釣糸ガイド及びその製造方法
【課題】軽量化が図れ、撓み特性に優れる強度の高い釣糸ガイド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層5,6によって形成されるフレーム3を有する。フレーム3は、釣糸が挿通されるガイドリング9が取り付けられる保持部Hと、該保持部Hから延びる支脚部6bとを有し、繊維強化樹脂層6が保持部Hの少なくとも一部から支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層5,6によって形成されるフレーム3を有する。フレーム3は、釣糸が挿通されるガイドリング9が取り付けられる保持部Hと、該保持部Hから延びる支脚部6bとを有し、繊維強化樹脂層6が保持部Hの少なくとも一部から支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドに関し、詳細には、釣糸が挿通されるガイドリングを保持するフレーム部分に特徴を有する釣糸ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−340661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した公知技術では、フレームが金属材料で構成されているため、重量が重いとともに、撓み性等の性能が悪く、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量化が図れ、撓み特性に優れる強度の高い釣糸ガイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる保持部と、該保持部から延びる支脚部とを有し、前記繊維強化樹脂層が前記保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする。
【0007】
上記した構成の釣糸ガイドは、そのフレーム部分が、繊維強化樹脂により構成されているため、軽量化が図れるとともに撓み性の向上が図れ、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は、本来の特性を発揮し易くなる。また、繊維強化樹脂層が保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続しているため、釣糸ガイドの高い強度を実現できる。
【0008】
なお、本発明は、上記した釣糸ガイドの製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化が図れ、撓み特性に優れる強度の高い釣糸ガイド及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の釣糸ガイドを後側から見た正面図。
【図3】図1の釣糸ガイドの側面図。
【図4】図1の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図。
【図6】図1に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図7】図6の金型で成形された板状体からフレームを切り出す状態を示す斜視図。
【図8】釣糸ガイドの第1の実施形態の変形例を示す側面図。
【図9】図8の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図10】図8に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図11】本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す斜視図。
【図12】図11の釣糸ガイドを後側から見た正面図。
【図13】図11の釣糸ガイドの側面図。
【図14】図11の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図15】図11に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図16】図15の金型で成形された板状体からフレームを切り出す状態を示す斜視図。
【図17】釣糸ガイドの第3の実施形態の変形例を示す縦断面図。
【図18】図17に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図19】釣糸ガイドの第3の実施形態の変形例を示すフレームに沿った縦断面図。
【図20】図19に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図21】本発明に係る釣糸ガイドの第4の実施形態を示す斜視図。
【図22】図21の釣糸ガイドの側面図。
【図23】図21の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図24】図21に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図25】(a)は本発明に係る釣糸ガイドの第5の実施形態を示す側面図、(b)は(a)の釣糸ガイドの正面図。
【図26】(a)はフレーム各部の厚さと繊維強化樹脂層または強化繊維の方向とを示す第1の例の概略側面図、(b)はフレーム各部の分解図。
【図27】(a)はフレーム各部の厚さと繊維強化樹脂層または強化繊維の方向とを示す第2の例の概略側面図、(b)はフレーム各部の分解図。
【図28】(a)はフレーム各部の厚さと繊維強化樹脂層または強化繊維の方向とを示す第3の例の概略側面図、(b)はフレーム各部の分解図。
【図29】本発明に係る釣糸ガイドの第6の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る釣糸ガイド及びその製造方法の実施形態について説明する。
最初に、図1〜図5を参照して、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態について説明する。これらの図において、図1は釣糸ガイドの斜視図、図2は釣糸ガイドを後側から見た正面図、図3は釣糸ガイドの側面図、図4はフレームに沿った釣糸ガイドの縦断面図、そして、図5は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図および図3の矢印D方向は、釣糸ガイドが釣竿に装着された際、釣竿の軸長方向と一致しており、前方側の固定部が穂先側で、後方側の固定部が元竿側となるように取り付けられている。以下において、前側(前方側)とは穂先側を意味し、後側(後方側)とは基端側(元竿側)を意味するものとする。
【0012】
釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層の積層材によって形成されるフレーム3を備えている。ここで、「繊維強化樹脂層」とは、シート状のプリプレグを重ねて積層するほか、テープ状や糸状にしたものを重ねたり、束ねたり、テープや糸状やシート状のプリプレグを組み合わせたりした積層であっても良く、層の厚さや幅や断面形態等は釣糸ガイドの各部分の形状等に合わせて任意に積層することができる。このようなフレームは、後述するように繊維強化プリプレグを板状に成形したものをフレーム形状に切り出しても良く、あるいは、金型の釣糸ガイドを形成する空間に繊維強化樹脂を配置して釣糸ガイドを成形しても良く(この場合には、切り出しが不要となる)、任意の方法で製造できる。しかしながら、以下の各実施形態では、便宜上、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下、プリプレグと称する)を前後方向に積層した複数の繊維強化樹脂層を有する積層材によってフレーム3が形成されているものとして話を進める(プリプレグの構成、積層態様、及びフレームの詳細な製造方法については後述する)。
【0013】
前記フレーム3は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6とによって構成されており、それぞれの繊維強化樹脂層は、後述するように、複数枚のプリプレグを積層して金型によって押圧成型することでさらにプリプレグごとに形成された複数の繊維強化樹脂層が積層されて一体化されている。この場合、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6は、後述する当接部8(8a,8b)の軸線方向(図1の矢印D方向;前後方向)における厚みよりも左右方向の幅が大きい板状に形成されている。
【0014】
本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5は、略円環形状の当接部8aとして形成されている。また、後方側の繊維強化樹脂層6は、当接部8aと当接する上方側の略半円環形状の当接部8bと、当接部8bからD方向と略直交する方向で繊維強化樹脂層5から次第に離反するように傾斜して延びる一対の支脚部6bと、これらの支脚部6bの下端でこれらを一体化するように後方側へ向けて屈曲して延びる釣竿固定部6aとを形成している。
【0015】
そして、本実施形態の釣糸ガイドは、前方側の繊維強化樹脂層5を構成する当接部8aと後方側の繊維強化樹脂層6の一部である上方領域の当接部8bとが向かい合わさった状態となっており、この当接部8a,8bが保持部Hを形成し、この保持部Hに釣糸が挿通されるガイドリング9が設けられる。また、この場合、各支脚部6bは、保持部Hの上下方向の略中間位置で保持部Hの後面hから該後面hの幅Wと同じ幅Wで突設された状態となっている。すなわち、本実施形態では、保持部Hの左右方向の幅の厚みWが前後方向の幅の厚みよりも大きくなっており、その条件下で、支脚部6bには、保持部Hの少なくとも前面または後面(本実施形態では、後面)から突設する分岐部6g(保持部から分岐する部分)が形成されている、つまり、分岐部6gは、保持部Hの左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち寸法の大きい側(厚みの大きい保持部の左右方向の幅)から形成されている。このように、保持部の前面(または、後面(後述する第2の実施形態))から分岐部を突出させると、強化繊維の方向を安定化でき、強度向上・安定化が可能となり、また、左右幅が大きくなることを防止でき、小型化、軽量化が可能になる。更に、釣糸の引っ掛かりを防止できるようになる。また、このように、保持部の左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち少なくとも寸法の大きい側から支脚部の分岐部が形成されていると、保持部と支脚部との一体化範囲を拡大可能となり、強度の向上、小型化、および、軽量化を図ることができる。なお、本実施形態において、各支脚部6bは、保持部Hの後面hから該後面hの幅Wと同じ幅Wで突設されているが、支脚部6bの幅は、分岐部6gの部位で後面hの幅Wと同じであれば良く、分岐部を過ぎた位置から固定部6aに至るまでの幅は、分岐部よりも広く形成したり、小さく形成したり、方向を調整したりすることが可能である。
【0016】
また、本実施形態において、当接部8a,8bには、それぞれガイドリング9を保持するための開口(貫通孔)5c,6cが形成されている。これらの開口5c,6cは、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6の上方領域が向かい合わさった状態で一体化された後、切削等によって形成される。
【0017】
釣竿固定部6aは、釣竿(竿管)の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、釣糸ガイドの後方向に延びる板状片でその裏側の当接面6dが釣竿の表面に釣竿の長手方向に合わせて載置された状態で、例えば糸を巻き付けた後にその外側に接着剤を塗布することによって固定される。なお、固定部6aについては、様々な形状をとることができる。
【0018】
前記当接部8a,8bに形成される開口5c,6cは、同一の形状であり、全体として略円形の外形状を備えている。この開口に嵌入されるガイドリング9は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面9a部分での摺動抵抗が小さい部材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックス等によって形成されている。このガイドリング9は、フレーム3が前記プリプレグによって一体形成された後、当接部8a,8bに形成された開口5c,6cに対して嵌入、固定される。
【0019】
また、前方側の繊維強化樹脂層5、及び後方側の繊維強化樹脂層6には、少なくとも1つ以上の屈曲部を形成しておくことが好ましい。本実施形態においては、後方側の繊維強化樹脂層6に、支脚部6bの両側で釣竿固定部6aとの境界部分、及び当接部8bとの境界部分(前記突設部分)に、それぞれ第1屈曲部6eと、第1屈曲部よりも緩やかに屈曲した第2屈曲部6fが形成されている。
【0020】
フレーム3に上記したような屈曲部を形成する場合、緩やかに屈曲する第2屈曲部6fを形成しておくことで、フレーム全体として、屈曲させることによる曲げ角度を段階的に設定することが可能となり、応力集中を分散させて強度を向上することが可能となる。特に、フレーム3に複数の屈曲部を形成するのであれば、釣竿固定部6aと支脚部6bとの間の境界部分、又はその近傍に形成される屈曲部(図において第1屈曲部6eが対応する)よりも、当接部8b側に形成される屈曲部(図において第2屈曲部6fが対応する)の屈曲角度(屈曲した部分の前後において、接線同士が交差する角度)を小さく設定することが好ましい。
【0021】
このように、当接部8b側の屈曲部の屈曲角度を小さく設定しておくことで、釣糸が掛かった場合など、負荷が大きくなる部分の応力集中を緩和することができ、強度の安定化が図れる。
【0022】
なお、上記した支脚部6bについては、2つの屈曲部間は、図に示すように直線状に形成されていたが、2つの屈曲部間を、所定の曲面を有する湾曲状に形成しても良いし、支脚部全体を湾曲面で構成しても良い。
