鉄道車両の転倒防止装置
【課題】軌道上を走行又は停止している鉄道車両の転倒防止を図ることができ、既存の軌道施設及び鉄道車両にも適用可能な鉄道車両の転倒防止装置を提供する。
【解決手段】軌道52のレール51に沿って敷設された軌道側ストッパ22と、鉄道車両11に設けられた車両側ストッパ23とを備え、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とは、車両11が一定角度以上傾斜したときに車両側ストッパ22と軌道側ストッパ23とが係合又は当接する位置に設けられ、両者が係合又は当接することによって鉄道車両11の転倒を防止する。
【解決手段】軌道52のレール51に沿って敷設された軌道側ストッパ22と、鉄道車両11に設けられた車両側ストッパ23とを備え、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とは、車両11が一定角度以上傾斜したときに車両側ストッパ22と軌道側ストッパ23とが係合又は当接する位置に設けられ、両者が係合又は当接することによって鉄道車両11の転倒を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の転倒防止装置に関し、詳しくは、軌道上を走行する車両に地震や突風等の横荷重がかかったときに車両の転倒を防止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や突風等の天災によって鉄道車両が脱線したときに、車両を枕木のある道床や路盤等の上を走行するように案内して車両の転倒を防止するための装置として、脱線時に軌道(レール)に接触して車両が幅方向に変位しないように拘束するストッパ装置やガイド部を車体に設けた転倒防止装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、レールの両側に転倒防止用側壁を延在させて鉄道車両の転倒を防止することも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平10−250576号公報
【特許文献2】特開2006−44355号公報
【特許文献3】特開2005−76392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1,2に記載された転倒防止装置では、脱線後の鉄道車両が軌道から大きく外れないように規制して鉄道車両の転倒を防止するものであるから、地震や突風あるいは速度超過で曲線に進入したときの遠心力のような横方向の荷重が軌道上の車両にかかり、脱線せずに転倒するおそれがある場合には対応できない。また、特許文献3に記載されたように、レールの両側に転倒防止用側壁を延在させる方法は、鉄道車両の転倒を防止する点では有効であるが、設置や保守に要するコストが極めて多大なものとなり、さらに、既存の施設に追加することは極めて困難である。
【0004】
そこで本発明は、軌道上を走行している車両の転倒防止だけでなく、例えばカントの大きな位置で停止中の車両の転倒防止も図ることができ、既存の軌道施設及び鉄道車両にも適用可能な鉄道車両の転倒防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第1の構成は、軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道のレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車両が一定角度以上傾斜したときに車両側ストッパと軌道側ストッパとが係合する位置にそれぞれ配設されていることを特徴としている。
【0006】
上記第1の構成における前記軌道側ストッパは、前記軌道に固着される基部取付片と、該基部取付片からレール上面より上方位置で車両限界を侵さない範囲に立ち上がった立上片と、該立上片の上端部から軌道外方向又は内方向に向かって屈曲した係合片とを有し、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記係合片の近傍で、レール上面より高位置に突出した係合腕と、該係合腕の突出端から前記係合片の下方に向かって屈曲した係合部とを有し、車両の傾斜時に前記係合片の下面と係合部の上面とが係合可能な位置に設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第2の構成は、軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道の外側にレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両の車輪より外側位置に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車両が一定角度以上傾斜したときに、傾斜方向側の車両側ストッパが軌道側ストッパに当接する位置に配設されていることを特徴としている。
【0008】
上記第2の構成における前記軌道側ストッパは、車両限界を侵さない高さの上面に当接面を有しており、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記当接面の近傍で、レール上面より高位置に突出した当接腕とを有し、車両の傾斜時に前記当接面と当接腕とが当接可能な位置に設けられていることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第3の構成は、軌道上に停止した鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記鉄道車両の車輪より外側位置に、短縮時にはシリンダロッド先端が車両限界内に納まり、伸張時にはシリンダロッド先端が軌道に当接するシリンダを設けたことを特徴とし、また、前記シリンダが台車の軸箱部分に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第1,第2の構成によれば、地震や突風などによって車両に横方向の荷重がかかり、車両が傾斜したときに、軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合又は当接することにより、車両がそれ以上傾斜することを防止する。また、第3の構成では、車両停止中にシリンダを伸張作動させてシリンダロッド先端を軌道の枕木や道床に当接させておくことにより、横方向の荷重に対する安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図7は、本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第1形態例を示すもので、図1は正面図、図2は要部の側面図、図3は一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合した状態を示す正面図、図4は正常時の車体の状態を示す正面図、図5は一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合したときの車体の傾斜状態を示す正面図、図6は反傾斜方向側の軸箱支持装置が最も下降したときの車体の傾斜状態を示す正面図、図7は傾斜方向側の空気バネがパンクしたときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【0012】
