説明

鉄キレート発生材及びその使用方法

【課題】鉄イオンを継続して溶出しつつ、溶出した鉄イオンをイオン状態のまま水中に存在させることができる鉄キレート発生材を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄キレート発生材は、鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、焼酎滓或いは柑橘類の滓で鉄と炭とが一体的に形成された構成である。そして、鉄キレート発生材を水中に配置することで、鉄と炭との接触により鉄イオンを溶出し、更に、鉄イオンと焼酎滓或いは柑橘類の滓に含まれているキレート化剤により鉄キレートが生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で鉄キレートを発生する鉄キレート発生材及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼又は海辺等では、ヘドロ等の沈殿物が堆積し、水質の悪化が起こる。このような状況下では、植物プランクトンにとって必要な栄養が不足しやすい。中でも鉄が不足すると、植物プランクトンの繁殖が進まない。植物プランクトンは食物連鎖の基礎である。植物プランクトンの繁殖が進まないと、植物プランクトンを餌とする水中生物の活性が損なわれる。この結果、水中生物環境全体の更なる悪化を招く。
【0003】
このような悪化した水質環境を改善することを目的として、以下の発明が開示されている。
【0004】
特許文献1には、粒状の鉄と炭をデンプン糊等の水溶性バインダーとともに混合して固めた多数の小塊を、粘土粉等の非水溶性バインダーで板状に固めた鉄イオン溶出体が開示されている。この鉄イオン溶出体が水中に配置されると、鉄イオンが溶出する。溶出した鉄イオンは植物プランクトンに摂取されると、植物プランクトンの繁殖を促進する。植物プランクトンが繁殖すると、この植物プランクトンを餌とする他の水中生物の増殖が促され、又は活性が高められる。この結果、水質環境が改善される。
【0005】
また、クエン酸鉄を添加した培地で藻等の植物プランクトンを培養すると、植物プランクトンが増殖することが報告されている。クエン酸鉄においては、鉄キレートとして鉄イオン状態で存在するため、鉄イオンが植物プランクトンに摂取されやすいためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−268511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶出した鉄イオンは酸化されやすい。酸化された鉄イオンは難溶性の酸化鉄等を形成し、水中で凝集し沈殿する。植物プランクトンはこのような状態の鉄を摂取することができないため、鉄イオンが速やかに酸化されるような条件下では植物プランクトンは十分に繁殖することができない。植物プランクトンが十分に繁殖できないと、他の水中生物の増殖や活性化も期待できないため、水質環境の改善につながらないという問題がある。
【0008】
また、クエン酸鉄では、長期に渡って継続的に鉄イオンを植物プランクトンに供給できないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄イオンを継続して溶出し、かつ溶出した鉄イオンをイオン状態のまま水中に存在させることができる鉄キレート発生材及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る鉄キレート発生材は、
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、
前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成され、
水中で前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出し、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤により鉄キレートを生成することを特徴とする。
【0011】
また、前記焼酎滓を2.5〜10重量%配合して形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る鉄キレート発生材の使用方法は、
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成された鉄キレート発生材を河川、湖沼又は海の水中又は底に設置して、
前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出させ、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤とで鉄キレートを生成させて植物プランクトンの増殖を促進することを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の観点に係る鉄キレート発生材の使用方法は、
