち抜いたものを展開状態としており、これをさらに曲げ加工により図2に示す所定の立体形状に成形する。
ガイド枠3は、相対的に大きい導糸環部5と相対的に小さい筒装着環部7とが連結部9を介して連結されている。連結部9の左右両側縁は導糸環部5の左右両側から滑らかに延び出ている。その左右両側縁は左右両側の外方に向かって若干膨出した状態で湾曲しながら、筒装着環部7に向かって徐々に幅狭になっている。そして、筒装着環部7とは上部側で連結している。筒装着環部7は絞り加工されて短筒状になっており、その軸方向途中で段差が付けられて、延び出た先端側が相対的に小径部になっている。
【0016】
連結部9の内部は、導糸環部5の外周縁と筒装着環部7の外周縁と連結部9の左右両内側縁に沿って切り抜かれている。したがって、連結部9は左右両側にそれぞれ残された一対の支脚11、11で実質的に構成されていることになる。符号13は差込み片を示し、この差込み片13は上記支脚11、11間の切り残された部分で形成されている。差込み片13の基端は導糸環部5の露出した外縁の中心部分に連結されている。差込み片13は細帯状をしており、筒装着環部7に向かって直状に延びている。
【0017】
一対の支脚11、11と導糸環部5は、特願2008−130492号に記載されている糸絡み防止の寸法及び形状関係を満たしており、竿体に対して倒伏しているので支脚11、11も直立している場合よりその倒伏分だけ長くなっている。従って、支脚11、11の間に十分な長さの差込み片13を形成できている。
差込み片13は組付けの際には、図2に示すように、その先端寄りで「く」の字状に折曲され、更にその先端側で逆「く」の字状に折曲されており、「く」の字状折曲部分15と、逆「く」の字状折曲部分17が形成される。
【0018】
次に、竿体装着筒19の形状的特徴を、図4にしたがって説明する。
符号21は筒本体を示し、この筒本体21が竿体(図示省略)に外嵌装着されるようになっている。筒本体21の内部空間は軸方向xに対して直状になっており、内径が同じになっている。一方、筒本体21の外周面には一端側(図4では右上方向側)に浅い嵌合凹部23がその全周にわたって環状に形成されている。筒本体21の外周面において、嵌合凹部23を画定する他端側(図4では左下方向側)の縁が一端側の縁より外方に突出しているが、その一端側の縁より先の一端側外周面がほぼ同径になっているのに対して、その他端側の縁より先の他端側外周面は、後述の例外部を除いて他端に向かって徐々に縮径している。したがって、その部分の筒本体21の肉厚は他端に向かって徐々に薄くなっている。そして、一端と他端の両端で筒本体21の肉厚はほぼ同じになっている。
【0019】
符号25はフードを示し、このフード25は筒本体21上に一体に設けられており、筒本体21の外周面上にフード25によって限定された内部空間27が作り出されている。フード25は軸方向xから見て左右両側が同じになっており、内部空間27は軸方向xの両端側で外と開口を介して連通している。一端側の開口は製造上の都合で形成されたものであり、他端側の開口が差込み口29になっている。すなわち、この実施の形態では、差込み口29が軸方向xの他端側を向いている。そして、差込み口29とそこから内方に連続する内部空間27とで係合穴部31が構成されている。なお、筒本体21の他端側外周面のうち内部空間27を向いている面は、上記した例外部になって縮径しておらず、結果としてその部分だけ筒本体21の肉厚はほぼ同じになっている。
【0020】
符号33は抱え込み用凸部を示し、この抱え込み用凸部33は上記した差込み口29の縁のうち筒本体21の外周面側、すなわち径方向yの内方側に形成されており、差込み口29内に突出している。抱え込み用凸部33が形成された分だけ、差込み口29は狭められている。
【0021】
次に、ガイド枠3の竿体装着筒19への組付け方法について、図5にしたがって説明する。
先ず、図2の打ち抜いただけのガイド枠3の導糸環部5にリングRを嵌合装着すると共に、ガイド枠3を折曲させて、支脚11、11と筒装着環部7を導糸環部5に対して有る程度引き起こしておく。また、差込み片13に「く」の字状折曲部分15と、逆「く」の字状折曲部分17を形成しておく。
次に、図5(1)の矢印に示すように、差込み片13の先端部を係合穴部31の差込み口29から内部空間27内に力を込めて差込み、すなわち押し込んで抱え込み用凸部33に、逆「く」の字状折曲部分17を沿わせる。これで、差込み片13の先端部を係合穴部31内に抱え込み用凸部33に沿って折曲状態で差込んだことになる。
【0022】
その後、図5(2)の矢印に示すように、導糸環部5を係合穴部31から出た先の差込み片13と共に一端側に引き起こす。この作業により、差込み片13は「く」の字状折曲部分15が穴縁に当たりそこから立ち上がることになる。
続いて、図5(3)の矢印に示すように、一端側に更に引き起こされた筒装着環部7を竿体装着筒19の筒本体21の外周面にその一端側から嵌め込んで嵌合凹部23に嵌合させる。
これにより、図5(4)に示すように、組付けが完了する。
【0023】
組付け後は、図5(4)や図6に示すように、差込み片13は抱え込み用凸部33を抱き込んだ状態で、すなわち抱え込み用凸部33を引っ掛けた状態で掛止される。
したがって、差込み片13はガタつかず、抜け止めも阻止される。
【0024】