鉄道車両11は、左右一対のレール51を有する軌道52上を走行するもので、車体12の前後には、レール51にガイドされながら回転する車輪13を備えた台車14がそれぞれ設けられている。軌道52は、バラストで枕木を保持したバラスト軌道や、鉄筋コンクリートからなるスラブ軌道等が多用されている。
【0013】
本形態例に示す台車14は、台車枠15に設けた左右一対の空気バネ16からなるまくらばねによって車体12を支持するとともに、台車枠15と車体12とをけん引装置17により連結したボルスタレス台車であって、前記車輪13を両端部に有する輪軸18の両端が軸箱19に回転可能に保持され、軸箱19は、軸ばね20a等を有する軸箱支持装置20を介して台車枠15に保持されている。
【0014】
転倒防止装置21は、軌道側に設けられた軌道側ストッパ22と、車両側に設けられた車両側ストッパ23とを備えている。軌道側ストッパ22は、レール51の外側に、レール51に対して一定の間隔で平行な方向に連続的に敷設されるものであって、軌道52に固着される基部取付片22aと、該基部取付片22aからレール51の上面より上方位置まで立ち上がった立上片22bと、該立上片22bの上端部から軌道外方向に向かって屈曲した係合片22cと、補強片22dとを有する略Z字状に形成されており、前記基部取付片22aが、締結装置53によってレール51と一緒に軌道52を構成する枕木や路盤に共締めされている。したがって、レールの両側に転倒防止用側壁を延在させる従来の方法に比べて低コストで設置することができ、保守も容易である。
【0015】
車両側ストッパ23は、前記軸箱支持装置20の下部にボルト24等で取り付け固定される取付基部23aと、該取付基部23aから前記軌道側ストッパ22の係合片22cの近傍まで突出した係合腕23bと、該係合腕23bの突出端から前記係合片22cの下方に向かって内側に屈曲した係合部23cとを有する略コ字状に形成されている。
【0016】
軌道側ストッパ22の最上端の位置、通常は係合片22cの上面部分の位置は、軌道側ストッパ22を敷設した軌道52を走行する各種車両と接触しないことが絶対的な条件となり、車輪13の削正で車輪径が小さくなり、台車14や車体12が下がったときでも、例えば、車輪13の直径範囲が860mm〜790mmの場合は、最大約35mm下がった場合でも、台車14の構成部品や車体12の床下に取り付けられた機器に軌道側ストッパ22が接触しない高さ以下にあるように設定する。
【0017】
一方、車両側ストッパ23の最下端の位置、通常は係合部23cの下面部分の位置は、車両11がポイント部分を走行するときなどにレール51と接触しないことが絶対的な条件となり、車輪13の削正で車輪径が小さくなり、車両側ストッパ23が下がった状態になっても、レール51の上面より車両側ストッパ23が高位置にあるように設定する。
【0018】
なお、車両側ストッパ23の最下端がレール51の上面より高位置にある場合でも、車両限界Sを超え、建築限界Tを侵すこともあるが、例えば、サードレール(第三軌条)集電方式における集電靴(コレクターシュー)のように、軌道側の構造と一体的な設備機器と考えれば、通常の車両走行にはまったく問題はない。
【0019】
また、軌道側ストッパ22の係合片22cと車両側ストッパ23の係合部23cとの相互の位置関係は、通常の走行時や停止時には、係合片22cの下面と係合部23cの上面とが接触せず、所定の間隔が開くように設定されており、突風等による横方向の荷重で車両11が大きく傾斜したり、地震の揺れで車両11が大きく傾斜したり、軌道52に対して車両11が大きく上下動したりした場合などで、車輪13がレール51から浮き上がったときに、係合片22cの下面と係合部23cの上面とが接触して係合するように設定されている。
【0020】
例えば、図3に示すように、図3において左側の車輪13がレール51から所定量浮き上がったときに、左側のレール51に沿って設けられた軌道側ストッパ22の係合片22cと車両側ストッパ23の係合部23cとが係合し、車輪13がそれ以上レール51から浮き上がるのを防止するように、係合片22cと係合部23cとの位置関係が設定されている。
【0021】
このように、車輪13がレール51から所定量浮き上がったときに、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とが係合することにより、レール51からの車輪13の浮き上がりが規制され、台車14が大きく傾斜することが防止されて車両11が転倒することが防止される。さらに、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とは、係合片22cの突出端(外端)と車両側ストッパ23の係合腕23bの内側、係合部23cの突出端(内端)と軌道側ストッパ22の立上片22bの外面とが対向する位置にあることから、軌道53に対する台車14の横移動も規制され、脱線も防止されることになる。
【0022】
また、前記空気バネ16のストロークや軸箱支持装置20の移動範囲、輪軸18の傾斜角度に対する台車14及び車体12の傾斜角度を考慮することにより、車両11の転倒だけでなく、車体12の傾斜に起因する二次災害も防止できる。すなわち、図4に示すように、通常走行時には、車輪径に関係なく車体12や台車14は一部を除いて車両限界S内に納まっている。この状態で突風による横風を受け、図5に示すように、車両全体が風下側(図5の左方向)に傾斜して風上側にある車輪13がレール51から浮き上がったときには、風上側にある反傾斜側の軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とが係合して車両11の傾斜を抑えるので、傾斜した車体12が車両限界Sを僅かに超えるだけとなる。