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成された鉄キレート発生材を水質の悪化した河川、湖沼又は海の水中又は底に設置して、
前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出させ、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤とで鉄キレートを生成させ、
前記鉄キレートを植物プランクトンに摂取させて前記植物プランクトンの増殖を促進し、悪化した水質を改善することを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の観点に係る鉄キレート発生材の使用方法は、
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成された鉄キレート発生材を貝類の養殖筏に設置して、
前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出させ、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤とで鉄キレートを生成させて植物プランクトンの増殖を促進することを特徴とする。
【0015】
また、前記焼酎の滓を2.5〜10重量%配合して形成された前記鉄キレート発生材を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄キレート発生材は、鉄イオンを継続して溶出し、かつ溶出した鉄イオンは鉄キレートとしてイオン状態のまま水中に存在する。
【0017】
この鉄キレートは水中に存在しているため、植物プランクトンに摂取され易く、植物プランクトンの増殖を促進する。植物プランクトンの増殖は、食物連鎖における第一消費者である動物プランクトンをはじめとする水中生物の増殖を促し又は活性化させる。その結果、ヘドロ等の浄化、水質環境の改善、資産資源の増加を実現できる。
【0018】
更に、焼酎滓や柑橘類の滓は、これまで廃棄物として処理に苦慮しているものであるところ、これらの廃棄物の有効利用及び処理コストの低減も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例2における鉄の溶出実験データである。
【図2】実施例3における植物プランクトン増殖実験データである。
【図3】実施例4における植物プランクトン増殖実験データである。
【図4】実施例5における鉄キレート発生材及び鉄イオン溶出体の配置図である。
【図5】実施例5における鉄キレート発生材及び鉄イオン溶出体の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態に係る鉄キレート発生材について詳細に説明する。本実施形態に係る鉄キレート発生材は、鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、焼酎滓或いは柑橘類の滓によって鉄と炭とが一体的に形成された構造を有する。
【0021】
鉄キレート発生材は、主として河川、湖沼又は海の水中や底等に配置して用いられる。水中で焼酎滓或いは柑橘類の滓が徐々に分離すると、鉄と炭とが接触し、炭よりも電気陰性度が低い鉄が酸化されて鉄イオンが溶出する。つづいてこの鉄イオンが焼酎滓或いは柑橘類の滓に含まれているキレート化剤と反応し、鉄キレートを形成する。
【0022】
鉄キレート発生材は、植物プランクトンの重要な栄養源である鉄イオンを持続的に供給する。かつ、生じた鉄イオンは鉄キレートを形成するので、凝集したり沈殿したりすることなく、イオン状態のまま安定に水中に存在する。このため、食物連鎖の基礎である植物プランクトンが鉄イオンを容易に摂取することができ、植物プランクトンの増殖が促される。植物プランクトンの増殖はこれを餌とする水中生物の増殖を促し又は活性化させ、結果として水質環境を改善させる。
【0023】
鉄キレート発生材に含まれる炭は、炭素を含有しているものであればよく、例えばコークス、黒鉛、木炭、竹炭、石炭等、種々の炭を用いることができる。炭素は鉄よりも電気陰性度が高いため、水中で鉄と接触するとすみやかに鉄を酸化させ、鉄イオンを溶出させる。
【0024】
鉄キレート発生材に含まれる鉄は、鉄原子を含有しているものであればよく、合金や酸化物であってもよい。したがって、例えば屑鉄等も用いることができる。
【0025】
鉄キレート発生材に含まれる炭及び鉄は、粒径の小さい粉粒体であることが好ましい。粒径の小さい粉粒体とすることで、鉄と炭との接触面積が大きくなり、鉄イオンの溶出が効率的に行われる。
【0026】
焼酎滓及び柑橘類の滓は粘性を備えており、炭と鉄とを成形する際にバインダーとしての機能を発揮する。また、焼酎滓及び柑橘類の滓には、鉄イオンと結合して鉄キレートを形成する成分であるキレート化剤が含まれている。
【0027】