【0023】
上記したようなフレーム3に形成される屈曲部6e,6fは、応力集中して破損等し易い領域となっているが、後述するような製造方法、及びプリプレグの構成を用いることで、比強度、及び比剛性の向上が図られている。なお、屈曲部に補強層を設け、釣糸による負荷が作用しても損傷などがし難いように構成しても良い。ここで、補強層とは、釣糸ガイドを釣竿に取り付けたときに、フレーム3のその前後方向の曲げ剛性を高め、負荷により屈曲部が撓んだときの曲げ角度の変化が小さくなるよう補強する層であり、積層状態の繊維強化樹脂層を構成している複数のプリプレグの内、いずれかのプリプレグに、釣竿から立ち上がる方向に沿って延びる強化繊維が含まれた構成となっていれば良い。
【0024】
具体的に、複数枚のプリプレグは、例えば、図5に示すように、釣竿から立ち上がる方向(釣竿の軸長方向となる)に沿って強化繊維を引き揃えた軸長方向繊維樹脂層21と、釣竿の軸長方向に対して所定の角度を有する交差方向に強化繊維を引き揃えた斜向繊維樹脂層22a,22bと、強化繊維を編成した織布層23と、を有している。これらの繊維強化樹脂の繊維(繊維強化樹脂層)は、保持部Hの少なくとも一部から支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に本実施形態では、図4に明確に示されるように、後方側の繊維強化樹脂6の繊維(繊維強化樹脂層)が釣竿固定部6aから当接部8bへわたって(全長にわたって)連続して延びており、一方、前方側の繊維強化樹脂層5も全長にわたって連続して延びている。なお、図5では、後方側の繊維強化樹脂層6のプリプレグの積層構造(積層材6A)を示しているが、前方側の繊維強化樹脂層5(積層材5A)も同様な積層構造とされる。また、簡単のため、図5における7つの層は、図4および図6では4層でそれぞれ描かれている。
【0025】
本実施形態では、フレーム3の厚さの中間位置となる中立軸エリア(図5において、中立軸をXで示す)に、強化繊維を軸長方向に引き揃えたプリプレグによって軸長方向繊維樹脂層21が配設され、その外側(両側)に、軸長方向に対して所定の角度(傾斜角度は任意であるが15〜75度が好ましく、より好ましくは30〜60度)に強化繊維を引き揃えたプリプレグによって斜向繊維樹脂層22a,22bが配設され、さらに、最外層(両側の全面となっているが部分的に最外となる領域でも良い)に強化繊維を編成したプリプレグによって織布層23が配設されている。なお、前記軸長方向繊維樹脂層21は、複数層(1層〜4層)あっても良い。また、前記斜向繊維樹脂層22a,22bについては、夫々の層における強化繊維の指向方向は異なっていても良い。
【0026】
このように、繊維強化樹脂製の釣糸ガイドを形成するに際しては、フレーム自体を正面視または平面視した際、少なくとも三方向に強化繊維が指向した状態となるようなプリプレグを選択し、積層することが好ましい。すなわち、強化繊維の指向方向を三方向以上とすることで、効率良く、軽量で強度的に優れた釣糸ガイドを形成することが可能となる。また、上記した構成のように、フレーム3の中間層領域に軸長方向繊維樹脂層21を配設することで、フレーム3に対し、軸長方向に沿って釣糸の張力等によって撓み力が作用しても、その方向の比剛性を、軽量化を図りながら効率良く高めておくことが可能となる。
【0027】
さらに、上記したプリプレグの配置構成のように、フレーム3の最外層には、織布層23を配設することが好ましい。これは、フレーム3の表面は、他物が当たり易く、剥離などし易い部分であること、及び、実釣時において、釣糸の張力によってフレームが撓む等、フレーム端部から強化繊維が剥離したり、破損する可能性があることから、この表面領域に強化繊維が編成された織布層を配設しておくことで、強化繊維の裂けや剥離が効果的に防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。
【0028】
このような織布層23を配設することで、より確実に強化繊維が剥離、破損することを防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、屈曲部6e,6fについても相対的に強化することができ、軽量で強度バランスに優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。また、上記した織布層23の網目の幅については、釣竿固定部6aや当接部8a,8bの領域において、それらの部分での最小幅よりも小さくすることが好ましい。
【0029】
次に、上記したような形態のフレーム3を形成する方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0030】
前記フレーム3は、図5に示したような積層構造を有する前方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)5Aと、後方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)6Aによって形成される。この場合、各層を構成しているプリプレグは、上述したように、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。なお、フレーム3は、複数の繊維強化樹脂層によって構成されるが、上記した屈曲部が補強されるよう、補強層を含んでいても良い。
【0031】
最初、上記したようなプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、上記したように、フレーム3に屈曲部6e,6fを形成すること、使用時においてフレーム3には負荷が加わること、装着される釣竿の特性や装着部分等を考慮し、プリプレグの種類や重ねる条件が任意に調整される。
【0032】
このように複数枚積層された積層材5A,6Aは、図6に示すような金型50にセットされる。本実施形態の金型50は、上下に型割りされる上型51と下型(底部型)52によって構成されており、上型51については、更に、左右に型割りされる左右型(前部型および後部型)51a,51bによって構成されている。この場合、下型52には、一端面側がなだらかな湾曲傾斜面で他端面側が切り立った垂直面となる断面が略三角形状の山部52aが形成されており、山部52aの頂部52bを境にして左右型51a,51bが左右方向に開くように構成されている。なお、金型50は、少なくとも三方向金型(底部型52、前部型51a、後部型51b)を開いたり成形状態に閉じたりできる金型であり、したがって、金型50の各部分は、ピンやコマを利用しても良く、三方向以上に金型50の所定部分を開閉できればどのような構造であっても良い。三方向またはそれ以上に開閉するためのコマやピンの動きや構造は任意に設定可能である。
【0033】
上記した積層材5A,6Aの金型に対するセット方法は特に限定されることはないが、例えば、山部52aの頂部52bから上方側の領域を互いに面接するようにセットし(両積層材の一部を向かい合わせ状にして当接部とする)、かつ、その下方で、そのまま両積層材を下型52の山部52aに沿ってセットする(これらの部分は釣竿固定部が形成される非当接部となる)。この場合、積層材5A,6Aについては、一度に全体を重ね合わせた状態でセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定位置にセットすることもできる。また、上型51の左右型51a,51bと下型52との間には、積層材5A,6Aがセットされる位置に応じて空洞部55が形成されており、その表面領域には、離型剤がコーティングされている。
【0034】
前記空洞部55は、フレーム3の肉厚に対応しており、下型52には、前記積層材5A,6Aを載置した際、上記した屈曲部6e,6fに対応する位置に、屈曲形成凹部52eが形成されている。また、左型51aには、屈曲形成凹部52eに対応して屈曲形成凸部51eが形成されている。さらに、下型52と左型51aとの間には、釣竿固定部6aが形成されるように、前記空洞部55が形成されている。
【0035】
なお、上記した金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。
【0036】
上記したように、積層材5A,6Aを下型52の所定位置にセットした後、積層材を加圧し固定する。この加圧、固定については、上型51によって締め付けしても良いし、手や押圧具で押し付けても良い。この段階で、前記屈曲部を含め、成形後のフレーム形状に相当する形が保持され、これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる(この段階では、各プリプレグは未硬化状態(仮キュア後を含む)であり、屈曲部は加熱硬化前に形成されることとなる)。
【0037】
その後、加熱工程を施し、マトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品(屈曲部を有する板状体30となっている)を金型50から取り出す。この板状体30は、図7に示されるように形成され、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層が接合部8a,8bの領域で一体化された状態となっており、図1では、そのような両方の繊維強化樹脂層の中央部を表す部分が二点鎖線で示されている。
【0038】
なお、上記した屈曲部を金型50で押えて加熱硬化するときに、その屈曲部は、その前後の領域よりも相対的に強く加圧することが好ましい。このように、屈曲部の領域を強く加圧することで、成形されたフレームの屈曲部6e,6fのボイドを防止することができ、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、これに伴い、成形されたフレーム3の屈曲部6e,6fは、その前後の領域(固定部や支脚部)よりも繊維比率を高くすることができるので、破損等しやすい屈曲部を強化することが可能となる。或いは、屈曲部6e,6fについては、その前後の領域よりも繊維比率を高くしておくことが好ましい。例えば、上記した工程で説明したように、加熱成形時に屈曲部の領域の押圧力を高くすることで、樹脂が流出して屈曲部の繊維比率を高くすることが可能であり、このように構成することで、負荷が作用してフレームが撓んでも破損し難い釣糸ガイドにすることが可能となる。
【0039】
次に、板状体30から所定の形状となるようにフレーム3を切り出す。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し、または、不要部分を削除または破壊する切り出し等、任意の方法を採用することで、図7に示すように、1枚の板状体30から複数のフレーム3を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
【0040】
この加工時において、フレーム3の基本的な外形状、すなわち、開口5c,6cを有する当接部8a,8b、支脚部6bおよび釣竿固定部6a等を同時に形成することが好ましいが、これらを別々の工程で形成しても良い。また、前記板状体30に関しては、一枚の単純な平面形状に限らず、積層厚さを位置によって変化させたり、板状部分が複数方向に延びる形状(T字形状や逆Y字形状等)としたり、曲面形状を含んでいたり、更には、軽量化を図るために開口を形成しても良い。
【0041】
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、釣竿固定部6aの形状を釣竿に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き・糸止めし易いように、固定部の端部を研磨等することが該当する。
【0042】
次に、フレーム3の表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工を施すことにより、強化繊維を傷付けることなく、フレーム3を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
【0043】
なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレーム3の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、フレーム3の側面は複数の繊維強化樹脂層が面一になるように研磨する。
【0044】
次に、必要に応じて、フレーム3の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
【0045】
そして、上記したように形成されたフレームの開口5c,6cの部分にガイドリング9を取り付ける。ガイドリング9の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
【0046】
上記したような製造方法によって形成される釣糸ガイド1によれば、金属製のものと比較して、重量が軽くなり、更には、比強度、比剛性、及び撓み性に優れた構成とすることが可能となる。このため、そのような釣糸ガイドを多数個装着しても釣竿全体が重量化することはなく、釣竿の性能が向上する。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れることから、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。更に、繊維強化樹脂層が保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続している(本実施形態では、後方側の繊維強化樹脂6の繊維(繊維強化樹脂層)が釣竿固定部5aから当接部8bへわたって(全長にわたって)連続して延びており、一方、前方側の繊維強化樹脂層5も全長にわたって連続して延びている)ため、釣糸ガイド1の高い強度を実現できる。
【0047】