【0023】
さらに、図6に示すように、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とが係合した状態で、軸箱支持装置20が、その移動範囲内で台車枠15から最も下降して車体12から離れた状態になるまで台車14及び車体12が傾斜しても、傾斜した車体12が車両限界Sを大きく超えることはない。また、図7に示すように、図6の状態から傾斜側の空気バネ16がパンクして台車14に対して車体12が大きく傾いた場合でも、車体12が建築限界Tを超えることはほとんどなく、このような傾斜状態で走行したとしても、車体12が建造物に衝突して破壊されることがなく、建造物との衝突による二次災害を回避することができる。
【0024】
軌道側ストッパ22は、地震や突風、その他の様々な横方向の荷重を考慮すると、車両11の走行に支障を来すポイント部分を除いて全線の両側に設置することが望ましいが、例えば突風による車両11の転倒を防止するためならば、橋梁部分、築堤部分、曲線のカントが大きい部分等の軌道に重点的に設置すればよく、トンネル内のように風の影響がほとんど無い部分や、防音壁に囲まれた部分のように風の影響が有っても小さい部分への設置を省略するようにしてもよい。また、季節風を考慮すれば、主として風上側にのみ設けることも可能である。
【0025】
さらに、軌道側ストッパ22の敷設位置や固定方法は任意に選択することができるが、前述のように、軌道側ストッパ22をレール用の締結装置53によってレール51と共締めすることにより、従来から使用されている枕木等をそのまま利用することができ、専用の取付金具等も不要となり、軌道側ストッパ22の敷設を、レール51の敷設、交換と同時に行うことができる。また、車両側ストッパ23を車輪13と共に上下動する軸箱19の部分に設けることにより、レール51から車輪13が浮き上がったときに、車両側ストッパ23を軌道側ストッパ22に確実に係合させることができる。
【0026】
なお、係合片22cと係合部23cの突出方向は逆方向であってもよく、係合する面が水平方向でなくてもよい。
【0027】
図8及び図9は、本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第2形態例を示すもので、図8は正面図、図9は一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが当接した状態を示す正面図である。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した各構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
本形態例に示す転倒防止装置は、軌道52のレール51の外側に沿ってレール51と平行に敷設された軌道側ストッパ31と、車両11の車輪13より外側で、前記軌道側ストッパ31に対応するように設けられた車両側ストッパ32とを備えている。
【0029】
軌道側ストッパ31は、上面にレール面と略平行な平面からなる当接面31aを有しており、軌道52の枕木や路盤に適宜な固定手段によって固設されている。この軌道側ストッパ31は、上面に当接面31aを備えていれば下部形状は任意であり、H形鋼、溝形鋼、ハット形鋼、Z形鋼、レール等を使用することが可能で、前記同様に締結装置53によってレール51と共締めできる形状とすることも可能である。また、当接面31aの高さは、前記同様に、車両限界Sを侵さない範囲に設定され、軌道52を走行する各種車両に接触しない高さ以下、好ましくは建築限界を超えない範囲に設定する。
【0030】
また、車両側ストッパ32は、軸箱支持装置20の下部にボルト24等で取り付け固定される取付基部32aと、該取付基部32aから前記軌道側ストッパ31の当接面31aの近傍まで突出した係合腕32bとを有しており、該係合腕32bの突出端下面が、車両11が傾斜したときに前記当接面31aに当接する当接部32cとなっている。この車両側ストッパ32においても、前記同様に、ポイント走行時等にレール51と接触しないように、下端の前記当接部32cがレール51の上面より高い位置、好ましくは車両限界Sを超えない範囲に設定する。
【0031】
軌道側ストッパ31の当接面31aと車両側ストッパ32の当接部32cとの相互の位置関係は、図8に示すように、通常の走行時や停止時には当接面31aと当接部32cとが接触せず、図9に示すように、横方向の荷重によって車両11が図において左側に傾斜し、右側の車輪13がレール51から所定量浮き上がったときに、傾斜方向側である左側の当接面31aに当接部32cが当接するように設定されている。
【0032】
これにより、傾斜方向への回動中心が車輪13とレール51との接触部から、当接面31aと当接部32cとの当接部に移動するので、車両11の重心に対して回動中心が離れた位置になり、車両11の転倒を防止することができる。また、車両11が脱線した場合は、車輪13を軌道側ストッパ31がガイドして台車14の横移動を規制することができる。
【0033】
したがって、本形態例に示す転倒防止装置においても、前記第1形態例で示した転倒防止装置と同様の作用効果を得ることができ、地震や突風、その他の様々な横方向の荷重によって車両11が転倒することを防止できる。また、本形態例の転倒防止装置は、軌道側ストッパ31を建築限界Tの範囲内、車両側ストッパ32を車両限界の範囲内に設置可能であるというメリットも有している。
【0034】
なお、軌道側ストッパ31の当接面31aは水平方向でなくてもよく、係合腕32bの突出方向は任意であるが、本形態例に示すように、下向きにレール51から離れる方向に突出させることにより、レール51から離れた位置に当接部32cを配置できるので、転倒防止効果を更に向上させることができる。
【0035】
図10及び図11は、本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第3形態例を示すもので、図10は正面図、図11は要部の側面図である。
【0036】
本形態例に示す転倒防止装置は、車両11の車輪13より外側位置に上下方向に作動するシリンダ41を設けたものであって、該シリンダ41のシリンダロッド42を伸張させることにより車両11の転倒を防止するようにしている。