焼酎滓は、焼酎の製造過程で生じる残渣である。通常、焼酎は、製麹、一次発酵、二次発酵、蒸留の工程を経て製造されている。まず、麦、サツマイモ、米等の原材料に麹菌を加えて培養し、麹がつくられる(製麹)。麹をタンク等で発酵させ、もろみがつくられる(一次発酵)。もろみの中へ上述した原材料を更に投入し、発酵させる(二次発酵)。二次発酵で生成した発酵液を蒸留し(蒸留)、焼酎が製造される。蒸留した後に残る残渣がいわゆる焼酎滓と呼ばれるものである。焼酎滓は、蒸留した残りの液体と固形物との混合体からなる。
【0028】
柑橘類の滓は、ミカン等、柑橘類の果実の絞り滓である。柑橘類の果実を原料として食品や飲料に加工する際に排出される滓が用いられる。
【0029】
焼酎滓及び柑橘類の滓は、海洋投棄や消却等で処分されており、廃棄物として処理に苦慮しているものであるが、これらの滓を鉄キレート発生材として有効的に再利用することができる。このため、これら廃棄物の処理コストも低減され、循環型社会形成の推進にも寄与することになる。
【0030】
本実施の形態に係る鉄キレート発生材は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを混練する。これを所定の形状に成形する。この成形体を炉等に入れて、所定条件下で焼成することによって、本実施の形態に係る鉄キレート発生材を製造することができる。
【0031】
本実施の形態に係る鉄キレート発生材において、炭は、鉄が十分に溶出される程度の量含まれていればよい。焼酎滓或いは柑橘類の滓は、鉄と炭とを混練して成形できる程度の量含まれていればよい。
【0032】
焼酎滓を用いる場合、鉄、炭及び焼酎滓の合計重量に対し、焼酎滓を2.5重量%以上配合し、鉄キレート発生材を形成するとよい。上記配合比であれば、鉄キレート発生材を形成することができる。より好ましくは、焼酎滓を2.5〜10重量%配合し、鉄キレート発生材を形成するとよい。上記配合比で形成することにより、機械的強度の高く、崩れにくい鉄キレート発生材とすることができ、施工場所までの運搬や施工時の取扱性に優れる。
【0033】
鉄キレート発生材の形状は特に限定されず、目的に応じて選択される。具体的な形状としては、例えば球体、立方体、円柱体等が挙げられる。できるだけ長期間に渡って鉄キレートを発生させようとする場合、体積に対する表面積の比ができるだけ小さい形状が望ましいことから、球体が好ましい。
【0034】
鉄キレート発生材の大きさは特に限定されず、目的に応じて選択される。例えば、同形状であるならば大きい程、体積に対する表面積の比が小さくなるため、長期間に渡って鉄キレートを発生させることができる。このような場合、鉄キレート発生材は使用上問題のない範囲でできるだけ大きい方が好ましい。
【0035】
次に、本実施の形態に係る鉄キレート発生材の使用方法について説明する。本実施の形態に係る鉄キレート発生材は、例えば河川、湖沼又は海の水中や底等に配置して用いられる。又は、水中に鉄キレート発生材をそのまま投入したり、川底や海底等に載置したりしてもよい。
【0036】
一例として、鉄キレート発生材を川底等に配置する場合について説明する。水質を改善したい範囲の川底に、多数の鉄キレート発生材を例えばマトリクス状に配置する。この際、鉄キレート発生材の配置は川底等が現れている時間帯或いは水深が浅くなっている時間帯に行うと、作業が容易であり好ましい。鉄キレート発生材の配置間隔は、鉄キレート発生材の大きさや形状によって適宜調節することができる。例えば、大きな鉄キレート発生材を用いる場合には、間隔を広めにして配置すればよい。なお、鉄キレート発生材の配置手法は上記に限定されるものではない。水質を改善したい範囲に鉄キレートを十分に行き渡らせることができる限りにおいて、鉄キレート発生材の配置は種々の形態をとり得る。
【0037】
鉄キレート発生材に含まれている焼酎滓或いは柑橘類の滓は、水と接触することにより徐々に分離していく。すると鉄と炭とが接触し、炭よりも電気陰性度が低い鉄が酸化されて、水中に鉄イオンが溶出する。本実施の形態に係る鉄キレート発生材では、焼酎滓或いは柑橘類の滓が徐々に分離していくにつれて逐次鉄と炭が接触するため、鉄イオンの溶出も徐々に起こる。このため、本実施の形態に係る鉄キレート発生材によれば、鉄イオンを長時間に渡って持続的に水中へと供給することができる。
【0038】
溶出した鉄イオンは水中で直ちに酸化されて酸化鉄となるため、鉄イオン単独の状態では長時間に渡って安定して存在することはできない。酸化鉄は凝集し、大きな塊として沈殿する。この状態では、植物プランクトンは鉄を摂取することができない。たとえ、植物プランクトンが酸化鉄を摂取したとしても、酸化鉄は細胞膜を通らないので、植物プランクトンは栄養源である鉄分を細胞内に取り込むことができない。したがって、鉄イオンを水中に溶出させるだけでは、植物プランクトンの増殖は望めない。
【0039】