図8および図9は前述した第1の実施形態の変形例を示している。本変形例では、支脚部6bと前方側の繊維強化樹脂層5を構成する当接部8a(前方側保持部)との間に、全長にわたって連続する繊維強化樹脂層(少なくとも2つの繊維強化プリプレグ(例えば、一方が軸長方向繊維樹脂層、他方が斜向繊維樹脂層)を積層して成る繊維強化樹脂層)から成る補強片100(特に図9参照)が設けられている。この補強片100は、当接部8aと層6との間の裂けを防止する。
【0048】
したがって、本変形例では、フレーム3を成形するに際して、積層材5A,6Aを金型50にセットするときに、図10に示されるように、補強片100を支脚部6bと当接部8aとの間に配する。
【0049】
図11〜図14は本発明の第2の実施形態に係る釣糸ガイドを示している。図示のように、本実施形態の釣糸ガイド1Aも、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを前後方向に積層した複数の繊維強化樹脂層を有する積層材によって形成されたフレーム3を備えている。
【0050】
具体的には、フレーム3は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6によって構成されており、前方側の繊維強化樹脂層5は、上方側の略半円環形状の当接部8aと、当接部8aからD方向と略直交する方向で下方へと略垂直に延びる支脚部(前方側支脚部)5bと、この支脚部5bの下端で前方側へ向けて屈曲して延びる釣竿固定部5aとを形成している。一方、後方側の繊維強化樹脂層6は、第1の実施形態と同様、当接部8aと当接する当接部8bと、支脚部(後方側支脚部)6bと、釣竿固定部6aとを形成している(すなわち、第1の実施形態とは異なり、支脚部は、その分岐部を介して保持部の前面および後面から突設されている・・・後述する第4の実施形態も同様)。なお、後方側の繊維強化樹脂層6の形態は第1の実施形態と同じであるため、以下では、前方側の繊維強化樹脂層5の形態について説明する。また、本構成において、前方側支脚部5bが竿元側(後方側)に配置されて後方側支脚部6bが竿先側(前方側)に配置されてもよく、取り付け方向は限定されない。
【0051】
前方側の釣竿固定部5aは、釣竿の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、釣糸ガイドの前後方向に延びる板状片でその裏側の当接面5dが釣竿の表面に釣竿の長手方向に合わせて載置された状態で、例えば糸を巻き付けた後にその外側に接着剤を塗布することによって固定される。なお、固定部5aについては、様々な形状をとることができる。
【0052】
また、前方側の繊維強化樹脂層5にも、後方側の繊維強化樹脂層6と同様、少なくとも1つ以上の屈曲部を形成しておくことが好ましい。本実施形態においては、前方側の繊維強化樹脂層5には、釣竿固定部5aと支脚部5bとの間の境界部分に、第1屈曲部5eが形成されている、この場合、いずれか一方の第1屈曲部5eまたは6eが、フレーム3の中で最も曲げ角度が急な屈曲部となる。
【0053】
先に説明したように、層5に関しては、フレーム3に上記したような屈曲部を形成する場合、緩やかに屈曲する第2屈曲部6fを形成しておくことで、フレーム全体として、屈曲させることによる曲げ角度を段階的に設定することが可能となり、応力集中を分散させて強度を向上することが可能となる。特に、フレーム3に複数の屈曲部を形成するのであれば、釣竿固定部5a,6aと支脚部5b,6bとの間の境界部分、又はその近傍に形成される屈曲部(図において第1屈曲部5e,6eが対応する)よりも、当接部8側に形成される屈曲部(図において第2屈曲部6fが対応する)の屈曲角度(屈曲した部分の前後において、接線同士が交差する角度)を小さく設定することが好ましい。
【0054】
なお、支脚部5bについては、2つの屈曲部間は、図に示すように直線状に形成されていたが、2つの屈曲部間を、所定の曲面を有する湾曲状に形成しても良いし、支脚部全体を湾曲面で構成しても良い。
【0055】
また、本実施形態の前方側の繊維強化樹脂層5も、第1の実施形態と同様の積層構造を成している(図5参照)おり、その繊維強化樹脂層(または、その層を構成する強化繊維)が、保持部Hの少なくとも一部から支脚部5bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に本実施形態では、図14に明確に示されるように、前方側の繊維強化樹脂5の繊維強化樹脂層(または、その強化繊維)が釣竿固定部5aから当接部8aへわたって(全長にわたって)連続して延びている。
【0056】
次に、上記したような形態のフレーム3を形成する方法について、図15及び図16を参照しながら説明する。
【0057】
前記フレーム3は、図5に示したような積層構造を有する前方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)5Aと、後方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)6Aによって形成される。この場合、各層を構成しているプリプレグは、上述したように、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。なお、フレーム3は、複数の繊維強化樹脂層によって構成されるが、上記した屈曲部が補強されるよう、補強層を含んでいても良い。
【0058】
最初、上記したようなプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、上記したように、フレーム3に屈曲部5e及び6e,6fを形成すること、使用時においてフレーム3には負荷が加わること、装着される釣竿の特性や装着部分等を考慮し、プリプレグの種類や重ねる条件が任意に調整される。
【0059】
このように複数枚積層された積層材5A,6Aは、図15に示すような金型50にセットされる(言い換えると、繊維強化樹脂製のフレームの繊維強化樹脂層または強化繊維を、保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続するように、底部型52、前部型51a、および、後部型51bを有する金型50内に配する)。本実施形態の金型50も、第1の実施形態と同様、上下に型割りされる上型51と下型52によって構成されており、上型51については、更に、左右に型割りされる左右型51a,51bによって構成されている。この場合、下型52には、一端面側がなだらかな湾曲傾斜面で他端面側が切り立った垂直面となる断面が略三角形状の山部52aが形成されており、山部52aの頂部52bを境にして左右型51a,51bが左右方向に開くように構成されている。
【0060】
上記した積層材5A,6Aの金型に対するセット方法は特に限定されることはないが、例えば、山部52aの頂部52bから上方側の領域を互いに面接するようにセットし(両積層材の一部を向かい合わせ状にして当接部とする)、かつ、その下方で、そのまま両積層材を下型52の山部52aに沿ってセットする(これらの部分は釣竿固定部が形成される非当接部となる)。この場合、積層材5A,6Aについては、一度に全体を重ね合わせた状態でセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定位置にセットすることもできる。また、上型51の左右型51a,51bと下型52との間には、積層材5A,6Aがセットされる位置に応じて空洞部55が形成されており、その表面領域には、離型剤がコーティングされている。
【0061】
前記空洞部55は、フレーム3の肉厚に対応しており、下型52には、前記積層材5A,6Aを載置した際、上記した屈曲部5e及び6e,6fに対応する位置に、屈曲形成凹部52d,52eが形成されている。また、右型51bには、屈曲形成凹部52dに対応して屈曲形成凸部51dが、左型51aには、屈曲形成凹部52eに対応して屈曲形成凸部51eが、それぞれ形成されている。さらに、下型52と左右型51a,51bとの間には、釣竿固定部5a,6aが形成されるように、前記空洞部55が形成されている。
【0062】
なお、上記した金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。
【0063】
上記したように、積層材5A,6Aを下型52の所定位置にセットした後、積層材を加圧し固定する。この加圧、固定については、上型51によって締め付けしても良いし、手や押圧具で押し付けても良い。この段階で、前記屈曲部を含め、成形後のフレーム形状に相当する形が保持され、これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる(この段階では、各プリプレグは未硬化状態(仮キュア後を含む)であり、屈曲部は加熱硬化前に形成されることとなる)。
【0064】
その後、加熱工程を施し、マトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品(屈曲部を有する板状体30となっている)を金型50から取り出す。この板状体30は、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層が接合部8a,8bの領域で一体化された状態となっている。
【0065】
なお、上記した屈曲部を金型50で押えて加熱硬化するときに、その屈曲部は、その前後の領域よりも相対的に強く加圧することが好ましい。このように、屈曲部の領域を強く加圧することで、成形されたフレームの屈曲部5e及び6e,6fのボイドを防止することができ、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、これに伴い、成形されたフレーム3の屈曲部5e及び6e,6fは、その前後の領域(固定部や支脚部)よりも繊維比率を高くすることができるので、破損等しやすい屈曲部を強化することが可能となる。或いは、屈曲部5e及び6e,6fについては、その前後の領域よりも繊維比率を高くしておくことが好ましい。例えば、上記した工程で説明したように、加熱成形時に屈曲部の領域の押圧力を高くすることで、樹脂が流出して屈曲部の繊維比率を高くすることが可能であり、このように構成することで、負荷が作用してフレームが撓んでも破損し難い釣糸ガイドにすることが可能となる。
【0066】
次に、図16に示す板状体30から所定の形状となるようにフレーム3を切り出す(板状体30から不要部分を削除(破壊)してフレーム3を取り出す(残す))。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、図16に示すように、1枚の板状体30から複数のフレーム3を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。なお、それ以外の製造手法は第1の実施形態と同じである。
【0067】
このように、本実施形態は、第1の実施形態と同様の作用効果を有するとともに、ガイドリングの保持部Hの前方側と後方側の両方に釣竿固定部5a,6aが設けられるため、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することが可能となる。
【0068】
図17および図18は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態では、第2の実施形態の構成に加えて、フレーム3を構成する繊維強化樹脂層(または強化繊維)が前方側支脚部5bの少なくとも一部から後方側支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に、本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5(または、強化繊維)と後方側の繊維強化樹脂層6(または、強化繊維)とが一体となって連続している。すなわち、繊維強化樹脂層(を構成する繊維)が前方側の繊維強化樹脂層5から後方側の繊維強化樹脂層6へわたって(全長にわたって)連続している。
【0069】
したがって、本実施形態では、フレーム3を成形するに際しては、図18に示されるように、積層材5A,6Aが一体となった長尺な積層材120をその長手方向の中間部で折り返した状態で金型50にセットする。
以上から分かるように、繊維強化樹脂層(または層を形成する強化繊維のみ)は、前述した第2の実施形態に示されるように、保持部から支脚部へと連続していても良く、あるいは、この第3の実施形態に示されるように、一方の支脚部から他方の支脚部へと連続していても良い。
【0070】
図19および図20は第3の実施形態の変形例を示している。本変形例では、前方側の支脚部5bと後方側の支脚部6bとの間に、全長にわたって(繊維が)連続する補強層(少なくとも2つの繊維強化プリプレグ(例えば、内側が軸長方向繊維樹脂層、外側が斜向繊維樹脂層)を積層して成る繊維強化樹脂層)200が設けられている。特に、本変形例において、補強層200(底面の2層)の後端は後方側の釣竿固定部6aの後端にまで達して延びており、補強層200の前端は前方側の釣竿固定部5aの前端にまで達して延び、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6との境界に跨って補強している。なお、補強層200は、前記境界に跨るように設けていれば、更に長さが短い補強片でもよい。
【0071】
したがって、本変形例では、フレーム3を成形するに際しては、図20に示されるように、長尺な積層材120をその長手方向の中間部で折り返した状態で金型50にセットするときに、長尺な補強層200も中間部で折り返した状態で積層材120の内側に重ね合わせてセットする。
【0072】
