説明

鉄心形リアクトル

【課題】ブロック鉄心における磁性鋼板の積層方向の両端部における磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる鉄心形リアクトルを提供する。
【解決手段】複数のブロック鉄心1をそれぞれギャップ2を介して垂直方向に積重ねて構成した鉄心脚3にコイル5を巻回した鉄心形リアクトルにおいて、ブロック鉄心1は、磁性鋼板11aを水平方向に積層した第1ブロック鉄心11と、第1ブロック鉄心11の磁性鋼板11aの積層方向の両端に当接して設けられ、平面視、磁性鋼板12aを放射状に積層した半円形の第2ブロック鉄心12とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のブロック鉄心をそれぞれギャップを介して垂直方向に積重ねて構成した鉄心脚にコイルを巻回してなる鉄心形リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鉄心構造としては、鉄心ブロックを、その中央部に厚鉄板を積層し、その両端に薄鉄板を略円形となるように積層配置した構造が知られている(特許文献1、第(3)頁、図4参照)。
【0003】
従来の鉄心形リアクトルによれば、中央部に低廉な厚鉄板を用いることで経済的となるが、薄鉄板を積層した両端には、この薄鉄板の板面が臨むように配置される。
【0004】
ここで、磁性鋼板は、板面を介した磁束の出入りにより磁束の渦流損が発生し、この部分の温度上昇に繋がることが知られている。そのため、複数のブロック鉄心をそれぞれギャップを介して垂直方向に積重ねた場合には、かかる板面を介した漏れ磁束の出入りにより磁束の渦流損が発生し、この部分の温度上昇に繋がるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−101029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、ブロック鉄心における磁性鋼板の積層方向の両端部における磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる鉄心形リアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の鉄心形リアクトルは、
複数のブロック鉄心をそれぞれギャップを介して垂直方向に積重ねて構成した鉄心脚にコイルを巻回してなる鉄心形リアクトルにおいて、
前記ブロック鉄心は、
磁性鋼板を水平方向に積層した第1ブロック鉄心と、
前記第1ブロック鉄心の磁性鋼板の積層方向の両端に当接して設けられ、平面視、磁性鋼板を放射状に積層した半円形の第2ブロック鉄心と
を備えることを特徴とする。
【0008】
第1発明の鉄心形リアクトルによれば、磁性鋼板を水平方向に積層した第1ブロック鉄心は、その両端部に磁性鋼板の板面が臨むように配置されるが、両端部以外は、磁性鋼板の板面が臨むことなく、第1ブロック鉄心全体として、磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0009】
また、第1ブロック鉄心の両端部には、第2ブロック鉄心が、磁性鋼板が平面視放射状に積層される。そのため、第1ブロック鉄心の両端に臨む磁性鋼板の板面を第2ブロック鉄心の磁性鋼板で覆うことができると共に、磁性鋼板を放射状に積層することで磁性鋼板の板面が端部に出現することを回避することができる。
【0010】
さらに、単に円柱形の鉄心脚を複数配置した場合には、占有率が低下することが懸念されるが、本発明の鉄心形リアクトルによれば、角柱形の第1ブロック鉄心を基本として占有率を高めることができると共に、第2ブロック鉄心により端部に磁性鋼板の板面が臨むことで生じる漏れ磁束の渦流損およびこれによる温度上昇を抑制することができる。
【0011】
これにより、ブロック鉄心における磁性鋼板の積層方向の両端部における磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0012】
第2発明の鉄心形リアクトルは、第1発明において、
前記第2ブロック鉄心は、平面視、円形となるように磁性鋼板を放射状に積層したコアを分割して形成されることを特徴とする。
【0013】