ここで、本実施の形態に係る鉄キレート発生材は、焼酎滓或いは柑橘類の滓の分離に伴い焼酎滓或いは柑橘類の滓に含まれているキレート化剤をも水中に放出する。放出されたキレート化剤は鉄イオンと速やかに結合し、鉄キレートを生成する。鉄キレートは水中で安定に存在することができるため、植物プランクトンに摂取されやすい。鉄キレートが摂取されると、鉄分が栄養源として植物プランクトンの細胞内に取り込まれる。
【0040】
鉄分が栄養源として植物プランクトンの細胞内に取り込まれることで、植物プランクトンの増殖が促進される。植物プランクトンの増殖は、食物連鎖における第一消費者である動物プランクトンやその他の水中生物の増殖や活性化を促進する。その結果、ヘドロ等の浄化や水産資源の増加が促され、水質環境が改善される。
【0041】
また、水質環境が改善される結果、水生植物の増殖も促進される。これら水生植物や植物プランクトンは、光合成により酸素を排出し、二酸化炭素を消費する。このように、本実施の形態に係る鉄キレート発生材は、温室効果ガスとして地球温暖化の原因の1つに挙げられている二酸化炭素の減少にも寄与することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る鉄キレート発生材の他の使用方法として、例えば鉄キレート発生材を牡蠣や真珠貝等の貝類の養殖筏等に配置し、貝類の養殖に利用することが挙げられる。鉄キレート発生材を養殖筏等に配置することで、上述のように鉄キレートが生成し、植物プランクトンが栄養源として鉄分を効率よく摂取することができるようになる。この結果、植物プランクトンの増殖が促進される。この植物プランクトンは牡蠣や真珠貝等に餌として摂取される。すなわち、本実施の形態に係る鉄キレート発生材は、このような貝類の養殖にも効果的に用いることができる。
【0043】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明する。なお、これらの実施例は本発明の好適な例を示すものであって、本発明の範囲がこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
炭と鉄の粉粒体に種々の割合で焼酎滓を配合して鉄キレート発生材を形成し、それぞれ圧縮強度を測定した。
【0045】
炭と鉄の粉粒体として、アースリッチのパウダータイプ(日の丸産業株式会社製)を用いた。アースリッチのパウダータイプは、鉄の粉粒体と炭の粉粒体が重量比1:1で混合粉体である。
【0046】
炭と鉄の粉粒体に焼酎滓を加え、円柱体に成形した後に焼成した。円柱体は焼酎滓の配合量を変えて、円柱体1〜円柱体6の計6つ成形した。それぞれの円柱体は全て直径5cm、高さ5cm、重量100gである。焼酎滓の配合量は、炭、鉄、焼酎滓の全量に対し、0重量%、2.5重量%、3.75重量%、5重量%、7.5重量%、10重量%である。
【0047】
それぞれの円柱体を地面に置き、円柱体の上面に錘を載せてゆき、それぞれの円柱体の圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】


【0048】
焼酎滓を添加しなかった円柱体1では、錘を載せることなく、自己の自重により自然崩壊した。一方、焼酎滓を添加した円柱体2〜円柱体6では、自然崩壊することはなく、いずれも15kgの錘を載せるまで崩れることはなかった。このように、炭と鉄との粉粒体に焼酎滓を2.5〜10重量%配合して形成することで、機械的強度に優れ、取扱性に優れた鉄キレート発生材が得られることがわかった。また、炭と鉄との粉粒体に焼酎滓を5重量%添加した場合、最も機械的強度の高い鉄キレート発生材が得られることがわかる。
【実施例2】
【0049】
(鉄溶出実験)
本実施の形態に係る鉄キレート発生材を水中に入れ、鉄イオンの溶出実験を行った。
【0050】
炭と鉄の粉粒体及び焼酎滓を混練し、これを成形した後焼成して鉄キレート発生材を得た。炭と鉄の粉粒体として、アースリッチのパウダータイプ(日の丸産業株式会社製)を用いた。なお、アースリッチのパウダータイプは、鉄の粉粒体と炭の粉粒体が重量比1:1で混合されたものである。焼酎滓として、芋焼酎の製造過程で蒸留した際に残った残渣を用いた。焼酎滓は、アースリッチのパウダータイプ900gに対し、100gの割合で加えた。この鉄キレート発生材は、直径約17.5cm、高さ約11.5cmの円柱状で、重量は3kgであった。
【0051】
この鉄キレート発生材をバケツに1つ入れ、ここに蒸留水を5リットル加えて、鉄イオンを溶出させた。同じものを合計3つ用意し、同じ条件で実験を行った。
【0052】
溶出実験開始から所定の時間が経過するごとに、バケツの中から表面水を採取した。採取した表面水を濾過し、濾液中に存在する鉄イオン(溶存鉄)の濃度をフェナントロリン法等により測定した。
【0053】
フェナントロリン法(o−フェナントロリン法)は、第一鉄イオンとo−フェナントロリンとが反応して生成する錯塩の赤橙色を分光光度計にて比色し、濃度を求める方法である。また、第二鉄イオンについては、試料水に塩酸ヒドロキシルアミンを加えて第一鉄イオンに還元した後、同様の操作で定量した。なお、溶存鉄は濾過や塩酸酸性での煮沸など、前処理の組み合わせを利用して求めた。