【0037】
シリンダ41は、台車14の軸箱支持装置20の下部にボルト43で固定されたブラケット44に保持されており、短縮時にはシリンダロッド42の先端42aを含めてシリンダ41の全体が車両限界Sの範囲内に納まる状態となっている。シリンダロッド42の伸張長さは、図10に想像線で示すように、シリンダロッド42を伸張させたときに、シリンダロッド先端42aが軌道52を構成する枕木やバラスト、スラブ等に当接するように設定されている。
【0038】
したがって、車両停止時にシリンダロッド42を伸張させておくことにより、車両11に大きな横方向の荷重が作用したときの車体傾斜方向の回動中心が、通常の車輪13とレール51との接触部からシリンダロッド先端42aの部分に移動するため、車両11の重心に対して回動中心が離れた位置になり、横方向の荷重に対する安定性を向上させ、車両11が転倒することを防止できる。
【0039】
なお、シリンダ41の取付位置は、レール51より外側ならば台車14及び車体12の任意の位置を選択することができ、車体12の四隅部等にシリンダ41を設けることも可能であるが、軸箱支持装置20等を利用して軸箱部分にシリンダ41を設けることにより、ストロークを短くすることができ、シリンダロッド42を伸張させたときの強度を向上させることができる。また、シリンダ41を作動させるための流体は、車両11の圧縮空気を用いることが可能であり、シリンダ41専用の空圧回路や油圧回路を設けるようにしてもよい。さらに、前記第1,第2形態例に示す各転倒防止装置と、第3形態例に示す転倒防止装置とを組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第1形態例を示す正面図である。
【図2】同じく要部の側面図である。
【図3】一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合した状態を示す正面図である。
【図4】正常時の車体の状態を示す正面図である。
【図5】一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合したときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【図6】反傾斜方向側の軸箱支持装置が最も下降したときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【図7】傾斜方向側の空気バネがパンクしたときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【図8】本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第2形態例を示す正面図である。
【図9】一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが当接した状態を示す正面図である。
【図10】本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第3形態例を示す正面図である。
【図11】同じく要部の側面図である。
【符号の説明】
【0041】
11…鉄道車両、12…車体、13…車輪、14…台車、15…台車枠、16…空気バネ、17…けん引装置、18…輪軸、19…軸箱、20…軸箱支持装置、20a…軸ばね、21…転倒防止装置、22…軌道側ストッパ、22a…基部取付片、22b…立上片、22c…係合片、22d…補強片、23…車両側ストッパ、23a…取付基部、23b…係合腕、23c…係合部、24…ボルト、31…軌道側ストッパ、31a…当接面、32…車両側ストッパ、32a…取付基部、32b…係合腕、32c…当接部、41…シリンダ、42…シリンダロッド、42a…シリンダロッド先端、43…ボルト、44…ブラケット、51…レール、52…軌道、53…締結装置、S…車両限界、T…建築限界
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の転倒防止装置に関し、詳しくは、軌道上を走行する車両に地震や突風等の横荷重がかかったときに車両の転倒を防止するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や突風等の天災によって鉄道車両が脱線したときに、車両を枕木のある道床や路盤等の上を走行するように案内して車両の転倒を防止するための装置として、脱線時に軌道(レール)に接触して車両が幅方向に変位しないように拘束するストッパ装置やガイド部を車体に設けた転倒防止装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、レールの両側に転倒防止用側壁を延在させて鉄道車両の転倒を防止することも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平10−250576号公報
【特許文献2】特開2006−44355号公報
【特許文献3】特開2005−76392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1,2に記載された転倒防止装置では、脱線後の鉄道車両が軌道から大きく外れないように規制して鉄道車両の転倒を防止するものであるから、地震や突風あるいは速度超過で曲線に進入したときの遠心力のような横方向の荷重が軌道上の車両にかかり、脱線せずに転倒するおそれがある場合には対応できない。また、特許文献3に記載されたように、レールの両側に転倒防止用側壁を延在させる方法は、鉄道車両の転倒を防止する点では有効であるが、設置や保守に要するコストが極めて多大なものとなり、さらに、既存の施設に追加することは極めて困難である。
【0004】
そこで本発明は、軌道上を走行している車両の転倒防止だけでなく、例えばカントの大きな位置で停止中の車両の転倒防止も図ることができ、既存の軌道施設及び鉄道車両にも適用可能な鉄道車両の転倒防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第1の構成は、軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道のレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車両が一定角度以上傾斜したときに車両側ストッパと軌道側ストッパとが係合する位置にそれぞれ配設されていることを特徴としている。