第2発明の鉄心形リアクトルによれば、平面視、磁性鋼板を放射状に積層した半円形の第2ブロック鉄心を、円形となるように磁性鋼板を放射状に積層したコアを分割することで、簡易に形成することができ、磁性鋼板の板面が端部に出現することを回避し、ブロック鉄心における磁性鋼板の積層方向の両端部における磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0014】
第3発明の鉄心形リアクトルは、第1または第2発明において、
前記第1ブロック鉄心と前記第2ブロック鉄心とが異種材料で構成されることを特徴とする。
【0015】
第3発明の鉄心形リアクトルによれば、第1ブロック鉄心と第2ブロック鉄心と異種材料で構成することができる。
【0016】
第1ブロック鉄心の両端に配置される第2ブロック鉄心では、磁性鋼板が放射状に積層した場合でも、その積層間隔から第1ブロック鉄心に比して、磁束の渦流損が生じ得る。そのため、例えば、第2ブロック鉄心を第1ブロック鉄心に比して、磁束の渦流損の少ない材料とすることで、ブロック鉄心における磁性鋼板の積層方向の両端部における磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0017】
なお、磁性鋼板の厚さ等から、第1ブロック鉄心における磁束の渦流損が第2ブロック鉄心に比して大きい場合には、第1ブロック鉄心を第2ブロック鉄心に比して磁束の渦流損の少ない材料としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】鉄心形リアクトルの構成を示す全体構成図。
【図2】ブロック鉄心の構成を示す説明図。
【図3】ブロック鉄心間における漏れ磁束の様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本実施形態の鉄心形リアクトルについて説明する。なお、図1(a)は、鉄心形リアクトルの正面図であり、図1(b)は、鉄心形リアクトルの側面図である。
【0020】
鉄心形リアクトルは、複数のブロック鉄心1と、ブロック鉄心1をそれぞれギャップ2を介して垂直方向に積重ねて構成した鉄心脚3とを備える。
【0021】
ブロック鉄心1は、図1(b)に示すように、正面側から背面側に伸びるブロックであって、ギャップ2は、ブロック鉄心1の上下に絶縁性のギャップ部材が挟み込まれることにより形成される。
【0022】
このようにして、複数のブロック鉄心1をギャップ2を介して垂直方向に積み重ねて構成した鉄心脚3は、これを挟むように上下のヨーク鉄心4が配置されている。
【0023】
そして、本実施形態の鉄心形リアクトルは、鉄心脚3にコイル5を巻回してなるリアクトル本体6から構成され、リアクトル本体6は必要に応じて図示しない筐体内に収納される。
【0024】
次に、図2を参照して、ブロック鉄心1の構成について詳しく説明する。
【0025】
ブロック鉄心1は、第1ブロック鉄心11と、第1ブロック鉄心11の両端に配置された第2ブロック鉄心12とを備える。
【0026】
第1ブロック鉄心11は、磁性鋼板11aを水平方向に積層した構造である。
【0027】
第2ブロック鉄心12は、第1ブロック鉄心11の磁性鋼板11aの積層方向の両端に当接して設けられ、平面視、磁性鋼板12aを放射状に積層した半円形の鉄心である。
【0028】
より詳細には、第2ブロック鉄心12は、その分割断面が、第1ブロック鉄心11の磁性鋼板11aの板面と等しい、平面視、円形となるように磁性鋼板を放射状に積層したコア(例えば、ラジアルコア)を分割してなる。
【0029】
また、第1ブロック鉄心11と第2ブロック鉄心12との当接部分の中心には、垂直方向に貫通孔13が形成されており、貫通孔13を介して隣接するブロック鉄心同士を、図示しない締付スタッド等により固定してもよい。なお、ブロック鉄心同士の固定方法はこれに限定されるものではなく、貫通孔13を用いずに固定するようにしてもよい。
【0030】
かかる構成による鉄心形リアクトルによれば、磁性鋼板11aを水平方向に積層した第1ブロック鉄心11は、その両端部に磁性鋼板の板面が臨むように配置されるが、両端部以外は、磁性鋼板11aの板面が臨むことなく、第1ブロック鉄心11全体として、磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0031】