図21〜図23は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態では、保持部Hが、前方側の当接部8aと、後方側の当接部8bと、これらの当接部8a,8b間に挟まれる中間部210とによって構成されている。この中間部210は、当接部8a,8bと同じ素材により円環状に形成されており、その全長にわたって繊維が連続している。なお、それ以外の構成は、第2の実施形態とほぼ同様である(前方側の繊維強化樹脂層5の支脚部5bが後方側の繊維強化樹脂層6の支脚部6bとほぼ同様の形態で構成されている点を除く)。
【0073】
したがって、本実施形態では、フレーム3を成形するに際して、積層材5A,6Aを金型50にセットするときに、図24に示されるように当接部8a,8b間に中間部210を挟み込んだ状態で配する。
【0074】
本実施形態成によれば、中間部210の存在により、ガイドリング9を保持する保持力が増大し、保持部Hからのガイドリング9の脱落を確実に防止できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0076】
本発明は、釣糸ガイド1を構成するフレーム部分を、繊維強化プリプレグで構成すると共に、比強度、比剛性等を高め、特に、屈曲部の領域で破損等が生じないように、上述したような製造方法、及びプリプレグの配置態様を用いたことに特徴がある。上記したフレームを構成するプリプレグについては、強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚などの構成、及び積層状態等については、実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0077】
また、釣糸ガイド1は、釣竿に対して糸止め等によって固定されていなくてもよく、例えば、釣竿に対して摺動可能に外嵌される遊動ガイドとして構成されていても良い。このような遊動ガイドであれば、上記したフレーム3に屈曲部を形成しない構成であっても良い。
【0078】
また、上記したように、フレームを構成するプリプレグは、積層した状態において、平面視した際に強化繊維の指向方向が三方向以上となっていれば、軽量化を図りつつ、効率的に強度を向上することが可能となるが、各層を構成するプリプレグの強化繊維の指向方向や、その積層位置については特に限定されることはなく、適宜変形することが可能である。この場合、上述したように、フレームの最外層については、破損などが効果的に防止できるように、織布層を配設しておくことが好ましい。
【0079】
また、フレームは、繊維強化樹脂層の中央に対する両側の繊維強化樹脂層が外層に向かって繊維方向が互いに対称方向となるように積層されてもよい。また、フレームは、繊維強化樹脂層の中央に対して一方向側と他方向側に、フレームの長手軸(フレームの延設方向)に対して互いに反対方向に強化繊維が傾斜した斜向繊維強化樹脂層を備えても良い。更に、フレームは、該フレームの厚さ方向(前後方向)における中間位置となる中立軸領域に、強化繊維を軸長方向(フレームの延設方向)に配設し、前記中立軸領域の外側に、強化繊維を前記軸長方向に対して交差する方向に配設しても良い。また、フレームの側面は、該側面に現れる複数の繊維強化樹脂層を面一に形成しても良い。
【0080】
また、前述した実施形態では、支脚部5b,6bが保持部Hの上下方向中間位置でその前面(第1〜第4の実施形態)または後面(第2〜第4の実施形態)から突設され、支脚部5b,6bおよび保持部Hの全長にわたって繊維強化樹脂層が連続しているが、繊維強化樹脂層は、保持部Hからの突設する支脚部5b,6bの突設部位から保持部Hの上方側にわたって連続していてもよく、あるいは、保持部Hからの突設する支脚部5b,6bの突設部位から保持部Hの下方側にわたって連続していてもよく、要は、繊維強化樹脂層が保持部Hの少なくとも一部から支脚部5b,6bの少なくとも一部へとわたって連続していればよい。
【0081】
図25は本発明に係る釣糸ガイドの第5の実施形態を示している。図示のように、本実施形態の支脚部は、第1および第2の実施形態のように保持部Hの上下方向の略中間位置で保持部Hの後面から突設するのではなく、保持部Hの頂部Haから延在している。具体的には、本実施形態の釣糸ガイドは、第2の実施形態の変形例として位置付けられ、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂層(例えば、プリプレグ)を前後方向に積層した積層材によって形成されるフレーム3を備えている。フレーム3を構成する繊維強化樹脂層(または強化繊維)は前方側支脚部5bの少なくとも一部から後方側支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に、本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5(または、強化繊維)と後方側の繊維強化樹脂層6(または、強化繊維)とが一体となって連続している。すなわち、繊維強化樹脂層(または、層を構成する強化繊維)が前方側の繊維強化樹脂層5から後方側の繊維強化樹脂層6へわたって(全長にわたって)連続している。そして、後方側支脚部6bは、保持部Hの頂部Haを起点として、リング状の保持部Hの後面の下側円弧部分の一部を除くかなりの部分と重合しながら(図25の(b)参照)、釣竿固定部6aへ向けて斜め下方に延びている。また、本実施形態では、後方側支脚部6bの外面と保持部Hの外面とが面一となっている。これにより、釣糸ガイドの左右方向の幅寸法を小型化できるとともに、釣糸ガイドに対する釣糸の絡みを低減できる。一方、前方側支脚部5bは、保持部Hの下端から下方へと略垂直に延びて水平方向に屈曲することにより釣竿固定部5aへと延びている。なお、前方側支脚部5bは、保持部Hの前面から延びていても良い。
【0082】
また、本実施形態では、後方側支脚部6bの肉厚t1が前方側支脚部5bの肉厚t2よりも大きく設定されている。したがって、肉厚の大きい後方側支脚部6bを主脚と称し、肉厚の小さい前方側支脚部5bを補助脚と称することもできる。また、この場合、前述した支脚部の屈曲部5e,6eも同様に、主脚の肉厚を厚く、補助脚の肉厚を薄くすることができる。このような肉厚調整は、支脚部が繊維強化樹脂層によって形成されているからこそ可能となる。従来のように支脚部(プレート)を金属板のプレス加工によって形成する場合には、肉厚調整を行なうことができない。また、本実施形態のように、主脚と補助脚との肉厚を相対的に変えることにより、主脚および補助脚の全体としての軽量化および小型化を図ることが可能になる。また、バランス設計により強度バランスも向上する。
【0083】
また、本実施形態において、後方側支脚部6bは、その肉厚寸法t1がその幅寸法w1よりも大きく設定されており、そのため、軽量化、高強度化を図ることができるとともに、ガイドに対する釣糸の絡みを低減できる。なお、後方側支脚部6bの幅寸法w1は、釣竿固定部6aの幅寸法w2よりも小さく設定されている。
【0084】
支脚部5b,6bを肉厚によって主脚と補助脚とに区別する技術思想に関連して、図26〜図28には、フレーム3の各部の厚さおよび各部を構成する繊維強化樹脂層(または、強化繊維)の連続性が示されている。
【0085】
図26は、第2の実施形態と同様の繊維強化樹脂層の構成、すなわち、前方側支脚部5bと後方側支脚部6bとが別個の繊維強化樹脂層5,6によって構成され、各繊維強化樹脂層(または、その強化繊維)が保持部Hから固定部5a,6aへわたって連続している構成と、第3の実施形態のように前方側支脚部5bおよび後方側支脚部6bにその全長にわたって沿わせるように補強層200を設ける構成とを組み合わせた構造を示しており、この構造では、繊維強化樹脂層6と補強層200とを組み合わせた後方側支脚部6bの厚さT1と、繊維強化樹脂層5と補強層200とを組み合わせた前方側支脚部5bの厚さT2と、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6とを組み合わせた保持部Hの厚さT3とが、T3>T1>T2(T3=T2×2)となるような寸法関係に設定されている。すなわち、釣糸ガイドの上部(保持部)が補強される構造となっている。しかしながら、T1=T2=T3となるような寸法関係に設定してガイド全体のバランスを良好にしても良く、あるいは、T3=T1>T2となる寸法関係に設定して、主脚として後方側支脚部6bの強度を高めるとともに、補助脚としての前方側支脚部5bの撓り性を向上させても良い。
【0086】
図27は、図26の構造において補強層200を固定部5a,6aから排除した構造を示している。この構造では、繊維強化樹脂層6と補強層200とを組み合わせた後方側支脚部6bの厚さT1と、繊維強化樹脂層5と補強層200とを組み合わせた前方側支脚部5bの厚さT2と、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6とを組み合わせた保持部Hの厚さT3と、後側の固定部6aの厚さT4と、前側の固定部の厚さT5とが、T1=T2=T3>T4=T5となるような寸法関係に設定されている。このような寸法関係によれば、固定部5a,6aを薄肉にして固定部5a,6aの撓り性を向上させることができる。
【0087】
図28は、図26の構造において補強層200を完全に排除した構造(第2の実施形態と同じ構造)を示している。この構造では、T3>T1=T2となるような寸法関係に設定されている。このような寸法関係によれば、ガイドの軽量化を図ることができる。なお、本構成において、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6とを一体で連続させるたい場合には、図28の(a)に示されるように、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6との境界部分を滑らかな湾曲形状に形成して、繊維の極端な方向変化を防止することが望ましい。
【0088】
図29は、本発明に係る釣糸ガイドの第6の実施形態を示している。本実施形態は、第1の実施形態などとは異なり、保持部Hの前後方向の幅の厚みW1が左右方向の幅の厚みWよりも大きくなっており、その条件下で、後方側支脚部6bには、保持部Hの側面から突設する分岐部6g(保持部から分岐する部分)が形成されている(後方側支脚部6bが、保持部Hの幅狭い後面からではなく、保持部Hの幅広い側面から延びている)。つまり、分岐部6gは、保持部Hの左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち寸法の大きい側(厚みの大きい保持部の前後方向の幅)から突出して形成されている。一方、前方側支脚部5bは、保持部Hの下端から下方へと略垂直に延びて水平方向に屈曲することにより釣竿固定部5aへと延びている。なお、前方側支脚部5bは、保持部Hの前面から延びていても良い。このような構造によれば、保持部Hの強化繊維の方向と支脚部5b,6bの強化繊維の方向とを保持部Hの広い面を利用して同じ方向に沿わせることが可能になり、強度の向上、安定化、軽量化を図ることができる。また、釣糸ガイドの左右幅を相対的に小さくでき、小型化しやすく、ガイドに対する釣糸の絡みを低減できる。なお、本実施形態では、フレーム3を構成する繊維強化樹脂層(または強化繊維)が保持部Hから各支脚部5b,6bにわたって連続している。
【符号の説明】
【0089】
1 釣糸ガイド
3 フレーム
5 前方側の繊維強化樹脂層
6 後方側の繊維強化樹脂層
5b,6b 支脚部
9 ガイドリング
H 保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドに関し、詳細には、釣糸が挿通されるガイドリングを保持するフレーム部分に特徴を有する釣糸ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−340661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した公知技術では、フレームが金属材料で構成されているため、重量が重いとともに、撓み性等の性能が悪く、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量化が図れ、撓み特性に優れる強度の高い釣糸ガイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる保持部と、該保持部から延びる支脚部とを有し、前記繊維強化樹脂層が前記保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする。
【0007】
上記した構成の釣糸ガイドは、そのフレーム部分が、繊維強化樹脂により構成されているため、軽量化が図れるとともに撓み性の向上が図れ、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は、本来の特性を発揮し易くなる。また、繊維強化樹脂層が保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続しているため、釣糸ガイドの高い強度を実現できる。
【0008】
なお、本発明は、上記した釣糸ガイドの製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量化が図れ、撓み特性に優れる強度の高い釣糸ガイド及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の釣糸ガイドを後側から見た正面図。
【図3】図1の釣糸ガイドの側面図。
【図4】図1の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図。
【図6】図1に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図7】図6の金型で成形された板状体からフレームを切り出す状態を示す斜視図。
【図8】釣糸ガイドの第1の実施形態の変形例を示す側面図。
【図9】図8の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図10】図8に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図11】本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す斜視図。