【0006】
上記第1の構成における前記軌道側ストッパは、前記軌道に固着される基部取付片と、該基部取付片からレール上面より上方位置で車両限界を侵さない範囲に立ち上がった立上片と、該立上片の上端部から軌道外方向又は内方向に向かって屈曲した係合片とを有し、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記係合片の近傍で、レール上面より高位置に突出した係合腕と、該係合腕の突出端から前記係合片の下方に向かって屈曲した係合部とを有し、車両の傾斜時に前記係合片の下面と係合部の上面とが係合可能な位置に設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第2の構成は、軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道の外側にレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両の車輪より外側位置に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車両が一定角度以上傾斜したときに、傾斜方向側の車両側ストッパが軌道側ストッパに当接する位置に配設されていることを特徴としている。
【0008】
上記第2の構成における前記軌道側ストッパは、車両限界を侵さない高さの上面に当接面を有しており、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記当接面の近傍で、レール上面より高位置に突出した当接腕とを有し、車両の傾斜時に前記当接面と当接腕とが当接可能な位置に設けられていることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第3の構成は、軌道上に停止した鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記鉄道車両の車輪より外側位置に、短縮時にはシリンダロッド先端が車両限界内に納まり、伸張時にはシリンダロッド先端が軌道に当接するシリンダを設けたことを特徴とし、また、前記シリンダが台車の軸箱部分に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鉄道車両の転倒防止装置における第1,第2の構成によれば、地震や突風などによって車両に横方向の荷重がかかり、車両が傾斜したときに、軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合又は当接することにより、車両がそれ以上傾斜することを防止する。また、第3の構成では、車両停止中にシリンダを伸張作動させてシリンダロッド先端を軌道の枕木や道床に当接させておくことにより、横方向の荷重に対する安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図7は、本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第1形態例を示すもので、図1は正面図、図2は要部の側面図、図3は一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合した状態を示す正面図、図4は正常時の車体の状態を示す正面図、図5は一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合したときの車体の傾斜状態を示す正面図、図6は反傾斜方向側の軸箱支持装置が最も下降したときの車体の傾斜状態を示す正面図、図7は傾斜方向側の空気バネがパンクしたときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【0012】
鉄道車両11は、左右一対のレール51を有する軌道52上を走行するもので、車体12の前後には、レール51にガイドされながら回転する車輪13を備えた台車14がそれぞれ設けられている。軌道52は、バラストで枕木を保持したバラスト軌道や、鉄筋コンクリートからなるスラブ軌道等が多用されている。
【0013】
本形態例に示す台車14は、台車枠15に設けた左右一対の空気バネ16からなるまくらばねによって車体12を支持するとともに、台車枠15と車体12とをけん引装置17により連結したボルスタレス台車であって、前記車輪13を両端部に有する輪軸18の両端が軸箱19に回転可能に保持され、軸箱19は、軸ばね20a等を有する軸箱支持装置20を介して台車枠15に保持されている。
【0014】
転倒防止装置21は、軌道側に設けられた軌道側ストッパ22と、車両側に設けられた車両側ストッパ23とを備えている。軌道側ストッパ22は、レール51の外側に、レール51に対して一定の間隔で平行な方向に連続的に敷設されるものであって、軌道52に固着される基部取付片22aと、該基部取付片22aからレール51の上面より上方位置まで立ち上がった立上片22bと、該立上片22bの上端部から軌道外方向に向かって屈曲した係合片22cと、補強片22dとを有する略Z字状に形成されており、前記基部取付片22aが、締結装置53によってレール51と一緒に軌道52を構成する枕木や路盤に共締めされている。したがって、レールの両側に転倒防止用側壁を延在させる従来の方法に比べて低コストで設置することができ、保守も容易である。
【0015】
車両側ストッパ23は、前記軸箱支持装置20の下部にボルト24等で取り付け固定される取付基部23aと、該取付基部23aから前記軌道側ストッパ22の係合片22cの近傍まで突出した係合腕23bと、該係合腕23bの突出端から前記係合片22cの下方に向かって内側に屈曲した係合部23cとを有する略コ字状に形成されている。
【0016】
軌道側ストッパ22の最上端の位置、通常は係合片22cの上面部分の位置は、軌道側ストッパ22を敷設した軌道52を走行する各種車両と接触しないことが絶対的な条件となり、車輪13の削正で車輪径が小さくなり、台車14や車体12が下がったときでも、例えば、車輪13の直径範囲が860mm〜790mmの場合は、最大約35mm下がった場合でも、台車14の構成部品や車体12の床下に取り付けられた機器に軌道側ストッパ22が接触しない高さ以下にあるように設定する。
【0017】
一方、車両側ストッパ23の最下端の位置、通常は係合部23cの下面部分の位置は、車両11がポイント部分を走行するときなどにレール51と接触しないことが絶対的な条件となり、車輪13の削正で車輪径が小さくなり、車両側ストッパ23が下がった状態になっても、レール51の上面より車両側ストッパ23が高位置にあるように設定する。