さらに、第1ブロック鉄心11の両端部には、第2ブロック鉄心12が、磁性鋼板12aが平面視放射状に積層されているため、第1ブロック鉄心11の両端に臨む磁性鋼板11aの板面を第2ブロック鉄心12の磁性鋼板12aで覆うことができると共に、磁性鋼板12aを放射状に積層することで磁性鋼板12aの板面が端部に出現することを回避することができる。
【0032】
これにより、図3(a)に模式的に示すように、第1ブロック鉄心11および第2ブロック鉄心12の磁性鋼板11aおよび磁性鋼板12aの板面が、これらの端部に臨むことがない。そのため、図3(b)に模式的に示す、従来のブロック鉄心のように、ブロック鉄心の端部に磁性鋼板の板面が臨むことで生じる漏れ磁束の渦流損およびこれによる温度上昇を抑制することができる。
【0033】
さらに、単に円柱形の鉄心脚(例えばラジアルコアを積層した鉄心脚)を複数配置した場合には、占有率が低下することが懸念されるが、本実施形態の鉄心形リアクトルによれば、角柱形の第1ブロック鉄心11を基本として占有率を高めることができると共に、第2ブロック鉄心12により端部に磁性鋼板の板面が臨むことで生じる漏れ磁束の渦流損およびこれによる温度上昇を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施形態において、第1ブロック鉄心11と第2ブロック鉄心12とは、異種材料で構成しても、同種材料で構成してもよい。第1ブロック鉄心11の両端に配置される第2ブロック鉄心12では、磁性鋼板12aが放射状に積層した場合でも、その積層間隔から第1ブロック鉄心11に比して、磁束の渦流損が生じ得る。そのため、例えば、第2ブロック鉄心12を第1ブロック鉄心11に比して、磁束の渦流損の少ない材料とすることで、ブロック鉄心1における磁性鋼板の積層方向の両端部における磁束の渦流損を低減し、温度上昇を抑制することができる。
【0035】
一方、例えば、第1ブロック鉄心11の磁性鋼板11aの厚さを、第2ブロック鉄心12の磁性鋼板12aの厚さに比して大きくした場合などには、第1ブロック鉄心11における磁束の渦流損が第2ブロック鉄心12に比して大きくなるため、第1ブロック鉄心11を第2ブロック鉄心12に比して磁束の渦流損の少ない材料としてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、乾式の鉄心形リアクトルについて説明したが、リアクトル本体6を絶縁および冷却媒体としての油と共に筐体内に収納した油入鉄心リアクトルであってもよい。
【符号の説明】
【0037】

1…ブロック鉄心、2…ギャップ(ギャップ部材)、3…鉄心脚、4…ヨーク鉄心、5…コイル、6…リアクトル本体、11…第1ブロック鉄心、11a…磁性鋼板、12…第2ブロック鉄心、12a…磁性鋼板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロック鉄心をそれぞれギャップを介して垂直方向に積重ねて構成した鉄心脚にコイルを巻回してなる鉄心形リアクトルにおいて、
前記ブロック鉄心は、
磁性鋼板を水平方向に積層した第1ブロック鉄心と、
前記第1ブロック鉄心の磁性鋼板の積層方向の両端に当接して設けられ、平面視、磁性鋼板を放射状に積層した半円形の第2ブロック鉄心と
を備えることを特徴とする鉄心形リアクトル。
【請求項2】
請求項1記載の鉄心形リアクトルにおいて、
前記第2ブロック鉄心は、平面視、円形となるように磁性鋼板を放射状に積層したコアを分割して形成されることを特徴とする鉄心形リアクトル。
【請求項3】
請求項1または2記載の鉄心形リアクトルにおいて、
前記第1ブロック鉄心と前記第2ブロック鉄心とが異種材料で構成されることを特徴とする鉄心形リアクトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204745(P2012−204745A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69913(P2011−69913)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000242127)北芝電機株式会社 (53)