【0054】
以下に具体的な測定手順を記す。まずバケツの中から表面水を12.5ml採取した。これを孔径0.45μmのフィルターで濾過した後、直ちに3N HClを5.0ml加えた。加熱して5分間沸騰させた後、30分室温において冷却した。少量の蒸留水で3回洗浄した後、50mlメスフラスコに移した。
【0055】
次に、塩酸ヒドロキシルアミン溶液を1.0ml加えた。この塩酸ヒドロキシルアミン溶液は、10gのNHOH・HClを蒸留水100mlに溶解して調製した。
【0056】
次に、1,10−フェナントロリン溶液を2.5ml加え、十分に混ぜた。この1,10−フェナントロリン溶液は、1,10−フェナントロリン(C12・HCl)0.12gを蒸留水100mlに溶かして調製した。
【0057】
次に、約2〜3mlの6N NHOHを加え、pH試験紙が黄色になるまで中和した。
【0058】
次に、緩衝液を2.5ml加えた。この緩衝液は、酢酸ナトリウム(CHCOONa)6.8gを約50mlの蒸留水に溶かし、これに酢酸(CHCOOH)2.88mlを加え、更に蒸留水を加えて100mlにすることで調製した。
【0059】
次に、蒸留水を加えて50mlとした。これを十分に攪拌した後、プラスチック容器に移しかえた。30分間放置し、発色させた。
【0060】
分光光度計を用い、520nmにおける吸光度を測定した。別途作成しておいた検量線を基に、反応液中に含まれる鉄の濃度を求めた。3つの試料について、全て同様の手順によって測定を行い、平均の溶存鉄濃度を算出した。以下、これをサンプル1として説明する。
【0061】
参考例として、焼酎滓を含まない鉄と炭の粉粒体の成形体(以下、鉄イオン溶出体と記す。)についても、上記と同様の実験を行い、溶存鉄濃度を算出した。鉄イオン溶出体は、アースリッチの練炭タイプ(日の丸産業株式会社製)をそのまま用いた。この鉄イオン溶出体の大きさ等は、上記の鉄キレート発生材と同様である。以下、これをサンプル2として説明する。
【0062】
図1に、サンプル1及びサンプル2を用いた場合の実験結果を示す。横軸が溶出実験日数、縦軸が溶存鉄濃度(ppm)である。サンプル1及びサンプル2ともに、鉄を継続して溶出していることがわかる。溶出実験開始から49日後の溶存鉄濃度は、サンプル1とサンプル2との間で大きな差は見られなかった。しかし、実験開始〜30日目ではサンプル1の方がサンプル2よりも溶存鉄濃度が高く、かつ安定した値を示した。これらの結果から、本実施の形態に係るキレート発生材である焼酎滓を含有するサンプル1の方が焼酎滓を含有しないサンプル2よりも速やかに鉄を溶出し、且つ、サンプル2よりも長期間に渡って安定した溶存鉄濃度を与えることが確認された。
【実施例3】
【0063】
(植物プランクトンの増殖実験1)
続いて、実施例2で得られた鉄イオン溶出液を用いて、植物プランクトンの増殖実験を行った。
【0064】
まず、植物プランクトンを培養する液体培地を用意した。本実施例においては、一般的な植物プランクトン用液体培地であるf/2液体培地から鉄分を除去した鉄なしf/2液体培地(以下、鉄なし液体培地と記す。)を用いた。この鉄なし液体培地の組成は、表1に示す組成の人工海水から鉄分であるFeCl・6HO(3.15mg/l)を除去したものである。
【表2】


【0065】
鉄なし液体培地に、実施例2におけるサンプル1の22日目のバケツ表面水(溶存鉄濃度 約21ppm)を溶存鉄の終濃度が0.53ppmとなるよう添加した。以下、これをサンプル3として説明する。
【0066】
上記サンプル3とは別に、鉄なし液体培地に実施例2におけるサンプル2の22日目のバケツ表面水(溶存鉄濃度 約19ppm)を溶存鉄の終濃度が0.65ppmとなるよう添加した。以下、これをサンプル4として説明する。
【0067】
上記サンプル3,4とは別に、鉄なし液体培地に塩化第二鉄(FeCl)を溶存鉄の終濃度が0.65ppmとなるよう添加した。以下、これをサンプル5として説明する。
【0068】
ねじ口試験管に入れた各サンプル5mlに、予め鉄なし液体培地で洗浄した植物プランクトン培養液を200μl添加した。各サンプルについて、蛍光光度計を用いて毎日1回蛍光光度(クロロフィルa蛍光強度)を測定した。植物プランクトンとして、珪藻(Thalassiosira weissflogii)を用いた。なお、実験中に鉄の添加は行なわなかった。
【0069】
結果を図2に示す。図2の縦軸はクロロフィルa蛍光強度であり、植物プランクトンの相対量を示している。すなわち、初期値に比べてクロロフィルa蛍光強度が高いほど植物プランクトンが活発に増殖しており、植物プランクトンの増殖促進効果が高いことを示している。
【0070】
サンプル3は、サンプル4やサンプル5に比べて初期の溶存鉄濃度はやや低いにもかかわらず、顕著な植物プランクトンの増殖促進効果が見られた。サンプル3は、本実施の形態に係る鉄キレート発生材から鉄を溶出させた水を用いたものである。本実施の形態に係る鉄キレート発生材は、植物プランクトンの増殖促進に高い効果を有することが確認された。