【0018】
なお、車両側ストッパ23の最下端がレール51の上面より高位置にある場合でも、車両限界Sを超え、建築限界Tを侵すこともあるが、例えば、サードレール(第三軌条)集電方式における集電靴(コレクターシュー)のように、軌道側の構造と一体的な設備機器と考えれば、通常の車両走行にはまったく問題はない。
【0019】
また、軌道側ストッパ22の係合片22cと車両側ストッパ23の係合部23cとの相互の位置関係は、通常の走行時や停止時には、係合片22cの下面と係合部23cの上面とが接触せず、所定の間隔が開くように設定されており、突風等による横方向の荷重で車両11が大きく傾斜したり、地震の揺れで車両11が大きく傾斜したり、軌道52に対して車両11が大きく上下動したりした場合などで、車輪13がレール51から浮き上がったときに、係合片22cの下面と係合部23cの上面とが接触して係合するように設定されている。
【0020】
例えば、図3に示すように、図3において左側の車輪13がレール51から所定量浮き上がったときに、左側のレール51に沿って設けられた軌道側ストッパ22の係合片22cと車両側ストッパ23の係合部23cとが係合し、車輪13がそれ以上レール51から浮き上がるのを防止するように、係合片22cと係合部23cとの位置関係が設定されている。
【0021】
このように、車輪13がレール51から所定量浮き上がったときに、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とが係合することにより、レール51からの車輪13の浮き上がりが規制され、台車14が大きく傾斜することが防止されて車両11が転倒することが防止される。さらに、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とは、係合片22cの突出端(外端)と車両側ストッパ23の係合腕23bの内側、係合部23cの突出端(内端)と軌道側ストッパ22の立上片22bの外面とが対向する位置にあることから、軌道53に対する台車14の横移動も規制され、脱線も防止されることになる。
【0022】
また、前記空気バネ16のストロークや軸箱支持装置20の移動範囲、輪軸18の傾斜角度に対する台車14及び車体12の傾斜角度を考慮することにより、車両11の転倒だけでなく、車体12の傾斜に起因する二次災害も防止できる。すなわち、図4に示すように、通常走行時には、車輪径に関係なく車体12や台車14は一部を除いて車両限界S内に納まっている。この状態で突風による横風を受け、図5に示すように、車両全体が風下側(図5の左方向)に傾斜して風上側にある車輪13がレール51から浮き上がったときには、風上側にある反傾斜側の軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とが係合して車両11の傾斜を抑えるので、傾斜した車体12が車両限界Sを僅かに超えるだけとなる。
【0023】
さらに、図6に示すように、軌道側ストッパ22と車両側ストッパ23とが係合した状態で、軸箱支持装置20が、その移動範囲内で台車枠15から最も下降して車体12から離れた状態になるまで台車14及び車体12が傾斜しても、傾斜した車体12が車両限界Sを大きく超えることはない。また、図7に示すように、図6の状態から傾斜側の空気バネ16がパンクして台車14に対して車体12が大きく傾いた場合でも、車体12が建築限界Tを超えることはほとんどなく、このような傾斜状態で走行したとしても、車体12が建造物に衝突して破壊されることがなく、建造物との衝突による二次災害を回避することができる。
【0024】
軌道側ストッパ22は、地震や突風、その他の様々な横方向の荷重を考慮すると、車両11の走行に支障を来すポイント部分を除いて全線の両側に設置することが望ましいが、例えば突風による車両11の転倒を防止するためならば、橋梁部分、築堤部分、曲線のカントが大きい部分等の軌道に重点的に設置すればよく、トンネル内のように風の影響がほとんど無い部分や、防音壁に囲まれた部分のように風の影響が有っても小さい部分への設置を省略するようにしてもよい。また、季節風を考慮すれば、主として風上側にのみ設けることも可能である。
【0025】
さらに、軌道側ストッパ22の敷設位置や固定方法は任意に選択することができるが、前述のように、軌道側ストッパ22をレール用の締結装置53によってレール51と共締めすることにより、従来から使用されている枕木等をそのまま利用することができ、専用の取付金具等も不要となり、軌道側ストッパ22の敷設を、レール51の敷設、交換と同時に行うことができる。また、車両側ストッパ23を車輪13と共に上下動する軸箱19の部分に設けることにより、レール51から車輪13が浮き上がったときに、車両側ストッパ23を軌道側ストッパ22に確実に係合させることができる。
【0026】
なお、係合片22cと係合部23cの突出方向は逆方向であってもよく、係合する面が水平方向でなくてもよい。
【0027】
図8及び図9は、本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第2形態例を示すもので、図8は正面図、図9は一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが当接した状態を示す正面図である。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した各構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
本形態例に示す転倒防止装置は、軌道52のレール51の外側に沿ってレール51と平行に敷設された軌道側ストッパ31と、車両11の車輪13より外側で、前記軌道側ストッパ31に対応するように設けられた車両側ストッパ32とを備えている。
【0029】
軌道側ストッパ31は、上面にレール面と略平行な平面からなる当接面31aを有しており、軌道52の枕木や路盤に適宜な固定手段によって固設されている。この軌道側ストッパ31は、上面に当接面31aを備えていれば下部形状は任意であり、H形鋼、溝形鋼、ハット形鋼、Z形鋼、レール等を使用することが可能で、前記同様に締結装置53によってレール51と共締めできる形状とすることも可能である。また、当接面31aの高さは、前記同様に、車両限界Sを侵さない範囲に設定され、軌道52を走行する各種車両に接触しない高さ以下、好ましくは建築限界を超えない範囲に設定する。