【図12】図11の釣糸ガイドを後側から見た正面図。
【図13】図11の釣糸ガイドの側面図。
【図14】図11の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図15】図11に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図16】図15の金型で成形された板状体からフレームを切り出す状態を示す斜視図。
【図17】釣糸ガイドの第3の実施形態の変形例を示す縦断面図。
【図18】図17に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図19】釣糸ガイドの第3の実施形態の変形例を示すフレームに沿った縦断面図。
【図20】図19に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図21】本発明に係る釣糸ガイドの第4の実施形態を示す斜視図。
【図22】図21の釣糸ガイドの側面図。
【図23】図21の釣糸ガイドのフレームに沿った縦断面図。
【図24】図21に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。
【図25】(a)は本発明に係る釣糸ガイドの第5の実施形態を示す側面図、(b)は(a)の釣糸ガイドの正面図。
【図26】(a)はフレーム各部の厚さと繊維強化樹脂層または強化繊維の方向とを示す第1の例の概略側面図、(b)はフレーム各部の分解図。
【図27】(a)はフレーム各部の厚さと繊維強化樹脂層または強化繊維の方向とを示す第2の例の概略側面図、(b)はフレーム各部の分解図。
【図28】(a)はフレーム各部の厚さと繊維強化樹脂層または強化繊維の方向とを示す第3の例の概略側面図、(b)はフレーム各部の分解図。
【図29】本発明に係る釣糸ガイドの第6の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る釣糸ガイド及びその製造方法の実施形態について説明する。
最初に、図1〜図5を参照して、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態について説明する。これらの図において、図1は釣糸ガイドの斜視図、図2は釣糸ガイドを後側から見た正面図、図3は釣糸ガイドの側面図、図4はフレームに沿った釣糸ガイドの縦断面図、そして、図5は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図および図3の矢印D方向は、釣糸ガイドが釣竿に装着された際、釣竿の軸長方向と一致しており、前方側の固定部が穂先側で、後方側の固定部が元竿側となるように取り付けられている。以下において、前側(前方側)とは穂先側を意味し、後側(後方側)とは基端側(元竿側)を意味するものとする。
【0012】
釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層の積層材によって形成されるフレーム3を備えている。ここで、「繊維強化樹脂層」とは、シート状のプリプレグを重ねて積層するほか、テープ状や糸状にしたものを重ねたり、束ねたり、テープや糸状やシート状のプリプレグを組み合わせたりした積層であっても良く、層の厚さや幅や断面形態等は釣糸ガイドの各部分の形状等に合わせて任意に積層することができる。このようなフレームは、後述するように繊維強化プリプレグを板状に成形したものをフレーム形状に切り出しても良く、あるいは、金型の釣糸ガイドを形成する空間に繊維強化樹脂を配置して釣糸ガイドを成形しても良く(この場合には、切り出しが不要となる)、任意の方法で製造できる。しかしながら、以下の各実施形態では、便宜上、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下、プリプレグと称する)を前後方向に積層した複数の繊維強化樹脂層を有する積層材によってフレーム3が形成されているものとして話を進める(プリプレグの構成、積層態様、及びフレームの詳細な製造方法については後述する)。
【0013】
前記フレーム3は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6とによって構成されており、それぞれの繊維強化樹脂層は、後述するように、複数枚のプリプレグを積層して金型によって押圧成型することでさらにプリプレグごとに形成された複数の繊維強化樹脂層が積層されて一体化されている。この場合、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6は、後述する当接部8(8a,8b)の軸線方向(図1の矢印D方向;前後方向)における厚みよりも左右方向の幅が大きい板状に形成されている。
【0014】
本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5は、略円環形状の当接部8aとして形成されている。また、後方側の繊維強化樹脂層6は、当接部8aと当接する上方側の略半円環形状の当接部8bと、当接部8bからD方向と略直交する方向で繊維強化樹脂層5から次第に離反するように傾斜して延びる一対の支脚部6bと、これらの支脚部6bの下端でこれらを一体化するように後方側へ向けて屈曲して延びる釣竿固定部6aとを形成している。
【0015】
そして、本実施形態の釣糸ガイドは、前方側の繊維強化樹脂層5を構成する当接部8aと後方側の繊維強化樹脂層6の一部である上方領域の当接部8bとが向かい合わさった状態となっており、この当接部8a,8bが保持部Hを形成し、この保持部Hに釣糸が挿通されるガイドリング9が設けられる。また、この場合、各支脚部6bは、保持部Hの上下方向の略中間位置で保持部Hの後面hから該後面hの幅Wと同じ幅Wで突設された状態となっている。すなわち、本実施形態では、保持部Hの左右方向の幅の厚みWが前後方向の幅の厚みよりも大きくなっており、その条件下で、支脚部6bには、保持部Hの少なくとも前面または後面(本実施形態では、後面)から突設する分岐部6g(保持部から分岐する部分)が形成されている、つまり、分岐部6gは、保持部Hの左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち寸法の大きい側(厚みの大きい保持部の左右方向の幅)から形成されている。このように、保持部の前面(または、後面(後述する第2の実施形態))から分岐部を突出させると、強化繊維の方向を安定化でき、強度向上・安定化が可能となり、また、左右幅が大きくなることを防止でき、小型化、軽量化が可能になる。更に、釣糸の引っ掛かりを防止できるようになる。また、このように、保持部の左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち少なくとも寸法の大きい側から支脚部の分岐部が形成されていると、保持部と支脚部との一体化範囲を拡大可能となり、強度の向上、小型化、および、軽量化を図ることができる。なお、本実施形態において、各支脚部6bは、保持部Hの後面hから該後面hの幅Wと同じ幅Wで突設されているが、支脚部6bの幅は、分岐部6gの部位で後面hの幅Wと同じであれば良く、分岐部を過ぎた位置から固定部6aに至るまでの幅は、分岐部よりも広く形成したり、小さく形成したり、方向を調整したりすることが可能である。
【0016】
また、本実施形態において、当接部8a,8bには、それぞれガイドリング9を保持するための開口(貫通孔)5c,6cが形成されている。これらの開口5c,6cは、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6の上方領域が向かい合わさった状態で一体化された後、切削等によって形成される。
【0017】
釣竿固定部6aは、釣竿(竿管)の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、釣糸ガイドの後方向に延びる板状片でその裏側の当接面6dが釣竿の表面に釣竿の長手方向に合わせて載置された状態で、例えば糸を巻き付けた後にその外側に接着剤を塗布することによって固定される。なお、固定部6aについては、様々な形状をとることができる。
【0018】
前記当接部8a,8bに形成される開口5c,6cは、同一の形状であり、全体として略円形の外形状を備えている。この開口に嵌入されるガイドリング9は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面9a部分での摺動抵抗が小さい部材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックス等によって形成されている。このガイドリング9は、フレーム3が前記プリプレグによって一体形成された後、当接部8a,8bに形成された開口5c,6cに対して嵌入、固定される。
【0019】
また、前方側の繊維強化樹脂層5、及び後方側の繊維強化樹脂層6には、少なくとも1つ以上の屈曲部を形成しておくことが好ましい。本実施形態においては、後方側の繊維強化樹脂層6に、支脚部6bの両側で釣竿固定部6aとの境界部分、及び当接部8bとの境界部分(前記突設部分)に、それぞれ第1屈曲部6eと、第1屈曲部よりも緩やかに屈曲した第2屈曲部6fが形成されている。
【0020】
フレーム3に上記したような屈曲部を形成する場合、緩やかに屈曲する第2屈曲部6fを形成しておくことで、フレーム全体として、屈曲させることによる曲げ角度を段階的に設定することが可能となり、応力集中を分散させて強度を向上することが可能となる。特に、フレーム3に複数の屈曲部を形成するのであれば、釣竿固定部6aと支脚部6bとの間の境界部分、又はその近傍に形成される屈曲部(図において第1屈曲部6eが対応する)よりも、当接部8b側に形成される屈曲部(図において第2屈曲部6fが対応する)の屈曲角度(屈曲した部分の前後において、接線同士が交差する角度)を小さく設定することが好ましい。
【0021】
このように、当接部8b側の屈曲部の屈曲角度を小さく設定しておくことで、釣糸が掛かった場合など、負荷が大きくなる部分の応力集中を緩和することができ、強度の安定化が図れる。
【0022】
なお、上記した支脚部6bについては、2つの屈曲部間は、図に示すように直線状に形成されていたが、2つの屈曲部間を、所定の曲面を有する湾曲状に形成しても良いし、支脚部全体を湾曲面で構成しても良い。
【0023】
上記したようなフレーム3に形成される屈曲部6e,6fは、応力集中して破損等し易い領域となっているが、後述するような製造方法、及びプリプレグの構成を用いることで、比強度、及び比剛性の向上が図られている。なお、屈曲部に補強層を設け、釣糸による負荷が作用しても損傷などがし難いように構成しても良い。ここで、補強層とは、釣糸ガイドを釣竿に取り付けたときに、フレーム3のその前後方向の曲げ剛性を高め、負荷により屈曲部が撓んだときの曲げ角度の変化が小さくなるよう補強する層であり、積層状態の繊維強化樹脂層を構成している複数のプリプレグの内、いずれかのプリプレグに、釣竿から立ち上がる方向に沿って延びる強化繊維が含まれた構成となっていれば良い。
【0024】
具体的に、複数枚のプリプレグは、例えば、図5に示すように、釣竿から立ち上がる方向(釣竿の軸長方向となる)に沿って強化繊維を引き揃えた軸長方向繊維樹脂層21と、釣竿の軸長方向に対して所定の角度を有する交差方向に強化繊維を引き揃えた斜向繊維樹脂層22a,22bと、強化繊維を編成した織布層23と、を有している。これらの繊維強化樹脂の繊維(繊維強化樹脂層)は、保持部Hの少なくとも一部から支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に本実施形態では、図4に明確に示されるように、後方側の繊維強化樹脂6の繊維(繊維強化樹脂層)が釣竿固定部6aから当接部8bへわたって(全長にわたって)連続して延びており、一方、前方側の繊維強化樹脂層5も全長にわたって連続して延びている。なお、図5では、後方側の繊維強化樹脂層6のプリプレグの積層構造(積層材6A)を示しているが、前方側の繊維強化樹脂層5(積層材5A)も同様な積層構造とされる。また、簡単のため、図5における7つの層は、図4および図6では4層でそれぞれ描かれている。
【0025】
本実施形態では、フレーム3の厚さの中間位置となる中立軸エリア(図5において、中立軸をXで示す)に、強化繊維を軸長方向に引き揃えたプリプレグによって軸長方向繊維樹脂層21が配設され、その外側(両側)に、軸長方向に対して所定の角度(傾斜角度は任意であるが15〜75度が好ましく、より好ましくは30〜60度)に強化繊維を引き揃えたプリプレグによって斜向繊維樹脂層22a,22bが配設され、さらに、最外層(両側の全面となっているが部分的に最外となる領域でも良い)に強化繊維を編成したプリプレグによって織布層23が配設されている。なお、前記軸長方向繊維樹脂層21は、複数層(1層〜4層)あっても良い。また、前記斜向繊維樹脂層22a,22bについては、夫々の層における強化繊維の指向方向は異なっていても良い。
【0026】
このように、繊維強化樹脂製の釣糸ガイドを形成するに際しては、フレーム自体を正面視または平面視した際、少なくとも三方向に強化繊維が指向した状態となるようなプリプレグを選択し、積層することが好ましい。すなわち、強化繊維の指向方向を三方向以上とすることで、効率良く、軽量で強度的に優れた釣糸ガイドを形成することが可能となる。また、上記した構成のように、フレーム3の中間層領域に軸長方向繊維樹脂層21を配設することで、フレーム3に対し、軸長方向に沿って釣糸の張力等によって撓み力が作用しても、その方向の比剛性を、軽量化を図りながら効率良く高めておくことが可能となる。
【0027】