【0071】
サンプル3は焼酎滓を含有する鉄キレート発生材から鉄を溶出させた水を含んでいる。サンプル3の水中では、鉄イオンと焼酎滓に含まれているキレート化剤とが鉄キレートを生成していると考えられる。鉄キレートはキレートを形成していない鉄イオンに比べて長時間安定に水中に存在することができる。このためサンプル3の水中に含まれる鉄分は植物プランクトンに摂取されやすく、かつ植物プランクトンの細胞に取り込まれやすい。この結果、サンプル3では植物プランクトンの増殖が顕著に促進されたものと考えられる。
【0072】
一方、サンプル4及びサンプル5はサンプル3よりも初期の鉄濃度は高いにもかかわらず、植物プランクトンの増殖促進効果は低かった。これは、サンプル4及びサンプル5にも鉄キレーター(Na・EDTA)を含んでいるものの、その量が鉄キレートを形成するには十分ではなく、溶存鉄の一部が酸化鉄へと変化してしまったことによると考えられる。先に述べた通り、酸化鉄は凝集したり沈殿したりしやすいため、植物プランクトンが酸化鉄を摂取することは難しい。仮に植物プランクトンが酸化鉄を摂取したとしても、酸化鉄は細胞膜を通り抜けることができないため、植物プランクトンはこれを栄養分として利用することが出来ない。サンプル4及びサンプル5では植物プランクトンが摂取できる鉄イオンが少ないため、サンプル3に比べて植物プランクトンの増殖が少なくなったと考えられる。
【実施例4】
【0073】
(植物プランクトンの増殖実験2)
実施例3で用いた鉄なし液体培地には、人工の鉄キレーターであるNa・EDTAが含まれており、Na・EDTAの影響を無視できない。そこで、鉄キレーターなし培地を調整し、これを用いて植物プランクトンの増殖実験を行うことで、キレート化剤の有無の影響について検証を行った。
【0074】
塩化第二鉄、クエン酸、塩化第二鉄+クエン酸をそれぞれ添加して調製した液体培地を用い、植物プランクトンの増殖に対するクエン酸及び鉄イオンの影響について検証した。キレート化剤として、焼酎滓及び柑橘類の滓に含まれていると考えられるクエン酸(クエン酸ナトリウム)を用いた。
【0075】
実施例3における鉄なし液体培地から、更に「鉄キレーターなし液体培地」を調製した。この「鉄キレーターなし液体培地」は、鉄なし液体培地から天然に存在しない人工鉄キレーターであるNa・EDTA(4.36mg/l)を除去したものである。
【0076】
鉄キレーターなし液体培地に、塩化第二鉄を溶存鉄の終濃度が0.65ppmとなるよう添加した。以下、これをサンプル6として説明する。
【0077】
鉄キレーターなし液体培地に、終濃度が3.4g/lとなるようにクエン酸ナトリウムを添加した。以下、これをサンプル7として説明する。このクエン酸ナトリウムの濃度は、クエン酸ナトリウムを天然の鉄キレーターとして考えた場合に、鉄なし液体培地に含まれていたNa・EDTA(4.36mg/l)と同じ錯形成能を示す濃度に相当する。すなわちこれは、クエン酸ナトリウムが人工鉄キレーターNa・EDTAの代替物として機能するか否かを検証するために添加したものである。
【0078】
鉄キレーターなし液体培地に、塩化第二鉄とクエン酸ナトリウムを添加した。この際、溶存鉄の終濃度はサンプル6と、クエン酸ナトリウムの濃度はサンプル7とそれぞれ等しくなるようにした。以下、これをサンプル8として説明する。
【0079】
ねじ口試験管に入れた各サンプル5mlに、0.5mlの植物プランクトン培養液を添加した。植物プランクトンはあらかじめf/2液体培地で培養した後、遠心(8000rpm,5min)で集菌し、鉄なし液体培地で3回洗浄したものを用いた。植物プランクトンとして、珪藻(Thalassiosira weissflogii)を用いた。
【0080】
各サンプルを24℃の恒温室中で、12時間明条件・12時間暗条件で培養した。各サンプルについて、蛍光光度計を用いて毎日1回蛍光光度(クロロフィルa蛍光強度)を測定した。なお、途中でねじ口試験管は開封せず、鉄源やキレーターの添加も行わなかった。
【0081】
結果を図3に示す。クエン酸ナトリウムのみのサンプル7ではほとんど増殖が見られなかった。鉄が存在しない状況では植物プランクトンの増殖は起こらないことが確認された。
【0082】
塩化第二鉄を添加したサンプル6では、植物プランクトンがある程度増殖した。鉄イオンが凝集、沈殿する前に、植物プランクトンが鉄イオンを摂取し、増殖したことが伺える。
【0083】
一方、図3に示すように、塩化第二鉄とクエン酸ナトリウムの両者を添加したサンプル8では、サンプル7と比べて植物プランクトンの顕著な増殖が見られた。塩化第二鉄とクエン酸ナトリウムとの両者を添加することで、植物プランクトンの増殖を効果的に促進できることが確認された。
【0084】