本発明の第2の実施の形態に係る釣糸ガイド41を、図7から図9にしたがって説明する。
第1の実施の形態に係る釣糸ガイド1と同じ構成部分は同じ符号を付して説明を省略する。
この実施の形態における釣糸ガイド41は図7に示すように組み合わされており、図8に示すように、ガイド枠43は差込み片13の先端部が逆「く」の字状に折曲されて、逆「く」の字状折曲部分45が形成されている。また、図9に示すように、竿体装着筒47はフード25を切欠いて差込み口49が形成され、差込み口49は径方向yの外方を向いて、係合穴部51が構成されている。そして、抱え込み用凸部53は差込み口49の縁のうち軸方向xの他端側に形成されており、差込み口49内に突出している。
【0025】
次に、ガイド枠43の竿体装着筒47への組付け方法について、図7にしたがって説明する。
係合穴部51の差込み口49から差込み片13の先端部を内部空間27内に押し込んで抱え込み用凸部53に、逆「く」の字状折曲部分45を沿わせる。その後、導糸環部5を一端側に引き起こして、竿体装着筒47の筒本体21の外周面にその一端側から嵌め込んで嵌合凹部23に嵌合させる。これにより、組付けが完了する。
組付け後は、図7に示すように、差込み片13の先端部は抱え込み用凸部53を抱き込んだ状態で掛止される。したがって、差込み片13はガタつかず、抜け止めも阻止される。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成が上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
例えば、導糸環部の強度等が良ければ、必ずしもリングRを嵌合させる必要はない。
いずれにしても、特許請求されている形状等を除いては、従来からあるまたは将来案出される形状や製造を任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る釣糸ガイドによれば、ガイド枠が竿体装着筒に強固に固定される事となり、強度を要求される筒状装着方式のガイドにおいても、1枚フレームで構成する事が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1‥‥釣糸ガイド(第1の実施の形態)
3‥‥ガイド枠 5‥‥導糸環部
7‥‥筒装着環部 9‥‥連結部
11、11‥‥支脚 13‥‥差込み片
15‥‥「く」の字状折曲部分 17‥‥逆「く」の字状折曲部分
19‥‥竿体装着筒 21‥‥筒本体
23‥‥嵌合凹部 25‥‥フード
27‥‥内部空間 29‥‥差込み口
31‥‥係合穴部 33‥‥抱え込み用凸部
41‥‥釣糸ガイド(第2の実施の形態)
43‥‥ガイド枠 45‥‥逆「く」の字状折曲部分
47‥‥竿体装着筒 49‥‥差込み口
51‥‥係合穴部 53‥‥抱え込み用凸部
R‥‥リング x‥‥軸方向 y‥‥径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導糸環部と筒装着環部と差込み片を有するガイド枠と、竿体装着筒とからなり、前記筒装着環部を前記竿体装着筒に一端側で外嵌させると共に、前記差込み片の先端部を前記竿体装着筒に形成された係合穴部に差込んで一体とする釣糸ガイドにおいて、
前記係合穴部は、差込み口が軸方向他端側乃至径方向外方を向き、且つ前記差込み口の径方向内方乃至軸方向他端側の縁には抱え込み用凸部が形成されており、
前記差込み片の先端部を、前記差込み口から前記係合穴部内に前記抱え込み用凸部に沿って折曲状態で差込み、且つ前記係合穴部から出た部分を折曲して一端側に引き起こし、その先の前記筒装着環部を前記竿体装着筒に外嵌させることで、前記差込み片に前記抱え込み用凸部を抱き込ませて掛止させたことを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、
係合穴部は、差込み口が軸方向他端側を向き、且つ前記差込み口の径方向内方側に抱え込み用凸部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項3】
請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、
係合穴部は、差込み口が径方向外方を向き、且つ前記差込み口の軸方向他端側に抱え込み用凸部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した釣糸ガイドにおいて、
ガイド枠の差込み片は導糸環部と筒装着環部との間の連結部の内部を切り欠いて形成されたものであることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した釣糸ガイドを構成する筒状装着筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−103817(P2011−103817A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262746(P2009−262746)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000237385)富士工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】