さらに、上記したプリプレグの配置構成のように、フレーム3の最外層には、織布層23を配設することが好ましい。これは、フレーム3の表面は、他物が当たり易く、剥離などし易い部分であること、及び、実釣時において、釣糸の張力によってフレームが撓む等、フレーム端部から強化繊維が剥離したり、破損する可能性があることから、この表面領域に強化繊維が編成された織布層を配設しておくことで、強化繊維の裂けや剥離が効果的に防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。
【0028】
このような織布層23を配設することで、より確実に強化繊維が剥離、破損することを防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、屈曲部6e,6fについても相対的に強化することができ、軽量で強度バランスに優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。また、上記した織布層23の網目の幅については、釣竿固定部6aや当接部8a,8bの領域において、それらの部分での最小幅よりも小さくすることが好ましい。
【0029】
次に、上記したような形態のフレーム3を形成する方法について、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0030】
前記フレーム3は、図5に示したような積層構造を有する前方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)5Aと、後方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)6Aによって形成される。この場合、各層を構成しているプリプレグは、上述したように、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。なお、フレーム3は、複数の繊維強化樹脂層によって構成されるが、上記した屈曲部が補強されるよう、補強層を含んでいても良い。
【0031】
最初、上記したようなプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、上記したように、フレーム3に屈曲部6e,6fを形成すること、使用時においてフレーム3には負荷が加わること、装着される釣竿の特性や装着部分等を考慮し、プリプレグの種類や重ねる条件が任意に調整される。
【0032】
このように複数枚積層された積層材5A,6Aは、図6に示すような金型50にセットされる。本実施形態の金型50は、上下に型割りされる上型51と下型(底部型)52によって構成されており、上型51については、更に、左右に型割りされる左右型(前部型および後部型)51a,51bによって構成されている。この場合、下型52には、一端面側がなだらかな湾曲傾斜面で他端面側が切り立った垂直面となる断面が略三角形状の山部52aが形成されており、山部52aの頂部52bを境にして左右型51a,51bが左右方向に開くように構成されている。なお、金型50は、少なくとも三方向金型(底部型52、前部型51a、後部型51b)を開いたり成形状態に閉じたりできる金型であり、したがって、金型50の各部分は、ピンやコマを利用しても良く、三方向以上に金型50の所定部分を開閉できればどのような構造であっても良い。三方向またはそれ以上に開閉するためのコマやピンの動きや構造は任意に設定可能である。
【0033】
上記した積層材5A,6Aの金型に対するセット方法は特に限定されることはないが、例えば、山部52aの頂部52bから上方側の領域を互いに面接するようにセットし(両積層材の一部を向かい合わせ状にして当接部とする)、かつ、その下方で、そのまま両積層材を下型52の山部52aに沿ってセットする(これらの部分は釣竿固定部が形成される非当接部となる)。この場合、積層材5A,6Aについては、一度に全体を重ね合わせた状態でセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定位置にセットすることもできる。また、上型51の左右型51a,51bと下型52との間には、積層材5A,6Aがセットされる位置に応じて空洞部55が形成されており、その表面領域には、離型剤がコーティングされている。
【0034】
前記空洞部55は、フレーム3の肉厚に対応しており、下型52には、前記積層材5A,6Aを載置した際、上記した屈曲部6e,6fに対応する位置に、屈曲形成凹部52eが形成されている。また、左型51aには、屈曲形成凹部52eに対応して屈曲形成凸部51eが形成されている。さらに、下型52と左型51aとの間には、釣竿固定部6aが形成されるように、前記空洞部55が形成されている。
【0035】
なお、上記した金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。
【0036】
上記したように、積層材5A,6Aを下型52の所定位置にセットした後、積層材を加圧し固定する。この加圧、固定については、上型51によって締め付けしても良いし、手や押圧具で押し付けても良い。この段階で、前記屈曲部を含め、成形後のフレーム形状に相当する形が保持され、これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる(この段階では、各プリプレグは未硬化状態(仮キュア後を含む)であり、屈曲部は加熱硬化前に形成されることとなる)。
【0037】
その後、加熱工程を施し、マトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品(屈曲部を有する板状体30となっている)を金型50から取り出す。この板状体30は、図7に示されるように形成され、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層が接合部8a,8bの領域で一体化された状態となっており、図1では、そのような両方の繊維強化樹脂層の中央部を表す部分が二点鎖線で示されている。
【0038】
なお、上記した屈曲部を金型50で押えて加熱硬化するときに、その屈曲部は、その前後の領域よりも相対的に強く加圧することが好ましい。このように、屈曲部の領域を強く加圧することで、成形されたフレームの屈曲部6e,6fのボイドを防止することができ、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、これに伴い、成形されたフレーム3の屈曲部6e,6fは、その前後の領域(固定部や支脚部)よりも繊維比率を高くすることができるので、破損等しやすい屈曲部を強化することが可能となる。或いは、屈曲部6e,6fについては、その前後の領域よりも繊維比率を高くしておくことが好ましい。例えば、上記した工程で説明したように、加熱成形時に屈曲部の領域の押圧力を高くすることで、樹脂が流出して屈曲部の繊維比率を高くすることが可能であり、このように構成することで、負荷が作用してフレームが撓んでも破損し難い釣糸ガイドにすることが可能となる。
【0039】
次に、板状体30から所定の形状となるようにフレーム3を切り出す。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し、または、不要部分を削除または破壊する切り出し等、任意の方法を採用することで、図7に示すように、1枚の板状体30から複数のフレーム3を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
【0040】
この加工時において、フレーム3の基本的な外形状、すなわち、開口5c,6cを有する当接部8a,8b、支脚部6bおよび釣竿固定部6a等を同時に形成することが好ましいが、これらを別々の工程で形成しても良い。また、前記板状体30に関しては、一枚の単純な平面形状に限らず、積層厚さを位置によって変化させたり、板状部分が複数方向に延びる形状(T字形状や逆Y字形状等)としたり、曲面形状を含んでいたり、更には、軽量化を図るために開口を形成しても良い。
【0041】
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、釣竿固定部6aの形状を釣竿に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き・糸止めし易いように、固定部の端部を研磨等することが該当する。
【0042】
次に、フレーム3の表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工を施すことにより、強化繊維を傷付けることなく、フレーム3を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
【0043】
なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレーム3の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、フレーム3の側面は複数の繊維強化樹脂層が面一になるように研磨する。
【0044】
次に、必要に応じて、フレーム3の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
【0045】
そして、上記したように形成されたフレームの開口5c,6cの部分にガイドリング9を取り付ける。ガイドリング9の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
【0046】
上記したような製造方法によって形成される釣糸ガイド1によれば、金属製のものと比較して、重量が軽くなり、更には、比強度、比剛性、及び撓み性に優れた構成とすることが可能となる。このため、そのような釣糸ガイドを多数個装着しても釣竿全体が重量化することはなく、釣竿の性能が向上する。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れることから、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。更に、繊維強化樹脂層が保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続している(本実施形態では、後方側の繊維強化樹脂6の繊維(繊維強化樹脂層)が釣竿固定部5aから当接部8bへわたって(全長にわたって)連続して延びており、一方、前方側の繊維強化樹脂層5も全長にわたって連続して延びている)ため、釣糸ガイド1の高い強度を実現できる。
【0047】
図8および図9は前述した第1の実施形態の変形例を示している。本変形例では、支脚部6bと前方側の繊維強化樹脂層5を構成する当接部8a(前方側保持部)との間に、全長にわたって連続する繊維強化樹脂層(少なくとも2つの繊維強化プリプレグ(例えば、一方が軸長方向繊維樹脂層、他方が斜向繊維樹脂層)を積層して成る繊維強化樹脂層)から成る補強片100(特に図9参照)が設けられている。この補強片100は、当接部8aと層6との間の裂けを防止する。
【0048】
したがって、本変形例では、フレーム3を成形するに際して、積層材5A,6Aを金型50にセットするときに、図10に示されるように、補強片100を支脚部6bと当接部8aとの間に配する。
【0049】
図11〜図14は本発明の第2の実施形態に係る釣糸ガイドを示している。図示のように、本実施形態の釣糸ガイド1Aも、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを前後方向に積層した複数の繊維強化樹脂層を有する積層材によって形成されたフレーム3を備えている。
【0050】
具体的には、フレーム3は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6によって構成されており、前方側の繊維強化樹脂層5は、上方側の略半円環形状の当接部8aと、当接部8aからD方向と略直交する方向で下方へと略垂直に延びる支脚部(前方側支脚部)5bと、この支脚部5bの下端で前方側へ向けて屈曲して延びる釣竿固定部5aとを形成している。一方、後方側の繊維強化樹脂層6は、第1の実施形態と同様、当接部8aと当接する当接部8bと、支脚部(後方側支脚部)6bと、釣竿固定部6aとを形成している(すなわち、第1の実施形態とは異なり、支脚部は、その分岐部を介して保持部の前面および後面から突設されている・・・後述する第4の実施形態も同様)。なお、後方側の繊維強化樹脂層6の形態は第1の実施形態と同じであるため、以下では、前方側の繊維強化樹脂層5の形態について説明する。また、本構成において、前方側支脚部5bが竿元側(後方側)に配置されて後方側支脚部6bが竿先側(前方側)に配置されてもよく、取り付け方向は限定されない。
【0051】
前方側の釣竿固定部5aは、釣竿の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、釣糸ガイドの前後方向に延びる板状片でその裏側の当接面5dが釣竿の表面に釣竿の長手方向に合わせて載置された状態で、例えば糸を巻き付けた後にその外側に接着剤を塗布することによって固定される。なお、固定部5aについては、様々な形状をとることができる。
【0052】
また、前方側の繊維強化樹脂層5にも、後方側の繊維強化樹脂層6と同様、少なくとも1つ以上の屈曲部を形成しておくことが好ましい。本実施形態においては、前方側の繊維強化樹脂層5には、釣竿固定部5aと支脚部5bとの間の境界部分に、第1屈曲部5eが形成されている、この場合、いずれか一方の第1屈曲部5eまたは6eが、フレーム3の中で最も曲げ角度が急な屈曲部となる。
【0053】
先に説明したように、層5に関しては、フレーム3に上記したような屈曲部を形成する場合、緩やかに屈曲する第2屈曲部6fを形成しておくことで、フレーム全体として、屈曲させることによる曲げ角度を段階的に設定することが可能となり、応力集中を分散させて強度を向上することが可能となる。特に、フレーム3に複数の屈曲部を形成するのであれば、釣竿固定部5a,6aと支脚部5b,6bとの間の境界部分、又はその近傍に形成される屈曲部(図において第1屈曲部5e,6eが対応する)よりも、当接部8側に形成される屈曲部(図において第2屈曲部6fが対応する)の屈曲角度(屈曲した部分の前後において、接線同士が交差する角度)を小さく設定することが好ましい。