実施例3及び本実施例の結果から、キレート化剤により鉄イオンが鉄キレートとしてイオン状態のまま培地中に存在し、この鉄イオンが栄養源として植物プランクトンに摂取されて、植物プランクトンの増殖が促進されたことがわかる。更に、焼酎粕に含まれているキレート化剤としては、その焼酎粕中に通常含まれているとされるクエン酸が、このキレート化剤の一つとして機能を発揮していると推測される。
【実施例5】
【0085】
(水質環境改善実験)
作成した鉄キレート発生材を河川に配置して、水質環境改善実験を行った。実験は広島県の太田川の支流である京橋川にて行った。
【0086】
2008年10月27日の干潮時、京橋川の水位が下がって底泥が現れている際に、鉄キレート発生材及び鉄イオン溶出体をそれぞれ配置した。
【0087】
図4に、鉄キレート発生材及び鉄イオン溶出体の配置箇所を示す。京橋川に架かる常葉橋(常盤橋)から河口側約250mの地点の14m×30mの長方形の区画(以下、区画A1と記す。)に、鉄キレート発生材を配置した。また、常葉橋から河口側約200m地点の14m×30mの長方形の区画(区画A2)に鉄イオン溶出体を配置した。
【0088】
鉄キレート発生材は、炭と鉄の粉粒体に焼酎滓を加えて混練し、2種類の形状に成形して焼成したものを用いた。炭と鉄の粉粒体として、アースリッチのパウダータイプ(日の丸産業株式会社製)を用いた。焼酎滓として、芋焼酎の製造過程で蒸留した際に残った残渣を用いた。焼酎滓は、アースリッチのパウダータイプ900gに対して100gの割合で添加した。なお、アースリッチのパウダータイプは、鉄の粉粒体と炭の粉粒体が重量比1:1で混合粉体である。
【0089】
鉄キレート発生材の形状は、直径約17.5cm、高さ約11.5cmの円柱状で重量が3kgのもの(以下、鉄キレート発生材L11Lと記す。)と、縦約5cm、横約5cm、最厚部4cmの豆炭状で重量100gのもの(以下、鉄キレート発生材S11Sと記す。)の2種類とした。
【0090】
図5に示すように、区画A1の外周に、鉄キレート発生材L11Lを2m間隔で44個配置した。そして、区画A1の内側に鉄キレート発生材S11Sを300個、満遍なく配置した。
【0091】
鉄イオン溶出体は、直径約17.5cm、高さ約11.5cmの円柱状で重量が3kgのアースリッチ練炭タイプ(日の丸産業株式会社製、以下、鉄イオン溶出体L12Lと記す。)と、縦約5cm、横約5cm、最厚部4cmの豆炭状で重量100gのアースリッチブリケットタイプ(日の丸産業株式会社製、以下、鉄イオン溶出体S12Sと記す。)の2種類とした。なお、アースリッチ練炭タイプ及びアースリッチブリケットタイプは、いずれも鉄と炭とが1:1の重量比で含まれている。
【0092】
鉄イオン溶出体についても鉄キレート発生材と同様、図5に括弧書で示すように、区画A2の外周に鉄イオン溶出体L12Lを2m間隔で44個配置し、区画A2の内側に鉄イオン溶出体S12Sを300個、満遍なく配置した。
【0093】
上記のように、区画A1(鉄キレート発生材配置箇所)と区画A2(鉄イオン溶出体配置箇所)とを離間して配置したのは、両区画が接近し過ぎると、区画A1における鉄キレート発生材の効果が、区画A2にも現れてしまう恐れがあるためである。また、鉄キレート発生材を川下側に配置し、鉄イオン溶出体を川上側に配置したのは、川上側に鉄キレート発生材を配置し、川下側に鉄イオン溶出体を配置すると、水の流れによって鉄キレート発生材の効果が川下側の鉄イオン溶出体を配置した箇所にも現れる恐れがあるためである。
【0094】
本水質環境改善実験は川で行ったものであり、水が常に流れているため水を採取し分析しても水質改善の効果は評価できない。そこで、本実施の形態に係る鉄キレート発生材によって水質が改善されたか否かは、各区画の底質(底泥)の改善度合いを評価することによって行った。
【0095】
底質の改善は、底泥を採取して、強熱減量(IL:Ignition Loss)を算出し、この強熱減量の変化によって評価した。強熱減量ILは下記の式により算出される。
IL(%)={(A−B)/A}×100
上記式中、Aは湿泥約5gを110℃で12時間乾燥して計量した乾重量(g)を表し、また、Bは乾燥させた湿泥を600℃で3時間熱し有機物を燃焼させた後に計量した重量(g)を表す。
【0096】
底質を強熱すると底質に含まれている有機物が燃焼する。このため、有機物などを多く含む底質ほど、大きな重量減少を示す。この減量割合(%)が強熱減量であり、底質中に含まれる全有機物の割合を知る上での指標とされている。一般に、水質環境が悪化すると底質中に含まれる有機物や沈殿物が増加するため、強熱減量は大きくなる。逆に水質環境が改善されると底質中に含まれる有機物や沈殿物が減少するため、強熱減量は小さくなる。
【0097】
鉄キレート発生材及び鉄イオン溶出体の設置日(2008年10月27日)に、区画A1及び区画A2それぞれの中心部の湿泥を採取し、強熱減量を算出した。80日経過後(2009年1月17日)、同様に区画A1及び区画A2のそれぞれの中心部の湿泥を採取し、強熱減量を算出した。
【0098】