【0030】
また、車両側ストッパ32は、軸箱支持装置20の下部にボルト24等で取り付け固定される取付基部32aと、該取付基部32aから前記軌道側ストッパ31の当接面31aの近傍まで突出した係合腕32bとを有しており、該係合腕32bの突出端下面が、車両11が傾斜したときに前記当接面31aに当接する当接部32cとなっている。この車両側ストッパ32においても、前記同様に、ポイント走行時等にレール51と接触しないように、下端の前記当接部32cがレール51の上面より高い位置、好ましくは車両限界Sを超えない範囲に設定する。
【0031】
軌道側ストッパ31の当接面31aと車両側ストッパ32の当接部32cとの相互の位置関係は、図8に示すように、通常の走行時や停止時には当接面31aと当接部32cとが接触せず、図9に示すように、横方向の荷重によって車両11が図において左側に傾斜し、右側の車輪13がレール51から所定量浮き上がったときに、傾斜方向側である左側の当接面31aに当接部32cが当接するように設定されている。
【0032】
これにより、傾斜方向への回動中心が車輪13とレール51との接触部から、当接面31aと当接部32cとの当接部に移動するので、車両11の重心に対して回動中心が離れた位置になり、車両11の転倒を防止することができる。また、車両11が脱線した場合は、車輪13を軌道側ストッパ31がガイドして台車14の横移動を規制することができる。
【0033】
したがって、本形態例に示す転倒防止装置においても、前記第1形態例で示した転倒防止装置と同様の作用効果を得ることができ、地震や突風、その他の様々な横方向の荷重によって車両11が転倒することを防止できる。また、本形態例の転倒防止装置は、軌道側ストッパ31を建築限界Tの範囲内、車両側ストッパ32を車両限界の範囲内に設置可能であるというメリットも有している。
【0034】
なお、軌道側ストッパ31の当接面31aは水平方向でなくてもよく、係合腕32bの突出方向は任意であるが、本形態例に示すように、下向きにレール51から離れる方向に突出させることにより、レール51から離れた位置に当接部32cを配置できるので、転倒防止効果を更に向上させることができる。
【0035】
図10及び図11は、本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第3形態例を示すもので、図10は正面図、図11は要部の側面図である。
【0036】
本形態例に示す転倒防止装置は、車両11の車輪13より外側位置に上下方向に作動するシリンダ41を設けたものであって、該シリンダ41のシリンダロッド42を伸張させることにより車両11の転倒を防止するようにしている。
【0037】
シリンダ41は、台車14の軸箱支持装置20の下部にボルト43で固定されたブラケット44に保持されており、短縮時にはシリンダロッド42の先端42aを含めてシリンダ41の全体が車両限界Sの範囲内に納まる状態となっている。シリンダロッド42の伸張長さは、図10に想像線で示すように、シリンダロッド42を伸張させたときに、シリンダロッド先端42aが軌道52を構成する枕木やバラスト、スラブ等に当接するように設定されている。
【0038】
したがって、車両停止時にシリンダロッド42を伸張させておくことにより、車両11に大きな横方向の荷重が作用したときの車体傾斜方向の回動中心が、通常の車輪13とレール51との接触部からシリンダロッド先端42aの部分に移動するため、車両11の重心に対して回動中心が離れた位置になり、横方向の荷重に対する安定性を向上させ、車両11が転倒することを防止できる。
【0039】
なお、シリンダ41の取付位置は、レール51より外側ならば台車14及び車体12の任意の位置を選択することができ、車体12の四隅部等にシリンダ41を設けることも可能であるが、軸箱支持装置20等を利用して軸箱部分にシリンダ41を設けることにより、ストロークを短くすることができ、シリンダロッド42を伸張させたときの強度を向上させることができる。また、シリンダ41を作動させるための流体は、車両11の圧縮空気を用いることが可能であり、シリンダ41専用の空圧回路や油圧回路を設けるようにしてもよい。さらに、前記第1,第2形態例に示す各転倒防止装置と、第3形態例に示す転倒防止装置とを組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第1形態例を示す正面図である。
【図2】同じく要部の側面図である。
【図3】一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合した状態を示す正面図である。
【図4】正常時の車体の状態を示す正面図である。
【図5】一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが係合したときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【図6】反傾斜方向側の軸箱支持装置が最も下降したときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【図7】傾斜方向側の空気バネがパンクしたときの車体の傾斜状態を示す正面図である。
【図8】本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第2形態例を示す正面図である。
【図9】一方の軌道側ストッパと車両側ストッパとが当接した状態を示す正面図である。
【図10】本発明の鉄道車両の転倒防止装置の第3形態例を示す正面図である。
【図11】同じく要部の側面図である。
【符号の説明】
【0041】
11…鉄道車両、12…車体、13…車輪、14…台車、15…台車枠、16…空気バネ、17…けん引装置、18…輪軸、19…軸箱、20…軸箱支持装置、20a…軸ばね、21…転倒防止装置、22…軌道側ストッパ、22a…基部取付片、22b…立上片、22c…係合片、22d…補強片、23…車両側ストッパ、23a…取付基部、23b…係合腕、23c…係合部、24…ボルト、31…軌道側ストッパ、31a…当接面、32…車両側ストッパ、32a…取付基部、32b…係合腕、32c…当接部、41…シリンダ、42…シリンダロッド、42a…シリンダロッド先端、43…ボルト、44…ブラケット、51…レール、52…軌道、53…締結装置、S…車両限界、T…建築限界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道のレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車輪がレールから浮き上がったときに車両側ストッパと軌道側ストッパとが係合する位置にそれぞれ配設されていることを特徴とする鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項2】