【0054】
なお、支脚部5bについては、2つの屈曲部間は、図に示すように直線状に形成されていたが、2つの屈曲部間を、所定の曲面を有する湾曲状に形成しても良いし、支脚部全体を湾曲面で構成しても良い。
【0055】
また、本実施形態の前方側の繊維強化樹脂層5も、第1の実施形態と同様の積層構造を成している(図5参照)おり、その繊維強化樹脂層(または、その層を構成する強化繊維)が、保持部Hの少なくとも一部から支脚部5bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に本実施形態では、図14に明確に示されるように、前方側の繊維強化樹脂5の繊維強化樹脂層(または、その強化繊維)が釣竿固定部5aから当接部8aへわたって(全長にわたって)連続して延びている。
【0056】
次に、上記したような形態のフレーム3を形成する方法について、図15及び図16を参照しながら説明する。
【0057】
前記フレーム3は、図5に示したような積層構造を有する前方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)5Aと、後方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)6Aによって形成される。この場合、各層を構成しているプリプレグは、上述したように、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。なお、フレーム3は、複数の繊維強化樹脂層によって構成されるが、上記した屈曲部が補強されるよう、補強層を含んでいても良い。
【0058】
最初、上記したようなプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、上記したように、フレーム3に屈曲部5e及び6e,6fを形成すること、使用時においてフレーム3には負荷が加わること、装着される釣竿の特性や装着部分等を考慮し、プリプレグの種類や重ねる条件が任意に調整される。
【0059】
このように複数枚積層された積層材5A,6Aは、図15に示すような金型50にセットされる(言い換えると、繊維強化樹脂製のフレームの繊維強化樹脂層または強化繊維を、保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続するように、底部型52、前部型51a、および、後部型51bを有する金型50内に配する)。本実施形態の金型50も、第1の実施形態と同様、上下に型割りされる上型51と下型52によって構成されており、上型51については、更に、左右に型割りされる左右型51a,51bによって構成されている。この場合、下型52には、一端面側がなだらかな湾曲傾斜面で他端面側が切り立った垂直面となる断面が略三角形状の山部52aが形成されており、山部52aの頂部52bを境にして左右型51a,51bが左右方向に開くように構成されている。
【0060】
上記した積層材5A,6Aの金型に対するセット方法は特に限定されることはないが、例えば、山部52aの頂部52bから上方側の領域を互いに面接するようにセットし(両積層材の一部を向かい合わせ状にして当接部とする)、かつ、その下方で、そのまま両積層材を下型52の山部52aに沿ってセットする(これらの部分は釣竿固定部が形成される非当接部となる)。この場合、積層材5A,6Aについては、一度に全体を重ね合わせた状態でセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定位置にセットすることもできる。また、上型51の左右型51a,51bと下型52との間には、積層材5A,6Aがセットされる位置に応じて空洞部55が形成されており、その表面領域には、離型剤がコーティングされている。
【0061】
前記空洞部55は、フレーム3の肉厚に対応しており、下型52には、前記積層材5A,6Aを載置した際、上記した屈曲部5e及び6e,6fに対応する位置に、屈曲形成凹部52d,52eが形成されている。また、右型51bには、屈曲形成凹部52dに対応して屈曲形成凸部51dが、左型51aには、屈曲形成凹部52eに対応して屈曲形成凸部51eが、それぞれ形成されている。さらに、下型52と左右型51a,51bとの間には、釣竿固定部5a,6aが形成されるように、前記空洞部55が形成されている。
【0062】
なお、上記した金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。
【0063】
上記したように、積層材5A,6Aを下型52の所定位置にセットした後、積層材を加圧し固定する。この加圧、固定については、上型51によって締め付けしても良いし、手や押圧具で押し付けても良い。この段階で、前記屈曲部を含め、成形後のフレーム形状に相当する形が保持され、これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる(この段階では、各プリプレグは未硬化状態(仮キュア後を含む)であり、屈曲部は加熱硬化前に形成されることとなる)。
【0064】
その後、加熱工程を施し、マトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品(屈曲部を有する板状体30となっている)を金型50から取り出す。この板状体30は、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層が接合部8a,8bの領域で一体化された状態となっている。
【0065】
なお、上記した屈曲部を金型50で押えて加熱硬化するときに、その屈曲部は、その前後の領域よりも相対的に強く加圧することが好ましい。このように、屈曲部の領域を強く加圧することで、成形されたフレームの屈曲部5e及び6e,6fのボイドを防止することができ、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、これに伴い、成形されたフレーム3の屈曲部5e及び6e,6fは、その前後の領域(固定部や支脚部)よりも繊維比率を高くすることができるので、破損等しやすい屈曲部を強化することが可能となる。或いは、屈曲部5e及び6e,6fについては、その前後の領域よりも繊維比率を高くしておくことが好ましい。例えば、上記した工程で説明したように、加熱成形時に屈曲部の領域の押圧力を高くすることで、樹脂が流出して屈曲部の繊維比率を高くすることが可能であり、このように構成することで、負荷が作用してフレームが撓んでも破損し難い釣糸ガイドにすることが可能となる。
【0066】
次に、図16に示す板状体30から所定の形状となるようにフレーム3を切り出す(板状体30から不要部分を削除(破壊)してフレーム3を取り出す(残す))。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、図16に示すように、1枚の板状体30から複数のフレーム3を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。なお、それ以外の製造手法は第1の実施形態と同じである。
【0067】
このように、本実施形態は、第1の実施形態と同様の作用効果を有するとともに、ガイドリングの保持部Hの前方側と後方側の両方に釣竿固定部5a,6aが設けられるため、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することが可能となる。
【0068】
図17および図18は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態では、第2の実施形態の構成に加えて、フレーム3を構成する繊維強化樹脂層(または強化繊維)が前方側支脚部5bの少なくとも一部から後方側支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に、本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5(または、強化繊維)と後方側の繊維強化樹脂層6(または、強化繊維)とが一体となって連続している。すなわち、繊維強化樹脂層(を構成する繊維)が前方側の繊維強化樹脂層5から後方側の繊維強化樹脂層6へわたって(全長にわたって)連続している。
【0069】
したがって、本実施形態では、フレーム3を成形するに際しては、図18に示されるように、積層材5A,6Aが一体となった長尺な積層材120をその長手方向の中間部で折り返した状態で金型50にセットする。
以上から分かるように、繊維強化樹脂層(または層を形成する強化繊維のみ)は、前述した第2の実施形態に示されるように、保持部から支脚部へと連続していても良く、あるいは、この第3の実施形態に示されるように、一方の支脚部から他方の支脚部へと連続していても良い。
【0070】
図19および図20は第3の実施形態の変形例を示している。本変形例では、前方側の支脚部5bと後方側の支脚部6bとの間に、全長にわたって(繊維が)連続する補強層(少なくとも2つの繊維強化プリプレグ(例えば、内側が軸長方向繊維樹脂層、外側が斜向繊維樹脂層)を積層して成る繊維強化樹脂層)200が設けられている。特に、本変形例において、補強層200(底面の2層)の後端は後方側の釣竿固定部6aの後端にまで達して延びており、補強層200の前端は前方側の釣竿固定部5aの前端にまで達して延び、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6との境界に跨って補強している。なお、補強層200は、前記境界に跨るように設けていれば、更に長さが短い補強片でもよい。
【0071】
したがって、本変形例では、フレーム3を成形するに際しては、図20に示されるように、長尺な積層材120をその長手方向の中間部で折り返した状態で金型50にセットするときに、長尺な補強層200も中間部で折り返した状態で積層材120の内側に重ね合わせてセットする。
【0072】
図21〜図23は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態では、保持部Hが、前方側の当接部8aと、後方側の当接部8bと、これらの当接部8a,8b間に挟まれる中間部210とによって構成されている。この中間部210は、当接部8a,8bと同じ素材により円環状に形成されており、その全長にわたって繊維が連続している。なお、それ以外の構成は、第2の実施形態とほぼ同様である(前方側の繊維強化樹脂層5の支脚部5bが後方側の繊維強化樹脂層6の支脚部6bとほぼ同様の形態で構成されている点を除く)。
【0073】
したがって、本実施形態では、フレーム3を成形するに際して、積層材5A,6Aを金型50にセットするときに、図24に示されるように当接部8a,8b間に中間部210を挟み込んだ状態で配する。
【0074】
本実施形態成によれば、中間部210の存在により、ガイドリング9を保持する保持力が増大し、保持部Hからのガイドリング9の脱落を確実に防止できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0076】
本発明は、釣糸ガイド1を構成するフレーム部分を、繊維強化プリプレグで構成すると共に、比強度、比剛性等を高め、特に、屈曲部の領域で破損等が生じないように、上述したような製造方法、及びプリプレグの配置態様を用いたことに特徴がある。上記したフレームを構成するプリプレグについては、強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚などの構成、及び積層状態等については、実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0077】
また、釣糸ガイド1は、釣竿に対して糸止め等によって固定されていなくてもよく、例えば、釣竿に対して摺動可能に外嵌される遊動ガイドとして構成されていても良い。このような遊動ガイドであれば、上記したフレーム3に屈曲部を形成しない構成であっても良い。
【0078】
また、上記したように、フレームを構成するプリプレグは、積層した状態において、平面視した際に強化繊維の指向方向が三方向以上となっていれば、軽量化を図りつつ、効率的に強度を向上することが可能となるが、各層を構成するプリプレグの強化繊維の指向方向や、その積層位置については特に限定されることはなく、適宜変形することが可能である。この場合、上述したように、フレームの最外層については、破損などが効果的に防止できるように、織布層を配設しておくことが好ましい。
【0079】
また、フレームは、繊維強化樹脂層の中央に対する両側の繊維強化樹脂層が外層に向かって繊維方向が互いに対称方向となるように積層されてもよい。また、フレームは、繊維強化樹脂層の中央に対して一方向側と他方向側に、フレームの長手軸(フレームの延設方向)に対して互いに反対方向に強化繊維が傾斜した斜向繊維強化樹脂層を備えても良い。更に、フレームは、該フレームの厚さ方向(前後方向)における中間位置となる中立軸領域に、強化繊維を軸長方向(フレームの延設方向)に配設し、前記中立軸領域の外側に、強化繊維を前記軸長方向に対して交差する方向に配設しても良い。また、フレームの側面は、該側面に現れる複数の繊維強化樹脂層を面一に形成しても良い。
【0080】
また、前述した実施形態では、支脚部5b,6bが保持部Hの上下方向中間位置でその前面(第1〜第4の実施形態)または後面(第2〜第4の実施形態)から突設され、支脚部5b,6bおよび保持部Hの全長にわたって繊維強化樹脂層が連続しているが、繊維強化樹脂層は、保持部Hからの突設する支脚部5b,6bの突設部位から保持部Hの上方側にわたって連続していてもよく、あるいは、保持部Hからの突設する支脚部5b,6bの突設部位から保持部Hの下方側にわたって連続していてもよく、要は、繊維強化樹脂層が保持部Hの少なくとも一部から支脚部5b,6bの少なくとも一部へとわたって連続していればよい。