表3に、設置日及び80日経過後のそれぞれの底泥の強熱減量を示す。
【表3】


【0099】
表3から分かるように、鉄イオン溶出体を配置した区画A2における設置日から80日経過後の底泥の強熱減量は設置日に比べて増加している。これは区画A2では有機物や沈殿物がむしろ増加しており、ヘドロ等を浄化できていないことを示している。すなわち、鉄イオン溶出体が配置された区画A2では水質環境が改善されていないことが分かった。
【0100】
一方、鉄キレート発生材を用いた区画A1における80日経過後の底泥では、設置日に比べて強熱減量が低下している。強熱減量の低下は、有機物や沈殿物の減少、即ちヘドロ等が浄化されて減少したことを意味する。このように、本実施の形態に係る鉄キレート発生材によれば水質環境の改善が実現できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明に係る鉄キレート発生材は水中に配置することで持続して鉄イオンとキレート化剤とを水中に放出する。鉄イオンとキレート化剤とは接触して鉄キレートを生成するため、鉄イオンは水中に長時間安定した状態で留まることができる。この鉄キレートは植物プランクトンに栄養源として摂取されやすく、植物プランクトンの増殖を促進する。植物プランクトンの増殖は、植物プランクトンを餌とする水中生物の活性化にも繋がる。この結果、河川、湖沼又は海辺等の水質環境の改善が期待される。さらに、本発明に係る鉄キレート発生材は植物プランクトンを餌とする貝類の養殖にも利用可能である。
【符号の説明】
【0102】
11L 鉄キレート発生材L
11S 鉄キレート発生材S
12L 鉄イオン溶出体L
12S 鉄イオン溶出体S

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、
前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成され、
水中で前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出し、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤により鉄キレートを生成する、
ことを特徴とする鉄キレート発生材。
【請求項2】
前記焼酎滓を2.5〜10重量%配合して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄キレート発生材。
【請求項3】
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成された鉄キレート発生材を河川、湖沼又は海の水中又は底に設置して、
前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出させ、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤とで鉄キレートを生成させて植物プランクトンの増殖を促進する、
ことを特徴とする鉄キレート発生材の使用方法。
【請求項4】
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成された鉄キレート発生材を水質の悪化した河川、湖沼又は海の水中又は底に設置して、
前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出させ、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤とで鉄キレートを生成させ、
前記鉄キレートを植物プランクトンに摂取させて前記植物プランクトンの増殖を促進し、悪化した水質を改善する、
ことを特徴とする鉄キレート発生材の使用方法。
【請求項5】
鉄と炭と焼酎滓或いは柑橘類の滓とを含有し、前記鉄と前記炭とが前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓によって一体的に形成された鉄キレート発生材を貝類の養殖筏に設置して、
前記鉄と前記炭との接触により鉄イオンを溶出させ、前記鉄イオンと前記焼酎滓或いは前記柑橘類の滓に含まれているキレート化剤とで鉄キレートを生成させて植物プランクトンの増殖を促進する、
ことを特徴とする鉄キレート発生材の使用方法。
【請求項6】
前記焼酎の滓を2.5〜10重量%配合して形成された前記鉄キレート発生材を用いる、
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の鉄キレート発生材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−242075(P2010−242075A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61416(P2010−61416)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】