前記軌道側ストッパは、前記軌道に固着される基部取付片と、該基部取付片からレール上面より上方位置で車両限界を侵さない範囲に立ち上がった立上片と、該立上片の上端部から軌道外方向又は内方向に向かって屈曲した係合片とを有し、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記係合片の近傍で、レール上面より高位置に突出した係合腕と、該係合腕の突出端から前記係合片の下方に向かって屈曲した係合部とを有し、車両の傾斜時に前記係合片の下面と係合部の上面とが係合可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項3】
軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道の外側にレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両の車輪より外側位置に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車両が一定角度以上傾斜したときに、傾斜方向側の車両側ストッパが軌道側ストッパに当接する位置に配設されていることを特徴とする鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項4】
前記軌道側ストッパは、車両限界を侵さない高さの上面に当接面を有しており、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記当接面の近傍で、レール上面より高位置に突出した当接腕とを有し、車両の傾斜時に前記当接面と当接腕とが当接可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載の鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項5】
軌道上に停止した鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記鉄道車両の車輪より外側位置に、短縮時にはシリンダロッド先端が車両限界内に納まり、伸張時にはシリンダロッド先端が軌道に当接するシリンダを設けたことを特徴とする鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項6】
前記シリンダは、台車の軸箱部分に設けられていることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項1】
軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道のレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車輪がレールから浮き上がったときに車両側ストッパと軌道側ストッパとが係合する位置にそれぞれ配設されていることを特徴とする鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項2】
前記軌道側ストッパは、前記軌道に固着される基部取付片と、該基部取付片からレール上面より上方位置で車両限界を侵さない範囲に立ち上がった立上片と、該立上片の上端部から軌道外方向又は内方向に向かって屈曲した係合片とを有し、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記係合片の近傍で、レール上面より高位置に突出した係合腕と、該係合腕の突出端から前記係合片の下方に向かって屈曲した係合部とを有し、車両の傾斜時に前記係合片の下面と係合部の上面とが係合可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項3】
軌道上を走行する鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記軌道の外側にレールに沿って敷設された軌道側ストッパと、前記鉄道車両の車輪より外側位置に設けられた車両側ストッパとを備え、前記軌道側ストッパと前記車両側ストッパとは、車両が一定角度以上傾斜したときに、傾斜方向側の車両側ストッパが軌道側ストッパに当接する位置に配設されていることを特徴とする鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項4】
前記軌道側ストッパは、車両限界を侵さない高さの上面に当接面を有しており、前記車両側ストッパは、台車の軸箱部分に固着される取付基部と、該取付基部から前記当接面の近傍で、レール上面より高位置に突出した当接腕とを有し、車両の傾斜時に前記当接面と当接腕とが当接可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載の鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項5】
軌道上に停止した鉄道車両の転倒を防止する装置であって、前記鉄道車両の車輪より外側位置に、短縮時にはシリンダロッド先端が車両限界内に納まり、伸張時にはシリンダロッド先端が軌道に当接するシリンダを設けたことを特徴とする鉄道車両の転倒防止装置。
【請求項6】
前記シリンダは、台車の軸箱部分に設けられていることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両の転倒防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−213693(P2008−213693A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55067(P2007−55067)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
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