【0081】
図25は本発明に係る釣糸ガイドの第5の実施形態を示している。図示のように、本実施形態の支脚部は、第1および第2の実施形態のように保持部Hの上下方向の略中間位置で保持部Hの後面から突設するのではなく、保持部Hの頂部Haから延在している。具体的には、本実施形態の釣糸ガイドは、第2の実施形態の変形例として位置付けられ、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂層(例えば、プリプレグ)を前後方向に積層した積層材によって形成されるフレーム3を備えている。フレーム3を構成する繊維強化樹脂層(または強化繊維)は前方側支脚部5bの少なくとも一部から後方側支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に、本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5(または、強化繊維)と後方側の繊維強化樹脂層6(または、強化繊維)とが一体となって連続している。すなわち、繊維強化樹脂層(または、層を構成する強化繊維)が前方側の繊維強化樹脂層5から後方側の繊維強化樹脂層6へわたって(全長にわたって)連続している。そして、後方側支脚部6bは、保持部Hの頂部Haを起点として、リング状の保持部Hの後面の下側円弧部分の一部を除くかなりの部分と重合しながら(図25の(b)参照)、釣竿固定部6aへ向けて斜め下方に延びている。また、本実施形態では、後方側支脚部6bの外面と保持部Hの外面とが面一となっている。これにより、釣糸ガイドの左右方向の幅寸法を小型化できるとともに、釣糸ガイドに対する釣糸の絡みを低減できる。一方、前方側支脚部5bは、保持部Hの下端から下方へと略垂直に延びて水平方向に屈曲することにより釣竿固定部5aへと延びている。なお、前方側支脚部5bは、保持部Hの前面から延びていても良い。
【0082】
また、本実施形態では、後方側支脚部6bの肉厚t1が前方側支脚部5bの肉厚t2よりも大きく設定されている。したがって、肉厚の大きい後方側支脚部6bを主脚と称し、肉厚の小さい前方側支脚部5bを補助脚と称することもできる。また、この場合、前述した支脚部の屈曲部5e,6eも同様に、主脚の肉厚を厚く、補助脚の肉厚を薄くすることができる。このような肉厚調整は、支脚部が繊維強化樹脂層によって形成されているからこそ可能となる。従来のように支脚部(プレート)を金属板のプレス加工によって形成する場合には、肉厚調整を行なうことができない。また、本実施形態のように、主脚と補助脚との肉厚を相対的に変えることにより、主脚および補助脚の全体としての軽量化および小型化を図ることが可能になる。また、バランス設計により強度バランスも向上する。
【0083】
また、本実施形態において、後方側支脚部6bは、その肉厚寸法t1がその幅寸法w1よりも大きく設定されており、そのため、軽量化、高強度化を図ることができるとともに、ガイドに対する釣糸の絡みを低減できる。なお、後方側支脚部6bの幅寸法w1は、釣竿固定部6aの幅寸法w2よりも小さく設定されている。
【0084】
支脚部5b,6bを肉厚によって主脚と補助脚とに区別する技術思想に関連して、図26〜図28には、フレーム3の各部の厚さおよび各部を構成する繊維強化樹脂層(または、強化繊維)の連続性が示されている。
【0085】
図26は、第2の実施形態と同様の繊維強化樹脂層の構成、すなわち、前方側支脚部5bと後方側支脚部6bとが別個の繊維強化樹脂層5,6によって構成され、各繊維強化樹脂層(または、その強化繊維)が保持部Hから固定部5a,6aへわたって連続している構成と、第3の実施形態のように前方側支脚部5bおよび後方側支脚部6bにその全長にわたって沿わせるように補強層200を設ける構成とを組み合わせた構造を示しており、この構造では、繊維強化樹脂層6と補強層200とを組み合わせた後方側支脚部6bの厚さT1と、繊維強化樹脂層5と補強層200とを組み合わせた前方側支脚部5bの厚さT2と、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6とを組み合わせた保持部Hの厚さT3とが、T3>T1>T2(T3=T2×2)となるような寸法関係に設定されている。すなわち、釣糸ガイドの上部(保持部)が補強される構造となっている。しかしながら、T1=T2=T3となるような寸法関係に設定してガイド全体のバランスを良好にしても良く、あるいは、T3=T1>T2となる寸法関係に設定して、主脚として後方側支脚部6bの強度を高めるとともに、補助脚としての前方側支脚部5bの撓り性を向上させても良い。
【0086】
図27は、図26の構造において補強層200を固定部5a,6aから排除した構造を示している。この構造では、繊維強化樹脂層6と補強層200とを組み合わせた後方側支脚部6bの厚さT1と、繊維強化樹脂層5と補強層200とを組み合わせた前方側支脚部5bの厚さT2と、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6とを組み合わせた保持部Hの厚さT3と、後側の固定部6aの厚さT4と、前側の固定部の厚さT5とが、T1=T2=T3>T4=T5となるような寸法関係に設定されている。このような寸法関係によれば、固定部5a,6aを薄肉にして固定部5a,6aの撓り性を向上させることができる。
【0087】
図28は、図26の構造において補強層200を完全に排除した構造(第2の実施形態と同じ構造)を示している。この構造では、T3>T1=T2となるような寸法関係に設定されている。このような寸法関係によれば、ガイドの軽量化を図ることができる。なお、本構成において、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6とを一体で連続させるたい場合には、図28の(a)に示されるように、繊維強化樹脂層5と繊維強化樹脂層6との境界部分を滑らかな湾曲形状に形成して、繊維の極端な方向変化を防止することが望ましい。
【0088】
図29は、本発明に係る釣糸ガイドの第6の実施形態を示している。本実施形態は、第1の実施形態などとは異なり、保持部Hの前後方向の幅の厚みW1が左右方向の幅の厚みWよりも大きくなっており、その条件下で、後方側支脚部6bには、保持部Hの側面から突設する分岐部6g(保持部から分岐する部分)が形成されている(後方側支脚部6bが、保持部Hの幅狭い後面からではなく、保持部Hの幅広い側面から延びている)。つまり、分岐部6gは、保持部Hの左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち寸法の大きい側(厚みの大きい保持部の前後方向の幅)から突出して形成されている。一方、前方側支脚部5bは、保持部Hの下端から下方へと略垂直に延びて水平方向に屈曲することにより釣竿固定部5aへと延びている。なお、前方側支脚部5bは、保持部Hの前面から延びていても良い。このような構造によれば、保持部Hの強化繊維の方向と支脚部5b,6bの強化繊維の方向とを保持部Hの広い面を利用して同じ方向に沿わせることが可能になり、強度の向上、安定化、軽量化を図ることができる。また、釣糸ガイドの左右幅を相対的に小さくでき、小型化しやすく、ガイドに対する釣糸の絡みを低減できる。なお、本実施形態では、フレーム3を構成する繊維強化樹脂層(または強化繊維)が保持部Hから各支脚部5b,6bにわたって連続している。
【符号の説明】
【0089】
1 釣糸ガイド
3 フレーム
5 前方側の繊維強化樹脂層
6 後方側の繊維強化樹脂層
5b,6b 支脚部
9 ガイドリング
H 保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる保持部と、該保持部から延びる支脚部とを有し、前記繊維強化樹脂層が前記保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記支脚部は、前記保持部の少なくとも前面または後面から突設する分岐部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記支脚部は、前記保持部の左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち少なくとも寸法の大きい側から分岐部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記支脚部は、前記保持部の前方側に延びる前方側支脚部と、前記保持部の後方側に延びる後方側支脚部とから成り、前記繊維強化樹脂層または強化繊維が前記前方側支脚部の少なくとも一部から前記後方側支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記支脚部は、前記保持部の前方側に延びる前方側支脚部と、前記保持部の後方側に延びる後方側支脚部とから成り、前方側支脚部と後方側支脚部の先端にはそれぞれ竿管に固定する固定部を形成し、前記繊維強化樹脂層または強化繊維が一方の固定部の少なくとも一部分から他方側の固定部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記支脚部は、前記保持部の前方側に延びる前方側支脚部と、前記保持部の後方側に延びる後方側支脚部とから成り、前方側支脚部と後方側支脚部の先端にはそれぞれ竿管に固定する固定部を形成し、
前方側支脚部と後方側支脚部のうちの一方を主脚とし他方を補助脚として、前記主脚またはその固定部の肉厚を、前記補助脚またはその固定部の肉厚よりも厚く形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる保持部と、該保持部の前方および後方に延びる支脚部と、釣竿に取り付ける固定部とを具備し、繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、
前記繊維強化樹脂製のフレームの繊維強化樹脂層または強化繊維を、前記保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続するように、底部型、前部型、および、後部型を有する金型内に配して、加圧、加熱して成形することを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
【請求項8】
前記繊維強化樹脂層を前記金型に配して板状体を成形し、該板状体から前記フレームを切り出すことを特徴とする請求項7に記載の釣糸ガイドの製造方法。
【請求項1】
強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる保持部と、該保持部から延びる支脚部とを有し、前記繊維強化樹脂層が前記保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記支脚部は、前記保持部の少なくとも前面または後面から突設する分岐部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記支脚部は、前記保持部の左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち少なくとも寸法の大きい側から分岐部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記支脚部は、前記保持部の前方側に延びる前方側支脚部と、前記保持部の後方側に延びる後方側支脚部とから成り、前記繊維強化樹脂層または強化繊維が前記前方側支脚部の少なくとも一部から前記後方側支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記支脚部は、前記保持部の前方側に延びる前方側支脚部と、前記保持部の後方側に延びる後方側支脚部とから成り、前方側支脚部と後方側支脚部の先端にはそれぞれ竿管に固定する固定部を形成し、前記繊維強化樹脂層または強化繊維が一方の固定部の少なくとも一部分から他方側の固定部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記支脚部は、前記保持部の前方側に延びる前方側支脚部と、前記保持部の後方側に延びる後方側支脚部とから成り、前方側支脚部と後方側支脚部の先端にはそれぞれ竿管に固定する固定部を形成し、
前方側支脚部と後方側支脚部のうちの一方を主脚とし他方を補助脚として、前記主脚またはその固定部の肉厚を、前記補助脚またはその固定部の肉厚よりも厚く形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる保持部と、該保持部の前方および後方に延びる支脚部と、釣竿に取り付ける固定部とを具備し、繊維強化樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、
前記繊維強化樹脂製のフレームの繊維強化樹脂層または強化繊維を、前記保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続するように、底部型、前部型、および、後部型を有する金型内に配して、加圧、加熱して成形することを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
【請求項8】
前記繊維強化樹脂層を前記金型に配して板状体を成形し、該板状体から前記フレームを切り出すことを特徴とする請求項7に記載の釣糸ガイドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2011−239777(P2011−239777A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220525(P2010−220525)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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